説明

グラフェン構造体、グラフェン構造体の製造方法、及び電子デバイス

【課題】グラフェンを高精度でパターニングすることができ、これにより、グラフェンを用いた電子デバイス要素及び電子デバイスの精細加工が可能であり、製造コストを格段に低減することが可能なグラフェン構造体及びその製造方法等を提供する。
【解決手段】基板上にレジスト膜を精度よくパターニングし、そのレジスト膜の開口内に親水化膜を形成した後、GOが親水性を有することを利用して、親水化膜の部分にのみ、GOを選択的に化学的に結合させて固定化し、更にそのGOを還元して親水化膜の部分にのみグラフェンが選択的に固定化されたグラフェン構造体を得る。このように、グラフェン構造体は、基板上にグラフェンが設けられてなり、且つ、基板における親水処理の部位とグラフェン、及び/又は、基板における疎水処理の部位以外の部位とグラフェンとの間に、親水処理による結合が形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グラフェン構造体、グラフェン構造体の製造方法、グラフェン電極、並びに、電子デバイス要素(電子部品の単体要素を含む)及び電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
グラファイト、同素体や他の炭素質材料の基本的な単位構造であるグラフェン(graphene)は、グラファイトの層構造が剥離されて厚さが原子一個分しかない単一層となったもの、換言すれば、炭素原子がsp2結合で一原子の厚さ分で連続的にシート状に形成された六角形格子構造を有するものである。このように、グラフェンは、炭素原子の単層で形成されており、その厚さは極めて薄く、よって、グラフェンを用いることにより透明な導電経路を形成し得る可能性があり、しかも、グラフェン中のホールの移動度が同等であって金属と半導体の両方の性質を有することから、高速トランジスタや太陽電池等の種々の電子デバイスにおける導体膜(層)や透明電極といった各種電子デバイス要素等として、様々な用途への応用が期待されている。
【0003】
ところで、このようなグラフェンの製造方法としては、例えば、特許文献1乃至3に記載されたような方法が提案されているが、一般的には、入手可能なグラファイトから、その層構造を機械的又は化学的に剥離して単層化したもの(例えば、フレーク状のもの)を作製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−335532号公報
【特許文献2】特開2009−200177号公報
【特許文献3】特開2009−143761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、グラフェンを上述したような種々の用途の電子デバイスに用いるためには、例えばフレーク状のグラフェン(片)を、用途に応じて、高精度でパターニングする必要があるが、現実的には、所定の基板上の所望の位置に所望の量のグラフェンを固定することは、極めて困難であり、これまでのところ、例えば、適当な基板上の不特定の部位にグラフェン片を固定した後に、結果として大きさや形状やパターン等が適切に配置固定されたグラフェン片の部位を後から選別して加工に供するといった後手的な手法を取らざるを得ないのが現状であった。また、このようにグラフェンのパターニングを所望に制御できないので、製造コストが増大してしまうという問題もあった。
【0006】
そこで、グラフェンを高精度でパターニングすることができ、これにより、グラフェンを用いた電極等の電子デバイス要素(電子部品の単体要素を含む)及びそれを含む種々の電子デバイスの精細加工が可能であり、しかも、製造コストを格段に低減することが可能なグラフェン構造体、グラフェン構造体の製造方法、グラフェン電極、並びに、電子デバイス要素及び電子デバイスを提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示によるグラフェン構造体は、基板(上)にグラフェンが設けられてなり、その基板において親水処理(親水性化処理)された部位とグラフェンとの間、又は、その基板において疎水処理(疎水性化処理)が施されていない部位とグラフェンとの間に結合が形成されたものである。なお、「基板」は、板状に制限されず、グラフェンが固定され得るものであれば、どのような形状の基体であっても構わない。
【0008】
通常、例えばフレーク状のグラフェン片の炭素原子の一部は、酸化されていたり、水酸基やカルボキシル基といった親水性を有する種々の官能基で修飾されたりしており、本発明者の知見によれば、特に、グラフェン片の最周縁(エッジ部分)に位置する炭素原子にこれらの官能基が結合されていることが多い。そして、これらの官能基の化学的性質によって、グラフェン(片)自体が親水性を発現し得るので、上述の如く、そのようなグラフェンが設けられる(固定されるべき)基板とそのグラフェンとの間(例えば、基板の表面上)に親水処理がなされていれば、両者の結合は強固なものとなる。
【0009】
