説明

グループ機能及び/またはサブルーチン機能を利用するレシピ動作装置及び方法

【課題】いくつかのステップを繰り返し実行するプロセス処理で使用されるレシピにおいて、繰り返し部分の共通化を実現する。
【解決手段】レシピ動作システムは、(i)順に配列された複数の動作ステップから成る少なくともひとつのレシピと、(ii)順に配列されたステップから実行すべき次のステップを選択するために、ステップが変る度にコールされるサブルーチンを含むレシピ実行プログラムとを含む。ステップは配列順と異なる順序で実行され、少なくともひとつのステップが繰り返される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置および半導体製造装置等の制御ソフトウエア上で実行されるレシピ制御処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程において、半導体製造装置ではレシピと呼ばれる装置制御フォーマットを使用して、半導体ウエハの成膜、洗浄その他の製造処理が行われる。作業者はレシピのフォーマットに従い、プロセスガスの流量、温度、圧力などの設定値をステップ単位で入力し、さらにステップ時間を入力することで、装置を制御し、所望のプロセス結果を得る。すなわち、レシピの作成は作業者が半導体製造装置を制御する際の最も重要な部分であると言える。
【0003】
通常、レシピは半導体製造装置の制御コントローラ上の操作画面(マン・マシン・インターフェイス、MMI)で作成され、コンピュータ・ファイルの形式で磁気ディスクなどの記憶装置(ハード・ディスク、HD)に保存され、HDからランダム・アクセス・メモリ(RAM)などのメイン・メモリに読み込まれて実行されるという方法が一般的である。また、近年のオンライン・システムによる自動化処理では、レシピは装置に接続されるホスト・コンピュータにまとめて保存されており、ウエハ処理のロット実行時のみ必要なレシピを製造装置に転送(ダウンロード)するという方法もある。これは製造工程の集中管理という観点からも好ましい処理である。
【0004】
近年、製造すべき半導体ウエハの膜種が増加し、それに伴い使用されるレシピの種類も増加の一途を辿っている。さらに、同じ膜種のレシピでも、処理容器の経年変化あるいは使用状態に合わせて、ガス流量、圧力、温度などの条件を変えたレシピが必要とされることもある。また、ある種の成膜プロセスでは、短い時間の処理ステップを多数回繰り返すことで、原子レベルの膜厚の成膜を行う処理もある。この場合、繰り返しステップが多いほどレシピのステップ数は増加する。
【0005】
これらの事象が直接的に引き起こす問題は、制御コントローラの記憶装置容量の不足である。レシピの数が多い場合は、分散システムを用いて管理することも可能であるが、ファイルの数が増え、また管理コストが増大する。また、ステップの繰り返しにより、1つ1つのレシピのファイルサイズが大きくなる場合は記憶容量の不足が問題になる。さらに、ステップの繰り返しが多いレシピで、条件またはパラメータを変更する場合、変更箇所が多くなるので、修正の手間が増える。
【0006】
レシピの処理ステップの共通化の例として、特開平9-82589が開示されている。しかしここでは複数のレシピに共通のステップをサブレシピ化し、レシピとは別のファイルに保存され必要なときに呼び出すようになっている。単一レシピ内のステップ実施の順番や複数ステップの繰り返し処理については言及されておらず、上記したような特殊な成膜処理には適用するには問題がある。
【特許文献1】特開平9-82589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、ある態様における本発明の目的は、いくつかのステップを繰り返し実行するプロセス処理で使用されるレシピにおいて、繰り返し部分の共通化を実現することである。これより、レシピ中の繰り返しの記述を避けることができ、またレシピのファイルサイズが大きくならず、装置制御コントローラの必要な記憶容量の増加を抑えることができる。また、処理装置によっては、レシピのステップサイズおよびファイルサイズの上限が固定の場合がある。この場合においても、ステップ数削減の効果により、ステップサイズの上限を超えるレシピの実現が可能になる。また、装置コントローラ間でレシピを転送する時にステップデータのみを転送するような場合においては、レシピの転送速度を上げることが可能になる。即ち、本発明のある態様においては、ステップ数の多い半導体製造レシピを、グループ機能あるいはサブルーチン機能を用いて記述の短縮化を図り、また、半導体製造装置システム等の記憶装置中の必要記憶容量の縮小化を図ることを目的とする。
【0008】
