説明

ケースの製造方法及び電子機器

【課題】インサート成形により成形されるケースにおいて、板金部材における側壁部の内面側に樹脂部を形成することができると共に、成形時における板金部材の側壁部の変形を防ぐことのできるケースの製造方法を提供すること。
【解決手段】平面部301及び板金側壁部302を有する板金部材300と、板金側壁部302の内面側の少なくとも一部を覆う内側樹脂部312を有する樹脂部材310とがインサート成形により一体的に形成されるケース31の製造方法であって、板金部材300の内面側に、板金側壁部302に向けて突出し板金側壁部302の内面に間欠的に当接する複数の押し当て部52が設けられたキャビティ金型50を配置し、隣り合う2つの押し当て部52間において板金側壁部302の内面とキャビティ金型50との間に形成される空間60に溶融した樹脂材料を充填して内側樹脂部312を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の筐体を構成するケースの製造方法及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機等の電子機器の薄型化が求められている。そして、薄型化した携帯電話機における剛性劣化への対策として、携帯電話機の筐体を構成する樹脂製の外装ケースに板金部材をインサート成形して筐体の剛性を確保することが知られている(例えば特許文献1参照)。このような外装ケースのインサート成形は、平面部及び平面部の外縁に設けられた側壁部を有する板金部材をキャビティ金型とコア金型との間に配置し、キャビティ金型及びコア金型と板金部材との間に形成された空間に溶融した樹脂材料を充填して行われる。
ここで、インサート成形においては、金型と板金部材との間の空間に樹脂材料を充填する際の圧力によって板金部材の形状の変化、特に側壁部の変形を防ぐために、板金部材の内面をキャビティ金型に当接させて側壁部を支持させる必要があった。そのため、板金部材における側壁部の内面側には樹脂材料を充填できず、側壁部の内面は板金部材が露出する構成となっていた。
【特許文献1】特開2000−151132号公報
【0003】
ところで、携帯電話機の剛性を確保するためには、筐体の側壁には所定の厚さが必要である。しかし、板金部材における側壁部の外面側に所定の厚さの樹脂部を形成した場合には、樹脂部の肉厚に起因して筐体の表面にひけが発生して外観が悪化する場合があった。そのため、板金部材における側壁部の内面側に樹脂部を形成することにより、筐体の側壁における所定の厚みを確保しつつ板金部材における側壁部の外面側に形成する樹脂部の厚みを薄くすることが望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明は、インサート成形により成形されるケースにおいて、板金部材における側壁部の内面側に樹脂部を形成することができると共に、成形時における板金部材の側壁部の変形を防ぐことのできるケースの製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、筐体の表面にひけが発生しにくい電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、平面部及び該平面部の外縁に形成された板金側壁部を有する板金部材と、該板金側壁部の内面側の少なくとも一部を覆う内側樹脂部を有する樹脂部材とがインサート成形により一体的に形成されるケースの製造方法であって、前記板金部材の内面側に、前記平面部の略全面に当接するキャビティ金型であって前記板金側壁部に向けて突出し該板金側壁部の内面に間欠的に当接する複数の押し当て部が設けられたキャビティ金型を配置し、隣り合う2つの前記押し当て部間において前記板金側壁部の内面と前記キャビティ金型との間に形成される空間に溶融した樹脂材料を充填して前記内側樹脂部を形成するケースの製造方法に関する。
【0006】
また、前記押し当て部は、その形状が前記板金側壁部の高さ方向に長い略直方体形状を有していることが好ましい。
【0007】
また、本発明は、平面部及び該平面部の外縁に形成された板金側壁部を有する板金部材と、該板金部材の少なくとも一部を覆う樹脂部材とがインサート成形により一体的に形成され凹部を有する第1ケース、及び該第1ケースと結合される第2ケースを有する筐体を備える電子機器であって、前記凹部の内側面は、前記板金側壁部の内面が露出した板金露出部と、前記板金側壁部の内面が所定間隔をあけて前記樹脂部材により覆われた複数の内側樹脂部とを有している電子機器に関する。
【0008】
また、前記筐体内に配置される内部部材を更に備え、前記内部部材は可撓性の係合爪を有すると共に、前記第1ケースにおける前記内側樹脂部は、前記係合爪が係合可能な被係合部を有しており、前記内部部材は、前記凹部に収容された状態で前記係合爪が前記被係合部に係合して前記筐体に取り付けられることが好ましい。
