説明

グラビア塗布装置

【課題】基材フィルムが汚損するのを防止し、製品品質を向上させると共に、グラビア塗布装置の清掃時間の削減を図ることにより生産性を向上させるグラビア塗布装置を提供する。
【解決手段】少なくとも、版胴1と圧胴4とを有するグラビア塗布装置10において、版胴1のロール幅の長さLに比べて、圧胴4のロール幅の長さLが短く、版胴1の版面11に塗布された余分なインキ9を掻き取るドクターブレード2が、版胴1の版面11の幅方向に摺り合わせて配設され、ドクターブレード2の両端部22,22に、ドクターブレード2により掻き取ったインキ9の回収機能と、版胴1の両端部12および、側面部13へのインキの付着防止機能とを兼ね備える板状部材3,3を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキのグラビア版胴の側面部への回り込み防止を図ったグラビア塗布装置に関する。さらに詳細には、インキがグラビア版胴の側面及び架台に付着して基材フィルムを汚損するのを防止し、製品品質の向上、及びグラビア塗布装置の清掃時間の削減を図ることにより生産性を向上させるグラビア塗布装置に関するものである。
【0002】
なお、本明細書において記載されているグラビアインキ(単に、インキと呼ぶ場合もある。)とは、グラビア塗布装置を使用して基材フィルムに塗布される、広義の意味でのインキを総称するものである。具体的には、色素または顔料を樹脂組成物に混ぜ合わせた塗料、溶剤に溶解させた粘着剤組成物からなる塗料、接着剤組成物からなる塗料、合成樹脂組成物からなる塗料、金属酸化物化合物を樹脂組成物に混ぜ合わせた塗料などを総称して、本明細書においては、グラビアインキまたはインキと呼ぶ。
また、本明細書において記載されている基材フィルムとは、材質が木材製薄板、紙製基材、プラスチック製シート、金属薄板、及びそれらの積層材などからなる可撓性を有する帯状のものを指している。
【背景技術】
【0003】
従来のグラビア塗布装置では、グラビア版の版面の両端の非版像部(特許文献1、2を参照)あるいは側面(特許文献3を参照)に摺接する治具を使用して、グラビアインキが版胴の側面へ回り込み付着するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−33451号公報
【特許文献2】特開2001−310439号公報
【特許文献3】特開2006−272710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1には、インキ跳ね防止部材が、ドクターブレードの刃先側の両端部、且つ、版胴の回転方向の後方側に固定され、ドクターブレードによって掻き落とされ、版胴の側面に付着したインキが跳ね上がり、転写前の版面に付着して基材フィルムを汚損することを防ぐようにした印刷装置が開示されている。
しかし、特許文献1に記載の印刷装置では、版面上の余分なインキをドクターブレードで掻き取った位置から、基材に転写する位置までの範囲の版胴の側面部の上方を、版胴に磁力で摺接するインキ跳ね防止部材で覆う構造の為、版胴の側面に付着しているインキは除去されず、蓄積されて行く。よって、ドクターブレードでインキを掻き取る位置より回転方向の前方の部分から、版胴の側面に付着したインキが飛散し、直接基材フィルムに付着することは防げないことがあった。また、実験例のようにポリエステル製のインキ跳ね防止フィルムを使用し、版胴と摺接させると、帯電してゴミ、ダストなどが付着したり、あるいは可燃性インキの場合に帯電によるスパークにより発火する危険性を有するという問題があった。
【0006】
上記の特許文献2には、グラビア版胴の側面にインキが回り込むのを防止することを目的として、版胴の両端の非版像部の位置に、短冊状紙片がドクターブレードとその当て板との間に挟接され、上記短冊上紙片がドクターブレードの刃先を包み、グラビア版胴の回転に対向する方向に垂らされた、シリンダー側面の汚れ防止用ドクター装置が開示されている。
しかし、特許文献2に記載のシリンダー側面の汚れ防止用ドクター装置では、グラビア版胴の回転により、時間の経過と共に短冊状紙片がインキに濡れることにより、短冊状紙片のグラビア版に対向する下側に付着して溜まったインキがグラビア版胴の両端部に垂れ落ちて、インキがグラビア版胴の側面に回り込むという問題があった。
また、特許文献2に記載のシリンダー側面の汚れ防止用ドクター装置では、グラビア版胴の回転によって、ドクターブレードとグラビア版との摩擦により短冊状紙片が摺り切れてしまうことがあり、その際、短冊状紙片のグラビア版に対向する下側に付着して溜まっていたインキが印刷物を汚してしまう懸念が残るという問題があった。