本発明は、さまざまな実施例において上記目的のひとつまたはそれ以上を達成することができる。しかし、本発明は上記目的に限定されず、実施例において本発明の他の目的が明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ひとつの態様において、本発明は、(i)順に配列された複数の動作ステップから成る少なくともひとつのレシピと、(ii) 順に配列されたステップから実行すべき次のステップを選択するために、ステップが変わる度にコールされるサブルーチンから成るレシピ実行プログラムであって、該ステップは配列された順序と異なる順序で実行され、少なくともひとつのステップが繰り返される、ところの実行プログラムとから成る、レシピ動作システムを与える。
【0010】
上記実施例は、これに限定されないが、以下の実施例を含む。
【0011】
順に配列された動作ステップにおけるステップの少なくともひとつのグループは、レシピ中のすべての動作ステップが実行されるまで、1回以上連続的に実行される。
【0012】
グループの最初のステップは開始フラグを有し、グループの最後のステップは終了フラグを有する。
【0013】
開始フラグ、終了フラグ、及びグループの繰返し回数に関する情報を使って次のステップを選択するようにサブルーチンが構成される。
【0014】
グループは、レシピの最後のステップの手前に配列されてもよい。グループはレシピの最後のステップの後に配列されてもよい。
【0015】
グループがレシピの最後のステップの後に配列される場合、動作ステップはグループコールフラグを有する少なくともひとつの工程を、レシピの最終工程の前方に含む。グループコールフラグを有する少なくともひとつの工程は、ガス流量のようなアナログデータを調節し、ステップのグループはアナログデータを変更することなくバルブ開閉のようなオン-オフデータを調節する。上記において、グループコールフラグを有する工程は、ステップのグループ実行中のアナログデータを調節することができる。ステップのグループはオン・オフデータのみを調節できる。グループコールフラグ、開始フラグ、終了フラグ、及びグループの繰返し回数に関する情報を使って次のステップを選択するようにサブルーチンが構成される。少なくともひとつのステップは、ひとつ以上のステップから成る。
【0016】
レシピは単一のファイルに格納される。
【0017】
他の態様において、本発明は被処理体を処理するための装置を与え、当該装置は、(i)被処理体を処理するためのチャンバと、(ii)チャンバ内で実行される処理を制御するための制御器と、(iii)制御器中に与えられる上記ひとつの態様におけるレシピ動作システムであって、複数の動作ステップはチャンバ内で被処理体を処理するステップである、ところのレシピ動作システムとから成る。
【0018】
上記実施例は、これに限定されないが、以下の実施例を含む。
【0019】
当該装置は、半導体製造装置であり、ここで、チャンバは反応チャンバであり、被処理体は半導体基板であり、動作ステップは膜堆積用のものである。レシピは制御器中の単一のファイル内に格納される。
【0020】
順に配列された動作ステップ中のステップの少なくともひとつのグループは、レシピ内のすべての動作ステップが実行されるまで、一回以上連続して実行される。ステップのグループはガスフロー動作を調節する。ステップのグループはレシピの最後のステップの手前に配列されてもよい。ステップのグループはレシピの最後のステップの後に配列されてもよい。ステップのグループはガス制御バルブのオン-オフを調節してもよい。
【0021】
さらに他の態様において、本発明はレシピ動作方法を与え、当該方法は、(i)順に配列された複数の動作ステップから成る少なくともひとつのレシピを調節する工程と、(ii)順に配列されたステップから実行すべき次のステップを選択するために、ステップが変わる度にコールされるサブルーチンから成るレシピ実行プログラムを調節する工程であって、ステップは配列された順序と異なる順序で実行され、少なくともひとつのステップが繰り返される、ところの工程と、から成る。
【0022】
上記態様及び実施例のすべてにおいて、ひとつの態様または実施例で使用される任意の構成要件は交換可能であるか、または交換が容易ではなく若しくは逆効果であるものでなければさまざまに組み合わせた他の実施例で付加的に使用され得る。
【0023】
発明及び従来技術に対する利点を要約するために、発明のいくつかの目的及び利点が上記された。もちろん、これらすべての目的または利点が発明の特定の実施例に従って、必ずしも達成されるものではない。よって、例えば、発明はここに教示または示唆されるような他の目的または利点を必ずしも達成することなく、ここに教示されるようなひとつまたは複数の利点を達成または最適化する方法で実施または実行され得ることは当業者の知るところである。
【0024】
