コネクタ
【課題】弾性部材によるがた詰めの信頼性を高め、かつ大型化を回避したコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタは、ロックアーム49を有するハウジング10と、ハウジング10に嵌着され、両ハウジング10、120の嵌合時に、嵌合方向に圧縮されることで、両ハウジング10、120間のがたを詰めることが可能な環状の弾性部材90とを備える。ハウジング10には、圧縮状態にある弾性部材90と、嵌合方向と略直交する径方向で当接することで、弾性部材90の径方向の伸長を抑えることが可能な押さえ部58が形成されている。押さえ部58が、ロックアーム49と径方向で重なり合う位置に配置されている。
【解決手段】コネクタは、ロックアーム49を有するハウジング10と、ハウジング10に嵌着され、両ハウジング10、120の嵌合時に、嵌合方向に圧縮されることで、両ハウジング10、120間のがたを詰めることが可能な環状の弾性部材90とを備える。ハウジング10には、圧縮状態にある弾性部材90と、嵌合方向と略直交する径方向で当接することで、弾性部材90の径方向の伸長を抑えることが可能な押さえ部58が形成されている。押さえ部58が、ロックアーム49と径方向で重なり合う位置に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のコネクタが開示されている。コネクタは、相手ハウジングに嵌合可能なハウジングと、ハウジングに嵌着される環状の弾性部材とを備えている。両ハウジングが正規の嵌合状態になると、弾性部材が嵌合方向に圧縮され、この圧縮に伴う弾性部材の弾性復元力によって両ハウジング間のがたが詰められるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−4111公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のコネクタの場合、圧縮状態にある弾性部材が嵌合方向と直交する径方向外側に伸長して、弾性部材の弾性復元力が減退するおそれがあった。
これに対し、例えば、コネクタに、弾性部材の径方向への伸長を抑える逃げ防止構造を設けるとしても、その構造の付加分、コネクタが大型化するのでは小型化の要請に応えることができないという問題があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、弾性部材によるがた詰めの信頼性を高め、かつ大型化を回避したコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、相手ハウジングとの嵌合時に前記相手ハウジングを離脱規制状態に保持するロックアームを有するハウジングと、前記ハウジングに嵌着され、両ハウジングの嵌合時に、嵌合方向に圧縮されることで、前記両ハウジング間のがたを詰めることが可能な環状の弾性部材とを備えたコネクタであって、前記ハウジングには、圧縮状態にある前記弾性部材と、前記嵌合方向と略直交する径方向で当接することで、前記弾性部材の前記径方向の伸長を抑えることが可能な押さえ部が形成され、前記押さえ部が、前記ロックアームと前記径方向で重なり合う位置に配置されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記ロックアームが、前記ハウジングの幅方向中央部に一対の脚片を有する形態とされ、前記押さえ部が、正面視で幅方向に並ぶ両脚片の間に位置しているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のものにおいて、前記ハウジングが、筒状のアウタハウジングと、前記アウタハウジング内に挿入されて保持されるブロック状のインナハウジングとを備え、前記押さえ部が、前記アウタハウジングとインナハウジングのいずれか一方に形成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
<請求項1の発明>
圧縮状態にある弾性部材が押さえ部と径方向で当接することで、弾性部材の径方向の伸長を抑えることが可能とされるから、径方向の伸長によって弾性部材の弾性復元力が減ぜられるのが回避され、弾性部材によるがた詰めの信頼性が高められる。また、押さえ部がロックアームと径方向で重なり合う位置に配置されているから、押さえ部によってコネクタが径方向に大型化するのが回避される。
【0010】
<請求項2の発明>
ロックアームがハウジングの幅方向中央部に一対の脚片を有する形態とされ、押さえ部が正面視で幅方向に並ぶ両脚片間に位置しているから、弾性部材の伸長がハウジングの幅方向中央部でバランス良く抑えられ、がた詰めの信頼性がよりいっそう高められる。
【0011】
<請求項3の発明>
押さえ部がアウタハウジングとインナハウジングのいずれか一方に形成されているから、押さえ部が一体のハウジングに形成されるよりも、成型用金型の構造を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係るコネクタにおいて、相手コネクタと正規嵌合状態にあるときの断面図である。
【図2】コネクタの断面図である。
【図3】コネクタの正面図である。
【図4】アウタハウジングの背面図である。
【図5】アウタハウジングの平面図である。
【図6】アウタハウジングの断面図である。
【図7】アウタハウジングの正面図である。
【図8】インナハウジングの背面図である。
【図9】インナハウジングの平面図である。
【図10】インナハウジングの底面図である。
【図11】インナハウジングの正面図である。
【図12】インナハウジングの側面図である。
【図13】リテーナの正面図である。
【図14】リテーナの側面図である。
【図15】リテーナの底面図である。
【図16】アウタハウジングにインナハウジングが正規に組み付けられた状態を示す断面図である。
【図17】誤組付姿勢をとるアウタハウジングのインナハウジングへの組み付け動作が規制される状態を示す断面図である。
【図18】リテーナが仮係止位置にあるコネクタの断面図である。
【図19】リテーナが仮係止位置にあるインナハウジングの側面図である。
【図20】図19のA−A断面図である。
【図21】図19のB−B断面図である。
【図22】リテーナが本係止位置にあるインナハウジングの側面図である。
【図23】図22のC−C断面図である。
【図24】図22のD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図24によって説明する。本実施形態に係るコネクタは、ハウジング10、リテーナ60、シール部材80、弾性部材90、ゴム栓100、及び端子金具110を備えて構成されている。ハウジング10は、相手ハウジング120に嵌合可能とされている。なお、以下の説明において、前後方向については、両ハウジング10、120の相互の嵌合面側を前方とし、上下方向については、図1を基準とする。
【0014】
