説明

ゲルマニウム蒸着シート

【課題】基材シートとゲルマニウム蒸着層との密着性、耐水性に優れるゲルマニウム蒸着シートを提供する。
【解決手段】基材シートにプラズマ処理を行い、前記プラズマ処理面にゲルマニウムの蒸着層を形成する。更に、前記ゲルマニウム蒸着層にプラズマ処理によるプラズマ処理層を形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材シートにプラズマによる表面処理を行い、前記プラズマ処理面にゲルマニウム薄層膜を形成した、基材シートとゲルマニウム蒸着層との密着性、耐水性に優れるゲルマニウム蒸着シートに関し、より詳細には、ゲルマニウムが物理気相蒸着法などによる蒸着膜であり、前記ゲルマニウム蒸着層が更にプラズマ処理によって表面張力が向上したゲルマニウム蒸着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を皮膚に接触させるとサーモグラフィーやレーザスペックル血流計を用いた測定により血流が増加することが認められることから、筋肉痛や肩こりなどの治療に、ゲルマニウムの結晶をプラスターで皮膚に固定するゲルマニウム治療具が使用されている。
【0003】
例えば、シート状の支持体の表面をゲルマニウムの薄膜で被覆したゲルマニウムシートからなるゲルマニウム貼着片がある(特許文献1)。ゲルマニウム薄膜は、真空蒸着、スパッタリングなどの手段で形成される旨が記載されている。
【0004】
また、人体の皮膚表面に接触可能な、ゲルマニウム半導体薄膜やシリコン半導体薄膜などのp型半導体からなる半導体治療剤がある(特許文献2)。特にp型半導体によって顕著な効果が得られるとするもので、円盤状やリング状のセラミックス、プラスチック、ガラス、または金属の成形体表面に、蒸着、スパッタリング、CVDなどでp型半導体の薄層を形成し、p型半導体の粉末を使用する、という。実施例では、アルミニウム0.2%添加ゲルマニウム粉末をパック基材中に混練している。なお、p型シリコン半導体についてのみ、直径6mm、高さ1.5mmの円柱上に更に高さ1mmの円錐を設けた酸化チタンを用いたセラミックス成形体に、硼素200ppmドープp形シリコンを使用して、スパッタリング法により厚さ10オングストロームの薄膜を形成している。
【0005】
また、III族原子の不純物を所定量含有するP型ゲルマニウムを有する当接体とこの当接体を皮膚に接触した状態で固定するとめ具とを備える、ゲルマニウム健康治療具もある(特許文献3)。サポータなどの内側にP型ゲルマニウムの微細な粒子を混在させた接着剤を塗布して当接体を調製している。
【0006】
また、基布の片面に粉末ゲルマニウムを混入してなる薬剤を塗布形成された貼付剤であって、塗布された薬剤層の周囲に、適宜細幅で粘着剤を含む薬剤の塗布層が形成され、前記薬剤層には多数の通気部が分布形成されている粉末ゲルマニウム含有外用剤もある(特許文献4)。長時間の貼着状態によって皮膚が蒸れて炎症を起こし易くなる点に鑑みてなされたものであり、織成密度の高い材料を使用して基布の伸びを抑制して良好な製品を製造し、その際、薬剤の周囲に粘着剤を含む薬剤の塗布層を形成し、および通気部を形成することで、蒸れを防止するというものである。薬剤層は、基剤に粉末ゲルマニウムを適量混和したものを使用し、粘着剤を混和したものであり、基布に塗工ロールなどによって塗工している。
【0007】
また、上面に粘着剤が塗布された絆創膏上に、治療用接触粒が接着される治療用接触粒貼付シートであって、その上面に粘着剤層が形成され、治療用接触粒の上部が露出される係留穴が形成される固着シートとを備え、前記治療用接触粒に対して前記固着シートの係留穴によって治療用接触粒の上部が露出された状態で絆創膏上面に固着シートの下面が接着される治療用接触粒貼付シートもある(特許文献5)。ゲルマニウム粒は、粉状にしたゲルマニウムをシリコンに混練して突起形状に成型し、粘着シート上に貼り付けるものであるが、シリコンも磁石と同様に接着に難点があるため剥がれることに鑑みてなされたものであり、これにより、磁石をゲルマニウム粒を粘着シート上に強固に固定することができる、という。
【特許文献1】実開昭62−15351号公報
【特許文献2】特開平5−337192号公報
【特許文献3】特開2000−33126号公報
【特許文献4】特開2007−39369号公報
【特許文献5】特開2007−330371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ゲルマニウムは、サーモグラフィーやレーザスペックル血流計を用いた測定により血流が増加することが認められることから、特許文献1〜5に示すように、肩こりや筋肉痛などの治療に使用されている。この際、ゲルマニウムは皮膚へ貼着して使用されるため、長期間の使用によって皮膚から発散する汗によってゲルマニウム層が剥離する場合がある。また、本来、ゲルマニウムは基材との接着性が低く、このため、特許文献5に示すようにシリコンを使用したり、係留穴を形成した固着シートなどを使用してはがれを防止する必要がある。このため、ゲルマニウム層を密着性高く積層する技術が望まれるが、十分ではない。
【0009】
また、特許文献1では、ゲルマニウム薄膜は、真空蒸着、スパッタリングなどの手段で形成される旨が記載されているが、蒸着方法に関する記載は存在しない。
更に、ゲルマニウムは産地が限定された天然鉱物資源で極めて高価であり、資源の枯渇を防ぐためにも、有効に利用する必要性が高い。しかしながら、特許文献2〜5に示すように、ゲルマニウムとして粉末や粒子が使用されることが一般的であり、より使用量を低減しうるゲルマニウム蒸着シートの開発が望まれる。
【0010】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、ゲルマニウムの使用量を低減し、かつ密着性および耐水性高く、基材シートにゲルマニウムを蒸着したシートを提供するものである。
