説明

ゲートバルブ及びそれを用いた基板処理システム

【課題】 一度に処理する被処理体の枚数が増加したとしても、弁体の昇降距離を短縮することが可能なゲートバルブを提供すること。
【解決手段】 被処理体を出し入れする複数の開口部61a〜61dに押圧される弁体63と、弁体63に設けられた押圧部67と、開口部61a〜61dの開口面に対して平行にスライドするメインスライダー70と、メインスライダー70に設けられ、突起部72と該突起部72からスロープ状に傾斜する傾斜部73とを含み、弁体63を開口部61a〜61dに正対させた状態で、弁体63の押圧部67を押圧するカム71と、を備え、弁体63は、開口部61a〜61dを開放する開放部として機能する少なくとも1つのスリット状開口65a〜65cを有し、スリット状開口65a〜65cに隣接した部位を、開口部61a〜61dを閉塞する閉塞部66a〜66dとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ゲートバルブ及びそれを用いた基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池や液晶ディスプレイ(LCD)に代表されるフラットパネルディスプレイ(FPD)などの製造過程においては、大型のガラス基板にエッチング、あるいは成膜等の所定の処理を施す。このような処理を施す基板処理システムとしては、複数の処理室を備えたマルチチャンバタイプの基板処理システムが知られている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
このようなマルチチャンバタイプの基板処理システムは、基板(被処理体)を搬送する搬送装置が設けられた共通搬送室を有し、この共通搬送室の周囲に、処理室や、共通搬送室と大気圧雰囲気との間で未処理の基板と処理済の基板とを交換するロードロック室等を備えている。これら共通搬送室、処理室、及びロードロック室は真空装置であり、これらの真空装置は、排気機構を用いて排気することで内部が所定の減圧状態下とされる。
【0004】
真空装置は気密に構成された容器本体を備え、この容器本体には、被処理体を出し入れするための開口部が設けられている。開口部はゲートバルブを用いて開閉される。開口部をゲートバルブにより閉じると、容器本体の内部は気密にシールされ、容器本体の内部の圧力を、所定のプロセス圧力まで減圧したり、大気状態と減圧状態との相互間で変換したりすることが可能となっている。
【0005】
ゲートバルブの構造例としては、特許文献1に記載されるリンク機構を用いたもの、および特許文献2に記載されるカム機構を用いたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−196150号公報
【特許文献2】特開2011−54928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近時、被処理体の大型化、あるいは被処理体を同時に複数枚処理するバッチ処理が進展しており、容器本体に設けられた被処理体を出し入れするための開口部のサイズが大きくなってきている。また、バッチ処理においては、スループットの低下の抑制、あるいは維持、あるいは向上の観点から、一度に処理する枚数を増加させることが検討されている。
【0008】
しかし、一度に処理する被処理体の枚数を増加させると、開口部のサイズが高さ方向に長くなり、弁体の昇降距離が長くなってしまう。このため、生産工場内に、基板処理システムを設置することが困難になる事情が懸念されている。
【0009】
この発明は、一度に処理する被処理体の枚数が増加したとしても、弁体の昇降距離を短縮することが可能なゲートバルブ、及びこのゲートバルブを用いた基板処理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の第1の態様に係るゲートバルブは、被処理体を出し入れする複数の開口部と、前記開口部に押圧される弁体と、前記弁体に設けられた押圧部と、前記開口部の開口面に対して平行にスライドするメインスライダーと、前記メインスライダーに設けられ、突起部と該突起部からスロープ状に傾斜する傾斜部とを含み、前記弁体を前記開口部に正対させた状態で、前記弁体の押圧部を押圧するカムと、を備え、前記弁体は、前記開口部を開放する開放部として機能する少なくとも1つのスリット状開口を有し、前記スリット状開口に隣接した部位を、前記複数の開口部を閉塞する閉塞部とする。