相手ハウジング120は合成樹脂製であって、図1に示すように、前方に突出する筒状のフード部121を備えている。フード部121内には、複数(図示する場合は一対)のタブ状の相手端子金具130が幅方向に並んで形成されている。フード部121の上壁の上面には、図示しないロック部が突出して形成されている。
【0015】
ハウジング10は同じく合成樹脂製であって、互いに嵌合可能なインナハウジング11及びアウタハウジング12によって構成されている。
インナハウジング11はブロック状をなし、その内部に、前後方向に貫通する複数(図示する場合は一対)のキャビティ13が幅方向に並んで形成されている。各キャビティ13の内面には、段付き状のランス受け部14が形成されている。また、各キャビティ13の後部は、前後方向にほぼ一定径の断面円形をなすシール孔15とされている。
【0016】
各キャビティ13内には、後方から端子金具110が挿入される。端子金具110の前端部には、筒状の本体部111が形成されている。本体部111には、撓み可能な弾性係止片112が斜め下後方に切り起こして形成されている。端子金具110がキャビティ13内に正規挿入されると、弾性係止片112がランス受け部14に弾性的に係止されて、端子金具110のキャビティ13からの抜け止めがなされる。また、本体部111内には、両ハウジング10、120の嵌合時に、相手端子金具130が挿入されて接続される。
【0017】
端子金具110の後端部は、電線140の端末部にかしめ付けして接続され、電線140にはゴム栓100が嵌着されている。ゴム栓100は、前後方向に細長い筒状をなし、キャビティ13内に端子金具110が正規挿入されたときに、電線140の外周面に密着するとともに、シール孔15の内周面に密着するようになっている。
【0018】
インナハウジング11(後述する各タワー部17)の後端には、図8ないし図10に示すように、幅方向に一対のインナロック部16が突出して形成されている。
インナハウジング11の後部には、複数(図示する場合は一対)の円筒状のタワー部17が幅方向に並んで形成されている。各タワー部17内には、シール孔15が保有されている。そして、インナハウジング11の後部の幅方向中央部には、隣接するタワー部17同士の接合によって接合部18が形成されている。接合部18は、隣接するシール孔15間を仕切る上下方向に沿った薄壁状に形成されている。
【0019】
隣接するタワー部17間には、両タワー部17の円弧状の周面で区画されることによって上下両方向にラッパ状に拡開する断面形状の凹部19が保有されている。上下夫々の凹部19は、その開口端(タワー部17の後端)から奥端までの前後方向の延出長さ(深さと同義である)を互いに異ならせて構成されている。具体的には、上側の凹部19Aが下側の凹部19Bよりも長くされている。この場合、下側の凹部19Bは、インナロック部16とその前後位置をほぼ揃えて構成され、上側の凹部19Aは、下側の凹部19Bの2〜3倍の延出長さを有している。
【0020】
インナハウジング11の外面には、フランジ部20が全周に亘って張り出して形成され、フランジ部20の後方に、弾性部材90が嵌着されている。フランジ部20の後面は、弾性部材90にその前方から当接可能な第1当接面21とされている。弾性部材90はゴム製であって、幅方向に長い円環状をなしている。そして、インナハウジング11の両タワー部17間には、凹部19の奥端からフランジ部20の後端にかけて延びる上下夫々の肉盛り部22が形成されている。下側の肉盛り部22Bは、上側の肉盛り部22Aの2〜3倍の延出長さを有している。
【0021】
また、インナハウジング11の外面には、上方からリテーナ60が装着される装着孔23が開口して形成されている。インナハウジング11の上面及び両側面には、装着孔23と対応する位置に、凹所24が一段低く形成されており、凹所24の底部に、各キャビティ13との間を仕切る薄壁部25(図23を参照)が形成されている。上側の薄壁部25には、リテーナ60の抜止部63(後述する)が個別に挿入される一対の略矩形の挿入孔26が開口して形成されている。各挿入孔26は、各キャビティ13に連通している。
【0022】
インナハウジング11の両側面には、幅方向に一対のブリッジ部27が装着孔23を跨いで架設されている。各ブリッジ部27は、インナハウジング11の両側面から外側に膨出しつつ前後方向に延出する形態とされている。各ブリッジ部27の内側には、装着孔23の幅方向両端部を構成して、リテーナ60の弾性片62(後述する)が進入可能な進入空間28が保有されている。
【0023】
また、各ブリッジ部27の内面には、前後方向に延びるリブ状の係止突部29が突出して形成されている。係止突部29は、各ブリッジ部27の前後方向中央部に位置する第1係止部30と、第1係止部30を挟んだ前後方向両端部に位置する第2係止部31とからなり、第1係止部30のほうが第2係止部31よりも突出量が大きくされている。
【0024】
図20に示すように、第1係止部30の上面(リテーナ60の装着方向先方の面)は、リテーナ60の装着方向に沿って傾斜する第3斜面32とされ、第1係止部30の下面(リテーナ60の抜出方向先方の面)は、リテーナ60の装着方向及び抜出方向と略直交する方向に沿った第2係止面33とされている。また、図21に示すように、第2係止部31の上面は、リテーナ60の装着方向に沿って傾斜する第4斜面34とされ、第2係止部31の下面は、リテーナ60の抜出方向に沿って傾斜する第2斜面35とされている。第4斜面34は、第3斜面32を挟んだ両側に対をなして配置され、第2斜面35は、第2係止面33を挟んだ両側に対をなして配置されている。第3斜面32及び第2係止面33の内端は、第4斜面34及び第2斜面35の内端よりも内側に配置されている。
【0025】
より具体的には、第3斜面32及び第4斜面34は、いずれも上端へ行くに従って次第に外側に拡開するテーパ面とされ、第2斜面35は、下端へ行くに従って次第に外側に拡開するテーパ面とされ、第2係止面33は、略水平なフラット面とされている。
【0026】
インナハウジング11の上面及び下面には、図12に示すように、複数のリブ36が前後方向に延出して形成されている。各リブ36は、相手ハウジング120の図示しない受け溝に嵌合され、これによって、両ハウジング10、120の嵌合案内がなされるとともに、両ハウジング10、120の誤嵌合が防止されるようになっている。このうち、上側のリブ36は、装着孔23の上面開口を介して、前後に分断されている。また、インナハウジング11には、図2に示すように、環状のシール部材80が嵌着されている。シール部材80はゴム製であって、リブ36とフランジ部20との間に前後方向に位置決めして配置されている。
【0027】
リテーナ60は合成樹脂製であって、図13に示すように、全体として門型板状をなし、幅方向に延びるリテーナ本体61と、リテーナ本体61の幅方向両端から互いに略平行に突出する一対の弾性片62とを有している。かかるリテーナ60は、インナハウジング11に対して浅く装着される仮係止位置と、インナハウジング11に対して深く装着される本係止位置とに移動可能とされている。
