説明

コドラッグを含有する持続的放出用ドラッグデリバリーシステム

【課題】複雑な製造プロセスを必要とせずに体内の対象部位に隣接した部位で長時間持続する放出速度を有する改良されたドラッグデリバリーを提供する。
【解決手段】ポリマーマトリックス及び、ポリマー中に分散された一般式A−L−Bを有するプロドラッグを含有する持続的放出用配合物(Aは薬理的活性成分を表し、LはA及びBに結合しプロドラッグを形成するリンカーを表し、上記リンカーは生理学的条件下で開裂して治療効果を示すAの形状を生成し、BはAと結合して、治療効果を示すAの形状より低い溶解性を有するプロドラッグを生じる成分を表す)であり、治療効果を示すAの形状の水中での溶解度は、1mg/mlを超え、一方プロドラッグの水中での溶解度は1mg/ml未満である配合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に、改良されたドラッグデリバリーシステム(放出用配合物)に関する。特に本発明は、ポリマーベースの持続的放出用ドラッグデリバリーシステム及びそれを用いる薬投与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(薬の)持続的放出性は長らく製薬業界で追求されてきた。多くのポリマーベースのシステムが、持続的放出を達成するために提案されてきた。これらのシステムは通常、放出を調整する手段としてポリマーの分解又はポリマーを通した拡散のいずれかを利用している。
移植式ドラッグデリバリー装置は、経口、非経口、座薬、その他の局所的投与方法の代替物として魅力的である。例えば経口、非経口及び座薬投与方法と比較すると、移植式ドラッグデリバリーは、他の投与方法に比べより局所的投与法を可能とする。従って、移植式ドラッグデリバリー装置は、臨床医がより局所的な治療的医薬効果を望む場合には特に好ましい。更に、作用の対象となる部位へ直接薬を投与できる移植式ドラッグデリバリー装置の能力は、臨床医が、比較的吸収困難な薬や生物学的流体中で不安定な薬を使用することを可能にするため、非常に好都合なことが多い。移植式ドラッグデリバリー装置は、全身的には低濃度か無視できる程度の濃度を保ちつつ、作用の対象部位への治療的投与を可能とする。このため、移植式ドラッグデリバリー装置は、問題の薬が毒性を有するか低いクリアランス特性を有する又はその両方を有する場合には特に魅力的である。
局所的投与と比べて、移植式ドラッグデリバリー装置は、皮下に適用出来る利点を有する。それらは、外科移植できるため局所的に高濃度で長時間にわたり投薬できる。一方、通常の局所的投薬は表皮に限られており、薬濃度を治療効果のある範囲に維持するため周期的に繰り返される必要がある。経皮貼布等の経皮ルートによる投与は全身的に薬物を投与してしまう欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
移植式ドラッグデリバリー装置の明らかな利点にも拘わらず、移植用装置は幾つかの要求が未解決であった。例えば、一定速度で薬を放出する単純なドラッグデリバリー装置が求められていた。この課題を解決すべくなされた公知技術もあるが、製造が困難であり、使用が不便である欠点があるため充分な成功には至っていない。
従って、体内で長時間にわたり持続的に放出して薬の投与を行ない、複雑な製造プロセスを必要としない改良されたドラッグデリバリー装置が要求されていた。
【0004】
現代の外科的方法では、日常的に種々の数多くの装置を体内に内挿し長時間そこに維持させている。これらの装置として、縫合糸、ステント、外科用ねじ、補綴用結合部、人工弁膜、平板、ペースメーカー等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの装置は、長年にわたり有用性を証明されてきたが、移植され残っている外科用器具に関していくつかの問題がある。例えば、ステント、人工弁膜及びある程度は縫合糸でさえ、血管手術後の再狭窄の誘因となる。従ってしばしば外科用器具の移植に際して全身薬を使用する必要があるが、それは術後出血の危険性を増大させる。時には外科移植用装置に対し、免疫応答反応又は拒絶反応が現れる。従って、しばしば外科移植装置での治療を断念したり、特定の外科移植用装置に伴い免疫抑制薬を使用することが必要になる。全身的処置を避けるために、放出速度が調整可能な生体吸収性ポリマー中の薬の使用がしばしば報告されている。このシステムは、ポリマーが分解(生体吸収)されるに従い薬を放出するように設計されている。このことは、薬とポリマーの選択を非常に限定する。
従って、外科移植用装置に隣接した部位で長時間にわたり治療効果のある濃度範囲内に薬の濃度を維持し、再狭窄を生じず免疫抑制作用を有する薬の投与が可能な改良されたドラッグデリバリー装置が求められている。
【0005】
手術中に患者が病原性微生物と接触することを排除するため多くの改良がなされているが、それにも拘わらず外科用器具の移植は、患者を種々のウィルス及び/又は細菌に感染させる可能性のある異物を体内へ導入する場合がある。従って、外科手術はしばしば患者が普通なら受けない感染を引き起こし、移植治療の有効性を低下させ無効にする。そのため、一般的に感染予防又は感染後の処置として抗生物質、コルチコステロイド及び/又は抗ウィルス薬の投与が移植治療に付随している。しかし、これら抗菌性組成物の全身投与はしばしば好ましくない副作用を引き起こす。
このように、外科移植用装置に隣接した部位で長時間にわたり治療効果のある、濃度範囲内に薬の濃度を保持して抗菌薬の投与が可能な改良されたドラッグデリバリー装置が求められている。
【0006】
外科移植は、しばしば痛みや腫れ等の他の有害な副作用を引き起こす。外科移植処置で、ステロイド系抗炎症剤;アスピリン、セファコクシブ(cefacoxib)、ロフェコクシブ又はインドメタシン等の非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs);アセトアミノフェン等の他の鎮痛性薬及び鎮静剤等の抗炎症剤並びに鎮痛剤を患者へ処方することは通常行なわれている。術後の患者は発熱することがあるため、そのような患者へアスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、又はアセトアミノフェン等の解熱剤を処方することも通常行なわれている。しかし、患者が特定のNSAIDs、ステロイド及び鎮静剤の全身投与への薬物耐性が低いことを示すことは非日常的なことではない。更に、幾つかのNSAIDsは、造血機能障害剤(blood thinner)又は抗凝固剤として働き、術後の出血の危険性を高める。
従って、外科移植装置に隣接した部位で長時間にわたり治療効果のある濃度範囲内に薬の濃度を保持して、抗炎症性、鎮痛性及び/又は解熱性作用を有する薬の投与が可能な、改良されたドラッグデリバリー装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリマーマトリックス及び、ポリマー中に分散された一般式A−L−Bを有するプロドラッグを含有する持続的放出システム(Aは患者に臨床的応答を生じる治療効果を示す形状を有する薬成分を表し、LはA及びBに結合しプロドラッグを形成する共有結合型のリンカーを表し、上記リンカーは生理学的条件下で開裂して治療効果を示すAの形状を生成し、BはAと結合して、治療効果を示すAの形状より低い溶解性を有するプロドラッグを生じる成分を表す)を提供する。上記リンカーLは、体液中で加水分解されてもよい。又、リンカーLは酵素により開裂されてもよい。本発明で使用できるリンカー(linkage)として、エステル、アミド、カルバメート、カーボネート、環状ケタール、チオエステル、チオアミド、チオカルバメート、チオカーボネート、キサントゲン酸エステル及びリン酸エステルの群から選ばれる1以上の加水分解性基が挙げられる。
本発明は又、ポリマーマトリックス及び、ポリマー中に分散された一般式A::Bを有するプロドラッグを含有する持続的放出用配合物(Aは患者に臨床的応答を生じる治療効果を示す形状を有する薬成分を表し、::は、生理学的条件下で分離して治療効果を示すAの形状を生成するA及びB間のイオン結合を表し、BはAとイオン結合して、治療効果を示すAの形状より低い溶解性を有するプロドラッグを生じる成分を表す。)を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のポリマープロドラッグ分散体からのプロドラッグ放出の時間との関係を示すグラフである。
【図2】本発明のポリマープロドラッグ分散体からのプロドラッグ放出の時間との関係を示すグラフである。
【図3】本発明のステントの設置前の状態の側面図である。
【図4】本発明のステントの設置された状態の側面図である。
【図5】PVA−被覆したガラス板(スライド)からpH7.4バッファへのTC−112の放出態様を示すグラフである。
【図6】シリコーン樹脂−被覆したガラス板からpH7.4バッファへのTC−112の放出態様を示すグラフである。
【図7】被覆した内挿物からの5−フルオロウラシル(5FU)及びトリアムシノロンアセトニド(TA)の放出態様を示すグラフである。
【図8】被覆した内挿物からの5−フルオロウラシル(5FU)及びトリアムシノロンアセトニド(TA)の放出態様を示すグラフである。
【図9】生体外での高投薬量を被覆したステントの放出パターンを示すグラフである。
【図10】体内から取り出されたステント及び移植されていないステント間の比較薬の放出態様を示すグラフである。
【図11A】γ線照射及びプラズマ処理の薬の放出に対する効果を示すグラフである。
【図11B】γ線照射及びプラズマ処理の薬の放出に対する効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の治療効果を示すAの形状の水中での溶解度は、好ましくは1mg/mlを超え、プロドラッグの水中での溶解度は好ましくは1mg/ml未満、更に好ましくは0.1mg/ml未満、0.01mg/ml未満、特に好ましくは0.001mg/ml未満である。
本発明の治療効果を示すAの形状は、好ましくは上記プロドラッグの10倍以上、更に好ましくは100倍以上、特に好ましくは1000倍以上、最も好ましくは10000倍以上の水溶性を有する。
生物学的流体(血清、滑液、脳脊髄液、リンパ液、尿等)中に置かれた場合、本発明の持続的放出用配合物は、治療効果を示すAの形状の持続的性を例えば24時間以上示し、放出時間中のポリマー外部の流体中のプロドラッグの濃度は治療効果を示すAの形状の濃度の通常10%未満、好ましくは5%未満、更に好ましくは1%未満、特に好ましくは0.1%未満である。
本発明の治療効果を示すAの形状は、プロドラッグのlogP値より好ましくは1logPユニット未満、更に好ましくは2ユニット未満、特に好ましくは3ユニット未満、最も好ましくは4ユニット未満のlogP値を有する。
本発明の結合形態のプロドラッグは、好ましくは治療効果を示すAの形状のED50の10倍以上、更に好ましくは100倍以上、特に好ましくは1000倍以上、最も好ましくは10000倍以上の臨床的応答生成用ED50を有する。即ち、多くの場合プロドラッグ自体は臨床的応答を引き起こす観点からは不活性であってもよい。
本発明のBは疎水性脂肪族成分でもよい。
本発明のBは上記リンカーLの開裂又は上記イオン結合の解離により生成した、治療効果を示す形状を有する薬成分であってもよく、Aと同じ薬であっても異なる薬であってもよい。
本発明のプロドラッグの開裂後に得られるBは、生物学的に不活性な成分であってもよい。
【0010】
本発明のポリマーマトリックスからの治療効果を示すAの形状の放出の持続時間は、例えば24時間以上、好ましくは72時間以上、より好ましくは100時間以上、更に好ましくは250時間以上、特に好ましくは500時間以上、最も好ましくは750時間以上である。更に、本発明のポリマーマトリックスからの治療効果を示すAの形状の放出の持続時間は、好ましくは1週間以上、更に好ましくは2週間以上、特に好ましくは3週間以上でもよい。更に、本発明のポリマーマトリックスからの治療効果を示すAの形状の放出の持続時間は、例えば1月以上、好ましくは2月以上、更に好ましくは6月以上でもよい。
本発明のプロドラッグは、治療効果を示すAの形状のED50の例えば10倍以上、更に好ましくは100倍以上、特に好ましくは1000倍以上のED50を有してもよい。
本発明の治療効果を示すAの形状は、上記プロドラッグの例えば10倍以上の水溶性、更に好ましくは100倍以上、特に好ましくは1000倍以上の水溶性を有してもよい。
本発明のA(及び任意でB)成分は、免疫応答変更遺伝子、抗増殖性物質、コルチコステロイド、血管形成阻害性ステロイド、駆虫薬、対緑内障薬、抗生物質、アンチセンス化合物、分化調節剤、抗ウィルス剤、抗ガン剤及び非ステロイド系抗炎症剤等の薬から選ばれてもよい。
本発明のポリマーマトリックスは非生体吸収性でも生体吸収性でもよい。上記非生体吸収性ポリマーマトリックスは、例えばポリウレタン、ポリシリコーン、ポリ(エチレン−コビニルアセテート)、ポリビニルアルコール、並びにそれらの誘導体及びコポリマーから構成されても良い。
【0011】
上記生体吸収性ポリマーマトリックスは、例えばポリ(アンハイドライド)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、オルトカルボン酸エステルポリマー、ポリアルキルシアノアクリレート、並びにそれらの誘導体及びコポリマーから構成されても良い。
例えば100kDを超え、更に好ましくは50kDを超え、更に好ましくは25kDを超え、特に好ましくはl0kDを超え、最も好ましくは5kDを超える大きさの蛋白質を内部マトリックスから排除する、物理的性質(孔径等)及び/又は化学的性質(イオン化された基、疎水性等)を有するマトリックスを形成することにより、マトリックス中のプロドラッグと周囲の体液中のタンパク質化合物との相互作用を減少させるようなポリマーマトリックスを選んでも良い。
本発明のポリマーマトリックスは、皮膜からの治療効果を示すAの形状の放出速度を実質的に制限しないものでもよい。
一方、本発明のポリマーマトリックスは上記放出速度へ影響を及ぼしても良い。マトリックスは、放出されたモノマー(A及びB)に対するプロドラッグの封鎖をする電荷又は疎水性性質を有するように改質されてもよい。同様に、ポリマーマトリックスは、マトリックス中のプロドラッグの加水分解及び/又は溶解性が周囲の流体中とは異なるように、加水分解反応のpH依存性へ影響を与えることもでき、周囲の流体中とは異なるpHを有する微環境を形成することもできる。この方法でポリマーは、異なる電子性、疎水性又はプロドラッグとの化学的相互作用により放出速度及びプロドラッグの加水分解速度へ影響を与えることが出来る。
【0012】
A又はBの少なくとも1つは抗新生物薬でもよい。抗新生物薬として、例えばアンスラサイクリン系抗生物質、ビンカアルカロイド、プリン類、ピリミジン類、ピリミジン生合成阻害剤及び/又はアルキル化剤が挙げられる。抗新生物性薬として、例えば5−フルオロウラシル(5FU)、5’−デオキシ−5−フルオロウリジン、5−フルオロウリジン、2’−デオキシ−5−フルオロウリジン、フルオロシトシン、5−トリフルオロメチル−2’−デオキシウリジン、アラビノキシルシトシン、シクロシチジン、5−アザ−2’−デオキシシチジン、アラビノシル−5−アザシトシン、6−アザシチジン、N−フォスフォノアセチル−L−アスパラギン酸、ピラゾフリン、6−アザウリジン、アザリビン、3−デアザウリジン、アラビノシルシトシン、シクロシチジン、5−アザ−2’−デオキシシチジン、アラビノシル−5−アザシトシン、6−アザシチジン、クラドリビン、6−メルカプトプリン、ペントスタチン、6−チオグアニン及びリン酸フルダラビンが挙げられる。
又、抗新生物薬として、例えばフッ素化ピリミジン、好ましくは5−フルオロウラシルが挙げられる。Aは好ましくは5−フルオロウラシルである。
A又はBの少なくとも1つは抗炎症剤であってもよく、例えば非ステロイド系抗炎症性(ジクロフェナク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、ナウムストン、ナプロキセン、ピロキシカム等)又はグルココルチコイド(アクロメタゾン、ベクロメサゾン、ベタメサゾン、ブデソニド、クロベタゾール、クロベタゾン、コーチゾン、デソニド、ジソキシメタソン、ジフロロザン、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノロン、フルオコルトロン、フルプレドニデン、フルランドレノリド、フルチカゾン、ハイドロコーチゾン、メチルプレドニソロンアセポネート、フランカルボン酸モメタゾン、プレドニソロン、プレドニゾン及びロフレポニド等)等が挙げられる。
好ましくは、Aは5−フルオロウラシル等の抗新生物性フッ素化ピリミジンであり、Bはフルオシノロンアセトニド、トリアムシノロンアセトニド、ジクロフェナク又はナプロキセン等の抗炎症剤である。
【0013】
本発明のプロドラッグは、フルオシノロンアセトニドと共有結合している5FU(III)、ナプロキセンと共有結合している5FU(IV)及びジクロフェナクと共有結合している5FU(V)から選ばれてもよい。プロドラッグとして;
【化1】