【0011】
この発明の第2の態様に係る基板処理システムは、被処理体を出し入れする開口部を有し、前記被処理体を真空状態下におくことが可能な、前記被処理体に処理を施す処理室と、前記被処理体を出し入れする開口部を有し、前記被処理体を大気状態下及び真空状態下の双方におくことが可能な、処理前及び処理済の被処理体を交換するロードロック室と、前記被処理体を出し入れする開口部を有し、前記被処理体を真空状態下におくことが可能な、前記ロードロック室と前記処理室との間で前記被処理体を搬送する搬送室と、を備えた基板処理システムであって、前記処理室、前記ロードロック室、及び前記搬送室の少なくともいずれか一つの、前記被処理体を出し入れする開口部を開閉するゲートバルブに、上記第1の態様に係るゲートバルブが用いられている。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、一度に処理する被処理体の枚数が増加したとしても、弁体の昇降距離を短縮することが可能なゲートバルブ、及びこのゲートバルブを用いた基板処理システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態に係るゲートバルブが用いられた基板処理システムの一例を概略的に示す平面図
【図2】一実施形態に係るゲートバルブをゲートバルブ室の内部から見た正面図
【図3】参考例を示す図
【図4】参考例を示す図
【図5】一実施形態に係るゲートバルブによる一利点を示す図
【図6】一実施形態に係るゲートバルブの一動作例を示す一部を断面とした側面図
【図7】一実施形態に係るゲートバルブのより具体的な一例を示す一部を断面とした正面図
【図8】図7中の8−8線に沿う水平断面図
【図9】図7中の9−9線に沿う断面図
【図10】図7中の10−10線に沿う縦断面図
【図11】図7中の11−11線に沿う縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。参照する図面全てにわたり、同一の部分については同一の参照符号を付す。
【0015】
本例においては、被処理体の一例として太陽電池やFPDの製造に用いられるガラス基板を挙げ、このガラス基板に対して所定の処理、例えば、エッチング、あるいは成膜等を施す基板処理システムを例示する。
【0016】
図1は、この発明の一実施形態に係るゲートバルブが用いられた基板処理システムを概略的に示す平面図である。
【0017】
図1に示すように、一実施形態に係る基板処理システム1は、基板Gに処理を施す処理室、本例においては複数の処理室10a、10bと、処理前及び処理済の基板Gを交換するロードロック室20と、ロードロック室20と処理室10a又は10b、並びに処理室10aと処理室10bとの間で基板Gを搬送する共通搬送室30と、共通搬送室30に設けられた、基板Gを搬送する搬送装置40と、を備えている。本例の搬送装置40は、特に、図示はしないが、複数枚の基板Gを複数段に保持し、複数枚の基板Gを一度に搬送する。
【0018】
本例においては、処理室10a、10b、ロードロック室20、及び共通搬送室30は真空装置であり、それぞれ基板Gを所定の減圧状態下におくことが可能な、気密に構成された容器本体50a、50b、50cまたは50dを備えている。容器本体50a、50b、50cまたは50dには、基板Gを出し入れする開口部51a、51b、51cまたは51dが設けられている。また、ロードロック室20の容器本体50cには、ロードロック室20の内部と基板処理システム1の外部との間で基板Gを出し入れする開口部51eが、さらに設けられている。開口部51eは、処理前基板Gの基板処理システム1へのロード、及び処理済基板Gの基板処理システム1からのアンロードに使用される。
【0019】
共通搬送室30は、処理室10a、10b、及びロードロック室20のそれぞれにゲートバルブを収容したゲートバルブ室60を介して接続されている。本例では、ゲートバルブ室60は3つ存在し、それぞれ上記容器本体50a〜50dと同様に、内部を所定の減圧状態下におくことが可能な真空装置用構成部材として構成されている。
【0020】