【0028】
リテーナ本体61は、インナハウジング11の上側の凹所24に嵌合され、本係止位置では、薄壁部25に支持されるようになっている。リテーナ本体61の下面の後端部には、各キャビティ13と対応する位置に、各挿入孔26に貫通可能な一対の抜止部63が突出して形成されている。各抜止部63は、正面視略矩形状をなし、仮係止位置ではキャビティ13から退避することでキャビティ13への端子金具110の挿抜を許容し、本係止位置ではキャビティ13内に進入することで端子金具110のキャビティ13からの抜け止めをなす。
【0029】
各弾性片62は、リテーナ本体61との連結部位となる根元部分を支点として幅方向に撓み変形可能とされている。なお、インナハウジング11の進入空間28は、各弾性片62の挿入領域と、その内側に位置する各弾性片62の撓み領域とで構成されている。
【0030】
各弾性片62の外面には、図14に示すように、係止突部29が嵌合可能な本係止凹部64及び仮係止凹部65が上下方向に並んで形成されている。本係止凹部64は、仮係止凹部65よりも上方に配置されている。また、各弾性片62の外面には、仮係止凹部65よりも下方となる先端部に、各弾性片62の進入空間28への挿入案内をなす案内凹部71が切り欠いて形成されている。
【0031】
本係止凹部64及び仮係止凹部65は、各弾性片62の前端部から後端部にかけて、前後方向に延びる有底溝として構成され、互いにほぼ同じ深さを有している。図24に示すように、本係止凹部64の上面(リテーナ60の装着方向先方の面)は、リテーナ60の装着方向に沿って傾斜する第5斜面66とされ、本係止凹部64の下面(リテーナ60の抜出方向先方の面)は、リテーナ60の抜出方向に沿って傾斜する第1斜面67とされている。また、仮係止凹部65の上面は、リテーナ60の装着方向に沿って傾斜する第6斜面68とされ、仮係止凹部65の下面は、リテーナ60の装着方向及び抜出方向と略直交する方向に沿った第1係止面69とされている。
【0032】
具体的には、第5斜面66及び第6斜面68は、上端へ行くに従って次第に外側に拡開するテーパ面とされ、第1斜面67は、下端へ行くに従って次第に外側に拡開するテーパ面とされ、第1係止面69は、略水平なフラット面とされている。第5斜面66の傾斜角は、第6斜面68の傾斜角とほぼ同一とされている。
【0033】
また、各弾性片62には、本係止凹部64と仮係止凹部65との間に、リテーナ60の移動過程で係止突部29の第1係止部30が進入する逃がし孔70が貫通して形成されている。逃がし孔70は、図14及び図23に示すように、リテーナ60の移動方向となる上下方向(高さ方向)に延出する縦長スリット状をなし、その下端が、仮係止凹部65の第1係止面69によって区画され、その上端が、本係止凹部64の上端よりも少し上方の高さに位置している。そして、逃がし孔70は、各弾性片62の前後方向中央部に位置し、本係止凹部64及び仮係止凹部65の前後方向中央部を横切って形成されている。このため、本係止凹部64及び仮係止凹部65は、逃がし孔70を介して、前後に分割されている。
【0034】
アウタハウジング12は合成樹脂製であって、図6及び図7に示すように、筒状のアウタ本体37と、アウタ本体37から前方へ一回り大きくされつつ突出する筒状の嵌合筒部38とからなる。
【0035】
アウタ本体37には、各タワー部17が嵌合される受容部39が前方に開口して形成され、かつ受容部39に嵌合された各タワー部17の後端に対向する対向筒部40が後方に突出して形成されている。対向筒部40は、各タワー部17に対応する2連筒状をなし、その内部に、シール孔15と連通する対向シール孔41が保有されている。図2に示すように、対向シール孔41にはゴム栓100の後部が密着されて液密にシールされるようになっている。なお、ゴム栓100は、シール孔15と対向シール孔41の両孔に跨って嵌着され、ゴム栓100の外周面には、両孔に弾性的に密着する複数条のリップ101が周回して形成されている。
【0036】
対向筒部40の前端縁は、径方向に沿った段差面42とされ、受容部39の内周面に段付き状に連なっている。受容部39の内面の上下両側には、段差面42から前方へ所定長さに亘って延びるリブ状の凸部43が形成されている。各凸部43は、アウタ本体37の幅方向中央部に配置されている。受容部39に各タワー部17が正規嵌合された場合に、つまり、アウタハウジング12にインナハウジング11が正規嵌合された場合に、上下夫々の凸部43は、上下夫々の凹部19に正規深さで挿入されるようになっている。このとき、各凸部43の外面は、各凹部19の内面との間に間隔をあけている(図16を参照)。
【0037】
そして、図6に示すように、上下夫々の凸部43は、その延出長さ(段差面42から前方への延出長さ)を互いに異にして構成されている。具体的には、上側の凸部43Aの延出長さは、上側の凹部19Aと対応して長くされ、下側の凸部43Bの延出長さは、下側の凹部19Bと対応して上側の凸部43Aの延出長さよりも短くされている。つまり、下側の凸部43Bの前端は、上側の凸部43Aの前端よりも後方に位置している。また、下側の凸部43Bの前端は、アウタ本体37と嵌合筒部38との連結部位と対応する位置に配置されている。本実施形態の場合、上側の凸部43Aは、下側の凸部43Bの2〜3倍の延出長さを有している。
【0038】
そして、図7に示すように、下側の凸部43Bは、下端に向けてラッパ状に拡開する断面形状とされ、受容部39に各タワー部17が正規嵌合された場合に、凹部19Bの内面と略平行な一対の先端尖がり状の円弧面44を有している。これに対し、上側の凸部43Aは、上端に向けてテーパ状に拡開する断面3角形状とされ、受容部39に各タワー部17が正規嵌合された場合に、凹部19Aと対応する開き角をもった直線状の対辺45を有している。ここで、上側の凸部43Aは、誤嵌合時に下側の凹部19Bに干渉する先方凸部として構成される。そして、上側の凸部43Aの前端縁には、両対辺45に沿った略V字リブ状の補強部46が形成されている。
【0039】
アウタ本体37の両側壁には、受容部39に各タワー部17が正規嵌合された場合に、インナロック部16が弾性的に嵌合される一対のインナロック受け部47が貫通して形成されている。アウタ本体37の両側壁の内面には、インナロック部16をインナロック受け部47に誘導する案内凹溝48が前方に開口して形成されている。インナロック部16がインナロック受け部47に弾性的に嵌合されることにより、インナハウジング11のアウタハウジング12からの離脱が規制されるようになっている。
【0040】