5FU−フルシノロンアセトニド(III)、
【化2】

5FU−ナプロキセン(IV)及び
【化3】

5FU−ジクロフェナク(V)が挙げられる。
【0014】
又本発明は、被覆された医療用装置に関する。例えば本発明は、少なくとも1つの表面に付着した、本発明のポリマーマトリックス及び低溶解性プロドラッグを含む皮膜を有する医療用装置を提供する。このような皮膜は、ねじ、平板、ワッシャー、縫合糸、係留仮骨、鋲、ステープル、導線、弁膜、膜等の外科移植用装置に適用できる。装置は、カテーテル、移植用血管結合部材、血液貯蔵袋、血液チューブ、中心静脈カテーテル、動脈カテーテル、代用血管、大動脈内バルーンポンプ、心臓弁膜、心臓血管の縫合糸、人工心臓、ペースメーカー、心室補助ポンプ、体外装置、血液フィルター、血液透析ユニット、血液吸着ユニット、血漿交換ユニット及び血管内配置用フィルターであってもよい。
好ましくは、本発明の皮膜は血管用ステントに適用できる。特にステントは拡張可能であり、皮膜はステントの圧縮又は拡張状態に応じる柔軟性(可撓性)を備えていてもよい。
プロドラッグに寄与する皮膜の重量は、上記ポリマーマトリックスで被覆された表面1cm2あたりプロドラッグが例えば約0.05〜50mg、好ましくは5〜25mg/cm2である。
皮膜は5〜100μmの厚さであってもよい。
プロドラッグは皮膜中に皮膜重量の例えば5〜70重量%、好ましくは25〜50重量%で存在してもよい。
【0015】
本発明は又、患者の管腔内組織を処置する方法を提供する。通常、その方法は、(a)内側表面及び外側表面を有するステントであり、内側表面、外側表面又はその両方の少なくとも一部に皮膜を有し、上記皮膜は生体適合性のあるポリマー中に溶解され又は分散された低溶解性医薬プロドラッグを有するステントを用意し;(b)適当な管腔内組織部位にステントを設置し;(c)ステントを設置するステップを有する。
本発明は又、生体内に設置された医療用装置の表面からのドラッグデリバリー用コーティング組成物に関する。上記組成物は上記ポリマーマトリックス及び低溶解性プロドラッグを含有する。コーティング組成物は、噴霧及び/又は上記組成物中への装置の浸漬により医療用装置表面へ被覆するために液状又は懸濁状で提供できる。
又、本発明のコーティング組成物は、噴霧及び/又は上記組成物中への装置の浸漬により上記医療用装置表面へ被覆するために、溶媒の添加で液状又は懸濁状に戻すことの出来る粉状で提供できる。
本発明は又、患者へのドラッグデリバリー用注射用組成物に関する。組成物は、上記ポリマーマトリックス及び低溶解性プロドラッグを含有し、注射での投与用に液状又は懸濁状で提供できる。
本発明は、更に下記詳細な説明により当業者に容易に把握される。尚、下記記載は本発明の好ましい例であり、本発明の実施を最も好ましい態様で記載したものに過ぎない。従って、本発明の範囲内で様々な観点から本発明の変更が可能である。このように、本図面及び明細書は、例示として用いられるべきであり本発明を限定するものではない。
【0016】
ここで使用される「活性」は治療的又は薬理的活性を言う。
「ED50」は、反応又は効果の最大値の50%を生じる薬の量を言う。
「IC50」は、生物学的活性の50%を抑制する薬の量を言う。
「LD50」は、被験体の死亡率が50%である薬の量を言う。
「治療指数」は、LD50/ED50で定義される薬の治療指数を言う。ここで、被験方法の対象である「患者」又は「被験体」は、ヒトもヒト以外の動物も言う。
「生理学的条件」は、例えば生体内等の有機的組織体中の条件を言う。生理学的条件として、体腔及び有機的組織体の酸性及び塩基性環境、酵素的開裂、新陳代謝及び他の生物学的プロセスが挙げられ、好ましくはほ乳類等の脊椎動物中の生理学的条件を言う。
「LogP」はP(分配係数)の対数を言う。Pは、脂質(油)及び水間の物質分配の行なわれやすさの指標である。P自身は定数である。それは、中性分子である非混合性溶媒中の組成物濃度に対する水相中の組成物濃度の割合として定義される。
分配係数P=[有機性]/[水性](但し、[]は濃度を表す。)
LogP=log10(分配係数)=log10
実際には、LogP値は、測定条件及び分配する溶媒の選択により変わってくる。1のLogP値は、組成物濃度が有機相中で水相中より10倍大きいことを示す。1のlogP値の増加は、水相と比べて有機相中での組成物濃度の10倍が増加することを示す。従って、3のlogP値を有する組成物は、4のlogP値を有する組成物の10倍水溶性であり、3のlogP値を有する組成物は、5のlogP値を有する組成物の100倍水溶性である。通常、7〜10のlogP値を有する組成物は低溶解性組成物である。
【0017】
本発明は、例えば投薬量及び/又は投薬時間の異なった種々の放出形式を有するドラッグデリバリーシステムを提供する。本発明は、内挿可能、注射可能、吸入可能又は移植可能であるドラッグデリバリーシステムが、特に薬が作用する対象部位に隣接した部位での薬の持続的放出の速度が制御でき、公知技術の装置では付き物だった合併症を回避できる要求を満たすものである。
本発明のシステムは、ポリマー及び低溶解性ポリマー中に分散されたプロドラッグを有する。本発明のポリマーは、プロドラッグを透過してポリマーからプロドラッグの放出速度を実質的に制限せず、薬の持続的放出を確保できる。
本発明のシステムは、一旦設置されるとそれら部位への再度の侵襲的内挿の必要無しに作用の対象部位へプロドラッグを連続的に供給する。設置されたシステムは体内に保持され、作用部位へのプロドラッグの連続的供給源として働く。本発明のシステムは、プロドラッグが使い果たされるまで、数日、数週、数月(例えば、約3〜約6月)又は数年(例えば、約1〜約20年、約5〜約10年等)間に渡る特定期間の薬を持続的に放出できる。
【0018】
本発明の管腔内医療用装置は、持続的放出用ドラッグデリバリー皮膜を有する。本発明のステント皮膜は、含浸被覆、噴霧被覆及び浸漬被覆等の従来の被覆プロセスによりステントへ被覆される。
上記管腔内医療用装置として、ステントの縦軸にそって伸びている内部管腔表面及び反対側の外側表面を有し、(縦軸を中心に)放射状に拡張可能な管状ステントが挙げられる。このステントは、永久的移植用ステント、移植用グラフトステント又は一時的ステントでもよい。ここで一時的ステントとは、管内で拡張可能であるため(処置終了後に)管から引き抜くことが出来るステントである。ステントの構造としては、コイルステント、メモリーコイルステント、ニチノール(形状記憶合金)ステント、メッシュステント、スカフォールドステント、スリーブステント、透過性ステント、温度検知器付きステント、多孔性ステント等が挙げられる。ステントは、拡張可能なバルーンカテーテル、(カテーテルから放出された後の)自己展開機構、その他の適当な手段等の従来法により設置されてもよい。(縦軸を中心に)放射状に拡張可能な管状ステントはグラフトステントでもよく、このグラフトステントとは、グラフトの内側又は外側にステントを有する複合装置である。グラフトは、ePTFEグラフト、生物学的グラフト又は織編物グラフト等の代用血管でもよい。
本発明の配合物は、種々の方法でステント上に結合又は付着できる。例えば、配合物は、直接ポリマーマトリックスに結合されても、ステントの外側表面に噴霧されてもよい。配合物はポリマーマトリックスから徐々に溶出し、周囲の体組織に入り込む。配合物は好ましくは少なくとも3日から約6月、更に好ましくは7〜30日間ステント上に保持される。
プロドラッグは、徐々に体液中で溶解するが、体液中に溶解する際に比較的素早く分離して少なくとも1つの薬理的活性化合物を生じる。プロドラッグの溶解速度は、例えば約0.001〜約10μg/日、好ましくは約0.01〜約1μg/日、更に好ましくは約0.1μg/日である。
【0019】
本発明の低溶解性(医薬)プロドラッグは、生体親和性の(例えば、生体適合性のある)ポリマー(ビヒクル)と共に使用される。本発明の低溶解性医薬プロドラッグは、上記ポリマービヒクル中に分散した複数粒子として存在していても良い。この場合、低溶解性医薬プロドラッグは比較的ポリマービヒクルに不溶性であることが好ましいが、本発明の範囲内であればポリマービヒクルに対して限られた溶解性係数を有していてもよい。どちらの場合でも、低溶解性医薬プロドラッグのポリマービヒクルへの溶解性は、プロドラッグが実質的な粒子状を維持しつつポリマービヒクル中に分散する程度である。
一方、本発明の低溶解性医薬プロドラッグはポリマービヒクル中に溶解してもよい。その場合、ポリマービヒクルは、比較的疎水性の低溶解性医薬プロドラッグに対して良溶媒として働く比較的非極性又は疎水性のポリマーであることが好ましい。この場合、ポリマービヒクル中の低溶解性医薬プロドラッグの溶解性は、プロドラッグがポリマービヒクル中に完全に溶解し、ポリマービヒクル中に均一に分散する程度である。
本発明のポリマーは、プロドラッグを透過し、ポリマーからのプロドラッグの放出速度に対する主要な速度決定要因ではない程度に透過性を有する生体適合性のあるポリマーであればどのようなものでもよい。
【0020】
本発明において、ポリマーは非生体吸収性でもよい。本発明で使用できる非生体吸収性ポリマーとして、ポリ(エチレン−コビニルアセテート)(EVA)、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリカーボネート−ベースポリウレタン等が挙げられる。又、本発明のポリマーは生体吸収性でもよい。本発明の生体吸収性ポリマーとして、ポリ(アンハイドライド)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、オルトカルボン酸エステルポリマー、ポリアルキルシアノアクリレート又はそれらの誘導体及びコポリマーが挙げられる。当業者は、ポリマーの生体吸収性又は非生体吸収性の選択は、下記詳細な記載のとおりシステムの最終的な物理的構成によって定まることが理解できる。本発明のその他のポリマーとして、ポリシリコーン及びヒアルロン酸由来のポリマーが挙げられる。当業者なら、本発明のポリマーはポリマーからの低溶解性プロドラッグの放出に対する主要な速度決定要因とはならない透過性を有するために好ましい条件で調製されることが理解できるだろう。
更に、好ましいポリマーとして、ポリマーが接触する予定の体液中に実質的に不溶か、生物学的に体液及びほ乳類体組織と適合性のある天然材料(コラーゲン、ヒアルロン酸等)又は合成材料が挙げられる。本発明のポリマーは、ポリマー中に分散又は懸濁された低溶解性プロドラッグと体液中のタンパク質化合物との間の相互作用を実質的に阻止できることが好ましい。体液へ急速に溶解するポリマー、体液へ高溶解性を有するポリマー又は低溶解性プロドラッグとタンパク質化合物との相互作用を起こさせるポリマーの使用は、ポリマーの溶解又は(プロドラッグと)タンパク質化合物との相互作用が薬の放出の一定性に影響するため避けるべき場合がある。
他の好ましいポリマーとして、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンビニルアセテート(PVA又はEVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリカルボン酸、ポリアルキルアクリレート、セルロースエーテル、シリコーン樹脂、ポリ(dl−ラクチド−コグリコリド)、種々の商品名Eudragit(ファルマポリマーズ社製、例えば、NE30D、RSPO及びRLPO)、ポリアルキルアルキルアクリレートコポリマー、ポリエステルポリウレタンブロックコポリマー、ポリエーテルポリウレタンブロックコポリマー、ポリジオキサノン、ポリ(β−ヒドロキシブチレート)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸及びPEO−PLAコポリマーが挙げられる。
【0021】
本発明の皮膜は、1以上の好ましいモノマー及び好ましい低溶解性プロドラッグを混合し、次にモノマーを重合してポリマーシステムを形成して被覆されても良い。この方法で、プロドラッグはポリマー中に溶解又は分散される。本発明の他の例として、プロドラッグをリキッドポリマー又はポリマー分散体中に混合し、ポリマーを更に処理して本発明の皮膜を形成してもよい。上記処理としては、適当な架橋プロドラッグとの架橋、リキッドポリマー又はポリマー分散体の再重合、適当なモノマーとの共重合、適当なポリマーブロックとのブロック共重合等が好ましく挙げられる。更に処理として、ポリマー中に薬を内包して、ポリマービヒクル中で薬が分散又は懸濁されるようにしてもよい。
本発明の種々の非生体吸収性ポリマーは配合薬と共に使用できる。本発明で被覆に使用する皮膜形成用ポリマーは、生体吸収性又は非生体吸収性のどちらでもよいが、管壁への刺激を最小化するために少なくとも生体適合性を有する必要がある。ポリマーは、目的とする放出速度又は目的とするポリマー安定性の程度に応じて生体的に安定(非生体吸収性)又は生体吸収性であってもよい。しかし、生体的に安定なポリマーと違い、生体吸収性ポリマーは移植後に長期間存在しないので慢性の局所反応を引き起こす悪影響を与えないため好ましい。更に、生体吸収性ポリマーには、ステントが体内組織中に内包された後でさえ、皮膜を除去して更に問題を発生させるような生物学的環境のストレスにより引き起こされるステント及び皮膜間の接着損失の発生する危険性がない。
【0022】
