説明

ケーブル反力式電動パーキングブレーキの手動操作装置

【課題】ケーブル反力式電動パーキングブレーキ用のアクチュエータのインナーケーブルに取り付けられる手動操作装置であって、パーキングブレーキの作動/解除ができるコンパクトな手動操作装置を提供することを目的としている。
【解決手段】筒状のハウジング部材11と、そのハウジング部材11に、軸方向の移動を拘束されて収容される支持部材12と、そのハウジング部材11に支持部材12と同軸にして収容され、かつ、軸方向の移動を可能にして支持部材12に連結される移動部材13と、その移動部材13を初期位置において移動できないように固定するロック部材14と、そのロック部材14を移動部材13の初期位置にて保持するように付勢する保持部材15と、ロック部材の回動を規制する規制部材16とを備えているケーブル反力式電動パーキングブレーキの手動操作装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケーブル反力式電動パーキングブレーキの手動操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクチュエータを用いて電動でパーキングブレーキを作動/解除するブレーキシステムが知られている。このようなブレーキシステムは、アクチュエータに不具合が発生したときのために、手動でそのパーキングブレーキを解除できる手段が設けられている。
本出願人は、インナーケーブルを電動で操作してパーキングブレーキを作動/解除させるアクチュエータであって、そのアクチュエータに電気的な不具合が起きたとき、そのインナーケーブルを直接操作してパーキングブレーキの解除が行えるケーブル反力式電動パーキングブレーキ用のアクチュエータを特許文献1で提供している。
【0003】
つまり、特許文献1には、パーキングブレーキに連結される第1インナーケーブルと、緊急解除機構を介して車体に連結される第2インナーケーブルとが係止されているアクチュエータであって、この第1インナーケーブルと、第2インナーケーブルとをスライド自在に連結したスライド機構を備えたアクチュエータが開示されている。第1インナーケーブルと第2インナーケーブルとはスライド機構において、ネジ嵌合により連結されている。
このように構成されているため、通常時、アクチュエータのモータにより第1インナーケーブルを操作するとスライド機構により第1インナーケーブルと第2インナーケーブルは接近または離隔し、パーキングブレーキの作動/解除を行う。一方、電気的な不具合が起きたときは、外部より第2インナーケーブルを操作することにより第1インナーケーブルを間接的に操作し、パーキングブレーキの解除を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−64194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、このアクチュエータに連結された第2インナーケーブルは、通常時は第1インナーケーブルに発生する張力を支持する必要があり、電気的な不具合が起きたときは、第1インナーケーブルを緩める戻し操作ができる状態になっていることが必要である。そのため、第2インナーケーブルに連結された外部装置(特許文献1ではレバー、ノブ、あるいは、ボタンなどの緊急解除機構)は、第2インナーケーブルの張力を支持し、かつ、第2インナーケーブルの戻し操作ができるように第2のインナーケーブルを引いた状態で維持している。
しかし、このように引いた状態の第2インナーケーブルを更に引くことができないため、アクチュエータが失陥したときは、パーキングブレーキを作動させることができないという問題がある。
また、このような緊急解除機構は、通常レバー比が大きい回転レバーなどが用いられているため、その操作には大きなスペースが必要となり、緊急手段に用いられる装置にしては、その配置スペースを大きく確保しなくてはならない問題がある。
【0006】
本発明は、このようなケーブル反力式電動パーキングブレーキ用のアクチュエータの第2インナーケーブルに取り付けられる手動操作装置であって、パーキングブレーキの作動/解除ができるコンパクトな手動操作装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のケーブル反力式電動パーキングブレーキの手動操作装置は、筒状のハウジング部材と;そのハウジング部材に収容され、前端に第1ネジ部が設けられ、後端に操作部が設けられ、軸周りに回転自在な柱状の支持部材と;そのハウジング部材に支持部材と同軸にして、軸周りの回転を拘束されて収容され、後端に前記第1ネジ部とネジ嵌合する第2ネジ部が設けられ、前端にインナーケーブルが連結されるインナーケーブル連結部が設けられ、前記支持部材を回転させることにより前記支持部材に対して軸方向の前後に移動できる初期位置に配置される柱状の移動部材と;その移動部材を前記初期位置から移動できないようにするロック状態と、それを解除するアンロック状態とを呈するロック部材と;そのロック部材をロック状態に保持する保持部材とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