【0009】
また、前記板金部材における前記平面部には、前記係合爪が挿通可能な孔部が形成されていることが好ましい。
【0010】
また、前記筐体は、前記第1ケースの外面側に配置されるカバー部材を更に備え、前記内側樹脂部における上側面に、前記カバー部材は貼り付け可能に構成されていることが好ましい。
【0011】
また、前記筐体は、前記第1ケースと前記第2ケースとが互いに接する位置である結合部が、該筐体における前記第2ケース側の面に形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、板金部材における側壁部に向けて突出し該側壁部の内面に間欠的に当接する複数の押し当て部が設けられたキャビティ金型を用いることにより、板金部材における側壁部の内面側に樹脂部を形成することができると共に、成形時に側壁部の変形を防ぐことのできるケースの製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、板金部材における側壁部の内面側に樹脂部を形成することにより、筐体の側壁における所定の厚みを確保しつつ板金部材における側壁部の外面側に形成する樹脂部の厚みを薄くすることができ、筐体の表面にひけが発生しにくい電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。まず、本発明の一実施形態である携帯電話機1の基本構造について、図1(A)、図1(B)及び図2を参照しながら説明する。
【0014】
図1(A)は、本発明の一実施形態である携帯電話機1の平面図を示す。図1(B)は、図1(A)に示す携帯電話機1の側面図を示す。図2は、図1(A)に示す携帯電話機1を折り畳んだ状態において、携帯電話機1を表示部裏面30b側からみた平面図を示す。
【0015】
携帯電話機1は、図1(A)、図1(B)及び図2に示すように、折り畳み型の携帯電話機1であって、矩形状で薄型の操作部側筐体20と、矩形状で薄型の筐体としての表示部側筐体30と、操作部側筐体20と表示部側筐体30とを連結する連結部40と、を備える。
操作部側筐体20は、図1(A)及び図1(B)に示すように、その外面が、携帯電話機1を折り畳んだ状態で表示部側筐体30と向かい合う面である操作部表面20a側を構成する操作部フロントケース21及び操作キー群24と、操作部表面20aと反対側の面である操作部裏面20b側を構成する操作部リアケース22とを主体として構成される。
【0016】
操作部フロントケース21は、操作キー群24が操作部表面20aに露出するように構成されている。また、操作部フロントケース21における操作部表面20aには、携帯電話機1の使用者が通話時に発した音声が入力される音声入力部23が形成されている。
操作キー群24は、各種設定や電話帳機能やメール機能等の各種機能を作動させるための機能設定操作キー24aと、電話番号の数字やメール等の文字等を入力するためのテンキー等の入力操作キー24bと、各種操作における決定や上下左右方向のスクロール等を行う決定操作キー24cと、から構成されている。
音声入力部23は、操作部側筐体2の長手方向における連結部40とは反対側の端部近傍に配置される。つまり、音声入力部23は、携帯電話機1の開状態において長手方向の一方の端部側に配置される。
【0017】
操作キー群24を構成する各キーそれぞれには、操作部側筐体20と表示部側筐体30との開閉状態や、起動されているアプリケーションの種類に応じて所定の機能が割り当てられる(キー・アサイン)。携帯電話機1において、操作キー群24を構成する各キーが使用者により押圧されることで、各キーに割り当てられている機能に応じた動作が実行される。
【0018】
操作部側筐体20の側面には、例えば、外部機器(例えば、ホスト装置)とデータの送受信を行うためのインターフェース、ヘッドホン/マイク端子、着脱可能な外部メモリのインターフェース、バッテリを充電するための充電端子が設けられている。
【0019】
表示部側筐体30は、図1(A)、図1(B)及び図2に示すように、その外面が開口部31aを有する本発明のケース及び第1ケースとしての表示部フロントケース31と、表示部フロントケース31と結合される第2ケースとしての表示部リアケース32と、表示部フロントケース31の開口部31aを覆うように配置されるカバー部材33とを主体として構成される。
表示部側筐体30は、携帯電話機1を折り畳んだ状態で操作部側筐体20と向かい合う面である表示部表面30aが、表示部フロントケース31及びカバー部材33を主体として構成されている。また、表示部側筐体30における長手方向に沿う側面である表示部側面30cは、表示部フロントケース31を主体として構成されている。表示部表面30aと反対側の面である表示部裏面30bは、表示部リアケース32を主体として構成されている。
