説明

ケーブル及びその製造方法

【課題】 安全でしかも優れた咬害防止効果が得られるケーブル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明のケーブル1は、内部コア2の外側に、樹脂被覆からなる外被4と、鋭利な先端形状を有するガラス鱗片からなる非金属粒子24を樹脂被覆内に含有した咬害防止層3が設けられている。非金属粒子24として、厚さが10μm以上かつ100μm以下、平均粒度が100μm以上かつ1000μm以下であるガラス鱗片を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂からなる外被で被覆された電線や光ファイバケーブルなどのケーブル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂からなる外被で被覆された電線や光ファイバケーブルなどは、例えば、地中に敷設された場合などでは、鼠等の害獣からの咬害を受けて損傷することがある。
このため、ケーブルの外被に、ガラス繊維を5%〜20%の割合で含有する熱可塑性プラスチックの保護層を設けて硬度を高め、害獣からの被害を防止することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−102221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、単にガラス繊維を外被に含有させただけでは、害獣にガラス繊維が刺さりづらく、害獣に痛みを効果的に覚えさせることが困難であった。
そこで、本発明者は、咬害防止効果としては、ケーブルを齧った際に、今迄以上に害獣に痛みを覚えさせることが必要であると考えた。
【0005】
本発明は、忌避剤を用いずに、優れた咬害防止効果が発揮できるケーブル及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできる本発明に係るケーブルは、樹脂被覆からなる外被によって覆われたケーブルであって、鋭利な先端形状を有する非金属粒子を前記樹脂被覆内に有することを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係るケーブルにおいて、前記非金属粒子は、厚さが10μm以上かつ100μm以下であることが好ましい。
また、本発明に係るケーブルにおいて、前記非金属粒子は、平均粒度が100μm以上かつ1000μm以下であることが好ましい。
また、本発明に係るケーブルにおいて、前記非金属粒子は、ガラス鱗片であることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係るケーブルにおいて、前記外被によって覆われた内部コアを有し、前記非金属粒子を含有する層の内側に内部コア保護層が設けられていることが好ましい。
また、本発明に係るケーブルにおいて、前記非金属粒子を含有する層の外側に、前記非金属粒子を含まない樹脂層が設けられていることが好ましい。
【0009】
また、上記課題を解決することのできる本発明に係るケーブルの製造方法は、樹脂被覆からなる外被によって覆われたケーブルの製造方法であって、前記外被は、鋭利な先端形状を有する非金属粒子を樹脂内に含有させて押し出し成形することにより形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のケーブルによれば、忌避剤を用いることなく樹脂被覆中に鋭利な先端形状を有する非金属粒子を含ませているため、毒性がなく安全で、外被を齧る鼠などの害獣の皮膚に外被中の非金属粒子が刺さり、害獣に対して効果的に痛みを与えることができ、優れた咬害防止効果を得ることができる。
また、本発明のケーブルの製造方法によれば、押し出し成形により樹脂に張力が作用し、外被中の非金属粒子の向きがケーブル長手方向に沿って平行かつ層状に配置されるため、非金属粒子を含む部分の厚さを薄く抑えることができ、また、剛性を高めて咬害防止効果をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係るケーブルの実施の形態の例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は本実施形態のケーブルの構造を示す横断面図であり、図2は図1のケーブルの外被における縦断面図であり、図3はケーブルの外被に含有されたガラス鱗片を示す斜視図である。
図1に示すように、ケーブル1は、内部コア2を有しており、この内部コア2の外側が、樹脂被覆からなる外被4によって覆われている。
【0012】