【0007】
特許文献3には、グラビア版胴の版面の側端部に摺接する狭幅の補助ドクターブレードと、グラビア版胴の側面に摺接する可撓性板状体を備えた、ドクター装置が開示されている。
しかし、特許文献3に記載のドクター装置では、可撓性板状体と補助ドクターとドクターとが、それぞれ別の位置に配設されていて段階的にインキを掻き落とす為、補助ドクターおよび、ドクターに溜まったインキが、徐々に、それぞれの両端部からはみ出し、グラビア版胴の側面に回る場合があるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、グラビア版胴の両端部からのインキ飛沫が基材フィルムを汚損するのを防止し、製品品質を向上させると共に、インキが版胴の側面及び架台に付着するのを防止して、グラビア塗布装置の清掃時間の削減を図ることにより生産性を向上させるグラビア塗布装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、版胴とファニッシャーロールのロール幅の長さにおける物理的な制約条件を緩和して、版胴のロール幅の長さに比べ、圧胴のロール幅の長さが大幅に短くても良いように、版胴の両端部の外周面に、ドクターブレードにより掻き取ったインキの回収機能と、版胴の両端部および、側面へのインキの付着防止機能とを兼ね備える板状部材を配設することを技術思想としている。
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、少なくとも、版胴と圧胴とを有するグラビア塗布装置において、前記版胴のロール幅の長さに比べて、前記圧胴のロール幅の長さが短く、前記版胴の版面に塗布された余分なインキを掻き取るドクターブレードが、前記版胴の版面の幅方向に摺り合わせて配設され、前記ドクターブレードの両端部に、前記ドクターブレードにより掻き取ったインキの回収機能と、前記版胴の幅方向の両端部および、側面部へのインキの付着防止機能とを兼ね備える板状部材を配設したことを特徴とするグラビア塗布装置を提供する。
前記板状部材が、前記ドクターブレードの下面から版胴の回転方向の前方側の一定の距離の範囲内において、前記版胴の中央に近い側の端部の切り込みが引き起こされてなるインキ止め部を有することが好ましい。
前記インキ止め部の上端部は、前記ドクターブレードの下面に密着していることが好ましい。
前記板状部材のインキ止め部が、折り曲げにより上端部が閉じた形状を持ち、その側端部が前記板状部材の上面に密着していることが好ましい。
前記板状部材が、前記版胴と前記圧胴の中心軸を結んだ線が版胴の外周面と交わる交点を基準に、少なくとも角度θとして、−90〜90°の範囲の、前記版胴の外周面且つ幅方向の両端部および側面部を覆ってなることが好ましい。
前記板状部材が、少なくとも外表面が導電性を有する材料からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のグラビア塗布装置によれば、版胴の幅方向の両端部や側面部にインキが付着するのを抑制することにより、従来はそのような箇所に付着したインキが版胴の回転により飛散していたという問題を根本的に解決して、基材フィルムが汚損するのを防止し、製品品質を向上させることができる。また、版胴の側面や架台等に付着した、インキの汚れを落とすための清掃時間が削減され生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるグラビア塗布装置の概略斜視図である。
【図2】図2(a)は、図1のA部の拡大図であって、板状部材の一例を示した概略斜視図である。図2(b)は、図2(a)のS2−S2線の位置での板状部材とインキ止め部の断面図である。
【図3】図1のA部の拡大図であって、板状部材の別の例を示した概略斜視図である。
【図4】図4(a)は、図1のA部をドクターブレードの上から示した上面図である。図4(b)は、図4(a)のS4−S4線の位置での板状部材とドクターブレードの断面図である。
【図5】インキパンに貯蔵されたインキに、ファニッシャーロールが浸漬された状態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、最良の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明によるグラビア塗布装置10において、版胴1とドクターブレード2及び板状部材3との相対位置関係を示した概略斜視図である。版胴1のロール幅の長さLに比べて、圧胴4のロール幅の長さLが短くなっている。版胴1の版面11に塗布された余分なインキ9を掻き取るドクターブレード2が、版胴1の版面11の幅方向に摺り合わせて配設されている。版面11上に付着したインキは版胴1の回転によりドクターブレード2に向かって上方の位置へと搬送される。ドクターブレード2で版胴1の版面11上の余分なインキ9が掻き落とされ、圧胴4が印刷基材フィルム5を介して版胴1に押し当てられることにより、搬送された版面11の型溝に貯蔵されているインキが印刷基材フィルム5に転写される。
