説明

ケーブル用コネクタ

【課題】1回の動作でケーブルと確実に接続することが可能で、かつ、接続したケーブルが不意に抜け出すのを確実に防止できるケーブル用コネクタを提供する。
【解決手段】FPC70の被ロック部72と係脱可能なロック爪66を有し、ロック爪が被ロック部とFPCの挿脱方向に対向するロック位置と、被ロック部とFPCの挿脱方向に対向しなくなるアンロック位置との間を回転可能なロック部材60と、ロック部材をロック位置に向けて回転付勢する回転付勢手段Sと、を備え、ロック部材に、FPCによって押圧されるロック爪66を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
FPC用コネクタの一例として、FPCをコネクタに挿入する際に挿入力が必要となる、いわゆるNon−ZIF(Zero Insertion Force)タイプのコネクタが知られている。
Non−ZIFタイプのFPC用コネクタは、一般的に1回の動作でFPCの挿入と保持を行う構造であり、コンタクトの一対の接触片の間隔をFPCの厚みより僅かに狭く設定しているので、FPCを挿入すると一対の接触片からFPCに所定の接触圧力が及びFPCとコンタクトが接続する。しかし、接触片の接触圧力のみで挿入されたFPCを保持しているので、FPCに引き抜き方向の意図しない強い外力が掛かると、FPCがコネクタから不意に抜け出してしまう。
これに対してアクチュエータを有するZIFタイプ(FPCの挿入時にFPCとコンタクトの間に挿入抵抗が発生しないタイプ)のFPCコネクタは、アクチュエータをロック方向に操作することにより、コンタクトの接触片とFPCの接触圧力を高めることが出来るので、FPCがコネクタから不意に抜けるのを効果的に防止できる。
【特許文献1】特開2006−228453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしアクチュエータを有するFPCコネクタにFPCを接続するためには、〈1〉FPCをコネクタ(インシュレータ)に挿入し、〈2〉アクチュエータをロック方向に操作する、という2つの動作が必要になる。そのためアクチュエータを有するFPCコネクタには、FPCとの接続作業を両手で行なわなければならず、かつ作業効率が向上しないという課題がある。
【0004】
本発明の目的は、1回の動作でケーブルと確実に接続且つロックすることが可能で、かつ、接続したケーブルが不意に抜け出すのを確実に防止できるケーブル用コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のケーブル用コネクタは、被ロック部を有するケーブルを挿脱可能で、かつ回路基板に実装したインシュレータと、上記回路基板と電気的に接続した状態で該インシュレータに支持したコンタクトと、上記被ロック部と係脱可能なロック爪を有し、該ロック爪が上記被ロック部とケーブルの挿脱方向に対向するロック位置と、被ロック部とケーブルの挿脱方向に対向しなくなるアンロック位置との間を回転可能として上記インシュレータに支持したロック部材と、該ロック部材を上記ロック位置に向けて回転付勢する回転付勢手段と、を備え、上記ロック部材に、上記インシュレータに挿入した上記ケーブルによって押圧されることにより上記ロック位置に位置しているロック部材を上記アンロック位置まで回転させ、かつ、上記ロック爪が上記被ロック部とケーブルの挿脱方向と直交する方向に対向しなくなったときに上記ケーブルと非接触になりロック部材が上記ロック位置まで回転するのを許容する被押圧部を形成したことを特徴としている。
【0006】
上記被押圧部が上記ロック爪であるのが好ましい。
【0007】
上記回転付勢手段は、例えば一端を上記インシュレータまたは該インシュレータに固定した固定部材に固定し、他端で上記ロック部材の該インシュレータとの対向部を支持するコイルばねとすることが可能である。
【0008】
上記インシュレータに、上記コンタクトを覆う金属製のシェル部材を固定するのが好ましい。