本発明の他の態様、特徴及び利点は下記好適実施例の詳細な説明より明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好適実施例を、図面を参照して、詳細に説明する。しかし、本発明は、この好適実施例及び図面に限定されない。
【0026】
前述した目的の一つ或いはそれ以上を達成するある態様によれば、本発明は、レシピ中の繰り返されるいくつかのレシピステップをまとめて1つの集合として、レシピ内に登録する。レシピの開始フラグから終了フラグまでの間に集合が存在し、集合の繰り返し数を規定するのが、「グループ機能」である。また、レシピの開始フラグから終了フラグの外に集合を置き、レシピ中のどのステップからでも集合にアクセスし集合の全ステップの実行が終われば、もとのレシピの次ステップから実行開始となるのが、「サブルーチン機能」である(なお、次ステップ番号決定のステップを実行するときにコールされるサブルーチンは関数の意であり、上記の「サブルーチン機能」と区別される)。この2種類の機能を用いて、レシピのステップ数を大幅に削減することが可能になり、かつレシピ修正の手間も省くことができる。さらに、レシピサイズも小さくすることが可能である。
【0027】
また、「レシピ」は、処理装置内の被処理体に対し一連の処理を施す条件を制御パラメータ(時間、温度、流量、圧力等)により指定するものであり、番号順に配列された複数のステップから構成されている。通常、一つのレシピは一つのファイルに保存されている。なお、上記の用語の定義は、ある実施態様に適用されるものであり、別の態様においては、異なる定義が適用され得る。ある実施態様においては、当業者が通常あるいは慣習的に理解する意味で該用語は用いられる。
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明は該図面、該実施形態に限定されるものではない。
【0029】
図1は半導体製造装置の制御コントローラのMMIにおける典型的なレシピエディタである。図中のステップ番号1の順に各々のステップが順次実行される。縦軸にはガス、圧力、温度などが示されており、各ステップでそれぞれの物理量の設定を行う(なお、ガスの種類の欄は割愛している)。また、各ステップのステップ時間も指定することが出来る。また、各ステップはフラグと呼ばれるステップの種別を判別するための情報を持っている。
【0030】
各ステップ番号(000、001、002、003)、または、各ステップ名(READY、DEPOSTART、DEPO、DEPO2)をクリックすると、後述する図7の画面が出てくる。図7によりグループ機能、サブルーチン機能を設定することができる。
【0031】
ある態様では、グループ機能、サブルーチン機能は制御コントローラ内に収納されている。図9に模式的な構成図を示す。MMI(60)はMan Machine Interfaceで表示用のPCであり、OS9(61)はMMI PCとの通信用のCPUボード、iTron(62)はメインコントローラであるCPUボード、Slave(63)は要素制御用のCPUボードである。なお、Slave #1(63)は反応器1であるRC1(64)を制御するものである。この例では、グループ機能、サブルーチン機能を実行するプログラムは、MMI(60)に操作を追加するために付加されており、また、iTron(62)、反応器制御用のSlave(63)のそれぞれに機能を追加するために付加されている。レシピはMMI PC(60)のHD内に保存されている。レシピの実行時にMMI→OS9→iTron→RC Slaveと転送される。
【0032】
図2、図3、図4はレシピのステップ番号と設定されたステップフラグのみを表示した簡略図である。この図を用いて、レシピのグループ、サブルーチン機能の説明を行う。図2は通常のレシピで最初のステップに開始(Start)フラグがあり、最後のステップ(この図ではステップ5)に終了(End)フラグがある。これらは、それぞれレシピの開始、終了を宣言するためのフラグであり、レシピの最初と最後には必ず必要となる。
【0033】
通常のレシピの場合、ステップは1から開始し、番号順に実行されていく。図3はグループ機能を使用したレシピである。グループ開始フラグ(GrStart)とグループ終了フラグ(GrEnd)がある。この図ではそれぞれステップ3とステップ5である。ステップ1から開始し、番号順にステップが実行されるのは通常のレシピと同じだが、この場合グループ終了フラグがあるステップ5まで行くと、グループ開始フラグがあるステップ3に戻る。そして再度ステップ3から番号順にステップが実行される。ステップ5からステップ3に戻る繰り返し回数を規定することが可能であり、その方法は後述する。規定の繰り返し回数が終了すると、レシピはステップ5から先に進み、終了フラグがあるステップNでレシピは終了する。
