説明

グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤化合物及びその医薬組成物

本発明は、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤である新規の化合物、並びに糖尿病及びそれと関連する他の症状の治療でのその使用に関する。更に、本発明は、該化合物を含有する医薬組成物、並びに該化合物及び医薬組成物を調製する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤化合物、該化合物の医薬組成物、該化合物又はそれを含有する医薬組成物の糖尿病、糖尿病と関連する症状、及び/又は心筋虚血を含む組織虚血の治療での使用、並びに該化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病の治療は、世界の大部分で依然として健康上の問題である。望ましくない副作用が最小限である経口摂取薬が、インスリン自己注射よりも望まれている。より良好で、副作用が少なく、長時間作用する又は異なる機構を介して作用する薬剤が、なおも必要とされている。
【0003】
数種の薬剤が、糖尿病の治療に利用可能である。これらとしては、注射型インスリン、並びに経口摂取されるスルホニル尿素、グリピジド、トルブタミド、アセトヘキサミド、トラジミド、ビグアニド及びメトホルミン(グルコファージ)等の薬剤が挙げられる。インスリン自己注射は、経口摂取薬が有効でない糖尿病患者に必要とされる。1型糖尿病(インスリン依存性糖尿病とも呼ばれる)を有する患者は、通常、インスリンを自己注射することにより治療される。2型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病とも呼ばれる)を患っている患者は、通常、食事療法、運動及び経口薬を組み合わせて治療される。経口薬が効かない場合、インスリンを処方し得る。糖尿病薬を経口摂取するとき、通常、1日複数回の投与が必要とされる場合が多い。
【0004】
インスリンの適切な投与量の決定には、患者の尿中及び/又は血中の糖レベルを頻繁に試験する必要がある。過剰量のインスリンの投与は一般に、血中グルコースの軽度な異常から昏睡、更には死に及ぶ症状を有する低血糖を引き起こす。経口摂取薬も同様に望ましくない副作用がないわけではない。例えば、このような薬剤は、患者によっては効果がなく、胃腸障害を起こし、又は他の患者においては正常な肝機能を低下させる恐れがある。副作用が少ない改良された薬剤、及び/又は他が失敗した場合でもうまく機能する薬剤が常に必要とされている。
【0005】
2型糖尿病、すなわちインスリン非依存性糖尿病では、肝グルコース産生が、重要な標的である。肝臓は、空腹状態における血漿グルコース濃度の主なレギュレーターである。2型糖尿病患者における肝グルコース産生速度は、非糖尿病患者と比較して、通常有意に上昇している。2型糖尿病患者に関しては、摂食又は食後の状態では、肝臓が総血漿グルコース供給において果たす役割は比例して低く、肝グルコース産生は異常に高い。
【0006】
肝臓は、グリコーゲン分解(グルコースポリマーグリコーゲンの分解)及びグルコース新生(2-及び3-炭素前駆体からのグルコースの合成)によりグルコースを産生する。したがって、グリコーゲン分解は、肝グルコース産生の妨害のための重要な標的である。グリコーゲン分解が、2型糖尿病患者における不適切な肝グルコースの生産に寄与し得ることを示唆するいくつかの証拠がある。肝グリコーゲン蓄積症、例えばエルス病又はグリコーゲンホスホリラーゼ欠損症を有する患者は、一過性低血糖を示す場合が多い。更に、吸収後の正常なヒトでは、肝グルコース産生の最大約75%は、グリコーゲン分解から生じると推定されている。
【0007】
グリコーゲン分解は、酵素グリコーゲンホスホリラーゼの組織特異的アイソフォームにより肝臓内、筋肉内及び脳内で行われる。この酵素は、グリコーゲン高分子を切断し、グルコース1-リン酸及び短縮型グリコーゲン高分子を放出する。
【0008】
グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤としては、グルコース及びその類似体、カフェイン及び他のプリン類似体、様々な置換基を有する環状アミン、アシル尿素、並びにインドール様化合物が挙げられる。これらの化合物及びグリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤は、一般に、肝グルコース産生を減少させ、血糖を低下させることによる、2型糖尿病の治療における潜在的使用が主張されてきた。更に、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤は、血中グルコース濃度に感受性であることが望ましいと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、所望されるのは、糖尿病及び/又は糖尿病と関連する症状の治療のための新しい化合物及びそれを含有する医薬組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、式Iの化合物、
【化1】

【0011】
その塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体を提供する。
【0012】
式Iの化合物、その塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体を含む医薬組成物も提供される。
【0013】
更に、式Iの化合物、その塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体、及び一種又は複数の賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0014】
それに加えて更に、式Iの化合物、その製薬上許容される塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体、及び少なくとも一種の賦形剤を含む医薬組成物を哺乳動物、特にヒトに投与することを含む治療方法であって、前記治療が、糖尿病、糖尿病と関連する症状、及び心筋虚血を含む組織虚血からなる群から選択される疾患又は症状のためのものである、治療方法が提供される。
【0015】
更に、(治療方法で)活性治療物質として使用するための式Iの化合物、その塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体が提供される。哺乳動物、特にヒトにおける糖尿病、糖尿病と関連する症状、及び/又は心筋虚血を含む組織虚血の治療で使用するための式Iの化合物、その塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体も提供される。
【0016】
式Iの化合物、その塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体を調製する方法も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
筋肉組織におけるグリコーゲンホスホリラーゼの活性は、グルコースの産生、続いてエネルギー需要に重要である。運動時の筋グリコーゲンホスホリラーゼの阻害により、筋力低下及び筋肉組織の損傷に至る恐れがある。したがって、哺乳動物に経口投与された際、筋肉と比較して、肝臓中のグリコーゲンホスホリラーゼに対して大きな効果を示す、本発明の化合物を用いることが望ましい可能性がある。本発明の化合物は、経口投与後、肝グリコーゲン量に対して強い効果を示すが、筋グリコーゲンの量及び機能に対してほとんど効果を示さない。結果的に、本発明の化合物は、強力なインビボ活性を示し、許容できる溶解性及びバイオアベイラビリティを有し、かつ肝組織に対するその選択性から見て、改善された安全性/毒性プロファイルを有することができよう。
【0018】
本発明は、式Iの化合物、
【化2】

【0019】
その塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体を提供する。式Iの化合物の化学名は、N-[(2-[({[4-(シクロプロピルメチル)-2,6-ジメチルフェニル]アミノ}カルボニル)アミノ]-4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}フェニル)カルボニル]-O-(1,1-ジメチルエチル)トレオニンである。
【0020】
式Iの化合物、その塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体は、立体異性体として存在し得る(例えば一つ又は複数の不斉炭素原子を含有する)。個々の立体異性体(鏡像異性体及びジアステレオマー)及びそれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。また、本発明は、式Iにより表される化合物(塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体)の個々の異性体の、一つ又は複数のキラル中心が反転されているその異性体との混合物も包含する。同様に、式Iの化合物(塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体)が、該式で示されるもの以外の互変異性体で存在し得、これらも本発明の範囲内に含まれることが理解される。本発明が上に定義された特定の群の全ての組合せ及びサブセットを含むことを理解されたい。本発明の範囲は、立体異性体の混合物、並びに精製鏡像異性体又は鏡像的/ジアステレオマー的に富化された混合物を含む。式Iにより表される化合物の個々の異性体、並びにその任意の全て又は一部が平衡化された混合物も本発明の範囲内に含まれる。本発明はまた、該式により表される化合物、塩、溶媒和物又は誘導体、並びに一つ又は複数のキラル中心が反転されているその異性体との混合物も含む。本発明が上に定義された特定の群の全ての組合せ及びサブセットを含むことを理解されたい。
【0021】
化合物の好ましい立体化学を、以下の式IAに示す:
【化3】

【0022】
本発明の化合物が、その製薬上許容される塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体の形態でも利用できることは、当業者であれば認識されよう。
【0023】
本発明の塩は、絶対ではないが通常、製薬上許容される塩である。「製薬上許容される塩」という用語に包含される塩は、本発明の化合物の非毒性塩を指す。本発明の化合物の塩としては、製薬上許容される無機塩基又は有機塩基から形成される慣用の塩を挙げることができる。適切な塩基性塩のより具体的な例としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、コリン塩、ジエタノールアミン塩、エチレンジアミン塩、N-メチルグルカミン塩及びプロカイン塩が挙げられる。
【0024】
本明細書で使用する場合、「溶媒和物」という用語は、溶質(本発明においては、式Iの化合物、その塩又は生理学的に機能性の誘導体)及び溶媒により形成される化学量論の錯体を指す。本発明の目的のために、このような溶媒は、溶質の生物活性を妨害することはない。適切な溶媒の非限定的な例としては、それだけに限らないが水、メタノール、エタノール及び酢酸が挙げられる。好ましくは使用する溶媒は、製薬上許容される溶媒である。最も好ましくは、使用する溶媒が水であり、溶媒和物が水和物である。