ゲートバルブ室60には、処理室10a、10b、及びロードロック室20の容器本体50a〜50cに設けられた開口部51a〜51cに連通される開口部61と、共通搬送室30の容器本体50dに設けられた開口部51dに連通される開口部62とが設けられている。基板Gは開口部61、62を通過することで、共通搬送室30と、処理室10a、10b、及びロードロック室20との間で出し入れされる。
【0021】
ゲートバルブ室60の内部には、ゲートバルブの弁体63が収容されている。ゲートバルブは、主に、弁体63がゲートバルブ室60の一方の開口を密閉及び開放する機構により構成されている。弁体63は、本例では、開口部61、62のうち、処理室10a、10b、及びロードロック室20側の開口部61を開閉する。弁体63は、開口部61に押圧され、開口部61の周囲に密着することで、開口部51a〜51cを閉塞し、処理室10a、10b、及びロードロック室20の容器本体50a〜50cを気密にシールする。また、ロードロック室20の大気側の開口部51eは、大気状態下にある外部環境と連通及び遮断を行うためのバルブ63aにより開閉される。
【0022】
図2A〜図2Cは、この発明の一実施形態に係るゲートバルブをゲートバルブ室60の内部から見た正面図である。
【0023】
図2Aに弁体63によって開閉される開口部61の一例を示す。
【0024】
図2Aに示すように、本例では、弁体63によって開閉され、基板Gを出し入れする開口部61がゲートバルブ室60の壁面、又はゲートバルブ室60の壁面を構成し着脱可能な開口板64に複数設けられている。本例では、一例として4つの開口部61a〜61dが開口板64に設けられている。また、図2Aには、開口部61a〜61dの先にある、処理室10a、10bに設けられた複数の基板処理部(又はロードロック室20の基板載置部)100a〜100dが示されている。基板処理部100a〜100d上それぞれには、基板Gが載置されている。つまり、開口部61a〜61dは、基板処理部(又はロードロック室20の基板載置部)100a〜100dの1つ1つに対応して設けられる。
【0025】
図2Bに開口部61a〜61dを弁体63によって閉塞した状態を、図2Cに開口部61a〜61dを弁体63によって開放した状態を示す。
【0026】
図2B及び図2Cに示すように、本例では、スリット状開口65が、弁体63に複数設けられている。本例では3つのスリット状開口65a〜65cが、弁体63に設けられている。弁体63の、3つのスリット状開口65a〜65cに対して高さ方向(上下方向)に隣接する4つの部位66a〜66dは、上記4つの開口部61a〜61dを閉塞する際の閉塞部として利用される(図2B)。また、3つのスリット状開口65a〜65cは、上記4つの開口部61a〜61dのうち、開口部61b〜61dを開放する際の開放部として利用される。最下段の開口部61aについては、弁体63の昇降動作を利用し、例えば、弁体63を上方向にスライドさせ、開口部61aを部位66aからずらすことで開放される(図2C)。スリット状開口65の数は、開口部61の数と同数でも良いが、本例のように、例えば、最下段の開口部61aについては弁体63の昇降動作を利用して開閉するようにすると、スリット状開口65a〜65cの数は、開口部61a〜61dの数よりも1つ少なくすることができる。これは、弁体63のサイズ及び重量の軽減に役立つと共に、弁体63が各開口部を閉塞するため下降した際に、弁体63の開口部61aに対応する開口部を有する部分のための逃げをゲートバルブ室60の下部に設ける必要が無く、これにより、ゲートバルブ室60のサイズ及び重量の軽減についても役立つ。
【0027】
なお、開口部61の一つの開閉を上記のように弁体63の昇降動作を利用するようにすると、開口部61の数が2つの場合には、スリット状開口65の数は1つとなる。
【0028】
このように一実施形態に係るゲートバルブでは、基板Gを出し入れする開口部61(61a〜61d)をゲートバルブ室60の壁面、又は開口板64に複数設け、これらの開口部61a〜61dを開閉する弁体63に、複数の開口部61の数に応じて少なくとも1つのスリット状開口65(65a〜65c)を設ける。そして、スリット状開口65a〜65cに対して高さ方向に隣接する4つの部位を、開口部61a〜61dを閉塞する際の閉塞部66a〜66dとして利用し、スリット状開口65a〜65cについては、開口部61a〜61dのうち、開口部61b〜61dを開放する際の開放部として利用する。
【0029】
