説明

グリース用の官能化ポリマー組成物

以下の(a)〜(d)を有するポリマーを含有するグリース組成物:(a)モノマー(i)約10個〜約20個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステル;および(ii)モノマー(i)とは異なる約4個〜約11個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステル;および(iii)少なくとも1種の不飽和ジカルボン酸無水物またはそれらの誘導体;および(iv)必要に応じて、約1個〜約3個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステル;および必要に応じて、(v)第一級官能性、第二級官能性またはそれらの混合を有する少なくとも1種の非モノマー状アミン;および必要に応じて、(b)他の性能添加剤;(c)少なくとも1種の増粘剤;および(d)潤滑粘性のあるオイル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、以下の(a)〜(d)を含有するグリース(特に、潤滑グリース)に関する:(a)以下の(i)〜(v)を含むポリマー:(i)約10個〜約20個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステル;(ii)モノマー(i)とは異なる約4個〜約11個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステル;(iii)少なくとも1種の不飽和ジカルボン酸無水物またはそれらの誘導体;(iv)必要に応じて、約1個〜約3個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステル;および(v)必要に応じて、第一級官能性、第二級官能性またはそれらの混合を有する少なくとも1種の非モノマー状アミン;必要に応じて、(b)他の性能添加剤;(c)少なくとも1種の増粘剤;および(d)潤滑粘性のあるオイル。本発明は、さらに、これらの新規添加剤組成物を製造する方法およびそのグリースでの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ベースオイル、増粘剤、および必要に応じて、他の性能添加剤(例えば、酸化防止剤または耐摩耗剤)からグリースを調製することは、知られている。グリースの性能特性を向上させるために、グリースには、ポリマーもまた加えられており、例えば、ポリマーは、水の洗い流しを少なくするために、撥水性を高めるために、オイルの分離を少なくするために、滴点または円錐貫入を高めるために、また、増粘剤として、使用されている。しばしば、グリースには、ポリメタクリレートまたはポリオレフィンのポリマーが加えられる。典型的には、これらのポリマーは、ベースオイルに取り込まれ、そして粘度調整剤として作用する。しかしながら、これらのポリマーは、増粘剤との相互作用が限られている。この結果、グリースは、水の影響を受けやすくなる(例えば、水の洗い流しまたは低下した撥水性)。水の洗い流しまたは撥水性に乏しいグリースを生成すると、グリースの寿命が低下し、また、潤滑する表面での摩耗が大きくなる。
【0003】
米国特許第5,000,862号は、鋼鉄加工ミルにおいてベアリングを潤滑させ保護する方法を開示している。この方法のキャスタローラーは、ポリメタクリレート添加剤を含有するグリースを使用することにより、寿命、錆および腐食が向上した。このポリメタクリレート添加剤は、耐水性を向上させ、そして水の洗い流しを低下させる。このポリメタクリレートは、官能化されておらず、グリースを形成するのに使用されるベースオイルおよび増粘剤と相互作用しない。
【0004】
米国特許第4,929,371号は、グリースにおいて、以下から選択されるポリマー添加剤を使用することを開示している:ポリウレタン、ポリオキシド、ポリアミン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリオレフィン、ポリオレフィンアリーレン、ポリアリーレンおよびポリメタクリレート。これらのポリマーは、熱的に安定であり、高温での酸化、腐食、熱分解、グリースの有害な重合、およびラッカーリングをできるだけ少なくする。これらのポリマーは、疎水性であり、グリースの有効寿命を延ばす。これらのポリマーは、ホウ酸またはホウ素含有化合物と反応してホウ酸塩化ポリマーを生じることができるとき以外、官能化されていない。
【0005】
中国特許出願87105053Aは、リチウムグリースを開示しており、これらは、C12〜C24脂肪酸および水酸化リチウム、合成油または鉱油、および添加剤パッケージ(これは、そのグリース組成物の1重量%で、ポリアクリレートを含有する)をケン化することにより、調製される。このポリアクリレートは、官能化されておらず、また、グリースを形成するのに使用されるベースオイルおよび増粘剤と相互作用しない。
【0006】
米国特許第4,668,412号は、官能化されたポリマーを開示しており、これらは、少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマー、ジカルボン酸無水物、アミンおよび官能化マンニッヒ塩基を含有する潤滑油中にて、使用可能である。第一および第二(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ、10個〜16個の炭素原子および12個〜18個の炭素原子を有するアルコールから誘導される。このジカルボン酸無水物は、無水マレイン酸またはそれらの誘導体である。このアミンは、第一級または第二級官能化できる。このマンニッヒ塩基は、そのポリマーアミン基の窒素を介したフェノール、アルデヒドおよびポリアミンの反応から、形成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリマーを含有する潤滑粘性のあるオイルを、増粘性を向上させ、水の洗い流しを少なくし、撥水性を高め、寿命を延ばし、そして摩耗を少なくできるグリースに適当にすることが望ましい。
【0008】
本発明は、水の洗い流しおよび撥水性を向上させることによりグリースを改良できるポリマーを含有するグリース組成物を提供する。本発明は、さらに、増粘性を向上できるポリマーを含有するグリース組成物を提供する。本発明は、さらに、摩耗を少なくし寿命を延ばすことができるポリマーを含有するグリース組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、以下の(a)〜(d)を含有するグリース(特に、潤滑グリース)を提供する:
(a)以下の(i)〜(v)を含むポリマー:
(i)約10個〜約20個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステル;
(ii)モノマー(i)とは異なる約4個〜約11個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステル;
(iii)少なくとも1種の不飽和ジカルボン酸無水物またはそれらの誘導体;および
(iv)約1個〜約3個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステルであって、該カルボン酸エステルは、該ポリマー組成物の約0〜約9.9重量%の範囲で、存在している;
(v)第一級官能性、第二級官能性またはそれらの混合を有する少なくとも1種の非モノマー状アミンであって、該非モノマー状アミンは、該不飽和ジカルボン酸無水物またはそれらの誘導体の約0〜約1当量の範囲で、存在している;
(b)他の性能添加剤であって、該性能添加剤は、該組成物の約0〜約20重量%の範囲で、存在している;
(c)少なくとも1種の増粘剤;および
(d)グリース組成物を生じる潤滑粘性のあるオイル。
【0010】
本発明は、さらに、グリース(特に、潤滑グリース)を調製する方法を提供し、該方法は、以下の工程を包含する:
(1)(a)以下の(i)〜(iii)を含有するモノマーと、(b)少なくとも1種の開始剤と、(c)少なくとも1種の連鎖移動剤とを混合する工程:(i)約10個〜約20個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステル;(ii)モノマー(i)とは異なる約4個〜約11個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステル;(iii)必要に応じて、約1個〜約3個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステル;
(2)工程(1)の生成物の一部を少なくとも1種の不飽和ジカルボン酸無水物またはそれらの誘導体と混合する工程;
(3)工程(2)の前記混合物を、約3分間〜約12時間にわたって、約70℃〜約200℃の範囲の温度まで加熱し、約80℃〜約130℃の範囲の温度に冷却する工程;
(4)工程(3)の生成物に工程(1)の残り部分を加え、ポリマー中の未反応モノマーを重合させる工程;
(5)必要に応じて、該ポリマーに、第一級官能性、第二級官能性またはそれらの混合を有する少なくとも1種の非モノマー状アミンを加えて、アミデートポリマーを生じる工程;
(6)工程(4)の該ポリマーまたは工程(5)の該アミデートポリマーに、少なくとも1種の増粘剤を加える工程;または該該アミデートポリマーの添加中またはそれに続いて、潤滑粘性のあるオイルを加える工程;および
(7)必要に応じて、工程(6)の生成物に、他の性能添加剤を加える工程であって、該他の性能添加剤は、酸化防止剤、錆止め剤、金属不活性化剤、耐摩耗剤、耐スカッフィング剤、極圧剤、発泡防止剤、乳化破壊剤、摩擦調整剤、粘度調整剤、流動点降下剤およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0011】
本発明は、さらに、水の洗い流しおよび撥水性を向上させることによりグリースを改良できるポリマーを含有するグリース組成物を提供する。本発明は、さらに、増粘性を向上できるポリマーを含有するグリース組成物を提供する。本発明は、さらに、摩耗を少なくし寿命を延ばすことができるポリマーを含有するグリース組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
本発明は、以下の(a)〜(d)を含有するグリース組成物を提供する:
(a)以下の(i)〜(v)を含むポリマー:
(i)約10個〜約20個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステル;
(ii)モノマー(i)とは異なる約4個〜約11個の炭素原子を有するアルキル基を含有する、少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステル;
(iii)少なくとも1種の不飽和ジカルボン酸無水物またはそれらの誘導体;および
(iv)約1個〜約3個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステルであって、該カルボン酸エステルは、該ポリマー組成物の約0〜約9.9重量%の範囲で、存在している;
(v)第一級官能性、第二級官能性またはそれらの混合を有する少なくとも1種の非モノマー状アミンであって、該非モノマー状アミンは、該不飽和ジカルボン酸無水物またはそれらの誘導体の約0〜約1当量の範囲で、存在している;
(b)他の性能添加剤であって、該性能添加剤は、該組成物の約0〜約20重量%の範囲で、存在している;
(c)少なくとも1種の増粘剤;および
(d)グリース組成物を生じる潤滑粘性のあるオイル。
【0013】
成分(a)のモノマー(i)〜(iv)から誘導されるポリマーの分子量は、種々の公知技術(例えば、反応温度、開始剤、モノマーの濃度および連鎖移動剤)を使用して、制御できる。このポリマーの分子量(M)は、約1000〜約1,000,000の範囲、好ましくは、約5000〜約750,000の範囲、さらに好ましくは、約10,000〜約600,000の範囲、さらにより好ましくは、約100,000〜約650,000の範囲、最も好ましくは、約200,000〜約500,000の範囲である。
【0014】
このポリマーは、グリース組成物中にて、その潤滑油組成物の約0.01〜約30重量%の範囲、好ましくは、約0.04〜約20重量%の範囲、さらにより好ましくは、約0.07〜約10重量%の範囲、最も好ましくは、約0.1〜約5重量%の範囲で、存在している。
【0015】
(10個〜20個の炭素原子を含有する不飽和α,β−カルボン酸エステル)
本発明の組成物に適当な約10個〜約20個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステルから誘導されたエステルは、次式により表わすことができる:
【0016】
【化6】