一方、基板に疎水処理が施されている場合には、基板において疎水処理が施されている部位では、後述するようなグラフェンの分散水溶液に対する濡れ性が低く(接触角が大きく)、その分散水溶液が言わばはじかれてしまい、及び/又は、上述の如く、グラフェン(片)自体が親水性を有し得るので、グラフェンは、基板において疎水処理が施されていない部位と親和し易くなる傾向にある。この場合、基板又はその表面に酸化物(層、膜)が形成されていたり(Si/SiO2基板等)、例えば基板がSi等の一般的な半導体基板である場合には、非乾燥条件下では表面に水酸基等が形成されていたりすることにより、その表面の濡れ性が高く(接触角が小さく)、グラフェンの分散水溶液が拡散し易く、また、グラフェンに形成された親水性を有する官能基と化学的な結合を生じ易くなる。
【0010】
そして、本発明者の知見によれば、(1)基板の所定の部位に親水処理のみを施した場合、(2)基板の所定の部位に疎水処理のみを施した場合、及び(3)基板の所定の部位に親水処理を施し且つ基板の所定の部位に疎水処理を施した場合のうち、基板における親水処理を施した部位又は基板における疎水処理を施していない部位にグラフェンを結合・固定させる選択性は、(1)<(2)<(3)の順に向上されることが確認された。すなわち、(1)乃至(3)のうち、(3)の場合に、グラフェンを所望の位置(基板を親水処理した部位)に最も選択的に固定させ易くなる。
【0011】
また、かかる親水処理としては、グラフェンに結合された水酸基やカルボキシル基といった官能基との結合を形成するものを用いることができ、また、かかる疎水処理としても、一般的な撥水処理等を用いることができるので、いずれの処理においても一般に知られている適宜の手法を適用し得る。そして、そのような親水処理及び/又は疎水処理を施す部位のパターニングは高精度で行うことができるので、そのように高精度でパターニングされた部位に、グラフェンを選択的に固定することが可能となり、その結果、グラフェンを基板上に高精度で且つ低コストでパターニングすることを実現できる。
【0012】
さらに、従来は、基板上にグラフェンを高精度でパターニングし難い(制御困難な)ばかりか、所望の位置にグラフェンを固定できなかったので、当然ながら、グラフェン膜の大面積化、すなわちグラフェンのドメインサイズ(連続膜の大きさ)を十分に増大させ難かったのに対し、上述した親水処理は、基板上の大面積に対しても簡便に施すことができるので、ドメインサイズが大きい大面積のグラフェン膜(のパターン)を簡易に形成することも可能となる。またさらに、基板とグラフェンとが結合・固定(特に、基板が親水処理されている場合に強固である。)されているので、グラフェンを基板上にパターニングするための処理として、高温処理が不要であり、換言すれば、低温でグラフェンのパターニングを行うことができるので、この点においても、製造効率及び経済性を向上させることができ、且つ、基板及びグラフェンへの入熱量を抑制することにより、グラフェン構造体の劣化を抑止してその信頼性をも高めることができる。
【0013】
また、基板とグラフェンとの「結合」が、基板上に形成された第1の官能基と、グラフェンに形成(結合)された第2の官能基との結合であってもよい。
【0014】
この際、基板における第1の官能基が電子受容性官能基であり、且つ、グラフェンにおける第2の官能基が電子供与性官能基である、或いは、逆に、基板における第1の官能基が電子供与性官能基であり、且つ、グラフェンにおける第2の官能基が電子受容性官能基であれば、基板とグラフェンとの「結合」を形成し易い傾向にある。
【0015】
また、電子受容性官能基としては、特に制限されないが、例えば窒素原子を含有する基が挙げられ、電子供与性官能基としも、特に制限されないが、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホ基等が挙げられる。
【0016】
さらに、一例として、窒素原子を含有する基は、アミノ基であってもよい。
【0017】
またさらに、基板が、例えば、Si基板(表面にSiOやSiO2等の自然酸化膜が形成され易いもの、それらが形成されたもの)や他の酸化物基板といった表面にシラン結合が形成され得るものであり、このとき、第1の官能基が、そのシラン結合を含む分子鎖を介して基板に結合されたものであってもよい。この場合、基板の表面上に、第1の官能基を分子中に含む親水処理剤、例えば、第1の官能基を分子中に含む、シランカップリング化合物、自己組織化単分子膜(SAM:Self-assembled Monolayer)を形成し得る自己組織化単分子、又は、高分子化合物等を含む試薬剤を塗布・定着させるようにしてもよい。または、基板にシラン結合を形成させることなく、例えば、基板に酸素(O2)プラズマによるプラズマ処理を施して形成されるもの(例えば、水酸基や他の化学的活性種)であってもよい。
【0018】
或いは、基板が、表面に金属原子を有しており且つその表面に硫黄原子を含む基と金属原子との結合を形成するものであり、このとき、第1の官能基が、硫黄原子を含む基と金属原子との結合を含む分子鎖を介して基板に結合されたものであってもよい。この場合、基板の本体は、Si、SiO2、SiO2/Si、サファイア、GaAs、ステンレス等の金属導体、ガラスやセラミックス等の絶縁体等の種々の材料で形成されていてよく、その表面に、金、銀、銅、白金、パラジウム、水銀等の金属原子の膜、又は、それらを含む膜が形成されていれば、硫黄原子を含む基としてのチオール基、スルフィド基、ジスルフィド基等を分子中に含み且つ第1の官能基も同じ分子中に含む自己組織化単分子膜(SAM)形成剤を、その金属膜が形成された基板の表面に塗布するようにしてもよい。