このような構成を備えることにより、図2Cに示すように、一度に処理する基板Gの枚数が増加したとしても、開口部61a〜61dを開放する際の弁体63の昇降距離Sを短縮することができる。
【0030】
図3A、図3B、及び図4は、参考例を示す図である。
【0031】
参考例は、上記一実施形態と同様に、基板処理部が、高さ方向に4つ積層された処理部100a〜100dを備えている場合において、開口板164に1つの開口部161を設け、この1つの開口部161を1つの弁体163で開閉する例である。
【0032】
図3A及び図3Bに示すように、1つの開口部161を、1つの弁体163で開閉する場合には、弁体163を開口部161が全て開くまで、反対に開口部161が全て閉まるまで昇降させなければならない。このため、弁体163の昇降距離Sは、本一実施形態の弁体63の昇降距離Sに比較して長くなる。
【0033】
また、図4に示すように、処理部100a〜100fのように、処理部100の積層数を増やすと、1つの開口部161の高さ方向のサイズは、処理部100の積層数に依存して大きくなる。このため、弁体163の昇降距離Sは、開口部161の高さ方向のサイズの拡大に伴って、どんどんと長くなっていく。
【0034】
対して、本一実施形態によれば、図5に示すように、処理部100の積層数が処理部100a〜100fのように増加しても、弁体63の昇降距離Sは変わらない、という利点を得ることができる。これは、本一実施形態の昇降距離Sは、処理部100の積層数ではなく、処理部100の一つ一つに対応した複数の開口部61a〜61f各々の高さ方向のサイズに依存するように改められるからである。
【0035】
また、本一実施形態によれば、昇降距離Sが短いので、弁体63の開閉に要する時間も短くでき、スループットも向上する、という利点を得ることができる。
【0036】
さらに、昇降距離Sが短いので、弁体63の開閉速度を遅くすることが可能である。開閉速度を遅くすれば、例えば、高速に開閉させる場合に、メインスライダー70の下にストッパーを入れる必要性もなく、また、発塵も抑制することができる。
【0037】
次に、この発明の一実施形態に係るゲートバルブの一動作例について説明する。
【0038】
図6A〜図6Cは、一実施形態に係るゲートバルブの一動作例を示す一部を断面とした側面図である。図6Aは開口部61a〜61dを開放した状態を、図6Bは開口部61a〜61dを開放状態から閉塞状態へ、又は閉塞状態から開放状態へ移行させる中間段階の状態を、図6Cは開口部61a〜61dを閉塞した状態を、それぞれ示している。
【0039】
図6A〜図6Cに示すように、一実施形態に係るゲートバルブは、開口部61a〜61dの開口面に対して平行にスライド、例えば昇降方向にスライドするメインスライダー70と、弁体63とメインスライダー70との間に配置されて弁体63を保持し、メインスライダー70と同様に開口部61a〜61dの開口面に対して平行にスライド、例えば昇降方向にスライドするサブスライダー80とを備えている。
【0040】
メインスライダー70には、弁体63を開口部61a〜61dに正対させた状態で弁体63を、開口部61a〜61dに向かって押圧する押圧機構71が設けられている。弁体63には、押圧機構71によって押圧される押圧部67が設けられている。押圧機構71は、例えば、突起部72と、この突起部72からスロープ状に傾斜する傾斜部73とから構成されるカムであり、また、押圧部67は、例えば、カム(押圧機構71)に接触するローラー68を備えている突出部材である。ローラー68は、押圧機構71のスライド、本例では昇降に応じ、突起部72および傾斜部73それぞれの表面を転がる。
【0041】
(開口部61a〜61dを閉塞するとき)
弁体63を用いて、開口部61a〜61dを閉塞するとき、弁体63の閉塞部66a〜66dの位置を開口部61a〜61dに正対する位置にずらす(図6B)。
【0042】
本例では、メインスライダー70が、サブスライダー80を引っ掛ける引っ掛け部74を備えている。さらに、本例では、ゲートバルブ室60の底面に、弁体63のスライドを停止させる弁体ストッパー90を備えている。
【0043】
弁体63のスライドが弁体ストッパー90によって停止されるまで、サブスライダー80に保持されている弁体63は、メインスライダー70のスライド、本例では下降に応じて下降する。弁体63の下降が弁体ストッパー90によって停止されると、サブスライダー80が引っ掛け部74から離れる。離れた後もメインスライダー70の下降が続く。やがて、押圧部67のローラー68が押圧機構71の傾斜部73の表面に接触し、傾斜部73に沿って突起部72の頂点に向かって転がりだす。