【0025】
本明細書で使用する場合、「生理学的に機能性の誘導体」とは、哺乳動物に投与したとき、本発明の化合物又はその活性な代謝物を(直接又は間接的に)提供することができる、本発明の化合物の任意の製薬上許容される誘導体を指す。このような誘導体、例えばエステル及びアミドは、過度に実験するまでもなく、当業者には明白であろう。生理学的に機能性の誘導体を教示する範囲において、Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discover、第5版、第1巻: Principles and Practice(参照により本明細書に組込むものとする)の教示を挙げる。
【0026】
式Iの化合物の製薬上許容される塩、溶媒和物及び生理学的に機能性の誘導体を調製する方法は、一般に当技術分野で知られている。例えば、Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery、第5版、第1巻: Principles and Practiceを参照されたい。
【0027】
式Iの化合物(塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体)は、以下に概説されている方法により都合よく調製できる。前記ステップの順番は、本発明の実施に決定的に重要なものではなく、該方法は、当業者の知識に基づき任意の適切な順番でステップを行うことにより実施できる。更に、記載のステップの一部は、全ての中間体化合物を単離することなく合わせることができる。
【0028】
式Iの化合物の合成の一つの一般的な方法を以下のスキーム1に概説する。出発4-フルオロ-2-ニトロ安息香酸(2)は、標準条件下で、例えば極性溶媒、例えばDMF又はNMP中で2-ブロモエチルメチルエーテル及び塩基、例えば炭酸カリウムでの処理等でそのメトキシエチルエーテル体に変換することができる。フルオロ基は、DMF又はNMP中での炭酸カリウム等の塩基性条件下において2-メトキシエタノールで置換することができる。次いでこのエステルは、テトラヒドロフラン(THF)及び/又はメタノール(MeOH)及び/又は水及び/又は1,4-ジオキサンを含む溶媒中で水酸化リチウム又は水酸化ナトリウム等の塩基性条件下において除去し、中間体3を得ることができる。
【0029】
中間体5は、標準的なカップリング条件下で中間体3とメチルO-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニネート(4)又はその塩酸塩とを混合することにより形成される。これらの条件としては、それだけに限らないが、EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)、PyBop(ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)、PyBrOP(ブロモ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)、HOBT(N-ヒドロキシベンゾトリアゾール)、HOAT(N-ヒドロキシ-9-アザベンゾトリアゾール)又はDIC(N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド)、又はHATU(2-(1H-9-アザベンゾトリアゾール1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)及びDIEA(N,N-ジイソプロピルエチルアミン)又はトリエチルアミンの室温での使用が挙げられる。使用できる溶媒としては、DMSO、NMP又は好ましくはDMFが挙げられる。更に、1-プロパンホスホン酸環状無水物及び有機塩基、例えばDIEA又はトリエチルアミンの存在下において酢酸エチル中で34とを合わせることにより、中間体5が生成される。好ましい方法では、3は標準条件下で、溶媒、例えばジクロロメタン中での触媒量のDMFの存在下におけるオキサリルクロリドでの処理等により、対応する酸塩化物に変換される。得られた酸塩化物とメチルO-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニネート(4)又はその塩酸塩とを、アセトニトリルのような溶媒中のDIEA又はトリエチルアミン等の有機塩基の存在下で反応させることにより、中間体5が生成される。
【0030】
標準条件下で、例えば限定するものではないが、酢酸エチル又はメタノールのような溶媒中での水素雰囲気下における炭素上パラジウムでの処理等により5のニトロ基を還元すると、中間体6が生成される。
【0031】
中間体8は、中間体6と、イソシアナート体である中間体7(合成方法は以下に概説、スキーム3を参照のこと)及びジイソプロピルエチルアミン(DIEA)又はトリエチルアミンとをDMFのような溶媒中で混合することにより形成される。好ましくは中間体6及び中間体7をピリジン中で合わせて、中間体8を得る。
【0032】
最終生成物は、テトラヒドロフラン(THF)及び/又はメタノール(MeOH)及び/又は水及び/又は1,4-ジオキサンを含む溶媒中での水酸化リチウム又は水酸化ナトリウム等の塩基性条件下において、中間体8のエステルを切断することにより形成される。
【0033】
スキーム1:式Iの化合物の合成
【化4】

【0034】
或いは、式Iの他の異性体又はラセミ化合物を合成するために、4の別の異性体を置換していてもよい。中間体3への代替経路を以下のスキーム2に示す。中間体9は、亜硝酸ナトリウム及び塩酸での処理により、フェノール体中間体10に変換される。次いで、中間体3は、DMF中での炭酸カリウム等の塩基性条件下における中間体10と2-ブロモエチルメチルエーテルとの反応、次いでテトラヒドロフラン(THF)及び/又はメタノール(MeOH)及び/又は水及び/又は1,4-ジオキサンを含む溶媒中での水酸化リチウム又は水酸化ナトリウムでの処理により調製する。
【0035】
スキーム2:中間体3の合成の代替法
【化5】

【0036】
中間体7の合成の一つの一般的方法を、以下のスキーム3に概説する。ジクロロメタンのような溶媒中で、市販の4-ブロモ-2,6-ジメチルアニリン11を、ビルスマイヤー(Vilsmeier)試薬((クロロメチレン)ジメチルイミニウムクロリド、又はDMF及びオキサリルクロリドからのin-situ生成)で処理することにより、中間体12が得られる。溶媒、例えばTHF中での低温での中間体12とn-ブチルリチウムのような強塩基との反応、次いでシクロプロパンカルバルデヒドでの処理により、中間体13が生成される。
【0037】
中間体14は、還流エタノールアミン中での中間体13の水酸化リチウムでの処理、次いでイソプロピルアルコール及び水中での水酸化リチウムでの処理により形成される。
【0038】
中間体14の還元による中間体15の生成は、中間体14のトリエチルシラン及びトリフルオロ酢酸での処理により行うことができる。代替法では、中間体13のベンジルヒドロキシル体は、THF中でのボランTHF錯体及びボロントリフルオリドジエチルエーテルでの処理により還元できる。次いで、得られたメチレン化合物を、加熱しながら、エタノール中及び水中で、水酸化リチウム、ヒドラジンで処理して、中間体15を得る。
【0039】
次いで、中間体7は、ジクロロメタンのような溶媒中でのホスゲン又はトリホスゲン、及びDIEAのような塩基、での中間体15の処理により得られる。
【0040】
スキーム3:中間体7の合成
【化6】

【0041】
本発明は、式Iの化合物、その塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体及び一種又は複数の賦形剤(医薬分野では担体及び/又は希釈剤とも呼ばれる)を含む医薬組成物(医薬製剤とも呼ばれる)を更に提供する。賦形剤は、製剤の他の成分と許容性であり、そのレシピエント(即ち、患者)に有害でないという意味において許容できる。
【0042】
本発明の別の態様に従って、式Iの化合物、その塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体と、少なくとも一種の賦形剤とを混合することを含む、医薬組成物の調製方法が提供される。
【0043】
医薬組成物は、単位用量当たり所定量の活性成分を含有する単位投与剤形であってよい。このような単位は、治療上有効な量の式Iの化合物、その塩、溶媒和物若しくは生理学的に機能性の誘導体、又は複数単位投与剤形が所与の時間に投与され所望の治療上有効な量を実現することができるように治療上有効な量の一部分を含有することができる。好ましい単位用量製剤は、本明細書で上に列挙された1日用量若しくは分割用量、又はその適切な部分の活性成分を含有するものである。更に、このような医薬組成物は、製薬分野で周知の方法のいずれかにより調製できる。
【0044】
医薬組成物は、任意の適切な経路、例えば、経口(口腔又は舌下を含む)、直腸、鼻腔、局所(口腔、舌下又は経皮を含む)、膣又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内又は皮内を含む)経路による投与に適合し得る。このような組成物は、製薬分野で公知の任意の方法により、例えば活性成分を賦形剤(複数可)と合わせることにより調製できる。
【0045】
医薬組成物は、経口投与に適合するとき、錠剤又はカプセル等の個別の単位、散剤又は顆粒剤、水性液体又は非水性液体中の溶液剤又は懸濁液剤、可食性のフォーム剤又はホイップ剤、水中油型液体エマルジョン又は油中水型液体エマルジョンであってよい。本発明の化合物(塩、溶媒和物又は誘導体)又は本発明の医薬組成物は、「迅速溶解」薬として投与するために、キャンディー、ウエハー及び/又は舌テープ製剤に組み込むこともできる。
【0046】
例えば、錠剤又はカプセル剤の形態での経口投与のために、活性薬剤成分を、経口用の非毒性の製薬上許容される不活性な担体、例えばエタノール、グリセロール、水等と組み合わせてもよい。散剤又は顆粒剤は、化合物を適切な微細粒径に粉砕して、同じように粉砕した医薬担体、例えばデンプン又はマンニトールのような食用炭水化物と混合することにより調製される。香味剤、保存料、分散剤及び着色剤も存在してよい。
【0047】
カプセルは、上に記載されているように粉末混合物を調製し、形成されたゼラチン又は非ゼラチンシースに充填することにより製造される。流動化剤及び潤滑剤、例えばコロイドシリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、固体ポリエチレングリコールを、充填操作の前に粉末混合物に加えることもできる。崩壊剤又は可溶化剤、例えば寒天、炭酸カルシウム又は炭酸ナトリウムも、カプセルが摂取される際の薬剤の有効性を改善するために加えることができる。
【0048】