【0019】
また、以上のことから、本開示によるグラフェン構造体は、基板(上)にグラフェンが設けられてなり、基板において親水処理が施された部位とグラフェンとの間、又は、基板において疎水処理が施されていない部位とグラフェンとの間に結合が形成されており、その結合が、基板(上)に形成され且つシランカップリング化合物、自己組織化単分子、又は、高分子化合物の一部を構成する第1の官能基としてのアミノ基と、グラフェンに形成(結合)された第2の官能基としての水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、又は、スルホ基との結合であり、基板は、表面にシラン結合が形成されるもの、又は、表面に金属原子としての金、銀、銅、白金、パラジウム、又は、水銀の原子を有しており且つ該表面に硫黄原子を含む基としてのチオール基、スルフィド基、又は、ジスルフィド基と該金属原子との結合が形成されるものであり、第1の官能基は、シラン結合を含む分子鎖を介して基板に結合されたもの、又は、硫黄原子を含む基と金属原子との結合を含む分子鎖を介して基板に結合されたものである、と表現してもよい。
【0020】
また、本開示によるグラフェン構造体の製造方法は、本開示によるグラフェン構造体を有効に製造できる手法であり、基板を用意すること、基板に親水処理及び/又は疎水処理を施すこと、基板における親水処理が施された部位にグラフェンを設ける(固定、固着、又は定着させる)ことを含む。
【0021】
ここで、親水処理としては、基板におけるその親水処理を施す部位に親水処理剤を塗布又は定着させることにより親水性を有する膜を形成し、又は、酸素(O2)プラズマによるプラズマ処理を施し(例えば、基板の表面上に水酸基を形成し得る。)、疎水処理としては、基板におけるその疎水処理を施す部位に疎水処理剤を塗布又は定着させることにより疎水性を有する膜を形成するようにしてもよい。
【0022】
また、その場合、親水性を有する膜が、シランカップリング化合物膜、自己組織化単分子膜(SAM)、又は、高分子化合物膜であり、疎水性を有する膜が、シランカップリング化合物膜、自己組織化単分子膜、高分子化合物膜、又は、ハロゲン化物膜であってもよい。このとき、親水性を有する膜として、窒素原子を含有する基であるアミノ基を含むものを用いることができる。
【0023】
ここで、基板に親水処理を施す前に、疎水処理として基板に所定のパターンを有するレジスト(疎水性高分子化合物膜として機能する)を形成すること、及び、親水処理が施された基板からレジストを除去することを含んでもよく、この場合、親水処理においては、レジストのパターンから露呈した基板の表面上にその親水処理を施すようにしてもよい。なお、レジストの除去は、基板の表面上にグラフェンが設けられる前でも後でもよい。
【0024】
さらに、基板に設けられたグラフェン(片)は、その分子の一部が酸化されたグラフェン酸化物の形態で存在することがあり(このとき、「グラフェン」はグラフェン酸化物を包含する概念である。)、この場合に、基板に設けられた(固定された)そのグラフェン(酸化物)を還元することにより、基板に設けたグラフェンの導電性を更に向上させることができる傾向にある。なお、還元処理は、一つの条件下で行ってもよく、連続的に又は断続的に複数の条件下で行ってもよい。
【0025】
またさらに、基板上に設けられたグラフェンに接続された電極を形成することを含んでもよい。
【0026】
また、以上のことから、本開示によるグラフェン構造体の製造方法は、基板を用意すること、基板の所定の部位上に、アミノ基を含む親水性を有する膜として、シランカップリング化合物膜、自己組織化単分子膜(SAM)、若しくは、高分子化合物膜を形成すること、又は、酸素(O2)プラズマによるプラズマ処理を施すことにより親水処理を施すこと、基板の所定の部位に、パターンを有するレジスト又はハロゲン化物を形成することにより疎水処理を施すこと、レジスト又はハロゲン化物のパターンから露呈した基板の表面上にグラフェンを設けること、親水処理が施された基板からレジスト又はハロゲン化物を除去すること、基板の表面上に設けられたグラフェンを還元すること、基板の表面上に設けられたグラフェンに接続された電極を形成することを含む方法である、と表現してもよい。
【0027】
或いは、本開示によるグラフェン構造体は、基板を用意すること、基板の所定の部位に親水処理及び/又は疎水処理を施すこと、基板における親水処理が施された部位にグラフェンを設ける(固定させる)こと、及び/又は、基板における疎水処理が施されていない部位にグラフェンを設ける(固定させる)ことにより製造されたもの、と表現することもできる。
【0028】