【0044】
弁体ストッパー90と弁体63との間には、弁体63を、開口部61a〜61dの開口面に対して正対する方向に進退させるローラー69が設けられている。本例では、ローラー69は、弁体63の下部に設けられている。ローラー69は、ローラー68が突起の頂点に向かって転がりだすとともに、弁体ストッパー90の水平な上面を転がり、弁体63を開口部61a〜61dに向かって直進させる。このようにして、弁体63は、押圧機構71のカムにより開口部61a〜61dの開口面に向かって押圧され、やがて閉塞部66a〜66dにより開口部61a〜61dは閉塞される(図6C)。
【0045】
(開口部61a〜61dを開放するとき)
弁体63を用いて、開口部61a〜61dを開放するとき、押圧機構71のカムによる押圧を解除するとともに、弁体63のスリット状開口65a〜65cの位置を開口部61b〜61dに正対する位置にずらす。さらに、本例では、スリット状開口65a〜65cの数が開口部61a〜61dの数よりも1つ少ない。このため、弁体63の位置を開口部61aに正対する位置からずらす。
【0046】
本例では、サブスライダー80が引き戻し機構81を備えている。引き戻し機構81は、押圧機構71のカムによる押圧が解除された際に、弁体63を開口部61a〜61dの開口面から引き戻す。引き戻し機構81は、弁体63を開口面に対して正対する方向に直進及び後退させる機構、例えば、ばね82とばね押え84とを用いて構成される。ばね82は、弁体63が開口部61a〜61dに押圧されている状態では縮んだ状態となる。押圧が解除されると、ばね82が伸び、これにより弁体63は、開口部61a〜61dから離れるように引き戻される。ばね82は、伸縮体であればこれに限られない。
【0047】
メインスライダー70がスライド、本例では上昇されると、閉塞する場合とは反対に、ローラー68が突起部72の頂点から傾斜部73に沿って転がりだす。これとともに、ばね82が伸び、弁体63を開口部61a〜61dから引き戻す。この際、ローラー69は、弁体ストッパー90の水平な上面を転がり、弁体63を開口部61a〜61dから後退させる。やがて、メインスライダー70の引っ掛け部74がサブスライダー80を引っ掛けると、メインスライダー70は、サブスライダー80とともに弁体63を、開口部61a〜61dに対して平行な方向に上昇させる。メインスライダー70は、サブスライダー80及び弁体63を、スリット状開口65a〜65cの位置を開口部61b〜61dに正対する位置、かつ、弁体63の位置が開口部61aからずれる位置まで上昇させる。これにより、開口部61a〜61dは、スリット状開口65a〜65c及び弁体63により開放される(図6A)。
【0048】
次に、メインスライダー70及びサブスライダー80のより具体的な一例を説明する。
【0049】
図7は、一実施形態に係るゲートバルブのより具体的な一例を示す一部を断面とした正面図、図8は図7中の8−8線に沿う水平断面図である。また、図9は図7中の9−9線に沿う断面図、図10A及び図10Bは図7中の10−10線に沿う断面図である。
【0050】
図7及び図8に示すように、メインスライダー70は、下端が開放端となるような基板G通過用切り欠き部75を備え、下端が開放された枠状を成すような形状を呈している。切り欠き部75からは、例えば、弁体63のスリット状開口65a〜65cが露出している。切り欠き部75は、基板Gを通過させることで、メインスライダー70の先にある開口部61a〜61dを介した基板Gの出し入れが可能となる。前述の通り、切り欠き部75の下端は開放されており、切り欠き部75の下端部を開放することで、メインスライダー70が上昇した際に、メインスライダー70が基板Gの出し入れを妨げることを抑制している。
【0051】
また、本例ではサブスライダー80は、メインスライダー70の基板G通過用切り欠き部75の外側の両側部と、弁体63の両側部との間に、それぞれ分かれて少なくとも1つずつ配置されている。両側部に別れたサブスライダー80どうしの間隔は、スリット状開口65a〜65cの基板Gに水平となる方向のサイズ以上となっている。これにより、サブスライダー80も、基板Gの出し入れを妨げることを防止する。サブスライダー80は、弁体の安定な動作を確保するために両側に分かれて同数ずつ対称な位置にあればよく、弁体の大きさに応じて、それぞれ2つずつ或いはそれ以上ずつあってもよい。なお、弁体の安定な動作を確保できる場合には、必ずしも対称な位置に無くてもよく、また、同数ずつでなくてもよい。