【0020】
表示部側筐体30内には各種情報を表示させる内部部材としてのメイン液晶モジュール34が配置されており、メイン液晶モジュール34は、その一方の面に設けられたメイン表示部34aが表示部フロントケース31に形成された開口部31aから表示部表面30aに露出するように配置されている。また、表示部フロントケース31には、通話の相手側における音声を出力する音声出力部31bが形成されている。音声出力部31bは、表示部側筐体30の長手方向における連結部40とは反対の端部側に配置される。つまり、音声出力部31bは、携帯電話機1の開状態における表示部側筐体30側の端部近傍に配置される。
【0021】
表示部側筐体30の表示部リアケース32側には、図2に示すように、各種情報を表示させるサブ液晶モジュール36が配置されており、サブ液晶モジュール36は、その一方の面に設けられたサブ表示部36aが、表示部リアケース32を介して表示部裏面30bに露出するように配置される。メイン液晶モジュール34及びサブ液晶モジュール36それぞれは、メイン表示部34a及びサブ表示部36aを構成する液晶パネルと、この液晶パネルを駆動する駆動回路と、この液晶パネルの背面側から光を照射するバックライト等の光源部とから構成される。
【0022】
操作部側筐体20の上端部と表示部側筐体30の下端部とは、図1(A)に示すように、連結部40を介して開閉可能に連結されている。携帯電話機1は、連結部40を介して連結された操作部側筐体20と表示部側筐体30とを相対的に回転(回動)することにより、操作部側筐体20と表示部側筐体30とを互いに開いた状態(開放状態)にしたり、操作部側筐体20と表示部側筐体30とを折り畳んだ状態(折畳み状態)にしたりできる。
【0023】
次に、表示部側筐体30の内部構造について図3から図6を参照して説明する。
図3は、表示部側筐体30の分解斜視図において表示部側筐体3を表示部裏面30b側から見た状態を示す図である。図4は、表示部側筐体30の一部分解斜視図において表示部側筐体3を表示部表面30a側から見た状態を示す図である。図5は、図4におけるX−X線断面図である。図6は、図4におけるY−Y線断面図である。
【0024】
表示部側筐体30は、図3に示すように、表示部リアケース32と、サブ液晶モジュール36と、回路基板35と、表示部フロントケース31と、メイン液晶モジュール34と、カバー部材33と、を備えている。表示部側筐体30においては、表示部リアケース32と、サブ液晶モジュール36と、回路基板35と、表示部フロントケース31と、メイン液晶モジュール34と、カバー部材33とは、積層的に配置される。
【0025】
表示部フロントケース31と表示部リアケース32とは、図3に示すように、互いの凹状の内面が向き合うように配置されると共に、両者の接する位置である結合部37が表示部裏面30b側に位置するように結合される(図2参照)。詳細には、表示部フロントケース31は、図3に示すように、表示部表面30aにおいてカバー部材33が配置された領域を除く領域を構成すると共に、表示部側筐体30の長手方向に沿う側面である表示部側面30cを構成している。一方、表示部リアケース32は、表示部側筐体30における表示部裏面30bの大部分を構成すると共に、表示部側筐体30の長手方向における連結部40と反対の端部側を覆う表示部上側面30dの大部分を構成している。
【0026】
このような構成を有する表示部フロントケース31と表示部リアケース32とを結合することで、両者の結合部37は表示部裏面30b側における表示部側面30cと表示部裏面30bとの境界近傍に形成される。結合部37は、表示部裏面30b側における表示部側面30cと表示部裏面30bとの境界近傍において、表示部側筐体30の長手方向に延びるように形成されている。即ち、表示部フロントケース31と表示部リアケース32との結合部37は、表示部側面30cには形成されていない。
【0027】
表示部リアケース32と表示部フロントケース31との間には、図3に示すように、表示部リアケース32を介してサブ表示部36aが露出するようにサブ液晶モジュール36が配置されており、サブ液晶モジュール36の周囲を囲むように回路基板35が配置されている。そして、回路基板35及びサブ液晶モジュール36におけるサブ表示部36aが設けられている面と反対の面側に表示部フロントケース31を構成する板金部材300が配置されている。即ち、表示部リアケース32と表示部フロントケース31における板金部材300との間には、サブ液晶モジュール36及び回路基板35が挟み込まれるように配置されている。
【0028】
回路基板35は、メイン液晶モジュール34及びサブ液晶モジュール36に給電等を行うものである。回路基板35には、各種電子部品が配置されると共に、基準電位部としての基準電位パターン層(図示せず)が形成されている。