また、本開示による電子デバイス要素(電子部品要素を含む)及び電子デバイスは、基板上にグラフェンが設けられて(固定されて)なり、且つ、基板にいて親水処理が施された部位とグラフェンとの間、又は、基板において疎水処理が施されていない部位とグラフェンとの間に結合が形成されたものであるグラフェン構造体で形成された導体又は半導体を有し、一例として、グラフェン構造体を導体膜(層)や透明電極として用いたトランジスタ、太陽電池(装置)等が挙げられ、特に、本開示によるグラフェン構造体は、低コストで大面積の太陽電池の電極として有効であり、また、FETトランジスタ等を印刷法で形成したり、透明TFTアレイ等の用途にも有用であり、さらに、高感度な磁気センサーへの応用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本開示によるグラフェン構造体の製造に用いられるグラフェン酸化物の構造を模式的に示す平面図である。
【図2A】本開示によるグラフェン構造体の製造方法の一例により、本開示によるグラフェン構造体及び電子デバイス要素(電子デバイス)を製造している手順の一例を示す工程図である。
【図2B】本開示によるグラフェン構造体の製造方法の一例により、本開示によるグラフェン構造体及び電子デバイス要素(電子デバイス)を製造している手順の一例を示す工程図である。
【図2C】本開示によるグラフェン構造体の製造方法の一例により、本開示によるグラフェン構造体及び電子デバイス要素(電子デバイス)を製造している手順の一例を示す工程図である。
【図2D】本開示によるグラフェン構造体の製造方法の一例により、本開示によるグラフェン構造体及び電子デバイス要素(電子デバイス)を製造している手順の一例を示す工程図である。
【図2E】本開示によるグラフェン構造体の製造方法の一例により、本開示によるグラフェン構造体及び電子デバイス要素(電子デバイス)を製造している手順の一例を示す工程図である。
【図3A】図2Bに示すSiO2/Si基板10上にGO1が固定化された状態を化学的に模式化して示す側面図である。
【図3B】図2Dに示すSiO2/Si基板10上にグラフェン2が固定化された状態のグラフェン構造体20を化学的に模式化して示す側面図である。
【図4】本開示による電子デバイスの一例としての太陽電池100の構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。さらに、本開示は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0031】
図1は、本開示によるグラフェン構造体の製造に用いられるグラフェン酸化物(酸化グラフェン、GO:graphene oxide)の構造(分子構造)を模式的に示す平面図である。
【0032】
このGO1は、天然グラファイト粉末から改良型Hummer’s法(V. C. Tung, M. J. Allen, Y. Yang, et al., Nature Nanotech., 4, 25(2009)を用いて、以下のとおり、作製(調製)することができる。すなわち、まず、天然グラファイト粉末(SEC社製カーボン)を酸化してグラファイト酸化物(酸化グラファイト)を作製し、それを例えば水中において、超音波処理(例えば、出力100W、60℃、1時間の条件下)することにより、グラファイト酸化物の単層を剥離し、単層のGOのフレークが水中に安定的に分散されたGO分散水溶液を得た。このGO分散水溶液をSiO2/Si基板(Si基板表面にSiO2が形成されたもの)上に滴下し、光学顕微鏡で観察したところ、GOフレークが、約50μm×約50μmの大きさで、且つ、数層の原子層の厚さで存在していることが確認された。さらに、本発明者が、そのGOフレークの実際の厚さ(原子層の層数)を、ラマン分光装置を用いて測定評価したところ、ラマンシフトスペクトルにおいて、グラファイトではなく単層のGOと多層のGOの構造に相当するピークを確認することができ、これにより、得られたGO分散水溶液中には、単層又は多層のGOが有意に存在することが確認された。なお、GOの大きさや層数は、上述した値に制限されない。
【0033】
図1に示す如く、GO1を構成する炭素原子の一部は、酸化されていたり、水酸基(−OH)やカルボキシル基(−COOH)といった親水性を有する種々の官能基(第2の官能基)で修飾されており、特に、GO1の最周縁(エッジ部分)に位置する炭素原子にこれらの官能基が結合されていることが多い。そして、これらの官能基の化学的性質によって、GO1自体に、親水性が発現される。
【0034】
図2A乃至図2Eは、それぞれ、本開示によるグラフェン構造体の製造方法の一例により、本開示によるグラフェン構造体及び電子デバイス要素(又は電子デバイス)を製造している手順の一例を示す工程図(上面図又は平面図)である。
【0035】
ここでは、まず、基板としてSiO2/Si基板10(Si基板表面に意図的に又は自然にSiO2層が形成されたもの;SiO2層にSiOが含まれる場合、又は、SiO2層に代えてSiO層が形成される場合もある。)を準備する。次に、このSiO2/Si基板10上に、矩形の開口Pのアレイを有するレジスト膜11を、スピンコート等による塗布及びフォトリソグラフィを用いてパターニングする(疎水処理)。レジスト膜11の開口Pにおいては、SiO2/Si基板10の表面が露呈(露出)している(図2A)。
【0036】