ここで、RおよびRは、別個に、水素、ヒドロカルビル基またはそれらの混合である。これらのヒドロカルビル基は、約1個〜約20個、さらに好ましくは、約1個〜約10個、最も好ましくは、約1個〜約4個の炭素原子を含有できる;また、直鎖または分枝であり、アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルおよびそれらの混合からなる群から選択される。これらのヒドロカルビル基はまた、置換、非置換またはそれらの混合であり得る。1実施態様では、これらのヒドロカルビル基は、分枝アルキル基またはそれらの混合であり得る。1実施態様では、これらのヒドロカルビル基は、直鎖アルキル基またはそれらの混合であり得る。Rは、水素、メチルまたはそれらの混合である。
【0017】
は、約10個〜約20個、好ましくは、約10個〜約18個、さらに好ましくは、約11個〜約16個、最も好ましくは、約12個〜約15個の炭素原子を有するアルキル基から誘導できる。このアルキルは、直鎖または分枝であり得、アルキル、シクロアルキル、アリールアルキルおよびそれらの混合からなる群から選択できる。1実施態様では、このアルキル基は、分枝またはそれらの混合であり得る。他の実施態様では、このアルキル基は、直鎖またはそれらの混合であり得る。このアルキル基はまた、置換、非置換またはそれらの混合であり得る。このアルキル基は、置換できるものの、非置換が好ましい。
【0018】
約10個〜約20個の炭素原子を有するアルキル基を含有する適当な不飽和α,β−カルボン酸エステルには、(メタ)アクリル酸カプリル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸イコシルおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、これらの不飽和α,β−カルボン酸エステルには、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ペンタデシルおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、これらの不飽和α,β−カルボン酸エステルは、市販の混合物である。
【0019】
約10個〜約20個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステルから誘導されたモノマーは、このポリマー中にて、そのポリマーの全重量を基準にした重量%で、約9.9重量%〜約99重量%の範囲、好ましくは、約25重量%〜約90重量%の範囲、さらに好ましくは、約48重量%〜約85重量%の範囲、最も好ましくは、約60重量%〜約72重量%の範囲で存在している。
【0020】
(4個〜11個の炭素原子を含有する不飽和α,β−カルボン酸エステル)
本発明の組成物に適当な約4個〜約11個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステルから誘導されたエステルは、次式により表わすことができる:
【0021】
【化7】

ここで、R、RおよびRは、上記のとおりである。Rは、約4個〜約11個、好ましくは、約5個〜約11個、さらに好ましくは、約5個〜約10個、最も好ましくは、約6個〜約10個の炭素原子を有するアルキル基から誘導できるが、但し、Rは、Rとは異なる。このアルキルは、直鎖または分枝であり得、アルキル、シクロアルキル、アリールアルキルおよびそれらの混合からなる群から選択できる。1実施態様では、このアルキル基は、分枝またはそれらの混合であり得る。他の実施態様では、このアルキル基は、直鎖またはそれらの混合であり得る。このアルキル基は、置換、非置換またはそれらの混合であり得る。このアルキル基は、置換できるものの、非置換が好ましい。
【0022】
適当な約4個〜約11個の炭素原子を有するアルキル基を含有する不飽和α,β−カルボン酸エステルの例には、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチル−1−ペンチル、(メタ)アクリル酸3−エチル−1−ペンチル、(メタ)アクリル酸4−エチル−1−ペンチル、(メタ)アクリル酸2,4,4−トリメチル−1−ヘキシル、(メタ)アクリル酸3,5,5−トリメチル−1−ヘキシル、(メタ)アクリル酸3,7−ジメチル−1−オクチル、(メタ)アクリル酸3,7−ジメチル−2−オクチル、(メタ)アクリル酸3,7−ジメチル−3−オクチルおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、約4個〜約11個の炭素原子を有するアルキル基を含有する不飽和α,β−カルボン酸エステルには、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられるが、これらに限定されず、これは、単独で、または併用して、使用され得る。
【0023】
約4個〜約11個の炭素原子を有するアルキル基を含有する不飽和α,β−カルボン酸エステルから誘導されたモノマーは、このポリマー中にて、そのポリマーの全重量を基準にした重量%で、約0.1重量%〜約80重量%の範囲、好ましくは、約5重量%〜約65重量%の範囲、さらに好ましくは、約10重量%〜約50重量%の範囲、最も好ましくは、約25重量%〜約35重量%の範囲で存在している。
【0024】
(1個〜3個の炭素原子を含有する不飽和α,β−カルボン酸エステル)
本発明の組成物に適当な約1個〜約3個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステルから誘導されたエステルは、次式により表わすことができる:
【0025】
【化8】