更に、所望により又は必要に応じて、適切な結合剤、潤滑剤、崩壊剤及び着色剤も混合物に組み込むことができる。適切な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えばグルコース又はβラクトース、トウモロコシ甘味料、天然ゴム及び合成ゴム、例えばアラビアゴム、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックス等が挙げられる。これらの剤形で使用する潤滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。崩壊剤としては、それだけに限らないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム等が挙げられる。
【0049】
錠剤は、例えば、粉末混合物を調製し、顆粒又はスラグを形成し、潤滑剤及び崩壊剤を加え、次いで打錠することにより製剤化する。粉末混合物は、適切に細かく砕いた化合物と、上記の希釈剤又は基剤と、場合により結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース及びアルギン酸、ゼラチン若しくはポリビニルピロリドン、パラフィンのような溶解遅延剤、第4級塩のような再吸収促進剤、例えば、並びに/又は吸収剤、例えばベントナイト、カオリン若しくは第2リン酸カルシウムとを混合することにより調製される。粉末混合物は、結合剤、例えばシロップ、デンプンペースト、アラビアゴム粘液又はセルロース系若しくはポリマー系材料で濡らして、ふるいを強制通過させることにより顆粒化することができる。顆粒化の代替案として、粉末混合物を錠剤機にかけることもでき、その結果得られるのは不完全に形成されたスラッグであり、これが破壊されて顆粒となる。顆粒は、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク又は鉱物油を加えることにより滑らかにして、錠剤形成金型への粘着を防止することができる。次いで、潤滑化した混合物を打錠する。本発明の化合物(塩、溶媒和物又は誘導体)は、自由流動性の不活性担体と合わせて、顆粒化又はスラグ形成のステップを経ることなく直接錠剤へと打錠することもできる。シェラックのシーリングコート、糖又はポリマー材料のコーティング、及びワックスの光沢コーティングからなる透明又は不透明の保護コーティングを施してもよい。異なる単位用量を区別するためにこれらのコーティングに着色料を加えることもできる。
【0050】
口腔液剤、例えば溶液剤、シロップ剤及びエリキシル剤は、所与の量が、所定量の活性成分を含有するように、単位投与剤形に調製することができる。シロップは、本発明の化合物(塩、溶媒和物又は誘導体)を適切に香味付けされた水性液剤に溶解させることにより調製でき、一方、エリキシルは、非毒性のアルコール性ビヒクルの使用により調製する。懸濁液剤は、本発明の化合物(塩、溶媒和物又は誘導体)を非毒性のビヒクルに分散させることにより製剤化することができる。可溶化剤及び乳化剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール及びポリオキシエチレンソルビトールエーテル、保存剤、香味添加剤、例えばペパーミントオイル、天然甘味料、サッカリン又は他の人工甘味料等も加えることができる。
【0051】
適切な場合、経口投与のための単位投与製剤は、マイクロカプセル化することができる。該製剤は、例えば特定の材料をポリマー、ワックス等でコーティング、又はそれらに埋め込むことにより、放出を延長又は持続するように調製することもできる。
【0052】
本発明において、医薬組成物の送達には錠剤及びカプセル剤が好ましい。
【0053】
本明細書で使用する場合、「治療」という用語は、予防を含み、既に罹患しているか、又は診断された患者又は被験者において、特定の疾患を緩和し、疾患の一若しくは複数の症状を除去又は低減し、疾患の進行を減速又は排除し、疾患の再発を防止又は遅延することを指す。予防(又は病気の発症の防止若しくは遅延)は、発症した疾患又は症状を有する患者に対するものと同一若しくは類似の方法で薬剤を投与することにより通常実現される。
【0054】
本発明は、糖尿病、並びに糖尿病と関連する疾患、例えば肥満、X症候群、インスリン抵抗性、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、高血糖症、高コレステロール血症、高インスリン血症、高脂血症、心血管疾患、発作、アテローム性動脈硬化症、リポタンパク質異常、高血圧、組織虚血、心筋虚血及び抑鬱を患う哺乳動物、特にヒトにおける治療方法を提供する。このような治療は、治療上有効な量の式Iの化合物、その塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体を、前記哺乳動物、特にヒトに投与するステップを含む。治療は、式Iの化合物、その塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体を含有する治療上有効な量の医薬組成物を、前記哺乳動物、特にヒトに投与するステップも含むことができる。
【0055】
本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、例えば研究者又は臨床医により求められている、組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を誘発するであろう、薬剤又は医薬品の量を意味する。
【0056】
「治療上有効な量」という用語は、このような量を与えられていない対応する被験者と比較したとき、向上した疾患、障害若しくは副作用の治療、治癒、予防若しくは軽減、又は疾患若しくは障害の進行速度の低下をもたらす任意の量を意味する。この用語はまた、正常な生理学的機能を高めるのに有効な量もその範囲に含む。治療方法で使用するために、治療上有効な量の式Iの化合物、並びにその塩、溶媒和物及び生理学的に機能性の誘導体を、そのままの化学物質として投与してもよい。また、活性成分を医薬組成物として提供することもできる。
【0057】
治療で使用するために、治療上有効な量の式Iの化合物(その塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体)をそのままの化学物質として投与することも可能だが、通常はそれを、医薬組成物又は製剤の活性成分として提供する。
【0058】
本発明の化合物(塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体)の正確な治療上有効量は、それだけに限らないが、治療する被験者(患者)の年齢及び体重、治療を必要とする具体的な障害及びその重症度、医薬製剤/組成物の性質、投与経路を含む、いくつかの因子に依存し、最終的には担当の医師又は獣医の裁量による。通常、式Iの化合物(その塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体)は、1日当たり約0.1〜100mg/kg受容者(患者、哺乳動物)体重の範囲、より典型的には1日当たり0.1〜10mg/kg体重の範囲で治療のために投与される。許容できる1日量は、約1〜約1000mg/日、好ましくは約1〜約100mg/日であってよい。この量は、1日当たりの総量が同じになるように、1日当たり単回量、又は1日当たり何回か(例えば、2回、3回、4回、5回以上)の分割用量で投与してもよい。本発明の化合物の塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体の有効量は、式Iの化合物自体の有効量の比として決定することができる。類似の投与量は、治療について本明細書で示されている他の疾患/症状の治療(予防を含む)に適するものであるべきである。一般に、適切な投与量の決定は、薬剤分野又は製薬分野の当業者であれば容易に達成することができる。
【0059】
更に、本発明は、式Iの化合物、その塩、溶媒和物若しくは生理学的に機能性の誘導体、又はそれらの医薬組成物と少なくとも一種の他の抗糖尿病薬とを共に包含する。このような抗糖尿病薬としては、例えば注射型のインスリン、並びに経口摂取されるスルホニル尿素、チアゾリジンジオン、グリピジド、グリメピリド、トルブタミド、アセトヘキサミド、トラジミド、ビグアニド、ロシグリタゾン、メトホルミン(グルコファージ)、シタグリプチン(ジャヌビア)の塩又はそれらの組合せ等の薬剤を挙げることができる。本発明の化合物が、別の抗糖尿病薬と組み合わせて使用されるとき、その組合せの各化合物又は薬剤の用量は、該薬剤又は化合物が単独で使用されるときの用量とは異なる場合があることを当業者であれば認識されよう。適切な用量は、当業者であれば容易に認識され、決定されよう。式Iの化合物(その塩、溶媒和物、生理学的に機能性の誘導体)及び他の治療活性剤(複数可)の適切な用量、並びに投与の相対的なタイミングは、所望の複合治療効果を実現するために選択され、担当の医師又は臨床医の専門知識及び裁量による。
【0060】
(実施例)
以下の実施例は、例示のみを意図し、何ら本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲により定義される。特に断らない限り、試薬は、市販されているか、又は文献の手順に従って調製される。
【実施例1】
【0061】
式IAの化合物の調製
N-[(2-[({[4-(シクロプロピルメチル)-2,6-ジメチルフェニル]アミノ}カルボニル)アミノ]-4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}フェニル)カルボニル]-O-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニン
ステップ1. 2-(メチルオキシ)エチル4-フルオロ-2-ニトロベンゾエート
4-フルオロ-2-ニトロ安息香酸(15g、81mmol)を、DMF(80mL)中に溶解させ、2-ブロモエチルメチルエーテル(12.39g、89.1mmol)、次いで炭酸カリウム(16.8g、121.5mmol)を加えた。溶液を85℃に5時間加熱し、冷却し、水及び酢酸エチルに注入した。有機層を分離し、塩水で洗い、乾燥(MgSO4)し、濃縮して、黄色の油21.7gを得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 8.07 (dd, J= 8.3, 2.4 Hz, 1 H), 7.96 (dd, J= 8.4, 2.4 Hz, 1 H), 7.72 (dt, J= 8.4, 2.4 Hz, 1 H), 4.35 (m, 2 H), 3.57 (m, 2 H), 3.25 (s, 3 H)。
【0062】
ステップ2. 2-(メチルオキシ)エチル4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-2-ニトロベンゾエート
2-(メチルオキシ)エチル4-フルオロ-2-ニトロベンゾエート(5g、20.56mmol)をDMF(40mL)及び2-メトキシエタノール(4.7g、61.68mmol)中に溶解させ、炭酸カリウム(5.7g、41.12mmol)を加えた。溶液を85℃まで15時間加熱し、冷却した。混合物を水及び酢酸エチルに注入し、有機層を水及び塩水で洗い、乾燥(MgSO4)し、濃縮して、金色の油として所望の生成物4.83g(78%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.8 (d, J=8.8 Hz, 1 H), 7.6 (d, J=2.4 Hz, 1 H), 7.3 (dd, J=8.7, 2.6 Hz, 1 H), 4.3 (m, 2 H), 4.2 (m, 2 H), 3.7 (m, 2 H), 3.6 (m, 2 H), 3.3 (s, 3 H), 3.2 (s, 3 H)。