【0011】
また、本発明は、通気性に優れ、必要なときに必要なだけ使用でき、使用後に廃棄して衛生面の安全性を確保できる、ゲルマニウム蒸着シートを提供するものである。
また、粘着剤層を形成することで、容易に皮膚などに貼着でき、ゲルマニウム治療具として使用することができるゲルマニウム蒸着シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、ゲルマニウム蒸着シートについて詳細に検討した結果、基材シートに表面処理としてプラズマ処理を行い、このプラズマ処理面にゲルマニウムを蒸着すると、基材シートとゲルマニウム蒸着層との密着性に優れ、かつ耐水性にも優れること、前記プラズマ処理に次いでゲルマニウム蒸着層を同一ライン上で行うことで生産効率を向上しうること、密着性の向上によって湿気のある環境下でも安定して貼着しうるゲルマニウム蒸着シートを提供できることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
即ち、本発明は、基材シートにプラズマ処理を行い、前記プラズマ処理面にゲルマニウムの蒸着層が形成されたゲルマニウム蒸着シートを提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基材シートにプラズマ処理を行い、次いでゲルマニウムを蒸着するだけで、ゲルマニウム蒸着層の固着安定性に優れるゲルマニウム蒸着シートを得ることができる。
【0015】
本発明のゲルマニウム蒸着シートは、ゲルマニウム蒸着層を積層するものであり、ゲルマニウムの使用量が低減され、天然資源の有効利用に寄与しうる。
また、ゲルマニウム層に粘着剤層を積層することで容易に皮膚に貼着することができるため、基材シートに伸縮性あるシート状物を使用することで、貼着後の皮膚の屈伸に容易に対応できる柔軟性に優れるゲルマニウム蒸着シートを提供しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、基材シートにプラズマ処理を行い、前記プラズマ処理面にゲルマニウムの蒸着層が形成されたゲルマニウム蒸着シートである。以下、本発明のゲルマニウム蒸着シートを詳細に説明する。
【0017】
(1)ゲルマニウム蒸着シートの構成
本発明のゲルマニウム蒸着シートは、図1に示すように、基材シート(10)にプラズマ処理を行ってプラズマ処理面(13)を形成し、前記プラズマ処理面にゲルマニウムの蒸着層(20)が形成されたゲルマニウム蒸着シートである。図2に示すように、前記ゲルマニウムの蒸着層(20)は、その表面を更にプラズマ処理によるプラズマ処理層(23)を有していてもよい。プラズマ処理によって表面張力を向上させることができる。
【0018】
本発明のゲルマニウム蒸着シートは、図3(a)に示すように、前記ゲルマニウムの蒸着層(20)や図3(b)に示すように、前記ゲルマニウムの蒸着層(20)の上に形成したプラズマ処理層(23)の上に、更に粘着剤層(30)を積層してもよい。粘着剤層(30)を介して皮膚などに接着することができ、ゲルマニウム蒸着層(20)による効果を得ることができる。なお、粘着剤層(30)は、基材シート側に形成することもできる。例えば、図4(a)や図4(b)に示すように、上記ゲルマニウム薄層シートの基材シート(10)側に、前記基材シート(10)を被覆するように粘着剤層(30)を形成してもよい。粘着剤層(30)を介して皮膚に接着させ、ゲルマニウム蒸着層(20)の効果を得ることができる。なお、図4(a)や図4(b)に示すように、粘着剤層(30)は、粘着基材シート(33)に積層されたものであってもよい。
【0019】
なお、粘着剤層(30)を形成した場合には、剥離シート(40)を積層することが好ましい。この際、図5(a)や図5(b)に示すように、ゲルマニウム蒸着層(20)側に形成した粘着剤層(30)には、粘着剤層(30)の全範囲を被覆する剥離シート(40)を形成する。また、図6(a)や図6(b)に示すように、基材シート(10)側に粘着剤層(30)を形成した場合には、粘着剤層(30)のみならず、ゲルマニウム蒸着層(20)やプラズマ処理層(23)を被覆するように剥離シート(40)を積層することが好ましい。これにより、粘着剤層(30)と共にゲルマニウム蒸着層(20)をホコリなどから保護することができる。
【0020】
(2) 基材シート
本発明のゲルマニウム蒸着シートを構成する基材シートとしては、プラズマ処理やゲルマニウム蒸着処理を受けるに足る機械的、物理的、化学的強度を有し、特に前記蒸着膜の特性を損なうことなく良好に保持し得る基材シートを使用することが好ましい。
【0021】
このような基材シートとしては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂からなるフィルムを使用することができる。特に、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、または、ポリアミド系樹脂のフィルムが好ましい。
【0022】
なお、上記樹脂の1種ないしそれ以上を使用し、その製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数10%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
【0023】
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料等の着色剤、その他等を任意に使用することができ、更には、改質用樹脂等も使用することができる。
【0024】
上記樹脂は、上記樹脂の1種または2種以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法、その他等の製膜化法を用いて単層で製膜化したもの、または2種以上の樹脂を使用して共押し出しなどで多層製膜したもの、または2種以上の樹脂を混合使用して製膜し、テンター方式やチューブラー方式等で1軸ないし2軸方向に延伸してなる各種の樹脂フィルムを使用することができる。