基準電位パターン層は、回路基板35における表示部表面30a側に配置されている。また、回路基板35には、サブ液晶モジュール36の外形に対応する形状の基板開口35aが形成されており、サブ液晶モジュール36は基板開口35a内に配置される(図3参照)。
【0029】
表示部フロントケース31は、図3から図6に示すように、金属製の板金部材300と、板金部材300の少なくとも一部を覆う樹脂部材310とがインサート成形により一体的に成形されて構成されている。表示部フロントケース31は、枠形状の樹脂部材310の一方側の面が板金部材300に覆われており、他方側に開口部31aを有する凹部31cが形成されている。
【0030】
板金部材300は、平面状の板金における外縁が折り曲げられた形状であって、一の広い面が開口した厚さが薄い箱状の形状である。具体的には、板金部材300は、図5及び図6に示すように、平面状の平面部301と、平面部301の周縁に形成され平面部301から略垂直に起立する板金側壁部302とを備える。
【0031】
平面部301における板金側壁部302との境界近傍には、孔部である板金開口304が形成されている(図4及び図6参照)。板金開口304は、図4に示すように、板金部材300の長手方向に沿う側縁近傍に複数形成されている。この板金開口304には、後述するメイン液晶モジュール34における係合爪341が挿通される。
平面部301には、図3に示すように、厚さ方向における回路基板35側に突出する突起部303が形成される。突起部303は、回路基板35における基準電位パターン層(図示せず)に当接する。板金部材300は、突起部303によって回路基板35と導通される。
【0032】
樹脂部材310は、図4から図6に示すように、板金部材300の周縁に設けられた板金側壁部302を覆うように形成された枠形状を有している。
樹脂部材310は、板金側壁部302の外面側を覆う外側樹脂部311と、板金側壁部302の内面側を覆う複数の内側樹脂部312と、板金側壁部の内面において隣り合う2つの内側樹脂部312,312の間に形成される板金露出部313とを備えている。
即ち、表示部フロントケース31の凹部31cの内側面は、板金側壁部302の内面が露出した板金露出部313と、板金側壁部302の内面が所定間隔をあけて樹脂部材310により覆われた複数の内側樹脂部312とを有している。
【0033】
内側樹脂部312は、図4に示すように、表示部フロントケース31の長手方向に沿って設けられた板金側壁部302の内面側に、長手方向に所定間隔をあけて複数形成されている。内側樹脂部312それぞれは、図5及び図6に示すように、板金側壁部302の内面から幅方向の内方に向けて突出するように形成されている。
内側樹脂部312は、図5及び図6に示すように、板金側壁部302の上端部よりも上方まで形成されている。即ち、内側樹脂部312を有する部分においては、樹脂部材310は、板金側壁部302の外面、内面及び上面を覆っている。
【0034】
内側樹脂部312の厚さ(板金側壁部302の内面からの内側樹脂部312の突出長さ)は、図5及び図6に示すように、内側樹脂部312の上端部近傍における所定の高さにおいては、略一定の厚さに構成されている。また、内側樹脂部312における上端部近傍よりも下方に位置する中央部近傍においては、内側樹脂部312の厚さは、下方に向けて漸次厚くなるように構成されている。そして、内側樹脂部312の中央部近傍よりも下方に位置する下端部近傍においては、内側樹脂部312の厚さは、再び略一定の厚さに構成されている。
【0035】
内側樹脂部312の下端部は、図5に示すように、板金部材300における平面部301に当接している。
また、平面部301に板金開口304が設けられている部分においては、図6に示すように、内側樹脂部312の下端部の下方には空間が形成されており、当該部分において内側樹脂部312は、後述するメイン液晶モジュール34に設けられた係合爪341が係合可能な被係合部312aを構成している。
【0036】
板金露出部313は、隣り合う2つの内側樹脂部312,312の間に形成されている。図4に示すように、表示部側筐体30の長手方向に沿って設けられている板金側壁部302の内面側においては、長手方向に向けて内側樹脂部312と板金露出部313とが交互に設けられている。
板金露出部313においては、板金側壁部302は樹脂部材310に覆われておらず、板金側壁部302の内面が露出している。また、板金露出部313においては、板金側壁部302の内面は、その下端から上端まで露出するように構成されている。板金露出部313の幅は、板金側壁部302の高さ方向の長さよりも小さく構成されている。即ち、板金露出部313における露出面の形状は、板金側壁部302の高さ方向に長い略長方形に形成されている。また、板金露出部313の幅は、内側樹脂部312の幅よりも小さく構成されている。