【0034】
図4はサブルーチン機能を使用したレシピである。サブルーチン指定フラグ(Sub指定)とサブルーチン開始フラグ(SubStart)およびサブルーチン終了フラグ(SubEnd)がある。この図ではそれぞれステップ3、ステップ101、ステップ103である。なおここで、ステップ101からステップ103はレシピの開始フラグから終了フラグまでに含まれていない。サブルーチンステップはこのようにメインのレシピの枠外で規定されるものである。図4の場合、ステップ3まで行くと、サブルーチン開始ステップを指定する。この図ではステップ101である。サブルーチンの開始ステップと繰り返し回数を規定することができるが、その方法は後述する。ステップ101に飛んだら、ステップ順にサブルーチン終了フラグがあるステップまで実行する。この場合、ステップ103まで行くと規定のサブルーチン繰り返し回数に至るまでステップ101のサブルーチン開始フラグがあるステップまで戻る。規定の繰り返し回数が終了すると、ステップ103からメインレシピのステップ4に戻る。順次ステップを実行していき、終了ステップがあるステップNでレシピは終了する。
【0035】
次に図5、図6は、本発明のある実施態様において、グループ、サブルーチン機能の実際の動作を具現化したフローチャートである。なお、この図5、図6は半導体製造装置の制御コントローラで動作するレシピ実行プログラムから、レシピステップが変わる度にコールされるサブルーチン(関数)であり、次に実行するステップ番号を決定するためだけのサブルーチン(関数)を示している。なお、レシピステップの実行は別途レシピ実行プログラム(図8)で行われるものであり、ここではレシピステップの実行は行わない。また、説明の簡略化のために、グループ機能とサブルーチン機能を別に図示したが、実際の実施の形態ではこの2つが組み合わされていても良い。
【0036】
まず、図8の実施態様に示すように、システムを開始する(S51)と、レシピのステップ番号の初期化が実行される(S52)。その後、初めのステップがステップ番号に従って実行される(S53)。ステップが次に移行するときに、次に実行されるステップをステップ番号決定サブルーチン(関数)をコールして決定する(S54)。該次のステップにEndフラグがあるかどうかを判断し(S55)、フラグがあれば処理を終了し(S56)、なければステップ実行に戻る。図5、図6のフローチャートは次ステップ番号決定のステップS54の部分を説明するものである。
【0037】
図5はグループ機能のフローチャートであり、ステップ1で処理を開始する。次のステップ2でレシピのステップにグループ終了フラグ(GrEnd)があるかどうかの判定を行う。フラグがあれば次のステップ3に行き、なければ、ステップ7に行く。ステップ3でグループ実行回数をインクリメントし、ステップ4ではグループ実行回数が規定の回数に達したかどうかの判定を行う。ここで実行回数が規定回数に達していれば、次のステップ5に進み、そうでなければステップ9に行く。ステップ5では次に実行するレシピステップ番号として現在のステップ番号をインクリメントした数値を設定し、グループ実行回数の値を0に戻す。次にステップ9に進みサブルーチン(関数)を終了する。ステップ2でグループ終了フラグがなかった場合にステップ6に行くが、ステップ6では、通常のレシピ終了フラグ(End)があるかどうかの判定を行う。もしあれば、ステップ9の終了ステップに行く。なければ、ステップ7で次に実行するレシピステップ番号として現在のステップ番号をインクリメントした数値を設定する。そしてステップ9の終了ステップに行く。ステップ4のグループ実行回数が規定回数に達したかどうかの判定で、規定回数に達していない場合は、ステップ8に行くが、ステップ8では次に実行するレシピステップ番号としてグループ開始フラグのあるステップのステップ番号を設定する。
【0038】
図6は、サブルーチン機能のフローチャートであり、ステップ21で処理を開始する。次のステップ22でレシピのステップにサブルーチン指定フラグ(Sub指定)があるかどうかの判定を行う。フラグがあれば、次のステップ23に行き、なければ、ステップ24に行く。ステップ23で次に実行するレシピステップ番号としてサブルーチン開始フラグがあるステップのステップ番号を設定する。次にステップ30に行きサブルーチン(関数)を終了する。
【0039】
ステップ22でサブルーチン指定フラグがなかった場合、ステップ24に進むが、ステップ24ではサブルーチン終了フラグがあるかどうかの判定を行う。フラグがあれば、ステップ25に行き、なければステップ28に行く。ステップ25でサブルーチン実行回数をインクリメントし、ステップ26でサブルーチン実行回数が規定の回数に達したかどうかの判定を行う。ここで実行回数が規定回数に達していれば、次のステップ27に進み、そうでなければステップ23に行く。ステップ27では次に実行するレシピステップ番号としてサブルーチン指定フラグがあるステップの次のステップ番号を設定し、サブルーチン実行回数の値を0に戻す。