使用できる好ましい皮膜形成用生体吸収性ポリマーとして、ポリマー脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテルエステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリアミド、ポリ(イミノカーボネート)、オルトカルボン酸エステルポリマー、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミド基含有ポリオキサエステル、ポリ(アンハイドライド)、ポリフォスファゼン、生体分子及びこれらの混合物から選ばれるものが挙げられる。本発明の脂肪族ポリエステルとしてラクチド(d−、l−乳酸及びメソラクチドを含む)のホモポリマー及びコポリマー、ε−カプロラクトン、グリコリド(グリコール酸を含む)、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、p−ジオキサノン、トリメチレンカーボネート(及びそのアルキル誘導体)、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン及びそれらのポリマーブレンドが挙げられる。本発明のポリ(イミノカーボネート)としては、Kemnitzer及びKohn著「生体吸収性ポリマーハンドブック」Domb、Kost及びWisemen編集、Hardwood Academic Press、1997、251-272頁に記載されたものが挙げられ、本発明のコポリ(エーテルエステル)としては、Cohn、Younes及びCohn、Journal of Biomaterials Research、22巻、993-1009頁、1988、Polymer Preprints(ACS Division of Polymer Chemistry)30巻(1)、498頁、1989(例えばPEO/PLA)に記載されたコポリエステルエーテルが挙げられる。本発明のポリアルキレンオキサレートとしては、米国特許番号第4208511、4141087、4130639、4140678、4105034及び4205399号(ここで資料として使用する。)に記載されたものが挙げられる。ポリフォスファゼン及び、L−ラクチド、D、L−ラクチド、乳酸、グリコリド、グリコール酸、p−ジオキサノン、トリメチレンカーボネート及びε−カプロラクトン等から調製される、コモノマー、タモノマー、高級混合モノマーベースのポリマーは、Allcockポリマー科学事典、13巻、3141頁、Wiley Intersciences、John Wiley&Sons、1988並びに、Vandorpe、Schacht、Dejardin及びLemmouchi著、「生体吸収性ポリマーハンドブック」Domb、Kost及びWisemen編集、Hardwood Academic Press、1997、161-182頁(ここで資料として使用する。)に記載されている。HOOC−C64−O−(CH2m−O−C64−COOH(ここで、mは2〜8の整数)の形のジカルボン酸からのポリ(アンハイドライド)、それらの12未満の炭素原子の脂肪族α−ωジカルボン酸とのコポリマー。ポリオキサエステル、ポリオキサアミド及びアミン及び/又はアミド基を含有するポリオキサエステルは、下記米国特許番号第5464929、5595751、5597579、5607687、5618552、5620698、5645850、5648088、5698213及び5700583号の少なくとも1つに記載されている(ここで資料として使用する。)。オルトカルボン酸エステルポリマー等は、Heller著「生体吸収性ポリマーハンドブック」、Domb、Kost及びWisemen編集、Hardwood Academic Press、1997、99−118頁(ここで資料として使用する。)に記載されている。本発明の皮膜形成用ポリマー性生体分子として、更にフィブリン、フィブリノーゲン、コラーゲン、エラスチン及びキトサン、澱粉、脂肪酸(及びそのエステル)、グルコソ−グリカン及びヒアルロン酸等の吸収性生体親和性ポリサッカリド等の、酵素により人間の体内で劣化するか、人間の体内では加水分解的に不安定な天然材料が挙げられる。
【0023】
体組織の慢性反応が比較的低い皮膜形成用の生体的に安定な(非生体吸収性)ポリマーとして、好ましくはポリウレタン、シリコーン樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリアルキルオキシド(ポリエチレンオキシド)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール及びポリビニルピロリドン等と同様に、架橋ポリビニルピロリジノン及びポリエステルから形成されるヒドロゲルも使用できる。他のポリマーでもステント上で溶解、硬化又は重合出来るものであれば同様に使用できる。それらとして、ポリオレフィン、ポリイソブチレン及びエチレン−α−オレフィンコポリマー;アクリル系ポリマー(メタクリレートを含む)及びコポリマー、ポリ塩化ビニル等のハロゲン系ビニルポリマー及びコポリマー;ポリビニルメチルエーテル等のポリビニルエーテル;フッ化ポリビニリデン及び塩化ポリビニリデン等のハロゲン系ポリビニリデン;ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン;ポリスチレン等の芳香族系ポリビニル;ポリビニルアセテート等のポリビニルエステル;エチレン−メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリルスチレンコポリマー、ABS樹脂及びエチレン−ビニルアセテートコポリマー等のビニルモノマーと他のオレフィンとのコポリマー;ナイロン66及びポリカプロラクタム等のポリアミド;アルキド樹脂;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリイミド;ポリエーテル;エポキシ樹脂、ポリウレタン;レーヨン;レーヨン−トリアセテート、セルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート;セロファン;ニトロセルロース;セルロースプロピオネート;セルロースエーテル(例えば、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシアルキルセルロース);及びそれらの組み合わせが挙げられる。本発明のポリアミドとして、−NH−(CH2n−CO−及びNH−(CH2x−NH−CO−(CH2y−CO(ここで、nは好ましくは6〜13の整数;xは6〜12の整数;yは4〜16の整数である。)の形のポリアミドが挙げられる。上記記載は例示であり、本発明を限定するものではない。
【0024】
本発明の皮膜に使用されるポリマーは、ワックス状又は粘着状でないほどの高い分子量を有する皮膜形成用ポリマーである。ポリマーは又、ステントに付着するが、ステント上への付着後に血圧により分離するほど容易に変形可能であってはならない。ポリマー分子量は、ステントを取り扱い、設置する間ポリマーがこすり取られず、ステントの拡張時にひび割れを生じない程度に充分な耐久性を示すほど高くなければならない。ポリマーの融点は40℃を超え、好ましくは約45℃を超え、更に好ましくは50℃を超え、特に好ましくは55℃を超える。
皮膜は、1以上の治療用プロドラッグをコーティング混合物のコーティングポリマーと混合することにより形成してもよい。治療用プロドラッグは、液体、微細状の固体、又は他の適当な物理的形状でも良い。混合物は、任意に例えば希釈剤、キャリア、賦形剤、安定剤等の非毒性補助剤等の添加物を1以上含有してもよい。他の好ましい添加物もポリマー及び薬理的活性プロドラッグ又は組成物へ配合出来る。例えば、上記記載の生体適合性皮膜形成用ポリマーから選ばれた親水性ポリマーも、生体適合性疎水性皮膜へ添加して目的の放出態様が得られるように改質できる(又、疎水性ポリマーも親水性皮膜に添加され目的の放出グラフを得られるように改質できる。)。例えば、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース及びそれらの組み合わせの群から選ばれる親水性ポリマーを脂肪族ポリエステル皮膜へ添加し、目的の放出態様が得られるように改質できる。適当な相対量は、生体外及び/又は生体内での治療用プロドラッグの放出態様を監視して決定できる。
【0025】
皮膜厚みは、作用薬又はプロドラッグがマトリックスから溶出する速度、特に作用薬又はプロドラッグがポリマーマトリックスを通って拡散によりマトリックスから溶出する速度を決定できる。ポリマーは透過性であるため、固体、液体及び気体がそこから排出することができる。ポリマーマトリックスの合計厚みは、約1ミクロン〜約20ミクロン以上である。プライマー(下塗り)層及び金属表面処理をポリマーマトリックスが医療用装置に付着される前に行なえることは重要である。例えば、酸洗浄、アルカリ(塩基)洗浄、塩処理及びパリレンデポジションは、上記記載の全プロセスの一部として行なうことが出来る。
本発明の皮膜は複数の皮膜も使用できる。種々の皮膜は、例えばプロドラッグの濃度、プロドラッグ(作用成分、リンカー等)の内容、ポリマーマトリックスの性質(構成、多孔性等)及び/又は他の薬若しくは放出改質剤の存在等によって異なるものが使用できる。
【0026】
本発明では、ポリ(エチレン−コビニルアセテート)、ポリブチルメタクリレート及び配合物溶液が種々の方法でステント中及び外に適用できる。例えば溶液がステント上に噴霧されてもよく、ステントが溶液に浸漬されてもよい。他の方法としては、スピンコーティング及びRFプラズマ重合が挙げられる。例えばステント上に溶液が噴霧され、次に乾燥される。他の例として、溶液は正又は負に帯電されてステントはその反対の極に帯電され、溶液及びステントは互いに引き寄せられる。この噴霧プロセス法を使用すると、無駄が少なく得られる被覆の厚みをより精密に制御できる。
又、本発明の配合物又は他の治療用プロドラッグは、重合されたフッ化ビニリデン及び重合されたテトラフルオロエチレンの群から選ばれる第1成分、並びに第1成分以外の第1成分と共重合されてポリフルオロコポリマーを生成する第2成分を含有する皮膜形成用ポリフルオロコポリマーと共に使用されてもよい。上記第2成分はポリフルオロコポリマーへ耐久性又はエラストマー性を付与できるため、第1成分及び第2成分のそれぞれの合計は、皮膜を形成し、形成された皮膜へ移植用医療用装置の取り扱いに適した性質を与えることができる。
【0027】
本発明の管腔内医療用装置の拡張可能な管状ステントの外側表面は、本発明の皮膜を有してもよい。皮膜を有するステントの外側表面は、体組織接触用表面であり、生体適合性を有する。「持続的放出用ドラッグデリバリーシステムで被覆された表面」とは、「被覆された表面」と同義であり、その表面は、本発明の持続的放出用ドラッグデリバリーシステムが被覆され、被覆されるか浸漬されている。
又、本発明の管腔内医療用装置で、(縦軸を中心に)放射状に拡張可能な管状ステントの内部管腔表面又は全表面(即ち内側及び外側両方の表面)は被覆された表面を有する。本発明の持続的放出用ドラッグデリバリーシステム皮膜を有する内部管腔の表面は、流体接触表面であり、生体適合性及び血液適合性がある。
米国特許番号第5773019、6001386及び6051576号には、移植用の放出が制御された装置及び薬が記載されており、ここでそれら全てを資料として使用する。本発明の表面被覆ステントの製造プロセスは、例えば、浸漬被覆又は噴霧被覆による皮膜のステントへの付着工程を有する。ステントの片側被覆の場合、被覆される表面のみが、浸漬又は噴霧を受ける。処理された表面は、管腔内医療用装置の内部管腔表面、外側表面、又は内側及び外側表面の両方の全部又は一部のいずれでもよい。ステントは、適用されるステント表面上又は表面内部の複数の細孔中への付着又は皮膜を促進するため多孔質材料で構成されてもよい。ここで、細孔の大きさは、好ましくは約100ミクロン以下である。
【0028】
再狭窄及び新内膜性異常増殖(neointimal hyperplasia)の処理に関する問題は、医療用装置の被覆に使用される医薬プロドラッグの選択により対処できる。本発明で選択される医薬プロドラッグは、低溶解性成分であり少なくとも2つの薬理的活性(医薬)化合物を含有してもよい。薬理的活性化合物は同一又は異なる化学的種類であってもよく、必要に応じて等モル又は非等モル濃度で形成され、組成物の関連する活性作用及び他の薬物動態学的性質に基づいた最適な処理を行なうことができる。配合物、特にコドラッグ配合物が使用される場合には、それ自身が体液、血液及び血漿等に比較的不溶性であることが好ましく、体液中に溶解された場合には薬理的活性化合物の幾つか又は全てを再生する性質を有する。言い換えると、低溶解性プロドラッグが体液中に溶解する限り、それは溶解により素早く効率よく薬理的活性化合物構成要素へ転化される。このような医薬プロドラッグの低溶解性は管腔内病変に隣接した部位でのプロドラッグの残留性を確実なものとする。低溶解性医薬プロドラッグの薬理的活性化合物構成物質への素早い転化は、処理されるべき病変部位の近くへの薬理的活性化合物の安定して制御された投与量を確実なものとする。
第1薬理的活性化合物の好ましい例として、シクロスポリンA及びFK506等の免疫応答変更遺伝子、デクサメタゾン、フルオシノロンアセトニド及びトリアムシノロンアセトニド等のコルチコステロイド、トリヒドロキシステロイド等の血管形成阻害性ステロイド、シプロフロキサシン等の抗生物質、レチノイド(例えば、trans−レチノイン酸、cis−レチノイン酸及び異性体)等の分化調節剤、5−フルオロウラシル(5FU)及びBCNU等の抗ガン性/抗増殖性物質プロドラッグ、並びにナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン及びフルルビプロフェン等の非ステロイド系抗炎症性プロドラッグが挙げられる。
本発明において、好ましい第1薬理的活性化合物は5FUである。
【0029】
【化4】