ここで、R、RおよびRは、上記のとおりである。Rは、約1個〜約3個、好ましくは、約1個〜約2個、最も好ましくは、約1個の炭素原子を有するアルキル基から誘導できる。このアルキルは、直鎖または分枝またはそれらの混合であり得る。このアルキル基は、分枝であり得るものの、直鎖が好ましい。このアルキル基は、置換、非置換またはそれらの混合であり得る。このアルキル基は、置換できるものの、非置換が好ましい。
【0026】
適当な約1個〜約3個の炭素原子を有するアルキル基を含有する不飽和α,β−カルボン酸エステルの例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピルおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、この約1個〜約3個の炭素原子を有するアルキル基を含有する不飽和α,β−カルボン酸エステルは、(メタ)アクリル酸メチルであり、これは、単独で、または併用して、使用され得る。
【0027】
約1個〜約3個の炭素原子を有するアルキル基を含有する不飽和α,β−カルボン酸エステルから誘導されたモノマーは、このポリマー中にて、そのポリマーの全重量を基準にした重量%で、このポリマー組成物の約0重量%〜約9.9重量%の範囲、好ましくは、約0.25重量%〜約5重量%の範囲、さらに好ましくは、約1重量%〜約3.5重量%の範囲、最も好ましくは、約1.5重量%〜約2.5重量%の範囲で存在している。
【0028】
(不飽和ジカルボン酸無水物またはそれらの誘導体官能性)
このコポリマーは、不飽和ジカルボン酸無水物またはそれらの誘導体を含有し、本発明の組成物に適当な官能性は、次式により表わされる無水マレイン酸から誘導できる:
【0029】
【化9】

ここで、RおよびRは、別個に、水素、または約1個〜約40個、好ましくは、約1個〜約30個、さらに好ましくは、約1個〜約20個、最も好ましくは、約1個〜約10個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であり得る。このヒドロカルビル基の炭素原子は、アルキル、アルキルアリール、シクロアルキル、アリールまたはそれらの混合であり得る。これらのヒドロカルビル基は、置換、非置換、分枝、非分枝またはそれらの混合であり得るが、非置換が好ましい。式(IV)で示されたマレイン酸構造の誘導体は、無水物、エステル、酸、塩およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0030】
適当な塩には、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、これらの塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムおよびそれらの混合物を含有できる。
【0031】
本発明の組成物に適当な不飽和ジカルボン酸無水物またはそれらの誘導体官能性の適当な例には、無水マレイン酸、無水メチルマレイン酸、無水エチルマレイン酸、無水ジメチルマレイン酸またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい不飽和ジカルボン酸無水物またはそれらの誘導体官能性は、無水マレイン酸であり、これは、単独で、または併用して、使用できる。
【0032】
不飽和ジカルボン酸無水物またはそれらの誘導体官能性は、このポリマー中にて、そのポリマーの全重量を基準にした重量%で、このポリマー組成物の約0.1重量%〜約10重量%の範囲、好ましくは、約0.25重量%〜約5重量%の範囲、さらに好ましくは、約1重量%〜約3.5重量%の範囲、最も好ましくは、約1.5重量%〜約2.5重量%の範囲で存在している。
【0033】
(非モノマー状アミン)
本明細書中で使用する「非モノマー状アミン」との用語は、上記のように、モノマー(i)、(ii)、(iii)および(iv)と重合できないアミンを記述するように、使用される。
【0034】
この潤滑油組成物は、必要に応じて、モノアミン、ポリアミンおよびそれらの混合物から選択できる少なくとも1種の非モノマー状アミンを含有できる。これらのアミンは、環状、直鎖または分枝であり得、そしてアルキレンモノアミン、複素環モノアミン、アルキレンポリアミン、複素環ポリアミンおよびそれらの混合物から選択され、好ましくは、これらのアミンは、1個以下の第一級または第二級アミノ基を含有する。
【0035】
1実施態様では、これらのアルキレンポリアミンは、エチレンポリアミン、プロピレンポリアミン、ブチレンポリアミンおよびそれらの混合物からなる群から選択できる。プロピレンポリアミンの例には、プロピレンジアミン、ジプロピレントリアミンおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。エチレンポリアミンが好ましく、これには、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリアミンスティルボトムスおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
1実施態様では、これらのポリアミンは、α,β−ジアミノアルカンであり得る。適当なα,β−ジアミノアルカンには、ジアミノプロパン、ジアミノブタンまたはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。特定のジアミノアルカンは、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、3,3’−ジアミン−N−メチルジプロピルアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、N,N’−1,2−エタンジイルビス−(1,3−プロパンジアミン)およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0037】
1実施態様では、他のポリアミンには、ジ−(トリメチレン)トリアミン、ピペラジン、ジアミノシクロヘキサンおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
1実施態様では、このアミンは、環状であり得、これには、次式により表わされる化合物が挙げられるが、これらに限定されない:
【0039】
【化10】