この場合は、上記インシュレータに回転軸を形成し、上記ロック部材が、該回転軸に回転可能に支持した一対の回転支持部と、一対の回転支持部を接続し、かつ上記シェル部材を挟んで上記インシュレータと反対側に位置する基板部と、を備えるのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、ロック部材が回転付勢手段の回転付勢力によってロック位置に位置している状態でケーブル(FPCやFFC)をインシュレータに挿入すると、ケーブルによってロック部材の被押圧部が押圧されるので、ロック部材がアンロック位置まで回転する。そして、ケーブルの被ロック部とロック部材のロック爪がケーブルの挿脱方向と直交する方向に対向しなくなったときに、ケーブルとロック部材の被押圧部が非接触になりロック部材が回転付勢手段の回転付勢力によってロック位置に回転復帰するので、ロック爪がケーブルの被ロック部とケーブルの挿脱方向に対向する。
このように、ケーブルをインシュレータに挿入するという1回の動作によりケーブルとコンタクトを確実に接続でき、しかも接続後は被ロック部とロック爪によりケーブルがインシュレータ及び各コンタクトから不意に抜け出すのを確実に防止できる。
また、ロック部材を回転付勢手段の付勢力に抗してアンロック位置まで回転させれば、ケーブルとコネクタのロック状態を意図的に解除できる。
さらに、ケーブル挿入状態においてもロック部材に回転付勢力が及ぶので、振動や衝撃等の外乱によりロック部材がアンロック位置になることを防止できる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、ロック爪が被押圧部を兼ねるので、ロック部材の構造を簡単にできる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、インシュレータとロック部材の間の空間を有効利用しながらロック部材に絶えず回転付勢力を及ぼすことが可能になる。
【0012】
請求項4記載の発明によれば、コンタクトに外部ノイズが入ったり、コンタクトから外部にノイズが漏れるのを効果的に防止できる。
さらに、静電気を帯びた作業者がケーブルを挿入したり或いは抜去する際にロック部材に触れたとしても、この静電気はコンタクトではなくシェル部材側に流れるので、回路基板に接続する電子部品(例えば、ICチップやコンデンサ)に過電圧がかかるのを防止できる。従って、回路基板に接続した電子部品が作業者の静電気によって静電破壊するのを防止できる。
【0013】
請求項5記載の発明によれば、請求項4の発明のようにコンタクトをシェル部材で覆った場合においてもロック部材が露出する。そのため、ケーブル抜去時のロック部材の操作を極めて容易に行うことが可能であり、しかもロック部材の位置を視認することによりケーブルの不完全挿入を確認(防止)できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明中の前後、左右、及び上下の方向は、図中の矢印の方向を基準としている。
本実施形態のケーブル用コネクタはFPC用コネクタ10であり、例えば自動車に搭載されるカーナビゲーションシステムやオーディオ機器内の回路基板CB(図13及び図14参照)に実装可能なものである。FPC用コネクタ10は、大きな構成要素としてインシュレータ20、前側コンタクト40F、後側コンタクト40R、シェル部材50、金具58、ロック部材60及び圧縮コイルばね(回転付勢手段)Sを具備している。
インシュレータ20は絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂料を射出成形したものである。図示するようにインシュレータ20の左右両側部をなす一対の外側壁21の上面の前部には係止突部22が突設してある。外側壁21の後部にはばね用凹部23が凹設してあり、ばね用凹部23の底部には円形のばね支持用凹部24が凹設してある。図示するように、左右のばね用凹部23には上下方向の軸線を有する圧縮コイルばねSが収納してあり、圧縮コイルばねSの下端部が左右のばね支持用凹部24にそれぞれ嵌合固定してある。
外側壁21の前面の下端部には後方に向かって延びる金具用凹部25が凹設してある。左右の外側壁21の下端部からインシュレータ20の中央部に向かって側方底板部26が延びており、左右の側方底板部26の内側端部から上方に向かって内側壁27が延びている。図9に示すように内側壁27の前面下端部には後方に向かって延びる挿入用凹部27aが形成してあるので、内側壁27の前部と側方底板部26の間には隙間が存在する。左側の外側壁21と左側の内側壁27の間、及び右側の外側壁21と右側の内側壁27の間には左右方向に延びる略円柱形状の回転軸28が一体的に設けてあり、左右の回転軸28は互いに同軸をなしている。
