説明

コニオスルフィドおよびそれらの誘導体、製造方法、および医薬品としての使用

【課題】退行性神経障害またはアルツハイマー病の、治療および予防用医薬の製造のための化合物を提供すること。
【解決手段】微生物Coniochaeta ellipsoidea Udagawa,DSM 13856による培養中に産生される式(VI)


で示される化合物(コニオセチン、Coniosetin)。コニオセチンは、アミロイド前駆タンパク質−FE65相互作用について強力な阻害性を示し、したがって退化性の神経障害およびアルツハイマー病の治療および予防に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物Coniochaeta ellipsoidea Udagawa, DSM 13856による培養中に産生されるファルネシルチオペプチド型の新規有効な化合物コニオスルフィド類(coniosulfides)、コニオスルフィド類から誘導された化学的誘導体、それらの製造方法、並びにコニオスルフィド類およびそれらの誘導体の医薬品としての使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、アルツハイマー病(アルツハイマー型痴呆:AD)は、精神障害の増大に結びつく、遺伝性で否応無く進行する大脳皮質の萎縮であるとされている。アルツハイマー病は、主に老人層に発症する神経精神医学的な疾患である。本疾患は、記憶障害、注意力低下、適応障害、言語障害、論理的思考能力における障害などを含む症状の複合体として現れる。アルツハイマーの患者においては、アミロイドプラークと呼ばれるものの堆積、および神経細胞内の神経原線維(“原線維束”と呼ばれるもの)の変性などの特徴的な神経組織学的変化が見られる。これらの変化は特徴的であるが、正常な老化過程においても軽度に生じるため、決して特異的ではない。
【0003】
現在、ADの治療は対症的にのみ可能であり原因に対するものではない。今までのところで使えるようになった薬剤は、本疾患の進行を遅らせることのみが可能であり、治すことはできない。最も重要な治療の研究法は、大脳のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤群(Tacrin(R)、Donepezil(R)、Rivastigmin(R)、Galantamin(R))によって提供されており、それはコリン作動性シグナルの伝達が、ADにおいて極めて著しく損なわれる記憶に関連性のある組織にとって非常に重要なためである。しかしながら、それらの薬剤は本疾患が軽度および中程度の段階においてのみ使用され得る。それらの薬剤は、脳内の情報伝達シナプスにおいてアセチルコリン濃度を上げる。神経への損傷が過大になったとき、つまり本疾患の末期段階ではもはやそれらに効果はない。使用が試された他の物質には、エストロゲン、非ステロイド性鎮痛薬、抗酸化剤および神経成長因子(NGFs)がある。しかし、これらの薬剤はどれもアルツハイマー病の治療に十分に有効ではなかった。
【0004】
現在、ドイツ連邦共和国の約百万の国民がアルツハイマー病を患っていると概算される。この人数は、国民の平均余命の上昇により、恐らくこの数年の内になおいっそう増加するであろう(F. Kohl, Prax. Naturwiss.biol.(1999),48(6), 26-31)。したがって、この疾患を治療するための新規物質が早急に必要である。
【0005】
アミロイドプラークと呼ばれるものは、ADに特徴的な脳内の組織学的変化を象徴している。これらのプラークは、β−アミロイドペプチドもしくはβA4タンパク質の病的な堆積であり、それは代謝障害の結果、生理学上の細胞膜成分から分離されたもの、すなわちアミロイド前駆タンパク質(APP)である。それはさらに脳内で濃縮し、そこで本物質により限界まで分解されプラークが生じる(F. Kohl, Prax.Naturwiss.biol.(1999),48(6), 26-31;D. J. Selkoe;Trends Cell Biol.(1998), 8, 447-453)。アミロイドプラークの主要な構成成分は、39から43のアミノ酸から成るペプチド、すなわちβ−アミロイドもしくはAβと呼ばれるものである。このペプチドはAPPの変質過程の途中につくられる。この変質過程をコード化する遺伝子の突然変異が、遺伝型のADに罹っている患者において発見されている。Aβの産生増加が同じ患者において観察された。このことから、APPの変質過程はアルツハイマー病治療の適切な着手ポイントとなり得ることが考察された。その構成成分のテトラペプチド配列Asn−Pro−Thr−Tyrは、APPの変質過程においてある役割を担っている。この構成成分の配列はタンパク質COFE65および、特にFE65によって認識され、またこれらのタンパク質は、APPの変質過程を招いたタンパク−タンパク相互作用に関与すると仮定される(WO 98/21327)。APP-FE65の相互作用を阻害する薬剤は、したがってAD治療に有効な医薬品となるはずである。
【0006】
ファルネシルチオペプチドの基本構造を持つ化合物は、既にいくらか知られている。
Eng Wui Tanら(J. Am. Chem. Soc.(1991), 113, 6299-6300)およびBryant A. Gilbert(J. Am. Chem. Soc.(1992), 114, 3966-3973)は、ファルネシルシステインおよびファルネシルシステインオキシドを記述しており、
【化1】

これらはイソプレニル化されたタンパク質、メチルトランスフェラーゼの良い基質である。
【0007】
生体膜への固着に関するタンパク質のプレニル化の重要性は、既に以前より開示されている(J. A. Glomsetら, Trends in Biochem. ciences(1990), 15, 139-142)。
【0008】
Miyakawaら(J. Bacteriol.(1982), 151, 1184-1194)は、化合物ロドトルシンA(p=0)およびロドトルシン−A−S−オキシド(p=1)を、
【化2】

Rhodosporidium toruloidesA型細胞の性ホルモンとして記述している。
【0009】
驚いたことに、菌株Coniochaeta ellipsoidea Udagawa, DSM 13856は、APPとFE65の相互作用を効果的に阻害するのみならず、また相当に許容性のある新規化合物の産生が可能であることがわかった。これらの化合物は式(I)のファルネシルチオペプチド誘導体であり、コニオスルフィド(coniosulfides)と称され下記に記述される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は式(I)
【化3】