【0025】
また、シートなどの平板のほか、上記樹脂からなる繊維で構成された織物や編物、不織布であってもよい。また、基材シートは、伸縮性を有していてもよく、このような伸縮性を有する基材シートとしては、ポリウレタンフィルム、ポリエステルエラストマーフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリウレタン不織布、ポリエステルエラストマー不織布、熱可塑性ポリオレフィン不織布その他がある。なお、前記編物としては、平編、ゴム編、パール編、両面編、タック編、浮き編、レース編などがあり、編み物を構成することで、伸縮性を確保することができる。また、本発明では、上記プラスチックシートのほか、麻、木綿、絹などの動植物繊維の織物や編み物、不織布、その他の可撓性を有する物質からなるシートであってもよい。なお、いずれの材質の場合であっても、織物や編物、不織布の場合には、構造上ゲルマニウム蒸気が繊維内に浸透しやすいため、予め目止め層などを形成することが好ましい。
【0026】
上記基材シートは、通気性を有していてもよく、例えば、上記平板の場合には、複数の微細な貫通孔が形成されていてもよい。
本発明で使用する、基材シートの厚さは、6〜100μmが好ましく、より好ましくは9〜50μmである。基材シートは平板状のプラスチックシートであってもよく、平板は、長尺のテープ状であってもよい。
【0027】
(3)プラズマ処理
本発明では、上記基材シートに予めプラズマ処理を行うことができ、これによって基材シートとゲルマニウム蒸着層との密着性を向上させ、皮膚に貼着した場合でも、汗や湿気などの水分に対する耐性を向上させることができる。表面処理としては、コロナ放電処理、オゾン処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理その他があるが、本発明では、特にプラズマ処理によって基材シートとゲルマニウム蒸着層との密着性を向上させ、かつ耐水ラミネート強度を向上させうることが好ましい。
【0028】
本発明において、基材シートに対するプラズマ処理としては、酸素ガス、窒素ガス、またはこれらの混合ガスを含む無機ガスからなるプラズマガスが好ましい。更に、アルゴンやヘリウムなどを含むものであってよい。本発明では、プラズマガスとして、特に、アルゴンガスに、酸素ガス、窒素ガス、または、酸素ガスと窒素ガスとの混合ガスを加えたものをプラズマガスとして使用してプラズマ処理を行なうことが好ましい。より低い電圧でプラズマ処理を行なうことが可能であり、これにより、基材シートの表面の変色等を生じることが無く、かつ密着性を向上させることができるからである。なお、アルゴンと酸素との混合ガスをプラズマガスとして使用することで、基材シートの表面にOH基等を導入することができ密着性を向上しうることは知られているが、本発明では酸素を含まない場合でも基材シートとゲルマニウム蒸着層との密着性を向上しうる点に特徴がある。その理由は明確ではないが、ゲルマニウムは酸としても塩基としても反応するものを両性酸化物であるため、プロトン供与体とプロトン受容体との双方となるため、酸素ガスと窒素ガスとのいずれのプラズマガスが照射された場合でも、上記プラズマ処理によって基材シートの架橋密度等を高め、その湿度依存性等を改良しうるものと考えられる。
【0029】
具体的には、アルゴンガスと共に、酸素ガス、窒素ガス、または酸素ガスと窒素ガスとの混合ガスを供給したものを使用することが望ましく、その酸素ガスおよび/または窒素ガスとアルゴンガスとの混合ガスのガス圧としては、1×10-1〜10-10Torr位、より好ましくは、1×10-2〜1×10-8Torr位が望ましい。また、酸素ガスおよび/または窒素ガスとアルゴンガスとの比率としては、分圧比で酸素ガスおよび/または窒素ガス:アルゴンガス=100:0〜30:70、より好ましくは90:10〜70:30が好ましい。上記の酸素ガスおよび/または窒素ガスとアルゴンガスとの分圧比において、アルゴンガス分圧が高くなると、プラズマで活性化される酸素分子や窒素分子が少なくなり、表面改質効果が低下する場合がある。
【0030】
本発明において、プラズマ処理において、プラズマを発生させる方法としては、直流グロー放電、高周波(Audio Frequency:AF、Radio Frequency:RF)放電等の装置を利用して行うことができる。本発明では、グロー放電やRF放電が好適である。
【0031】
また、そのプラズマ出力としては50〜10000W、より好ましくは、100〜5000Wが好ましい。上記のプラズマ出力が、50W未満の場合には、酸素ガスや窒素ガスの活性化が低下し、高活性の酸素原子や窒素原子が生成しにくいことから好ましくない。また、10000Wを越えると、プラズマ出力が高すぎるため、基材シートが劣化する場合がある。
【0032】
更にまた、その処理速度としては、10〜1000m/min、より好ましくは、100〜600m/minである。上記の処理速度が、10m/min未満であると、プラズマ出力が高すぎるため、基材シートが劣化する場合がある。また、生産性が非常に悪い。一方で、1000m/minを越えるとプラズマ処理が不十分のまま搬送されてしまう点で不利である。
【0033】
(4)ゲルマニウム蒸着層
本発明では、プラズマ処理した基材シートにゲルマニウム蒸着層を形成する。ゲルマニウム蒸着層は、塩化ゲルマニウムやフッ化ゲルマニウムを供給源とする化学気相成長法によって調製することができる。
【0034】