アウタ本体37の上壁の上面には、ロックアーム49が突出して形成されている。ロックアーム49は、アウタハウジング12の幅方向中央部(アウタ本体37の幅方向中央部でもある)に配置されている。具体的には、ロックアーム49は、アウタ本体37の前端部から斜め上後方に延びる幅方向に一対の脚片50と、両脚片50の上端から前方へほぼ真直ぐ延びる一対のアーム本体51と、両アーム本体51の後端同士を連ねる操作部52と、両アーム本体51の前端同士を連ねるロック本体53とからなる。両アーム本体51間で、かつ操作部52の前方及びロック本体53の後方には、相手ハウジング120のロック部が進入可能なロック溝54が保有されている。相手ハウジング120との嵌合過程では、ロック部がロック本体53と干渉して、両アーム本体51が両脚片50を支点として下方に撓み変形され、相手ハウジング120との正規嵌合時には、両アーム本体51が弾性復帰してロック部がロック溝54に嵌り、もって相手ハウジング120との離脱が規制されるようになっている。相手ハウジング120との嵌合状態を解除する際には、操作部52を押圧することにより、ロック溝54からロック部を離脱させるようにする。
【0041】
嵌合筒部38の上壁には、膨出部55が外側に膨出して形成され、膨出部55の内側に、ロックアーム49が撓み可能に配置されている。図5に示すように、膨出部55の上壁には、窓部56が切り欠いて形成され、窓部56を通してロックアーム49が視認可能に露出されている。
【0042】
また、アウタ本体37(受容部39)の前端縁の上下位置には、弾性部材90にその後方から当接可能な第2当接面57が形成されている。アウタ本体37の第2当接面57は、フランジ部20の第1当接面21と略平行に対向するよう径方向に沿って配置され、第1当接面21との間に弾性部材90の挟持空間を保有している。
【0043】
ハウジング10が相手ハウジング120に正規嵌合されると、フランジ部20の第1当接面21とアウタ本体37の第2当接面57との間に弾性部材90が圧縮状態で挟持される。このとき、弾性部材90の弾性復元力によって、ハウジング10と相手ハウジング120との間に、双方を前後方向に離間させる向きの離反力が作用して、相互のがた付きが防止されるようになっている。
【0044】
アウタ本体37の上壁の上面には、弾性部材90の径方向の伸長を抑えることが可能な押さえ部58が突出して形成されている。押さえ部58は、アウタ本体37の上壁の前端部から立ち上がる立上部58Bと、立上部58Bの上端から前方へ張り出す張出部58Aとからなり、全体として断面L字形をなしている。張出部58Aは、弾性部材90が非圧縮状態にあるときに、弾性部材90から径方向外側に離間して配置され、弾性部材90が強固な圧縮状態にあるときに、弾性部材90に径方向外側から押さえ状態に当接して配置されるようになっている。
【0045】
また、押さえ部58は、アウタ本体37の幅方向中央部においてロックアーム49と径方向(本実施形態では上下方向)で重なり合う位置に配置され、正面視によれば、ロックアーム49の両脚片50間に配置されている。押さえ部58の上方には、ロックアーム49のロック溝54が位置し、押さえ部58は、ロック溝54を通して上方から視認可能とされている。
【0046】
次に、本実施形態のコネクタの作用を説明する。
インナハウジング11の装着孔23にリテーナ60を挿入して仮係止位置に留め置く。仮係止位置では、リテーナ本体61の外面がインナハウジング11の外面にほぼ面一で連なり(図18を参照)、かつインナハウジング11の係止突部29の第2係止部31が、リテーナ60の仮係止凹部65に弾性的に嵌り込む(図19を参照)。このとき、図20に示すように、係止突部29の第2係止面33が、仮係止凹部65の第1係止面69と、リテーナ60の抜出方向と略直交する方向にほぼ沿って配置され、これによってリテーナ60のインナハウジング11からの抜け止めがなされる。また、仮係止位置では、係止突部29の第1係止部30が逃がし孔70に進入してリテーナ60側との干渉を回避されるとともに、図21に示すように、係止突部29の第4斜面34が仮係止凹部65の第6斜面68とその面方向にほぼ沿って配置され、かつ係止突部29の第2斜面35が仮係止凹部65の第1係止面69との間に隙間をあけて配置される。
【0047】
かかる状態で、キャビティ13内に端子金具110を挿入する。全ての端子金具110を挿入したら、リテーナ本体61を上方から押圧して、リテーナ60を本係止位置に向けて移動させる。移動の過程では、係止突部29の第4斜面34が仮係止凹部65の第6斜面68を摺動して、弾性片62が撓み空間に撓み変形される。リテーナ60が本係止位置に到達すると、弾性片62が弾性復帰されて、係止突部29の第2係止部31が本係止凹部64に嵌り込む(図22を参照)。このとき、図24に示すように、係止突部29の第2斜面35が本係止凹部64の第1斜面67とその面方向にほぼ沿って配置されるとともに、係止突部29の第4斜面34が本係止凹部64の第5斜面66とその面方向に沿って配置され、もってリテーナ60が本係止位置に移動規制状態に保持される。
【0048】
なお、リテーナ60の本係止位置への移動過程及び移動完了後において、係止突部29の第1係止部30は、図20及び図23に示すように、逃がし孔70に進入していて、リテーナ60側と非干渉状態に保たれる。また、リテーナ60が本係止位置に到達すると、図2に示すように、リテーナ本体61の外面がインナハウジング11の外面よりも一段低く配置され、かつ抜止部63が端子金具110の本体部111の後端に係止可能に配置されて、端子金具110のキャビティ13からの抜け止めがなされる。
【0049】
一方、メンテナンス等においてリテーナ60を仮係止位置に戻り移動させる際には、リテーナ本体61を仮係止位置側へ向けて引き上げる。仮係止位置への移動過程では、係止突部29の第2斜面35が本係止凹部64の第1斜面67を摺動して弾性片62が撓み空間に撓み変形される。リテーナ60が仮係止位置に到達すると、弾性片62が弾性復帰されて、図20に示すように、係止突部29の第2係止面33が仮係止凹部65の第1係止面69と、リテーナ60の抜出方向と略直交する方向に沿って当接し、これによってリテーナ60が不用意に仮係止位置を通過してインナハウジング11外へ抜け出るのが回避される。
【0050】
なお、上記キャビティ13への端子金具110の挿入作業は、アウタハウジング12にインナハウジング11を組み付けた後から行うことができる。次に、アウタハウジング12にインナハウジング11を組み付ける作業を説明する。
【0051】
インナハウジング11にアウタハウジング12を組み付ける過程では、アウタハウジング12の凸部43がインナハウジング11の凹部19に嵌入され、組み付けが進むに従って、凸部43の先端が凹部19の奥側へ向けて深く進入する。こうして凸部43が凹部19に正規深さで嵌合されると(図16を参照)、インナロック部16がインナロック受け部47を弾性的に係止して、インナハウジング11がアウタハウジング12に嵌合状態に保持される。
【0052】
一方、インナハウジング11が正逆反転した姿勢をとりながらアウタハウジング12に組み付けられようとすると、図17に示すように、延出長さの長い凸部43A(正規姿勢では上側に位置する凸部43A)が、深さの浅い凹部19B(正規姿勢では下側に位置する凹部19B)に正規深さで嵌合される前に、延出長さの長い凸部43Aの先端が、深さの浅い凹部19Bの奥端に干渉して、インナハウジング11のそれ以上の嵌合動作が規制される。このため、インナハウジング11がアウタハウジング12に誤った姿勢で嵌合されるのが回避される。この場合、延出長さの長い凸部43Aは、断面3角形状をなしているため、その先端が凹部19Bの奥端と干渉しても、塑性変形され難い。