の化合物に関し、
式中
R1
1.0 H、または
2.0 -C1-C6-アルキル、-C2-C6-アルケニル、-C2-C6-アルキニルまたは-C6-C10-アリールから選択される基であり、これらは次の置換基により1ないし2回置換することができる。
【0011】
2.1 -OH、
2.2 =O、
2.3 -O-(C1-C6-アルキル)、
2.4 -O-(C2-C6-アルケニル)、
2.5 -C6-C10-アリール、
2.6 -NH-C1-C6-アルキル、
2.7 -NH-C2-C6-アルケニル、
2.8 -NH2もしくは
2.9フッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素、
ここで置換基2.3から2.8は、さらに-CNもしくは−アミド基、または、
3.0 -(C1-C4-アルキル)-(C6-C10-アリール)、または
4.0 -NH2、-NH-(C1-C6-アルキル)、-NH-(C2-C6-アルケニル)で置換することができ、
R2はH、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルもしくはイソブチル、
R3は1から10個のアミノ酸から成り、-CO-(C1-C6-アルキル)基もしくは-C1-C6-アルキル基でN末端が保護することができ、
R4はH、-C1-C6-アルキル、-CO-(C1-C6-アルキル)、もしくは-(C1-C4-アルキル)-(C6-C10-アリール)、並びに
pは整数0、1または2であり、
式(I)の化合物は、同時に
R1 がH、
R2 がH、
R3 が-CO-CH3
R4 がH、および
pが0もしくは1
である場合を除き、
および/または式(I)の化合物の立体異性形、および/またはこれらの任意の割合の混合物、
および/または式(I)の化合物の錯体もしくは付加体、
および/または式(I)の化合物の生理学上許容しうる塩である。
【0012】
R1は好ましくはHである。
R2は好ましくはHまたはメチルであり、特に好ましくはメチルである。
R3は好ましくは1から2個のアミノ酸、好ましくは天然アミノ酸、特に好ましくは無電荷の天然アミノ酸であり、そのN末端が好ましくはアセチル基で保護することができる基である。
R4は好ましくはHであり、
pは好ましくは0である。
【0013】
本発明は、好ましくはR4がH、並びにR1、R2、R3およびpが上記のとおり定義される式(I)の化合物に関する。
【0014】
本発明はさらに好ましくは、R4が水素、並びにpが0、並びにR1、R2およびR3が上記のとおり定義される式(I)の化合物に関する。
【0015】
特に好ましくは、本発明は、R2がHもしくはメチル、R4が水素、並びにpが0、並びにR1およびR3が上記のとおり定義される式(I)の化合物に関する。
【0016】
本発明はさらに特に好ましくは、R2がHもしくはメチル、R3が1から2個のアミノ酸で構成されN末端は保護することができる基、R4が水素およびpが0およびR1が上記のとおり定義される式(I)の化合物に関する。
【0017】
とりわけ好ましくは、R1がH、R2がメチル、R3が1から2個のアミノ酸で構成されN末端は保護することができる基、R4が水素およびpが0である式(I)の化合物に関する。
【0018】
特にとりわけ好ましくは、本発明はR1が水素、R2が水素もしくはメチル、R3はN末端が保護することができるGlyもしくはGyl−Gly基、R4が水素およびpが0である式(I)の化合物に関する。
【0019】
アミノ酸は立体配置でD配置もしくはL配置をとることができる。天然アミノ酸はコード化できるアミノ酸であり、L配置である。天然の中性アミノ酸はグリシン(Gly)、L−アラニン(Ala)、L−バリン(Val)、L−ロイシン(Leu)、L−イソロイシン(Ile)、L−プロリン(Pro)、L−トリプトファン(Typ)、L−フェニルアラニン(Phe)、およびL−メチオニン(Met)である。
【0020】
C1-C6-アルキルは、1から6個のC原子、好ましくは1から4個のC原子を持つ、直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、tert−ブチルもしくはn−ヘキシルである。
【0021】
C2-C6-アルケニルは2から6個のC原子を持ち、一度、二度もしくは三度不飽和化された直鎖もしくは分枝鎖アルケニル基であり、例えばアリール、クロチル、1−プロペニル、ペンタ−1,3−ジエニルもしくはペンテニルである。
【0022】
C2-C6-アルキニルは2から6個のC原子を持ち、1から2個の三重結合を含む、直鎖もしくは分枝鎖アルキニル基であり、例えばプロピニル、ブチニルもしくはペンチニルである。
【0023】
C6-C10-アリールは6から10個の環状C原子、例えばフェニルもしくはナフチルを持ち、例えば塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、C1-C4-アルキル、好ましくはメチル、ヒドロキシル、-O-(C1-C4-アルキル)、好ましくはメトキシ、もしくは全フッ素置換されたC1-C4-アルキル基、好ましくはトリフルオロメチルによって、一度もしくはそれ以上置換することができるアリール基である。
【0024】
-(C1-C4-アルキル)-(C6-C10-アリール)は好ましくはベンジルである。
【0025】
-CO-(C1-C6-アルキル)は2から7個のC原子、好ましくは2から5個のC原子を持つ脂肪族のアシル基、例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヘキサノイル、アクリロイル、クロトノイル、プロピオロイルであり、その基はさらに、例えば塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、NH2もしくは-(C1-C4-アルキル)-NH2、好ましくはメチルアミノもしくはエチルアミノによって置換することができる。
【0026】
-CO-(C2-C6-アルケニル)は3から7個のC原子、好ましくは3から5個のC原子を持つ脂肪族のアシル基、例えばアクリロイル、クロトノイル、もしくはプロピオロイルであり、その基はさらに、例えば塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、NH2もしくは-(C1-C4-アルキル)-NH2、好ましくはメチルアミノもしくはエチルアミノによって置換することができる。
【0027】
-CO-(C6-C10-アリール)は、例えばベンゾイルもしくはナフトイルなどの6から10個の環状C原子を持つ芳香族のアシル基であり、それらは例えば塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、C1-C4-アルキル、好ましくはメチル、ヒドロキシル、-(C1-C4-アルキル)-NH2、好ましくはメチルアミノもしくはエチルアミノ、-(C1-C7-アルキル)、好ましくは-O-(C1-C4-ア
ルキル)、特にはメトキシによって、またさらに置換することができる。
【0028】
別段の指示がない限り、式(I)の化合物におけるキラル中心は、相互に独立して、R配置もしくはS配置の形で存在することができる。二重結合は相互に独立してシス位もしくはトランス位の形で存在し得る。本発明は光学的に純粋な化合物、並びに例えばエナンチオマー混合物およびジアステレオマー混合物など、任意の割合における立体異性の混合物の両者に関する。
【0029】
本発明は、好ましくは式(II)の化合物
【化4】

