説明

ケーブル弛度観測システム

【課題】 ケーブルの弛度観測を容易かつ適正に行えるようにする。
【解決手段】 弛度測定装置10に、送電線Eの弛み部を撮影する主カメラ20と、主カメラ20を載置し主カメラ20による撮影方向を調節自在な雲台20と、を備え、地上側装置として、弛度測定装置10に制御指令を送信するリモコン50と、主カメラ20による撮影画像を表示するモニタ60と、を備え、リモコン50からの制御指令により、主カメラ20と雲台20とが制御可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、隣接する鉄塔間に架線される送電線などのケーブルの弛度を観測するケーブル弛度観測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力の送電に使用される送電線には、架空線と地中線とがあり、架空線は隣接する鉄塔間に一定の弛み(弛度)をもって架線される。弛度とは、送電線の支持点(鉄塔側の端部)が同一の高さの場合には、支持点と送電線の最下点(最も弛んだ部位)との差であり、鉄塔間の距離や鉄塔高さ、送電線の重量などに基づいて予め適切な弛度(設計弛度)が設計されている。また、送電線は温度により膨張収縮するため、設計弛度を周囲温度によって補正する必要がある。
【0003】
そして、送電線を架線する際には、隣接する鉄塔間に設計弛度よりも十分に大きい弛度で送電線を架線し、ウィンチで送電線の一端部を巻き取って、設計弛度となるように長さを調節する。このとき、弛度の確認(測定)は、一方の鉄塔に基準点を設け、作業者が他方の鉄塔に登って、ポケットコンパス(望遠鏡)で送電線の最下点が基準点と一致するか否かを確認する。すなわち、鉄塔上の作業者が、送電線の最下点の位置を確認しながら地上の作業者に指示を与え、これを受けて地上の作業者がウィンチを操作して、送電線の弛度を調整する。
【0004】
このように少なくとも二人の作業者を要するため、鉄塔上に監視者(作業者)を配置せずに、弛度の測定を行うことができる架空線弛度監視方法に関する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この架空線弛度監視方法は、架空線を一方の鉄塔側から固体カメラで撮影し、伝送した画像データから弛度を計算することで、弛度を測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−324639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば送電線を架設する場合、送電線の架設状態全体を確認しながら、送電線の巻き取りなどを行う必要がある。つまり、一方向からだけでなく、多様な方向から送電線の架設状態を確認する必要性がある。しかしながら、特許文献1に記載された技術は、固体カメラの撮影方向が固定されているため、送電線の架設中などに、撮影方向を変えて所望の部位を撮影することができない。このため、撮影方向を変えるには、作業者が固体カメラの方向を変える必要があり、多大な労力と時間とを要するのみならず、実際には、固体カメラの方向を調整する作業者と、ウィンチを操作する作業者との二人を要することになる。
【0007】
そこで、この発明は、前記の課題を解決し、ケーブルの弛度観測を容易かつ適正に行うことを可能にするケーブル弛度観測システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、隣接する柱状体に架線される送電線や通信線などのケーブルの弛度を観測するケーブル弛度観測システムであって、前記柱状体に配設される柱状体側装置と、前記柱状体側装置と通信可能で地上側に配設される地上側装置とを備え、前記柱状体側装置に、前記ケーブルの弛み部を撮影する撮影手段と、前記撮影手段を載置し、前記撮影手段による撮影方向を調節自在な方向調整手段と、を備え、前記地上側装置に、前記柱状体側装置に制御指令を送信する遠隔制御手段と、前記撮影手段による撮影画像を表示する表示手段と、を備え、前記遠隔制御手段からの制御指令により、前記撮影手段と方向調整手段とが制御可能となっている、ことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、柱状体に柱状体側装置を配設し、地上側に地上側装置を配設する。そして、柱状体側装置の撮影手段による撮影画像を地上側装置の表示手段で見ながら、地上側装置の遠隔制御手段から柱状体側装置に制御指令を送る。