説明

クロックサイクルスチールのための方法および装置

複数のクロック信号を生成するための方法。前記方法は、位相ロックループ(PLL)を使用して基準クロック信号を生成するステップを有する。前記基準クロックが、複数のクロック分周器ユニットのそれぞれに供給され、前記複数のクロック分周器ユニットのそれぞれが、前記受信基準クロック信号を分周して、対応する分周クロック信号を生成する。前記方法は、前記対応する受信分周クロック信号の周波数と、除去するサイクル数とに基づいて、それぞれが有効周波数を有する複数のドメインクロック信号を生成するために、(所定の数のサイクルにつき)1以上のクロックサイクルを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は集積回路に関し、より詳細には、クロック信号を生成するためのクロック回路に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロプロセッサなどの複雑な集積回路は、多くの場合、異なる独立したクロック信号を使用して異なる部分を動作させる必要がある。このような異なる部分のそれぞれは「クロックドメイン」と呼ばれている。例えば、マイクロプロセッサが、それぞれが別個の独立したクロックを使用して動作する第1のプロセッサコアと、第2のプロセッサコアと、バスインタフェースユニットとを有しうる。
このようなクロックは、異なる周波数で作動し、この周波数が、多くの場合、特定のニーズに従って変更されうる。例えば、プロセッサ負荷の高いタスクを実行している第1のプロセッサコアのクロック信号は、プロセッサ負荷の低いタスクを実行している第2のプロセッサコアのクロック信号よりも高い周波数で作動しうる。これらのクロック信号の周波数は、実行するタスクのほか、電力消費および/または発熱などの他の考慮事項に応じて適宜増減されうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
複数のクロック信号を実装する最も簡単な方法は、複数の発振器を設けることである。集積回路で使用されるより一般的な解決策は、基準クロックを生成するための1つの発振器または他のタイプのクロック生成回路を設けて、この基準クロックを複数の位相ロックループ(PLL)に供給する方法である。異なるPLLのそれぞれは、それぞれ独立したクロック出力信号を供給することができる。更に、PLLは、自身の出力クロックの周波数を調整可能とするように構成されてもよい。PLLはアナログ回路であるが、その他は主にデジタル回路から構成される集積回路ダイに実装することができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
複数のクロック信号を生成するための方法が開示される。一実施形態では、前記方法は、位相ロックループ(PLL)を使用して基準クロック信号を生成するステップを含む。前記基準クロックが、複数のクロック分周器ユニットのそれぞれに供給され、前記複数のクロック分周器ユニットのそれぞれが、前記受信基準クロック信号を分周して、対応する分周クロック信号を生成する。前記方法は、前記対応する受信分周クロック信号の周波数と、除去するサイクル数とに基づいて、それぞれが有効周波数を有する複数のドメインクロック信号を生成するために、(所定のサイクル数につき)1以上のクロックサイクルを除去する。
【0005】
また、複数のクロック信号を生成するための装置も開示される。一実施形態では、前記装置は、基準クロック信号を生成するように構成されたPLLを有する。前記装置は、基準クロック信号を生成するように構成された位相ロックループを有する。複数のクロック分周器ユニットは、それぞれ、前記PLLから前記基準クロック信号を受信するために結合され、前記基準クロック信号から対応する分周クロック信号を生成するように構成されている。前記装置は、複数のサイクルスチールユニットを更に有する。前記サイクルスチールユニットのそれぞれは、対応する分周クロック信号を受信するために結合されている。各サイクルスチールユニットは、前記対応する分周クロック信号の前記周波数と前記除去するサイクル数とに基づいて、有効周波数を有するドメインクロック信号を生成するために、前記対応する受信した分周クロック信号から、所定の数のクロックサイクルにつき、1以上のクロックサイクルを除去するように構成されている。
【0006】
さまざまな実施形態では、前記装置は、それぞれが対応するサイクルスチールユニットに結合された複数のクロック合成器も更に有する。各クロック合成器は、前記対応するサイクルスチールユニットによって除去されたクロックサイクルに基づいてクロック信号を合成するように構成されている。各クロック合成器は、前記対応する分周クロック信号の所定数の異なる位相のそれぞれから除去されたサイクルに基づいて、その個々のドメインクロック信号を合成してもよい。このような実施形態では、使用される前記PLLは、複数の位相(例えば、0°、90°、180°、270°)の前記基準クロック信号を出力することができる。
【0007】