【0040】
ステップ23では上記したように、次に実行するレシピステップ番号としてサブルーチン開始フラグがあるステップのステップ番号を設定する。次にステップ30の終了ステップに行く。ステップ24のサブルーチン終了フラグがない場合にはステップ28に進む。ステップ28では通常のレシピ終了フラグ(End)があるかどうかの判定を行う。もしあれば、ステップ30の終了ステップに行く。なければ、ステップ29で次に実行するレシピステップ番号として現在のステップ番号をインクリメントした数値を設定する。
【0041】
図7は図1で示した各レシピステップの設定画面の一例である。グループ繰り返し規定回数2では、グループとして規定されているレシピステップの集合を何回繰り返すかを指定する。サブルーチン繰り返し規定回数3では、サブルーチンとして規定されているレシピステップの集合を何回繰り返すかを指定する。サブルーチン指定ステップ4では、サブルーチンの開始ステップを指定する。ここにレシピステップの名前が入っていれば、このステップはサブルーチン指定フラグを持つことになる。サブルーチン・グループ各種フラグ5は、上記したサブルーチン・グループの各開始・終了フラグである。ここをチェックしておくと、そのステップはチェックされたフラグを持つことになる。
【0042】
サブルーチン集合フラグ6は、特殊な機能を持つ。サブルーチン指定フラグのあるレシピステップでこの集合フラグをチェックすると、制御ソフトウエアの表示上、恰もサブルーチンを実行しないかのように表示することができる。すなわち、サブルーチンの実行中、レシピのステップ番号はサブルーチンを指定したメインレシピのステップ番号が表示され、ステップ時間はサブルーチンの総累積時間(繰り返し含む)が表示される。また、このサブルーチン集合フラグ6がチェックされたステップのアナログ出力(ガス流量など)の設定は、指定サブルーチンの全ステップ中において有効になる。すなわち、この場合サブルーチン中のアナログ出力の設定は無効となる。この機能により、サブルーチンの各ステップのアナログ出力の設定を変更する手間を省くことができる。
【0043】
例えば、図7のサブルーチン集合フラグ6をチェックすると、サブルーチン指定ステップで指定されているアナログ量(ガス流量など)は一定で、サブルーチンによりチャンバのバルブの開閉のみを指定し繰り返すことができる。
【0044】
グループ機能とサブルーチン機能は適宜、対象とする操作により選択する。グループ機能の場合はレシピ中に繰り返しが必要な部分が一箇所のみの場合に、レシピサイズを最小にすることができる。繰り返しが必要な部分が一箇所のみの場合にサブルーチン機能を適用すると、レシピサイズが1ステップ(Sub指定ステップ)分だけ増加する。サブルーチン機能は、同じ繰り返しがレシピ中の複数箇所で必要な場合にレシピサイズを最小にすることができる。グループ機能の場合は、同じ繰り返しがレシピ中複数回あるとその都度ステップを記述する必要がある。また、サブルーチン機能の場合は、レシピの中身をチェックするときに、共通化部分が本体と離れたところにあるので、流れがチェックしづらい場合がある。
【0045】
例えば、半導体製造装置において、原子レベルの成膜プロセスを、ガス流→パージ→ガス流→パージ→ を短い時間で繰り返し実施するような場合は、グループ機能で効率的に実現することができる。また、プラズマを使用する場合は、上記の繰り返しを規定回数実施した後にRFジェネレータをONし、再度同じ繰り返しをするような場合は、サブルーチン機能で効率的に実現することができる。この場合は、サブルーチン機能を使うことで、グループ機能を使うよりもレシピサイズを小さく抑えることができる。
【0046】
ある実施態様では、ステップを番号順に並べたレシピで表すと次のようになる(なお、説明のため過度に簡略化されており、図1のレシピエディタに沿ったものではない)。
【0047】
(ALDの例)
ステップ1: スタート
ステップ2: 温度・圧力設定
ステップ3: グループスタート
ステップ4: 成膜
ステップ5: パージ
ステップ6: グループエンド
ステップ7: クリーニング処理
ステップ8: エンド
【0048】
上記ではステップ4とステップ5がステップ3とステップ6に挟まれており、ステップ3から6がステップの集合体を形成している。該ステップの集合体はレシピのエンドステップ8の前(上流)に配置されており、予め規定された繰り返し回数に達するまで図5で説明した流れにより繰り返される。このようにレシピは番号順に並べられたステップより成るが、ステップ集合体が繰り返されるため、全体としては、ステップの番号通りには実施されないことになる。