左右の内側壁27の底部どうしは中央底板部30によって接続してある。一方、左右の内側壁27の上端部どうしはその前端が中央底板部30より後方に位置する天井部31によって接続してあり、天井部31の上面の前端部には左右方向に延びる係合突条32が突設してある。図1、図2、図5、図15及び図22等に示すように、中央底板部30と天井部31の間には側面視L字形をなす計79個の仕切板33が左右方向に並べて一体的に設けてあり、隣り合う仕切板33の間、及び左右両端部の仕切板33と左右の内側壁27の間の空間は計80個のコンタクト収納空間34となっている。さらに、図15及び図22に示すように、天井部31の後端面には対応するコンタクト収納空間34と連通する計80個のコンタクト挿入溝35が左右方向に並べて凹設してある。
【0015】
計40個の前側コンタクト40F及び後側コンタクト40Rは共に、ばね弾性を備えた銅合金(例えばリン青銅、ベリリウム銅、チタン銅)やコルソン系銅合金の薄板を図示の形状に順送金型(スタンピング)により成形加工したものであり、表面にニッケルメッキで下地を形成した後に、金メッキを施している。図示するように、前側コンタクト40F及び後側コンタクト40Rは互いに略平行をなす上部アーム41及び下部アーム42(前側コンタクト40Fの下部アーム42の方が後側コンタクト40Rの下部アーム42より僅かに長い)と、テール部43とを具備しており、下部アーム42の前端部には接触突部44が上向きに突設してある。図示するように各前側コンタクト40Fと後側コンタクト40Rは、前側コンタクト40Fと後側コンタクト40Rが交互に隣り合うようにしてインシュレータ20の各コンタクト収納空間34にインシュレータ20の後方から挿入してある。各前側コンタクト40F及び後側コンタクト40Rを対応するコンタクト収納空間34に挿入すると、図15及び図22に示すように、各前側コンタクト40F及び後側コンタクト40Rの上部アーム41が対応するコンタクト挿入溝35に嵌合固定する。さらに、下部アーム42が中央底板部30から上方に離間し、テール部43が中央底板部30の後方に突出する。さらに、図13及び図17に示すように前側コンタクト40Fの下部アーム42の前端が後側コンタクト40Rの下部アーム42の前端より僅かに前方に位置する。このような配置にすると、FPC70を挿入する際に、前側コンタクト40F及び後側コンタクト40Rの接触突部44とFPC70の間に挿入抵抗が段階的に生じるため(強い挿入抵抗が一気に生じないため)、FPC70の挿入作業性を向上させることができる。
【0016】
インシュレータ20の上部を覆う部材であるシェル部材50は金属(銅合金またはステンレス)により成形したものであり、平板状の基板部51と、基板部51の左右両端部から下向きに突出する一対の側壁部52と、左右の側壁部52の後端から後方に延びるテール部53と、基板部51の後縁部から下向きに延びる後壁部54と、を具備している。基板部51の前縁部には切欠55が凹設してあり、左右の側壁部52の前縁部には後方に向かって延びるFPC逃げ溝56が形成してある。
シェル部材50をインシュレータ20に装着するには、左右の側壁部52をインシュレータ20の後方から左右の外側壁21と内側壁27の間の隙間に挿入する。すると、基板部51が天井部31の上面を覆うと共に基板部51の切欠55が天井部31の係合突条32に係合し、後壁部54がインシュレータ20の後端面を覆う。さらに、左右の側壁部52のテール部53が前側コンタクト40F及び後側コンタクト40Rのテール部43と同じ平面上に位置する。
左右一対の金具58の材質は前側コンタクト40F及び後側コンタクト40Rと同じであり、その前端部は後部に比べて一段下がった位置に位置するテール部59となっている。左右の金具58は、その後部をインシュレータ20に形成した左右の金具用凹部25に挿入することによりインシュレータ20に固定する。そして、このように金具58をインシュレータ20に固定すると、左右の金具58のテール部59が前側コンタクト40F及び後側コンタクト40Rのテール部43と同じ平面上に位置する。