【0063】
ステップ3. 4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-2-ニトロ安息香酸
2-(メチルオキシ)エチル4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-2-ニトロベンゾエート(4.83g、16.13mmol)を1:1のTHF/MeOH(80mL)中に溶解させ、2M LiOH(80mL)を加えた。4時間後、反応物を約80mLに濃縮し、5M HCL(34mL)を加えた。溶液を酢酸エチルで抽出し、抽出物を乾燥(MgSO4)し、濃縮して、淡黄色の固形物として生成物3.70g(95%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 3.3 (s, 3 H) 3.6 (m, 2 H) 4.2 (m, 2 H) 7.3 (dd, J=8.7, 2.6 Hz, 1 H) 7.5 (d, J=2.4 Hz, 1 H) 7.8 (d, J=8.8 Hz, 1 H)。
【0064】
ステップ4. メチルO-(1,1-ジメチルエチル)-N-[-(4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-2-ニトロフェニル)カルボニル]-L-トレオニネート
4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-2-ニトロ安息香酸(3.7g、15.4mmol)及びメチルO-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニネート塩酸塩(3.8g、16.8mmol)を酢酸エチル(50mL)中に溶解させ、トリエチルアミン(4.66g、46.0mmol)を加えた。反応物を70℃まで加熱し、1-プロパンホスホン酸環状無水物(酢酸エチル中の50%溶液19.5g、30.6mmol)を滴下した。10時間後、溶液を室温まで冷却し、水及び塩水で洗い、乾燥(MgSO4)し、濃縮して、粘性油として生成物6.84g(108%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.1 (m, 9 H) 1.1 (d, J=6.1 Hz, 3 H) 3.3 (s, 3 H) 3.6 (s, 3 H) 3.7 (m, 2 H) 4.2 (m, 3 H) 4.5 (dd, J=8.8, 3.2 Hz, 1 H) 7.3 (dd, J=8.5, 2.7 Hz, 1 H) 7.5 (m, 2 H) 8.7 (d, J=8.8 Hz, 1 H)。
【0065】
ステップ5.メチルN-[(2-アミノ-4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}フェニル)カルボニル]-O-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニネート
メチルO-(1,1-ジメチルエチル)-N-[(4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-2-ニトロフェニル)カルボニル]-L-トレオニネート(6.32g、15.3mmol)を酢酸エチル(100mL)中に溶解させ、10%Pd/C(600mg)を加えた。反応物を、60psiのH2下のParr水素添加機上に置き、混合物を振とうした。反応器を48時間にわたって60psiのH2に2回再チャージした。反応物を装置から取り出し、セライトを通して濾過し、濃縮した。残渣をSiO2クロマトグラフィー(SiO280g、酢酸エチル/へキサン10〜50%)により精製し、粘性で金色の油として生成物4.83g(82%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.1 (s, 9 H) 1.1 (d, J=6.1 Hz, 3 H) 3.3 (s, 3 H) 3.6 (m, 5 H) 4.0 (m, 2 H) 4.1 (dd, J=6.2, 3.3 Hz, 1 H) 4.4 (dd, J=8.3, 3.2 Hz, 1 H) 6.1 (dd, J=8.8, 2.4 Hz, 1 H) 6.2 (d, J=2.4 Hz, 1 H) 6.5 (s, 2 H) 7.3 (d, J=8.5 Hz, 1 H) 7.4 (d, J=8.8 Hz, 1 H)。
【0066】
ステップ6. (4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)(シクロピロピル)メタノール
機械撹拌機を備えた10Lのジャケット付き実験用反応器に、ジクロロメタン(6L)及びDMF(201g、2.75mol)を導入した。ジャケットを15℃まで冷却し、オキサリルクロリド(348.8g、2.75mol)を約20分にわたって加えた。更に5分撹拌した後、ジクロロメタン(1L)中の4-ブロモ-2,6-ジメチルアニリン(500g、2.50mol)を加えた。反応混合物を30分間撹拌し、次いでジクロロメタン層を2N NaOH(3L)、水(2L)及び50%塩水(1L)で洗った。次いでジクロロメタン層を約1Lの体積まで蒸留し、THF(4L)を加え、次いで混合物を2Lの体積まで蒸留し、THF(4L)を再び加え、混合物を2Lまで蒸留し、最終的に5LのTHFを加えた。得られた溶液を約-70℃まで冷却し、n-ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、1.25L、3.12mol)を約40分にわたって加え、そこでは、内部温度を<-50℃で維持した。添加が完了した後、反応を-60℃まで冷却し、シクロプロパンカルバルデヒド(221.45g、3.12mol)を内部温度が<-48℃で維持されるような速度で加えた。次いで、混合物を室温まで昇温させて、水(2L)を加えた。混合物を約2Lの体積まで蒸留し、次いで水中(2L)の水酸化リチウム一水和物(315g、7.50mol)及びエタノールアミン(460g、7.5mol)を加えた。混合物を還流し、イソプロパノール(1L)を加えた。約18時間還流した後、反応物を室温まで冷却し、濃塩酸を用いてpHを約10に調製した。混合物を酢酸エチル(2×2L、1×1L)で抽出し、合わせた有機物を水(1L)で洗った。得られた溶液を約1Lに濃縮し、加熱して還流し、次いで0℃まで冷却した。得られた固形物を濾過により回収し、酢酸エチル及びヘキサンで洗浄し、約45℃にて真空下で乾燥して、生成物254.4g(53%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm: 6.80 (s, 2H), 4.75 (brs, 1 H), 4.38 (brs, 2H), 3.74 (d, J = 7.2 Hz, 1 H), 2.07 (s, 6H), 1.04 - 0.93 (m, 1 H), 0.45 - 0.15 (m, 4H)。
【0067】
ステップ7. 4-(シクロプロピルメチル)-2,6-ジメチルアニリン塩酸塩
約10℃まで冷却したジクロロメタン(100mL)中の(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)(シクロプロピル)メタノール(10.0g、52.3mmol)に、トリフルオロ酢酸(7.15g、62.7mmol)を徐々に加えた。約4分撹拌した後、トリエチルシラン(7.30g、62.7mmol)を約20分にわたって滴下した。反応物を約10℃で40分間撹拌し、次いで約20mLまで減圧下で濃縮し、酢酸エチル(100mL)を加えた。これを約50mLまで濃縮し、酢酸エチルを加え(25mL)、撹拌しながら濃塩酸(5mL)を加えた。約15分間撹拌した後、固形物を濾過により回収し、酢酸エチル/へキサン(1:1)で洗い、減圧下で乾燥して、生成物10.1g(91%)を得た。1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) δ ppm: 9.15 - 9.75 (brs, 2H), 6.95 (s, 2H), 2.36 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 2.28 (s, 6H), 0.88 (m, 1 H), 0.40 (m, 2H), 0.12 (m, 2H)。
【0068】
この反応を8gの出発物質で繰り返し得られた生成物(8.1g)を上の物質と合わせた。
【0069】
ステップ8. 5-(シクロプロピルメチル)-2-イソシアナート-1,3-ジメチルベンゼン
CH2Cl2(50mL)中に溶解させた4-(シクロプロピルメチル)-2,6-ジメチルアニリン塩酸塩(11.1g、52.4mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(10.0mL、57.7mmol)の溶液を、CH2Cl2(100mL)中のトリホスゲン(7.78g、26.2mmol)の撹拌溶液に滴下した。添加が完了した後、溶液を45分間撹拌し、次いで溶媒をヒュームフード中で濃縮除去した(注意:未反応ホスゲンが存在し得る)。得られた残渣をヘプタン中に溶解させ、水で洗浄し、乾燥(MgSO4)し、濃縮して、濁った粘性油として生成物9.21g(87%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm: 0.1 (m,2 H) 0.4 (m, 2 H) 0.9 (m, 1 H) 2.2 (s, 6 H) 2.4 (d, J=6.8 Hz, 2 H) 7.0 (s, 2 H)。
【0070】
ステップ9. メチルN-[(2-[({[4-(シクロプロピルメチル)-2,6-ジメチルフェニル]アミノ}カルボニル)アミノ]-4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}フェニル)カルボニル]-O-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニネート
メチルN-[(2-アミノ-4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}フェニル)カルボニル]-O-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニネート(4.74g、12.39mmol)をピリジン(50mL)中に溶解させ、5-(シクロプロピルメチル)-2-イソシアナート-1,3-ジメチルベンゼン(3.74g、18.59mmol)を加えた。反応物を、7時間撹拌し、次いで酢酸エチルで積層した1M HClに注入した。有機層を分離し、塩水で洗い、乾燥(MgSO4)し、黄色の油に濃縮した。油をSiO2クロマトグラフィー(SiO2120g、EA/へキサン0〜50%)により精製し、無色の泡状物として生成物5.15g(71%)を得た。ES MS m/z 584(M+H)。
【0071】
ステップ10. N-[(2-[({[4-(シクロプロピルメチル)-2,6-ジメチルフェニル]アミノ}カルボニル)アミノ]-4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}フェニル)カルボニル]-O-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニン
メチルN-[(2-[({[4-(シクロプロピルメチル)-2,6-ジメチルフェニル]アミノ}カルボニル)アミノ]-4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}フェニル)カルボニル]-O-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニネート(5.1g、8.73mmol)を、1:1のTHF/MeOH(40mL)中に溶解させ、2M LiOH(21.8ml、43.68mmol)を加えた。3時間後、1M HCl(45mL)及び水(100mL)を加え、混合物をEAで抽出した。抽出物を乾燥(MgSO4)し、出発物質0.88gから出発する第2の反応からの抽出物と合わせ、濃縮し、無色の泡状物として生成物5.97g(全体で102%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm: 0.2 (m, 2 H) 0.4 (m, 2 H) 0.9 (m, 1 H) 1.1 (s, 12 H) 2.1 (m, 6 H) 2.4 (d, J=7.0 Hz, 2 H) 3.3 (s, 3 H) 3.6 (m, 2 H) 4.1 (m, 2 H) 4.2 (br s, 1 H) 4.4 (br s, 1 H) 6.6 (dd, J=8.7, 2.7 Hz, 1 H) 6.9 (s, 2 H) 7.7 (br s, 1 H) 7.8 (br s, 1 H) 8.0 (d, J=2.5 Hz, 1 H) 8.7 (br s, 1 H) 10.5 (br s, 1 H) 12.8 (s, 1 H). ES MS m/z 570 (M+H)。
【実施例2】
【0072】
式IAの化合物のラージスケール合成
N-[(2-[({[4-(シクロプロピルメチル)-2,6-ジメチルフェニル]アミノ}カルボニル)アミノ]-4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}フェニル)カルボニル]-O-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニン
ステップ1. 4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-2-ニトロ安息香酸
機械撹拌機を備えたジャケット付き実験用反応器中で4-フルオロ-2-安息香酸(200g、1.08mol)にNMP(0.90L)及び炭酸カリウム(520g、3.80mol)を加えた。反応ジャケットを50℃まで加熱し、2-ブロモエチルメチルエーテル(120mL、1.28mol)を10分にわたって加えた。反応ジャケットの温度を約129℃に上昇させて、反応物を1時間撹拌した。NMP(80mL)、2-(メチルオキシ)エタノール(520mL)、炭酸カリウム(15g)を加えた。ジャケット温度を約135℃に上昇させて、反応物を約1時間撹拌し、次いでジャケット温度を150℃に上昇させて、反応物を約5時間撹拌した。混合物を室温まで冷却し、約16時間撹拌した。これに、50%水酸化ナトリウム水溶液(235mL)と水(0.77L)との混合物を加えた。1時間撹拌した後、混合物を水(0.50L)の入ったバケツに移し、6N HCl(約2L)で酸性化し、約1.5時間撹拌した。得られた固形物を濾過により回収し、水で洗った。約70℃にて減圧下で乾燥することにより、生成物160gを得た。1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) δ ppm: 13.53 (br s, 1 H), 7.83 (d, J = 8.5 Hz, 1 H), 7.48 (d, J = 2.5 Hz, 1 H), 7.26 (dd, J = 8.8, 6.2 Hz, 1 H), 4.23 (m, 2H), 3.65 (m, 2H), 3.28 (s, 3H)。
【0073】
さらに上記手順の小規模な反応をも行い追加の物質を得た。スペクトル特性は上記と同じであった。
【0074】
ステップ2. メチルO-(1,1-ジメチルエチル)-N-[(4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-2-ニトロフェニル)カルボニル]-L-トレオニネート
機械撹拌機を備えたジャケット付き実験用反応器中でジクロロメタン(2.5L)及びDMF(2.5mL)中に溶解させた4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-2-ニトロ安息香酸(205g、0.97mol)に、オキサリルクロリド(104mL、1.23mol)を約27℃のジャケット温度で約20分にわたって滴下した。30℃のジャケット温度で、反応物を約2時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。残渣をアセトニトリル(0.50L)中に溶解させ、減圧下で濃縮し、アセトニトリル(0.30L)に再度溶解させた。次いで、これを、機械撹拌機を備えたジャケット付き実験用反応器中でアセトニトリル(1.5mL)中に溶解させたメチルO-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニネート塩酸塩(195g、0.86mol)とDIEA(390mL)との冷(<10℃)混合物に滴下した。添加が完了したら、反応物を室温まで昇温し、メチルt-ブチルエーテル(3L)で希釈し、1:1の塩水:水(1.5L)、1:1の重炭酸ナトリウム:水(1.5L)、再び1:1の塩水:水(1.5L)で洗った。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、約1.5Lまで濃縮した。これに、ヘプタン(1.5L)を加え、これを乾燥状態まで濃縮した。得られた固形物を、メチルt-ブチルエーテル(210mL)とヘプタン(220mL)との混合物で粉末にし、固形物を濾過により回収した。この物質を小規模調製物(28g)と合わせて、減圧下で乾燥し、生成物338gを得た。1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) δ ppm: 8.68 (d, J = 8.8 Hz, 1 H), 7.53 (d, J = 3.3 Hz, 1 H), 7.49 (d, J = 8.6 Hz, 1 H), 7.32 (dd, J = 8.5,2.6 Hz, 1 H), 4.51 (dd, J = 8.7, 3.2 Hz, 1 H), 4.22 (m, 2H), 4.16 (m, 1H), 3.65 (m, 2H), 3.64 (s, 3H), 3.29 (s, 3H), 1.13 (d, J= 6.4 Hz, 3H), 1.08 (s, 9H)。
【0075】
ステップ3. メチルN-[(2-アミノ-4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}フェニル)カルボニル]-O-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニネート
メチルO-(1,1-ジメチルエチル)-N-[(4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-2-ニトロフェニル)カルボニル]-L-トレオニネート(100.3g、0.243mol)をメタノール(2L)中に溶解させ、反応フラスコを脱気し、窒素で3回フラッシュした。これに、炭素上パラジウム(10%、10g)を加え、混合物を水素雰囲気下で約4時間撹拌した。混合物を濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をトルエン(0.25L)中に溶解させ、減圧下で濃縮して、黄褐色の油として生成物91.4g(98%)を得た。1H NMR (CDCI3 , 400 MHz) δ ppm: 7.38 (d, J = 8.7 Hz, 1 H), 6.70 (d, J = 9 Hz, 1 H), 6.31 (dd, J = 8.7, 2 Hz, 1H), 6.21 (d, J = 2 Hz, 1 H), 5.80 (br, 2H), 4.62 (dd, J = 9, 1.7 Hz, 1 H), 4.27 (m, 1 H), 4.09 (m, 2H), 3.72 (m, 2H), 3.71 (s, 3H), 3.43 (s, 3H), 1.22 (d, J = 6.1 Hz, 3H), 1.12 (s, 9H)。
【0076】
この手順を20.5g及び160gのニトロ化合物から出発して2回繰り返し更に生成物162.8gを得た。
【0077】
ステップ4. N'-(4-ブロモ-2,6-ジメチルフェニル)-N,N-ジメチルイミドホルムアミド
方法1
ジクロロメタン(0.50L)中のDMF(21.3mL、0.275mol)に、機械撹拌機を備えた反応フラスコ中で、窒素雰囲気下において、オキサリルクロリド(23.3mL、0.275mol)を1時間かけて加えた。10分撹拌した後、反応温度が約22〜27℃(約1.5時間)の間で維持されるような速度でジクロロメタン(0.20L)中の4-ブロモ-2,6-ジメチルアニリン(50.0g、0.250mol)を加えた。反応物を約1時間撹拌し、次いで反応温度が10〜15℃の間で維持されるような速度で2N水酸化ナトリウム(0.25L)を加えることにより反応停止させた。層を分離し、有機層を水(0.20L)で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥状態まで濃縮した。残渣をヘキサン(0.4L)中に溶解させ、これを乾燥状態まで濃縮した。生成物をポンプで減圧にかけ、暗褐色の油として生成物62.2g(97.8%)を得た。1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) δ ppm: 7.28 (s, 1 H), 7.09 (s, 2H), 2.90 (s, 6H), 2.00 (s, 6H)。
【0078】
方法2
Vilsmeier試薬(43.2g、0.34mol)のスラリーに、機械撹拌機を備えた反応フラスコ中のジクロロメタン(0.40L)中で、窒素雰囲気下において、反応温度が約20〜28℃(約1.5時間)の間で維持されるような速度で、ジクロロメタン(0.20L)中の4-ブロモ-2,6-ジメチルアニリン(61.4g、0.31mol)を加えた。反応物を約1時間撹拌し、次いで反応温度が10〜15℃の間で維持されるような速度で、2N水酸化ナトリウム(0.35L)を加えることにより反応停止させた。層を分離し、有機層を水(0.3L)で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥状態まで濃縮した。残渣をヘキサン(0.4L)中に溶解させ、これを乾燥状態まで濃縮した。生成物をポンプで減圧にかけ、暗褐色の油として生成物75.7g(97%)を得た。スペクトル特性は上記と同じであった。
【0079】
方法2のスケールアップ