(1)本発明のケーブル反力式電動パーキングブレーキの手動操作装置は、筒状のハウジング部材と、そのハウジング部材に収容され、前端に第1ネジ部が設けられ、後端に操作部が設けられ、軸周りに回転自在な柱状の支持部材と、そのハウジング部材に支持部材と同軸にして、軸周りの回転を拘束されて収容され、後端に前記第1ネジ部とネジ嵌合する第2ネジ部が設けられ、前端にインナーケーブルが連結されるインナーケーブル連結部が設けられ、前記支持部材を回転させることにより、前記支持部材に対して軸方向の移動が可能な柱状の移動部材とを有しているため、全体をコンパクトにすることができ、その配置スペースを最小限とすることができる。また、この操作を行うときは、操作部に工具等を取り付けて支持部材を回転させるだけで、移動部材を軸方向に移動させ、その移動部材に連結されたインナーケーブルを操作できるため、操作スペースも小さくすることができる。また、レバー比が大きい回転レバーが不要である。
この手動操作装置は、支持部材と移動部材とがネジ嵌合によって連結されて、支持部材が移動部材の軸移動を支持しているため、電動パーキングブレーキのアクチュエータによって、ブレーキの作動/解除が行われ、インナーケーブルが操作されても、移動部材の位置は保たれる。そのため、移動部材を軸方向のどちらへも移動できるような初期位置に配置しておくことにより、アクチュエータが失陥した場合、移動部材を軸方向に動かすことができ、ブレーキの作動/解除の両方が可能である。本発明において、支持部材の第1ネジ部と移動部材の第2ネジ部は、どちらが雄ネジまたは雌ネジとなってもよい。
【0009】
また、移動部材を前記初期位置から移動できないように固定するロック状態と、その固定を解除するアンロック状態とを呈するロック部材をさらに備えているため、アクチュエータが正常な状態のときにロック状態にしておくことにより、移動部材を初期位置に保つことができる。さらに、ロック部材をロック状態にすることにより、移動部材が初期位置であることを容易に認識することができ、アクチュエータの修理後の設定が容易にできる。
さらに、そのロック部材を移動部材の初期位置にて保持する保持部材をさらに備えているため、ロック状態にあるロック部材が不意に外れることがない。
【0010】
(2)本発明の手動操作装置であって、前記移動部材が軸に対して垂直方向外側に向かって設けられた突起を有し、前記ハウジング部材が前記突起を軸方向に案内するスリットを有する場合、または、(3)前記ハウジング部材が、断面が多角形の中心孔を有し、前記移動部材が、中心孔内で移動部材の軸周りの回転を拘束され、軸方向への移動を可能にされている形状である場合、前記移動部材はハウジング部材に対しての回転が拘束される。
【0011】
(4)本発明の手動操作装置であって、ロック部材がハウジング部材から離間するように回動自在に連結される場合、ロック状態とアンロック状態との移行が容易にできる。
(5)本発明の手動操作装置であって、前記ロック部材が初期位置の移動部材の一部と係合する係合部を備えている場合、インナーケーブルの張力を支持部材とロック部材の係合部の両方で支持させることができるため、支持部材への負担を軽減し、全体の耐久性を高めることができる。
(6)前記ハウジング部材に、前記ロック部材の回動を規制する規制部材が設けられている場合、ロック部材が大きく回動して操作スペースが大きくなり、操作が煩雑になることがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1a〜図1cは、本発明のケーブル反力式電動パーキングブレーキの手動操作装置の一実施形態を示す平面図、側面図、一部平面側面図である。
【図2】図2a〜図2dは、それぞれ図1のハウジング部材を示す側面図、平面断面図、背面図、正面図である。
【図3】図1の支持部材を示す側面断面図である。
【図4】図4a、図4bは、それぞれ図1の移動部材を示す平面図、平面断面図である。
【図5】図5a〜図5cは、それぞれ図1のロック部材を示す平面図、側面図、背面図である。