また、複数のクロックドメインを有し、各クロックドメインが、異なるクロック信号を受信するように構成されている集積回路もここに開示される。これらのクロック信号は、パフォーマンス状態と特定の構成に応じて、異なる周波数を有してもよい。前記クロックドメインのそれぞれが受信する前記クロック信号は、所定数のクロックサイクルのそれぞれに対してクロック信号の1以上のサイクルを除去することによって生成されうる。
【0008】
ここに開示の前記方法と装置により、1つの位相ロックループを使用して、異なるクロックドメインに複数の異なるクロックサイクルを生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】複数のクロックドメインと1つの位相ロックループ(PLL)とを有するプロセッサの一実施形態を示すブロック図。
【図2】サイクルがスチールされているクロック信号を示すタイミングチャート。
【図3】1つのPLLと複数のサイクルスチールユニットとを使用して複数のクロック信号を生成するように構成された装置の一実施形態のブロック図。
【図4】サイクルスチールに使用される回路の一実施形態の論理図。
【図5】1つのPLLと複数のサイクルスチールユニットとを使用して複数のクロック信号を生成するように構成された装置の別の実施形態を示す図。
【図6】スチールされたクロックサイクルを使用して合成したクロック信号を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明を読み、添付図面を参照することにより、本発明の他の態様が明らかになるであろう。
【0011】
本発明は、さまざまに変形されたり代替形態を取りうるが、その特定の実施形態が、例として図面に図示され、かつ本明細書に詳細に記載される。しかし、図面およびその説明は、本発明を開示された特定の形態に限定するようには意図されてはおらず、逆に、本発明は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨および範囲内に入るあらゆる変更、均等物、および代替物を網羅するものであることが理解されるべきである。
【0012】
図1を参照すると、複数のクロックドメインと1つの位相ロックループ(PLL)とを有するプロセッサの一実施形態を示すブロック図が示される。図の実施形態では、プロセッサ10は、第1のコア110と、第2のコア111と、L2キャッシュ115とを備える。第1のコア110はクロックドメイン#1に、第2のコア111はクロックドメイン#2に、L2キャッシュ115はクロックドメイン#3にそれぞれ存在する。ほかのクロックドメインに別のユニットが設けられていてもよい。例えば、第4のクロックドメインにバスインタフェースユニットがあり、ノースブリッジが第5のクロックドメインに実装されるなどであってもよい。
【0013】
また、プロセッサ10は、基準クロック信号を生成するように構成されたPLL102も有し、この基準クロック信号は、チップ外の発振器または他のクロック生成手段から受信したクロック信号に基づいて、クロックドメインのそれぞれに供給される。クロックドメインのそれぞれは、自身のドメインクロック信号の周波数を変更することができる追加の機能を備える。ドメイン固有の出力クロック信号は、周波数が可変であり、プロセッサ10の動作中のさまざまな時点で周波数が変わりうる。例えば、プロセッサ10の作業負荷が低い場合、ドメインクロック信号の一方または両方の周波数が下げられ、その個々の周波数が異なってもよい。逆に、作業負荷が上昇すると、一方または両方のドメインクロック信号の周波数を上げ、この状況で両者の周波数が異なってもよい。
【0014】
ドメインクロック信号を生成するために、各クロックドメインは、「サイクルスチール」として知られる技術を使用するように構成されたユニットを少なくとも備えうる。図2は、サイクルが除去されていないクロック信号と、サイクルが除去されている(「スチールされている」)クロック信号とを対比して示すタイミングチャートである。サイクルが除去されていないクロック信号では、合計7クロックサイクルが示されている。サイクルが除去されているクロック信号では、これらのクロック信号のうちの1つが除去されており、除去されたサイクルが破線で示されている。このため、サイクルが除去されているクロック信号は、サイクルが除去されていないクロック信号と同じ時間に6つのサイクルしかない。したがって、サイクルが除去されているクロック信号の有効周波数は、サイクルが除去されていないクロック信号の6/7となる。この特定の例では、50%のデューティーサイクルを維持するようにサイクルが除去される。
【0015】
一般に、サイクルがスチールされているクロック信号の有効周波数は、所定の期間に所定のサイクル数を除去することによって設定することができる。例えば、受信クロック信号の75%の周波数は、20サイクルの期間(または所定の数)に5サイクルを除去することによって得ることができる。このため、サイクルが除去されていないクロック信号の周波数が2.0GHzである場合、20サイクルのうち5サイクルが除去されているクロック信号の周波数は1.5GHzとなる。
【0016】