板状部材3は、ドクターブレード2の左右の側端部22にそれぞれ1箇所ずつ取り付けられて、版胴1の外周部端部12に接している。
【0014】
図2および図3に示した板状部材3は、図1のA部の拡大図であって、ドクターブレード2の下面21から版胴の回転方向の前方側の一定の距離の範囲内において、版胴1の中央に近い側の端部3aに切り込み31a,31bがあり、前記切り込み31a,31bが引き起こされてなるインキ止め部32,33が、折り曲げにより形成されている。このインキ止め部32,33によって、ドクターブレード2によって掻き取られたインキ9が堰き止められ、ドクターブレード2の側端部22まで移動することを防止する。
また、図5において、版胴1と圧胴4の中心軸1a,4aを結んだ線14が版胴1の外周面と交わる点Pを基準に、少なくとも角度θとして、−90〜90°の範囲の版胴1の外周面端部12及び、側面部13を、板状部材3が覆っている為(図1参照)、インキが圧胴4や印刷基材フィルム5の方向に飛散することを防ぐことができる。
【0015】
板状部材3は、図2および図3に示したように、版胴1の中央に近い側の端部3aに2つの切り込み31a,31bが設けられ、そのうち、ドクターブレード2の側の切り込み31bは、版胴1の端部よりも外側の位置にあるドクターブレード2の側端部22の長さまで延長されて差し込み部34が形成され、この差し込み部34がドクターブレード2に差し込まれている為、図4(a)および図4(b)に示したように版胴1の端部の位置においては、ドクターブレード2を挟んで板状部材3が存在する。これにより、ドクターブレード2を版胴1の軸方向に対して、左右に揺動運動させた際に、版胴1とドクターブレード2との間に板状部材3が咬み込むことを防止している。
ドクターブレード2によって掻き取られたインキは、板状部材3の上記三角柱あるいは平板状の形状の構造を有するインキ止め部32,33によって堰き止められ、板状部材3を伝って落下し、インキパン7に回収される。板状部材3は、掻き取られたインキ9がドクターブレード2の側端部22まで移動してゆくことを止め、版胴1の両端部12や側面部13に付着させずに下方に落下させる機能を有する。インキ止め部の構造は特に制限はなく、四角柱状、円柱状などでも良い。
差し込み部34の幅は、ドクターブレード2の厚み程度またはそれ以下である。板状部材3の材質が紙製基材やプラスチック製シート等のように厚みが薄く、ドクターブレード2を圧入可能な変形性を有する場合、線状の切り込みでも構わない。
【0016】
ドクターブレード2の側端部22は、板状部材3の上でインキ止め部32,33の外側まで延びているので、ドクターブレード2によって掻き取られたインキ9は、ドクターブレード2の刃先に蓄積されてゆき、徐々にドクターブレード2の側端部22に向かうが、板状部材3のインキ止め部32で堰き止められ、インキ9は板状部材3を伝って落下し、インキパン7に戻される。インキ止め部32,33の上端部32a,33aは、ドクターブレード2の下面21に密着していることが望ましいが、1mm以下の小さな隙間であれば、インキ9がドクターブレード2の側端部22に流れてゆくことが無い。
図2(a)および図2(b)に示すように、板状部材3のインキ止め部32が、三角柱状、四角柱状、円柱状など、折り曲げにより上端部32aが閉じた形状を持ち、インキ止め部32の側端部32bが板状部材3の上面3cに密着している場合、上端部32aとドクターブレード2の間から若干のインキが外方に漏れたとしても、板状部材3の上面3cに密着した側端部32bによりインキが外方へ移動しないように堰き止め、内部32cを通して下方にインキを流し、回収することができるので、好ましい。
【0017】
板状部材3の材質は、特に制限はなく、木材製薄板、紙製基材、プラスチック製シート、金属薄板、及びそれらの積層材などが使用できる。また、板状部材3は、水性のグラビアインキの場合に水分に接触しても腐食しないように耐食性を有するものであることが好ましい。また、板状部材3は、帯電してゴミ、ダストなどが付着しないように、及び可燃性インキの場合に帯電によるスパークにより発火しないように、導電性を有するものであることが好ましい。また、板状部材3が、導電性を有しない材質である場合には、例えば、板状部材3の表面に金属箔を積層しても良く、あるいは、金属メッキ層を積層しても良い。