【0052】
また、閉塞部66a〜66dの開口部61a〜61dとは反対側の面には、リブ91が設けられている。本例のように、メインスライダー70が、基板G通過用切り欠き部75を備えていると、閉塞部66a〜66dが切り欠き部75を介して露呈してしまう。つまり、閉塞部66a〜66dを押圧機構71によって押圧することができない。このため、閉塞部66a〜66dが開口部61a〜61dを介して処理室10a、又は10b、又はロードロック室20から逆圧を受けると、閉塞部66a〜66dが撓み、気密性が損なわれる可能性がある。
【0053】
このような気密性の悪化を抑制するには、本例のように、閉塞部66a〜66dに、リブ91を設けると良い。閉塞部66a〜66dの側部については、メインスライダー70が存在し、メインスライダー70の押圧機構71を用いて、弁体63の押圧部67を押圧しているので、リブ91により閉塞部66a〜66dの撓みを防止することにより、気密性の悪化を抑制することができる。
【0054】
リブ91の例としては、断面が長軸と短軸とを有する矩形状の棒状部材や、断面が三角形状のトラス状部材を挙げることができる。
【0055】
棒状部材の場合には、図9Aに示すように、短軸に沿った面91aが弁体63の閉塞部66に接続されていることが良い。長軸の面を閉塞部66に接続する場合に比較して、弁体にリブ91が曲がり難くなり、閉塞部66の変形を、よりよく抑制できるためである。
【0056】
トラス状部材の例としては、図9Bに示すように、例えば2枚の板91b、91cの頂点どうしを組み合わせ、開放端を閉塞部66に接続する例や、図9Cに示すように、3枚の板91b〜91dでトライアングルを組み、トライアングルの一辺を閉塞部66に接続する例を挙げることができる。これらの場合でも、リブ91は曲がり難くなるので、閉塞部66a〜66dの変形を抑制することができる。また、トラス状部材の場合には、棒状部材に比較して、内部を中空にできるため、リブ91の軽量化を図ることができ、弁体63の重量軽減にも寄与する、という利点も得ることができる。
【0057】
メインスライダー70をスライドさせる機構としては、メインスライダー70を直線運動させる機構を挙げることができる。直線運動させる機構の一例としては、LM(Linear Motion)ガイドを挙げることができる。本例では、メインスライダー70をスライドさせる機構とし、LMガイド92が利用されている。図10A及び図10Bに、図7中の10−10線に沿う縦断面図を示す。
【0058】
図7、図8、図10A及び図10Bに示すように、LMガイド92は、ガイドレールと、ガイドブロックとを含んで構成される。本例では、2本のガイドレール93aが、基板Gの出し入れを妨げることがないように、ゲートバルブ室60の開口部62よりも外側に配設されている。本例のガイドレール93aは、ゲートバルブ室60の内壁に取り付けられている。なお、ガイドレール93aはゲートバルブ室60の内壁から離れて設けられても良い。メインスライダー70のガイドレール93aに相対する面にはガイドブロック94aが設けられている。ガイドブロック94aは、ガイドレール93aにスライド可能な状態で嵌合する。これにより、メインスライダー70は、ガイドレール93aを挟持しつつ、ガイドレール93aに沿ってスライド、本例では昇降する(図10A及び図10B参照)。
【0059】
また、サブスライダー80の、メインスライダー70に相対する面にもガイドレール93bが設けられており、メインスライダー70の、サブスライダー80に相対する面にはガイドブロック94bが設けられている。ガイドブロック94bは、ガイドレール93bにスライド可能な状態で嵌合する。これにより、メインスライダー70は、サブスライダー80のガイドレール93bを挟持する。サブスライダー80は、メインスライダー70のガイドブロック94bに従ってスライド、本例では昇降される(同じく図10A及び図10B参照)。
【0060】