クロックサイクルの除去では、どのサイクルを除去するかを決定することが重要である。例えば、20クロックサイクルのうち5サイクルを除去する場合、除去したクロックサイクルが、20サイクルにわたって、ある程度均一に分布していることが重要である。20クロックサイクルの最初または最後の連続する5クロックサイクルを除去すると、パワーグリッドの振動などの望ましくない影響が生じる場合がある。このため、この例では、4クロックサイクルおきに除去して、除去するクロックサイクルが均一に分布するようにすることが望ましい。それぞれの例について、除去する特定のサイクルは、除去するサイクル数、総サイクル数、およびサイクルの除去による考えられる影響に基づいて決定されうる。
【0017】
また、各クロックドメインは、サイクルスチールユニットと共に使用される分周器も備える。このため、受信基準クロック信号が分周されて、分周クロック信号が生成され、分周クロック信号からゼロ以上のサイクルが除去されてドメインクロック信号が生成されうる。下記の表1は、n/22サイクルを除去するように構成された分周器とサイクルスチールユニットとを使用した、ドメインクロック信号の周波数の変更を示す。
【0018】
【表1】

【0019】
表1の例では、クロック分周器が、クロック信号を、1(すなわちクロック信号が事実上分周されない)、2または4で分周する。受信(すなわち基準)クロック信号を1で分周すると、22サイクルにつき最大10サイクルが除去され、有効周波数が最大2.2GHz(除去サイクルが0/22の場合)から1.2GHzの間の値に変更される。1.1GHzの周波数は2.2GHzのクロック信号を2で分周することによって容易に得ることができるため、11/22のクロックサイクルを除去する必要がない。受信クロック信号を2で分周した後に、クロックサイクルを、2刻み(例えば、0、2、4など)で除去して、有効周波数を、1.1GHz〜600MHzの間で、100MHzずつ変更することができる。4で分周すると、クロックサイクルが4刻みで除去され、有効周波数を、500MHz〜300MHzの間で、100MHzずつ変更することができる。
【0020】
なお、クロック信号を整数以外の値で分周する(例えば、1.5で分周するなど)実施形態も可能であり、考察される。
【0021】
図3は、1つのPLLと複数のサイクルスチールユニットとを使用して複数のクロック信号を生成するように構成された装置の一実施形態のブロック図である。図の実施形態では、クロック生成装置200は、基準クロック信号を供給するために、複数の分周器404のそれぞれに結合されているPLL102を有する。各分周器404は、分周クロック信号を生成するように構成されている。なお、上記に従って、本開示の目的のために、分周クロック信号には、基準クロックを1で分周したものが含まれるとする。また、特に、最低周波数が受信基準クロック信号の周波数の半分より大きくなるようにドメインクロック周波数を変更する場合には、クロック分周器のない実施形態も可能であり、考察される。しかし、分周器を使用する実施形態により、広い範囲のドメインクロック周波数を得ることができる。
【0022】
各分周器404は、対応するサイクルスチールユニット408の入力に結合された出力を有する。各サイクルスチールユニット404は、所定の期間に発生する所定の数のサイクルのそれぞれについて、対応する受信した分周クロック信号から、ゼロ以上のサイクルを除去するように構成されている。一般に、各サイクルスチールユニットは、その対応する分周クロック信号に対してn/mサイクルを除去するように構成されており、ここで、nは除去するクロックサイクル数、mは、所定の期間に発生する総クロックサイクル数である(例えば、上記の例ではn=5、m=20となる)。
【0023】
サイクルスチールユニットの簡潔な例が、図4に示される。図の実施形態では、サイクルスチールユニット300は、ラッチ302とANDゲート304とを有する。クロック信号(例えば、分周クロック信号)は、ラッチ302とANDゲート304の両方に供給される。ラッチ302は、制御信号を受信するために結合されている。制御信号が第1の状態のときには、ラッチ302はクロック信号を通過させ、第2の状態では、クロック信号の通過が禁止される。制御信号が第1の状態のときは、クロック信号はサイクルスチールユニット300を通過し、サイクルがスチールされない。
【0024】
サイクルをスチールするために、制御信号が第2の状態に変更され、これにより、クロック信号のラッチ302の通過が禁止される。制御信号は、クロック信号の正部分が通過せず、ANDゲート304の出力がローに保持されることを少なくとも保証するのに十分な期間、第2の状態に保持されうる。
【0025】
より複雑なサイクルスチールユニットを実装することもできる。このような実施形態によりクロック信号が事実上ストレッチされ、スチールユニットから出力されるドメインクロック信号に対して50%のデューティーサイクルが維持される。
【0026】