なお、SiO2/Si基板10の表面の酸化物は、気中の水分を吸収することによって水素原子との結合(水素結合:これにより、表面上に水酸基が形成され得る。)を形成する傾向にあるので、レジスト膜の塗布に先立って、SiO2/Si基板10を脱水・乾燥(dehydrate)した後、その表面上にレジスト膜11を塗布するためのプライマーとしてヘキサメチルジンラザン(HMDS:Hexamethyldisilazane)等の接着助剤(密着性向上塗布剤)を下塗りすると有用である。また、このHMDS等の接着助剤は、疎水処理によりSiO2/Si基板10の表面エネルギーを低下させる機能を有しており、レジスト膜11を形成することなく、接着助剤膜のみをパターニング形成してもよい。さらに、レジスト膜11及び/又は接着助剤膜に代えて、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のC−F結合を含むフッ素含有ポリマー(ハロゲン化物)からなる膜(ハロゲン化物膜)を用いても、疎水処理として有効である。
【0037】
それから、レジスト膜11の開口P内に露呈しているSiO2/Si基板10の表面に、親水処理を行い、親水化膜12を形成する(図2B)。そのための親水処理としては、種々の方法を用いることができる。
【0038】
すなわち、SiO2/Si基板10の例で言えば、レジスト膜が形成された図2Aに示す状態のSiO2/Si基板10上に、アミノ基等の電子受容性官能基(第1の官能基)を有するシランカップリング剤(親水処理剤)を塗布する(シランカップリング化合物膜の形成)。かかるシランカップリング剤の種類としては、特に制限されないが、広義には、そのような第1の官能基を有する有機物とSiO2/Si基板10上の酸化物と結合するケイ素から構成される化合物であり、具体的には、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(3-Aminopropyltriethoxysilane)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(3-Aminopropyltrimethoxysilane)、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(3-(2-Aminoethyl)-aminopropyltrimethoxysilane)、3−(2−アミノメチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(3-(2-Aminomethyl)aminopropyltrimethoxysilane)、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジトリメトキシシラン(3-(2-Aminoethyl)aminopropylmethylditrimethoxysilane)、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(3-(Phenylamino)propyltrimethoxysilane)等のアミノ基を有するアルコキシシラン(アミノ化シランカップリング剤)等が挙げられる。また、かかるシランカップリング剤のうち自己組織化単分子膜(SAM)を形成し得るものを用いることもできる。なお、上述したアミノ基を有するアルコキシシラン等のシランカップリング剤も、SAM形成剤のひとつと言うこともできる。
【0039】
また、SiO2/Si基板10の表面上に、予め、金、銀、銅、白金、パラジウム、水銀等の金属原子の膜、又は、それらを含む膜を形成しておけば、硫黄原子を含む基としてのチオール基、スルフィド基、ジスルフィド基等を分子中に含み、且つ、上述した第1の官能基も同じ分子中に含むSAM形成剤(親水処理剤)を、レジスト膜が形成された図2Aに示す状態のSiO2/Si基板10上に塗布することもできる(SAMの形成)。このようなSAM形成剤としては、例えば、種々のチオール、スルフィド、ジスルフィド試薬等が挙げられる。この場合、基板はSiO2/Si基板10に限定されず、例えば、サファイア、GaAs、ステンレス等の金属導体、ガラスやセラミックス等の絶縁体等からなる基板であってもよい。
【0040】
このようにシランカップリング剤やSAM形成剤等を塗布する方法としては、特に制限されず、例えば、上述した3−アミノプロピルトリエトキシシランの0.05%溶液に、図2Aに示す状態のSiO2/Si基板10を15分程浸漬したりディップコートしたりする方法が挙げられる。これにより、レジスト膜11の開口P内に露呈しているSiO2/Si基板10の表面上には、シランカップリング剤分子の一方端がシランカップリング(シラン結合)し、その分子の他方端にアミノ基(第1の官能基)が配置されるので、開口P内のSiO2/Si基板10の表面が親水性を有するようになる。このとき、レジスト膜11や上述した接着助剤膜やハロゲン化物膜は疎水性を有するので、それらのレジスト膜11等には、親水処理剤やSAM剤が結合し難いので、レジスト膜11の表面は親水処理されない傾向にある。
【0041】
或いは、SiO2/Si基板10の表面上に、予め、酸素(O2)プラズマ等を用いたプラズマ処理を施しておいてもよい。この場合、SiO2/Si基板10の表面上には、水酸基(−OH)が第1の官能基として形成され得る。
【0042】