【0017】
ロック部材60は耐熱性の合成樹脂材料を射出成形したものであり、左右方向に延びる基板部61と、基板部61の下面の左右両端よりやや内側から下方に延びる回転支持部62と、基板部61の下面の左右両側部に下向きに突設した係止突部63と、を具備している。基板部61の後端部には前部に比べて上方に突出する操作用突条部64が形成してある。さらに、図10、図15及び図22に示すように、基板部61の下面の後半部は前端から後端に向かうにつれて上方に位置する傾斜面65となっている。左右の回転支持部62の下面の前端部には、前面が傾斜面となっているロック爪(被押圧部)66が突設してあり、回転支持部62の下面の中央部には略円形の回転支持用凹部67が凹設してある。さらに、基板部61の下面の左右両側部の前端部には抜止用凹部68が凹設してある。
このような構造のロック部材60は、左右の回転支持部62を左右の外側壁21と内側壁27の間の隙間に挿入して左右の回転支持用凹部67を左右の回転軸28にそれぞれ回転可能に嵌合し、左右の係止突部63を左右の圧縮コイルばねSの上端部に嵌合し、さらに左右の抜止用凹部68をインシュレータ20の左右の係止突部22に接触させることによりインシュレータ20に取り付ける。すると、圧縮コイルばねSがロック部材60の後部を支持するので、ロック部材60は図11、図13〜図15、及び図19〜図22に示すロック位置に位置する。ロック部材60がロック位置に位置するとき、圧縮コイルばねSは自由状態より僅かに圧縮された状態になるので、ロック部材60には図13〜図15、図17、図18及び図20〜図22の反時計方向の回転付勢力が及ぶ。
ロック部材60はロック位置から圧縮コイルばねSの回転付勢力に抗して図13〜図15、図17、図18及び図20〜図22の時計方向に回転可能であり、時計方向に回転することにより図17及び図18に示すアンロック位置に位置する。ロック部材60の時計方向の回転は、ロック部材60の後部の下端面69(図13、17、20参照)が側方底板部26の上面に接触することにより規制される。
【0018】
このような構造のFPC用コネクタ10を平面視長方形をなす回路基板CB(図13及び図14参照)の上面に載置し、各前側コンタクト40F及び各後側コンタクト40Rのテール部43を回路基板CB上の回路パターンに半田付けし、かつ、シェル部材50のテール部53、及び金具58のテール部59を回路基板CB上の接地パターンに半田付けすれば、FPC用コネクタ10を回路基板CBの上面に実装できる。
【0019】
次にFPC(フレキシブルプリント基板)70のFPC用コネクタ10への接続及び接続解除要領と、接続及び接続解除時のFPC用コネクタ10の動作について説明する。
図示するようにFPC70の後端部はその他の部分に比べて幅広でかつその他の部分に比べて硬質の後端硬質部71により構成してあり、後端硬質部71の左右両端部が被ロック部72となっている。
図11に示すようにFPC70を後端硬質部71側からFPC用コネクタ10に接近させ、図16に示すようにインシュレータ20の中央底板部30と天井部31の前端部間の開口部からインシュレータ20の内部に挿入する。すると、左右の被ロック部72の外側端部よりやや内側の部分が左右の内側壁27の挿入用凹部27aに嵌合し、かつ左右の被ロック部72の外側端部(挿入用凹部27aに嵌合している部分より外側に位置する部分)が左右の外側壁21と内側壁27の間の隙間に位置する。なお、左右の被ロック部72の外側端部の一部がシェル部材50のFPC逃げ溝56内に位置するので、被ロック部72とシェル部材50は干渉しない。
従って、FPC70をさらに後方に移動させると、後端硬質部71の左右の被ロック部72の間に位置する部分が天井部31の下面と各前側コンタクト40F及び後側コンタクト40Rの下部アーム42の間の隙間に進入する。さらに、左右の被ロック部72の外側端部がロック部材60の左右のロック爪66の前面(傾斜面)を押圧するので、圧縮コイルばねSの回転付勢力に抗してロック部材60が図17及び図18に示すアンロック位置まで回転する。この状態でFPC70をさらに後方に移動させると、図17に示すように左右のロック爪66が左右の被ロック部72の上面に乗り上げ被ロック部72の上面に接触する。