ジクロロメタン(1.97L)中のVilsmeier試薬(211.8g、1.66mol)のスラリーに、機械撹拌機を備えたジャケット付き実験用反応器中で、窒素雰囲気下において、反応温度が<25℃(約1.5時間)で維持されるような速度でジクロロメタン(0.98L)中の4-ブロモ-2,6-ジメチルアニリン(301.91g、1.509mol)を加えた。反応を約1時間撹拌し、次いで反応温度が10〜15℃の間で維持されるような速度で、2N水酸化ナトリウム(1.72L)を加えることにより反応停止させた。層を分離し、有機層を水(1.48L)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥状態まで濃縮した。残渣をヘキサン(1L)中に溶解させ、これを乾燥状態まで濃縮した。これを繰り返し、生成物をポンプで減圧にかけ、暗褐色の油として生成物376.82g(97.8%)を得た。スペクトル特性は上記と同じであった。
【0080】
ステップ5. N'-{4-[シクロプロピル(ヒドロキシ)メチル]-2,6-ジメチルフェニル}-N,N-ジメチルイミドホルムアミド
N'-(4-ブロモ-2,6-ジメチルフェニル)-N,N-ジメチルイミドホルムアミド(489.7g、1.92mol)を、機械撹拌機を備えたジャケット付き実験用反応器中で、窒素雰囲気下において、THF(5L)中に溶解させた。混合物を-70℃まで冷却し、n-ブチルリチウム(ヘキサン中2.5N、1.152L、2.88mol)を、内部温度が約-65〜-70℃の間で維持されるような速度で加えた。添加が完了したら、シクロプロパンカルバルデヒド(201.86g、2.88mol)を、内部温度が約-50〜-70℃の間で維持されるような速度で加えた。反応物を0℃まで昇温させて、内部温度が0〜5℃の間で維持されるような速度で水(1.96L)を滴下することにより反応停止させた。有機溶媒を減圧下で除去し、残った水層及び懸濁した生成物を、次のステップで直接使用すべきジャケット付き実験用反応器に移した。一定分量を質量スペクトル解析のために取り出した;ES MS m/z247(M+H)。
【0081】
ステップ6. (4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)(シクロプロピル)メタノール
前のステップからの物質(N'-{4-[シクロプロピル(ヒドロキシ)メチル]-2,6-ジメチルフェニル}-N,N-ジメチルイミドホルムアミド)に、水(1.96L)中の水酸化リチウム(305g、12.73mol)の懸濁液を加え、次いでエタノールアミン(221.48g、3.63mol)を加えた。混合物を約16時間加熱還流した。反応物を蒸留して、液体980mLを除去し、イソプロパノール(1.47L)を加え、混合物を再度、約5時間還流した。室温まで冷却した後、酢酸エチル(2.5L)を加え、層を分離した。両方の層を濾過して、固形物を除去し、水層を酢酸エチル(2×1L)で逆抽出した。合わせた有機層を水(2×0.5L)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥し、約1.4Lの体積に濃縮した。得られた固形物を、濾過により回収し、酢酸エチル及びヘキサンで洗った。減圧下で乾燥した後、白色の固形物として生成物142.47gを得た。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) δ ppm: 6.79 (s, 2H), 4.72 (d, J = 4.1 Hz, 1 H), 4.36 (s, 2H), 3.72 (dd, J = 7.2, 4.2 Hz, 1 H), 2.06 (s, 6H), 0.91 (m, 1 H), 0.12 - 0.46 (m, 4H)。
【0082】
母液により、同一のスペクトル特性を有する生成物37.91gが更に生成された。全収率は2つのステップで49%であった。
【0083】
ステップ7. [4-(シクロプロピルメチル)-2,6-ジメチルフェニル]アミン塩酸塩
約15℃まで冷却したジクロロメタン(1.68L)中の(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)(シクロプロピル)メタノール(169.13g、0.884mol)に、トリエチルシラン(123.4g、1.06mol)、次いでトリフルオロ酢酸(83.7g、0.734mol)を、内部温度が15〜16℃の間で維持されるような速度で加えた。反応物を7時間撹拌し、次いでジクロロメタンを蒸留除去し、酢酸エチル(1.68L)を加えた。これを約1.1Lの体積まで蒸留し、酢酸エチル280mLを更に加えた。20℃で撹拌しながら、濃塩酸(73mL)を加え、混合物を約15分間撹拌した。得られた固形物を濾過により回収して、1:1の酢酸エチル:ヘキサンで洗い、褐色の固形物として生成物177.22g(95%)を得た。1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) δppm: 9.13 - 9.91 (brs, 2H), 7.01 (s, 2H), 2.41 (d, J= 6.9 Hz, 2H), 2.34 (s, 6H), 0.92 (m, 1 H), 0.47 (m, 2H), 0.15 (m, 2H)。
【0084】
ステップ8. 5-(シクロプロピルメチル)-2-イソシアナート-1,3-ジメチルベンゼン
ジクロロメタン(0.855L)中のトリホスゲン(81.3g、0.274mol)の溶液に、ジクロロメタン(0.3L)中の[4-(シクロプロピルメチル)-2,6-ジメチルフェニル]アミン塩酸塩(115g、0.543mol)とDIEA(176.7g、1.37mol)との混合物を、温度を25℃未満に維持しながら加えた。反応物を約16時間撹拌し、ヘプタン(1.0L)を加えた。混合物を水(2回、0.30L)で洗った。水相をヘプタン(2回、0.10L)で逆抽出し、合わせた有機物を硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下での濃縮により、油として生成物98.95g(収率91%)が得られた。1H NMR (CDCI3 , 400 MHz) δ ppm: 6.92 (s, 2H), 2.41 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 2.30 (s, 6H), 0.93 (m, 1 H), 0.50 (m, 2H), 0.16 (m, 2H)。
【0085】
ステップ9. メチルN-[(2-[({[4-(シクロプロピルメチル)-2,6-ジメチルフェニル]アミノ}カルボニル)アミノ]-4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}フェニル)カルボニル]-O-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニネート
メチルN-[(2-アミノ-4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}フェニル)カルボニル]-O-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニネート(144g、0.377mol)と5-(シクロプロピルメチル)-2-イソシアナート-1,3-ジメチルベンゼン(98.9g、0.491mol)とをピリジン(1.0L)中で合わせて、混合物を室温で約16時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をメチルt-ブチルエーテル(1L)中に溶解させた。これを0.1N HCl(4回、0.5L)で洗った。溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲル(1.5Kg)上でクロマトグラフし、酢酸エチル/ヘキサン(勾配)で溶離し、泡状物として生成物181gを得た。1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) δ ppm: 10.42 (brs, 1H), 8.70 (brs, 1H), 8.01 (brs, 1H), 7.97 (d, J=2.2 Hz, 1H), 7.66 (d, J=8.1 Hz, 1H), 6.92 (s, 2H), 6.57 (dd, J=8.8, 2.5 Hz, 1 H), 4.45 (m, 1 H), 4.16 (m, 1 H), 4.05 (m, 2H), 3.64 (s, 3H), 3.62 (m, 2H), 3.27 (s, 3H), 2.39 (d, J=6.8 Hz, 2H), 2.11 (s, 6H), 1.14 (m, 3H), 1.09 (s, 9H), 0.92 (m, 1 H), 0.43 (m, 2H), 0.15 (m, 2H)。
【0086】
ステップ10. N-[(2-[({[4-(シクロプロピルメチル)-2,6-ジメチルフェニル]アミノ}カルボニル)アミノ]-4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}フェニル)カルボニル]-O-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニン
THF(1L)中のメチルN-[(2-[({[4-(シクロプロピルメチル)-2,6-ジメチルフェニル]アミノ}カルボニル)アミノ]-4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}フェニル)カルボニル]-O-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニネート(179g、0.306mmol)に、水(0.33L)中の水酸化リチウム一水和物(38.5g、0.92mol)を約30分にわたって滴下した。混合物を室温で2日間撹拌し、次いで氷浴で冷却し、6N HClを加えることによりpHを約1に調整した。これに、酢酸エチル(1.5L)を加え、混合物を10℃で約30分撹拌した。層を分離し、水相を酢酸エチル(0.2L)で抽出した。合わせた有機物を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、多少の酢酸エチル及びTHFを含有する生成物180gを得た。この物質(少量の9gのバッチと合わせた)をアセトニトリル(1.7L)及び水(1.36L)から結晶化し、減圧下で50℃にて乾燥した後、生成物125.5gを白色の固形物として得た。1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) δ ppm: 12.78 (brs, 1H), 10.52 (brs, 1H), 8.68 (brs, 1 H), 7.98 (d, J=2.2 Hz, 1 H), 7.75 (brs, 1 H), 7.63 (d, J=7.9 Hz, 1 H), 6.90 (s, 2H), 6.58 (dd, J=8.8, 2.4 Hz, 1 H), 4.37 (m, 1 H), 4.16 (m, 1 H), 4.06 (m, 2H), 3.62 (m, 2H), 3.27 (s, 3H), 2.39 (d, J=6.8 Hz, 2H), 2.11 (s, 6H), 1.11 (m, 3H), 1.11 (s, 9H), 0.92 (m, 1H), 0.43 (m, 2H), 0.15 (m, 2H). 元素分析: C31H43N3O7の計算値: C, 65.36; H, 7.61; N, 7.38. 実測値: C, 65.59; H, 7.59; N, 7.41。