また、化学気相成長法としては、利用する活性エネルギーの種類に応じて、例えば、プラズマ化学気相成長法、低温プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等がある。本発明では、反応気体を放電によってプラズマ状態とし、活性なラジカルやイオンを生成させ、低温で基材シート上に製膜するプラズマ化学気相成長法や低温プラズマ化学気相成長法によって上記ゲルマニウム蒸着層を形成することができる。
【0035】
上記において、プラズマ発生装置としては、例えば、グロー放電プラズマ、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができる。高活性の安定したプラズマが得られる点で、グロー放電プラズマやRFプラズマなどの高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが好ましい。
【0036】
化学気相成長法において利用される化学反応には、熱分解、酸化、還元、加水分解などがあり、供給源の原料に応じて適宜選択することができる。
本発明では、化学気相成長法としては、具体的には、基材シートの一方の面に、塩化ゲルマニウムやフッ化ゲルマニウムなどを蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、水素ガスを使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いてゲルマニウムの蒸着膜を形成することができる。
【0037】
上記の低温プラズマ化学気相成長法による蒸着膜の形成法の一例を低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である図7を用いて説明する。
本発明では、プラズマ化学気相成長装置221の真空チャンバー222内に配置された巻き出しロール223から基材シート201を繰り出し、更に、該基材シート201を、補助ロール224を介して所定の速度で冷却・電極ドラム225周面上に搬送する。一方、ガス供給装置226、227および、原料揮発供給装置228等から水素ガスとともに塩化ゲルマニウムやフッ化ゲルマニウム等の蒸着用モノマーガスその他等を供給して蒸着用混合ガス組成物を調製し、これを原料供給ノズル229を通して真空チャンバー222内に導入する。該蒸着用混合ガス組成物を上記冷却・電極ドラム225周面上に搬送された基材シート201の上に供給し、グロー放電プラズマ230によってプラズマを発生させ照射し、蒸着膜を製膜化する。次いで、上記で蒸着膜を形成した基材シート201を補助ロール233を介して巻き取りロール234に巻き取れば、プラズマ化学気相成長法によって、ゲルマニウム蒸着層を形成することができる。なお、冷却・電極ドラム225は、真空チャンバー222の外に配置されている電源231から所定の電力が印加され、冷却・電極ドラム225の近傍には、マグネット232を配置してプラズマの発生が促進されている。このように冷却・電極ドラムに電源から所定の電圧が印加されているため、真空チャンバー内の原料供給ノズルの開口部と冷却・電極ドラムとの近傍でグロー放電プラズマが生成される。このグロー放電プラズマは、混合ガスなかの1つ以上のガス成分から導出されるものであり、この状態で基材シートを一定速度で搬送させると、グロー放電プラブマによって、冷却・電極ドラム周面上の基材シートの上に、有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜を形成することができる。なお、図7中、符号235は真空ポンプを表す。
【0038】
原料揮発供給装置は、原料である塩化ゲルマニウムやフッ化ゲルマニウムなどをガス供給装置から供給される水素ガス等と混合させ、この混合ガスを原料供給ノズルを介して真空チャンバー内に導入させる。
【0039】
なお、上記塩化ゲルマニウムやフッ化ゲルマニウム、水素ガスなどを供給する際の真空チャンバー内の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは真空度1×10-1〜1×10-2Torrであることが好ましく、また、基材シートの搬送速度は、10〜300m/分、好ましくは50〜150m/分である。このようにして得られる塩化ゲルマニウムやフッ化ゲルマニウムを蒸着してなる蒸着膜の形成は、基材シートの上に、プラズマ化した原料ガスに含まれる塩化ゲルマニウムやフッ化ゲルマニウムが水素ガスと反応してゲルマニウムとなり、基材シートに薄膜状に形成される。また、プラズマにより基材シートの表面が清浄化され、基材シートの表面にフリーラジカル等が発生するので、形成される蒸着膜と基材シートとの密接着性が高いものとなる。
【0040】
更に、蒸着膜の形成時の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは、1×10-1〜1×10-2Torrであって、従来の真空蒸着法によってゲルマニウム蒸着膜を形成する時の真空度、1×10-4〜1×10-5Torrより低真空度であるから、基材シートの原反交換時の真空状態設定時間を短くすることができ、真空度が安定しやすく製膜プロセスも安定化する。
【0041】
本発明において、上記蒸着膜の膜厚は、50〜2000Å位であることが好ましく、より好ましくは100〜1000Åである。2000Åより厚くなると、その膜にクラック等が発生する場合があり、一方、50Å未満であると、ゲルマニウムの効果を奏することが困難になる場合がある。なお、膜厚は、例えば、株式会社理学製の蛍光X線分析装置(機種名、RIX2000型)を用いて、ファンダメンタルパラメーター法で測定することができる。また、蒸着膜の膜厚を変更する手段としては、蒸着膜の体積速度を大きくする方法、すなわち、モノマーガスと酸素ガス量を多くする方法や蒸着する速度を遅くする方法等によって行うことができる。
【0042】