内部コア2の外側を覆う外被4は、例えば、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂からなる。図2には、内部コア2の外層の構造を示しており、ケーブル1の内側から順に、内部コア保護層21、咬害防止層3及び外被4となっている。
【0013】
咬害防止層3は、厚さ約0.5〜2.0mm程度に設けられた樹脂被覆であり、その内部に多数の非金属粒子24を有している。これらの非金属粒子24は、樹脂に対して10〜45重量%の範囲で一定の割合で含有されており、ケーブル1の長手方向に沿って平行にかつ層状に配置されている。
【0014】
図3に示すように、この非金属粒子24は、例えば、鋭利な先端形状の角部を有する破砕されたガラス鱗片からなるものであり、その厚さTは、10μm以上かつ100μm以下とされ、平均粒度(粒子の最大径毎に粒子をランク分けし、ランク順に見て、重量の中央値が該当するランクの最大径)Lが100μm以上かつ1000μm以下とされている。そして、このガラス鱗片からなる非金属粒子24は、シリカガラスの薄い(10〜100μm)ガラス箔を破砕することにより容易に得ることができ、このようにガラス箔を破砕することにより、くさび状などの鋭利な角部を有する形状が得られる。
【0015】
なお、ガラス鱗片に用いるシリカガラスとしては、純シリカであってもあるいは所定の添加物が含有されたものでも良い。また、非金属粒子24としては、ガラス鱗片に限らず、セラミックスであれば使用可能である。
【0016】
また、この咬害防止層3の内側の内部コア保護層21及び外側の外被4は、いずれも非金属粒子24を含まない樹脂層からなるものである。
上記内部コア2の外側の咬害防止層3は、ダイスに内部コア2を通して引き出しながら、その外周に樹脂を引き落とすように押し出すこと(所謂引き落とし押し出し成形)により製造される。なお、成形することは、充実押し出しでも可能である。そして、この樹脂を引き落とし押し出し成形する前に、破砕された非金属粒子24が樹脂内に混入されている。
【0017】
このようにすると、ダイスから押し出された樹脂が、ダイスから引き出される内部コア2によって張力が作用して引き延ばされるように被覆され、この引き延ばされる力によって、樹脂に入れた非金属粒子24が長手方向に沿って平行にかつ層状に配置される。また、非金属粒子24はその向きが揃うことにより、高密度に配置されやすくなり、咬害防止層3の剛性が高くなる。
【0018】
そして、上記実施形態に係るケーブル1によれば、鼠などの害獣が外被4を齧った際に、咬害防止層3に含まれた非金属粒子24が害獣の口腔内またはその周辺の皮膚に刺さり、痛みを与える。
ここで、例えば、ガラス繊維を外被に含有させた場合では、そのガラス繊維の径が細いと(例えば10μm程度)、害獣の皮膚に刺さりにくく、例え刺さっても痒みを覚えさせる程度である。また、ガラス繊維の径が太いと(例えば15μm程度)、害獣に対して痛みを覚えさせて咬害防止効果が得られるが、繊維の断面形状が円形であるため、害獣の皮膚に刺さりづらく、十分な効果が期待できない。
【0019】
これに対して、本実施形態に係るケーブル1では、咬害防止層22に含有された非金属粒子24が破砕により大きな断面積で鋭利な角部を有するので、鼠などの害獣が外被3を齧った際に、害獣の皮膚に非金属粒子24が確実に刺さり、害獣に対して効果的に痛みを与えることができ、優れた咬害防止効果を得ることができる。
また、樹脂に非金属粒子24を含有させた構造であるので、忌避剤などの薬品の溶け出しや錆などの腐食がなく、安全性、耐久性に優れたケーブルとすることができる。
【0020】
特に、非金属粒子24として、ガラス箔を破砕したガラス鱗片を用いることにより、極めて鋭利な角部を有するガラス鱗片によって害獣に対する咬害防止効果を高めることができる。
また、非金属粒子24の厚さを10μm以上かつ100μm以下とし、その平均粒度を100μm以上かつ1000μmとすることにより、円滑な押し出し成形が可能で、しかも、優れた咬害防止効果を得ることができる。
【0021】
さらに、非金属粒子24が含有する咬害防止層3の内周側及び外周側に、非金属粒子24のない内部コア保護層21及び外被4を設けているため、咬害防止層3の非金属粒子24から内部コア2を確実に保護することができ、また、ケーブル1の敷設作業時における作業者の安全性を確保することができる。
【0022】
なお、内部コア保護層21としては、咬害防止層3の非金属粒子24から内部コア2を保護することが可能であれば、樹脂の被覆に限定されず、例えば、金属等のシースでも良い。
【0023】