ここで、Rは、単核環または多核環に結合した原子であり得る;そして該原子は、炭素、酸素、窒素、リンおよびそれらの混合からなる群から選択される。好ましくは、Rは、炭素、酸素、窒素およびそれらの混合からなる群から選択される原子であり得る。
【0040】
この単核環状構造は、約5個〜約8個の原子、好ましくは、約6個〜約7個の原子を含有する。この多核環状構造は、約8個〜約16個、好ましくは、約10個〜約12個の原子を含有する。wは、約4個〜約15個、好ましくは、約5個〜約11個、さらに好ましくは、約5個〜約8個の原子の範囲であり得る。この環状環は、芳香族、非芳香族またはそれらの混合であり得るが、非芳香族が好ましい。
【0041】
10は、約1個〜約8個、好ましくは、約1個〜約6個、最も好ましくは、約2個〜約5の個炭素原子を含有するyを備えたアルキルまたはアルケニル基であり得る。このアルキルまたはアルケニル基は、置換、非置換、分枝、非分枝のアルキルアリール、シクロアルキルまたはそれらの混合であり得る。R10の適当な例には、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびそれらの混合が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、R10は、エチル、プロピルまたはそれらの混合である。
【0042】
11およびR12は、水素またはヒドロカルビルであり、好ましくは、R11およびR12の少なくとも1個、最も好ましくは、両方は、水素である。R11またはR12がヒドロカルビルであるとき、存在する炭素原子の数は、約1個〜約8個の範囲、好ましくは、約1個〜約5個の範囲、最も好ましくは、約1個〜約3個の範囲またはそれらの混合である。ヒドロカルビル基の適当な例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびそれらの混合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
適当な環状アミンの例には、4−(3−アミノプロピル)モルホリン、4−(3−アミノエチル)モルホリンまたはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、この環状アミンは、4−(3−アミノプロピル)モルホリンであり、これは、単独で、または併用して、使用され得る。
【0044】
これらのアミンは、存在するとき、モノマー(iii)と十分に反応してポリマー中に残留アミンを残さない有効量である。好ましくは、このアミンは、全てのモノマー(iii)と反応してポリマー中に残渣を残さないことを保証するのに十分な量で、存在している。典型的には、このアミンは、このポリマーの全重量を基準にして重量%で、この不飽和ジカルボン酸無水物またはそれらの誘導体の約0〜約1当量の範囲、好ましくは、約0.1〜約1当量の範囲、さらに好ましくは、約0.2〜約1当量の範囲、最も好ましくは、約0.4〜約1当量の範囲で、存在している。
【0045】
上記ポリマーは、好ましくは、マンニッヒ官能性を含まない。このマンニッヒ塩基は、(a)アルデヒドと、(b)フェノールおよび(c)第一級官能性、第二級官能性またはそれらの混合を有する少なくとも1種の非モノマー状アミンとを反応させることにより、形成できる。
【0046】
(増粘剤)
増粘剤(例えば、カルボン酸の金属塩)は、グリース調合の技術分野で、公知である。しばしば、その金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウムまたはそれらの混合物である。適当な金属の例には、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アルミニウムおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、この金属は、リチウム、カルシウム、アルミニウムまたはそれらの混合物である。
【0047】
この増粘剤で使用されるカルボン酸は、しばしば、脂肪酸であり、モノ−またはポリヒドロキシカルボン酸であり得る。このカルボン酸は、約4個〜約30個、好ましくは、約8個〜約27個、さらに好ましくは、約19個〜約24個、最も好ましくは、約10個〜約20個の炭素原子を有する。適当な脂肪酸の例には、カプリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、この脂肪酸は、ステアリン酸であり、これは、単独で、または併用して、使用できる。
【0048】
1実施態様では、このカルボン酸増粘剤は、ヒドロキシ置換脂肪酸またはそれらの混合物であり得る。特に好ましいヒドロキシ置換脂肪酸は、ヒドロキシステアリン酸であり、ここで、1個またはそれ以上の水酸基は、そのアルキル基の10−、11−、12−、13−または14−位置に位置している。適当な例には、10−ヒドロキシステアリン酸、11−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、13−ヒドロキシステアリン酸、14−ヒドロキシステアリン酸およびそれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。1実施態様では、このヒドロキシ置換脂肪酸は、12−ヒドロキシステアリン酸である。
【0049】
この増粘剤はまた、ケン化により、少なくとも1種の脂肪酸源(例えば、植物油または動物性脂肪)から直接調製できる。この増粘剤は、脂肪酸から直接調製でき、そして水素化ヒマシ油、グリセリド、またはアルキル基を含有する他のエステルであり得る。これらのアルキル基は、約1個〜約10個、好ましくは、約1個〜約5個、最も好ましくは、約1個〜約3個の炭素原子を含有できる。脂肪酸のためのアルキル基の適当な例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、グリセロールおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本発明の1局面では、この増粘剤は、無機粉末であり得、これは、粘土、有機粘土、ベントナイト、発煙シリカ、方解石、カーボンブラック、顔料、銅フタロシアニンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。1実施態様では、オーバーベース化スルホン酸またはカルボン酸カルシウムから製造された方解石含有増粘剤が使用できる。
【0051】
この増粘剤は、この潤滑油組成物の約3〜約30重量%の範囲、好ましくは、約4〜約25重量%の範囲、さらにより好ましくは、約4〜約18重量%の範囲、 最も好ましくは、約5〜約18重量%の範囲で、存在している。
【0052】
(潤滑粘性のあるオイル)
本発明の潤滑油組成物には、潤滑粘性のある天然油または合成油、水素化分解、水素化、ハイドロフィニッシングから誘導されたオイル、未精製油、精製油および再精製油、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
未精製油とは、天然原料または合成原料から、さらに精製処理することなく(または殆ど精製処理せずに)、直接得られるオイルである。
【0054】
精製油は、1種またはそれ以上の特性を改良するべく、1段またはそれ以上の精製段階でさらに処理されたこと以外は、未精製油と類似している。精製技術は、当該技術分野で公知であり、溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、浸透などが挙げられる。
【0055】
再精製油はまた、再生された油または再生加工された油として公知であり、そして消費された添加剤および油の分解生成物を除去するべく指示された方法により、しばしばさらに処理される。
【0056】
天然油には、動物油および植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油)、鉱物性の潤滑油(例えば、液状の石油オイル、およびパラフィンタイプ、ナフテンタイプまたは混合したパラフィン−ナフテンタイプであって、かつ溶媒処理された鉱物性潤滑油または酸処理された鉱物性潤滑油、石炭またはけつ岩から誘導されるオイルおよびそれらの混合物)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
合成の潤滑油には、炭化水素油、例えば、重合されたオレフィンおよびインターポリマー化されたオレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレンコポリマー);ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)およびそれらの混合物;アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)−ベンゼンなど);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化されたポリフェニル);アルキル化されたジフェニルエーテルおよびアルキル化されたジフェニルスルフィド、およびそれらの誘導体、類似物および同族体、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
シリコンベースのオイル(例えば、ポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−、またはポリアリールオキシ−シロキサンオイルおよびシリケートオイル)は、合成潤滑剤の他の有用なクラスを構成する(例えば、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ(2−エチルヘキシル)シリケート、テトラ(4−メチルヘキシル)シリケート、テトラ(p−第三級ブチルフェニル)シリケート、ヘキシル(4−メチル−2−ペントキシ)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサンおよびポリ(メチルフェニル)シロキサン)。
【0059】
他の合成潤滑油には、リン含有酸の液状エステル(例えば、リン酸トリクレシル、リン酸トリオクチルおよびデカンホスホン酸のジエチルエステル)、重合したテトラヒドロフランなどが挙げられるが、これらに限定されない。合成油は、
フィッシャー−トロプシュ反応により生成され得、典型的には、水素異性化されたフィッシャー−トロプシュ炭化水素またはワックスであり得る。
【0060】
潤滑粘性のあるオイルはまた、American Petroleum Institute(API)Base Oil Interchangeability Guidelinesで指定されたように、定義できる。5つのベースオイル群は、以下のとおりである:第I族 イオウ含量>0.03重量%、および/または<90重量%の飽和物、粘度指数80〜120;第II族 イオウ含量≦0.03重量%、および≧90重量%の飽和物、粘度指数 80〜120;第III族 イオウ含量≦0.03重量%、および≧90重量%の飽和物、粘度指数 ≧120;第IV族 全てのポリアルファオレフィン(PAO’s);および第V 族 第I族、第II族、第III族または第IV族に含まれない他の全て。1実施態様では、この潤滑粘性のあるオイルは、API 第I族、第II族、第III族、第IV族、第V族またはそれらの混合物、好ましくは、API 第I族、第II族、第III族またはそれらの混合物を含有する。
【0061】
この潤滑粘性のあるオイルは、この潤滑油組成物の約20〜約97重量%の範囲、好ましくは、約40〜約96重量%の範囲、さらにより好ましくは、約60〜約96重量%の範囲、最も好ましくは、約67〜約95重量%の範囲で、存在している。この潤滑粘性のあるオイルは、これは、単独で、または併用して、使用され得る。
【0062】
(他の性能添加剤)
必要に応じて、この組成物は、酸化防止剤、錆止め剤、金属不活性化剤、耐摩耗剤、耐スカッフィング剤、極圧剤、発泡防止剤、乳化破壊剤、摩擦調整剤、粘度調整剤、流動点降下剤およびそれらの混合物からなる群から選択される他の性能添加剤を含有できる。
【0063】
存在している他の性能添加剤を合わせた全量は、この潤滑油組成物の約0〜約20重量%の範囲、好ましくは、約0.1〜約15重量%の範囲、さらにより好ましくは、約0.2〜約10重量%の範囲、最も好ましくは、約0.4〜約10重量%の範囲であり得る。
【0064】
(酸化防止剤)
酸化防止剤には、次式により表わされるヒンダードフェノールが挙げられるが、これらに限定されない:
【0065】
【化11】