本発明において、上記の蒸着膜は、例えばX線光電子分光装置(Xray Photoelectron Spectroscopy、XPS)、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy、SIMS)等の表面分析装置を用い、深さ方向にイオンエッチングする等して分析し、蒸着膜の元素分析を行うことで、上記の物性を確認することができる。
【0043】
なお、上記において、塩化ゲルマニウムやフッ化ゲルマニウム、水素ガスに加えて、必要に応じてアルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを添加してもよい。
一方、本発明では、物理気相成長法によってもゲルマニウム蒸着膜を形成することができる。このような物理気相成長法として、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)などがある。本発明では、真空蒸着法やスパッタリング法によって、ゲルマニウム蒸着層を形成することができ、より好ましくは真空蒸着法である。
【0044】
例えば、ゲルマニウムを原料とし、これを加熱して蒸気化し、これを基材シートの一方の上に蒸着する。なお、蒸着材料の加熱方式としては、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、エレクトロンビーム加熱方式(EB)等にて行うことができる。
【0045】
物理気相成長法による蒸着膜を形成する方法について、巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図を示す図8を参照して説明する。
まず、巻き取り式真空蒸着装置241の巻き取りチヤンバー242a内で、巻き出しロール243から基材シート201を繰り出し、これをガイドロール244、245を介して、冷却したコーティングドラム246に案内する。上記の冷却したコーティングドラム246上に案内された基材シート201の上に、巻き取りチヤンバー242b内のるつぼ247で熱せられた蒸着源248、即ちゲルマニウムの蒸気を、マスク250、250を介して蒸着させる。次いで、例えば、前記蒸着膜を形成した基材シート201を、ガイドロール251、252を介して送り出し、巻き取りロール253に巻き取ると物理気相成長法による蒸着膜を形成することができる。
【0046】
本発明では、前記したコーティングドラム246を温度−30℃〜20℃に冷却することで、プラスチック基材シートにもゲルマニウム蒸着層を形成することができる。この際、基材シートの供給速度としては、10〜1000m/min、より好ましくは、100〜600m/minである。
【0047】
巻き取りチヤンバー内の真空度は、10-2Torr以下、より好ましくは10-3Torr以下である。10-2Torrより高いとゲルマニウム蒸着層に不純物が入る可能性がある。なお、蒸着源のゲルマニウムは、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、エレクトロンビーム加熱方式(EB)等で加熱して蒸気化するが、本発明ではエレクトロンビーム加熱方式(EB)で加熱することが好ましい。
【0048】
本発明では、上記巻き取り式真空蒸着装置を用いて、まず第1層の蒸着膜を形成し、次いで、その上に蒸着膜を更に形成し、または、上記巻き取り式真空蒸着装置を2連に連接し、連続的に蒸着膜を形成して、2層以上の多層膜からなる前記蒸着膜を形成してもよい。
【0049】
なお、前記蒸着膜の膜厚は、50〜2000Å、好ましくは、100〜1000Åの範囲内で任意に選択することができる。2000Åより厚くなると、その膜にクラック等が発生する場合があり、一方、50Å未満であると、ゲルマニウムの効果を奏することが困難になる場合がある。なお、膜厚は、例えば、株式会社理学製の蛍光X線分析装置(機種名、RIX2000型)を用いて、ファンダメンタルパラメーター法で測定することができる。また、蒸着膜の膜厚を変更する手段としては、蒸着膜の体積速度を大きくする方法、すなわち、モノマーガスと不活性ガス量を多くする方法や蒸着する速度を遅くする方法等によって行うことができる。
【0050】
本発明において、上記の蒸着膜は、例えばX線光電子分光装置(Xray Photoelectron Spectroscopy、XPS)、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy、SIMS)等の表面分析装置を用い、深さ方向にイオンエッチングする等して分析し、蒸着膜の元素分析を行うことで、上記の物性を確認することができる。
【0051】
(5)表面処理
本発明のゲルマニウム蒸着シートでは、前記ゲルマニウムの蒸着層に表面処理がなされていてもよい。
【0052】
このような表面処理としては、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電プラズマなどのプラズマ処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理などがある。このような表面処理の中でも、特に、プラズマ処理を行うことが好適である。
このようなプラズマ処理としては、気体をアーク放電により電離させることにより生じるプラズマガスを利用して表面改質を行なうプラズマ処理がある。プラズマガスとしては、上記のほかに、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の無機ガスを使用することができる。すなわち、前記する物理的気相成長法または化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成した後に、インラインでプラズマ処理を行うことにより、基材シートの表面の水分、塵などを除去すると共にその表面の平滑化、活性化、その他等の表面処理を可能とすることができる。更に、本発明では、プラズマ処理としては、プラズマ出力、プラズマガスの種類、プラズマガスの供給量、処理時間、その他の条件を考慮してプラズマ放電処理を行うことが好ましい。