【0053】
なお、インナハウジング11がアウタハウジング12に正規嵌合され、かつハウジング10が相手ハウジング120に嵌合される前の状態では、弾性部材90は、フランジ部20の第1当接面21とアウタ本体37の第2当接面57との間にやや圧縮された状態となるものの、押さえ部58との間に若干の隙間をあけている。
【0054】
その後、図1に示すように、アウタハウジング12の嵌合筒部38に前方から相手ハウジング120が嵌合され、フード部121内にインナハウジング11が挿入される。両ハウジング10、120が正規嵌合されると、フード部121の先端がフランジ部20の径方向外側に位置し、かつロックアーム49がロック部を弾性的に係止して、両ハウジング10、120が離脱規制状態に保持される。このとき、シール部材80がフード部121の内面とインナハウジング11の外面との間に圧縮されて、両ハウジング10、120間が液密にシールされる。
【0055】
また、両ハウジング10、120の正規嵌合時には、フランジ部20の第1当接面21とアウタ本体37の第2当接面57との間に弾性部材90が圧縮される。このとき、弾性部材90が径方向外側に伸長しようとするものの、押さえ部58の張出部58Aが弾性部材90の上端に当接することにより、弾性部材90の上端における伸長が規制される。このため、弾性部材90が径方向外側に伸長することに起因して、弾性部材90の弾性復元力が減退するのが抑えられる。その結果、両ハウジング10、120間に適正な離反力が作用し、がた詰めの信頼性が担保される。また、弾性部材90の幅方向中央部に押さえ部58が当接することにより、弾性部材90が幅方向片側に歪に弾性変形するのが回避される。
以上説明したように、本実施形態によれば、次の効果を奏し得る。
【0056】
(1)圧縮状態にある弾性部材90が押さえ部58と径方向で当接することで、弾性部材90の径方向の伸長を抑えることが可能とされるから、径方向の伸長によって弾性部材90の弾性復元力が減ぜられるのが回避され、弾性部材90によるがた詰めの信頼性が高められる。また、押さえ部58がロックアーム49と径方向で重なり合う位置に配置されているから、押さえ部58によってコネクタが径方向に大型化するのが回避される。
(2)ロックアーム49がハウジング10の幅方向中央部に一対の脚片50を有する形態とされ、押さえ部58が正面視で幅方向に並ぶ両脚片50間に位置しているから、弾性部材90の伸長がハウジング10の幅方向中央部でバランス良く抑えられ、がた詰めの信頼性がよりいっそう高められる。
(3)押さえ部58がハウジング10の一部であるアウタハウジング12に形成されているから、押さえ部58がハウジング全体の中に形成されるよりも、成型用金型の構造を簡素化できる。
【0057】
(4)凸部43が嵌合方向の延出長さを異にする複数種によって構成され、凹部19が対応する凸部43の延出長さに応じた深さを有する複数種によって構成されているから、凸部43が凹部19に正規深さで挿入される場合には、インナハウジング11及びアウタハウジング12が正規嵌合状態にあることがわかり、凸部43が凹部19に正規深さで挿入されない場合には、インナハウジング11及びアウタハウジング12が正規嵌合状態にないことがわかる。したがって、インナハウジング11及びアウタハウジング12の誤嵌合を防止するにあたり、形状検知及び位置検知以外の別の検知手段が提供される。
(5)インナハウジング11が、筒状のタワー部17を有する形態とされ、タワー部17が2つ並んで形成され、隣接するタワー部17間に、凹部19が構成されているから、隣接するタワー部17間のデッドスペースが有効に活用され、スペース効率に優れる。
(6)上側の凸部43A(誤嵌合時に下側の凹部19Bと干渉する先方凸部)が、上側の凹部19Aと対応する開き角をもった直線状の対辺45を有する断面3角形状をなしているから、誤嵌合時に上側の凸部43Aが下側の凹部19Bとの干渉に起因して削り取られたりするのが回避される。
【0058】
(7)本係止凹部64が、リテーナ60の抜出方向先方に、リテーナ60の抜出方向に沿って傾斜する第1斜面67を有し、係止突部29が、リテーナ60の抜出方向先方に、第1斜面67にその面方向にほぼ沿って配置される第2斜面35を有しているから、リテーナ60が本係止位置から仮係止位置に戻る際に、第1斜面67と第2斜面35とが互いに摺動して、リテーナ60の戻り移動が円滑になされる。また、仮係止凹部65が、リテーナ60の抜出方向先方に、リテーナ60の抜出方向と略直交する方向に沿った第1係止面69を有し、係止突部29が、仮係止位置で第1係止面69とその面方向にほぼ沿って配置される第2係止面33を有しているから、リテーナ60が仮係止位置に至るに伴い、第1係止面69と第2係止面33がリテーナ60の抜出方向に抗して緊密に係止し合い、リテーナ60のハウジング10からの離脱が防止される。この場合に、係止突部29に第2斜面35及び第2係止面33がまとめて形成されているから、第2斜面35及び第2係止面33がそれぞれ別に形成されているよりも、構成が簡素化される。
(8)第2斜面35が係止突部29において第2係止面33を挟んだ両側に配置されているから、第2斜面35が第1斜面67と摺動する際に、リテーナ60の移動姿勢のバランスが良好となる。
(9)リテーナ60に、本係止凹部64と仮係止凹部65との間において、リテーナ60の移動方向に延出して、リテーナ60の移動過程で、係止突部29の第1係止部30が進入する逃がし孔70が形成されているから、第1係止部30が本係止凹部64の第1斜面67等に干渉することがなく、リテーナ60の移動がスムーズになされる。また、第1係止部30の第2係止面33の係止代を大きく確保できるから、リテーナ60の抜け止め信頼性が高められる。
【0059】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上側の凸部に加え、下側の凸部も断面3角形状をなすものであってもよい。
(2)仮係止凹部及び本係止凹部がハウジングに形成され、係止突部がリテーナに形成されるものであってもよい。
(3)逃がし孔は有底孔であってもよい。
(4)第1斜面〜第6斜面は曲面状の斜面であってもよい。
(5)押さえ部がインナハウジングに形成されるものであってもよい。
(6)押さえ部が周方向に複数形成されるものであってもよい。
(7)押さえ部が全周に亘って形成されるものであってもよい。
(8)各タワー部及び各対向筒部が3つ以上並んで形成され、各凹部及び各凸部が複数形成されるものであってもよい。
(9)ハウジングに後方からカバーを取り付ける場合に、ハウジングとカバーのいずれか一方に、上記実施形態に対応する各凹部を形成し、他方に、上記実施形態に対応する各凸部を形成するものであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