図3に戻ると、クロック生成装置200は複数の制御ユニット410を有し、そのそれぞれが、分周器404とその対応するサイクルスチールユニット408とに関連している。各制御ユニット410は、分周比をセットするために、対応する分周器404に供給する制御信号を生成するように構成されている。また、各制御ユニットは、分周クロック信号からどのクロックサイクルを除去するか決定するために、対応するサイクルスチールユニットに供給する制御信号を生成するようにも構成されている。このため、分周器とサイクルスチールユニットを組み合せて、各ドメインクロック信号の、周波数を広い範囲で変更することができる。更に、クロック生成装置200は、クロックドメインごとに別個にPLLを設ける代わりに、1つのPLLのみを使用して、チップ上で複数のクロック信号を生成することができる。
【0027】
図5は、1つのPLLと複数のサイクルスチールユニットとを使用して複数のクロック信号を生成するように構成された装置の別の実施形態の図である。この特定の実施形態のサイクルスチールユニットは、クロック合成器を有し、基準クロック信号を分周し、ゼロ以上のクロックサイクルを除去することによって、ドメインクロック信号が合成される。簡潔を期するために、本図には、分周器、制御ユニット、クロック合成器を含むサイクルスチールユニットが1つだけ示されている。しかし、図3に示した装置と同様に、このようなユニットが複数設けられてもよいことを理解すべきである。
【0028】
図の実施形態では、クロック生成装置500は、複数の位相オフセットの基準クロック信号を供給するように構成されているPLL102を有する。この特定の実施形態では、PLL102は、0°、90°、180°および270°の位相オフセットの基準クロック信号を供給する。換言すれば、この例に設けられているPLL102の実施形態は、本質的に、それぞれが、オフセットが90°ずつずれた、同一周波数の4つの異なる基準クロック信号を供給する。基準クロック信号の複数の位相オフセットのそれぞれが分周器404に供給され、分周器404は制御ユニット410が設定した除数により、複数の位相オフセットを分周するように構成されている。このため、本実施形態における分周器404は、0°、90°、180°および270°の4つの異なる位相オフセットの分周基準クロック信号(以下「分周クロック信号」と呼ぶ)を出力として供給する。
【0029】
サイクルスチールユニット408は、分周クロック信号の位相オフセットを受信するほかに、制御ユニット410からイネーブル信号(この場合、CLK_EN[3:0])を受信するために結合されている。これらのイネーブル信号は、対応する個々のDフリップフロップにゲーティングされ、Dフリップフロップのそれぞれは、位相オフセット分周クロック信号の1つによってクロッキングされている。制御ユニット410は、サイクルスチールユニット408に、イネーブル信号を、繰り返しのパターンで供給するように構成されている。制御ユニット410によって生成される特定のパターンは、除数と、スチールするサイクル数と、最大周波数に対するドメインクロック信号の周波数(PLL102が出力する基準クロック信号の周波数)の割合とによって決まる。例えば、基準クロック信号の周波数の58%の周波数のドメインクロック信号は、クロック生成装置によって、基準クロック信号を1.5で分周して、(各位相オフセットについて)8クロックサイクルごとに1サイクルを除去して、イネーブル信号を繰り返しのパターンで供給することにより生成することができる。
【0030】
図に示した実施形態のフリップフロップは、それぞれ、分周器404から受信した分周クロック信号の位相オフセットの1つによってクロッキングされている。
【0031】
イネーブル信号が、対応する個々の信号経路のフリップフロップにゲーティングされると、対応するクロックイネーブル信号が生成される。この例に示すように、それぞれが、制御ユニット410からイネーブル信号のうちの対応する1つ[3:0]を受信するために結合されている第1の4つのフリップフロップのグループは、位相オフセットが0°の分周クロック信号によってクロッキングされる。信号経路のうちの3つ(CLK_EN[3]、CLK_EN[1]、CLK_EN[0]に対する)は、位相オフセットが180°の分周クロック信号によってクロッキングされるフリップフロップを有する。CLK_EN[2]に対する信号経路は、位相オフセットが270°の分周クロック信号によってクロッキングされているフリップフロップを有し、CLK_EN[0]に対する信号経路は、位相オフセットが90°の分周クロック信号によってクロッキングされているフリップフロップを有する。また、CLK_EN[1]に対する信号経路は、位相オフセットが0°の分周クロック信号によってクロッキングされている第2のフリップフロップも有する。
【0032】
イネーブル信号に、分周クロック信号のさまざまな位相がクロッキングされることで、4種類の異なる信号(すなわち、CLK_EN_0°、CLK_EN_90°、CLK_EN_180°、CLK_EN_270°)が生成され、クロック合成器に供給されるようになる。これらの信号は、分周クロック信号の位相オーバラップに基づいて、図に示したパスゲートをゲーティングされる。例えば、0°と270°の分周クロック信号の位相オフセットの両方が、個々のサイクルの論理ハイの部分の場合、CLK_EN_0°が対応する(respective)パスゲートをゲーティングされる。同様に、0°と90°の分周クロック信号の位相オフセットの両方が、個々のサイクルの論理ハイの部分の場合、CLK_EN_90°が対応する(respective)パスゲートをゲーティングされる。図5に示すように、パスゲートは、それぞれ入力信号と同じ分周クロック信号の位相オフセットを受信するために結合されているANDゲートとNANDゲートの論理ゲート対によって作動されうる(ほかの論理構成も可能であり、考察される)。CLK_EN_0°、CLK_EN_90°、CLK_EN_180°、CLK_EN_270°の各信号はクロック合成器のワイヤードOR構造にゲーティングされ、これは、信号のロジック値を保持するキーパー「K」を有する。これにより、合成ドメインクロック出力信号が生成され、これがクロック合成器412から出力される。