5−フルオロウラシル(5FU)
【0030】
第2薬理的活性化合物の好ましい例として、シクロスポリンA及びFK506等の免疫応答変更遺伝子、デクサメタゾン、フルオシノロンアセトニド及びトリアムシノロンアセトニド等のコルチコステロイド、トリヒドロキシステロイド等の血管形成阻害性ステロイド、シプロフロキサシン等の抗生物質、レチノイド(例えば、trans−レチノイン酸、cis−レチノイン酸及び異性体)等の分化調節剤、5−フルオロウラシル(5FU)及びBCNU等の抗ガン性/抗増殖性物質プロドラッグ、並びにナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン及びフルルビプロフェン等の非ステロイド系抗炎症性プロドラッグが挙げられる。
本発明において、第2薬理的活性化合物は、好ましくはフルオシノロンアセトニド、トリアムシノロンアセトニド、ジクロフェナク及びナプロキセンから選ばれる
【0031】
【化5】

トリアムシノロンアセトニド
【0032】
【化6】

ジクロフェナク
【0033】
【化7】

ナプロキセン
【0034】
本発明の低溶解性薬理的活性プロドラッグは、更に残りの薬理的活性化合物を含有してもよい。
更なる薬理的活性化合物の例として、シクロスポリンA及びFK506等の免疫応答変更遺伝子、デクサメタゾン、フルオシノロンアセトニド及びトリアムシノロンアセトニド等のコルチコステロイド、トリヒドロキシステロイド等の血管形成阻害性ステロイド、シプロフロキサシン等の抗生物質、レチノイド(例えば、trans−レチノイン酸、cis−レチノイン酸及び異性体)等の分化調節剤、5−フルオロウラシル(5FU)及びBCNU等の抗ガン性/抗増殖性物質プロドラッグ、並びにナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン及びフルルビプロフェン等の非ステロイド系抗炎症性プロドラッグが挙げられる。
低溶解性医薬プロドラッグは、少なくとも2の薬理的活性化合物成分を含んでいても良く、それらは共有結合型での結合、リンカーを通しての接合、イオン結合をしてもよく、混合物として組み合わされてもよい。
【0035】
本発明において、第1及び第2薬理的活性化合物は共有結合型で互いに直接結合してもよい。
第1及び第2薬理的活性化合物が共有結合で互いに直接結合している場合、結合はそれぞれの活性化合物の活性基を通した適当な共有結合により形成される。例えば、第1薬理的活性化合物上の(カルボン)酸基は、第2薬理的活性化合物上のアミン基、(カルボン)酸基又は水酸基と縮合して、それぞれ対応するアミド、無水物又はエステルを形成してもよい。
更にカルボン酸基、アミン基及び水酸基に加えて、薬理的活性成分との結合を形成するための他の好ましい活性基として、スルホニル基、メルカプト基及びハロ酸(haloic acid)及びカルボン酸の酸無水物誘導体が挙げられる。
本発明の薬理的活性化合物は又、中間リンカーを通して互いに共有結合型で結合してもよい。リンカーは好ましくは2つの活性基を有し、その内の一つは第1薬理的活性化合物上の活性基と共有結合し、他の一方は第2薬理的活性化合物上の活性基と共有結合する。例えば、第1及び第2薬理的活性化合物両方がフリーの水酸基を有する場合、リンカーは、好ましくは両方の組成物と反応して2つの更なる化合物間に2つのエステル結合を形成するジ(カルボン)酸である。カルボン酸基、アミン基及び水酸基に加えて、薬理的活性成分間に結合を形成する他の好ましい活性基として、スルホニル基、メルカプト基及びハロ酸及びカルボン酸の酸無水物誘導体が挙げられる。
好ましいリンカーは、下記表1に示される。
【0036】
【表1】

【0037】
好ましいジカルボン酸リンカーとして、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸が挙げられる。ジカルボン酸が挙げられたが、当業者は、特定の条件では、対応する酸ハロゲン化物又は酸無水物(1のカルボン酸基のみ又は両方のカルボン酸基の)もリンカーリプロドラッグとして好ましいことが理解できる。好ましい無水物は、コハク酸無水物である。又、マレイン酸無水物も好ましい無水物である。他の酸無水物及び/又は酸ハロゲン化物も当業者により効果的に使用される。
好ましいアミノ酸として、γ−酪酸、2−アミノ酢酸、3−アミノプロピオン酸、4−アミノ酪酸、5−アミノペンタン酸、6−アミノヘキサン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリンが挙げられる。更に、好ましいアミノ酸のカルボン酸基は、リンカー基として使用される前に無水物又は酸ハロゲン化物の形に転換されていても良い。
【0038】
好ましいジアミンとして、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサンが挙げられる。
好ましいアミノアルコールとして、2−ヒドロキシ−1−アミノエタン、3−ヒドロキシ−1−アミノエタン、4−ヒドロキシ−1−アミノブタン、5−ヒドロキシ−1−アミノペンタン、6−ヒドロキシ−1−アミノヘキサンが挙げられる。
好ましいヒドロキシ脂肪族カルボン酸として、2−ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、4−ヒドロキシ酪酸、5−ヒドロキシペンタン酸、5−ヒドロキシヘキサン酸が挙げられる。
当業者であれば、好ましい活性基を有する第1及び第2薬理的成分(更に所望により第三の薬理的成分等)を選択して、それらを好ましいリンカーに適合させることにより、広い種類の組成物が本発明の範囲として調製出来ることが理解できる。
好ましい低溶解性薬理的活性プロドラッグとして、フルオシノロンアセトニドと共有結合している5FU、ジクロフェナクと共有結合している5FU及びナプロキセンと共有結合している5FUが挙げられる。具体例を下記に示す。
【0039】
【化8】

5FU−フルオシノロンアセトニド(オキサレートリンカーを介する)
【0040】
【化9】

5FU−ナプロキセン
【0041】
【化10】

5FU−ジクロフェナク
【0042】
他のコドラッグの具体例を下記に示す。
【化11】

5−TC−70.1(フルオシノロンアセトニド−5FU(ホルムアルデヒド結合を介する)コドラッグ)
【0043】
【化12】

5−TC−63.1(ナプロキセン−フロクシウリジン(oxa acid結合を介する)コドラッグ)
【0044】
【化13】

3−TC−112(ナプロキセン−5FU(ホルムアルデヒド結合を介する)コドラッグ)
【0045】
【化14】

G−427.1(トリアムシノロンアセトニド−5FU(直接的)コドラッグ)
【0046】
【化15】

TC−32(トリアムシノロンアセトニド及び5FU(ホルムアルデヒド結合を介する)コドラッグ)
【0047】
第1及び第2薬理的活性化合物を種々の異なる結合で組み合わせているコドラッグの例を下記に示す。
【化16】

フロクシウリジン及びジクロフェナクのコドラッグ(1:1)
【0048】
【化17】

フロクシウリジン及びジクロフェナクのコドラッグ(1:2)
【0049】
【化18】

フロクシウリジン及びフルオシノロンアセトニドのコドラッグ(1:1)
【0050】
【化19】

フロクシウリジン及びフルオシノロンアセトニドのコドラッグ(1:1)
【0051】
【化20】

フロクシウリジン及びフルオシノロンアセトニドのコドラッグ(1:1)
【0052】
【化21】

フロクシウリジン及びナプロキセンのコドラッグ(1:1)
【0053】
【化22】

フロクシウリジン及びナプロキセンのコドラッグ(1:2)
【0054】
本発明では又、第1薬理的活性化合物及び第2薬理的活性化合物を組み合わせて塩を形成しても良い。例えば第1薬理的活性化合物が酸であり、第2薬理的活性化合物がアミン等の塩基であってもよい。好ましい例として、第1薬理的活性化合物はジクロフェナク又はナプロキセン(酸基を有する)、第2薬理的活性化合物はシプロフロキサシン(塩基性基を有する)である組み合わせが挙げられる。例えばジクロフェナク及びシプロフロキサシンの組み合わせは下記塩を形成する。
【0055】
【化23】