そして、FPC70をさらに後方に移動させることにより後端硬質部71の後端面が各仕切板33の後部33aの前面に当接すると(図22参照)、ロック部材60の左右のロック爪66が左右の被ロック部72を乗り越える(左右の被ロック部72の前方に移動する)ので、圧縮コイルばねSの回転付勢力によってロック部材60がロック位置に回転復帰し、図20に示すように左右のロック爪66の後面(垂直面)が左右の被ロック部72の直前に位置する。従って、仮にFPC70に前向きの意図しない外力が掛かってもFPC70がFPC用コネクタ10から前方に抜け出すことはない。
さらに、FPC70挿入状態においても圧縮コイルばねSからロック部材60に回転付勢力が及ぶので、振動や衝撃等の外乱によりロック部材60が不意にアンロック位置に回転するのを防止できる。
さらに、図22に示すようにFPC70の上面が天井部31の下面に接触し、FPC70の下面に形成した導通部(図示略)が各前側コンタクト40F及び後側コンタクト40Rの下部アーム42接触突部44に接触し、各下部アーム42を自由状態に比べて僅かに下方に弾性変形させる。そのため、FPC70と回路基板CBが各前側コンタクト40F及び後側コンタクト40Rを介して電気的に導通する。
【0020】
このようなFPC70と各前側コンタクト40F及び後側コンタクト40Rの接続状態を解除するには、作業者が手でロック部材60の操作用突条部64を下方に押圧する。すると、ロック部材60が圧縮コイルばねSの回転付勢力に抗してアンロック位置方向に回転する。ロック部材60がアンロック位置まで回転すると、図17に示すようにロック部材60のロック爪66がFPC70の上方に位置するので、FPC70をFPC用コネクタ10から容易に前方に引き抜くことができる。そして、FPC用コネクタ10からFPC70を引き抜いた後にロック部材60から手を離せば、ロック部材60は圧縮コイルばねSの回転付勢力によってロック位置に回転復帰するので、FPC用コネクタ10は図12〜図15の状態に自動的に復帰する。
【0021】
以上説明したように本実施形態によれば、FPC70をインシュレータ20に押し込むという1回の動作でFPC70とFPC用コネクタ10を確実に接続且つロックでき、しかも接続後はロック部材60の左右のロック爪66がFPC70の左右の被ロック部72の直前に位置するのでFPC70がFPC用コネクタ10から不意に抜け出すのを確実に防止できる。
さらに、FPC70をインシュレータ20に押し込むことによりロック爪66が被ロック部72を前方に乗り越えると、ロック部材60が圧縮コイルばねSの回転付勢力によってロック位置に自動的に回転復帰するので、作業者はこの際に強いクリック感を感じることができる。そのため、作業者はFPC70の不完全な挿入を目視及び感覚で容易に認識できるので、前側コンタクト40F及び後側コンタクト40RとFPC70が完全に接続したか否かを確実に把握できる。
また、前側コンタクト40F及び後側コンタクト40RとFPC70が接続している状態でFPC70を強い力で前方に無理矢理引き抜こうとすると、FPC70からロック部材60に前向きの強い力が掛かる。しかし、ロック部材60に形成した左右の抜止用凹部68がインシュレータ20の対応する係止突部22に後方から係合(当接)するので、ロック部材60の回転支持用凹部67と回転軸28の係合が外れてロック部材60がインシュレータ20から前方に外れることはない。
【0022】
また、インシュレータ20の上面、後面及び側面をシェル部材50で覆っているので、各前側コンタクト40F及び後側コンタクト40Rに外部ノイズが入ったり、各前側コンタクト40F及び後側コンタクト40Rのノイズが外部に漏れるのを効果的に防止できる。
さらに、静電気を帯びた作業者がFPC70の挿入時及び抜去時にロック部材60に触れたとしても、ロック部材60の下にインシュレータ20と各コンタクトを覆うシェル部材50を配置しているので、この静電気は前側コンタクト40F及び後側コンタクト40Rではなくシェル部材50側に流れて回路基板CBに形成した上記接地パターン(グランド回路)に落ちる。従って、回路基板CBに接続した電子部品(例えば、ICチップやコンデンサ)に過電圧がかかるのを防止できるので、静電気による電子機器の静電破壊を防止できる。つまり、FPC70の優れた作業性と電気的特性を両立させることができる。