【0037】
外側樹脂部311は、板金側壁部302の外面の略全周を覆っており、表示部フロントケース31の外形を構成している。
【0038】
樹脂部材310の上面には、図5及び図6に示すように、板金部材300における平面部301と略水平な面を有する樹脂上面部314が形成されている。樹脂上面部314は、内側樹脂部312側から外側樹脂部311側に亘って連続して形成されている。
【0039】
メイン液晶モジュール34は、図4に示すように、表示部フロントケース31における凹部31cに、表示部フロントケース31における表示部表面30a側に形成された開口部31aから収容配置される。メイン液晶モジュール34は、矩形状の板状部材であり、一方の面にメイン表示部34aを有する。メイン液晶モジュール34の長手方向に沿う両側縁には、それぞれ複数の係合爪341がメイン表示部34aと反対側の面側に突出するように形成されている。メイン液晶モジュール34は、複数の係合爪341が表示部フロントケース31における内側樹脂部312の一部により構成された被係合部312aに係合することで表示部フロントケース31の凹部31cに固定配置される。被係合部312aを構成する内側樹脂部312は、板金部材300における平面部301に板金開口304が形成された部分に設けられており、メイン液晶モジュール34が表示部フロントケース31の凹部31cに収容される際には、係合爪341は、板金開口304を挿通した状態で、被係合部312aに係合される。
【0040】
メイン液晶モジュール34における表示部表面30a側には、透明部材からなるカバー部材33が、メイン液晶モジュール34のメイン表示部34aを覆うようにして配置される。カバー部材33は、表示部フロントケース31の開口部31aよりも一回り大きな形状を有している。カバー部材33と表示部フロントケース31とは、カバー部材33の周縁部が、表示部フロントケース31における開口部31aの周縁に形成され、内側樹脂部312の上側面及び外側樹脂部の上側面により構成される樹脂上面部314に貼り付けられて配置固定される。
【0041】
次に、上述した本実施形態の携帯電話機1における表示部フロントケース31の好ましい一製造方法について、図7から図10を参照して説明する。
図7は、図4に示す表示部フロントケース31の製造状態を示す図であり、図4におけるX−X線断面部分の製造状態を示す図である。図8は、図4に示す表示部フロントケース31の製造状態を示す図であり、図4におけるY−Y線断面部分の製造状態を示す図である。図9は、図4に示す表示部フロントケース31の製造状態を示す図であり、図4におけるZ−Z線断面部分の製造状態を示す図である。図10は、図4に示す表示部フロントケース31の製造状態を示す図であり、図4のAに示す部分における水平方向の断面における製造状態を示す図である。
【0042】
本実施形態の表示部フロントケース31はインサート成形により形成されており、図7から図10に示すように、キャビティ金型50とコア金型51との間に、板金部材300を配置し、キャビティ金型50及びコア金型51と板金部材300との間に形成された空間部分に溶融した樹脂材料を充填することにより板金部材300と樹脂部材310とを一体的に成形している。
【0043】
キャビティ金型50は、図7から図9に示すように、板金部材300の平面部301における内面の略全域に当接するように配置されている。また、キャビティ金型50には、図10に示すように、板金側壁部302に向けて突出した形状を有し、板金部材300がキャビティ金型50に配置された際に板金側壁部302の内面に当接する押し当て部52が形成されている。押し当て部52は、所定間隔をあけて間欠的に複数形成されている。そして、隣り合う2つの押し当て部52,52間には、キャビティ金型50と板金側壁部302の内面とが当接しない空間である内側樹脂部形成空間60が形成される。
【0044】
押し当て部52は、図9に示すように、板金側壁部302の内面に、その下端から上端に亘って連続して当接している。押し当て部52と板金側壁部302との当接面の形状は、板金側壁部302の高さ方向に長い略矩形形状を有している。また、押し当て部52の形状は、板金側壁部302の高さ方向に長い略直方体形状を有している。
【0045】
コア金型51は、図7から図9に示すように、板金部材300における平面部301の外面の略全域に当接している。板金側壁部302の外面は、キャビティ金型50及びコア金型51とは当接しておらず、板金側壁部302の外面とキャビティ金型50及びコア金型51との間には、表示部フロントケース31の形状に対応した形状の空間部分が形成されている。
【0046】