これにより、方向調整手段が制御され、撮影手段の撮影方向が調整されて、所望の方向の撮影が可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のケーブル弛度観測システムにおいて、前記柱状体側装置に、前記方向調整手段を上下方向に移動させる高さ調節手段を備え、前記遠隔制御手段からの制御指令により、前記高さ調節手段が制御可能となっている、ことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、地上側装置の遠隔制御手段から柱状体側装置に制御指令を送ることで、高さ調節手段が制御され、方向調整手段つまり撮影手段の撮影高さが調整されて、所望の高位での撮影が可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のケーブル弛度観測システムにおいて、前記高さ調節手段による前記方向調整手段の移動量を前記柱状体側装置から前記地上側装置に送信し、前記表示手段に前記移動量を表示する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3に記載のケーブル弛度観測システムにおいて、前記柱状体側装置に、周囲温度を測定する温度測定手段を備え、前記温度測定手段による測定結果を前記柱状体側装置から前記地上側装置に送信し、前記表示手段に前記測定結果を表示する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、地上側装置の遠隔制御手段から柱状体側装置に制御指令を送ることで、撮影手段の撮影方向が調整され、所望の方向の撮影が可能となるため、ケーブルの弛度観測を適正に行うことが可能となる。また、作業者が柱状体に登ったりして、撮影手段の撮影方向を変える必要がないため、ケーブルの弛度観測を容易に行うことが可能となる。この結果、例えば送電線を架設する場合に、地上でウィンチを操作する作業者が遠隔制御手段を操作することで、所望の方向に撮影手段を向け、撮影画像を見ながら、ケーブルの弛度調整を一人で行うことが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、所望の高位での撮影が可能なため、ケーブルの弛度観測をより適正に行うことが可能となり、しかも、作業者が柱状体に登ったりして、撮影手段の高さを変える必要がないため、ケーブルの弛度観測をより容易に行うことが可能となる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、方向調整手段つまり撮影手段の移動量が地上側の表示手段に表示されるため、撮影手段の高さ位置を確認しながら、ケーブルの弛度観測をより適正に行うことが可能となる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、柱状体側の周囲温度が地上側の表示手段に表示されるため、温度による弛度補正などを容易かつ適正に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この実施の形態に係るケーブル弛度観測システムの配設状態を示す図である。
【図2】図1のケーブル弛度観測システムの弛度測定装置を示す正面図である。
【図3】図2の弛度測定装置の概略構成ブロック図である。
【図4】図1のケーブル弛度観測システムのリモートコントローラを示す正面図である。
【図5】図4のリモートコントローラの送信構成を示す概略ブロック図である。
【図6】図1のケーブル弛度観測システムのモニタを示す正面図である。
【図7】図6のモニタの受信構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0020】
図1は、この実施の形態に係るケーブル弛度観測システム1の配設状態を示す図である。このケーブル弛度観測システム1は、隣接する鉄塔(柱状体)T1、T2間に架線される送電線(ケーブル)Eの弛度を観測するシステムであり、第1の鉄塔T1上に配設される弛度測定装置(柱状体側装置)10と、地上側に配設されるリモートコントローラ(遠隔制御手段、以下「リモコン」と言う)50と、モニタ(表示手段)60とを備え、リモコン50とモニタ60とによって地上側装置が構成されている。また、2.4GHz帯の無線を利用して、弛度測定装置10とリモコン50およびモニタ60が、通信可能に接続されている。
【0021】
弛度測定装置10は、図2、3に示すように、主として、カメラ(撮影手段)20と、雲台(方向調整手段)30と、高さ調節機構(高さ調節手段)40と、温度計(温度測定手段)70と、リモコン50からの制御指令に基づいてこれらを制御などする制御部10aを備えている。また、受信部10b1と受信アンテナ10c1とを介して、主として後述する制御指令を受信し、送信部10b2と送信アンテナ10c2とを介して、主として後述する画像データ(撮影画像)を送信するようになっている。
【0022】