シプロフロキサシン−ジクロフェナク
【0056】
本発明のシステムが定量的に又は実質的に一定等の所望の態様でプロドラッグを供給するために、薬の溶解性及びポリマーの透過性は、ポリマーの透過性が薬の投与において主な律速要因とならないように調整されることができる。その結果、プロドラッグの放出速度は、プロドラッグが周囲の水性溶媒へ溶解される速度と実質的に同じになる。この放出速度は、時間に対してほとんど直線的に一定(即ち零次反応)である。
本発明のシステムは、1以上の適当なモノマー及び適当な低溶解性医薬プロドラッグを混合し、モノマーを重合してポリマーシステムを製造することにより形成できる。この方法で、プロドラッグはポリマー中に溶解され又は分散される。又、プロドラッグをリキッドポリマー又はポリマー分散体と混合した後、ポリマーを更に加工して本発明のシステムを形成してもよい。適当な加工として、適当な架橋用プロドラッグとの架橋、リキッドポリマー又はポリマー分散体の再重合、適当なモノマーとの共重合、適当なポリマーブロックとのブロック共重合等が挙げられる。更に、薬がポリマービヒクル中に分散又は懸濁されるようにポリマー中に薬を捕捉する加工も挙げられる。
【0057】
本発明のポリマー形成用モノマーは、本発明の低溶解性組成物と組み合わされ、混合されてモノマー溶液中で本発明の組成物の均一な分散体を形成する。分散体は、次に従来の被覆プロセスによりステントへ適用される。その後、UV光照射等の通常のイニシエーターにより架橋プロセスが開始される。又、本発明のポリマー組成物と低溶解性組成物とを組み合わせて分散体を形成し、その分散体をステントへ適用してポリマーを架橋して固体皮膜を形成してもよい。本発明のポリマー及び低溶解性組成物は又、適当な溶媒と組み合わせて分散体を形成し、その分散体を従来法によりステントへ適用してもよい。次に溶媒を加熱蒸発等の従来のプロセスにより除去すると、本発明のポリマー及び低溶解性薬は(共に持続的放出用ドラッグデリバリーシステムを形成して)ステント上に皮膜として留まる。本発明の低溶解性薬理的組成物がポリマー構成物中に溶解される場合にも同様のプロセスが使用できる。
【0058】
本発明のシステムは、比較的硬質のポリマーを含有してもよい。本発明のシステムは又、軟質で柔軟なポリマーを含有してもよい。更に、本発明のシステムは粘着性を有するポリマーを含有してもよい。ポリマーの硬度、弾性、粘着性及び他の性質は、下記記載のようにシステムの特定の最終的物理的形状により様々に異なるものである。
本発明のシステムとして、多くの異なる形状が挙げられる。システムは、例えばポリマー中に分散又は懸濁されたプロドラッグ等の低溶解性プロドラッグから構成されてもよい。本発明のシステムは又、シリンジを通って体内へ注射されて使用されるプロドラッグ及び半固体状又はゲル状ポリマーで構成されても良い。本発明のシステムは又、適当な外科手術により体内へ内挿されるか移植されて使用される、プロドラッグ及び軟質可撓性ポリマーで構成されても良い。本発明のシステムは又、適当な外科手術により体内へ内挿されるか移植されて使用される硬質固体ポリマーで構成されても良い。本発明のシステムは又、低溶解性プロドラッグがその中に分散又は懸濁されている吸入用ポリマーで構成されても良い。本発明のシステムは又、プロドラッグがその中に分散又は懸濁されたポリマーを含み、プロドラッグ及びポリマーの混合物は、ねじ、ステント、ペースメーカー等の外科用器具等の上の皮膜を形成するものでも良い。本発明の装置は、外科用ねじ、平板、ステント等の外科用器具等又はそれらの部分の形状に成形されている硬質固体ポリマーからなるものでも良い。本発明のシステムは又、縫合糸の形状をしており、その中に分散又は懸濁された薬を有するポリマーでもよい。
【0059】
本発明は、外側表面等の表面を有する基材及びその外側表面上の皮膜を有する医療用装置を提供する。皮膜は、ポリマー及びポリマー中に分散された低溶解性プロドラッグを有し、そのポリマーはプロドラッグを透過してポリマーからのプロドラッグの放出速度を実質的に制限しない。本発明の装置は、適当なポリマー中に分散又は懸濁されたプロドラッグを有し、このプロドラッグ及びポリマーは外科用器具等の基材上を全て被覆している。このような被覆は、噴霧被覆又は浸漬被覆によりなされてもよい。
本発明の装置は又、プロドラッグ及びポリマー懸濁液又は分散体を含有しても良く、この場合ポリマーは硬質であり、体内に内挿されるか移植される装置の構成部分を形成する。本発明の装置は又、分散又は懸濁されたプロドラッグを含有するポリマーで被覆された外科用ねじ、ステント、ペースメーカー等でも良い。本発明のプロドラッグが懸濁されているポリマーは、外科用ねじの先端、頭又はそれらの一部を形成してもよい。本発明のプロドラッグが分散又は懸濁されているポリマーは又、外科用チューブ(人工肛門用チューブ、腹腔洗浄用チューブ(腹腔ドレーン)、カテーテル及び静脈用チューブ等)等の外科用器具上を被覆してもよい。本発明の装置は又、ポリマー及びプロドラッグ(ヘパリン等の抗凝結剤のプロドラッグ等又はそのコドラッグ)がその上に被覆された静脈注射用針でもよい。
【0060】
上記のとおり、本発明の装置は、生体吸収性又は非生体吸収性ポリマーを含むものである。生体吸収性ポリマー又は非生体吸収性ポリマーの選択は、システム又は装置の最終使用目的に応じて行なわれる。本発明のポリマーは、生体吸収性であることが好ましい。本発明のシステムが、例えばねじ、ステント、ペースメーカー等の外科移植用装置上に被覆されている場合、ポリマーは生体吸収性であることが好ましい。本発明のポリマーが生体吸収性であることが好ましい装置として、移植可能、吸入可能、又は注射可能な、プロドラッグのポリマー中の懸濁液又は分散体が挙げられ、その場合更なる構成要素(ねじ又は留め具等)は使用されない。
本発明のポリマーは、透過性及び生体吸収性が共に低いものでも良い。その場合、ポリマーの生体吸収性は薬の放出速度よりも充分遅いため、ポリマーは薬の放出後もかなりの間残留するが、やがては生体に吸収されるか周囲の体組織中に再び吸収されてしまう。装置が生体吸収性ポリマー中に分散又は懸濁された薬を含有する生体吸収性縫合糸である場合、ポリマーの生体に吸収される速度は充分遅いため、薬は約3〜約14日間直線的に一定に放出される一方、縫合糸は約3週間〜約6月間残留する。同様な本発明の装置として、生体吸収性ポリマー中で分散又は懸濁されているプロドラッグを含有する外科用ステープルが挙げられる。
【0061】
本発明のポリマーの生体吸収速度は、薬の放出速度と同じオーダーであってもよい。この場合、本発明のシステムが整形外科用ねじ、ステント、ペースメーカー、又は非生体吸収性縫合糸等の外科用器具上に被覆されているポリマー中に分散又は懸濁されているプロドラッグを含有する場合、そのポリマーは、周囲の体内組織へ直接曝されているプロドラッグの表面領域が時間経過でも実質的に一定で残る程度に生体に吸収される。
本発明のポリマーは、非生体吸収性又は、低溶解性医薬プロドラッグの溶解速度よりも低い速度である範囲内での生体吸収性であり、(プロドラッグ)粒子の直径は、ステントへ被覆された場合、粒子表面が周囲の体組織に曝される程度であってもよい。この場合、低溶解性医薬プロドラッグの溶解は、曝露されている粒子の表面積に比例する。
【0062】
本発明のポリマービヒクルは、血漿等の周囲組織中の水に対して透過性である。この場合、水溶液は、ポリマーに浸透し、低溶解性医薬プロドラッグに接触する。(プロドラッグの)溶解速度は、生理学的流体に関するポリマーの透過性、低溶解性医薬プロドラッグの溶解性、pH、イオン強度及び蛋白質成分等の変数の複雑な組み合わせにより定まる。しかし透過性は調整できるため、溶解速度は主に、又は幾つかの場合には実際的に完全に、周囲の液相中への低溶解性医薬プロドラッグの溶解性により定まる。
本発明のポリマーは非生体吸収性でもよい。非生体吸収性ポリマーは、システムが体内へ永久的又は半永久的に内挿され移植されるために使用される外科用器具上に被覆され又はその構成要素を形成するポリマーを含む場合には、特に有用である。ポリマーが外科用器具上の永久的皮膜を形成する装置として、整形外科用ねじ、ステント、補綴用結合部、人工弁膜、永久的縫合糸、ペースメーカー等が好ましく挙げられる。
【0063】
本発明の外科用システムは、目的とする治療効果のための適切な方法に使用される。本発明の好ましい投与方法として、例えば注射が挙げられる。この場合、システムは液状であり、システムをシリンジ胴体へ吸い上げて対象部位へ注射して、対象部位に投与する。このような投与方法は、抗生物質、抗ウィルス薬及びステロイド等の殺菌剤の持続的放出用配合物を筋肉内投与するような筋肉内注射等に好ましい。この投与方法は又、目的とする治療効果が、甲状腺の薬物治療、産児制限プロドラッグ、エストロゲン治療用エストロゲン等のホルモンの持続的投与である場合に有用である。当業者である臨床医は、この投与方法は種々の治療場面へ適用できることが認識出来、目的とする治療効果のために本発明のシステムにおいて特定のポリマー及び薬を利用出来る。
投与方法が注射である場合、本発明のシステムは、粘調のポリマービヒクル中で分散又は懸濁されている比較的非極性な薬を好ましく使用できる。この場合のシステムは、液状のポリマービヒクル中の非極性薬の安定した懸濁液又は分散体である。ポリマービヒクルは、非生体吸収性又は、周囲の体組織への薬の拡散速度よりも低い速度で生体に吸収される生体吸収性のいずれかが好ましい。この場合、システムは、薬が周囲の組織中へ早く放出され過ぎないように周囲の組織に応じて適所適所に設置される。
【0064】
本発明のシステムはリキッドポリマー中で分散又は懸濁されている比較的非極性の液体でもよい。この場合、システムは更に比較的非極性な薬をポリマー中で安定な分散状態で保つ乳化剤を含有しても良い。ポリマービヒクルは、好ましくは非生体吸収性、又は薬の拡散速度よりも低い速度で生体に吸収される生体吸収性であり、そのためシステムは、薬の全ての放出時間にわたり周囲の組織に対して薬の位置を保持できる。
本発明のシステムの精密な特性は、目的とする治療用、生理学的条件等の下でシステムと共に使用される薬の物理的状態に応じて異なる。本発明のシステムは、例えば皮下等への移植に好ましい形状の固体装置であってもよい。本発明のシステムは又、延長された卵形であり、プロドラッグがホルモン等の非極性薬であり、ポリマーが薬の放出速度の主な律速要因ではない程度の透過性を有する固体ポリマーを有するものでもよい。上記ポリマーは、生体吸収性であってもよく、非生体吸収性であってもよい。
本発明の装置は、ねじ、ステント、ペースメーカー、補綴用結合部等の基材及びその上の皮膜からなり、これらの装置は、相当する公知技術の外科用器具と実質的に同じ方法で使用できる。例えば、本発明の装置である、ポリマー中に分散又は懸濁されている抗生物質又は5FU−ナプロキセン等の低溶解性プロドラッグを含有する組成物で被覆されたねじ等は、公知技術のねじと同様の方法で骨に使用することが出来る。そして、本発明のねじは、薬を時間的に持続的に放出するため、抗生物性、抗炎症性等の治療効果(利点)及び抗ウィルス効果を装置周囲の筋肉、骨、血液等の体組織へ与えることが出来る。
本明細書及び従属する請求項に記載された「持続的放出」とは、ポリマーの透過性が薬の放出速度を実質的に制限しない場合の放出を言う。
【0065】
本発明の装置は、その中にプロドラッグ及びポリマーが構成要素として組み込まれた外科用器具であってもよく、ポリマーは装置の特定な使用に適した物理的性質を有する固体が好ましい。例えば、装置が縫合糸である場合、ポリマーは特定の外科的な状態に適した強度及び生体吸収性を有する。装置がねじ、ステント等の場合、ポリマーは外科用器具の少なくとも一部を形成する硬質の固体が好ましい。本発明のシステムが補綴用結合部等である場合、ポリマーは非生体吸収性であり、プロドラッグが周囲の体組織中へ放出された後も対象部位に残留することが好ましい。又、本発明の生体吸収性縫合糸等の場合、ポリマーは全てのプロドラッグが充分に放出された後生体に吸収される。
経皮的冠〔状〕動脈内腔拡張術後の再狭窄及び関連する合併症の処理に関して、数多くの医療用装置で使用する広範囲の条件で使用できるように、又は装置の機能を高め使用可能期間を延ばすために、本発明により薬/薬配合物の局所的投与を行うことは重要である。例えば、白内障手術後に視力を取り戻すために置かれる眼内レンズはしばしば続発性白内障の発生により損なわれる。しかし後者(続発性白内障)はしばしばレンズ表面上の細胞の異常増殖の結果であり、薬又は装置付属薬と組み合わせることにより最小化できる可能性がある。水頭症用シャント、透析用グラフト、結腸瘻バッグ付属品、イヤードレーンチューブ、移植用ペースメーカー用導線及び細動除去器用導線等の装置の内部、外部及び周囲に蛋白質系材料が増殖又は蓄積するような、体組織が原因でしばしば作動しなくなる他の医療用装置も装置/配合物の適用で恩恵が受けられる。
体組織又は器官の構造及び機構を改良するための装置も、適当なプロドラッグ又はコドラッグと組み合わせることにより恩恵が受けられる。例えば、移植装置の安定性を補強するための外科用器具の骨格増強性の改良は、それを骨形成蛋白質等のプロドラッグと組み合わせることにより達成することが出来る。同様に、縫合糸、ステープル、吻合手術用装置、円盤状脊椎骨、骨ピン、縫合糸、留め具、止血用バリア、クランプ、ねじ、平板、クリップ、血管移植装置、体組織粘着剤及び密封剤、体組織スカフォールド、種々の種類の包帯、代用骨、管腔内装置及び血管保持材、その他の外科用器具にこの薬/装置の組み合わせを使用することにより患者に恩恵を与えることが出来る。本質的にはいずれの医療用装置でも本発明のプロドラッグ又はコドラッグを使用してなんらかの方法で被覆でき、装置又は医薬プロドラッグをそれぞれ別個に使用するよりも使用効果を高めることができる。
【0066】