【実施例3】
【0087】
式IAの化合物のカリウム塩の調製
カリウムN-[(2-[({[4-(シクロプロピルメチル)-2,6-ジメチルフェニル]アミノ}カルボニル)アミノ]-4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}フェニル)カルボニル]-O-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニネート
アセトニトリル(100mL)中のN-[(2-[({[4-(シクロプロピルメチル)-2,6-ジメチルフェニル]アミノ}カルボニル)アミノ]-4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}フェニル)カルボニル]-O-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニン(1.0g、1.76mmol)に、カリウムt-ブトキシド(THF中1.0M、1.76mL)を加える。混合物を約15分間撹拌し、溶媒を減圧下で除去して、生成物を得る。
【0088】
生物学的プロトコル
式Iの化合物、その塩、溶媒和物、若しくは生理学的に機能性の誘導体の、動物特に哺乳動物(例えばヒト)における疾患(本明細書に詳細に記載したものなど)の治療又は予防における有用性は、以下に述べるインビトロ及びインビボのアッセイも含めた当業者に知られている慣用のアッセイにおける活性によって実証することができる。
【0089】
精製グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)酵素[この場合グリコーゲンホスホリラーゼは、活性化「a」状態にある(ヒト肝グリコーゲンホスホリラーゼ(HLGPa)と呼ばれる)]は、以下の方法により、得ることができる。
【0090】
ヒト肝グリコーゲンホスホリラーゼの適切なクローニング及び発現
ヒト肝グリコーゲンホスホリラーゼcDNAは市販のヒト肝cDNAライブラリー(BD Biosciences社)からポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した。このcDNAを、プライマー5'GGCGAAGCCCCTGACAGACCAGGAGAAG3'を5'CGATGTCTGAGTGGATTTTAGCCACGCC3'と共に、及び、5'GGATATAGAAGAGTTAGAAGAAATTG3'を5'GGAAGCTTATCAATTTCCATTGACTTTGTTAGATTCATTGG3'と共に用いて2つの重複フラグメントとして増幅した。PCR条件は、94℃ 1分、55℃ 1分、72℃ 2分(40サイクル)であり、酵素Pfu Turbo(Stratagene社)、0.5%DMSO、250μM各ヌクレオチド三リン酸、及び0.4μM各プライマー、並びにポリメラーゼの製造者が推奨する緩衝液を用いた。各PCRフラグメントを分子的にクローニングし、各挿入物のDNA配列を決定した。このグリコーゲンホスホリラーゼcDNAの2つのDNAフラグメントをこのあと細菌性発現プラスミドpTXK1007LTev(GlaxoSmithKline社)中に一緒に合わせて、メチオニン−グリシン−アラニン−ヒスチジン−ヒスチジン−ヒスチジン−ヒスチジン−ヒスチジン−ヒスチジン−グリシン−グリシン−グルタメート−アスパラギン−ロイシン−チロシン−フェニルアラニン−グルタミン−グリシン−グリシン−のためのコドンに5’末端で融合された完全長cDNAを作出した。このタンパク質産物は、6×ヒスチジンタグ、その後ろにTevプロテアーゼ開裂部位をもつこととなる。pTXK1007LTev中のこのcDNAの双方の鎖のDNA配列を決定した。
【0091】
ヒト肝グリコーゲンホスホリラーゼの精製
凍結細胞ペースト(100g)を解凍し、1200mLの50mM Tris、100mM NaCl、15mMイミダゾール、pH 8.0中に懸濁させた。細胞をPolytron(Brinkmann社、PT10-35)で穏やかに分離し、次いでAVPホモジナイザーを2回通過させた。この大腸菌細胞溶解産物を27,500×gの45分間遠心分離によって清澄化し、0.8ミクロンフィルターで濾過した。この溶液を、50mM Tris、100mM NaCl、及び15mMイミダゾール(pH 8.0)で予め平衡化されている21mL Ni-NTA Superflow(Qiagen社)カラム(ID 26mm × H 4.0cm)に適用した。カラムを、A280がベースラインに戻るまで平衡緩衝液で洗った。弱結合タンパク質をこの同じ緩衝液中50mMイミダゾールの10ベッドカラム容量でカラムから溶離させた。グリコーゲンホスホリラーゼを100mMイミダゾールと250mMイミダゾールの濃度ステップで溶離させた。100mM画分及び250mM画分の双方をプールし、次いで50mM Tris、pH 8.0の緩衝液で5フォールドに希釈した。この溶液を、50mM Tris、pH8.0で予め平衡化した21mL Q高速流動カラム(Amersham Pharmacia Biotech AB社、ID 2.6cm × H 4.0cm)に充填した。グリコーゲンホスホリラーゼを、50mM Tris、pH8.0中1M NaClの0〜30%の連続濃度勾配(緩衝液B)で溶離させた。15%と20%緩衝液Bとの間で得られた精製グリコーゲンホスホリラーゼの画分をプールし、microfuge管の中に分注し、−80℃で貯蔵した。この精製画分は、SDS-PAGEゲル上で約100kdのシングルバンドを形成した。
【0092】
ヒト肝グリコーゲンホスホリラーゼの活性化
ヒト肝グリコーゲンホスホリラーゼの活性化(すなわち、不活性HLGPb形から活性HLGPaの形への変換)は、固定化ホスホリラーゼキナーゼでHLGPbをリン酸化することで行った。
【0093】
ホスホリラーゼキナーゼ(Sigma社、P-2014)10mgを100mM HEPES、80mM CaCl2(pH7.4)2.5mL中に溶解させ、同じ緩衝液中で前以って平衡化してあるAffi-Gel(Active Ester Agarose、BioRad #153-6099)ビーズ1mLと一緒に穏やかに混合した。この混合物を4℃で4時間揺動した。ビーズを一度同じ緩衝液で洗い、50mM HEPES、1Mグリシンメチルエステル(pH8.0)の溶液で室温にて1時間ブロックした。ビーズをこのあと50mM HEPES、1mM β−メルカプトエタノール(pH7.4)で洗い、4℃で貯蔵した。
【0094】
凍結精製グリコーゲンホスホリラーゼ(HLGPb)を4℃中で解凍し、そのあと50mM HEPES、100mM NaCl(pH7.4)の中に一晩透析させた。この透析HLGPb 15mg、3mM ATP及び5mM MgCl2を、50mM HEPES、100mM NaCl(pH7.4)で平衡化された調製Affi-Gel固定化ホスホリラーゼキナーゼビーズ500μLと一緒にインキュベーションした。リン酸化の程度を、以下に略述されているアッセイシステムを用いて活性の増加を10分間隔で追跡することによりモニタリングした。簡潔には、このアッセイには、0.1μMヒト肝グリコーゲンホスホリラーゼ、50mM HEPES、100mM KCl、2.5mM EGTA、MgCl2、3.5mM KH2PO4、0.5mM DTT、0.4mg/mLグリコーゲン、7.5mMグルコース、0.50mM β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(β-NAD)、3U/mLホスホグルコムターゼ、及び5U/mLグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼが含まれている。340nmにおけるNAD+の低下を追跡することで活性をモニタリングした。反応は、さらなる活性の増加が観測されなくなったときに(30〜60分)ビーズを混合物から取り出すことで停止させた。サンプルを質量分光分析で分析することによってリン酸化をさらに確認した。活性化サンプルを含有している上澄み液を50mM HEPES、100mM NaCl(pH7.4)に一晩透析させた。得られた最終サンプルを等容積のグリセロールと一緒に混合し、microfuge管の中に小分けし、そして−20℃で貯蔵した。
【0095】
ヒト肝グリコーゲンホスホリラーゼa 酵素的活性アッセイ
グリコーゲンホスホリラーゼ活性形(HLGPa)の小分子(<1000Da.)化合物に対する応答を測定する酵素的アッセイを開発した。このアッセイは薬理学的に関係のあるグリコーゲン分解反応をモニタリングするように設計されており、グリコーゲン及び無機リン酸からのグルコース−1−リン酸の生成を、ホスホグルコムターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、NADHオキシダーゼ、及びホースラディッシュ・ペルオキシダーゼとカップリングさせて蛍光産物レゾルフィン[resorufin]を生成させることによって行われる。各試薬成分の濃度は以下のとおりであった:15nMヒト肝グリコーゲンホスホリラーゼa、1mg/mLグリコーゲン、5mM K2HPO4、40 U/mLホスホグルコムターゼ(Sigma社)、20 U/mLグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(Sigma社)、200nM Thermus thermophilus NADHオキシダーゼ(Park, H.J.; Kreutzer, R.; Reiser, C.O.A.; Sprinzl, M.; Eur. J. Biochem. 1992, 205, 875-879に記載のように調製)、2U/mLホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(Sigma社)、30μM FAD、250μM NAD+、50μMアンプレックス・レッド[amplex red]、+/-10mMグルコース。使用したベースアッセイ緩衝液は50mM HEPES、100mM NaCl(pH7.6)であった。グリコーゲンホスホリラーゼのグルコース感応型阻害物質を識別するうえでの助けとするために、アッセイは、10mMグルコース有りと無しで行った。HLGPa非特異的レゾルフィン生成に寄与し得る汚染性成分をアッセイから除外するために、試薬は2つの2×濃縮カクテルとして調製した。ベースアッセイ緩衝液中にカタラーゼ・コート・アガロースビーズが入った溶液を調製した。第1のカクテル(カクテル#1)は、Thermus thermophilus NADHオキシダーゼ、NAD+、グリコーゲン、ホスホグルコムターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、K2HPO4、FAD、及び50 U/mLカタラーゼ・コート・アガロースビーズ+/-10mMグルコースからなっていた。この溶液を25℃で30分間インキュベーションしたあとアンプレックス・レッドを加え、そしてカタラーゼ・コート・アガロースビーズを遠心分離により取り除き、上澄み液をそのままにした。第2のカクテル(カクテル#2)は、ヒト肝グリコーゲンホスホリラーゼ-a及びホースラディッシュ・ペルオキシダーゼを含んでいた(+/-10mMグルコース)。アッセイは、本発明の化合物をカクテル#2と一緒にして15分間予備インキュベーションし、そのあとカクテル#1を加えて反応を開始させることで行った。アッセイは、96(黒色1/2容量Costar#3694)若しくは384ウェルマイクロタイタープレート(小容量黒色Greiner)中で行った。生成物形成による蛍光発光の変化を蛍光プレートリーダー(Molecular Devices SpectraMax M2)を用いて560nm励起と590nm発光にて測定した。実施化合物1の活性を以下の表1に示す。