また、上記ケーブルの製造方法によれば、外被4を押し出し成形する際に、破砕された非金属粒子24を樹脂内に入れて引き落とし押し出し成形することにより、非金属粒子24を長手方向に沿って平行かつ層状に配置させ、厚さが薄く抑えられた咬害防止層3を形成することができる。また、咬害防止層3における非金属粒子24を長手方向に沿って平行かつ層状に配置させることにより、咬害防止層3における剛性を高めることができ、咬害防止効果をさらに高めることができる。
【0024】
なお、上記実施形態では、内部コアは、光ファイバテープ心線を収容した複数のチューブを有するルースチューブ型であっても、光ファイバテープ心線をスロット溝に収容したスロットを有するスロット型であっても良い。また、ケーブルとしては、光ファイバケーブルに限らず、導線の外周に外被が被覆された電線などのケーブルにも適用可能である。
【実施例】
【0025】
厚さ30μmのガラス箔を粉砕することにより、平均厚みが30μm、平均粒度(外形寸法)が10μmから6000μmで、最大断面積が30×6000μmのガラス鱗片を作り、このガラス鱗片を35重量%の割合で含有させた樹脂とともに、その内周側及び外周側にガラス鱗片を入れない樹脂を引き落とし押し出し成形し、内部コアの外周に外被が被覆されたケーブルを製造した。
【0026】
このように製造したケーブルでは、その外被内に、最大断面積が30×6000μmと大きな断面積を有するガラス鱗片を含有していながら、これらのガラス鱗片がケーブル長手方向に沿って平行かつ層状に配置され、厚さが薄く抑えられた咬害防止層を形成することができ、また、その剛性を高めることができた。
【0027】
そして、このケーブルでは、咬害防止層に含まれるガラス鱗片が、厚みは30μmと小さいが、最大で30×6000μmと大きな断面積を有しているので、鼠などの害獣が外被を齧った際に、害獣の口腔にガラス鱗片が確実に刺さる。つまり、このケーブルにより、害獣に対して効果的に痛みを覚えさせることができ、優れた咬害防止効果を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るケーブルの実施の形態の例を示す横断面図である。
【図2】図1に示すケーブルの内部コアの外側部分の縦断面図である。
【図3】本発明に係るケーブルの咬害防止層に含有されたガラス鱗片を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ケーブル
2 内部コア
3 咬害防止層(樹脂被覆)
4 外被(樹脂層)
21 内部コア保護層
24 非金属粒子(ガラス鱗片)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂被覆からなる外被によって覆われたケーブルであって、
鋭利な先端形状を有する非金属粒子を前記樹脂被覆内に有することを特徴とするケーブル。
【請求項2】
前記非金属粒子は、厚さが10μm以上かつ100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記非金属粒子は、平均粒度が100μm以上かつ1000μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のケーブル。
【請求項4】
前記非金属粒子は、ガラス鱗片であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のケーブル。
【請求項5】
前記外被によって覆われた内部コアを有し、前記非金属粒子を含有する層の内側に内部コア保護層が設けられていることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のケーブル。
【請求項6】
前記非金属粒子を含有する層の外側に、前記非金属粒子を含まない樹脂層が設けられていることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のケーブル。
【請求項7】
樹脂被覆からなる外被によって覆われたケーブルの製造方法であって、
前記外被は、鋭利な先端形状を有する非金属粒子を樹脂内に含有させて押し出し成形することにより形成することを特徴とするケーブルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−286303(P2006−286303A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−102511(P2005−102511)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】