本発明の装置は、医薬品の投与に使用でき、医薬品として;ビンカアルカロイド(即ちビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビン)、パクリタキセル、エストロゲン(epidi)ポドフィロトキシン(即ちエトポシド、テニポシド)、抗生物質(ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)ダウノルビシン、ドキソルビシン及びイダルビシン)、アンスラサイクリン系抗生物質、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)及びマイトマイシン、酵素(全身的にL−アスパラギンを代謝し、自らアスパラギンを合成する能力を持たない細胞を排除するLアスパラギナーゼ)等の天然物を含む抗増殖性/抗有糸分裂性プロドラッグ;抗血小板性プロドラッグ;ナイトロジェンマスタード(メクロルエタミン、シクロフォスファミド及び類似体、メルファラン、クロラムフシル)、エチレンイミン及びメチルメルアミン(ヘキサメチルメルアミン及びチオテパ)、ブスルファンアルキルスルホン酸塩、ニトロソウレア(カルマステイン(BCNU)及び類似体、ストレプトゾシン)、トリアゼン−ダカルバジン(DTIC)等の抗増殖性/抗有糸分裂性アルキル化プロドラッグ;葉酸類似体(メトトレキサート)、ピリミジン類(フルオロウラシル、フロクシウリジン及びシタラビン)、プリン類及び関連する阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン及び2−クロロデオキシアデノシンクラドリビン/フルダラビン)等の抗増殖性/抗有糸分裂性代謝拮抗性物質;白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトーテン、アミノグルテチミド;ホルモン(即ちエストロゲン);抗凝結剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩及び他のトロンビンの阻害剤);繊維素溶解性プロドラッグ(体組織プラスミノゲン活性薬、ストレプトキナーゼ及びウロキナーゼ等)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗遊送剤;抗分泌剤(ブレベルジン(breveldin));抗炎症剤:副腎皮質ステロイド(コルチゾール、コーチゾン、フルドロコーチゾン、プレドニゾン、プレドニソロン、6U−メチルプレドニソロン、トリアムシノロン、ベタメサゾン及びデクサメタゾン)、非ステロイド系プロドラッグ(アスピリン等のサリチル酸誘導体);p−アミノフェノール誘導体即ちアセタミノフェン;インドール及びインデン酢酸(インドメタシン、スリンダク及びエトダラック(etodalac))、ヘテロアリール酢酸(トルメチン、ジクロフェナク及びケトロラク)、アリールプロピオン酸(イブプロフェン及び誘導体)、アントラニル酸(メフェナム酸及びメクロフェナム酸)、エノール系酸(enolic acid)(ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン及びオキシフェンタトラゾン(oxyphenthatrazone))、ナブメトン、金組成物(オウラノフィン、アウロチオグルコース、チオリンゴ酸金ナトリウム);免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);血管形成プロドラッグ:血管内皮発育因子(VEGF)、線維芽細胞発育因子(FGF);アンギオテンシンレセプターブロック剤;酸化窒素ドナー;アンチセンスオリゴヌクレオチド及びそれらの組み合わせ;細胞周期阻害剤、mTOR阻害剤及び発育因子シグナルトランスダクション(情報伝達)キナーゼ阻害剤等が挙げられる。
【0067】
本発明のプロドラッグは、オピオドを使用して形成してもよい。オピオドとして、アポモルヒネ、ブプレノルフィン、コデイン、ジヒドロコデイン、ジヒドロエトルフィン、ジプレノルフィン、エトルフィン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン、メトポン、o−メチルナルトレキソン、モルヒネ、ナロキソン、ナルトレキソン、ノルモルヒネ、オキシコドン及びオキシモルフォン等のモルヒネ誘導体が挙げられる。本発明のオピオドは、p−ヒドロキシ−3−メチルフェンタニル等のプロドラッグへと誘導できるフェンタニル誘導体でもよい。
【0068】
低溶解性医薬プロドラッグに関して使用される「低溶解性」とは、血漿、リンパ液、腹膜水等の生物学的流体中への医薬プロドラッグの溶解性をいう。通常「低溶解性」とは、医薬プロドラッグが約5〜約8のpHを有する水溶液、特に血液、血漿等の生理学上の溶液へほんの僅かしか溶解しないことをいう。本発明のいくつかの低溶解性プロドラッグの溶解性は、例えば約1mg/ml未満、好ましくは約100μg/ml未満、更に好ましくは約20μg/ml未満、特に好ましくは約15μg/ml未満、最も好ましくは約10μg/ml未満である。温度25℃の水への溶解性は、特記しない限り1995 USP中の操作指針により測定される。これは、僅かに溶解(約10mg/ml〜約1mg/ml)する組成物、非常に僅かに溶解(約1mg/ml〜約0.1mg/ml)する組成物及び実質的に不溶な組成物又は不溶性組成物(約0.01mg/ml未満)を含むものである。
【0069】
本発明に好ましく使用できるプロドラッグとして、シクロスポリンA及びFK506等の免疫応答変更遺伝子プロドラッグ;デクサメタゾン及びトリアムシノロンアセトニド等のコルチコステロイド;トリヒドロキシステロイド等の血管形成阻害性ステロイド;アトバクオン等の駆虫性プロドラッグ;エタクリン酸等の対緑内障プロドラッグ;シプロフロキサシン等の抗生物質;レチノイド(例えば、trans−レチノイン酸、cis−レチノイン酸及び異性体)等の分化調節剤;高分子量低10量体(high molecular weight low (10-mers))を含有する抗ウィルスプロドラッグ;アンチセンス化合物;BCNU等の抗ガンプロドラッグ;インドメタシン及びフルルビプロフェン等の非ステロイド系抗炎症性プロドラッグ;並びに、少なくとも2つの組成物が可逆的な共有結合型又はイオン結合を通して結合され、その結合は目的とする体内部位で開裂されてそれぞれの組成物の(薬理的に)活性な形状を形成するような複合体であるプロドラッグ;が挙げられる。プロドラッグは、血清、粘液、腹膜流体、大脳辺縁系流体等の生理学上の流体等の水性溶媒中で、比較的不溶性でもよい。本発明の好ましいプロドラッグとして、親水性薬の親油性誘導体であり、生理学上の利用可能な条件下で容易に親水性薬へ転換できる薬も挙げられる。ここでは、薬の低溶解性形状を得るための操作のために標準的製薬的基本書ならいずれも資料として使用する。この点において本発明は、それが本来的に低溶解性であるため広く応用できなかったか、油ベース又は他の脂質ベースの投与用ビヒクル中での使用に限られていたプロドラッグに対して特に好ましい。本発明は、アテローム性動脈硬化症等の管腔内病変に特に隣接した血管の内腔へ、管の開通性を保つために移植用管腔内医療用装置を提供する。
【0070】
特に本発明は、ステントの縦軸にそって伸びている内部管腔表面及び反対側の外側表面を有し、(縦軸を中心に)放射状に拡張可能な管状ステントであり、少なくともその内側又は外側表面部分上に皮膜を有するステントを提供する。ステントからの配合物の局所的投与は、ステントのスカフォールド作用に伴って管の再度の巻き付き、変形の防止、新内膜性異常増殖又は再狭窄の複数要素の防止、並びに炎症及び血栓症の減少が得られる利点がある。ステントされた心臓動脈への局所的投薬は、更に治療的にも利点がある。例えば局所的投与を行なうことにより、全身投与に比べ対象となる体組織内でのより高い薬濃度が達成される。更に、局所的投与を全身投与に比べ高い組織中の濃度を保って行うと全身的毒性の減少を達成できる。又ステントからの局所的投与は、全身投与に比べ、1回の操作であるので患者にとってより満足度が高い。組み合わせ薬治療の更なる恩恵は、それぞれの治療薬、プロドラッグ又は組成物の投与量を減少できるため、再狭窄、炎症及び血栓症の減少を達成しつつプロドラッグ等の毒性を抑えられることである。このように、ステント利用の局所的治療は、抗再狭窄剤、抗炎症剤、抗血栓症薬、プロドラッグ又は組成物の治療係数(有効性/毒性(最小有効量/最小致死量))の改善手段となる。
【0071】
下記経皮的冠〔状〕動脈内腔拡張術に使用できる多くのステントがある。本発明には数多くのステントが使用できるが、ここでは簡単に本発明を説明するための例として限られたステントしか記載しない。当業者には本発明には数多くのステントが使用可能であることが明らかである。更に、上記のとおりここで記載した以外の医療用装置も使用できる。
ステントは、障害物を除去するため導管の内腔の内部に置かれる管状構造として通常使用される。ステントは通常、縮んだ形状で内腔に内挿され、次に体内の本来の(目的とする)対象部位で自発的又は第2装置の補助で拡張する。拡張の典型的な方法は、血管形成術用カテーテルにマウントされたバルーンを使用して行なわれ、バルーンは狭窄した管又は体内通路中で膨まされ、管の壁部材と接合した障害物を剪断し、破壊し、拡大された内腔を得る。
【0072】
本発明のステントは、数多くの方法を使用して製造できる。ステントは、例えば中空の又は成形されたステンレススチール管から製造でき、それは、レーザー、放電フライス加工(milling)、化学的エッチング又は他の手段を使用して加工される。ステントは体内へ内挿され、対象部位に縮めた形状で置かれる。ステントは、例えば血管中でバルーンカテーテルによって拡張され、ステントの最終直径は、使用されたバルーンカテーテルの直径により定まる。
本発明のステントは、適当なニッケル及びチタンの合金又はステンレススチール等の形状記憶材料で構成されても良い。
ステンレススチールから形成される構造は、ステンレススチールを例えば曲げて編み目構造等とするような予め定められた構造にして自動的な拡張性を有するようにできる。この場合、ステントは、一度形成された後に血管又は他の体組織中に内挿手段により内挿可能な程度に充分小さい空間を占めるように圧縮される。尚、内挿手段として好ましくはカテーテル又は可撓性ロッドが挙げられる。
ステントは、カテーテルから出される時に目的とする形状へ拡張するように設計され、拡張は自動的又は圧力、温度又は電気的刺激の変化で開始される。
ステントの構造に関係なく、薬配合物の投与は病変部位への適切な特別性及び効果的な投薬量を供給できる充分な濃度で適用されることが好ましい。この点で、皮膜中の「蓄積量」は、薬配合物の投与が適用される対象部位及び目的量に適切となるように調整されるべきである。
例えば、ステントの内側及び外側の全表面が治療用投薬量の薬/薬配合物で被覆されても良い。しかし、コーティング技術は、薬配合物に応じて変化してもよく、ステント又は他の管腔内医療用装置等の材料に応じて変化できることは重要である。
【0073】
本発明の管腔内装置(ステント)の一例が、図3及び4に示されている。
図3は、持続的放出用ドラッグデリバリーシステムで表面を被覆された、(縦軸を中心に)放射状に拡張可能な管状ステント13の使用部位に設置されていない状態での側面図である。図3より、設置されていない状態のステント13は、(縦軸を中心にして)放射状の外側の境界14A、14Bを有する。ステント13の内部管腔表面15、外側表面16、又は全表面は、持続的放出用ドラッグデリバリーシステムで被覆されてもよく、持続的放出用ドラッグデリバリーシステムを含有してもよい。ステント13が生体管又は導管を支持し、拡大するために設置された場合に、血管ステント使用中の内部管腔表面15は血液等の体液と接触し、外側表面16は体組織と接触する。
本発明ではステント構造13の2以上の隣接した部材又はループを結合する任意の強化ワイヤ17が、ステントが設置されている間ステントを拡張状態に固定および/または保持するために使用されてもよい。この強化ワイヤ17は、ニチノール又は他の高強度材料からなるものでもよい。ニチノール装置は、記憶形状を有し、ニチノール装置がその記憶形状へ戻るための転移温度を有することが良く知られている。本発明の表面被覆ステント13を使用して患者の管腔内組織を処置する方法として、放射状に拡張可能な管状ステントを縮めて、その縮めたステントを患者の体内から引き抜く方法も挙げられる。放射状に拡張可能な管状ステントを縮める操作は温度を上昇させることであり、強化ワイヤ17はまっすぐな状態又は他の適当な状態へ戻され、その結果ステント13を患者の体内から除去するために縮めることができる。
【0074】
図4は、ステント表面に被覆された持続的放出用ドラッグデリバリーシステムを有する細長く放射状に拡張可能な管状ステント13の設置された(拡張した)状態の全体図を示す。図4より、ステント13は、設置された状態で(縦軸を中心にして)放射状の外側の境界24A、24Bを有する。ステント13の内部管腔表面14、外側表面16、又は全表面は、被覆されていてもよく持続的放出用ドラッグデリバリーシステムを有していてもよい。ステント13が生体管を支持、拡大するために設置される場合に、血管ステント使用中に内部管腔表面15は血液等の体液と接触し、外側表面16は体組織と接触する。強化ワイヤ17が、永久的ステント又は一時的ステントとして拡張されたステントの拡張状態を保持するために使用できる。
表面被覆ステント13が一時的ステントとして機能する場合、強化ワイヤ17は、拡張されたステントを縮める能力を有していても良い。
ステントの設置は、デリバリーカテーテル上のバルーンによるか、予め縮められたステントがデリバリーカテーテルから放出された後の自発的伸張により達成できる。ステント設置用のデリバリーカテーテル及び方法は、当業者に公知である。拡張可能なステント13とは、自発的に拡張可能なステント、バルーン拡張可能なステント又は拡張可能かつ引き抜き可能なステントであってもよい。拡張可能ステントは、形状記憶コイル、メッシュ材料等からなるものでもよい。
【実施例】
【0075】
本発明を、下記実施例を参照して更に説明する。
参考例
可逆的共有結合を通して結合された5−フルオロウラシル及びナプロキセンの複合体を含有するプロドラッグTC−112及び5−フルオロウラシル及びフルオシノロンアセトニドの複合体を含有するプロドラッグG.531.1を米国特許第6051576号に記載された方法により調製した。これら組成物の構造は、下記のとおりである。
【0076】
【化24】