【0053】
本発明において、プラズマ処理において、プラズマを発生させる方法としては、直流グロー放電、高周波(Audio Frequency:AF、Radio Frequency:RF)放電、マイクロ波放電等の装置を利用して行うことができる。本発明では、グロー放電やRFプラズマが好適である。
【0054】
本発明において、ゲルマニウム蒸着層に対するプラズマ処理としては、アルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスからなるプラズマガスが好ましい。具体的には、供給ガスを1×10-4〜1×10-1Torr、より好ましくは1×10-3〜1×10-1Torrで供給する。
【0055】
また、そのプラズマ出力としては50〜10000W、より好ましくは、100〜5000Wが好ましい。上記のプラズマ出力が、50W未満の場合には、酸素ガスや窒素ガスの活性化が低下し、高活性の酸素原子や窒素原子が生成しにくいことから好ましくない。また、10000Wを越えると、プラズマ出力が高すぎるため、基材シートが劣化する場合がある。
【0056】
更にまた、その処理速度としては、10〜1000m/min、より好ましくは、100〜600m/minである。上記の処理速度が、10m/min未満であると、プラズマ出力が高すぎるため、基材シートが劣化する場合がある。また、生産性が非常に高い。一方で、1000m/minを越えるとプラズマ処理が不十分のまま搬送されてしまう点で不利となる。
【0057】
ゲルマニウム蒸着膜にプラズマ処理を行うことで表面に官能基を付与させたり、表面形状を荒らすことができ、後述の粘着剤層の密着強度を向上させることができる。
(6)粘着剤層
本発明のゲルマニウム蒸着シートには、前記ゲルマニウム蒸着層またはプラズマ処理層の少なくとも一部に粘着剤層が積層されることが好ましい。粘着剤層を介して皮膚などへの貼着を行うことができるからである。
【0058】
粘着剤層を構成する粘着剤としては特に限定されないが、ゴム系、アクリル系、シリコーン系などの粘着剤であって、例えば、医療用粘着テープの技術分野で用いられている皮膚刺激性のないものが好ましい。
【0059】
ゴム系粘着剤としては、合成ポリイソプレンゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、天然ゴム、ポリイソブチレン、ポリブテンなどのゴム基剤に、粘着付与剤、軟化剤、充填剤、老化防止剤、着色剤などを配合した組成物が挙げられる。粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂、エステルガム、アルキルフェノール樹脂などが挙げられる。粘着付与剤は、ゴム基剤100質量部に対して、好ましくは30〜150質量部の割合で用いられる。
【0060】
アクリル系粘着剤としては、ブチルアクリレート、イソノニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマーの単独重合体または共重合体、あるいはこれらのアクリル酸エステル系モノマーとアクリル酸、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、酢酸ビニルなどの他のモノマーとの共重合体などのアクリレート系重合体を基剤とするものが挙げられる。シリコーン系粘着剤としては、シリコーンガムとシリコーンレジンを溶剤に溶解させたものが挙げられ、シリコーン共重合体が基剤となっている。
【0061】
なお、粘着剤層は、前記図4(a)、図4(b)に示すように、粘着基材シートに積層されたものであってもよい。このような粘着基材シートとしては、前記粘着剤層との接着性に優れるプラスチック基材シートや紙や布基材シートなどを例示することができる。このような粘着基材シートとしては、例えば、厚さ5〜300μmの紙基材シートのほか、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂からなる基材シートを好適に使用することができる。
【0062】
(7)剥離シート
剥離シートとしては、粘着剤層を被覆しうる従来公知の剥離シートを好適に使用することができる。例えば、剥離層用基材シートにシリコーンなどの剥離層を形成したものがある。基材シートとしは紙基材のほか、前記粘着基材シートで記載したものを同様に使用することできる。よって、剥離シートの厚さも、一般的には、3〜300μmである。
【0063】
(8)ゲルマニウム蒸着シート
本発明のゲルマニウム蒸着シートは、粘着剤層や剥離シートを積層することで、要時、剥離シートを除去して粘着剤層を露出させ、粘着剤層を介してゲルマニウム蒸着層を必要個所に貼付することができる。本発明のゲルマニウム蒸着シートは、ゲルマニウム蒸着層によって、従来のゲルマニウムの結晶をプラスターで皮膚に固定するゲルマニウム治療具などとして使用することができる。
【0064】
この際、粘着剤層は、図3に示すようにゲルマニウム蒸着層(20)側に積層してもよく、図4に示すように基材シート(10)側に積層してもよい。更に、図5、図6に示すように、粘着剤層(30)を被覆するように剥離シート(40)を積層させることで、要時剥離シート(40)を除去してゲルマニウム蒸着層(20)を目的個所に貼着することができる。
【0065】
本発明のゲルマニウム蒸着シートは、パッチ状に切断したものであってもよいが、長尺のテープ状であってもよい。例えば、図3(a)、図3(b)に示すゲルマニウム蒸着シートの基材シート(10)の表面に、更にシリコーンなどで剥離層を積層すれば、長尺のゲルマニウム蒸着シートを粘着剤層(30)と剥離層とが接触するように巻き取り、ロール状物とすることができる。
【0066】
本発明のゲルマニウム蒸着シートは、単位面積当たりのゲルマニウムの使用量が極めて少量であるためゲルマニウムを有効利用することができ、かつ粘着力が低下した場合には廃棄すればよく皮膚に貼着使用する際に衛生的な安全性に優れる。