【0030】
式(III)の化合物
【化5】

【0031】
式(IV)の化合物
【化6】

【0032】
および式(V)の化合物
【化7】

並びにそれらの明らかな化学的等価物および/もしくは生理的に許容とされる塩に関連する。
【0033】
式(I)から(V)の化合物の化学的等価物は、微細な化学的差異を示し、そのために同等の活性を有する化合物であり、もしくは緩和な条件下で本発明記載の化合物に転化される化合物である。上記等価物は、本発明記載の化合物の、もしくはそれを用いた、例えばエステル、アゾメチン(シッフ塩基)、水素付加生成物、還元生成物、錯体もしくは付加化合物を含み、それらの全ては文献(J. March, Advanced Organic Synthesis, 4th Edition, John Wiley & Sons, 1992)において知られている方法により製造される。
【0034】
式(I)の化合物におけるアルキル鎖の二重結合は、例えば“Hydrogenation Methode”,
Academic Press, New York(1985), Chapter 2の中のP. N. Rylander によって、もしくは“Modern Synthetic Reactions”, W. A. Benjymin, Inc., New York(1972), pages 446-452におけるH. O. Houseによって記述され、それ自体知られている水素化分解法もしくは他の方法を用いて還元することができる。さらにその二重結合は、例えばメタ−クロロ過安息香酸を用いるなどしてエポキシドに酸化することができる(MCPBA;J. March, Advanced Organic Synthesis, 4th Edition, John Wiley & Sons, 1992)。
【0035】
本発明の式(I)から(V)の化合物、およびこれらの化合物の化学的等価物もまた、当業者に知られている方法を用いて、その対応する生理学上許容しうる塩に転化することができる。
【0036】
Remingtons Pharmaceutical Sciences(17th edition, page 1418[1985])において記述されるように、本発明の化合物の生理学上許容しうる塩は、無機塩および有機塩として理解される。特に適する塩は、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩、生理学上許容しうるアミンを用いた塩、並びにHCl、HBr、H2SO4、マレイン酸およびフマル酸のような無機もしくは有機酸を用いた塩である。
【0037】
本発明の式(I)の化合物は、文献から知られる物質とは異なる。構造上関連のあるファルネシルチオペプチドは既に記述されているが(前記参照)、それらは厳密な化学構造において、および活性において本発明記載の化合物と異なっている。
【0038】
本発明はさらに、培地において式(I)の化合物が蓄積するまでConiochaeta ellipsoidea Udagawa, DSM 13856、またはその突然変異種もしくは変種のひとつを培地中で培養させ、それから式(I)の化合物を分離し、場合によりそれを誘導化しおよび/または、適当なところで、それを生理学上許容しうる塩に転化することによって得られる式(I)の化合物に関する。
【0039】
本発明はなおさらに、式(I)の化合物を製造する方法に関連し、そのことは、式(I)の化合物が培養ブロスの中で蓄積するまで微生物Coniochaeta ellipsoidea Udagawa, DSM 13856またはその変種もしくは突然変異種を培養させ、式(I)の化合物を分離し、それから場合によりそれを誘導化し、適当なところで、それを生理学上許容しうる塩に転化することを含むものである。
【0040】
式(I)の化合物が誘導化されるときは、それ自体知られる方法(J. March, Advanced Organic Chemistry, Wiley & Sons, 4th ed. 1992)が用いられ、その例としては、-NR3R4基、ここでR4は水素、をアルキル化もしくはアシル化すること、例えばMCPBA、過酸化水素もしくは過酢酸または他の過酸を用いるなどして、スルフィド基(p=0)のS原子をスルホキシド誘導体(p=1)もしくはスルホン誘導体(p=2)に酸化すること、および/または活性アルコールを用いて、式(I)の化合物の遊離酸基、ここでR1は水素、をエステル化することなどが挙げられる。活性化アルコールの例としては、ジアゾメタンもしくは他のアルコール誘導体が挙げられる。
【0041】
反応を選択的に行うために、その反応に先立ち、それ自体知られた方法で適した保護基を導入することが有利である。保護基は反応の後除去されることが可能であり、適当なところで、その後反応生成物は精製される。
【0042】
当該真菌Coniochaeta ellipsoidea Udagawaは、ブダペスト条約の規定に従い、2000年11月17日、以下の番号:DSM 13856のもとDeutsche Sammlung von Mikroorganismen and Zellkulturen[German Collection of Microorganisms and Cell Cultures]GmbH(DSM), Mascheroder Weg 1B,38124 Brunswick, Germanyに寄託された。該真菌は、白色基質の菌糸体および非常に小さな気生の菌糸体を持ち、並びに培養においてはConiochaeta属の特徴である子実体をまったく形成しない。
【0043】
式(I)の化合物を製造する方法には、好ましくは、Coniochaeta ellipsoidea Udagawa
またはその突然変異種および/または変種を、好気的環境のもと各場合において炭素原、窒素原、無機塩および、ここで適した微量元素のいずれかを含む培地の中で培養すること、が含まれる。
【0044】
本発明の化合物を合成するならば、菌株DSM 13856の代わりにその突然変異種および/または変種の使用も可能である。
【0045】
突然変異種は同種に属するがその遺伝子は異なり、結果異なった遺伝子型を構成する有機体である(“遺伝子型:通常は特別な前後関係に関連した1つの遺伝子もしくは2〜3の遺伝子を尊重した有機体の遺伝的構造”, McGraw-Hill, Dictionary of scientific and technical terms, McGraw-Hill Book Company. N.Y. 1978, page 672)。
【0046】
突然変異種の製造法はとりわけ、Brockら“Biology of Microorganisms”, Prentice Hall, pp.238-247(1994)の中で記述されており、それによると、例えば紫外線もしくはX線を用いた照射などの物理的方法、または例えばエチルメタンスルホネート(EMS);2-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン(MOB)もしくはN−メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)などの化学的突然変異誘導原は突然変異を誘発することができる。
【0047】
本発明の目的の範囲内における変種は同一のゲノムを有するが、それらはその野生型フェノタイプにおいて異なる(“フェノタイプ:有機体の識別可能な特徴”, McGraw-Hill, Dictionary of scientific and technical terms, McGraw-Hill Book Company. N.Y. 1978, page 1199)。微生物はその環境次第で異なるフェノタイプに発達する能力を有する:“微生物は環境変化に適応する能力を持つ。この適応資質は観察される生理学的可動性の根拠である。フェノタイプの適応においては、ひとつの個体群全ての細胞が関与している。このタイプの変化は遺伝子的に条件づけられていない。それは、変えられた条件下で可逆的である、ひとつの変異である”(H.Stolp,“Microbial ecology: organisms, habitats, activities”, Cambridge University Press, Cambridge, GB, 1988, page 180)。
