説明

グリル

【課題】一次空気の減少を防止してグリルバーナの輻射熱を安定して得ることができるグリルを提供する。
【解決手段】グリル庫内の被調理物を加熱するグリルバーナと、グリル庫内の排気を外部に導出する排気路とを備える。グリルバーナは、燃料ガスと一次空気との混合ガスを導入するガス導入路11を備える。グリル庫内及び排気路の少なくとも何れか一方の所定位置に熱発電素子を設ける。熱発電素子の起電力により駆動され、グリルバーナのガス導入路11に一次空気を強制的に送るファン17を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚等の被調理物を加熱するためにテーブルコンロ等に設けられるグリルに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のグリルにおいては、グリル扉を介してグリル庫内への被調理物の出し入れが行われ、グリル扉が閉じられた状態でグリル庫内に設けられたグリルバーナによって被調理物が加熱調理される。しかし、グリルバーナの燃焼に応じてグリル庫内の温度が上昇するに伴い、グリル庫内の圧力も上昇する。このため、グリルバーナへの一次空気の供給が円滑に行われなくなり、効率よくグリルバーナを燃焼させることができなくなる不都合があった。
【0003】
そこで、従来、グリル庫内の排気を強制的に行うことによりグリル庫内の過剰な温度上昇を防止すると共にグリルバーナの酸欠状態を防止するグリルが知られている(特許文献1)。このグリルは、排気路に強制的に空気を送るファンが設けられ、該ファンを熱起電力により駆動する熱発電素子がグリル庫内に設けられている。
【0004】
しかし、排気路に強制的に空気を送った場合には、グリル庫内の温度上昇が抑えられる反面、グリル庫内の温度低下によってグリルバーナの輻射量が低下して調理時間が長くなるおそれがある。また、排気路に強制的に空気を送っても、グリルバーナ及びその周辺の温度は低下せず、バーナ内圧の上昇は抑えられないので、一次空気の供給が円滑に行われないおそれがある。
【特許文献1】特開平11−94265号公報(段落0020及び図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる不都合を解消して、本発明は、一次空気の減少を防止してグリルバーナの輻射熱を安定して得ることができるグリルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明は、グリル庫内の被調理物を加熱するグリルバーナと、該グリル庫内の排気を外部に導出する排気路とを備え、グリルバーナは、燃料ガスと一次空気との混合ガスを導入するガス導入路を備えるグリルにおいて、グリル庫内及び排気路の少なくとも何れか一方の所定位置に熱発電素子を設け、該熱発電素子の起電力により駆動され、グリルバーナのガス導入路に一次空気を強制的に送るファンを設けたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、グリルバーナの燃焼によってグリル庫内及び排気路の温度が上昇すると、前記熱発電素子の起電力によりファンが駆動される。これにより、グリルバーナのガス導入路に一次空気が強制的に送られるので、温度上昇に伴って内圧が増加しても、円滑に一次空気を送り込むことができ、グリルバーナを効率よく燃焼させて安定した輻射熱を得ることができる。熱発電素子は、グリル庫内及び排気路の少なくとも何れか一方の所定位置(予め定められた熱を受け易い位置)に設けたので、グリルバーナの燃焼時の熱により確実に起電力を生成することができる。
【0008】
更に、熱発電素子の発生する熱起電力によりファンを駆動するようにしたので、ファンを駆動するための外部電源が不要となり、しかもグリル庫内の温度が十分に上昇して、グリルバーナの内圧が大となる時期にファンが自動的に駆動されるので、ファンの駆動時期を制御する制御回路も不要となり、構造が簡単で製造コストを低減することができる。
【0009】