主カメラ20は、少なくとも送電線Eの弛み部を撮影するカメラであり、ズーム(撮影倍率)が調節自在で、レンズには、十字型の垂直・水平ヘア入りアイピースが配設され、撮影される画像に対して垂直・水平方向を示すようになっている。つまり、レンズを水平に保ち、第2の鉄塔T2に配設された基準点Aと水平ヘアとを一致させた状態で撮影し、水平ヘアと送電線Eの最下点とが一致した場合に、送電線Eは所定の設計弛度であることが確認できるようになっている。ここで、基準点Aとは、設計弛度を示すための目印であり、第2の鉄塔T2の送電線Eの支持点から、所定距離d2だけ下方にマーキングされている。このような主カメラ20の起動、停止やズームモータ20mなどは、リモコン50からの制御指令に基づいて、制御部10aによって制御されるようになっている。
【0023】
雲台30は、主カメラ20を載置し、主カメラ20による撮影方向を調節する装置であり、水平方向に回動自在(回転自在)な回転台31と、回転台31の下方に配設され、垂直方向に回動自在(傾斜角度調節自在)な角度調節機構32と、角度調節機構32の下方に配設された基台33とを備えている。
【0024】
回転台31は、円柱状の回転体と、回転体の外周と接して回転体の回転を支持する筒状の枠体とを備える2重構造で、回転体の上面に主カメラ20が載置されている。回転体は、制御部10aによって制御される雲台用回転モータ31mの出力軸(回転軸)に固定されたギア(図示しない)によって、水平方向に回動自在となっている。
【0025】
角度調節機構32は、固定軸321の上端に球体軸322が配設され、この球体軸322を軸にして全方向(任意の軸を軸とする回転方向)に回転・回動自在に回転部材323が配設されている。この回転部材323の上方に、支持部材35を介して回転台31が連結されている。また、回転部材323には、伝達部材324、325、326の上端部が接続され、伝達部材324、325、326の下端部には、雲台用モータ324m、325m、326mの出力軸(回転軸)が接続されている。そして、各雲台用モータ324m、325m、326mが回転することで、伝達部材324、325、326の上端部が上下方向に移動し、回転部材323が傾斜・回動する。これにより、支持部材35を介して回転台31つまり主カメラ20が、任意の方向(例えば図2の紙面の前後方向)に傾斜するようになっている。
【0026】
このように、回転台31による回転と、角度調節機構32による傾斜とによって、主カメラ20の撮影方向が全方向に調節できるようになっている。また、雲台用回転モータ31mおよび各雲台用モータ324m、325m、326mは、リモコン50からの制御指令に基づいて、制御部10aによって制御されるようになっている。
【0027】
基台33は略L字型で、水平方向に伸びる水平部33aと、水平部33aの一端部から上方向に伸びる垂直部33bとを備え、水平部33aの他端部(基端部)が、高さ調節機構40に接続されている。また、この基台33には、後述するスライド体42の位置を示す目盛や、温度計70を撮影する補助カメラ90が配設されている。そして、この主カメラ20と補助カメラ90による撮影データは、制御部10aを介してリアルタイムにモニタ60に送信されるようになっている。
【0028】
高さ調節機構40は、雲台30つまり主カメラ20を上下方向に移動させるものであり、主として、ガイドレール41と、スライド体42とを備えている。ガイドレール41は、長尺体で長手方向に沿って目盛が設けられている。スライド体42は、ガイドレール41の長手方向に沿ってスライド自在に配設され、このスライド体42に、雲台30の基台33が連結されている。また、取付具43は、マグネット製で、ガイドレール41の両端部に配設され、取付具43を上下方向に位置させて第1の鉄塔T1などに取り付けた状態で、ガイドレール41が上下方向に延び、スライド体42つまり主カメラ20が上下方向に移動可能となっている。
【0029】
また、スライド体42は、スライド体用モータ42mの駆動によってガイドレール41上を自走自在となっており、スライド体用モータ42mは、リモコン50からの制御指令に基づいて、制御部10aによって制御されるようになっている。
【0030】
このようなスライド体42の表面に、周囲温度を測定する温度計70が配設されている。この温度計70は、測定結果をデジタル表示する表示部を備え、この表示部が補助カメラ90で撮影できるように、温度計70が配設されている。
【0031】