【0048】
本発明の化合物において使用される突然変異種および変種を選別することは、培養ブロスにおいて蓄積されたその活性な化合物の生物学的活性を測定することによって、もしくは高速液体クロマトグラフィー(HPLC測定)によって可能である。
【0049】
培養に適した炭素源の例としては、グルコース、ラクトース、スクロースもしくはD−マンニトールなどの、吸収できる炭水化物および糖アルコール、並びにモルト抽出物もしくはイースト抽出物などの炭水化物を含む天然生産物が挙げられる。適した窒素含有栄養分の例としては、カゼイン、ペプチドもしくはトリプトンなどのアミノ酸、ペプチドおよびタンパク質並びにそれらの分解生成物、およびさらに肉の抽出物、イースト抽出物、例えばトウモロコシ、小麦、豆類、大豆もしくは綿花などから得てすりつぶした種、アルコール製造から得た蒸留残留物、挽き割りの肉粉もしくはイースト抽出物、並びに合成もしくは生合成で得られるアンモニウム塩および硝酸塩、特にペプチドも挙げられる。栄養溶液中で存在し得る無機塩の例としては、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩化物、硫酸塩もしくはリン酸塩挙げられ、一方、微量元素の例としては、鉄、亜鉛、コバルト、モリブデン、ホウ素、バナジウムおよびマンガンが挙げられる。
【0050】
培地は好ましくはモルト抽出物、イースト抽出物、グルコース、デンプン、ロールドオート、および/またはグリセロールを含み、特に好ましくは、成分量として0.05から5%好ましくは1から2%のモルト抽出物、0.05から3%好ましくは0.05から1%のイースト抽出物、0.2から5%好ましくは0.5から2%のグルコース、および0.5から3%好ましくは1.5から3%のロールドオートを含むこととし、それぞれは全栄養溶液の重量を基準としている。
【0051】
この栄養溶液中で、Coniochaeta ellipsoidea Udagawa, DSM 13856は本発明の式(I)の化合物の混合物をつくる。本発明のコニオスルフィドのいずれかの量的割合は、栄養溶液の組成に従って変化することができる。さらに培地の組成は、本微生物が特定のコニオジスルフィド(coniodisulfide)を全く産生できないように、もしくは測定限界を下回る量しか産生できないように個々のコニオスルフィドの合成を制御するために用いることができる。
【0052】
本微生物は好気的に、つまり、例えば振盪用フラスコもしくは培養槽の中で振盪もしくは撹拌されている溶液内において、または、適したところで空気もしくは酸素を注入している固形培地において培養されることが好ましい。培養は約15から35℃、好ましくは20から35℃、特に25から30℃の温度域で行うことができる。pH域は3から10の間、好ましくは6.5から7.5の間とされるべきである。本微生物は通常これらの条件のもと48から960時間
、好ましくは72から720時間以上培養される。
【0053】
有利なことにそれは数段階で培養される、すなわち、一度もしくはそれ以上の前培養が液体栄養培地での全調製の第一段階であり、そして前培養したものはそれから、例えば1:10〜1:100の容量比で本格的な製造培地、すなわち主培養へ播種される。前培養は、例えば菌糸体を栄養溶液に播種し、約20から120時間、好ましくは48から72時間増殖させることによって得られる。菌糸体は、例えばイースト−モルト寒天、ロールドオート寒天もしくはポテトデキストロース寒天などの、固形もしくは液体栄養培地において菌株を約1から40日間、好ましくは21から35日間増殖させることによって得られる。
【0054】
培養の過程および本発明の化合物の生成は、当業者に知られている方法、例えば生物検定において生物学的活性を検査することにより、または薄層クロマトグラフィー(TLC)もしくは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のようなクロマトグラフィー法の手段などに従って観察することができる。
【0055】
本真菌Coniochaeta ellipsoidea Udagawa, DSM 13856は、固体栄養培地上での表面培養もしくは静置培養の方法によりコニオスルフィドを産生することができる。固体栄養培地は、例えば寒天もしくはゼラチンを水溶性栄養培地に添加して調製される。一方コニオスルフィドは本真菌Coniochaeta ellipsoidea Udagawaを、溶液内すなわち水溶性の懸濁液中で培養させても得られる。コニオスルフィドは菌糸体および培養濾過液のどちらの中でも存在することができ、通常その量の多くは細胞集団に存在する。したがって、濾過もしくは遠心分離により培養溶液を分離することが得策である。濾過液は固層のような吸着樹脂を用いて抽出される。菌糸体およびその表面培養も、例えばアセトニトリル、n−プロパノールもしくはイソプロパノール、好ましくはメタノールもしくはアセトンなどの水と混和性の溶媒を用いて、または例えばクロロホルム、ジクロロメタン、好ましくはtert−ブタノールもしくは酢酸エチルなどの、水と混和性でない溶媒を用いて抽出される。式(I)の化合物は、好ましくはメタノールもしくは2−プロパノールを用いて抽出される。
全ての抽出は広いpH域に渡って実行することができる、中性もしくは弱酸性、好ましくはpH3およびpH8の間の培地で行うと都合が良い。抽出物は減圧下で濃縮および乾燥することができる。
【0056】
本発明のコニオスルフィドを分離する方法は、それ自体知られている手段での、溶媒間の溶液分配法、および/または異なる極性の固体上での吸着分配法である。
【0057】
精製の他の方法としては、例えばDiaion(R) HP-20(Mitsubishi Casei Corp., Tokyo)、Amberlite(R) XAD 7(Rohm and Haas, USA)、Amberchrom(R) CG,(Toso Haas, Philadelphia, USA)などの吸着樹脂もしくは類似した樹脂上でのクロマトグラフィーがある。さらに
、よく知られてきているように、例えば高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)関係の範疇における、RP8およびRP18など多数の逆層担体が適している。
【0058】
本発明のコニオスルフィドを精製する他の可能性としては、それ自体知られている方法により、シリカゲルもしくはAl2O3などの順層クロマトグラフィー担体と呼ばれるものを使用することである。
【0059】
代わりの分離法としては、それ自体知られている方法により、例えばFractogel(R) TSK HW-40, Sephadex(R) G-25およびその他の分子ふるいを使用するものがある。これに加えて、濃縮物から結晶化することによりコニオスルフィドを得ることも可能である。例えば有機溶媒およびその混合物、これらは無水もしくは加水されたものであるが、この目的に適している。本発明の化合物を分離および精製するさらなる方法としては、陰イオン交換を、好ましくはpH域4から10の範囲において用いるもの、および陽イオン交換を、好ましくはpH域2から5の範囲において用いるものがある。望ましい比率の有機溶媒が加えられた緩衝溶液の使用が、この目的には特に適している。
【0060】
これに加えて菌株Coniochaeta ellipsoidea Udagawa, DSM 13856は、第三級アミド酸誘導体、式(VI)を産生し、
【化8】