5−フルオロウラシル(5FU)
【0077】
【化25】

ナプロキセン
【0078】
【化26】

TC−112
【0079】
【化27】

G.531.1の構成成分フルオロシノロンアセトニド
【0080】
下記実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明の範囲を限定するものではなく、当業者は他の態様も本発明の範囲内であることを認めるものである。
実施例1
20gmの10%(w/v)水性ポリビニルアルコール(PVA)溶液へ、80.5mgのプロドラッグTC−112を分散した。次に5枚のガラス板(スライド)をこのTC−112/PVA懸濁液に浸漬被覆した後、空気乾燥した。被覆及び空気乾燥を、更に4回繰り返した。最終的に約100mgのTC−112/PVAをそれぞれのガラス板上に被覆した。被覆したガラス板を、次に135℃、5時間で熱処理した。室温まで冷却後、ガラス板を、放出試験のため個々に20mlの0.1Mmolリン酸塩バッファ(pH7.4、37℃)中に設置した。サンプル時間毎に試料を毎日取り出し、放出溶媒全てを新しいものと交換した。溶媒中に放出された薬及びTC−112は、逆相HPLCにより測定した。TC−112の半減時間はpH7.4バッファ中で456分であり、血清中では14分であった。
結果を、PVA被覆したガラス板からのTC−112の全放出累積量を表す図1に示す。曲線の傾きは、TC112が10μg/日の速度で放出されたことを示す。測定値は、TC−112の未反応物及びその構成成分の両方を示す。
【0081】
実施例2
12.0gmのシリコーン樹脂A(Med−6810A)を1.2gmのシリコーン樹脂B(Med−6810B)を混合し、ソニケータ中で10分間脱気した後、ウォーターアスピレーターにより脱気した。41.2mgの(TC−112)をこの脱気したシリコーン樹脂中に分散して再度脱気した。ガラス板表面1枚についてその混合物0.2gmを被覆した。ガラス板(計5枚)を次にオーブンに入れ、105℃で20分間加熱し硬化させた。オーブンから取り出し室温まで冷却後、0.2gmの混合物をそれぞれのガラス板の他の被覆されていない表面へ被覆した。被覆したガラス板を、次に再度105℃で20分間熱処理した。室温まで冷却後、ガラス板を放出試験のため個々に20mlの0.1Mmolリン酸塩バッファ(pH7.4、37℃)中に設置した。サンプル時間毎に試料を毎日取り出し、放出溶媒全てを新しいものと交換した。溶媒中に放出された薬(5FU及びTA)及びTC−112は、HPLCにより測定した。
シリコーン樹脂皮膜へ放出された全TC−112量は、下記のとおり計算した。ナプロキセンの分子量は、230.3であり、5−フルオロウラシルの分子量は130.1である。また、これら2つの薬から合成した本発明の組成物(TC−112)は分子量372.4である。xmgのナプロキセンが検知されることは、(x×372.4/230.3)mgのTC−112が加水分解されたことを示す。放出された全TC−112量は、放出溶媒中に検知されたTC−112及び加水分解されたTC−112の合計と等しい。例えば、6日までに43.9mgのナプロキセンが検知されると、71.0(43.9×372.4/230.3)mgのTC−112が加水分解されたことを意味し、同時に、51.4mgのTC112がバッファ中に検知されると、合計122.4mg(51.4+71.0)のTC−112が6日間で放出されることを意味する。
結果を、シリコーン樹脂被覆したガラス板からのTC−112の全放出累積量を表す図2に示す。曲線の傾きは、TC112が13.3μg/日の速度で放出されたことを示す。測定値は、同様に未反応物及びその構成成分の両方を示す。(ポリマーが異なるグラフにおいて)傾きが類似することはポリマーが薬の放出に対しほとんど影響を与えないことを示す。
【0082】
実施例3
溶媒がジメチルアセトアミド(DMAC)(1:10、w/w)である、0.3gmのChronoflexC(65D)を含有する3.3gmのChronoflexC(65D)(Lot&num社製;CTB−G25B−1234)分散体及び0.2gmのChronoflexC(55D)を含有する2.2gmのChronoflexC(55D)(Lot&num社製;CTB−121B−1265)分散体を混合して分散体の混合物を調製した。この混合物へ、6.0gmのテトラヒドロフラン(HPLCグレード)を添加し、混合した。最終的混合物は透明溶液ではなかった。次に101.5mgの5−フルオロウラシル(5FU)及びトリアムシノロンアセトニド(TA)のコドラッグ(このコドラッグをTC−32とした。)を再度ポリマー溶液中へ添加して溶解した。
次に10個のHPLC内挿物(inserts)をポリマー/TC−32溶液への浸漬被覆で被覆し、次に室温で空気乾燥した。被覆及び空気乾燥プロセスを4回(計5回)繰り返し、それぞれの内挿物へ適用したポリマー/TC−32の合計を約10mgとした。次に内挿物をオーブン中に80℃で2時間置き、溶媒残渣を除去した。
内挿物を、放出試験のため個々にガラス管中の20mlの0.1Mmolリン酸塩バッファ(pH7.4、37℃)中に設置した。内挿物からの37℃での組成物の放出の観察を開始した。サンプル時間毎に試料を毎日取り出し、放出溶媒全てを新しいものと交換した。溶媒中に放出された薬は、HPLCにより測定した。バッファ中のTC−32の半減時間が短いために、TC−32は放出溶媒中に検知されなかった。親薬、5FU及びTAの量だけが測定できた。放出態様を図7に示す。
【0083】
実施例4
5.0gmのジメチルアセトアミド(DMAC)へ、300mgのChronoflexC(65D)(Lot&num社製;CTB−G25B−1234)及び200mgのChronoflexC(55D)(Lot&num社製;CTB121B−1265)を攪拌しながら添加した。ポリマーは徐々にDMAC(約4時間)中に溶解した。次に5.0gmのTHFをポリマー分散体へ添加した。混合物は透明溶液ではなかった。次に100.9mgのTC−32を混合物中に添加して溶解した。
次に3個のステント(Guidant Corp社製)を、ポリマー/TC−32溶液への浸漬被覆で被覆し、更に室温で空気乾燥した。被覆及び空気乾燥プロセスは、それぞれのステントへ適用したポリマー/TC−32の合計が約2.0mgとなるまで数回繰り返した。被覆したステントは、無菌キャビネット中室温で一晩空気乾燥した。次にステントを80℃で2時間真空乾燥し、溶媒残渣を除去した。更にそれらを、個々にガラス管中の5.0mlの0.1mリン酸塩バッファ(pH7.4)中に設置し、ステントからの37℃での組成物の放出の観察を開始した。サンプル時間毎に試料を毎日取り出し、放出溶媒全てを新しいものと交換した。溶媒中に放出された薬は、HPLCにより測定した。放出態様を図8に示す。TC−32は、放出溶媒中に検出されなかった。
【0084】
実施例5
最初にポリウレタン(PU)をテトラヒドロフラン中に溶解した。この溶液中に、5FU及びTAの生物転換性(bioreversible)複合体を溶解し、得られた溶液をGuidant Corp社製冠状動脈用テトラステントに噴霧被覆した。空気乾燥後、ステントを50℃で2時間真空乾燥して溶媒残渣を除去し、プラズマ処理及びγ線照射処理を行なった。ステントへは異なる2つの濃度(80μg低投薬量(13%)及び600μg高投薬量(60%))で薬を被覆した。放出速度は、0.1Mリン酸塩バッファ(pH7.4)中に被覆したステント(拡張した状態)を置いて、生体外37℃で測定した。バッファ溶液の試料は周期的にHPLC分析用に除去され、飽和効果を避けるためバッファを交換した。
結果を、高投薬量を被覆したステントの生体外での放出パターンである図9に示す。パターンは、10週間で約70%が放出される擬似対数的パターンを示した。同様のパターンが高投薬量及び低投薬量で被覆したステント両方で見られた。TA及び5FUは試験中常に等モルで放出された。5FU/TAのコドラッグは、放出溶媒中に検知されなかった。
【0085】
実施例6
ポリウレタン(1.008gm)を50.0gmのテトラヒドロフラン(THF)に添加した。混合物を一晩攪拌し、ポリマーを溶解した。5.0gmのポリマー溶液を10.0gmのTHFで希釈した。150.2mgの5−フルオロウラシル(5FU)及びトリアムシノロンアセトニド(TA)のコドラッグ(このコドラッグをTC−32という。)をポリマー溶液に添加して溶解した。コーティング溶液がコドラッグを60%含有するように調製した。13%コドラッグを含有するコーティング溶液も調製した。裸のテトラステント(Guidant Corp社製、製造番号1092154、13mmテトラ)をイソプロパノールで洗浄し、空気乾燥し、高精度エアブラシを使用してコーティング溶液で噴霧被覆した。被覆は、それぞれのステントの合計皮膜が約1.0mgとなるまで繰り返した。被覆したステントを、2時間、50℃で真空乾燥して溶媒残渣を除去し、次にプラズマ処理及びγ線照射処理を行なった。
コドラッグ被覆したステントは、2つのグループに分けて試験した。第1グループのステントは、個々に5.0mlの0.1Mリン酸塩バッファ(pH7.4)のガラス管中に設置した。試料を周期的に採取し、バッファ中のコドラッグ濃度をHPLCで測定した。サンプル時間毎に、放出溶媒全てを新しいものと交換した。
第2グループのステントは、生体内に設置した。3頭の通常豚にTC−32被覆したステントを試験第1日に左前室間冠状動脈(LAD)中へ移植した。ステントは試験第5日に回収され、次に第1グループステント用に記載した0.1Mリン酸塩バッファ中に設置された。それぞれの薬の溶媒への放出量は、HPLCで測定した。未反応のコドラッグは、放出溶媒中に検知されなかった。
取り出(回収)されたステント(EX)及び移植されていないステント(B)両方間の薬の放出態様を比較する結果を図10に示す。取り出されたステント及び未移植のステント両方から薬の放出パターンから、生体内での薬の放出は生体外での薬の放出パターンで予知できることがわかった。
【0086】
実施例7
14頭の家畜豚に3個の心膜冠状動脈(LAD、LCX及びRCA)中のいずれかに最大3個のステントを設置した。数頭の動物へは対照用ステント(裸の金属又はPU被覆されたテトラ冠状動脈用ステント;いずれもGuidant Corp社製、商品名CrossSailRxバルーンデリバリーシステム)のみを施した。他の動物へは、低投薬量(80μg(TA+5FU)(13%))又は高投薬量(600μg(TA+5FU)(60%))いずれかで薬被覆したステントを施した。ステントは、動物の動脈中へ移植した。それぞれのステントは、動脈中の目的とする対象部位へ内挿され、拡張装置を使用して設置された。拡張装置の圧力はバルーン対動脈比が1.1〜1.2:1となるように選択した。
28日後、ステントに直接隣接した動脈部を外科的に切除してメタクリレート樹脂中に埋め込んだ。体組織部5μmを切除し、ヴァーヘフ弾性組織染色及びヘマトキシリン‐エオシン染色法で染色し、それぞれの切除部の厚みを測定した。高投薬量及び低投薬量で薬被覆したステントについての結果を下記表2に示す。低投薬量及び高投薬量試験グループの28日間の試験から、ポリマー被覆したテトラステントからTA及び5FUが共に放出されることが脈間内膜厚みを大幅に減少させることに寄与することが示された。
【0087】
【表2】

【0088】
実施例8
図11A及び11Bは、薬(TA)放出におけるγ線照射及びプラズマ処理の効果を示すグラフである。但し、グループBはプラズマ処理及びγ線照射;グループCはγ線照射のみでプラズマ処理なし;グループDはプラズマ処理のみでγ線照射なし;グループFはプラズマ処理もγ線照射もなし。上記プラズマ処理及びγ線照射により、ステントを拡張カテーテル(3.0mmバルーンサイズ、20mm長)により拡張させたものを、個々に5.0mlの0.1Mリン酸塩バッファ(pH7.4)を含有するガラス管中に設置した。サンプル時間毎に試料を周期的に取り出し、サンプリング後に放出溶媒全てを新しいものと交換した。溶媒中に放出されたそれぞれの薬量は、HPLCにより測定した。未反応のコドラッグは、放出溶媒中に検知されなかった。
実施例9(被覆実施例A)
EudragitNE30D水性分散体を蒸発させ、空気乾燥して得た1.0gmのEMM(ポリ(エチルアクリレート/メチルメタクリレート)コポリマー)を9.0グラムアセトン中に添加した。この分散体へ、51.5mgの5−フルオロウラシル及びフルオシノロンアセトニドのコドラッグ(G.531.1)を添加し、攪拌して溶解した。10個のHPLC内挿物をコドラッグ/ポリマー溶液中で浸漬被覆した後、空気乾燥し、それらをコドラッグ/ポリマーで被覆した。約30mgのコドラッグ/ポリマーがそれぞれのガラス管上に被覆されるまで、被覆プロセスを数回繰り返した。被覆した内挿物は次に放出試験のため個々に10.0mlの0.1Mリン酸塩バッファ(pH7.4、37℃)中に設置された。試料を毎日取り出し、放出溶媒全てをそれぞれのサンプリング時毎に新しい溶媒に交換した。溶媒中に放出された薬及びコドラッグをHPLCにより測定した。
【0089】
実施例10(被覆実施例B)
441.8mgのポリ(エチレン−コビニルアセテート)(EVA)を秤量し、15.0mlのTHF中へ移した。EVAを徐々に膨潤させ、次に超音波及び磁気的攪拌によりTHF中に一部を溶解させた。そのポリマー溶液中へ88.2mgのコドラッグ(TC32)を添加し、溶解した。次に9個のHPLC内挿物を浸漬被覆によりポリマー/コドラッグ溶液で被覆し、次に室温で空気乾燥した。合計約10mgのポリマー/コドラッグがそれぞれの内挿物へ適用されるまで、被覆及び空気乾燥プロセスを数回繰り返した。次に内挿物をオーブン中に50℃で1時間置き、溶媒残渣を除去した。被覆前と被覆終了後の内挿物の重量及び直径を測定し、記録した。被覆した内挿物を次に放出試験のため個々に10.0mlの0.1Mリン酸塩バッファ(pH7.4、37℃)中に設置した。試料を毎日取り出し、放出溶媒全てをそれぞれのサンプリング時毎に新しい溶媒に交換した。溶媒中に放出された薬及びコドラッグをHPLCにより測定した。
【0090】
上記明細書の記載の目的は、本発明の具体例を提示することであり本発明の限定を目的とするものではない。当業者にとって、本発明の範囲内で本発明のシステム、装置及び方法の種々の変形及び応用が可能であることが明らかである。ここに記載された全ての特許公報及び刊行物を資料として使用する。
【符号の説明】
【0091】
13:管状ステント
15:内部管腔表面
16:外側表面
17:強化ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックス及び、ポリマー中に分散された一般式A−L−Bを有するプロドラッグを含有する持続的放出用配合物(Aは患者に臨床的応答を生じる治療活性形態(therapeutically active form)を有する薬成分(薬理的活性成分)を表し、LはA及びBに結合しプロドラッグを形成する共有結合型のリンカーを表し、上記リンカーは生理学的条件下で開裂してAの治療活性形態を生成し、Bは上記リンカーLの開裂により生成した、治療活性形態を有する薬成分であり、Aと結合して、Aの治療活性形態より低い溶解性を有するプロドラッグを生じる成分を表す)であり、Aの治療活性形態の水中での溶解度は、1mg/mlを超え、一方プロドラッグの水中での溶解度は1mg/ml未満である配合物。
【請求項2】
ポリマーマトリックス及び、ポリマー中に分散された一般式A::Bを有するプロドラッグを含有する持続的放出用配合物(Aは患者に臨床的応答を生じる治療活性形態を有する薬成分を表し、::は、生理学的条件下で分離してAの治療活性形態を生成するA及びB間のイオン結合を表し、Bは上記イオン結合の解離により生成した、治療活性形態を有する薬成分であり、Aとイオン結合して、Aの治療活性形態より低い溶解性を有するプロドラッグを生じる成分を表す。)であり、Aの治療活性形態の水中での溶解度は、1mg/mlを超え、一方プロドラッグの水中での溶解度は1mg/ml未満である配合物。
【請求項3】
ポリマーマトリックス及び、ポリマー中に分散された一般式A−L−Bを有するプロドラッグを含有する持続的放出用配合物(Aは患者に臨床的応答を生じる治療活性形態を有する薬成分を表し、LはA及びBに結合しプロドラッグを形成する共有結合型のリンカーを表し、上記リンカーは生理学的条件下で開裂してAの治療活性形態を生成し、Bは上記リンカーLの開裂により生成した、治療活性形態を有する薬成分であり、Aと結合して、Aの治療活性形態より低い溶解性を有するプロドラッグを生じる成分を表す。)であり、生物学的流体(体液)中に置かれた場合、持続的放出用配合物は、24時間以上はAの治療活性形態を持続的に放出し、放出時間中、ポリマー外部の流体中のプロドラッグの濃度はAの治療活性形態の濃度の10%未満である配合物。
【請求項4】
ポリマーマトリックス及び、ポリマー中に分散された一般式A::Bを有するプロドラッグを含有する持続的放出用配合物(Aは患者に臨床的応答を生じる治療活性形態を有する薬成分を表し、::は生理学的条件下で分離してAの治療活性形態を生成するA及びB間のイオン結合を表し、Bは上記イオン結合の解離により生成した、治療活性形態を有する薬成分であり、Aとイオン結合して、Aの治療活性形態より低い溶解性を有するプロドラッグを生じる成分を表す。)であり、生物学的流体(体液)中に置かれた場合、24時間以上はAの治療活性形態を持続的に放出し、放出時間中、ポリマー外部の流体中のプロドラッグの濃度はAの治療活性形態の濃度の10%未満である配合物。
【請求項5】
ポリマーマトリックス及び、ポリマー中に分散された一般式A−L−Bを有するプロドラッグを含有する持続的放出用配合物(Aは患者に臨床的応答を生じる治療活性形態を有する薬成分を表し、LはA及びBに結合しプロドラッグを形成する共有結合型のリンカーを表し、上記リンカーは生理学的条件下で開裂してAの治療活性形態を生成し、Bは上記リンカーLの開裂により生成した、治療活性形態を有する薬成分であり、Aと結合して、Aの治療活性形態より低い溶解性を有するプロドラッグを生じる成分を表す。)であり、Aの治療活性形態は、プロドラッグのlogP値より少なくとも1logPユニット少ないlogP値を有する配合物。
【請求項6】
ポリマーマトリックス及び、ポリマー中に分散された一般式A::Bを有するプロドラッグを含有する持続的放出用配合物(Aは患者に臨床的応答を生じる治療活性形態を有する薬成分を表し、::は生理学的条件下で分離してAの治療活性形態を生成するA及びB間のイオン結合を表し、Bは上記イオン結合の解離により生成した、治療活性形態を有する薬成分であり、Aとイオン結合して、Aの治療活性形態より低い溶解性を有するプロドラッグを生じる成分を表す。)であり、Aの治療活性形態は、プロドラッグのlogP値より少なくとも1logPユニット少ないlogP値を有する配合物。
【請求項7】
プロドラッグの水中での溶解度は100μg/ml未満である請求項1又は2の配合物。
【請求項8】
A及びBは同一の薬成分である請求項1〜6いずれか1項の配合物。
【請求項9】
A及びBは異なる薬成分である請求項1〜6いずれか1項の配合物。
【請求項10】
Aは免疫応答調節剤 (modifiers)、抗増殖性物質、コルチコステロイド、血管形成阻害性ステロイド、駆虫薬、対緑内障薬、抗生物質、アンチセンス化合物、分化調節剤、抗ウィルス剤、抗ガン剤及び非ステロイド系抗炎症剤から選ばれる請求項1〜6いずれか1項の配合物。
【請求項11】
Bは免疫応答調節剤、抗増殖性物質、コルチコステロイド、血管形成阻害性ステロイド、駆虫薬、対緑内障薬、抗生物質、アンチセンス化合物、分化調節剤、抗ウィルス剤、抗ガン剤及び非ステロイド系抗炎症剤から選ばれる請求項1〜6いずれか1項の配合物。
【請求項12】
ポリマーマトリックスからのAの治療活性形態の放出の持続時間は、24時間以上である請求項1〜6いずれか1項の配合物。
【請求項13】
Aは5−フルオロウラシル(5FU)であり、Bはナプロキセンである請求項1〜6いずれか1項の配合物。
【請求項14】
A又はBの少なくとも1つは抗新生物薬である請求項1〜6いずれか1項の配合物。
【請求項15】
上記抗新生物薬がアンスラサイクリン系抗生物質、ビンカアルカロイド、プリン類、ピリミジン類、ピリミジン生合成阻害剤及びアルキル化剤から選ばれる請求項14の配合物。
【請求項16】
上記抗新生物薬はフッ素化ピリミジンである請求項14の配合物。
【請求項17】
上記抗新生物薬は、5−フルオロウラシル(5FU)、5’−デオキシ−5−フルオロウリジン、5−フルオロウリジン、2’−デオキシ−5−フルオロウリジン、フルオロシトシン、5−トリフルオロメチル−2’−デオキシウリジン、アラビノキシルシトシン、シクロシチジン、5−アザ−2’−デオキシシチジン、アラビノシル−5−アザシトシン、6−アザシチジン、N−フォスフォノアセチル−L−アスパラギン酸、ピラゾフリン、6−アザウリジン、アザリビン及び3−デアザウリジンの群から選ばれる請求項14の配合物。
【請求項18】
上記抗新生物薬は、アラビノシルシトシン、シクロシチジン、5−アザ−2’−デオキシシチジン、アラビノシル−5−アザシトシン及び6−アザシチジンの群から選ばれるピリミジンヌクレオチド類である請求項14の配合物。
【請求項19】
上記抗新生物薬はクラドリビン、6−メルカプトプリン、ペントスタチン、6−チオグアニン及びリン酸フルダラビンの群から選ばれる請求項14の配合物。
【請求項20】
Aの治療活性形態は5−フルオロウラシルである請求項1〜6いずれか1項の配合物。
【請求項21】
A又はBの少なくとも1つは抗炎症剤である請求項1〜6いずれか1項の配合物。
【請求項22】
上記抗炎症剤は非ステロイド系抗炎症剤である請求項21の配合物。
【請求項23】
上記抗炎症剤は、ジクロフェナク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、ナウムストン(nahumstone)、ナプロキセン及びピロキシカムの群から選ばれる請求項22の配合物。
【請求項24】
抗炎症剤はグルココルチコイドである請求項21の配合物。
【請求項25】
上記グルココルチコイドは、アクロメタゾン、ベクロメサゾン、ベタメサゾン、ブデソニド、クロベタゾール、クロベタゾン、コーチゾン、デソニド、ジソキシメタソン、ジフロロザン(diflorosane)、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノロン、フルオコルトロン、フルプレドニデン(fluprednidene)、フルランドレノリド、フルチカゾン、ハイドロコーチゾン、メチルプレドニソロンアセポネート(aceponate)、フランカルボン酸モメタゾン、プレドニソロン、プレドニゾン及びロフレポニド(rofleponide)の群から選ばれる請求項24の配合物。
【請求項26】
Bの治療活性形態は、フルオシノロンアセトニド、トリアムシノロンアセトニド、ジクロフェナク及びナプロキセンから選ばれる請求項1〜6いずれか1項の配合物。
【請求項27】
リンカーLは体液中で加水分解される請求項1の配合物。
【請求項28】
リンカーLは、エステル、アミド、カルバメート、カーボネート、環状ケタール、チオエステル、チオアミド、チオカルバメート、チオカーボネート、キサントゲン酸エステル及びリン酸エステルの群から選ばれる1以上の加水分解性基を含む請求項1の配合物。
【請求項29】
リンカーLは酵素により開裂される請求項1の配合物。
【請求項30】
結合形態のプロドラッグは、Aの治療活性形態のED50の10倍以上の上記臨床的応答生成用ED50を有する請求項1の配合物。
【請求項31】
結合形態のプロドラッグは、Aの治療活性形態のED50の1000倍以上の上記臨床的応答生成用ED50を有する請求項1の配合物。
【請求項32】
Aの治療活性形態は、上記プロドラッグの10倍以上の水への溶解性を有する請求項1の配合物。
【請求項33】
プロドラッグは、フルオシノロンアセトニドと共有結合している5−フルオロウラシル(5FU)、ナプロキセンと共有結合している5FU及びジクロフェナクと共有結合している5FUから選ばれる請求項26の配合物。
【請求項34】
プロドラッグは、シプロフロキサシン−ジクロフェナク(VI)(下記化学式で表される。)及びシプロフロキサシン−ナプロキセンから選ばれる請求項1〜6いずれか1項の配合物。
【化1】