【0049】
(層間膜の例)
ステップ1: スタート
ステップ2: 温度・圧力設定
ステップ3: サブルーチン指定
ステップ4: RFジェネレータON
ステップ5: サブルーチン指定
ステップ6: クリーニング処理
ステップ8: エンド
ステップ9: サブルーチンスタート
ステップ10: 成膜
ステップ11: パージ
ステップ12: サブルーチンエンド
【0050】
上記ではステップ10とステップ11がステップ9とステップ12に挟まれており、ステップ9から12がステップの集合体を形成している。該ステップの集合体はステップ8のレシピのエンドステップの外(下流)に配置されており、図6で説明した流れにより、ステップ3、ステップ5のそれぞれでコールされる。該ステップ集合体内のステップ10、11は、予め規定された繰り返し回数に達するまで図6で説明した流れにより繰り返されるが、繰り返しはなくてもよい。このようにレシピは番号順に並べられたステップより成るが、ステップ集合体が繰り返されるため、全体としては、ステップの番号通りには実施されないことになる。
【0051】
グループ機能とサブルーチン機能を組み合わせることもできる。例えば、サブルーチン機能により規定されるステップ集合体の中にグループ機能により規定されるステップ集合体を配置してもよい。また、その逆に、グループ機能により規定されるステップ集合体の中にサブルーチン設定ステップを配置し、サブルーチン機能により規定されるステップ集合体をレシピのエンドステップの下流に配置してもよい。それぞれの機能を分けてステップ番号の前後にそれぞれ配置してもよい。
【0052】
以上より、本発明のある態様においては、レシピ中で繰り返されるステップの集合をグループおよびサブルーチンという機能を使用して記述することにより、半導体製造装置の制御コントローラのHDの記憶領域の使用を大幅に節約することが可能になる。また、レシピ修正の手間も削減することができる。なお、本発明は半導体製造装置に限定されることなく、同じような処理を繰り返す制御を含む処理装置に適用することができる。レシピ制御を実施する装置として、液晶製造装置、磁気ディスク製造装置等が挙げられるが、本発明はこれら装置にも適用することができる。当業者にとって本発明の制御システムは広くレシピ制御に適用できることは明らかである。
【0053】
なお、本発明は上記で説明した実施態様に限定されず、次の実施態様も包含する。
【0054】
1)レシピ制御処理を行う半導体製造装置であって、該レシピは、処理ステップの実行順が、処理ステップに付加された実行順情報とは異なることを特徴とする半導体製造装置。
【0055】
2)レシピ制御処理を行う半導体製造装置であって、該レシピは、内部で繰り返し実行される複数の処理ステップの集合体を、繰り返し開始情報、繰り返し終了情報、繰り返し回数により定義することを特徴とする半導体製造装置。
【0056】
3)上記2)に記載の半導体製造装置において、該繰り返し開始情報および該繰り返し終了情報は、半導体製造装置の制御ソフトウエアの変数情報(フラグ)であることを特徴とする半導体製造装置。
【0057】
4)上記2)に記載の半導体製造装置において、該レシピは、該繰り返し回数に達するまで、該繰り返し終了情報を持つ処理ステップの次に、該繰り返し開始情報を持つ処理ステップを実行することを特徴とする半導体製造装置。
【0058】
5)レシピ制御処理を行う半導体製造装置であって、該レシピは、内部で繰り返し実行される複数の処理ステップの集合体を、レシピ開始情報を持つ処理ステップからレシピ終了情報を持つ処理ステップの外で規定し、集合体ポイント情報、集合体開始情報、集合体終了情報、繰り返し回数により定義することを特徴とする半導体製造装置。
【0059】
6)上記5)に記載の半導体製造装置において、該集合体開始情報および該集合体終了情報は、半導体製造装置の制御ソフトウエアの変数情報(フラグ)であることを特徴とする半導体製造装置。
【0060】
7)上記5)に記載の半導体製造装置において、該集合体ポイント情報を持つ処理ステップにおける制御物理量の設定が、集合体内の全ての処理ステップに有効となることを特徴とする半導体製造装置。
【0061】
8)上記5)に記載の半導体製造装置において、該レシピは、該集合体ポイント情報を持つ処理ステップの次に、該集合体開始情報を持つ処理ステップを実行することを特徴とする半導体製造装置。
【0062】
9)上記5)に記載の半導体製造装置において、該レシピは、該繰り返し回数に達するまで、該集合体終了情報を持つ処理ステップの次に、該集合体開始情報を持つ処理ステップを実行することを特徴とする半導体製造装置。
【0063】