それはコニオセチン(coniosetin)と呼ばれ、同様にAPP-FE65反応を阻害する。
【0061】
別段の指示がない限り、式(VI)の化合物におけるキラル中心は、光学的に純粋な化合物として、もしくはエナンチオマー混合物およびジアステレオマー混合物などの立体異性の混合物として、R配置もしくはS配置をとることができる。
【0062】
式(VI)の化合物は、式(VIA)で示される立体構造を持つことが好ましい。
【化9】

【0063】
式(VI)のコニオセチンを得るためには、コニオスルフィドおよびコニオスルフィド誘導体を得るために特定された値に対応する培養温度、pH、培地の成分のもとでConiochaeta ellipsoidea Udagawa, DSM 13856が培養され、次にコニオスルフィドおよびコニオスルフィド誘導体のために特定された方法に対応する抽出および精製法を用いて、抽出および分離される。式(VI)のコニオセチンは次いで、場合によって明白な化学的等価物および/または薬理学的に許容とされる塩に転化することができる。
【0064】
式(VI)および式(VIA) の化合物の化学的等価物および薬理学上許容しうる塩は、式(I)から(V)の化合物として定義される。
【0065】
コニオセチンおよびコニオセチン誘導体、それらをConiochaeta ellipsoidea Udagawa,
DSM 13856を培養することによって製造する方法、並びにコニオセチンおよびコニオセチン誘導体の医薬品としての使用はドイツ特許出願番号DE 1006081 0.8に記載されている。
【0066】
本発明の式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)および(VIA)の化合物は、アミロイド前駆タンパク質−FE65相互作用について強力な阻害性を示し、したがって退化性の神経障害およびアルツハイマー病の治療および予防に適していることが見いだされた。表1に実施例の方法による阻害定数がまとめられている。
【0067】
〔表1〕
表1:コニオスルフィドA−Dおよびコニオセチンによるアミロイド前駆タンパク質−FE65相互作用の阻害:
コニオスルフィドA(式(III) IC50=2.3μM
コニオスルフィドB(式(IV) IC50=2.6μM
コニオスルフィドC(式(V) IC50=3.8μM
コニオスルフィドD(式(VI) IC50=3.8μM
コニオセチン IC50=28μM
【0068】
本発明は、少なくとも式(I)の化合物の1つ、好ましくは式(II)から(V)の化合物、並びに、1つもしくはそれ以上の生理的に適した賦形剤および/または補助的な物質を含有する医薬品にも関する。
【0069】
本発明はさらに、式(I)の化合物、好ましくは式(II)から(V)の化合物の医薬品としての使用に関するものである。
【0070】
本発明はさらに、退化性の神経障害、好ましくは老人性痴呆もしくはアルツハイマー病の、治療および/または予防のための医薬品製造における、式(I)の化合物、好ましくは式(II)から(V)の化合物の使用に関連する。
【0071】
本発明はまた、退化性の神経障害、好ましくは老人性痴呆もしくはアルツハイマー病の、治療および/または予防のための医薬品製造における、式(VI)、好ましくは式(VIA)の化合物の使用にも関連する。
【0072】
医薬品は、式(I)から式(VI)の化合物の少なくとも1つを、生理的に適した賦形剤および/または補助的な物質の少なくとも1つと混合し、それを投与に適した形態にすることにより製造される。
【0073】
本発明記載の医薬品は、経腸的に(経口的に)、非経口的に(筋肉内にもしくは静脈内に)、直腸内にもしくは局在的に(局所的に)使用することができる。それらは水剤、散剤、錠剤、マイクロカプセルを含むカプセル剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤もしくは懸濁剤の形態で投与することができる。この性質の製剤のための生理的に適した賦形剤もしくは補助的な物質は、薬学的に慣習な液状および固形の賦形剤および増量剤、溶剤、乳化剤、グリコール、矯味剤、色素および/または緩衝物質である。投与にかなう量は、体重あたり0.1−1000好ましくは0.2−100mg/kgである。本医薬品は、例えば本発明記載の化合物の有効一日量、例えば30−3000好ましくは50−1000mgを含有する投与単位で投与されることが都合良い。
【0074】
次に示す実施例は、本発明の更に詳細に説明しようとするものであり、本発明の範囲を制限しようとするものではない。
【実施例1】
【0075】
Coniochaeta ellipsoidea Udagawa, DSM 13856のグリセロール培養の調製
30mLの栄養溶液(モルト抽出物 2.0%、イースト抽出物 0.2%、グルコース1.0%、(NH4)2HPO4 0.05%、pH 6.0)は、菌株Coniochaeta ellipsoidea Udagawa, DSM 13856と共に、無菌の100mLエルレンマイヤーフラスコの中に播種され、25℃および140rpmのもと回転式振盪機の上で6日間培養された。この培養液1.5mlはそれから80%グリセロール2.5mlで希釈され、−135℃で保存された。
【実施例2】
【0076】
エルレンマイヤーフラスコ内でのConiochaeta ellipsoidea Udagawa, DSM 13856前培養の調製