メインスライダー70の上方には、メインスライダーをスライドさせる駆動機構95が設けられている。本例では、駆動機構95はメインスライダー70の両側部上方に1つずつ、合計2基設けられている。駆動機構95としては、例えば、エアシリンダあるいは油圧シリンダ等を挙げることができる。
【0061】
図11A及び図11Bは、図7中の11−11線に沿う縦断面図である。
【0062】
図11A及び図11Bに示すように、本例のメインスライダー70には、引き戻し機構81との緩衝を防止する、緩衝防止用切り欠き部76が設けられている。この切り欠き部76は、サブスライダー80の引き戻し機構81の先端部分を収容するように、メインスライダー70に形成される。切り欠き部76に引き戻し機構81の先端部分を収容することで、例えば、図6A〜図6Cに示したメインスライダー70のように切り欠き部76が無い場合に比較して、メインスライダー70とゲートバルブ室60の開口部61a〜61d側壁面、又は開口板64までの長さLを短縮できる、という利点を得ることができる。このため、ゲートバルブ室60の基板Gが搬送される方向に沿った長さ(ゲートバルブ室60の厚み)を短くすることができ、共通搬送室30と、処理室10a、又は10b、又はロードロック室20との間の、基板Gの搬送距離を短縮、又は搬送距離の増大を抑制することが可能となる。基板Gの搬送距離の短縮、又は搬送距離の増大を抑制すれば、例えば、搬送装置40の搬送アームの長大化を抑制できる、という利点を得ることができる。
【0063】
以上、上記一実施形態によれば、一度に処理する被処理体の枚数が増加したとしても、弁体の昇降距離を短縮することが可能なゲートバルブ、及びこのゲートバルブを用いた基板処理システムを得ることができる。
【0064】
上記説明は、この発明の一実施形態であって、この発明は上記一実施形態に限定されることはなく、種々の変形が可能である。また、この発明の実施形態は、上記一実施形態が唯一のものでもない。
【0065】
例えば、開口部61の数は、4つ又は6つを例示したが、開口部61の数はこれらに限られるものではなく、2つ以上であれば良い。
【0066】
また、上記一実施形態では、ゲートバルブを収容する収容体としてゲートバルブ室60を例示したが、収容体は、ゲートバルブを収容する弁箱とされてもよい。
【0067】
また、上記一実施形態では、被処理体として太陽電池やFPDの製造に用いられるガラス基板を示したが、被処理体はガラス基板に限定されず、半導体ウエハ等の他の基板であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
10a、10b…処理室、20…ロードロック室、30…共通搬送室、60…ゲートバルブ室、61a〜61d…開口部、63…弁体、65a〜65c…スリット状開口、67…押圧部、69…ローラー、70…メインスライダー、71…押圧機構、72…突起部、73…傾斜部、74…引っ掛け部、80…サブスライダー、81…引き戻し機構、75…基板G通過用切り欠き部。76…緩衝防止用切り欠き部、90…弁体ストッパー、91…リブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体を出し入れする複数の開口部と、
前記開口部に押圧される弁体と、
前記弁体に設けられた押圧部と、
前記開口部の開口面に対して平行にスライドするメインスライダーと、
前記メインスライダーに設けられ、突起部と該突起部からスロープ状に傾斜する傾斜部とを含み、前記弁体を前記開口部に正対させた状態で、前記弁体の押圧部を押圧するカムと、を備え、
前記弁体は、前記開口部を開放する開放部として機能する少なくとも1つのスリット状開口を有し、前記スリット状開口に隣接した部位を、前記複数の開口部を閉塞する閉塞部とすることを特徴とするゲートバルブ。
【請求項2】
前記複数の開口部を閉塞するとき、前記弁体の閉塞部の位置を、前記複数の開口部に正対する位置に移動し、前記弁体を、前記カムにより前記開口部の開口面に向かって押圧し、前記閉塞部により前記開口部を閉塞し、
前記複数の開口部を開放するとき、前記カムによる押圧を解除するとともに、前記弁体のスリット状開口の位置を、前記複数の開口部に正対する位置に移動し、前記スリット状開口により前記開口部を開放するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のゲートバルブ。
【請求項3】
前記弁体と前記メインスライダーとの間に配置され、前記開口部の開口面に対して平行にスライドするサブスライダーを、さらに備え、