【図6】図6aは本発明の手動操作装置のハウジング部材の他の形態を示す側面断面図であり;図6b、図6cは本発明の手動操作装置のロック部材の他の形態を示す平面図、側面図であり;図6dは本発明の手動操作装置のロック部材のさらに他の形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1a〜cのケーブル反力式電動パーキングブレーキの手動操作装置10は、筒状のハウジング部材11と、そのハウジング部材11に、軸方向の移動を拘束されて収容される支持部材12と、そのハウジング部材11に支持部材12と同軸にして収容され、かつ、軸方向の移動を可能にして支持部材12に連結される移動部材13と、その移動部材13を初期位置から移動できないように固定するレバー状のロック部材14と、そのロック部材14をロック状態に保持するように付勢する保持部材15と、ロック部材の回動を規制するテープ状の規制部材16とを備えている。そして、この手動操作装置の移動部材13の端部にケーブル反力式電動パーキングブレーキのインナーケーブルCの端部が連結されている。
この手動操作装置10は、電動でパーキングブレーキ操作を行うアクチュエータが故障等により作動しなくなった緊急時に、パーキングブレーキを作動させる、あるいは、パーキングブレーキを解除させるものである。
【0014】
ハウジング部材11は、図2a〜図2dに示すように、断面が矩形の中心孔を有し、本体20、その前端(図2aの右側)を閉じる底部材21および、その後端(図2aの左側)を閉じる蓋部材22とからなる筒状体である。また、本体の後部内面には、鍔部材23が固定されている。本実施形態では、中心孔は矩形であるが、後述するように移動部材の回転を拘束できるように構成されていれば、他の多角形でよい。ここで前端とは、インナーケーブルが連結されたアクチュエータ側を言う。
【0015】
本体20の側面には、軸方向に設けられたスリット24が対向して形成されている。そして、本体20の前端には、ロック部材14を連結するためのロック部材固定孔25aが対向して形成されており、本体20の後部には、支持部材12を回転自在に支持し、軸方向の移動を拘束する鍔部材23を固定するための鍔部材固定孔25bが対向して形成されている。さらにロック部材固定孔25aの近辺に保持部材15を連結するための保持部材固定孔25cが形成されている。ロック部材固定孔25aは底部材21を本体20に固定するためのものでもあり、鍔部材固定孔25bは蓋部材22を本体20に固定するためのものでもある。
本体20は、たとえば運転席のダッシュボードの下など、通常は目に付きにくい場所にブラケット等を介してネジ留めされる。
【0016】
底部材21には、インナーケーブルCを内部に挿通するアウターケーシングG(図1参照)を連結するアウターケーシング連結部26を有しており、中央に形成されたインナーケーブルを通す連通孔27によって本体20内と連通している。また、ロック部材固定孔25aを介して本体20と固定するための雌ネジが形成されたネジ孔27aが一対形成されている。
蓋部材22は、コ字状のものであり、天壁28と、その天壁の側縁から垂直に延びる側壁29とからなる。天壁28には、操作具を挿入する挿入孔30が形成されており、側壁29には連結孔31が形成されている。
【0017】
鍔部材23は、支持部材12を挿入して支持する外形が四角で、中心孔が円形の環状のものである。また、鍔部材23は上端に段部32が形成されている。この段部32は、前記ハウジング部材11の本体20の後端開口部と係合するものである。また、鍔部材23の対向する面には本体20と固定するために内面に雌ネジが形成されたネジ孔33が形成されている。この鍔部材のネジ孔33に、蓋部材22の連結孔31および鍔部材固定孔25bを介してネジ等を螺合することにより、蓋部材22、鍔部材23および本体20が固定される。
このように構成されたハウジング部材11は、支持部材12と移動部材13とを同軸にして収容するため、コンパクトである。
【0018】
支持部材12は、図3に示すように、ハウジング部材11内に軸方向の移動を拘束されて収容される断面円形で柱状のものであり、鍔部材23との間にワッシャー35が設けられている。
支持部材12は、前端に設けられ、外周に第1ネジ部である雄ネジが形成された移動部材連結部36と、その後端に設けられた操作部37と、移動部材連結部36と操作部37との間に設けられた軸部38とからなる。操作部37は、軸部38より拡径している。操作部37の基部には、工具と連結できるように六角孔39が形成されている。また、軸部38は、支持部材12が軸周りに回転できるように、鍔部材23の中心孔の径より若干小さくなっている。
【0019】
このように構成されているため、支持部材12は鍔部材23に対して回転自在である。一方、支持部材12は、前端方向への移動が鍔部材23により拘束され、支持部材12の後端方向への移動が蓋部材22により拘束される(図1参照)。