100mLの栄養溶液(モルト抽出物 2.0%、イースト抽出物 0.2%、グルコース 1.0%、(NH4)2HPO4 0.05%、pH 6.0)は、菌株Coniochaeta ellipsoidea Udagawa, DSM 13856と
共に無菌の300mLエルレンマイヤーフラスコの中に播種され、25℃および140rpmのもと、
回転式振盪機の上で4日間培養された。この前培養液2mlはそれから主培養の調製に用いられた。
【実施例3】
【0077】
固体培地プレート上におけるConiochaeta ellipsoidea Udagawa, DSM 13856主培養の調製
100個の無菌の22×22cm2プレートそれぞれに、次に示す栄養溶液200mL、つまりモルト抽出物20g/L、ロールドオート20g/L、寒天2%およびpH7.0の溶液、が注がれた。
これらのプレートは前培養液2mlと共に播種され、25℃で培養された。本発明のコニオスルフィドのいずれかの化合物の最大生産には、約676時間後に到達した。
【実施例4】
【0078】
コニオスルフィド類の分離
実施例3に従い得られた100個のConiochaeta ellipsoidea Udagawa, DSM 13856の寒天培地は凍結乾燥された。それらから499gの培養凍結乾燥物が生じた。その凍結乾燥物は、3回それぞれ20リットルのメタノールで抽出され、室温のもと減圧下で濃縮され、次に高度減圧下で凍結乾燥された。これは79.8gの未精製抽出物となった。凍結乾燥された未精製抽出物は25%メタノール/0.050mol酢酸アンモニウム/Lに溶かされ、0.5リットルのMCl Gel CHP20P(Mitsubishi Chemical Industries, Tokyo, Japan)で充填されたカラム(50×300mm)に送り込まれた。そのカラムは最初、1Lの25vol%アセトニトリル−75vol% 50mM水性酢酸アンモニウム緩衝液を用いて洗浄され、それから44vol%から100vol%濃度のアセトニトリル/50mM酢酸アンモニウムの直 線勾配を用いて溶出された。HPLC−DAD分析に続き、コニオスルフィドを含有する分画は、減圧下および槽温度38℃のもと回転式蒸留装置にて濃縮され、凍結乾燥された。凍結乾燥されたコニオスルフィド混合物の収量は0.26gであった。このコニオスルフィド混合物はメタノールに溶かされ、LiChrospher RP-18e(10μm, E. Merck, Darmstadt, Germany)(カラム容積:25×250mm2+プレカラム25×10mm2)で充填された調製用のHPLCカラムに詰め込まれた。RPカラムは、最初毎分50mlの流速で30vol%アセトニトリル/50mM酢酸アンモニウム緩衝液を用いて溶出され、それから、分画14以後、30vol%から100vol%濃度のアセトニトリル/50mM酢酸アンモニウム緩衝液の直線勾配を用いて溶出された。それら分画(それぞれ25ml)はHPLC-DADシステムによって分析された。分画30はコニオスルフィドAを含有し、一方分画33はコニオスルフィドB、分画28はコニオスルフィドCおよび分画31はコニオスルフィドDを含有していた。
【実施例5】
【0079】
コニオスルフィドAの最終精製
実施例4の記述に従い得られ、濃縮されたコニオスルフィドA(分画30)は、LiChrospher(R) 100RP-18e HPLCカラム(5μm, 幅×高さ=1cm×25cm)上で、50%アセトニトリル/10mM酢酸を用いて分画された。流速は10mL/分。分析用HPLC(実施例10を参照)を使って調べられたそれら分画は、コニオスルフィドA含有量に合わせてプールされ、減圧下で濃縮され、および凍結乾燥された。その結果98%の純度で8mgのコニオスルフィドAが得られた。
【実施例6】
【0080】
コニオスルフィドAの特性づけ
コニオスルフィドAの物理化学的な特性、および分光学的な特性は次のように要約することができる。
外観:
中程度の極性および極性の有機溶媒に可溶であり、特に水に可溶というわけではない、無色から淡黄色の物質。中性および弱酸性の溶剤に対して安定であったが、強酸性および強アルカリ性の溶液には不安定であった。
実験式: C22H34O4N2S;
分子量: 422.59 Da;
1H NMRおよび13C-NMR: 表2を参照;
UV 極大: 288 nm
質量分析的な検討:
コニオスルフィドAは次に示す結果に基づいて質量422であると特定された:
ESI+スペクトルは423amu(M+H)+、445(M+Na)+および461(M+K)+にピークを認めた。FTICR(Fourier transform ion cyclotron resonance)質量分析計を使用して、とりわけ423.2314amuに、1つのピークが観察された。その測定値は、(M+H)+=C22H35O4N2S=423.2312と算出された質量に一致していた。
FTICR質量分析計を使用したMS/MS実験により、次に示すフラグメントを得た:
ESI+モード: 423amu(M+H)+から324amu(-C4H5NO2)、280amu(-C5H5NO4)、237amu(-C7H10N2O4)、219amu(-C15H24)、205amu(-C7H10N2O4S)、100amu(C4H6O2N+)、およびより小さいフラグメント。
【0081】
【表1】