前記サブスライダーは、前記弁体を保持するとともに、前記カムによる押圧が解除された際、前記弁体を、前記開口部の開口面から引き戻す引き戻し機構を備えていることを特徴とする請求項2に記載のゲートバルブ。
【請求項4】
前記メインスライダーは、前記サブスライダーを引っ掛ける引っ掛け部を備え、
前記メインスライダーは、前記開口部の開口面に対して平行にスライドすることで前記カムによる押圧を解除するとともに、前記引っ掛け部により前記サブスライダーを引っ掛け、前記サブスライダーを前記弁体とともに前記開口部に対して平行な方向にスライドさせて前記スリット状開口により前記開口部を開放することを特徴とする請求項3に記載のゲートバルブ。
【請求項5】
前記弁体のスライドを停止させる弁体ストッパーを、さらに備え、
前記弁体のスライドが前記ストッパーにより停止された後、前記メインスライダーがさらにスライドすることにより、前記引っ掛け部による前記メインスライダーと前記サブスライダーとの引っ掛けを解除するとともに、前記カムが、前記弁体を、前記開口部の開口面に向かって押圧することを特徴とする請求項4に記載のゲートバルブ。
【請求項6】
前記弁体ストッパーと前記弁体との間には、前記弁体を、前記開口部の開口面に対して正対する方向に進退させるローラーが設けられていることを特徴とする請求項5に記載のゲートバルブ。
【請求項7】
前記弁体の閉塞部の、前記開口部とは反対側の面にリブが設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のゲートバルブ。
【請求項8】
前記リブは、断面が長軸と短軸とを有する矩形状の棒状部材であり、前記棒状部材の短軸の面が前記弁体の閉塞部に接続されていることを特徴とする請求項7に記載のゲートバルブ。
【請求項9】
前記リブは、断面が三角形状のトラス状部材であり、前記トラス状部材は一辺が前記弁体の閉塞部とされている、又は一辺が前記弁体の閉塞部に接続されていることを特徴とする請求項7に記載のゲートバルブ。
【請求項10】
前記弁体の押圧部は、前記開口部とは反対側の面に、前記開口部の両側部側に沿って設けられていることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか一項に記載のゲートバルブ。
【請求項11】
前記メインスライダーは、前記被処理体を通過させる被処理体通過用切り欠き部を備えていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のゲートバルブ。
【請求項12】
前記サブスライダーは、前記メインスライダーの前記被処理体通過用切り欠き部の外側にある両側部と前記弁体の両側部との間にそれぞれ分かれて少なくとも1つずつ配置されていることを特徴とする請求項11に記載のゲートバルブ。
【請求項13】
前記メインスライダーは、前記サブスライダーの引き戻し機構の先端部分を収容する緩衝防止用切り欠き部を備えていることを特徴とする請求項12に記載のゲートバルブ。
【請求項14】
被処理体を出し入れする開口部を有し、前記被処理体を真空状態下におくことが可能な、前記被処理体に処理を施す処理室と、
前記被処理体を出し入れする開口部を有し、前記被処理体を大気状態下及び真空状態下の双方におくことが可能な、処理前及び処理済の被処理体を交換するロードロック室と、
前記被処理体を出し入れする開口部を有し、前記被処理体を真空状態下におくことが可能な、前記ロードロック室と前記処理室との間で前記被処理体を搬送する搬送室と、を備えた基板処理システムであって、
前記処理室、前記ロードロック室、及び前記搬送室の少なくともいずれか一つの、前記被処理体を出し入れする開口部を開閉するゲートバルブに、請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載されたゲートバルブが用いられていることを特徴とする基板処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−11289(P2013−11289A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143129(P2011−143129)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】