【0020】
移動部材13は、図4a、bに示すように、筒状の胴部45と、その前端(図4aの右側)を閉じる底部46とからなる柱状のものである。底部46の中央には、インナーケーブルのケーブルエンドE(図1参照)を保持できるようにインナーケーブル連結部47が形成されている。胴部45は、ハウジング部材11内を軸周りの回転が拘束されながら摺動するように形成されており、この実施形態では胴部の前端45aおよび後端45bがハウジング部材11の内部形状と同じ矩形で、若干小さくなっている。これにより胴部45の回転が規制される。しかし、次の突起49を備えており、他の回転拘束手段を備えている場合は、円形であってもよい。
【0021】
胴部45には、180度対向するように突起孔48が形成されており、胴部から軸に対して垂直方向外側に向かって突出するように突起孔48へ突起49が挿入されている。この突起49は、前記ハウジング部材11のスリット24から突出するように設けられている。これにより移動部材13は、ハウジング部材11に軸方向に移動自在に収容され、自身の回転は規制される。また、胴部45の後端(図4bの左側)内面には、前記支持部材12と同軸になるように、本体の移動部材連結部36とネジ嵌合する第2ネジ部である雌ネジ50が形成されている。この内面は、支持部連結部となる。
このように支持部材12と移動部材13とはネジ嵌合によって連結されるため、ハウジング部材11および鍔部材23に支持された支持部材12が移動部材13の軸移動を支持している。そのため、支持部材12が回転して初めて移動部材13はハウジング部材11内において、軸方向に移動し、インナーケーブルCから張力を受けても移動しない。
【0022】
ロック部材14は、図5a〜図5cに示すように、ハウジング部材11を覆うように断面コ字状に構成されたものであり、ハウジング部材11の上面を覆う天壁部51と、その両側縁から下方に延びる側壁部52とからなる。両側壁部52の前端(図5bの右側)には、回動軸孔53が形成されている。天壁部51の後端は、掴み部54となっており、若干立ち上がっている。また、天壁部51の中央が若干上方へ突出している。また、側壁部52には、移動部材13の一部と係合する係合部である切欠き56が形成されている。この切欠き56は、移動部材13が軸方向のどちらへも移動できるような初期位置にあり、かつ、ロック部材14がハウジング部材11に密着しているとき、ハウジング部材のスリット24から突出した移動部材の突起49と係合するように構成されている。
また、天壁部51には、レバー位置規制部材16を通す通しスリット57が一対設けられている。
【0023】
ロック部材14は、前記ハウジング部材11のロック部材固定孔25a側からロック部材の回動軸孔53を介して前底部材21のネジ孔27aにネジを挿入することにより、ロック部材14がハウジング部材11から離間するように回動自在に連結される。そして、ロック部材の掴み部54をハウジング部材11から離間するように引っ張り上げることにより、ロック部材14はハウジング部材11に対して起き上がり移動部材13の突起49とロック部材14の切欠き56の係合が外す(アンロック状態)。一方、掴み部54をハウジング部材11に押し付け、ロック部材14はハウジング部材11に密着させることにより、移動部材13の突起49とロック部材14の切欠き56が係合させる(ロック状態)。このようにロック部材14は簡単に操作することができる。そして、ロック状態のとき、ロック部材の切欠き56は移動部材13の突起49と係合しているため、移動部材13の移動がロック部材14により拘束され、移動部材13を初期位置に保つことができる。
【0024】
図1に戻って、保持部材15は、スナップスプリングからなり、ロック部材14をロック状態に保持するようにハウジング部材11に密着させる方向に付勢するものである。このスナップスプリングは外形がC字状のものであり、その端部がハウジング部材11の保持部材固定孔25c(図2a、図2b参照)に挿入されている。この形態のスナップスプリングは、左右の長さが違う捻じれた金属鋼線からなり、閉じる方向に付勢するものである。これにより、ロック状態にあるロック部材が不意に外れることがない。本実施形態では、保持部材としてスナップスプリングを用いているが、ロック部材をロック状態に保持することができれば、スプリング等の付勢部材を用いなくてもよい。
【0025】
規制部材16は、テープ状のものであり、ロック部材の通しスリット57を通して、両端が鍔部材固定孔25bを介してハウジング部材11へ固定されている。この規制部材16は、ロック部材14がハウジング部材11に対して密着しているとき、若干撓むように設けられている。そして、ロック部材14が回動して所定の角度となったときに当接してロック部材がそれ以上の角度にならないようにロック部材を規制する。そのため、ロック部材14の所定角度以上の回動を規制して操作スペースを大きくならない。また、その操作が容易である。