【実施例7】
【0082】
コニオスルフィドBの最終精製および特性づけ
実施例4の記述に従い得られた濃縮されたコニオスルフィドB(分画33)は、LiChrospher(R) 100RP-18e HPLCカラム(5μm, 幅×高さ=1cm×25cm)上で、50%アセトニトリル/10mM酢酸を用いて分画された。流速は10mL/分。分析用HPLC(実施例10を参照)によって調べられたそれら分画は、コニオスルフィドB含有量に合わせてプールされ、減圧下で濃縮され、および凍結乾燥された。その結果97%の純度で6mgのコニオスルフィドBが得られた。
コニオスルフィドBの物理化学的な特性、および分光学的な特性は次のように要約することができる。
外観:
中程度の極性および極性の有機溶媒に可溶であり、特に水に可溶というわけではない、無色から淡黄色の物質。中性および弱酸性の溶剤に対して安定であったが、強酸性および強アルカリ性の溶液には不安定であった。
実験式: C23H36O4N2S;
分子量: 436.62 Da;
1H NMRおよび13C-NMR: 表3を参照;
UV 極大: 288nm
質量分析的な検討:
コニオスルフィドBは次に示す結果に基づいて質量436であると特定された:
ESI+スペクトルは437amu(M+H)+、459amu(M+Na)+および475amu(M+K)+にピークを認めた。
【0083】
準分子イオンの高度分析: FTICR質量分析計を使用しESI+モードにおいて、とりわけ437.2472amuに、1つのピークが観察された。その測定値は、(M+H)+=C23H37O4N2S=437.2469と算出された質量に一致していた。
FTICR質量分析計を使用したMS/MS実験により、次に示すフラグメントを得た:
ESI+モード: 437amuから338amu(-C4H5NO2)、321amu(-C4H8N2O2)、294amu(-C5H5NO4)、251amu(-C7H10N2O4)、219.04amu(-C16H26)、219.21amu(-C7H10N2O4S)、100amu(C4H6O2N+)
、およびより小さいフラグメント。
【0084】
【表2】

【実施例8】
【0085】
コニオスルフィドCの最終精製および特性づけ
実施例4の記述に従い得られた濃縮されたコニオスルフィドC(分画28)は、LiChrospher(R) 100RP-18e HPLCカラム(5μm, 幅×高さ=1cm×25cm)上で、50%アセトニトリル/10mM酢酸を用いて分画された。流速は10mL/分。分析用HPLC(実施例10を参照)によって調べられたそれら分画は、コニオスルフィドC含有量に合わせてプールされ、減圧下で濃縮され、および凍結乾燥された。その結果98%の純度で18mgのコニオスルフィドCが得られた。
コニオスルフィドCの物理化学的な特性、および分光学的な特性は次のように要約することができる。
外観:
中程度の極性および極性の有機溶媒に可溶であり、特に水に可溶というわけではない、無色から淡黄色の物質。中性および弱酸性の溶剤に対して安定であったが、強酸性および強アルカリ性の溶液には不安定であった。
実験式: C24H37O5N3S;
分子量: 479.64 Da;
1H NMRおよび13C-NMR: 表4を参照;
UV 極大: 288 nm
質量分析的な検討:
コニオスルフィドCは次に示す結果に基づいて質量479であると特定された:
ESI+スペクトルは、502amu(M+Na)+および518amu(M+K)+にピークを認めた。ESI-スペクトルは、とりわけ478amu(M−H)-にピークを認めた。
FTICR質量分析計を使用し、とりわけESI-モードにおいて、478.23810amuに1つのピークが観察された。その測定値は、(M−H)-=C24H36O5N3S=478.23812amuと算出された質量に一致していた。
FTICR質量分析計を使用したMS/MS実験により、次に示すフラグメントを得た:
ESI-モード:478amu(M−H)-から434amu(-CO2)、416amu(-H2CO3)、230amu(-C15H24CO2)
、229amu(-C15H25CO2)、196amu(C8H10N3O3-)、155amu(C6H7N2O3-)、154amu(C6H6N2O3-)、およびより小さいフラグメント。
【0086】
【表3】

【実施例9】
【0087】
コニオスルフィドDの最終精製および特性づけ
実施例4の記述に従い得られた濃縮されたコニオスルフィドD(分画31)は、LiChrospher(R) 100RP-18e HPLCカラム(5μm, 幅×高さ=1cm×25cm)上で、35%アセトニトリル/10mM酢酸アンモニウム緩衝液を用いて分画された。流速は5mL/分。分析用HPLC(実施例10を参照)を使って調べられたそれら分画は、コニオスルフィドD含有量に合わせてプールされ、減圧下で濃縮され、および凍結乾燥された。その結果97%の純度で18mgのコニオスルフィドDが得られた。
コニオスルフィドDの物理化学的な特性、および分光学的な特性は次のように要約することができる。
外観:
中程度の極性および極性の有機溶媒に可溶であり、並びに特に水に可溶というわけではない、無色から淡黄色の物質。中性および弱酸性の溶剤に対して安定であったが、強酸性および強アルカリ性の溶液には不安定であった。
実験式: C25H39O5N3S;
分子量: 493.67 Da;
1H NMRおよび13C-NMR: 表5を参照;
UV 極大: 288 nm
質量分析的な検討:
コニオスルフィドDは次に示す結果に基づいて質量493であると特定された:
ESI+スペクトルは、494amu(M+H)+および516amu(M+Na)+にピークを認めた。ESI-スペクトルは、とりわけ492amu(M−H)-にピークを認めた。
FTICR質量分析計を使用し、とりわけ494.2687amuに1つのピークが観察された。その測定値は、(M+H)+=C25H40O5N3S=494.2683amuと算出される値に一致していた。(0.7ppm偏差)
FTICR質量分析計を使用したMS/MS実験は、次に示す切断を導いた:
ESI+モード:494(M+H)+から476(-H2O)、395(-C4H5NO2)、338(-C6H8N2O3)、294(-C7H8N2O6)、157(-C19H31NO2S)。
ESI-モード: 492から448(-CO2)、430(-CH2O3)、230(-C16H26CO2)、229(-C16H27CO2)、196(C8H10N3O3-)、155(C6H7N2O3-)、154(C6H6N2O3-)。
【0088】
【表4】