シプロフロキサシン−ジクロフェナク(VI)
【請求項35】
ポリマーは、非生体吸収性である請求項1〜6いずれか1項の配合物。
【請求項36】
非生体吸収性ポリマーは、ポリウレタン、ポリシリコーン、ポリ(エチレン−コビニルアセテート)、ポリビニルアルコール、並びにそれらの誘導体及びコポリマーから選ばれる請求項35の配合物。
【請求項37】
ポリマーは生体吸収性である請求項1〜6いずれか1項の配合物。
【請求項38】
生体吸収性ポリマーは、ポリ(アンハイドライド)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、オルトカルボン酸エステルポリマー、ポリアルキルシアノアクリレート、並びにそれらの誘導体及びそれらのコポリマーから選ばれる請求項37の配合物。
【請求項39】
ポリマーは、特定の構造位置にプロドラッグを保持しプロドラッグの分解を防止する請求項1〜6いずれか1項の配合物。
【請求項40】
ポリマーがポリマー中のプロドラッグと周囲に存在する体液中のタンパク質化合物との相互作用を減少させる請求項1〜6いずれか1項の配合物。
【請求項41】
システム(持続的放出用配合物)が体内へ注入されるか移植される請求項1〜6いずれか1項の配合物。
【請求項42】
(i)表面を有する基材及び(ii)その表面に付着した皮膜を備えた医療用装置であり、上記皮膜は低溶解性プロドラッグが分散しているポリマーマトリックスを含み、上記低溶解性プロドラッグは一般式A−L−Bで表される(Aは患者に臨床的応答を生じる治療活性形態を有する薬成分を表し、LはA及びBに結合しプロドラッグを形成する共有結合型のリンカーを表し、上記リンカーは生理学的条件下で開裂してAの治療活性形態を生成し、BはAと結合して、Aの治療活性形態より低い溶解性を有するプロドラッグを生じる成分を表す。)医療用装置。
【請求項43】
ポリマーマトリックスは、皮膜からAの治療活性形態の放出速度を実質的に制限しない請求項42の装置。
【請求項44】
基材は、ねじ、平板、ワッシャー、縫合糸、係留仮骨(prosthesis anchor)、鋲、ステープル、導線、弁膜及び膜から選ばれる外科用器具である請求項42の装置。
【請求項45】
カテーテル、移植用血管結合部材(vascular access ports)、血液貯蔵袋、血液チューブ、中心静脈カテーテル、動脈カテーテル、代用血管、大動脈内バルーンポンプ、心臓弁膜、心臓血管の縫合糸、人工心臓、ペースメーカー、心室補助ポンプ、体外装置、血液フィルター、血液透析ユニット、血液吸着ユニット、血漿交換ユニット及び血管内配置用フィルターの群から選ばれる請求項42の装置。
【請求項46】
血管用ステントである請求項42の装置。
【請求項47】
拡張可能なステントであり、上記皮膜は拡張可能なステントの圧縮又は拡張状態に適応できる柔軟性を備えている請求項46の装置。
【請求項48】
プロドラッグが使用される皮膜の重量は、上記ポリマーマトリックスで被覆された表面1cm2あたりプロドラッグ約0.05〜50mgの範囲である請求項42の装置。
【請求項49】
皮膜が5〜100μmの厚さである請求項42の装置。
【請求項50】
プロドラッグが皮膜重量の5〜70%存在する請求項42の装置。
【請求項51】
患者の体内へ移植されている期間中、被覆された表面がAの治療活性形態を放出する請求項1〜6のいずれかのポリマー配合物で被覆された1以上の表面を有する、患者の体内への移植用医療用装置を含む被覆された装置の組み合わせ。
【請求項52】
装置は、ステントの縦軸にそって伸びている内部管腔表面及び反対側の外側表面を有し、細長く放射状に拡張可能な管状ステントである請求項51の被覆された装置。
【請求項53】
患者の体内へ内挿可能又は移植可能であり、体内組織と接触する表面を有する部分を少なくとも1つ有するステントであり、その表面の少なくとも一部は少なくとも1つの生物学的活性物質を放出する皮膜で覆われており、上記皮膜は低溶解性プロドラッグが分散しているポリマーマトリックスを含み、上記低溶解性プロドラッグは一般式A−L−Bで表される(Aは患者に臨床的応答を生じる治療活性形態を有する薬成分を表し、LはA及びBに結合しプロドラッグを形成する共有結合型のリンカーを表し、上記リンカーは生理学的条件下で開裂してAの治療活性形態を生成し、BはAと結合して、Aの治療活性形態より低い溶解性を有するプロドラッグを生じる成分を表す)ステント。
【請求項54】
生体適合性のあるポリマー及びポリマー中に分散された低溶解性プロドラッグを有する持続的放出システムで被覆された管腔内(intraluminal)医療用装置であり、上記装置は内側表面及び外側表面を有し;上記装置には内側表面、外側表面又はその両方の少なくとも一部に上記システムが適用されている装置。
【請求項55】
生体内に設置された医療用装置の表面からのドラッグデリバリー用コーティング組成物であり、組成物は低溶解性プロドラッグが分散しているポリマーマトリックスを含み、上記低溶解性プロドラッグは一般式A−L−Bで表され(Aは患者に臨床的応答を生じる治療活性形態を有する薬成分を表し、LはA及びBに結合しプロドラッグを形成する共有結合型のリンカーを表し、上記リンカーは生理学的条件下で開裂してAの治療活性形態を生成し、BはAと結合して、Aの治療活性形態より低い溶解性を有するプロドラッグを生じる成分を表す。)、噴霧及び/又は上記組成物中への装置の浸漬により上記医療用装置表面へ被覆するために液状又は懸濁状であるコーティング組成物。
【請求項56】
生体内に設置された医療用装置の表面からのドラッグデリバリー用コーティング組成物であり、組成物は低溶解性プロドラッグが分散しているポリマーマトリックスを含み、上記低溶解性プロドラッグは一般式A−L−Bで表され(Aは患者に臨床的応答を生じる治療活性形態を有する薬成分を表し、LはA及びBに結合しプロドラッグを形成する共有結合型のリンカーを表し、上記リンカーは生理学的条件下で開裂してAの治療活性形態を生成し、BはAに結合した場合、Aの治療活性形態より低い溶解性を有するプロドラッグを生じる成分を示す。)、噴霧及び/又は上記組成物中への装置の浸漬により上記医療用装置表面へ被覆するために、溶媒の添加で液状又は懸濁状に戻すことが出来る粉状コーティング組成物。
【請求項57】
患者へのドラッグデリバリー用注射用組成物であり、組成物は低溶解性プロドラッグが分散しているポリマーマトリックスを含み、上記低溶解性プロドラッグは一般式A−L−Bで表される(Aは患者に臨床的応答を生じる治療活性形態を有する薬成分を表し、LはA及びBに結合しプロドラッグを形成する共有結合型のリンカーを表し、上記リンカーは生理学的条件下で開裂してAの治療活性形態を生成し、BはAに結合した場合、Aの治療活性形態より低い溶解性を有するプロドラッグを生じる成分を表す。)、注射針によるデリバリー投与用の液状又は懸濁状組成物。
【請求項58】
ポリマーマトリックス及び治療効果のある量の低溶解性プロドラッグを混合することを含む持続的放出システム(放出用配合物)の製造方法であり、
(i)上記低溶解性プロドラッグは一般式A−L−Bで表され(Aは患者に臨床的応答を生じる治療活性形態を有する薬成分を表し、LはA及びBに結合しプロドラッグを形成する共有結合型のリンカーを表し、上記リンカーは生理学的条件下で開裂してAの治療活性形態を生成し、BはAに結合した場合、Aの治療活性形態より低い溶解性を有するプロドラッグを生じる成分を表す。);
(ii)ポリマーマトリックスは、Aの治療活性形態を透過して、ポリマーマトリックスからのAの治療活性形態の放出速度を実質的に制限しない;
持続的放出システム製造方法。
【請求項59】
更にポリマーマトリックス及びプロドラッグの混合物を外科用器具の表面へ適用するステップを有する請求項58の方法。
【請求項60】
目的とする局部的又は全身的な生理学的又は薬理的効果を得るためのほ乳類の器官を処置する方法であり、ほ乳類へ請求項1〜6のいずれかの配合物を治療効果のある量で投与することを含む方法。
【請求項61】
Aの治療活性形態の持続的に投薬処方で患者を治療するための薬剤の製造における請求項1〜6のいずれかのシステム(配合物)の使用方法。
【請求項62】
Aの治療活性形態は、プロドラッグのlogP値より少なくとも2logPユニット少ないlogP値を有する請求項5又は6の配合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【公開番号】特開2011−52015(P2011−52015A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270741(P2010−270741)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【分割の表示】特願2002−584931(P2002−584931)の分割
【原出願日】平成14年4月26日(2002.4.26)
【出願人】(501224877)シヴィダ・インコーポレイテッド (15)
【復代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
【Fターム(参考)】