また、本発明において、前記グリルバーナのガス導入路には、その上流端部に燃料ガスの噴射ノズルが臨むベンチュリ部が設けられており、前記ファンは、前記ベンチュリ部又は該ベンチュリ部の下流位置においてガス導入路に接続された空気供給路を介して一次空気を送ることを特徴とする。
【0010】
前記空気供給路が前記ベンチュリ部又は該ベンチュリ部の下流位置においてガス導入路に接続されていることにより、空気供給路が噴射ノズルとベンチュリ部との間から取り入れられる一次空気の流れを阻害することがなく、グリル庫の温度が十分に上昇してファンを駆動する熱発電素子の起電力が生じるまでの間(例えばグリルバーナの燃焼初期等)は、噴射ノズルとベンチュリ部との間から十分な一次空気を取り入れてグリルバーナの安定した燃焼を得ることができる。
【0011】
このとき、前記空気供給路は、前記ベンチュリ部によって負圧が生じる領域において、前記噴射ノズルから噴射される燃料ガスの流動方向の下流に向かってガス導入路内に開口する噴出口を備えることが好ましい。これによれば、空気供給路の噴出口がベンチュリ部によって負圧が生じる領域に開口しているので、噴射ノズルから噴射される燃料ガスの流動に伴う負圧によって空気供給路内の空気は常にガス導入路内に向かい、特に、グリル庫の温度が十分に上昇してファンを駆動する熱発電素子の起電力が生じるまでの間(例えばグリルバーナの燃焼初期等)においてガス導入路から空気供給路への空気の逆流を確実に防止することができる。しかも、ファンの駆動により噴出口から噴出される一次空気は、噴射ノズルから噴射される燃料ガスの流動に伴う負圧に引き込まれてガス導入路内に円滑に導入され、燃料ガスと一次空気とを良好に混合させることができる。
【0012】
また、本発明において、前記グリルバーナは、セラミック製平板に多数の炎孔が形成されて表面燃焼を行う燃焼部を備えること特徴とする。燃焼部が多数の炎孔を備えるセラミック製平板により表面燃焼を行う所謂セラミックバーナであるときには、セラミック製平板が有する蓄熱作用の影響により温度上昇に伴い分布室内圧が高くなるため、一次空気が円滑に導入できないおそれがある。このときにも本発明によれば、温度上昇時には前記ファンにより十分な一次空気を強制的に取り入れることができるので、セラミックバーナである場合に特に好適に安定した燃焼を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態のグリルを模式的に示す断面説明図、図2はグリルバーナのガス導入路を示す断面説明図、図3は図2のIII−III線断面説明図、図4(a)及び図4(b)は熱発電素子の取り付け状態を示す説明図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態のグリル1はテーブルコンロ2に設けられて魚等の被調理物3を加熱調理するものである。グリル1は、内部に被調理物3を収容するグリル庫4と、グリル庫4の上部に設けられたグリルバーナ5と、グリルバーナ5の下方位置に被調理物3を載置する焼き網6とを備えている。焼き網6は受け皿7上に載置され、受け皿7はグリル庫4の前方から引き出し自在に設けられている。受け皿7の前端にはグリル庫4の前方を開閉するグリル扉8が設けられている。グリル庫4の後側には、グリル庫4の燃焼排気を外部に導出する排気路9が設けられている。
【0015】
グリルバーナ5は、セラミック製平板に多数の炎孔が形成された燃焼部10を備え、ガス導入路11を介して一次空気と燃料ガスとの混合ガスが供給されて燃焼部10において表面燃焼が行われる。ガス導入路11の上流端部には、図2に模式的に示すように、ベンチュリ部12が設けられており、ベンチュリ部12には燃料ガスを供給するガス管13の先端に設けられた噴射ノズル14が臨んでいる。ベンチュリ部12は、その上流側から下流側にかけて次第に拡径するテーパ部15を備えている。テーパ部15は、噴射ノズル14から噴射された燃料ガスの流速を増加させ、これに伴う負圧によって、噴射ノズル14が臨むベンチュリ部12の上流端からガス導入路11へ一次空気を引き込む。なお、ベンチュリ部12において最も負圧が生じるのはテーパ部15が形成されている部分であり、図2において符号aによって示す領域である。
【0016】