ここで、R13およびR14は、別個に、約1個〜約24個、好ましくは、約4個〜約18個、最も好ましくは、約4個〜約12の個炭素原子を含有する分枝または直鎖アルキル基である。
【0066】
13およびR14は、直鎖または分枝鎖のいずれかであり得る;分枝鎖が好ましい。好ましくは、このフェノールは、ブチルで置換されており、2個のt−ブチルを含有する。このt−ブチル基が2,6−位置を占めるとき、このフェノールは、立体的に障害がある。Qは、水素またはヒドロカルビルである。適当なヒドロカルビル基の例には、2−エチルヘキシル、n−ブチル、ドデシルおよびそれらの混合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
本発明に適当な他の任意の立体障害フェノールには、次式により表わされるものが挙げられるが、これらに限定されない:
【0068】
【化12】

ここで、R15、R16、R17、R18、R19、R20は、直鎖または分枝のいずれかであり、そして約4個〜約18個、好ましくは、約4個〜約12個の炭素原子を含有する。好ましくは、このフェノールは、ブチルで置換されている。R21およびR22は、別個に、水素またはヒドロカルビルである;好ましくは、R21およびR22は、アリールアルキル、アルキルまたはそれらの混合である。これらのアルキル基は、直鎖または分枝であり得、直鎖が好ましい。R21およびR22は、好ましくは、その−OH基に対してパラ位置にある。これらのアリールアルキルまたはアルキル基は、典型的には、1個〜15個、好ましくは、1個〜10個、さらに好ましくは、1個〜5個の炭素原子を含有する。架橋基Yには、−CH−(メチレン架橋)または−CHOCH−(エーテル架橋)およびそれらの混合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
メチレン架橋した立体的に障害のあるフェノールの例には、4,4’−メチレンビス(6−第三級ブチル o−クレゾール)、4,4’−メチレンビス(2−第三級アミル−o−クレゾール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三級ブチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−第三級ブチルフェノール)およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
1実施態様では、この酸化防止剤は、次式により表わされるヒンダードエステル置換フェノールである:
【0071】
【化13】

ここで、R23、R24およびR25は、約2個〜約22個、好ましくは、約2個〜約18個、さらに好ましくは、約4個〜約8の個炭素原子を含有する直鎖または分枝アルキル基である。アルキル基の具体例には、2−エチルヘキシル、n−ブチルエステル、ドデシルおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
他の種類の酸化防止剤には、次式により表わすことができるアルキル化ジフェニルアミンがある:
【0073】
【化14】