次に、レジスト膜11の開口P内に親水化膜12が形成された図2Bに示すSiO2/Si基板10上に、先に調製したGO分散水溶液を塗布する。このときの塗布方法も特に制限されず、例えば、適宜の濃度でGOを含むGO分散水溶液に、図2Bに示す状態のSiO2/Si基板10を所定時間浸漬したりディップコートしたりする方法が挙げられる。これにより、親水化膜12が形成されたSiO2/Si基板10上の部位(レジスト膜11の開口P内の部位)の表面上のアミノ基(電子受容性官能基、第1の官能基)に、図1に示すGO1の表面に結合されたカルボキシル基(電子供与性官能基、第2の官能基)が親和・結合し、レジスト膜11の開口P内の部位に、GO1が選択的に固定化される(図2C)。すなわち、SiO2/Si基板10とGO1との間に親水処理による(親水処理に起因する)結合が形成される。
【0043】
ここで、図3Aは、図2Bに示すSiO2/Si基板10上にGO1が固定化された状態を化学的に模式化して示す側面図(又は断面図)である。このように、GO1は、その表面のカルボキシル基が親水化膜12の分子末端のアミノ基に化学結合することにより、強固に固定され得る。
【0044】
次いで、GO1が選択的にレジスト膜11の開口P内に固定化された図2Cに示す状態SiO2/Si基板10から、レジスト膜11を適宜の方法(例えば、アセトン洗浄+水洗)で除去した後、そのSiO2/Si基板10に還元処理を施し、GO1をグラフェン2へと還元することにより、SiO2/Si基板10上にグラフェン2が選択的に固定されたグラフェン構造体20を得る(図2D)。このときの還元処理としては、特に制限されず、例えば、まず、そのSiO2/Si基板10を、所定濃度のヒドラジン蒸気を含む還元雰囲気下に所定時間放置して気相還元を行い、さらに、そのSiO2/Si基板10を所定温度で所定時間加熱することにより加熱還元を行う例が挙げられる。なお、レジスト膜11の除去は、GO分散水溶液の塗布前に行ってもよい。
【0045】
ここで、図3Bは、図2Dに示すSiO2/Si基板10上にグラフェン2が固定化された状態のグラフェン構造体20を化学的に模式化して示す側面図(又は断面図)である。このように、図3Aに示す状態のGO1がグラフェン2に還元されることにより、グラフェン2の表面のカルボキシル基が親水化膜12の分子末端のアミノ基に化学結合して強固に固定された状態が保持される。
【0046】
そして、グラフェン2が所定部位に選択的に固定された図2Dに示す状態のSiO2/Si基板10上に、それぞれのグラフェン2に接続されるように例えばTi/Auからなる端子電極Eを形成する(図2E:図示においては、端子電極Eの対を形成する場合を例示した。)。この端子電極Eを電源Gに接続することにより、グラフェン2を透明電極(電子デバイス要素)として機能させることができる電子デバイス30が実現される。
【0047】
このように構成されたグラフェン構造体20及び電子デバイス30並びにそれらの製造方法によれば、SiO2/Si基板10上にレジスト膜11を精度よくパターニングでき、そのレジスト膜11の開口P内に親水化膜12を形成するので、親水化膜12のパターニング精度も極めて高くすることができる。そして、GO1が親水性を有することを利用して、親水化膜12が形成された部分にのみ、GO1を選択的に化学的に結合させて固定化した後、GO1を還元して親水化膜12の部分にのみグラフェン2を選択的に固定化することが可能となる。したがって、SiO2/Si基板10上にグラフェン2を高精度で且つ簡便にパターニングすることができ、これにより、グラフェン2を用いた透明電極等の電子デバイス要素(電子部品の単体要素)及びそれを含む種々の電子デバイスの精細加工が可能となり、しかも、製造コストを格段に低減することができる。
【0048】
また、SiO2/Si基板10上には、大面積の親水化膜12を簡易に形成し得るので、そこにグラフェン2を選択的に且つ安定に固定化することができ、その結果、従来は困難であったドメインサイズが大きい大面積のグラフェン2の膜パターンを簡易に形成することが可能となる。よって、そのような大面積のグラフェン2膜で透明電極を構成することにより、例えば、低コストで大面積の太陽電池等を実現することができる。
【0049】
ここで、図4は、本開示による電子デバイスの一例としての太陽電池100の構成を概略的に示す断面図である。太陽電池100は、ステンレス等の金属導体やガラスやセラミックス等の絶縁体等からなる基板110上に形成された例えば上述したグラフェン2の膜からなる透明(透光性を有する)電極120a上に、光電効果を有する太陽電池素子130が形成され、更にその上に例えば上述したグラフェン2の膜からなる透明電極120bが形成されたものであり、その全体が透光性を有する樹脂等の保護体140で覆われている。なお、太陽電池100は、各透明電極120a,120b及び太陽電池素子130を同一層において複数の素子に分離形成し、それらを互いに直列に接続した集積型の構成を有していてもよい。また、基板110及びその上に形成された透明電極120a、及び太陽電池素子130及びその上に形成された透明電極120bは、本開示によるグラフェン構造体及び電子デバイス要素に相当する。
【0050】