【0023】
さらに、FPC用コネクタ10はFPC70に実装される前においては、図23及び図24に示すリール装置80に巻かれたエンボステープ81の収納凹部82に収納され、このエンボステープ81の上面に上面カバーテープ83が貼着される。FPC用コネクタ10を収納凹部82から取り出すには、まずエンボステープ81の上面から上面カバーテープ83を剥がし、エンボステープ81の上方に配設した吸引手段84(図24参照)から収納凹部82内のFPC用コネクタ10に吸引力を及ぼすが、ロック部材60の上面に広い平面(吸着面)を確保できるため本実施形態のFPC用コネクタ10は吸引手段84によって確実に吸引することができる。
なお、吸引手段84がFPC用コネクタ10を安定した状態で吸引できるようにするために、圧縮コイルばねSのばね力を吸引手段84による吸引力より強く設定し、吸引手段84からロック部材60(FPC用コネクタ10)に吸引力が掛かってもロック部材60がロック位置から回転しないようにするのが好ましい。
【0024】
以上、本発明を上記実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形を施しながら実施可能である。
例えば、接続対象物はFPC以外のケーブル、例えばフレキシブルフラットケーブル(FFC)であってもよい。
さらに、本実施形態ではロック部材60のロック爪66をFPC70の被ロック部72の直前に位置させることによりFPC70の意図しない引き抜きを防止しているが、FPC70の上面に貫通孔または凹部を形成し、ロック爪66をこの貫通孔または凹部に係合させるようにしてもよい(この場合は、FPC70の貫通孔または凹部の直前に位置する部分が被ロック部となる)。
また、ロック部材60にロック爪66とは別個の部材として突部材(被押圧部)を形成し、ケーブルでこの突部材を押圧することによりロック部材60をアンロック位置まで回転させるようにしてもよい。
さらに、回転付勢手段として別の形態の付勢手段、例えば引張コイルばねを利用してもよい。この場合は、引張コイルばねを回転軸28の前方に位置させ、引張ばねの下端部をインシュレータ20側に固定し上端部をロック部材60側に固定する。
また、圧縮コイルばねSと引張ばねの下端部をインシュレータ20に固定した固定部材(例えば金具58)に固定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態のFPC用コネクタの前方から見た分解斜視図である。
【図2】同じくFPC用コネクタの前方から見た分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態のFPC用コネクタの後方から見た分解斜視図である。
【図4】同じくFPC用コネクタの後方から見た分解斜視図である。
【図5】インシュレータの前方から見た斜視図である。
【図6】インシュレータの平面図である。
【図7】図6のVII−VII矢線に沿う断面図である。
【図8】インシュレータの正面図である。
【図9】図8のIX−IX矢線に沿う断面図である。
【図10】ロック部材の下方から見た斜視図である。
【図11】FPCとFPCを挿入する前の状態のFPC用コネクタの斜視図である。
【図12】FPCを挿入する前の状態のFPC用コネクタの平面図である。
【図13】図12のXIII−XIII矢線に沿う断面図である。
【図14】図12のXIV−XIV矢線に沿う断面図である。
【図15】図12のXV−XV矢線に沿う断面図である。
【図16】FPC用コネクタにFPCを挿入中の状態を示す図11と同様の斜視図である。
【図17】FPC用コネクタにFPCを挿入中の状態の図13と同様の断面図である。
【図18】FPC用コネクタにFPCを挿入中の状態の図14と同様の断面図である。
【図19】FPC用コネクタに対するFPCの挿入が完了したときの図11と同様の斜視図である。
【図20】FPC用コネクタに対するFPCの挿入が完了したときの図13と同様の断面図である。