リモコン50は、弛度測定装置10に制御指令を送信する装置であり、次のようなスティックやレバーなどを備えている。すなわち、図4、5に示すように、切替レバー53は、主カメラ20と補助カメラ90とを切り替えるレバーであり、第1のスティック54は、各雲台用モータ324m、325m、326mを駆動させて、主カメラ20の傾斜角度(前後左右角)を調整するスティックである。第2のスティック55は、雲台用回転モータ31mとスライド体用モータ42mとを駆動させて、主カメラ20の水平向き(回転角)と上下位置(高さ)とを調整するスティックである。ズームレバー56は、ズームモータ20mを駆動させて、主カメラ20のズームを制御するレバーである。
【0032】
このようなスティックやレバーによる操作を制御部50aで検知すると、送信部50bを介してアンテナ50cから弛度測定装置10に対して、制御指令が送信されるようになっている。また、モニタ57は、各モータの可動範囲や速度などを表示するディスプレイであり、符号51は、リモコン50の電源スイッチ51、符号52a、52bはそれぞれ、主カメラ20と補助カメラ90の電源スイッチである。
【0033】
モニタ60は、主カメラ20による撮影画像などを表示するディスプレイであり、図6、7に示すように、画像データをアンテナ60cで受信すると、受信部60bを介して制御部60aで電気信号に変換し、表示部61に表示するものである。表示部61は、2つの画面61a、61bで構成され、第1の表示部61aには、主カメラ20で撮影された画像が表示され、第2の表示部61bには、補助カメラ90で撮影された画像が表示されるようになっている。すなわち、主カメラ20で撮影された送電線Eの弛み部周辺が第1の表示部61aに表示され、補助カメラ90で撮影されたスライド体42の位置を示す目盛(移動量)や温度計70の表示部(測定結果)が、第2の表示部61bに表示される。ここで、第2の表示部61bには、スライド体42の位置を表す矢印が表示され、この矢印の変化・動きを見ることで、スライド体42つまり主カメラ20の移動量がわかるようになっている。
【0034】
次に、このような構成のケーブル弛度観測システム1によるケーブル弛度の観測方法などについて説明する。ここで、図1に示すように、隣接する鉄塔T1、T2に送電線Eを所定の設計弛度(図中の太実線)で架線する場合を例にして説明する。
【0035】
まず、鉄塔T1、T2間に設計弛度より十分に大きい弛度(図中の実線)で送電線Eを架線し、ウィンチWで送電線Eの一端部を巻き取り巻き出しできるようにする。また、第2の鉄塔T2の送電線Eの支持点から距離d2だけ下がった位置に、基準点Aをマーキングする。一方、第1の鉄塔T1の送電線Eの支持点から距離d1だけ下がった位置に主カメラ20のレンズが位置するように、弛度測定装置10を取付具43で第1の鉄塔T1に固定する。このとき、主カメラ20を水平に保ち垂直・水平ヘアが第2の鉄塔T2の基準点Aと一致するように、主カメラ20の高さや方向(回転角)などを設定し、さらに、スライド体42をガイドレール41の目盛のゼロ点に位置させる。ここで、距離d1、d2は、送電線Eの設計弛度や周囲温度に基づいて算出、決定される。
【0036】
次に、リモコン50とモニタ60を起動させるとともに、リモコン50でカメラ20、90を起動する。これにより、上記のようにして、送電線Eの弛み部周辺や周囲温度などがモニタ60に表示され、作業者Mは地上でモニタ60を見ながら、送電線Eが設計弛度となるように、つまり送電線Eの最下点が基準点Aと一致するように、ウィンチWを運転、調節する。このとき、モニタ60に表示される画像が不鮮明である場合などには、リモコン50のズームレバー56で主カメラ20のズームを調節する。また、送電線Eの弛み部周辺や所望の部位を観測、確認できるように、リモコン50のスティック54、55を操作して、主カメラ20の撮影方向や撮影高さを調整する。
【0037】
さらに、モニタ60に表示された周囲温度が、設計弛度の設計温度と異なる場合には、主カメラ20の位置を補正する。例えば、温度が上がった場合には、送電線Eは膨張する(図1中の一点鎖線)し、温度が下がった場合には、送電線Eは収縮する(図中の二点鎖線)ため、この膨張量、収縮量だけ主カメラ20の位置を調整する。このとき、モニタ60の第2の表示部61bで主カメラ20の移動量を確認しながら、リモコン50の第2のスティック55を操作して、主カメラ20の高さ位置を調整する。
【0038】
このようにして、送電線Eが所定の設計弛度で架設された状態で、ウィンチWの操作を停止し、送電線Eを固定するものである。
【0039】
以上のように、このケーブル弛度観測システム1によれば、リモコン50を操作することで、主カメラ20の撮影方向や撮影高さが調整され、所望の方向、高さでの撮影が可能となるため、送電線Eの弛度観測を広範囲にわたって適正に行うことができる。つまり、送電線Eがどのような状態であっても、送電線E全体あるいは所望の部位を主カメラ20で撮影することができる。また、作業者Mが第1の鉄塔T1に登って、主カメラ20の方向や高さを変える必要がないため、送電線Eの弛度観測を容易に行うことができる。この結果、上記のように、一人の作業者Mが、リモコン50を操作して主カメラ20を動かしながら、モニタ60で送電線Eの弛度を観測、確認し、ウィンチWを操作して送電線Eを設計弛度で架設することが可能となる。このように、一人の作業者Mで送電線Eの架設作業が行えることで、作業要員を削減できるのみならず、作業者M間での連絡・連携ミスがなくなり、作業、設備の安全性が高まる。