【実施例】
【0067】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
(実施例1)
(1) ゲルマニウム蒸着シートの製造
厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名「E5102」)の片面にプラズマ処理を行った。プラズマ処理条件は、300m/minで移送する前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに、酸素流量1000sccm、アルゴン流量100〜1000sccm、ガス圧1×10-2〜1×10-1Torr、直流電圧600V、電流値10Aで発生したグロー放電プラズマを照射するというものであり、これにより2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにプラズマ処理面を形成した。
【0068】
次いで、前記プラズマ処理面に、下記蒸着条件によって、真空蒸着法による膜厚250Åのゲルマニウムの蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
真空チヤンバー内の真空度:1.5×10-4Torr、
巻き取りチヤンバー内の真空度:1.5×10-2Torr、
電子ビーム電力:35kW、
フィルムの搬送速度:300m/分、
次いで、前記ゲルマニウムの蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kw、アルゴンガスを使用し、ガス圧4.5×10-2Torr、処理速度300m/minでアルゴンガスプラズマ処理を行って、ゲルマニウムの蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させたプラズマ処理層を形成した。得られた蒸着シートをゲルマニウム蒸着シート(I)とする。
【0069】
(2) ラミネート強度測定
上記ゲルマニウム蒸着シート(I)の常温ラミネート強度と耐水ラミネート強度を下記方法で評価した。結果を表1に示す。
【0070】
(i)常温ラミネート強度
上記ゲルマニウム蒸着シート(I)のゲルマニウム蒸着層に、2液硬化型のポリウレタン系ラミネート用接着剤をグラビアロールコート法を用いて厚さ4.0g/m2(乾燥状態)にコーティングしてラミネート用粘着剤層を形成した。次いで、該ラミネート用粘着剤層の面に、厚さ40μmの無延伸ポリエチレンフィルムをドライラミネートして積層して、積層材を製造した。
【0071】
この積層材のラミネート強度を測定した。なお、ラミネート強度は、テンシロン測定器を使用し、試験片15mmの端部を剥がしてツマミを形成し、90度剥離により50mm/分の剥離速度で測定し、15mm当たりの剥離強度(単位:N/15mm)で評価した。
【0072】
(ii)耐水ラミネート強度
上記(i)と同様に積層材を製造した。テンシロン測定器を使用し、試験片15mm、剥離速度50mm/分で剥離する際に、剥離界面にスポイトで水滴を垂らし、10秒経過後にラミネート強度を測定し、耐水ラミネート強度の評価とした。
【0073】
(3) 実使用での密着性評価
前記ゲルマニウム蒸着シート(I)のゲルマニウム蒸着層に、粘着剤層として、住友スリーエム株式会社医療用両面テープ、商品名「1577」を貼着させ、剥離シートを台紙とする粘着剤層付きゲルマニウム蒸着シートを製造した。
【0074】
この粘着剤層付きゲルマニウム蒸着シートを直径20mmの円形に切り抜き、前記剥離シートを除去して肩部に貼り付けた。
24時間経過後に、各シートを肩部から剥がし、基材シートとゲルマニウム蒸着層間での剥離状態を評価した。結果を表1に示す。
【0075】
(実施例2)
プラズマ処理において、酸素に代えて、酸素:窒素のモル比が1:1である混合ガスを使用した以外は、実施例1と同様に操作して蒸着シートを得た。得られた蒸着シートをゲルマニウム蒸着シート(II)とした。
【0076】
また、実施例1と同様にして、積層材を調製し、実施例1と同様にして常温ラミネート強度と耐水ラミネート強度を評価した。結果を表1に示す。
また、実施例1と同様にして粘着剤層付きゲルマニウム蒸着シートを製造し、24時間肩部に貼着使用した後の剥離状態を評価した。結果を表1に示す。
【0077】
(実施例3)
プラズマ処理において、酸素に代えて窒素を使用した以外は、実施例1と同様に操作して蒸着シートを得た。得られた蒸着シートをゲルマニウム蒸着シート(III)とする。
【0078】
また、実施例1と同様にして、積層材を調製し、実施例1と同様にして常温ラミネート強度と耐水ラミネート強度を評価した。結果を表1に示す。
また、実施例1と同様にして粘着剤層付きゲルマニウム蒸着シートを製造し、24時間肩部に貼着使用した後の剥離状態を評価した。結果を表1に示す。
【0079】
(比較例1)
プラズマ処理に代えてコロナ処理を行った以外は、実施例1と同様に操作して蒸着シートを得た。得られた蒸着シートを比較ゲルマニウム蒸着シート(I)とする。
【0080】
また、実施例1と同様にして、積層材を調製し、実施例1と同様にして常温ラミネート強度と耐水ラミネート強度を評価した。結果を表1に示す。
また、実施例1と同様にして粘着剤層付きゲルマニウム蒸着シートを製造し、24時間肩部に貼着使用した後の剥離状態を評価した。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

(結果)