また、図2に示すように、ベンチュリ部12には、空気供給管(空気供給路)16の一端が接続されており、空気供給管16の他端には、該空気供給管16を介してガス導入路11(ベンチュリ部12)に一次空気を強制的に送るファン17が接続されている。更に詳しくは、空気供給管16は、ベンチュリ部12の外周に設けられた環状の案内流路18に接続されている。案内流路18は前記テーパ部15の内側に開口する複数の噴出口19を備えている。各噴出口19は、図3に示すように、テーパ部15の内周面に所定間隔を存して配設され、ベンチュリ部12の下流側に向かって開口している。これにより、各噴出口19から噴出する空気は前記噴射ノズル14から噴射される燃料ガスの流動方向と共に下流に向かうようになっている。
【0017】
前記ファン17は、図1に示す熱発電素子20の熱起電力によって駆動される。熱発電素子20は、図1に示すように、排気路9のグリル庫4側底部22に取り付けられている。熱発電素子20は、図4(a)に示すように、排気路9の底部22に貫通する取り付け孔23を介して熱発電素子20の感熱保護板24がグリル庫4内部に露出するように取り付けられている。熱発電素子20の感熱保護板24は板状に形成されて熱発電素子20の感熱面を保護している。また、感熱保護板24は、ネジ25により排気路9の底部22に連結支持される支持部材を兼ねており、熱発電素子20の後端に当接された固定部材26と感熱保護板24とをネジ25により連結することで、熱発電素子20が排気路9の底部22に固定される。
【0018】
また、図1に仮想線で示すように、グリル庫4の前側上部の天板27に他の熱発電素子21を取り付けてもよい。この場合に、前記熱発電素子20のみで十分にファン17の駆動が可能であるが、前記熱発電素子20と他の熱発電素子21との両方を設けておいてもよく、また、熱発電素子20のみ或いは他の熱発電素子21のみでもよい。他の熱発電素子21を設ける場合には、図4(b)に示すように、グリル庫4の天板27に貫通する取り付け孔28を介して他の熱発電素子21の感熱保護板29がグリル庫4内部に露出するように取り付けられる。そして、他の熱発電素子21の感熱保護板29が支持部材を兼ねていることにより、他の熱発電素子21の後端に当接された固定部材30と感熱保護板29とがネジ31により連結され、他の熱発電素子21がグリル庫4の天板27に固定される。
【0019】
なお、前記熱発電素子20の取り付け状態においては感熱保護板24を設けることなく感熱面を露出させてもよい。他の熱発電素子21においても同様に、感熱保護板29を設けることなく感熱面を露出させてもよい。更に、排気路9の底部22に複数の熱発電素子20を設けてもよく、或いは、グリル庫4の天板27に他の熱発電素子21を複数設けてもよい。
【0020】
以上の構成による本実施形態のグリル1によれば、先ず、グリルバーナ5に点火されて被調理物3の加熱調理が開始される。グリルバーナ5の燃焼初期においては、グリル庫4内部の温度が比較的低く、熱発電素子20(及び/又は他の熱発電素子21)の熱発電が行われないので、ファン17は停止している。これによって、グリルバーナ5の燃焼初期においては、グリルバーナ5の周辺温度も低いので内圧の増加も少なく、燃焼に適した量の一次空気がベンチュリ部12と燃焼ガスの噴射ノズル14との間から円滑に取り入れられる。このとき、グリルバーナ5のガス導入路11に接続されている空気供給管16は、図2及び図3に示すように、燃料ガスの流動に伴って負圧が生じるベンチュリ部12のテーパ部15に接続され、しかも、テーパ部15に開口する一次空気の噴出口19が燃料ガスの流動に沿った方向に開口しているので、例えば、燃料ガスの空気供給管16への侵入等が確実に防止される。
【0021】