【0026】
電動でパーキングブレーキ操作を行うアクチュエータが故障等により作動しなくなった緊急時における、この手動操作装置の操作方法を図1bを用いて説明する。
【0027】
パーキングブレーキが作動していない状態でアクチュエータが失陥した場合に行うパーキングブレーキ作動の操作は、初めにロック状態にあるロック部材14を図1bの想像線のように、ハウジング部材11から引っ張り上げてアンロック状態にし、移動部材13がハウジング部材11内で軸方向の移動できるようにする。次に、支持部材12の操作部37の六角孔39に工具を挿入し、支持部材12を時計方向(右回り)に回転させる。このとき、支持部材12は鍔部材23により軸方向の移動が拘束されているため、支持部材12の軸方向の位置は変わらず、その支持部材12にネジ嵌合された移動部材13が引き寄せられる(図1cの左側に移動)。これにより移動部材13の端部に連結されたケーブル反力式電動パーキングブレーキのインナーケーブルCが張力を得て、パーキングブレーキが作動する。
【0028】
また、パーキングブレーキを作動した後も、移動部材13は支持部材12によって支持されているため、インナーケーブルCの張力を維持することができ、つまり、パーキングブレーキの作動状態を保持することができる。そして、支持部材12を左回りに回転させることにより、パーキングブレーキを解除でき、アクチュエータの修理までパーキングブレーキの作動/解除が行える。
【0029】
一方、パーキングブレーキが作動した状態でアクチュエータが失陥した場合に行うパーキングブレーキ解除の操作は、ロック状態にあるロック部材14をハウジング部材11から引っ張り上げてアンロック状態にし、支持部材12を先ほどとは逆の向き(反時計周り)に回転させる。これにより、移動部材13は支持部材12から離れるようにして移動する(図1cの右側に移動)。これにより移動部材13の端部に連結されたインナーケーブルCの張力が緩み、パーキングブレーキを解除することができる。このものも、支持部材12を時計周りに回転させることにより、再度パーキングブレーキを作動することができる。
【0030】
このように手動操作装置10は、電動でパーキングブレーキ操作を行うアクチュエータが故障等により作動しなくなるなどの緊急時においてもハウジング部材11内の支持部材12を工具等によって回転させるだけでパーキングブレーキの作動およびパーキングブレーキの解除を簡単に行うことができることから、操作スペースを小さくすることができ、レバー比が大きい回転レバーが不要である。特に、パーキングブレーキを作動させた後、その作動状態を保持することができる。
また、この手動操作装置10は、アクチュエータが故障していないときもパーキングブレーキを作動しているときは、インナーケーブルCによる張力を受けるが、移動部材13は支持部材12だけでなく、移動部材13の突起49とロック部材14の切欠き56の係合によるロック部材14にも支持されることになり、パーキングブレーキ時のケーブルの反力を確実に支持させ、支持部材12への負担を軽減し、手動操作装置の耐久性を高めることができる。
【0031】
さらに、この手動操作装置10を作動させるときは、ロック部材14を回動させてから支持部材12を回転させるが、規制部材16を備えているため、その回動角度は必要以上大きくならず、操作スペースは小さくなり、周囲部品への影響を最小限に抑えることができる。また、一旦、突起49が切欠き56から外れ、移動部材13を移動させた後は、ロック部材14から手を離してもよい。そのときは、ロック部材14の側壁52の切欠き56以外の部分が突起49に乗るため、ロック状態になることがない。なお、この状態で支持部材12を回転させて初期位置まで移動部材13を移動させると、突起49が切欠き56の位置に達したときに、保持部材15の付勢力によってロック部材14がハウジング部材11側へ回動して突起49と切欠き56が再係合する。そのため、移動部材13の位置決めが容易に行える。また、ロック部材14がハウジング部材11に密着していることにより、移動部材13が初期位置であることを容易に認識でき、アクチュエータの修理後の設定が容易にできる。
【0032】
図1の手動操作装置10は、移動部材13の軸周りの回転を抑制するために、移動部材の突起49と、ハウジング部材のスリット24とを係合させており、かつ、移動部材13の外部形状とハウジング部材11の内部形状とを同じ矩形にしている。しかし、図6aに示すように、ハウジング部材11の本体61にスリットを設けず、内面に溝部62を形成してもよい。また、スリットも溝部も設けず、ハウジング部材11の内部形状と、移動部材13の外部形状とが、移動部材13が軸周りに回転しない関係としてもよい。