ここで、R26およびR27は、別個に、水素またはヒドロカルビル、好ましくは、アリールアルキルまたはアルキル基である。これらのアリールアルキル基は、約5個〜約20個、好ましくは、約6個〜約10個の炭素原子を含有する。これらのアルキル基は、直鎖または分枝、好ましくは、直鎖であり得る;このアルキル基は、約1個〜約24個、好ましくは、約2個〜約18個、最も好ましくは、約4個〜約12個の炭素原子を含有する;そしてzは、別個に、0、1、2または3であるが、但し、少なくとも1個の芳香環は、ヒドロカルビル基を含有する。好ましいアルキル化ジフェニルアミンには、ビス−ノニル化ジフェニルアミンおよびビス−オクチル化ジフェニルアミンおよびそれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。この酸化防止剤は、単独で、または併用して、使用できる。
【0074】
(錆止め剤)
錆止め剤は、公知であり、これには、カルボン酸のアミン塩(例えば、オクタン酸オクチルルアミン)、ドデシルコハク酸または無水物および脂肪酸(例えば、オレイン酸とポリアミンとの縮合生成物(例えば、ポリアルキレンポリアミン(例えば、トリエチレンテトラミン)、およびアルケニルコハク酸(ここで、そのアルケニル基は、約8個〜約24個の炭素原子を含有する)とアルコール(例えば、ポリグリコール)との半エステルが挙げられるが、これらに限定されない。これらの錆止め剤は、単独で、または併用して、使用できる。
【0075】
(金属不活性化剤)
金属不活性化剤は、潤滑油における酸化を促進する金属の触媒効果を中和するために、使用できる。金属不活性化剤の例には、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾトリアゾール、2−(N,N−ジアルキル−ジチオカルバモイル)ベンゾトリアゾール、2,5−ビス(アルキル−ジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(N,N−ジアルキルジチオカルバモイル)−1,3,4−チアジアゾール、2−アルキルジチオ−5−メルカプトチアジアゾールおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
好ましくは、この金属不活性化剤は、ヒドロカルビル置換ベンゾトリアゾール化合物である。ヒドロカルビル置換基を有するベンゾトリアゾール化合物は、以下の環位置の少なくとも1個を含む:1−または2−または4−または5−または6−または7−ベンゾトリアゾール。そのヒドロカルビル基は、約1個〜約30個、好ましくは、約1個〜約15個、さらに好ましくは、約1個〜約7個の炭素原子を含有し、最も好ましくは、この金属不活性化剤は、5−メチルベンゾトリアゾールであり、単独で、または併用して、使用され得る。
【0077】
(耐摩耗剤)
この潤滑剤は、さらに、耐摩耗剤を含有し得る。有用な耐摩耗剤には、チオリン酸金属(特に、ジアルキルジチオリン酸亜鉛);リン酸エステルまたはそれらの塩;ホスファイト;およびリン含有カルボン酸エステル、エーテルおよびアミドが挙げられるが、これらに限定されない。この耐摩耗剤は、単独で、または併用して、使用できる。
【0078】
(耐スカッフィング剤)
この潤滑剤はまた、耐スカッフィング剤を含有し得る。接着剤の摩耗を少なくする耐スカッフィング剤は、しばしば、イオウ含有化合物である。典型的には、これらのイオウ含有化合物には、ポリスルフィド(例えば、ベンジルジスルフィド、ビス−(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、ジ−第三級ブチルポリスルフィド、硫化マッコウ鯨油、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジテルペン、硫化テルペン、硫化ディールス−アルダー付加物、アルキルスルフェニルN’N−ジアルキルジチオカーバメート)、ポリアミンと多塩基酸エステルとの反応生成物、2,3−ジブロモプロポキシイソ酪酸のクロロブチルエステル、ジアルキルジチオカルバミン酸のアセトキシメチルエステルおよびキサントゲン酸のアシルオキシアルキルエーテルおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。これらの耐スカッフィング剤は、単独で、または併用して、使用できる。
【0079】
(極圧剤)
このオイルに溶解性である極圧(EP)剤には、イオウおよびクロロイオウ含有EP剤、塩素化炭化水素EP剤、リンEP剤およびそれらの混合物が挙げられる。このようなEP剤の例には、塩素化ワックス、有機スルフィドおよびポリスルフィド(例えば、ベンジルジスルフィド、ビス−(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、硫化マッコウ鯨油、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジテルペン、硫化テルペン、硫化ディールス−アルダー付加物);リン硫化炭化水素(例えば、リンスルフィドとテレビン油またはオレイン酸メチルとの反応生成物、リンエステル(例えば、亜リン酸ジ炭化水素およびトリ炭化水素、すなわち、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジヘプチル、亜リン酸ジシクロヘキシル、亜リン酸ペンチルフェニル;亜リン酸ジペンチルフェニル、亜リン酸トリデシル、亜リン酸ジステアリルおよび亜リン酸ポリプロピレン置換フェノール))、チオカルバミン酸金属(例えば、ジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛)およびバリウムヘプチルフェノール二酸(例えば、ジシクロヘキシルホスホロジチオ酸亜鉛およびホスホロジチオ酸の亜鉛塩);およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。これらの極圧剤は、単独で、または併用して、使用できる。
【0080】
(発泡防止剤)
発泡防止剤は、公知であり、これには、有機シリコーン(例えば、ポリアセテート、ジメチルシリコーン、ポリシロキサン、ポリアクリレートまたはそれらの混合物)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
発泡防止剤の例には、アクリル酸ポリエチル、アクリル酸ポリ2−エチルヘキシル、酢酸ポリビニルおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。発泡防止剤は、単独で、または併用して、使用できる。
【0082】
(乳化破壊剤)
乳化破壊剤は、公知であり、これには、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ポリオキシアルキレンアルコール、アルキルアミン、アミノアルコール、ジアミンまたはポリアミンの誘導体(これらは、順次、エチレンオキシドまたは置換エチレンオキシドと反応される)およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
乳化破壊剤の例には、リン酸トリアルキル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。乳化破壊剤は、単独で、または併用して、使用できる。
【0084】
(流動点降下剤)
流動点降下剤は、公知であり、これには、無水マレイン酸−スチレン共重合の体のエステル、ポリメタクリレート;ポリアクリレート;ポリアクリルアミド;ハロパラフィンワックスと芳香族化合物との縮合生成物;ビニルカルボキシレートポリマー;およびフマル酸ジアルキルの三元コポリマー、脂肪酸のビニルエステル、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合樹脂、アルキルビニルエーテルおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。流動点降下剤は、単独で、または併用して、使用できる。
【0085】
(摩擦調整剤)
この潤滑剤は、さらに、摩擦調整剤を含有し得る。有用な摩擦調整剤には、脂肪アミン、エステル(特に、グリセロールエステル(例えば、グリセロールモノオレエート、ホウ酸塩化グリセロールエステル))、脂肪ホスファイト、脂肪酸アミド、脂肪エポキシド、ホウ酸塩化脂肪エポキシド、アルコキシル化脂肪アミン、ホウ酸塩化アルコキシル化脂肪アミン、脂肪酸の金属塩、硫化オレフィン、脂肪イミダゾリン、カルボン酸とポリアルキレン−ポリアミンとの縮合生成物、アルキルリン酸のアミン塩、およびモリブデン含有摩擦調整剤(例えば、ジチオカルバミン酸モリブデン)およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。摩擦調整剤は、単独で、または併用して、使用できる。
【0086】
(粘度調整剤)
粘度調整剤は、公知であり、これには、スチレン−ブタジエンゴムのコポリマー、エチレン−プロピレン、ポリイソブチレン、水素化スチレン−イソプレンポリマー、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ポリアルキルスチレン、アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、ポリオレフィン、ポリメタクリル酸アルキル、無水マレイン酸−スチレンコポリマーのエステルおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。粘度調整剤は、単独で、または併用して、使用できる。
【0087】
(方法)
本発明は、さらに、グリース組成物を調製する方法であり、該方法は、以下の工程を包含する:
(1)(a)以下の(i)〜(iii)を含有するモノマーと、(b)少なくとも1種の開始剤と、(c)少なくとも1種の連鎖移動剤と、必要に応じて、(d)溶媒とを混合する工程:(i)約10個〜約20個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステル;(ii)モノマー(i)とは異なる約4個〜約11個の炭素原子を有するアルキル基を含有する、少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステル;(iii)必要に応じて、約1個〜約3個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステル;
(2)約25C〜約100℃;好ましくは、約30℃〜約80℃、最も好ましくは、約35℃〜約60℃の範囲の温度で;at pressures in the range 約650mmHg(約86.7kPa)〜約2000mmHg(約266.6kPa)、好ましくは、約690mmHg(約92kPa)〜約1500mmHg(約200kPa)、最も好ましくは、約715mmHg(約95kPa)〜約1000mmHg(約133kPa)の範囲の圧力で;工程(1)の生成物の一部を少なくとも1種の不飽和ジカルボン酸無水物またはそれらの誘導体と混合する工程;
(3)次いで、工程(2)の前記混合物を約70℃〜約200℃の範囲の温度まで加熱し、そして約3分間〜約12時間、好ましくは、約4分間〜約8時間 and 最も好ましくは、約5分間〜約6時間の時間にわたって;約650mmHg(約86.7kPa)〜約2000mmHg(約266.6kPa)の範囲の圧力で保持した後、約650mmHg(約86.7kPa)〜約2000mmHg(約266.6kPa)、好ましくは、約690mmHg(約92kPa)〜約1500mmHg(約200kPa)、最も好ましくは、約715mmHg(約95kPa)〜約1000mmHg(約133kPa)の範囲の圧力で、約80℃〜約130℃、好ましくは、約90℃〜約125℃、最も好ましくは、約99℃〜約120℃の範囲の温度に冷却する工程;
(4)工程(3)の生成物に工程(1)の残り部分を加え、典型的には、約0.25〜約12時間の時間にわたって、ポリマー中の未反応モノマーを重合させ、そして約80℃〜約130℃の範囲の温度で、約0.1時間〜約24時間の時間にわたって保持して、このポリマー中の未反応モノマーの量を減らす工程;
(5)必要に応じて、該ポリマーに、第一級官能性、第二級官能性またはそれらの混合を有する少なくとも1種の非モノマー状アミンを加えて、アミデートポリマーを生じる工程;
(6)工程(4)の該ポリマーまたは工程(5)の該アミデートポリマーに、少なくとも1種の増粘剤を加える工程;または該該アミデートポリマーの添加中またはそれに続いて、潤滑粘性のあるオイルを加える工程;および
(7)必要に応じて、工程(6)の生成物に、他の性能添加剤を加えて、グリース組成物を形成する工程。
【0088】
好ましくは、工程(5)の重合反応は、少なくとも50%、さらに好ましくは、少なくとも70%、さらにより好ましくは、少なくとも90%、最も好ましくは、少なくとも97%完結している。
【0089】
本発明のポリマーは、当該技術分野で公知の種々のバッチ法、半バッチ法または連続法(遊離ラジカル重合、溶液重合、アニオン重合、バルク重合、乳化重合または懸濁重合を含めて)を使用して、調製され得る。
【0090】
本発明のポリマーを重合するのに適当な任意の溶媒は、脂肪族溶媒、芳香族溶媒、アルコール、エーテル、エステル、潤滑粘性のあるオイルおよびそれらの混合物であり得る。適当な任意の溶媒の例には、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリッツ、石油エーテル、ベンゼン、トルエン;イソプロパノール、イソブタノール、2−エチルヘキサノール、ジエチルエーテル、メチル第三級ブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸イソアミルまたはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
潤滑粘性のあるオイルは、溶媒として使用するとき、このグリースの潤滑粘性のあるオイルと同一または異なり得る。この潤滑粘性のあるオイルは、異なり得るものの、好ましくは、このグリースの潤滑粘性のあるオイルと同じである。これらの溶媒は、存在するとき、単独で、または併用して、使用できる。
【0092】
該コポリマーを調製するのに適当な連鎖移動剤には、不安定なイオウ化合物を有する化合物が挙げられるが、これらに限定されない。これらのイオウ化合物には、ベンゾイルジスルフィドおよびメルカプタン(例えば、ドデシルメルカプタン、エチルメルカプタン)を挙げることができるが、これらに限定されず、好ましくは、この連鎖移動剤は、n−ドデシルメルカプタンである。この連鎖移動剤は、単独で、または併用して、使用され得る。
【0093】
その反応混合物に加えられる連鎖移動剤の量は、これらのモノマーの約0.0075〜約4重量%の範囲、さらに好ましくは、これらのモノマーの約0.01〜約3.25重量%の範囲、最も好ましくは、これらのモノマーの約0.02〜約2.5重量%の範囲である。
【0094】
該ポリマーを調製するのに適当な開始剤には、過酸化物、アゾ化合物およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。適当な過酸化物には、第三級ブチルヒドロペルオキシド、過酸化第三級ブチル、過酸化第三級アミル、過酸化クミルまたは過酸化ジベンゾイルおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。適当なアゾ化合物には、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、アゾビス(メチルブチロニトリル)およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、この開始剤は、第三級ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートである。この開始剤は、単独で、または併用して、使用され得る。
【0095】
その反応混合物に加えられる開始剤の量は、これらのモノマーの約0.01〜約10重量%の範囲、好ましくは、約0.05〜約3重量%の範囲、さらに好ましくは、約0.1〜約2重量%の範囲、最も好ましくは、これらのモノマーの約0.5〜約1.5重量%の範囲である。
【0096】
本発明のコポリマーを溶媒の存在下にて調製するとき、その溶媒は、不活性炭化水素潤滑油であり得る。好ましくは、この溶媒は、そのコポリマーを使用するオイルと同一または実質的に類似している。この溶媒は、単独で、または併用して、使用され得る。
【0097】
(工業用途)
本発明のグリース組成物は、典型的には、向上した撥水性、向上した水の洗い流し、向上した増粘性、寿命の延長、摩耗の低下およびそれらの組み合わせからなる群から選択される向上した特性を示す。1実施態様では、このグリース組成物は、乳化グリースで使用できる。
【0098】
以下の実施例は、本発明を例示する。しかしながら、これらの実施例は、全てを網羅するものではなく、本発明の範囲を限定するとは解釈されないことを示しておく。
【0099】
(具体的な実施態様)
【実施例】
【0100】
(実施例1〜8および比較例C1)
全ての実施例について、12−ヒドロキシステアリン酸リチウムを含有するNLGI等級2グリースを使用して、グリース調合物を調製する。このグリース調合物は、以下で示すように、表1で特徴付けたポリマー組成物を含有する。モノマー(i)、(ii)および(iii)は、それぞれ、C12〜C15メタクリレート、メタクリル酸2−エチルヘキシルおよび無水マレイン酸である。実施例1および2は、さらに、アミノプロピルモルホリンを含有し、これは、そのポリマー中の無水マレイン酸残渣を官能化するのに使用される。無水マレイン酸とアミノプロピルモルホリンとのモル比は、1:1である。比較例C1は、典型的なグリース調合物であり、これは、モノマー(i)〜(iv)から形成されるポリマーもそれらのアミデートポリマー誘導体も含有しない。
【0101】
【表1】