【0040】
しかも、主カメラ20の高さ方向の移動量がモニタ60でわかるため、主カメラ20の高さ位置を確認しながら、送電線Eの弛度観測をより適正に行うことが可能となる。さらには、鉄塔T1、T2側の周囲温度がモニタ60に表示されるため、温度による弛度補正などを容易かつ適正に行うことが可能となる。また、主カメラ20のズーム調節も、地上の作業者Mがリモコン50で行えるため、より適正かつ容易な弛度観測が可能となる。しかも、このような弛度観測は、リモコン50の操作とモニタ60の監視、確認のみによるため、作業者の熟練度によらず、誰でも容易に行うことができる。
【0041】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、周囲温度に応じて作業者Mがリモコン50で主カメラ20の高さ位置を調整しているが、測定された周囲温度に基づいて高さ調節機構40を自動制御するようにしてもよい。また、補助カメラ90で撮影したガイドレール41の目盛や温度計70の表示部を、スライド体42(主カメラ20)の移動量や温度計70の測定結果としてモニタ60に表示しているが、スライド体42の移動量や温度計70の測定結果を直接モニタ60に送信し、表示するようにしてもよい。さらに、カメラ20、90による撮影データを記憶することで、架設作業後の確認・検証に利用するようにしてもよい。また、リモコン50とモニタ60とが別体であるが、一体としてもよく、さらに、送電線Eのみならず、通信線などその他のケーブルの弛度観測にも、このケーブル弛度観測システム1を適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0042】
1 ケーブル弛度観測システム
10 弛度測定装置(柱状体側装置)
20 主カメラ(撮影手段)
30 雲台(方向調整手段)
40 高さ調節機構(高さ調節手段)
50 リモートコントローラ(遠隔制御手段)
60 モニタ(表示手段)
70 温度計(温度測定手段)
T1、T2 鉄塔(柱状体)
E 送電線(ケーブル)
A 基準点
W ウィンチ
M 作業者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する柱状体に架線される送電線や通信線などのケーブルの弛度を観測するケーブル弛度観測システムであって、
前記柱状体に配設される柱状体側装置と、前記柱状体側装置と通信可能で地上側に配設される地上側装置とを備え、
前記柱状体側装置に、
前記ケーブルの弛み部を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段を載置し、前記撮影手段による撮影方向を調節自在な方向調整手段と、を備え、
前記地上側装置に、
前記柱状体側装置に制御指令を送信する遠隔制御手段と、
前記撮影手段による撮影画像を表示する表示手段と、を備え、
前記遠隔制御手段からの制御指令により、前記撮影手段と方向調整手段とが制御可能となっている、ことを特徴とするケーブル弛度観測システム。
【請求項2】
前記柱状体側装置に、前記方向調整手段を上下方向に移動させる高さ調節手段を備え、
前記遠隔制御手段からの制御指令により、前記高さ調節手段が制御可能となっている、ことを特徴とする請求項1に記載のケーブル弛度観測システム。
【請求項3】
前記高さ調節手段による前記方向調整手段の移動量を前記柱状体側装置から前記地上側装置に送信し、前記表示手段に前記移動量を表示する、ことを特徴とする請求項2に記載のケーブル弛度観測システム。
【請求項4】
前記柱状体側装置に、周囲温度を測定する温度測定手段を備え、
前記温度測定手段による測定結果を前記柱状体側装置から前記地上側装置に送信し、前記表示手段に前記測定結果を表示する、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のケーブル弛度観測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−229231(P2011−229231A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94851(P2010−94851)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】