この太陽電池100の透明電極120aは、例えば、上述したグラフェン構造体20を形成するのと同様に、基板110上の所定領域に形成した親水化膜12上に選択的に結合させたGO1を還元することにより簡易に且つ大面積で形成することができる。また、透明電極120bは、基板110上に透明電極120aを形成したのと同様に、太陽電池素子130上の所定領域に形成した親水化膜12上に選択的に結合させたGO1を還元することにより簡易に且つ大面積で形成することができる。
【0051】
また、太陽電池素子130としては、光電効果を呈するものであれば特に限定されず、例えば、シリコン系のもの、化合物半導体系のもの、有機系半導体のもの、湿式のもの(液体、液状体、流動体)のもの、それらが色素増感されたもの等、公知の種々のものを用いることができ、固体系のものは、結晶質のものと非晶質のものが存在し、さらに、結晶質のものは、単結晶のもの及び多結晶のものが知られている。なお、図示においては、特に、固体系の太陽電池素子130の例を示した。
【0052】
なお、上述したとおり、本開示は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない限度において、これまでに適宜述べたとおり、様々な変形が可能である。また、上記の実施形態では、先述した(1)基板の所定の部位に親水処理のみを施した場合、(2)基板の所定の部位に疎水処理のみを施した場合、及び、(3)基板の所定の部位に親水処理を施し且つ基板の所定の部位に疎水処理を施した場合のうち(3)に該当する態様について述べたが、(1)及び(2)の態様であってもよい。すなわち、(1)の態様の場合、レジスト膜11等の疎水性を有する膜を設けること(疎水処理)なく、適宜のマスク(レチクル)等を用いて親水化膜12といった親水性を有する膜のみをパターニング形成(親水処理)してもよく、(2)の態様の場合、親水化膜12といった親水性を有する膜を設けること(親水処理)なく、レジスト膜11等の疎水性を有する膜のみをパターニング形成してもよい。これらの場合、GO1を結合・固定させる選択性は、上述のとおり、(1)<(2)<(3)の順に向上される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明した通り、本開示のグラフェン構造体、グラフェン構造体の製造方法、並びに、電子デバイス要素及び電子デバイスは、低コストで大面積の太陽電池、FETトランジスタ、透明TFTアレイ、高感度な磁気センサー等の種々の電子工学、電気工学、材料分析、材料工学、光通信、無線通信、有線通信等の分野で使用される電子デバイス、装置、機器、システム、設備等に広く且つ有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…グラフェン酸化物(GO)、2…グラフェン、10…SiO2/Si基板(基板)、11…レジスト膜、12…親水化膜、20…グラフェン構造体、30…電子デバイス、100…太陽電池(電子デバイス)、110…基板、120a,120b…透明電極(電子デバイス要素)、130…太陽電池素子、140…保護体、E…端子電極、G…電源、P…開口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にグラフェンが設けられてなり、
前記基板において親水処理が施された部位と前記グラフェンとの間、又は、前記基板において疎水処理が施されていない部位と前記グラフェンとの間に結合が形成されており、
前記結合が、前記基板に形成され且つシランカップリング化合物、自己組織化単分子、又は、高分子化合物の一部を構成する第1の官能基としてのアミノ基と、前記グラフェンに形成された第2の官能基としての水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、又は、スルホ基との結合であり、
前記基板は、表面にシラン結合が形成されるもの、又は、表面に金属原子としての金、銀、銅、白金、パラジウム、又は、水銀の原子を有しており且つ該表面に硫黄原子を含む基としてのチオール基、スルフィド基、又は、ジスルフィド基と該金属原子との結合が形成されるものであり、
前記第1の官能基は、前記シラン結合を含む分子鎖を介して前記基板に結合されたもの、又は、前記硫黄原子を含む基と前記金属原子との前記結合を含む分子鎖を介して前記基板に結合されたものである、
グラフェン構造体。
【請求項2】
基板にグラフェンが設けられてなり、
前記基板において親水処理が施された部位と前記グラフェンとの間、又は、前記基板において疎水処理が施されていない部位と前記グラフェンとの間に結合が形成されたものである、
グラフェン構造体。
【請求項3】
前記結合が、前記基板上に形成された親水性を有する第1の官能基と、前記グラフェンに形成された親水性を有する第2の官能基との結合である、
請求項2記載のグラフェン構造体。
【請求項4】
前記第1の官能基が電子受容性官能基であり、且つ、前記第2の官能基が電子供与性官能基である、又は、前記第1の官能基が電子供与性官能基であり、且つ、前記第2の官能基が電子受容性官能基である、
請求項3記載のグラフェン構造体。
【請求項5】
前記電子受容性官能基は、窒素原子を含有する基であり、
前記電子供与性官能基は、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、又は、スルホ基である、
請求項4記載のグラフェン構造体。
【請求項6】
前記窒素原子を含有する基は、アミノ基である、