10)上記5)に記載の半導体製造装置において、該レシピは、該繰り返し回数分の集合体の実行が終了した後に、該集合体終了情報を持つ処理ステップの次に、該集合体ポイント情報を持つ処理ステップの次の処理ステップを実行することを特徴とする半導体製造装置。
【0064】
発明の思想から離れることなく、さまざまな修正が可能であることは当業者の知るところである。したがって、本発明の形式は例示に過ぎず、本発明の態様を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、本発明のある実施態様における半導体製造装置の制御コントローラ画面のレシピエディタの実現例を示す図である。
【図2】図2は、本発明のある実施態様における半導体製造レシピのステップ番号とステップフラグの例を示す図である。
【図3】図3は、本発明のある実施態様における半導体製造レシピのグループ機能を使用した場合のステップ番号とステップフラグの一例を示す図である。
【図4】図4は、本発明のある実施態様における半導体製造レシピのサブルーチン機能を使用した場合のステップ番号とステップフラグの一例を示す図である。
【図5】図5は、本発明のある実施態様における半導体製造レシピのグループ機能を説明するためのフローチャートである。
【図6】図6は、本発明のある実施態様における半導体製造レシピのサブルーチン機能を説明するためのフローチャートである。
【図7】図7は、本発明のある実施態様における各レシピステップのグループ・サブルーチン機能の各種設定の実現例を示す図である。
【図8】図8は、本発明のある実施態様におけるステップ実行の示すフローチャートである。
【図9】図9は、本発明で使用し得る半導体製造装置の構成の一例を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レシピ動作システムであって、
順に配列された複数の動作ステップから成る少なくともひとつのレシピと、
順に配列されたステップから実行すべき次のステップを選択するために、ステップが変わる度にコールされるサブルーチンから成るレシピ実行プログラムであって、前記ステップは配列された順序と異なる順序で実行され、かつ、少なくともひとつのステップは繰り返される、ところのレシピ実行プログラムと、
から成るシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のレシピ動作システムであって、順に配列された動作ステップ内のステップの少なくともひとつのグループは、レシピ内のすべての動作ステップが実行されるまで1回以上連続して実行される、ところのシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のレシピ動作システムであって、グループの最初のステップは開始フラグを有し、グループの最後のステップは終了フラグを有する、ところのシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のレシピ動作システムであって、サブルーチンは、開始フラグ、終了フラグ、及びグループの繰返し回数に関する情報を使って、次のステップを選択するように構成されている、ところのシステム。
【請求項5】
請求項3に記載のレシピ動作システムであって、グループは、前記レシピの最後のステップの手前に配列されている、ところのシステム。
【請求項6】
請求項3に記載のレシピ動作システムであって、グループはレシピの最後のステップの後に配列されている、ところのシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のレシピ動作システムであって、動作ステップは、レシピの最後のステップの手前にグループコールフラグを有する少なくともひとつのステップを含む、ところのシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のレシピ動作システムであって、グループコールフラグを有する少なくともひとつのステップはステップのグループ内のアナログデータを調節し、ステップのグループはアナログデータを変更することなくオン-オフデータを調節する、ところのシステム。
【請求項9】
請求項7に記載のレシピ動作システムであって、前記サブルーチンは、グループコールフラグ、開始フラグ、終了フラグ、及びグループの繰返し回数に関する情報を使って、次のステップを選択するよう構成されている、ところのシステム。
【請求項10】
請求項7に記載のレシピ動作システムであって、前記少なくともひとつのステップはひとつ以上のステップから成る、ところのシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のレシピ動作システムであって、前記レシピは単一ファイル内に格納される、ところのシステム。