キャビティ金型50には、図7から図9に示すように、樹脂充填口53が形成されており、キャビティ金型50とコア金型51との間に板金部材300を配置した後、キャビティ金型50と板金側壁部302との間に形成された内側樹脂部形成空間60と、キャビティ金型50及びコア金型51と板金部材300との間に形成された所定形状を有する空間部分とに樹脂充填口53から溶融した樹脂材料が充填される。内側樹脂部形成空間60に充填された樹脂材料により内側樹脂部312が形成され、押し当て部52によって板金側壁部302とキャビティ金型50とが当接していた部分に板金露出部313が形成される。
【0047】
樹脂充填口53から充填された樹脂材料が冷却されて固化した後、キャビティ金型50及びコア金型51は、板金側壁部の高さ方向である上下方向に移動され、インサート成形された表示部フロントケース31がキャビティ金型50及びコア金型51から取り出される。
このようにして、板金部材300と樹脂部材310とが一体的に成形され、板金側壁部302の内面側に内側樹脂部312及び板金露出部313が形成された本実施形態の表示部フロントケース31が製造される。
【0048】
上述した本実施形態の表示部フロントケース31の製造方法によれば、板金部材300における板金側壁部302は、所定間隔をあけてキャビティ金型50の押し当て部52により支持されると共に、隣り合う2つの押し当て部52,52間には、内側樹脂部形成空間60が形成されるため、板金側壁部302の内面側に内側樹脂部312を形成することができると共に、金型と板金部材300との間に形成された空間に溶融した樹脂材料を充填した際に、充填した樹脂材料の熱や圧力等により板金側壁部302が変形することを防止できる。
【0049】
また、キャビティ金型50に形成された押し当て部52の形状は、板金側壁部302の高さ方向に長い略直方体形状を有している。そのため、樹脂材料を充填した後にキャビティ金型50を上下方向に移動させて金型から成形された表示部フロントケース31を取り出す際に、押し当て部52の形状により表示部フロントケース31の取り出しが阻害されることがなく、本実施形態の表示部フロントケース31を容易に製造することができる。
【0050】
また、上述した構成を有する本実施形態の携帯電話機1によれば、板金側壁部302の内面側に内側樹脂部312を形成することにより、表示部側筐体30の側壁における所定の厚みを確保しつつ板金側壁部302の外面側に形成する外側樹脂部311の厚みを薄くすることができる。従って、外側樹脂部311の厚みに起因して表示部側筐体30における表示部側面30cの表面にひけが発生しにくい。
【0051】
特に、表示部フロントケース31と表示部リアケース32との結合部を表示部裏面30b側に形成することにより、表示部側筐体30の表示部側面30cにおける樹脂部材310の厚みが厚くなった場合にも、内側樹脂部312を形成することにより、表示部側面30cの厚みを確保しつつ外側樹脂部311の厚みを薄くすることができ、表示部側筐体30の表面におけるひけの発生を防止できる。
【0052】
また、内側樹脂部312は、その一部が被係合部312aを構成しているため、メイン液晶モジュール34を表示部フロントケース31の凹部31cに収容配置する際に、メイン液晶モジュール34に設けられた係合爪341との係合を、別部材等を設けることなく容易に行うことができる。
【0053】
また、内側樹脂部312の一部により構成された被係合部312aが設けられている部分の近傍における板金部材300の平面部301には、係合爪341が挿通可能な板金開口304が形成されているため、被係合部312aと係合爪341との係合をよりスムーズに行うことができる。
更に、内側樹脂部312は、その厚みが上方から下方に向けて漸次厚くなる形状を有しているため、メイン液晶モジュール34を表示部フロントケース31の凹部31cに収容する際に、係合爪341と被係合部312aとの係合を更にスムーズに行うことができる。
【0054】
また、内側樹脂部312の上面にカバー部材33を貼り付けて配置することが可能であるため、カバー部材33の大きさを小さく構成することができる。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されるものではない。
例えば、内側樹脂部312及び板金露出部313は、本実施形態においては、表示部フロントケース31における長手方向に沿って設けられた板金側壁部302に形成されていたが、表示部フロントケース31における幅方向に沿って設けられた板金側壁部302に形成されていてもよい。
【0056】