【表1】

【0096】
インビボのグルカゴンチャレンジモデル
頸静脈にカニューレを挿入した雄CDラット(220〜260g)(Charles Rivers、Raleigh、NC)をカニューレ挿入の1〜2日後に入手し、飼料(Lab Diet 5001、PMI Nutrition International社、Brentwood、MO)及び水を自由に摂取できるようにしながらAlpha-dri(商標)敷き藁(Shepherd Specialty Papers, Inc.社、Kalamazoo、MI)に個別に収容し、グルカゴンチャレンジ試験前の3〜4日間21℃及び50%の相対湿度にて12時間の明/暗のサイクルで飼育した。試験日に、ラットを体重毎に治療群(N=4〜5)に分類し、清潔なAlpha Dri敷き藁を敷いたシューボックスケージに個別に収容した。カニューレ経路を、血液0.2mlを除去することにより開放し、滅菌食塩水0.2mlを流した。1時間の順化後、血液試料を収集し、基底グルコースを決定し、ラットにビヒクル(5%DMSO:30%Solutol HS15:20%PEG400:45%25mM N-メチルグルカミン)又は薬剤(5ml/kg)を経口投与した。薬剤を投与してから2時間後、時間ゼロの血液試料(0.4ml)をグルコースの決定のために採血し、ラットに頸静脈からSandostatin 0.5mg/kg(Novartis Pharmaceuticals Corp.社、East Hanover、NJ)及びグルカゴン10μg/kg(Bedford Laboratories、Bedford、OH)を投与した。血液試料をグルコース決定のために10分後及び20分後に採血した。全血をTerumo Capiject採血管(Terumo Medical Corp.社、Elkton、MD)に入れ、室温で20〜30分間放置し、次いで遠心分離(3000×G)して、血清を得た。血清グルコースレベルを、Olympus AU640(商標)臨床化学免疫分析器(Olympus America Inc.社、Melville、NY)を用いて決定した。ビヒクルグルコースAUCの%還元(%R)を、式:
【数1】

【0097】
を用いて各薬剤治療に対して計算し、AUCを、式:
【数2】

【0098】
を用いて血清グルコース値から計算した。実施例化合物1の活性を以下の表2に示す。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、
【化1】

又はその塩、溶媒和物若しくは生理学的に機能性の誘導体。
【請求項2】
立体化学が、式IAで示されるものである、請求項1に記載の化合物。
【化2】

【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物、その塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体を含む、医薬組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の化合物、その塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体及び一種又は複数の賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項5】
錠剤又はカプセルの形態の請求項3又は4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の化合物、その製薬上許容される塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体及び少なくとも一種の賦形剤を含む医薬組成物を、哺乳動物に投与することを含む治療方法であって、前記治療が、糖尿病及び糖尿病と関連する症状からなる群から選択される疾患又は症状のためのものである、治療方法。
【請求項7】
前記糖尿病と関連する症状が、肥満、X症候群、インスリン抵抗性、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、高血糖症、高コレステロール血症、高インスリン血症、高脂血症、心血管疾患、発作、アテローム性動脈硬化症、リポタンパク質異常、高血圧、組織虚血、心筋虚血及び抑鬱からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記治療が、糖尿病のためのものである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記哺乳動物がヒトである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
活性な治療物質として使用するための、請求項1又は2に記載の化合物、その塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体。
【請求項11】
治療に使用するための、請求項1又は2に記載の化合物、その塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体。
【請求項12】
哺乳動物における、糖尿病、肥満、X症候群、インスリン抵抗性、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、高血糖症、高コレステロール血症、高インスリン血症、高脂血症、心血管疾患、発作、アテローム性動脈硬化症、リポタンパク質異常、高血圧、組織虚血、心筋虚血及び抑鬱からなる群から選択される疾患又は症状の治療に使用するための、請求項1又は2に記載の化合物、その塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体。
【請求項13】
糖尿病の治療に使用するための、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
前記哺乳動物がヒトである、請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
以下のステップ、
a. 4-フルオロ-2-ニトロ安息香酸の4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-2-ニトロ安息香酸への変換、
b. 4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-2-ニトロ安息香酸のメチルO-(1,1-ジメチルエチル)-N-[(4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-2-ニトロフェニル)カルボニル]-L-トレオニネートへの変換、
c. メチルO-(1,1-ジメチルエチル)-N-[(4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-2-ニトロフェニル)カルボニル]-L-トレオニネートのメチルN-[(2-アミノ-4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}フェニル)カルボニル]-O-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニネートへの変換、
d. 4-ブロモ-2,6-ジメチルアニリンのN'-(4-ブロモ-2,6-ジメチルフェニル)-N,N-ジメチルイミドホルムアミドへの変換、
e. N'-(4-ブロモ-2,6-ジメチルフェニル)-N,N-ジメチルイミドホルムアミドのN'-{4-[シクロプロピル(ヒドロキシ)メチル]-2,6-ジメチルフェニル}-N,N-ジメチルイミドホルムアミドへの変換、
f. N'-{4-[シクロプロピル(ヒドロキシ)メチル]-2,6-ジメチルフェニル}-N,N-ジメチルイミドホルムアミドの(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)(シクロプロピル)メタノールへの変換、
g. (4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)(シクロプロピル)メタノールの[4-(シクロプロピルメチル)-2,6-ジメチルフェニル]アミン塩酸塩への変換、
h. [4-(シクロプロピルメチル)-2,6-ジメチルフェニル]アミン塩酸塩の5-(シクロプロピルメチル)-2-イソシアナト-1,3-ジメチルベンゼンへの変換、
i. メチルN-[(2-アミノ-4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}フェニル)カルボニル]-O-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニネート及び5-(シクロプロピルメチル)-2-イソシアナト-1,3-ジメチルベンゼンのメチルN-[(2-[({[4-(シクロプロピルメチル)-2,6-ジメチルフェニル]アミノ}カルボニル)アミノ]-4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}フェニル)カルボニル]-O-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニネートへの変換、及び
j. メチルN-[(2-[({[4-(シクロプロピルメチル)-2,6-ジメチルフェニル]アミノ}カルボニル)アミノ]-4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}フェニル)カルボニル]-O-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニネートのN-[(2-[({[4-(シクロプロピルメチル)-2,6-ジメチルフェニル]アミノ}カルボニル)アミノ]-4-{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}フェニル)カルボニル]-O-(1,1-ジメチルエチル)-L-トレオニンへの変換、
を含む、請求項1又は2に記載の化合物、その塩、溶媒和物又は生理学的に機能性の誘導体を調製する方法。

【公表番号】特表2010−540552(P2010−540552A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527129(P2010−527129)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/077624
【国際公開番号】WO2009/045830
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(509329523)グラクソスミスクライン エルエルシー (38)
【Fターム(参考)】