【実施例10】
【0089】
コニオスルフィドA−Dの高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)
カラム: Superspher 100 RR-18e(R), 250-4、プレカラム付
移動層: 55%アセトニトリル/0.1% リン酸、
流速: 毎分1mL、
210nmにおける紫外線吸収による検出
次に示すリテンションタイムが見られた:
コニオスルフィドA 14.8分;
コニオスルフィドB 20.1分;
コニオスルフィドC 10.6分;
コニオスルフィドD 14.2分;
【実施例11】
【0090】
固体培地プレート上における、Coniochaeta ellipsoidea Udagawa, DSM 13856の主培養の調製
30個の無菌の22×22cm2プレートは、モルト抽出物20g/L、ロールドオート20g/Lおよび寒天2%を含み、pH7.0である栄養溶液200mLを用いて注がれた。これらのプレートは実施例2の記述に従って得られた2mlのConiochaeta ellipsoidea Udagawa, DSM 13856の前培養液と共に播種され、25℃で培養された。本発明のコニオセチンのいずれかの化合物の最大生産には、約676時間後到達した。
【実施例12】
【0091】
コニオセチンの分離
それぞれ25×25cm2サイズで実施例11の記述に従って得られた30個の寒天培地は凍結乾燥され2.5リットルのメタノールを用いて抽出された。その清澄な液相は減圧下で100mlに濃縮され、水で希釈され、並びに580mlの容積を持ち吸着樹脂MCl Gel(R) CHP20Pで充填されたカラムに詰め込まれた。カラムの容積:幅×高さ:5cm×30cm。本カラムは、5%アセトニトリル−水から90%アセトニトリルの溶媒勾配を用いて溶出され、そのカラム溶出液(40ml/分)はそれぞれ容量120mlで各分画に集められた。HPLC分析により調べられたコニオセチン含有の分画は集められ、減圧下で濃縮され、そして凍結乾燥された(0.3g)

【実施例13】
【0092】
コニオセチンの高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)
カラム: Superspher 100 RR-18e(R), 250-4、プレカラム付
移動層: 75%アセトニトリル/0.1%リン酸、
流速: 毎分1mL、
210nmにおける紫外線吸収による検出
コニオセチンのリテンションタイムは13.6分であった。
【実施例14】
【0093】
コニオセチンの最終精製
実施例12の記述に従い得られた濃縮された抗生物質コニオセチン(0.3g)は、LiChrospher(R) 100RP-18e HPLCカラム(幅×高さ:2.5cm×25cm)上で、75%から100%アセトニトリル/0.05%酢酸を用いた勾配法によって分画された。流速:30ml/分。分画サイズ:60ml。HPLC(実施例5を参照)によって調べられたそれら分画は、それらのコニオセチン含有量に合わせてプールされ、減圧下で濃縮され、および凍結乾燥された。それらより98%の純度で170mgのコニオセチンが得られた。
【実施例15】
【0094】
コニオセチンの特性づけ
モルピークの測定:
質量413は、次に示す結果に基づいて、求められている分子であると特定された:
ESI+スペクトルおよびFAB+スペクトルは414amu(M+H)+にピークを示した。ESI-スペクトルは、とりわけ412amu(M−H)-にピークを示した。
【0095】
準分子イオンの高度分析:
FAB条件ものと、ニトロベンジルアルコール基質を用いると、とりわけ414.2645amuに1つのピークが観察された。その測定において現れる質量の精度はおおよそ5ppmであった。測定値は、C25H36NO4=414.2644amuと算出される化学元素の構成とよく一致していた。この化学元素の構成の中には、9個の二重結合当量が存在した。
【0096】
本発明の当該抗生物質の、物理化学的および分光学的な特性は次のようにまとめることができる。
外観:
中程度の極性および極性の有機溶媒に可溶であり、特に水に可溶というわけではない、無色から淡黄色の物質。中性および弱酸性の培地において安定であったが、強酸性および強アルカリ性の溶液には不安定であった。
実験式: C25H35NO4
分子量: 423.56
1H NMRおよび13C-NMR: 表6および7を参照
UV 極大: 233nm、288nm
【0097】
【表5】

【0098】
【表6】

【実施例16】
【0099】
APP−FE65相互作用を阻害する能力の検査
試薬および供給元:
HEPES, Sigma, H-9136,
NaCl, Riedel de Haen, 31434
EDTA, Sigma, E-1644,
CHAPS, Sigma, C-5849,
KF, Sigma, P-1179,
BSA, Sigma, A-9647
XL665で標識された抗GSTモノクローナル抗体,
CIS bio Intern., D11/459/12/47270;
Eu-クリプテートで標識されたストレプトアビジン,
CIS bio Intern., D11/450/12/47269;
32mer cAPP, Sigma, E2533;
Biotin-cAPP, Aventis SA, Vitry.
【0100】
緩衝液A:
10mM HEPES, pH7.2+150mM NaCl+3.4mM EDTA+0.184gのCHAPS/L
緩衝液B:
10mM HEPES, pH7.0+400mM KF+133mM EDTA+1gのBSA/L
【0101】
実施:
検査される1μlの溶液がピペットで採られ、30μM 32mer cAPP/緩衝液Aと共にマイクロタイタープレートへ入れられた。それから1μlのビオチン−cAPP(10nM、緩衝液Aに溶解されたもの)が添加された。15分間の培養の後、1μLのGST−PTB2(20nM/緩衝液A)
が加えられ、そのプレートはもう一度15分間培養された。それから4μlの抗体混合液(Eu−クリプテートで標識されたストレプトアビジン, 2ng/well;XL665で標識された抗GSTモノクローナル抗体, 25ng/緩衝液B) が添加された。
【0102】
室温下30分後、検査溶液が波長340nmの光線で活性化された後、Tecan超光度計において、エネルギー遷移の発光シグナルおよびユーロピウムシグナルが、665nmおよび615nmに測定された。
【0103】
表1に記載されているIC50値は、アミロイド前駆タンパク質−FE65相互作用の阻害に対して調べられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
退行性神経障害またはアルツハイマー病の、治療および予防用医薬の製造のための式(VI)
【化1】

の化合物の使用。

【公開番号】特開2009−149662(P2009−149662A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23173(P2009−23173)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【分割の表示】特願2003−532708(P2003−532708)の分割
【原出願日】平成14年9月6日(2002.9.6)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】