【0033】
このため、イネーブル信号と分周クロック信号の位相オフセットとを組み合せて、クロックイネーブル信号(すなわちCLK_EN_[3:0])がトグルされて、クロック合成器412に供給される。表2は、さまざまな所望のドメインクロック周波数に対するイネーブル信号パターンのいくつかの例を(基準クロック信号の周波数Fmaxの関数として)示す。
【0034】
【表2】

【0035】
図6は、図5に示した装置の実施形態を使用してスチールされたクロックサイクルを使用して合成されるドメインクロック信号を示すタイミングチャートである。より詳細には、図6のタイミングチャートは、ドメインクロック信号を合成する際の、図5に示した実施形態の装置の動作を示す。
【0036】
動作開始(EN[3:0]が1110)後、次サイクル(EN[3:0]が0011)において、ドメインクロック信号の第1のハイ部分が生成される。DivClk_0とDivClk_270の両方がハイの場合、(前のサイクルでEN[3]の論理ハイ値がゲーティングされた結果)ハイ部分の第1の部分が生成され、Clk_EN_0°がハイとなる。分周クロック信号の0°と270°の位相の両方がハイの場合、対応するパスゲートパスによりハイ値の通過が許可される。また、論理ハイ値は、分周クロック信号の0°と90°の位相の両方がハイの場合(Clk_EN_90°のハイ値の通過が許可される)と、分周クロック信号の90°と180°の位相の両方がハイの場合(Clk_EN_180°のハイ値の通過が許可される)にも通過する。分周クロック信号の180°と270°の位相の両方がハイの場合、Clk_EN_270°はローとなるため、このロー値が対応するパスゲートを通過して、メインクロック信号をローに下げる。
【0037】
90°と180°の位相の両方がハイの場合(Clk_EN_180°のハイの通過が許可される)、ドメインクロック信号の次のハイ部分が生成され、180°と270°の位相がハイとなり(Clk_EN_270°のハイの通過が許可される)、270°と0°の位相がハイとなる。その後、90°と180°、180°と270°、および270°の位相が、その個々のAND/NANDゲートの出力をアサートしている間、Clk_EN_90°、Clk_EN_180°およびClk_EN_270°が全てローであるため、ドメインクロック信号の別のロー部分が合成される。
【0038】
ここに示した例では、ドメインクロック信号は、基準クロック信号を1.5で割り、8サイクルの1つをスチールすることによって生成される。この結果、基準クロック信号の周波数の58%の有効周波数を有するドメインクロック信号が得られる。この特定の構成では、除去される、または「スチールされる」サイクルは、EN[3:0]のそれぞれを論理0にセットする図5の制御ユニット410によって生成され、この結果、Clk_EN_0°、Clk_EN_90°、Clk_EN_180°およびClk_EN_270°のそれぞれがローとなる。クロックサイクルをスチールした後に、上に挙げたパターンが繰り返されうる。
【0039】
一部の実施形態では、上で説明した技術を使用してサイクルを除去する場合でも、ドメインクロックのデューティーサイクルを50%に維持することが望ましいことがある。これは、制御ユニット410によって、サイクルをストレッチするために、イネーブル信号の1つ以上を論理1(通常のパターンから外れている)にセットすることで行うことができ、サイクルを実際上除去することができる。
【0040】
このため、ここに説明した方法の実施形態と併せて、クロック分周器、制御ユニットおよびサイクルスチールユニットを有する装置を複数使用すれば、1つのPLLを使用して複数のドメインクロック信号を生成することができる。ドメインクロック信号のそれぞれの周波数は、プロセッサのニーズに従って、必要に応じて変更されうる。例えば、ドメインクロック信号の1つ以上の周波数を、低パワー状態で下げたり、高作業負荷時に上げてもよい。
【0041】
本発明を特定の実施形態を参照して記載したが、この実施形態は例示であり、本発明の範囲はこれに制限されないことが理解されよう。記載した各種実施形態のどのような変形、変更、追加および改良も可能である。このような変形、変更、追加および改良は、添付の特許請求の範囲に詳述する発明の範囲に含まれうる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、一般にマイクロプロセッサに利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のクロック信号を生成するための方法であって、