10…ハウジング
11…インナハウジング
12…アウタハウジング
17…タワー部
19…凹部
23…装着孔
29…係止突部
33…第2係止面
35…第2斜面
43…凸部
45…対辺
49…ロックアーム
50…脚片
58…押さえ部
60…リテーナ
62…弾性片
64…本係止凹部
65…仮係止凹部
67…第1斜面
69…第1係止面
70…逃がし孔
90…弾性部材
110…端子金具
120…相手ハウジング
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のコネクタが開示されている。コネクタは、相手ハウジングに嵌合可能なハウジングと、ハウジングに嵌着される環状の弾性部材とを備えている。両ハウジングが正規の嵌合状態になると、弾性部材が嵌合方向に圧縮され、この圧縮に伴う弾性部材の弾性復元力によって両ハウジング間のがたが詰められるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−4111公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のコネクタの場合、圧縮状態にある弾性部材が嵌合方向と直交する径方向外側に伸長して、弾性部材の弾性復元力が減退するおそれがあった。
これに対し、例えば、コネクタに、弾性部材の径方向への伸長を抑える逃げ防止構造を設けるとしても、その構造の付加分、コネクタが大型化するのでは小型化の要請に応えることができないという問題があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、弾性部材によるがた詰めの信頼性を高め、かつ大型化を回避したコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、相手ハウジングとの嵌合時に前記相手ハウジングを離脱規制状態に保持するロックアームを有するハウジングと、前記ハウジングに嵌着され、両ハウジングの嵌合時に、嵌合方向に圧縮されることで、前記両ハウジング間のがたを詰めることが可能な環状の弾性部材とを備えたコネクタであって、前記ハウジングには、圧縮状態にある前記弾性部材と、前記嵌合方向と略直交する径方向で当接することで、前記弾性部材の前記径方向の伸長を抑えることが可能な押さえ部が形成され、前記押さえ部が、前記ロックアームと前記径方向で重なり合う位置に配置されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記ロックアームが、前記ハウジングの幅方向中央部に一対の脚片を有する形態とされ、前記押さえ部が、正面視で幅方向に並ぶ両脚片の間に位置しているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のものにおいて、前記ハウジングが、筒状のアウタハウジングと、前記アウタハウジング内に挿入されて保持されるブロック状のインナハウジングとを備え、前記押さえ部が、前記アウタハウジングとインナハウジングのいずれか一方に形成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
<請求項1の発明>
圧縮状態にある弾性部材が押さえ部と径方向で当接することで、弾性部材の径方向の伸長を抑えることが可能とされるから、径方向の伸長によって弾性部材の弾性復元力が減ぜられるのが回避され、弾性部材によるがた詰めの信頼性が高められる。また、押さえ部がロックアームと径方向で重なり合う位置に配置されているから、押さえ部によってコネクタが径方向に大型化するのが回避される。
【0010】
<請求項2の発明>
ロックアームがハウジングの幅方向中央部に一対の脚片を有する形態とされ、押さえ部が正面視で幅方向に並ぶ両脚片間に位置しているから、弾性部材の伸長がハウジングの幅方向中央部でバランス良く抑えられ、がた詰めの信頼性がよりいっそう高められる。
【0011】
<請求項3の発明>
押さえ部がアウタハウジングとインナハウジングのいずれか一方に形成されているから、押さえ部が一体のハウジングに形成されるよりも、成型用金型の構造を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係るコネクタにおいて、相手コネクタと正規嵌合状態にあるときの断面図である。
【図2】コネクタの断面図である。
【図3】コネクタの正面図である。
【図4】アウタハウジングの背面図である。
【図5】アウタハウジングの平面図である。
【図6】アウタハウジングの断面図である。
【図7】アウタハウジングの正面図である。
【図8】インナハウジングの背面図である。
【図9】インナハウジングの平面図である。
【図10】インナハウジングの底面図である。
【図11】インナハウジングの正面図である。
【図12】インナハウジングの側面図である。
【図13】リテーナの正面図である。
【図14】リテーナの側面図である。
【図15】リテーナの底面図である。
【図16】アウタハウジングにインナハウジングが正規に組み付けられた状態を示す断面図である。
【図17】誤組付姿勢をとるアウタハウジングのインナハウジングへの組み付け動作が規制される状態を示す断面図である。
【図18】リテーナが仮係止位置にあるコネクタの断面図である。
【図19】リテーナが仮係止位置にあるインナハウジングの側面図である。
【図20】図19のA−A断面図である。
【図21】図19のB−B断面図である。
【図22】リテーナが本係止位置にあるインナハウジングの側面図である。
【図23】図22のC−C断面図である。
【図24】図22のD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図24によって説明する。本実施形態に係るコネクタは、ハウジング10、リテーナ60、シール部材80、弾性部材90、ゴム栓100、及び端子金具110を備えて構成されている。ハウジング10は、相手ハウジング120に嵌合可能とされている。なお、以下の説明において、前後方向については、両ハウジング10、120の相互の嵌合面側を前方とし、上下方向については、図1を基準とする。
【0014】
相手ハウジング120は合成樹脂製であって、図1に示すように、前方に突出する筒状のフード部121を備えている。フード部121内には、複数(図示する場合は一対)のタブ状の相手端子金具130が幅方向に並んで形成されている。フード部121の上壁の上面には、図示しないロック部が突出して形成されている。
【0015】
ハウジング10は同じく合成樹脂製であって、互いに嵌合可能なインナハウジング11及びアウタハウジング12によって構成されている。
インナハウジング11はブロック状をなし、その内部に、前後方向に貫通する複数(図示する場合は一対)のキャビティ13が幅方向に並んで形成されている。各キャビティ13の内面には、段付き状のランス受け部14が形成されている。また、各キャビティ13の後部は、前後方向にほぼ一定径の断面円形をなすシール孔15とされている。