その後、グリル庫4内部の温度が上昇すると、熱発電素子20(及び/又は他の熱発電素子21)が熱発電を開始し、その熱起電力によりファン17が送風動作を開始する。グリル庫4内部の温度が比較的高くなり、グリルバーナ5の周辺温度が高くなると、その内圧の影響により一次空気がベンチュリ部12と燃焼ガスの噴射ノズル14との間から入り難くなる。特に、本実施形態において採用する燃焼部10がセラミック製平板の表面燃焼を行うものにおいては、セラミック製平板の蓄熱作用の影響で燃焼部10周囲の温度が比較的高くなりやすく、一次空気の自然導入が著しく阻害される。一方、このときにはファン17が作動してガス導入路11に強制的に一次空気が送り込まれるので、グリルバーナ5の燃焼部10がセラミック製平板の表面燃焼を行うものであっても良好な燃焼が維持される。このように、ガス導入路11に強制的に一次空気を送り込むファン17を設け、熱発電素子20(及び/又は他の熱発電素子21)の熱起電力によってファン17を駆動するので、一次空気がベンチュリ部12と燃焼ガスの噴射ノズル14との間から入り難くなる時期に合わせてファン17を作動させることができる。これによって、ファン17を駆動するために外部の電源が不要となるだけでなく、グリル庫4内部の温度上昇に応じてファン17が作動するのでファン17を制御する制御回路等も不要とすることができる。しかも、グリルバーナ5の燃焼初期から高い温度での燃焼時にかけて、一次空気を過不足なく供給することができ、グリルバーナ5の良好な燃料状態を維持して調理に必要な輻射熱を安定して得ることができる。
【0022】
なお、本実施形態においては、最も好適な例として、多数の炎孔を備えるセラミック製平板により表面燃焼を行う燃焼部10を備えるグリルバーナ5を挙げて説明したが、それに限るものではない。例えば図示しないが、他のグリルバーナとしてブンゼン式バーナを採用して一次空気の不足が生じる場合であっても、グリル庫4内の温度上昇によって熱発電素子20による熱起電力でファン17を駆動し、一次空気を強制的に供給して良好な燃焼を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態のグリルを模式的に示す断面説明図。
【図2】グリルバーナのガス導入路を示す断面説明図。
【図3】図2のIII−III線断面説明図。
【図4】熱発電素子の取り付け状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0024】
1…グリル、3…被調理物、4…グリル庫、5…グリルバーナ、9…排気路、10…燃焼部、11…ガス導入路、12…ベンチュリ部、14…噴射ノズル、16…空気供給路、17…ファン、19…噴出口、20,21…熱発電素子、a…負圧が生じる領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリル庫内の被調理物を加熱するグリルバーナと、該グリル庫内の排気を外部に導出する排気路とを備え、グリルバーナは、燃料ガスと一次空気との混合ガスを導入するガス導入路を備えるグリルにおいて、
グリル庫内及び排気路の少なくとも何れか一方の所定位置に熱発電素子を設け、
該熱発電素子の起電力により駆動され、グリルバーナのガス導入路に一次空気を強制的に送るファンを設けたことを特徴とするグリル。
【請求項2】
前記グリルバーナのガス導入路には、その上流端部に燃料ガスの噴射ノズルが臨むベンチュリ部が設けられており、
前記ファンは、前記ベンチュリ部又は該ベンチュリ部の下流位置においてガス導入路に接続された空気供給路を介して一次空気を送ることを特徴とする請求項1記載のグリル。
【請求項3】
前記空気供給路は、前記ベンチュリ部によって負圧が生じる領域において、前記噴射ノズルから噴射される燃料ガスの流動方向の下流に向かってガス導入路内に開口する噴出口を備えることを特徴とする請求項2記載のグリル。
【請求項4】
前記グリルバーナは、セラミック製平板に多数の炎孔が形成されて表面燃焼を行う燃焼部を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載のグリル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−90666(P2006−90666A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278687(P2004−278687)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】