(1) 実施例1と比較例1の結果から明らかなように、基材シートに、アルゴンガスと共に酸素ガスを供給してプラズマ処理を行うと、ゲルマニウム蒸着層と基材シートとの密着性に優れ、かつ耐水性も向上することが判明した。なお、表1に示す「基材破断」とは、ラミネート強度を測定する際に、基材シートとゲルマニウム蒸着層との層間での剥離や、ドライラミネート層での剥離が発生せず、基材シートが破断するほど、密着力が高いことを示すものである。このように実施例1のゲルマニウム蒸着シートは密着力および耐水ラミネート強度に優れるため、24時間肩部に貼着すると層間での剥がれがなく、良好に使用することができた。なお、比較例1のものは、24時間の肩部での貼着によって層間での剥がれが発生した。
【0082】
(2) 実施例1、実施例2、実施例3の結果から明らかなように、プラズマ処理は、アルゴンガスに酸素ガスを供給する場合だけでなく、酸素ガスに代えて、酸素と窒素との混合ガスや窒素ガスでも、基材シートとゲルマニウム蒸着層との密着性を向上させ、かつ耐水ラミネート強度を高め得ることが判明した。この結果、24時間の肩部での貼着によっても基材シートとゲルマニウム蒸着層との層間剥離が発生することはなかった。
【0083】
(3) 比較例1は、基材シートに表面処理としてコロナ処理を行ったものであるが、プラズマ処理と比較して明らかに、基材シートとゲルマニウム蒸着層との密着性が低いことが判明した。このことは、従来の表面処理の中で、特にゲルマニウム蒸着層とのラミネート強度の向上には、プラズマ処理が選択的に優れることを示すものである。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のゲルマニウム蒸着シートは、基材シートとゲルマニウム蒸着層との密着性および耐水性に優れ、ゲルマニウム健康器具などとして有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、本発明のゲルマニウム蒸着シートの層構造を説明する図であり、プラズマ処理(13)された基材シート(10)のプラズマ処理面にゲルマニウムの蒸着層(20)が形成されたゲルマニウム蒸着シートを示す断面図である。
【図2】図2は、図1のゲルマニウム蒸着シートのゲルマニウム蒸着層が、更にプラズマ処理によってプラズマ処理層(23)を形成した態様を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明のゲルマニウム蒸着シートに粘着剤層が積層された態様を示す断面図であり、図3(a)はゲルマニウムの蒸着層(20)の上に粘着剤層が形成され、図3(b)はプラズマ処理層(23)の上に粘着剤層(30)が積層された態様を示す、断面図である。
【図4】図4は、本発明のゲルマニウム蒸着シートに粘着剤層が積層された態様を示す断面図の他の態様であり、ゲルマニウム薄層シートの基材シート(10)側に粘着剤層(30)が形成された場合を示す。なお、粘着剤層(30)には、更に粘着基材シート(33)が積層された態様となっている。
【図5】図5は、本発明のゲルマニウム蒸着シートに粘着剤層が積層され、更に粘着剤層に剥離シートが積層された態様を示す断面図であり、ゲルマニウム蒸着層ゲルマニウム蒸着層の形成後に水素プラズマ処理を同一ライン上で行うことで、生産効率を向上しうること、耐候性の向上によって安全性の高いゲルマニウム蒸着シートを提供できることを見出し、本発明を完成させた。(20)側に粘着剤層(30)および剥離シート(40)が形成される態様を示す。
【図6】図6は、本発明のゲルマニウム蒸着シートに粘着剤層が積層され、更に粘着剤層に剥離シートが積層された態様を示す断面図の他の態様であり、基材シート(10)側に粘着剤層(30)が形成され、前記粘着剤層(30)とゲルマニウム蒸着層(20)やプラズマ処理層(23)を被覆するように剥離シート(40)が積層される態様を示す断面図である。
【図7】低温プラズマ化学蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。
【図8】巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。
【符号の説明】
【0086】
10・・・基材シール、
13・・・プラズマ処理面、
20・・・ゲルマニウム蒸着層、
23・・・プラズマ処理層、
30・・・粘着剤層、
33・・・、粘着基材シート、
40・・・剥離シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートにプラズマ処理を行い、前記プラズマ処理面にゲルマニウムの蒸着層が形成されたゲルマニウム蒸着シート。
【請求項2】
前記プラズマ処理が、酸素ガス、窒素ガス、またはこれらの混合ガスを含む無機ガスからなるプラズマガスによることを特徴とする、請求項1に記載のゲルマニウム蒸着シート。
【請求項3】
前記ゲルマニウムの蒸着層が、物理気相蒸着法または化学気相蒸着法によって形成されたゲルマニウム蒸着層である、請求項1または2に記載のゲルマニウム蒸着シート。
【請求項4】
前記ゲルマニウム蒸着層は、更にプラズマ処理によるプラズマ処理層が形成されたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のゲルマニウム蒸着シート。
【請求項5】
前記基材シートが、プラスチック平板からなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のゲルマニウム蒸着シート。
【請求項6】
前記ゲルマニウム蒸着層またはプラズマ処理層の少なくとも一部に粘着剤層が積層された、請求項1〜5のいずれかに記載のゲルマニウム蒸着シート。
【請求項7】
前記粘着剤層が剥離シートで被覆されることを特徴とする、請求項6記載のゲルマニウム蒸着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−83776(P2010−83776A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252407(P2008−252407)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】