【0016】
各キャビティ13内には、後方から端子金具110が挿入される。端子金具110の前端部には、筒状の本体部111が形成されている。本体部111には、撓み可能な弾性係止片112が斜め下後方に切り起こして形成されている。端子金具110がキャビティ13内に正規挿入されると、弾性係止片112がランス受け部14に弾性的に係止されて、端子金具110のキャビティ13からの抜け止めがなされる。また、本体部111内には、両ハウジング10、120の嵌合時に、相手端子金具130が挿入されて接続される。
【0017】
端子金具110の後端部は、電線140の端末部にかしめ付けして接続され、電線140にはゴム栓100が嵌着されている。ゴム栓100は、前後方向に細長い筒状をなし、キャビティ13内に端子金具110が正規挿入されたときに、電線140の外周面に密着するとともに、シール孔15の内周面に密着するようになっている。
【0018】
インナハウジング11(後述する各タワー部17)の後端には、図8ないし図10に示すように、幅方向に一対のインナロック部16が突出して形成されている。
インナハウジング11の後部には、複数(図示する場合は一対)の円筒状のタワー部17が幅方向に並んで形成されている。各タワー部17内には、シール孔15が保有されている。そして、インナハウジング11の後部の幅方向中央部には、隣接するタワー部17同士の接合によって接合部18が形成されている。接合部18は、隣接するシール孔15間を仕切る上下方向に沿った薄壁状に形成されている。
【0019】
隣接するタワー部17間には、両タワー部17の円弧状の周面で区画されることによって上下両方向にラッパ状に拡開する断面形状の凹部19が保有されている。上下夫々の凹部19は、その開口端(タワー部17の後端)から奥端までの前後方向の延出長さ(深さと同義である)を互いに異ならせて構成されている。具体的には、上側の凹部19Aが下側の凹部19Bよりも長くされている。この場合、下側の凹部19Bは、インナロック部16とその前後位置をほぼ揃えて構成され、上側の凹部19Aは、下側の凹部19Bの2〜3倍の延出長さを有している。
【0020】
インナハウジング11の外面には、フランジ部20が全周に亘って張り出して形成され、フランジ部20の後方に、弾性部材90が嵌着されている。フランジ部20の後面は、弾性部材90にその前方から当接可能な第1当接面21とされている。弾性部材90はゴム製であって、幅方向に長い円環状をなしている。そして、インナハウジング11の両タワー部17間には、凹部19の奥端からフランジ部20の後端にかけて延びる上下夫々の肉盛り部22が形成されている。下側の肉盛り部22Bは、上側の肉盛り部22Aの2〜3倍の延出長さを有している。
【0021】
また、インナハウジング11の外面には、上方からリテーナ60が装着される装着孔23が開口して形成されている。インナハウジング11の上面及び両側面には、装着孔23と対応する位置に、凹所24が一段低く形成されており、凹所24の底部に、各キャビティ13との間を仕切る薄壁部25(図23を参照)が形成されている。上側の薄壁部25には、リテーナ60の抜止部63(後述する)が個別に挿入される一対の略矩形の挿入孔26が開口して形成されている。各挿入孔26は、各キャビティ13に連通している。
【0022】
インナハウジング11の両側面には、幅方向に一対のブリッジ部27が装着孔23を跨いで架設されている。各ブリッジ部27は、インナハウジング11の両側面から外側に膨出しつつ前後方向に延出する形態とされている。各ブリッジ部27の内側には、装着孔23の幅方向両端部を構成して、リテーナ60の弾性片62(後述する)が進入可能な進入空間28が保有されている。
【0023】
また、各ブリッジ部27の内面には、前後方向に延びるリブ状の係止突部29が突出して形成されている。係止突部29は、各ブリッジ部27の前後方向中央部に位置する第1係止部30と、第1係止部30を挟んだ前後方向両端部に位置する第2係止部31とからなり、第1係止部30のほうが第2係止部31よりも突出量が大きくされている。
【0024】
図20に示すように、第1係止部30の上面(リテーナ60の装着方向先方の面)は、リテーナ60の装着方向に沿って傾斜する第3斜面32とされ、第1係止部30の下面(リテーナ60の抜出方向先方の面)は、リテーナ60の装着方向及び抜出方向と略直交する方向に沿った第2係止面33とされている。また、図21に示すように、第2係止部31の上面は、リテーナ60の装着方向に沿って傾斜する第4斜面34とされ、第2係止部31の下面は、リテーナ60の抜出方向に沿って傾斜する第2斜面35とされている。第4斜面34は、第3斜面32を挟んだ両側に対をなして配置され、第2斜面35は、第2係止面33を挟んだ両側に対をなして配置されている。第3斜面32及び第2係止面33の内端は、第4斜面34及び第2斜面35の内端よりも内側に配置されている。
【0025】
より具体的には、第3斜面32及び第4斜面34は、いずれも上端へ行くに従って次第に外側に拡開するテーパ面とされ、第2斜面35は、下端へ行くに従って次第に外側に拡開するテーパ面とされ、第2係止面33は、略水平なフラット面とされている。
【0026】
インナハウジング11の上面及び下面には、図12に示すように、複数のリブ36が前後方向に延出して形成されている。各リブ36は、相手ハウジング120の図示しない受け溝に嵌合され、これによって、両ハウジング10、120の嵌合案内がなされるとともに、両ハウジング10、120の誤嵌合が防止されるようになっている。このうち、上側のリブ36は、装着孔23の上面開口を介して、前後に分断されている。また、インナハウジング11には、図2に示すように、環状のシール部材80が嵌着されている。シール部材80はゴム製であって、リブ36とフランジ部20との間に前後方向に位置決めして配置されている。
【0027】
リテーナ60は合成樹脂製であって、図13に示すように、全体として門型板状をなし、幅方向に延びるリテーナ本体61と、リテーナ本体61の幅方向両端から互いに略平行に突出する一対の弾性片62とを有している。かかるリテーナ60は、インナハウジング11に対して浅く装着される仮係止位置と、インナハウジング11に対して深く装着される本係止位置とに移動可能とされている。
【0028】
リテーナ本体61は、インナハウジング11の上側の凹所24に嵌合され、本係止位置では、薄壁部25に支持されるようになっている。リテーナ本体61の下面の後端部には、各キャビティ13と対応する位置に、各挿入孔26に貫通可能な一対の抜止部63が突出して形成されている。各抜止部63は、正面視略矩形状をなし、仮係止位置ではキャビティ13から退避することでキャビティ13への端子金具110の挿抜を許容し、本係止位置ではキャビティ13内に進入することで端子金具110のキャビティ13からの抜け止めをなす。
【0029】