【図21】FPC用コネクタに対するFPCの挿入が完了したときの図14と同様の断面図である。
【図22】FPC用コネクタに対するFPCの挿入が完了したときの図15と同様の断面図である。
【図23】本実施形態のFPC用コネクタを収納するためのエンボステープを巻いたリール装置の斜視図である。
【図24】エンボステープの収納部にFPC用コネクタを収納したときのエンボステープの横断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 FPC用コネクタ(ケーブル用コネクタ)
20 インシュレータ
21 外側壁
22 係止突部
23 ばね用凹部
24 ばね支持用凹部
25 金具用凹部
26 側方底板部
27 内側壁
28 回転軸
30 中央底板部
31 天井部
32 係合突条
33 仕切板
34 コンタクト収納空間
35 コンタクト挿入溝
40F 前側コンタクト
40R 後側コンタクト
41 上部アーム
42 下部アーム
43 テール部
44 接触突部
50 シェル部材
51 基板部
52 側壁部
53 テール部
54 後壁部
55 切欠
56 FPC逃げ溝
58 金具
59 テール部
60 ロック部材
61 基板部
62 回転支持部
63 係止突部
64 操作用突条部
65 傾斜面
66 ロック爪(被押圧部)
67 回転支持用凹部
68 抜止用凹部
70 FPC(フレキシブルプリント基板)(ケーブル)
71 後端硬質部
72 被ロック部
80 リール装置
81 エンボステープ
82 収納凹部
83 上面カバーテープ
84 吸引手段
CB 回路基板
S 圧縮コイルばね(回転付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被ロック部を有するケーブルを挿脱可能で、かつ回路基板に実装したインシュレータと、
上記回路基板と電気的に接続した状態で該インシュレータに支持したコンタクトと、
上記被ロック部と係脱可能なロック爪を有し、該ロック爪が上記被ロック部とケーブルの挿脱方向に対向するロック位置と、被ロック部とケーブルの挿脱方向に対向しなくなるアンロック位置との間を回転可能として上記インシュレータに支持したロック部材と、
該ロック部材を上記ロック位置に向けて回転付勢する回転付勢手段と、を備え、
上記ロック部材に、上記インシュレータに挿入した上記ケーブルによって押圧されることにより上記ロック位置に位置しているロック部材を上記アンロック位置まで回転させ、かつ、上記ロック爪が上記被ロック部とケーブルの挿脱方向と直交する方向に対向しなくなったときに上記ケーブルと非接触になりロック部材が上記ロック位置まで回転するのを許容する被押圧部を形成したことを特徴とするケーブル用コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のケーブル用コネクタにおいて、
上記被押圧部が上記ロック爪であるケーブル用コネクタ。
【請求項3】
請求項1または2記載のケーブル用コネクタにおいて、
上記回転付勢手段が、
一端を上記インシュレータまたは該インシュレータに固定した固定部材に固定し、他端で上記ロック部材の該インシュレータとの対向部を支持するコイルばねであるケーブル用コネクタ。
【請求項4】
請求項1または2記載のケーブル用コネクタにおいて、
上記インシュレータに、上記コンタクトを覆う金属製のシェル部材を固定したケーブル用コネクタ。
【請求項5】
請求項4記載のケーブル用コネクタにおいて、
上記インシュレータに回転軸を形成し、
上記ロック部材が、該回転軸に回転可能に支持した一対の回転支持部と、一対の回転支持部を接続し、かつ上記シェル部材を挟んで上記インシュレータと反対側に位置する基板部と、を備えるケーブル用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2009−205914(P2009−205914A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46499(P2008−46499)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000128407)京セラエルコ株式会社 (77)
【Fターム(参考)】