請求項5記載のグラフェン構造体。
【請求項7】
前記基板は、表面にシラン結合が形成されるものであり、
前記第1の官能基は、前記シラン結合を含む分子鎖を介して前記基板に結合されたものである、
請求項3記載のグラフェン構造体。
【請求項8】
前記基板は、表面に金属原子を有しており且つ該表面に硫黄原子を含む基と該金属原子との結合が形成されるものであり、
前記第1の官能基が、前記硫黄原子を含む基と前記金属原子との前記結合を含む分子鎖を介して前記基板に結合されたものである、
請求項3記載のグラフェン構造体。
【請求項9】
前記金属原子は、金、銀、銅、白金、パラジウム、又は、水銀の原子であり、
前記硫黄原子を含む基は、チオール基、スルフィド基、又は、ジスルフィド基である、
請求項8記載のグラフェン構造体。
【請求項10】
前記第1の官能基が、シランカップリング化合物、自己組織化単分子、又は、高分子化合物の一部を構成するもの、又は、前記基板に酸素(O2)プラズマによるプラズマ処理を施して形成されるものである、
請求項3記載のグラフェン構造体。
【請求項11】
基板を用意すること、
前記基板の所定の部位に、アミノ基を含む親水性を有する膜として、シランカップリング化合物膜、自己組織化単分子膜、若しくは、高分子化合物膜を形成すること、又は、酸素(O2)プラズマによるプラズマ処理を施すことにより親水処理を施すこと、
前記基板の所定の部位に、パターンを有するレジスト又はハロゲン化物を形成することにより疎水処理を施すこと、
前記レジスト又は前記ハロゲン化物のパターンから露呈した基板の表面上にグラフェンを設けること、
前記親水処理が施された基板から前記レジスト又はハロゲン化物を除去すること、
前記基板の表面上に設けられたグラフェンを還元すること、
前記基板の表面上に設けられたグラフェンに接続された電極を形成すること、
を含むグラフェン構造体の製造方法。
【請求項12】
基板を用意すること、
前記基板の所定の部位に親水処理及び/又は疎水処理を施すこと、
前記基板における前記親水処理が施された部位にグラフェンを設けること、及び/又は、前記基板における前記疎水処理が施されていない部位にグラフェンを設けること、
を含むグラフェン構造体の製造方法。
【請求項13】
前記親水処理としては、前記基板における該親水処理を施す部位に親水処理剤を塗布又は定着させることにより親水性を有する膜を形成し、又は、酸素(O2)プラズマによるプラズマ処理を施し、
前記疎水処理としては、前記基板における該疎水処理を施す部位に疎水処理剤を塗布又は定着させることにより疎水性を有する膜を形成する、
請求項12記載のグラフェン構造体の製造方法。
【請求項14】
前記親水性を有する膜は、シランカップリング化合物膜、自己組織化単分子膜、又は、高分子化合物膜であり、
前記疎水性を有する膜は、シランカップリング化合物膜、自己組織化単分子膜、高分子化合物膜、又は、ハロゲン化物膜である、
請求項13記載のグラフェン構造体の製造方法。
【請求項15】
前記親水性を有する膜は、窒素原子を含有する基としてアミノ基を含むものであり、
請求項13記載のグラフェン構造体の製造方法。
【請求項16】
前記基板に親水処理を施す前に、前記疎水処理として前記基板に所定のパターンを有するレジスト又はハロゲン化物を形成すること、
前記親水処理が施された基板から前記レジスト又はハロゲン化物を除去すること、
を含み、
前記親水処理においては、前記レジスト又はハロゲン化物のパターンから露呈した基板の表面上に該親水処理を施す、
請求項12記載のグラフェン構造体の製造方法。
【請求項17】
前記基板に設けられたグラフェンを還元すること、
を含む請求項12記載のグラフェン構造体の製造方法。
【請求項18】
前記基板に設けられたグラフェンに接続された電極を形成すること、
を含む請求項12記載のグラフェン構造体の製造方法。
【請求項19】
基板を用意すること、
前記基板の所定の部位に親水処理及び/又は疎水処理を施すこと、
前記基板における前記親水処理が施された部位にグラフェンを設けること、及び/又は、前記基板における前記疎水処理が施されていない部位にグラフェンを設けること、
により製造されたグラフェン構造体。
【請求項20】
基板上にグラフェンが設けられてなり、且つ、前記基板において親水処理が施された部位と前記グラフェンとの間、又は、前記基板において疎水処理が施されていない部位と前記グラフェンとの間に結合が形成されたものであるグラフェン構造体で形成された導体又は半導体を有する電子デバイス。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−121828(P2011−121828A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281897(P2009−281897)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【特許番号】特許第4527194号(P4527194)
【特許公報発行日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(509348786)エンパイア テクノロジー ディベロップメント エルエルシー (117)
【Fターム(参考)】