【請求項12】
被処理体を処理するための装置であって、
前記被処理体を処理するためのチャンバと、
前記チャンバ内で実行される処理を制御するための制御器と、
前記制御器内に与えられる請求項1に記載のレシピ動作システムであって、複数の動作ステップは前記チャンバ内で前記被処理体を処理するためのステップである、ところのレシピ動作システムと、
から成る装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置であって、レシピは制御器内の単一ファイル内に格納される、ところの装置。
【請求項14】
請求項12に記載の装置であって、前記装置は半導体製造装置であり、前記チャンバは反応チャンバであり、前記被処理体は半導体基板であり、前記動作ステップは膜堆積用のものである、ところの装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置であって、レシピは制御器内の単一ファイル内に格納される、ところの装置。
【請求項16】
請求項12に記載の装置であって、順に配列された動作ステップ内のステップの少なくともひとつのグループは、レシピ内のすべての動作ステップが実行されるまで、1回以上連続して実行される、ところの装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置であって、前記ステップのグループはガスフロー動作を調節する、ところの装置。
【請求項18】
請求項16に記載の装置であって、前記ステップのグループはレシピの最後のステップの手前に配列されている、ところの装置。
【請求項19】
請求項16に記載の装置であって、前記ステップのグループはレシピの最後のステップの後に配列されている、ところの装置。
【請求項20】
請求項19に記載の装置であって、前記ステップのグループはガス制御バルブのオン-オフを調節する、ところの装置。
【請求項21】
レシピ動作方法であって、
順に配列された複数の動作ステップから成る少なくともひとつのレシピを調節する工程と、
順に配列されたステップから実行すべき次のステップを選択するために、ステップが変わる度にコールされるサブルーチンから成るレシピ実行プログラムを調節する工程であって、前記ステップは配列された順序と異なる順序で実行され、かつ、少なくともひとつのステップが繰り返される、ところの工程と、
から成る方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、さらに、動作ステップ中で繰り返されるステップのグループを識別し、前記グループの最初のステップに開始フラグを配置し、かつ、前記グループの最後のステップに終了フラグを配置する工程を含む、ところの方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、サブルーチンは、開始フラグ、終了フラグ、及びグループの繰返し回数に関する情報を使用して、次のステップを選択する、ところの方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法であって、前記グループは前記レシピの最後のステップの手前に配列される、ところの方法。
【請求項25】
請求項22に記載の方法であって、前記グループは前記レシピの最後のステップの後に配列され、さらに、前記グループが連続して実行されるところのレシピの最後のステップの手前の少なくともひとつのステップに、グループコールフラグを配置する工程を含む、方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、前記サブルーチンは、グループコールフラグ、開始フラグ、終了フラグ、及びグループの繰り返し回数に関する情報を使って、次のステップを選択する、ところの方法。
【請求項27】
請求項21に記載の方法であって、前記レシピは単一ファイル内に格納される、ところの方法。
【請求項28】
請求項21に記載の方法であって、前記レシピは半導体基板を処理するためのものである、ところの方法。
【請求項29】
請求項22に記載の方法であって、前記レシピは半導体基板を処理するためのものであり、前記ステップのグループはガスフロー動作を調節する、ところの方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−49138(P2007−49138A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207712(P2006−207712)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000227973)日本エー・エス・エム株式会社 (68)
【Fターム(参考)】