【0018】
板状部材3の材質は、具体的には、機械的な強度と耐食性の観点から、ステンレス、アルミニウム、ニッケルなどの金属薄板、鉄鋼などの金属薄板にニッケルメッキ、クロムメッキ、ニッケル−クロムなどの耐食性の金属メッキ層を積層したものであることが好ましい。本発明では、板状部材3の材質として、薄紙に金属箔を積層したものが、好適に使用できる。また、板状部材3の縦横の寸法は、版胴1及び圧胴4の外径寸法に応じて適宜、決定することが好ましい。板状部材3の幅は、内側の端部3aは圧胴4の側面41から0.1〜0.5cmの距離が好ましく、外側の端部3bは、版胴1の側面13から1〜5cmの距離が好ましい。板状部材3の内側の端部3aを、圧胴4に接触しない範囲で出来るだけ近づけることにより、板状部材3と版胴1の重なる面積が増え、板状部材3が版胴1に支えられやすくなり、ドクターブレード2への板状部材3の固定が容易となる。ドクターブレード2へ板状部材3を固定する方法は特に限定されず、例えば粘着テープでドクターブレード2の背面と板状部材3の上面を貼り付ける方法が挙げられる。
板状部材3の外側の端部3bは、版胴1の側面部13にインキが付着せず、かつインキの飛沫が圧胴4の方向に飛ばない範囲で出来るだけ短い方が好ましい。板状部材3が長すぎると板状部材3の重心が外側寄りとなり、板状部材3が版胴1から浮き上がったり、外れてしまう可能性があるので好ましくない。
また、板状部材3に、金属薄板を使用した場合の厚みは、金属板の材質によって機械的な強度を考慮して決める必要があるが、一般的な厚みは、0.1mm〜5mm程度である。
【0019】
図5は、インキパン7に貯蔵されたインキ8に、ファニッシャーロール6が浸漬された状態を示す概略側面図である。版胴1とファニッシャーロール6の中心軸1a,6aを結ぶ直線16が、版胴1及びファニッシャーロール6の外周と交わる点が、版胴1とファニッシャーロール6とが最も接近している箇所Qである。インキパン7に貯蔵されたインキ8は、ファニッシャーロール6の回転に伴って、ファニッシャーロール6の外周表面に付着した状態で汲み上げられ、版胴1とファニッシャーロール6とが最も接近している箇所Qまで移動して、インキ溜まり15を形成する。インキ溜まり15部分を通過し、版胴1に余分に付着したインキはドクターブレード2により掻き取られる。ドクターブレード2に溜まった、掻き取られたインキ9は、版胴1の幅方向に広がってゆくが、板状部材3のインキ止め部32に堰き止められ、板状部材3を伝って下方に落下し、インキパン7に回収される。
図5において、版胴1と圧胴4の中心軸1a,4aを結んだ線14が版胴1の外周面と交わる点Pを基準に、少なくとも角度θとして、回転方向の前方側θ及び後方側θのそれぞれで、−90〜90°の範囲が板状部材3に覆われている必要がある。回転方向の前方側の角度θは、板状部材3の下端がインキパン7に達するまで延長することができる。回転方向の後方側の角度θは、板状部材3がファニッシャーロール6の動作を妨げない位置まで延長することができる。版胴1の中心軸1aより低い位置では、板状部材3を版面11から離して、垂下させてもよい。
【0020】
(版胴)
版胴1の表面には、微細線パターンの型溝が形成されたグラビア版が設けられている。微細線パターンは、文字、記号、図形、及びそれらの組み合わせなどであって、用途に応じて特定のパターンが用いられる。
グラビア版は鉄製のシリンダーからできており、表面に銅メッキを施し、このメッキ銅の表面に目的のデザインパターンをダイヤモンドシングルヘッドの電子彫刻機で型溝を形成する。また、ドクターブレード2の刃2aが版胴1の表面に配設されたグラビア版に押し当てられており、グラビア版の表面に形成された型溝の中にグラビアインキが圧入される。グラビアインキは、図5に示すようにインキパン7に貯蔵されたインキ8をファニッシャーロール6の表面に付着させて汲み上げることにより供給される。
グラビア版は、版胴1の表面に形成されており、該グラビア版の型溝は、基材フィルムに転写される微細線パターンに対応したパターンにて形成されている。型溝に圧入されたグラビアインキは、印刷基材フィルム5と接触した際に印刷基材フィルム5へ転写される。
【0021】
(グラビアインキ)
本明細書において記載されているグラビアインキ又はインキとは、グラビア塗布装置を使用して基材に塗布(コーティング)される、広義の意味での塗料(インキ)を総称するものである。具体的には、色素または顔料を樹脂組成物に混ぜ合わせた塗料、溶剤に溶解させた粘着剤組成物からなる塗料、接着剤組成物からなる塗料、合成樹脂組成物からなる塗料、金属酸化物化合物を樹脂組成物に混ぜ合わせた塗料など、各種用途に使用される様々な塗料を総称して、本明細書においては、グラビアインキまたはインキと呼ぶ。