(試験1)
ASTM D4049試験は、散水に対するグリースの耐性を測定する。予め秤量したステンレス鋼パネルを、約8mmのグリースで一様に被覆する。次いで、このパネルを再秤量する。次いで、被覆したステンレス鋼パネルに、約5分間にわたって、散水する。この水は、約38℃まで予熱し、一定温度で保持する。水圧ポンプは、約276kPa(これは、約40psiに等しい)で保持する。このパネルを散水から取り除き、そしてオーブンにて、約66℃で、約1時間加熱する。次いで、このパネルをオーブンから取り出し、冷却させ、そして再秤量する。これらのグリース組成物について得られた結果を、以下の表2で示す。
【0102】
【表2】

実施例1〜8は、本発明の官能化ポリマーを含有し、それらは、全て、ポリマーが存在しない対照グリース(C1)よりも散水により取り除かれたグリースの割合が低い。
【0103】
(試験2)
ASTM D1264試験は、グリースの水による洗い流し特性を測定する。摩滅したベアリングに、約4gのグリースを詰め、そしてASTM D1264で記述された装置に挿入する。レザバには、最低で約750mLの蒸留水(これは、約79℃まで予熱した)を加えるが、その水の高さは、ベアリングより低い。ウォーターポンプで水を再循環させ、そして約79℃まで再加熱する。水が約79℃に達したとき、その水を、このベアリングの上に、約5mL s−1の割合で噴霧する。このベアリングを、約1時間にわたって、約600rpmの速度で回転する。このベアリングを装置から取り出し、そして約77℃で、約15時間乾燥させる。残留しているグリースを再秤量する。グリース組成物について得られた結果を、以下の表3で示す。
【0104】
【表3】

表2の実施例1〜8は、本発明の官能化ポリマーを含有し、それらは、全て、ポリマーが存在しない対照グリース(C1)よりも洗い流しの割合が低い。
【0105】
要約すると、これらの試験は、本発明の官能化ポリマーが水の洗い流しおよび散水特性が向上したグリース組成物を提供することを示している。これらの高められた特性により、さらに、このグリースの寿命が向上する。
【0106】
本発明を説明しているものの、それらの種々の変更は、本明細書を読めば、当業者に明らかなことが理解できるはずである。従って、本明細書中で開示の発明は、添付の請求の範囲に入るこれらの変更を含むべく意図されていることが理解できるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)〜(d)を含有する、グリース組成物:
(a)以下の(i)〜(v)を含むポリマー:
(i)約10個〜約20個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステル;
(ii)モノマー(i)とは異なる約4個〜約11個の炭素原子を有するアルキル基を含有する、少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステル;
(iii)少なくとも1種の不飽和ジカルボン酸無水物またはそれらの誘導体;および
(iv)約1個〜約3個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステルであって、該カルボン酸エステルは、該ポリマー組成物の約0〜約9.9重量%の範囲で、存在している;
(v)第一級官能性、第二級官能性またはそれらの混合を有する少なくとも1種の非モノマー状アミンであって、該非モノマー状アミンは、該不飽和ジカルボン酸無水物またはそれらの誘導体の約0〜約1当量の範囲で、存在している;
(b)他の性能添加剤であって、該性能添加剤は、該組成物の約0〜約20重量%の範囲で、存在している;
(c)少なくとも1種の増粘剤;および
(d)グリース組成物を生じる潤滑粘性のあるオイル。
【請求項2】
さらに、前記ポリマーが、約1個〜約3個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらに、第一級官能性、第二級官能性またはそれらの混合を有する少なくとも1種の非モノマー状アミンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリマーが、約1000〜約1,000,000の範囲の分子量(M)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記約10個〜約20個の炭素原子を有するアルキル基を含有する不飽和α,β−カルボン酸エステルが、次式により表わされる、請求項1に記載の組成物:
【化1】