位相ロックループ(PLL)を使用して基準クロック信号を生成するステップと、
複数のクロック分周器ユニットのそれぞれに前記基準クロック信号を供給するステップと、
対応する複数の分周クロック信号を生成するために、前記クロック分周器ユニットのそれぞれにおいて前記基準クロック信号を分周するステップと、
対応する受信分周クロック信号の周波数と、除去するサイクル数とに基づいて、それぞれが有効周波数を有する複数のドメインクロック信号を生成するために、各前記分周クロック信号から1以上のクロックサイクルを除去するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記PLLが複数の位相の前記基準クロック信号を出力するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基準クロックが、0°、90°、180°および270°の位相で出力される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の位相の前記各分周クロック信号を、複数のサイクルスチールユニットのうちの対応する1つに供給するステップと、
前記複数のサイクルスチールユニットのそれぞれにおいて、前記分周クロック信号の前記各複数の位相から1以上のサイクルを除去するステップと、
除去される前記1以上のサイクルのそれぞれを使用して前記ドメインクロック信号のそれぞれを合成するステップとを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
複数の制御信号を使用して、前記分周クロック信号の前記複数の位相から除去する前記1以上のサイクルを選択するステップを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
複数のクロック信号を生成するための装置であって、
基準クロック信号を生成するように構成された位相ロックループ(PLL)と、
それぞれが前記PLLから前記基準クロック信号を受信するために結合され、前記基準クロック信号から複数の分周クロック信号のうちの1つを生成するように構成された複数のクロック分周器ユニットと、
それぞれが、複数のクロック分周器ユニットの対応する1つから前記複数の分周クロック信号のうちの1つを受信するために結合された複数のサイクルスチールユニットとを備え、前記複数のクロック分周器ユニットのそれぞれは、対応する受信分周クロック信号の周波数と、除去するサイクル数とに基づいて、それぞれが有効周波数を有する複数のドメインクロック信号を生成するために、前記複数の分周クロック信号の前記1つから1以上のサイクルを除去するように構成されている装置。
【請求項7】
前記PLLは、複数の位相の前記基準クロック信号を出力するように構成されている請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記PLLは、前記基準クロックを0°、90°、180°および270°の位相で出力するように構成されている請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記サイクルスチールユニットのそれぞれは、前記複数の位相の前記複数の分周クロック信号の前記対応する1つを受信するために結合され、前記対応する分周クロック信号の前記複数の位相それぞれから1以上のサイクルを除去するように構成され、前記装置は、それぞれが前記複数のサイクルスチールユニットのうちの対応する1つに結合された複数のクロック合成器を更に備え、前記クロック合成器のそれぞれは、前記対応する分周クロック信号の前記複数の位相から除去される前記1以上のサイクルのそれぞれを使用して、前記複数のドメインクロック信号のうちの対応する1つを合成するように構成されている、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記サイクルスチールユニットのそれぞれは、複数の制御信号を受信するために結合され、前記サイクルスチールユニットのそれぞれは、前記複数の制御信号に基づいて、その対応する受信分周クロック信号の前記複数の位相のそれぞれから除去する前記1以上のサイクルを選択するように構成されている、請求項6乃至9のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−538361(P2010−538361A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522976(P2010−522976)
【出願日】平成20年8月30日(2008.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/010300
【国際公開番号】WO2009/032231
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(509329187)グローバルファウンドリーズ・インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】