例えば、基材フィルムの表面に導電性回路を形成するために、グラビアインキとして導電性ペーストを用いる場合は、通常は導電性フィラーをバインダーとなる樹脂成分に混ぜ込んだ導電性ペーストが塗料として用いられる。導電性ペーストとしては、導電性金属粒子、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーからなる導電性フィラー群の中から選択された1つ以上が含有されているものが好ましい。導電性金属粒子としては、銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の金属粉が用いられるが、導電性、価格の点から銅または銀の微粉末を用いるのが好ましい。また、導電性を有するカーボンナノ粒子であるカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーも使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明により、少なくとも版胴と、圧胴とを有するグラビア塗布装置において、ドクターブレードに沿って幅方向の端部側に移動するインキを下方に誘導する板状部材を配設したので、前記版胴のロール幅の長さに比べて、前記圧胴のロール幅の長さが短い場合においても、版胴の幅方向の両端部にインキが付着するのを防止し、また、インキ飛沫が、基材フィルムを汚損するのを防止し、製品品質が向上すると共に、インキが版胴の側面及び架台に付着することを防止して、グラビア塗布装置の清掃時間の削減を図ることにより生産性が向上したグラビア塗布装置が提供される。
【符号の説明】
【0023】
…版胴のロール幅の長さ、L…圧胴のロール幅の長さ、1…版胴、2…ドクターブレード、3…板状部材、4…圧胴、5…印刷基材フィルム、6…ファニッシャーロール、7…インキパン、8…インキ、10…グラビア塗布装置、11…版面、12…版胴の幅方向の両端部、13…版胴の側面部、21…ドクターブレードの下面、31a,31b…切り込み、32,33…インキ止め部、32a,33a…インキ止め部の上端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、版胴と圧胴とを有するグラビア塗布装置において、前記版胴のロール幅の長さに比べて、前記圧胴のロール幅の長さが短く、前記版胴の版面に塗布された余分なインキを掻き取るドクターブレードが、前記版胴の版面の幅方向に摺り合わせて配設され、前記ドクターブレードの両端部に、前記ドクターブレードにより掻き取ったインキの回収機能と、前記版胴の幅方向の両端部および、側面部へのインキの付着防止機能とを兼ね備える板状部材を配設したことを特徴とするグラビア塗布装置。
【請求項2】
前記板状部材が、前記ドクターブレードの下面から版胴の回転方向の前方側の一定の距離の範囲内において、前記版胴の中央に近い側の端部の切り込みが引き起こされてなるインキ止め部を有することを特徴とする請求項1に記載のグラビア塗布装置。
【請求項3】
前記インキ止め部の上端部は、前記ドクターブレードの下面に密着していることを特徴とする請求項2に記載のグラビア塗布装置。
【請求項4】
前記板状部材のインキ止め部が、折り曲げにより上端部が閉じた形状を持ち、その側端部が前記板状部材の上面に密着していることを特徴とする請求項2または3に記載のグラビア塗布装置。
【請求項5】
前記板状部材が、前記版胴と前記圧胴の中心軸を結んだ線が版胴の外周面と交わる交点を基準に、少なくとも角度θとして、−90〜90°の範囲の、前記版胴の外周面且つ幅方向の両端部および側面部を覆ってなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のグラビア塗布装置。
【請求項6】
前記板状部材が、少なくとも外表面が導電性を有する材料からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のグラビア塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−171240(P2012−171240A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36078(P2011−36078)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【出願人】(000110930)フジモリプラケミカル株式会社 (2)
【Fターム(参考)】