ここで、RおよびRは、別個に、水素、ヒドロカルビル基またはそれらの混合である;Rは、水素、メチルまたはそれらの混合である;そしてRは、約10個〜約20個の炭素原子を有するアルキル基から誘導される、
組成物。
【請求項6】
前記約4個〜約11個の炭素原子を有するアルキル基を含有する不飽和α,β−カルボン酸エステルが、次式により表わされる、請求項1に記載の組成物:
【化2】

ここで、RおよびRは、別個に、水素、ヒドロカルビル基またはそれらの混合である;Rは、水素、メチルまたはそれらの混合である;そしてRは、約4個〜約11個の炭素原子を有するアルキル基から誘導されるが、但し、Rは、Rとは異なる、
組成物。
【請求項7】
前記約1個〜約3個の炭素原子を有するアルキル基を含有する不飽和α,β−カルボン酸エステルが、次式により表わされる、請求項1に記載の組成物:
【化3】

ここで、RおよびRは、別個に、水素、ヒドロカルビル基またはそれらの混合である;Rは、水素、メチルまたはそれらの混合である;そしてRは、約1個〜約3個の炭素原子を有するアルキル基から誘導される、
組成物。
【請求項8】
前記不飽和ジカルボン酸無水物またはそれらの誘導体の適当な官能性が、次式により表わされる、請求項1に記載の組成物:
【化4】

ここで、RおよびRは、別個に、水素、または約1個〜約40個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であり得る、
組成物。
【請求項9】
前記モノマーが、無水マレイン酸、または無水物、エステル、酸、塩およびそれらの混合物のそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記第一級官能性、第二級官能性またはそれらの混合を有するアミンが、モノアミン、ポリアミンおよびそれらの混合からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記第一級官能性、第二級官能性またはそれらの混合を有するアミンが、次式により表わされる、請求項1に記載の組成物:
【化5】

ここで、Rは、単核環または多核環に結合した原子である;そして該原子は、炭素、酸素、窒素、リンおよびそれらの混合からなる群から選択される;R10は、約1個〜約8個の炭素原子を含有するyを備えたアルキルまたはアルケニル基である;wは、約4〜約15の範囲である;R11およびR12は、水素またはヒドロカルビルである、
組成物。
【請求項12】
前記アミンが、4−(3−アミノプロピル)モルホリンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記増粘剤が、粘土、方解石、シリカ、モノカルボン酸の金属塩、ジカルボン酸の金属塩、アルキル基含有脂肪酸およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記他の性能添加剤が、酸化防止剤、錆止め剤、金属不活性化剤、耐摩耗剤、耐スカッフィング剤、極圧剤、発泡防止剤、乳化破壊剤、摩擦調整剤、粘度調整剤、流動点降下剤およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
(i)約10個〜約20個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステルが、約9.9重量%〜約99重量%の範囲で存在している;(ii)モノマー(i)とは異なる約4個〜約11個の炭素原子を有するアルキル基を含有する、少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステルが、約0.1重量%〜約80重量%の範囲で存在している;(iii)不飽和ジカルボン酸無水物またはそれらの誘導体を有する少なくとも1種のモノマーが、約0.1重量%〜約10重量%の範囲で存在している;そして(iv)約1個〜約3個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステルが、前記ポリマー組成物の約0〜約9.9重量%の範囲で存在している、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリマーが、約0.01重量%〜約30重量%の範囲で存在している;第一級官能性、第二級官能性またはそれらの混合を有する少なくとも1種の非モノマー状アミンが、前記不飽和ジカルボン酸無水物またはそれらの誘導体の約0〜約1当量の範囲で存在している;前記増粘剤が、約3重量%〜約30重量%の範囲で存在している;前記性能添加剤が、約0重量%〜約20重量%の範囲で存在している;そして前記潤滑粘性のあるオイルが、前記組成物の約20重量%〜約97重量%の範囲で存在している、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
グリース組成物を調製する方法であって、該方法は、以下の工程を包含する:
(1)(a)以下の(i)〜(iii)を含有するモノマーと、(b)少なくとも1種の開始剤と、(c)少なくとも1種の連鎖移動剤とを混合する工程:(i)約10個〜約20個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステル;(ii)モノマーとは異なる約4個〜約11個の炭素原子を有するアルキル基を含有する、少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステル;(iii)必要に応じて、約1個〜約3個の炭素原子を有するアルキル基を含有する少なくとも1種の不飽和α,β−カルボン酸エステル;
(2)工程(1)の生成物の一部を少なくとも1種の不飽和ジカルボン酸無水物またはそれらの誘導体と混合する工程;
(3)工程(2)の前記混合物を、約3分間〜約12時間にわたって、約70℃〜約200℃の範囲の温度まで加熱し、約80℃〜約130℃の範囲の温度に冷却する工程;
(4)工程(3)の生成物に工程(1)の残り部分を加え、ポリマー中の未反応モノマーを重合させる工程;
(5)必要に応じて、該ポリマーに、第一級官能性、第二級官能性またはそれらの混合を有する少なくとも1種の非モノマー状アミンを加えて、アミデートポリマーを生じる工程;
(6)工程(4)の該ポリマーまたは工程(5)の該アミデートポリマーに、少なくとも1種の増粘剤を加える工程;または該アミデートポリマーの添加中またはそれに続いて、潤滑粘性のあるオイルを加える工程;および
(7)必要に応じて、工程(6)の生成物に、他の性能添加剤を加える工程であって、該他の性能添加剤は、酸化防止剤、錆止め剤、金属不活性化剤、耐摩耗剤、耐スカッフィング剤、極圧剤、発泡防止剤、乳化破壊剤、摩擦調整剤、粘度調整剤、流動点降下剤およびそれらの混合物からなる群から選択される、
方法。
【請求項18】
さらに、工程1において、溶媒を加える工程を包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマーが、さらに、第一級官能性、第二級官能性またはそれらの混合を有する少なくとも1種の非モノマー状アミンと反応されて、アミデートポリマーを生じる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記グリース組成物が、向上した撥水性、向上した水の洗い流し、向上した増粘性、寿命の延長、摩耗の低下およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つの向上した特性を有する、請求項1に記載のグリース組成物。

【公表番号】特表2007−500778(P2007−500778A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533581(P2006−533581)
【出願日】平成16年6月7日(2004.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/017983
【国際公開番号】WO2004/111163
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】