【0033】
上記のように移動部材13の突起がハウジング部材11から突出しないように構成されている場合の移動部材の初期位置を確保するロック部材を図6b、図6dに開示する。
この場合、ハウジング部材11内の移動部材13を拘束する必要があるため、図6aのように、ハウジング部材11の少なくとも上面の一部64が開放されている。
【0034】
図6b、cのレバー部材14は、移動部材13の軸方向の移動を規制し、ハウジング部材内に収容される前後一対の脚部65を備えている。脚部65はそれぞれ支持部材およびインナーケーブルを通すために溝状になっている。他の構成は、図5のレバー部材14と実質的に同じものである。
【0035】
また、図6cに示すように、脚部65を備えたブロック部材66のように、ハウジング部材内に挿入できるようにしてもよい。この場合、ロック部材66は、ハウジング部材に対して取り外してアンロック状態となる。図1の手動操作装置10の保持部材15によって、ロック状態に付勢させることになる。
【符号の説明】
【0036】
10 手動操作装置
11 ハウジング部材
12 支持部材
13 移動部材
14 ロック部材
15 保持部材
16 規制部材
20 ハウジング部材の本体
21 前底部材
22 蓋部材
23 鍔部材
24 スリット
25a ロック部材固定孔
25b 鍔部材固定孔
25c 保持部材固定孔
26 アウターケーシング連結部
27 連通孔
27a ネジ孔
28 天壁
29 側壁
30 挿入孔
31 連結孔
32 段部
33 ネジ孔
35 ワッシャー
36 移動部材連結部
37 操作部
38 軸部
39 六角孔
45 胴部
45a 前端
45b 後端
46 底部
47 インナーケーブル連結部
48 突起孔
49 突起
50 雌ネジ
51 天壁部
52 側壁部
53 回動軸孔
54 掴み部
56 切欠き
57 通しスリット
61 本体
62 溝部
64 上面の一部
65 脚部
66 ロック部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のハウジング部材と;
そのハウジング部材に収容され、前端に第1ネジ部が設けられ、後端に操作部が設けられ、軸周りに回転自在な柱状の支持部材と;
そのハウジング部材に支持部材と同軸にして、軸周りの回転を拘束されて収容され、後端に前記第1ネジ部とネジ嵌合する第2ネジ部が設けられ、前端にインナーケーブルが連結されるインナーケーブル連結部が設けられ、前記支持部材を回転させることにより前記支持部材に対して軸方向の前後に移動できる初期位置に配置される柱状の移動部材と;
その移動部材を前記初期位置において移動できないようにするロック状態と、それを解除するアンロック状態とを呈するロック部材と;
そのロック部材をロック状態に保持する保持部材とを備えている、ケーブル反力式電動パーキングブレーキの手動操作装置。
【請求項2】
前記移動部材が、軸に対して垂直方向外側に向かって設けられた突起を有し、
前記ハウジング部材が、前記突起を軸方向に案内するスリットを有する、請求項1記載のケーブル反力式電動パーキングブレーキの手動操作装置。
【請求項3】
前記ハウジング部材が、断面が多角形の中心孔を有し、
前記移動部材が、中心孔内で軸周りの回転を拘束され、軸方向への移動を可能にされている形状である、請求項1記載のケーブル反力式電動パーキングブレーキの手動操作装置。
【請求項4】
前記ロック部材がハウジング部材から離間するように回動自在に連結される、請求項1記載のケーブル反力式電動パーキングブレーキの手動操作装置。
【請求項5】
前記ロック部材が、前記初期位置の移動部材の一部と係合する係合部を備えている、請求項1記載のケーブル反力式電動パーキングブレーキの手動操作装置。
【請求項6】
前記ハウジング部材に、前記ロック部材の回動を規制する規制部材が設けられている請求項4記載のケーブル反力式電動パーキングブレーキの手動操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−63104(P2011−63104A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214924(P2009−214924)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(390000996)株式会社ハイレックスコーポレーション (362)
【Fターム(参考)】