また、本実施形態においては、連結部40による折り畳み可能な携帯電話機1の説明をしているが、折り畳み式ではなく、操作部側筐体20と表示部側筐体30とを重ね合わせた状態から一方の筐体を一方向にスライドさせるようにしたスライド式の携帯電話機であってもよい。また、操作部側筐体20と表示部側筐体30との重ね合せ方向に沿う軸線を中心に一方の筐体を回転させるようにした回転式(リボルバ)の携帯電話機であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1(A)は、本発明の一実施形態である携帯電話機の平面図を示し、図1(B)は、本発明の一実施形態である携帯電話機の側面図を示す。
【図2】図1Aに示す携帯電話機を折り畳んだ状態において、携帯電話機を表示部裏面側からみた平面図を示す。
【図3】表示部側筐体の分解斜視図において表示部側筐体を表示部リアケース側から見た状態を示す図である。
【図4】表示部側筐体の一部分解斜視図において表示部側筐体を表示部表面側から見た状態を示す図である。
【図5】図4におけるX−X線断面図を示す。
【図6】図4におけるY−Y線断面図を示す。
【図7】図4に示す表示部フロントケースの製造状態を示す図であり、図4におけるX−X線断面部分の製造状態を示す図である。
【図8】図4に示す表示部フロントケースの製造状態を示す図であり、図4におけるY−Y線断面部分の製造状態を示す図である。
【図9】図4に示す表示部フロントケースの製造状態を示す図であり、図4におけるZ−Z線断面部分の製造状態を示す図である。
【図10】図10は、図4に示す表示部フロントケースの製造状態を示す図であり、図4のAに示す部分の製造状態における水平方向の断面を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 携帯電話機
20 操作部側筐体
30 表示部側筐体(筐体)
31 表示部フロントケース(ケース、第1ケース)
32 表示部リアケース(第2ケース)
33 カバー部材
34 メイン液晶モジュール(内部部材)
35 回路基板
36 サブ液晶モジュール
37 結合部
40 連結部
50 キャビティ金型
51 コア金型
52 押し当て部
53 樹脂充填口
60 内側樹脂部形成空間(空間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面部及び該平面部の外縁に形成された板金側壁部を有する板金部材と、該板金側壁部の内面側の少なくとも一部を覆う内側樹脂部を有する樹脂部材とがインサート成形により一体的に形成されるケースの製造方法であって、
前記板金部材の内面側に、前記平面部の略全面に当接するキャビティ金型であって前記板金側壁部に向けて突出し該板金側壁部の内面に間欠的に当接する複数の押し当て部が設けられたキャビティ金型を配置し、隣り合う2つの前記押し当て部間において前記板金側壁部の内面と前記キャビティ金型との間に形成される空間に溶融した樹脂材料を充填して前記内側樹脂部を形成するケースの製造方法。
【請求項2】
前記押し当て部は、その形状が前記板金側壁部の高さ方向に長い略直方体形状を有している請求項1記載のケースの製造方法。
【請求項3】
平面部及び該平面部の外縁に形成された板金側壁部を有する板金部材と、該板金部材の少なくとも一部を覆う樹脂部材とがインサート成形により一体的に形成され凹部を有する第1ケース、及び該第1ケースと結合される第2ケースを有する筐体を備える電子機器であって、
前記凹部の内側面は、前記板金側壁部の内面が露出した板金露出部と、前記板金側壁部の内面が所定間隔をあけて前記樹脂部材により覆われた複数の内側樹脂部とを有している電子機器。
【請求項4】
前記筐体内に配置される内部部材を更に備え、
前記内部部材は可撓性の係合爪を有すると共に、前記第1ケースにおける前記内側樹脂部は、前記係合爪が係合可能な被係合部を有しており、
前記内部部材は、前記凹部に収容された状態で前記係合爪が前記被係合部に係合して前記筐体に取り付けられる請求項3記載の電子機器。
【請求項5】
前記板金部材における前記平面部には、前記係合爪が挿通可能な孔部が形成されている請求項4記載の電子機器。
【請求項6】
前記筐体は、前記第1ケースの外面側に配置されるカバー部材を更に備え、
前記内側樹脂部における上面に、前記カバー部材は貼り付け可能に構成されている請求項3から5のいずれかに記載の電子機器。
【請求項7】
前記筐体は、前記第1ケースと前記第2ケースとが互いに接する位置である結合部が、該筐体における前記第2ケース側の面に形成される請求項3から6のいずれかに記載の電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−107210(P2009−107210A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281503(P2007−281503)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】