各弾性片62は、リテーナ本体61との連結部位となる根元部分を支点として幅方向に撓み変形可能とされている。なお、インナハウジング11の進入空間28は、各弾性片62の挿入領域と、その内側に位置する各弾性片62の撓み領域とで構成されている。
【0030】
各弾性片62の外面には、図14に示すように、係止突部29が嵌合可能な本係止凹部64及び仮係止凹部65が上下方向に並んで形成されている。本係止凹部64は、仮係止凹部65よりも上方に配置されている。また、各弾性片62の外面には、仮係止凹部65よりも下方となる先端部に、各弾性片62の進入空間28への挿入案内をなす案内凹部71が切り欠いて形成されている。
【0031】
本係止凹部64及び仮係止凹部65は、各弾性片62の前端部から後端部にかけて、前後方向に延びる有底溝として構成され、互いにほぼ同じ深さを有している。図24に示すように、本係止凹部64の上面(リテーナ60の装着方向先方の面)は、リテーナ60の装着方向に沿って傾斜する第5斜面66とされ、本係止凹部64の下面(リテーナ60の抜出方向先方の面)は、リテーナ60の抜出方向に沿って傾斜する第1斜面67とされている。また、仮係止凹部65の上面は、リテーナ60の装着方向に沿って傾斜する第6斜面68とされ、仮係止凹部65の下面は、リテーナ60の装着方向及び抜出方向と略直交する方向に沿った第1係止面69とされている。
【0032】
具体的には、第5斜面66及び第6斜面68は、上端へ行くに従って次第に外側に拡開するテーパ面とされ、第1斜面67は、下端へ行くに従って次第に外側に拡開するテーパ面とされ、第1係止面69は、略水平なフラット面とされている。第5斜面66の傾斜角は、第6斜面68の傾斜角とほぼ同一とされている。
【0033】
また、各弾性片62には、本係止凹部64と仮係止凹部65との間に、リテーナ60の移動過程で係止突部29の第1係止部30が進入する逃がし孔70が貫通して形成されている。逃がし孔70は、図14及び図23に示すように、リテーナ60の移動方向となる上下方向(高さ方向)に延出する縦長スリット状をなし、その下端が、仮係止凹部65の第1係止面69によって区画され、その上端が、本係止凹部64の上端よりも少し上方の高さに位置している。そして、逃がし孔70は、各弾性片62の前後方向中央部に位置し、本係止凹部64及び仮係止凹部65の前後方向中央部を横切って形成されている。このため、本係止凹部64及び仮係止凹部65は、逃がし孔70を介して、前後に分割されている。
【0034】
アウタハウジング12は合成樹脂製であって、図6及び図7に示すように、筒状のアウタ本体37と、アウタ本体37から前方へ一回り大きくされつつ突出する筒状の嵌合筒部38とからなる。
【0035】
アウタ本体37には、各タワー部17が嵌合される受容部39が前方に開口して形成され、かつ受容部39に嵌合された各タワー部17の後端に対向する対向筒部40が後方に突出して形成されている。対向筒部40は、各タワー部17に対応する2連筒状をなし、その内部に、シール孔15と連通する対向シール孔41が保有されている。図2に示すように、対向シール孔41にはゴム栓100の後部が密着されて液密にシールされるようになっている。なお、ゴム栓100は、シール孔15と対向シール孔41の両孔に跨って嵌着され、ゴム栓100の外周面には、両孔に弾性的に密着する複数条のリップ101が周回して形成されている。
【0036】
対向筒部40の前端縁は、径方向に沿った段差面42とされ、受容部39の内周面に段付き状に連なっている。受容部39の内面の上下両側には、段差面42から前方へ所定長さに亘って延びるリブ状の凸部43が形成されている。各凸部43は、アウタ本体37の幅方向中央部に配置されている。受容部39に各タワー部17が正規嵌合された場合に、つまり、アウタハウジング12にインナハウジング11が正規嵌合された場合に、上下夫々の凸部43は、上下夫々の凹部19に正規深さで挿入されるようになっている。このとき、各凸部43の外面は、各凹部19の内面との間に間隔をあけている(図16を参照)。
【0037】
そして、図6に示すように、上下夫々の凸部43は、その延出長さ(段差面42から前方への延出長さ)を互いに異にして構成されている。具体的には、上側の凸部43Aの延出長さは、上側の凹部19Aと対応して長くされ、下側の凸部43Bの延出長さは、下側の凹部19Bと対応して上側の凸部43Aの延出長さよりも短くされている。つまり、下側の凸部43Bの前端は、上側の凸部43Aの前端よりも後方に位置している。また、下側の凸部43Bの前端は、アウタ本体37と嵌合筒部38との連結部位と対応する位置に配置されている。本実施形態の場合、上側の凸部43Aは、下側の凸部43Bの2〜3倍の延出長さを有している。
【0038】
そして、図7に示すように、下側の凸部43Bは、下端に向けてラッパ状に拡開する断面形状とされ、受容部39に各タワー部17が正規嵌合された場合に、凹部19Bの内面と略平行な一対の先端尖がり状の円弧面44を有している。これに対し、上側の凸部43Aは、上端に向けてテーパ状に拡開する断面3角形状とされ、受容部39に各タワー部17が正規嵌合された場合に、凹部19Aと対応する開き角をもった直線状の対辺45を有している。ここで、上側の凸部43Aは、誤嵌合時に下側の凹部19Bに干渉する先方凸部として構成される。そして、上側の凸部43Aの前端縁には、両対辺45に沿った略V字リブ状の補強部46が形成されている。
【0039】
アウタ本体37の両側壁には、受容部39に各タワー部17が正規嵌合された場合に、インナロック部16が弾性的に嵌合される一対のインナロック受け部47が貫通して形成されている。アウタ本体37の両側壁の内面には、インナロック部16をインナロック受け部47に誘導する案内凹溝48が前方に開口して形成されている。インナロック部16がインナロック受け部47に弾性的に嵌合されることにより、インナハウジング11のアウタハウジング12からの離脱が規制されるようになっている。
【0040】
アウタ本体37の上壁の上面には、ロックアーム49が突出して形成されている。ロックアーム49は、アウタハウジング12の幅方向中央部(アウタ本体37の幅方向中央部でもある)に配置されている。具体的には、ロックアーム49は、アウタ本体37の前端部から斜め上後方に延びる幅方向に一対の脚片50と、両脚片50の上端から前方へほぼ真直ぐ延びる一対のアーム本体51と、両アーム本体51の後端同士を連ねる操作部52と、両アーム本体51の前端同士を連ねるロック本体53とからなる。両アーム本体51間で、かつ操作部52の前方及びロック本体53の後方には、相手ハウジング120のロック部が進入可能なロック溝54が保有されている。相手ハウジング120との嵌合過程では、ロック部がロック本体53と干渉して、両アーム本体51が両脚片50を支点として下方に撓み変形され、相手ハウジング120との正規嵌合時には、両アーム本体51が弾性復帰してロック部がロック溝54に嵌り、もって相手ハウジング120との離脱が規制されるようになっている。相手ハウジング120との嵌合状態を解除する際には、操作部52を押圧することにより、ロック溝54からロック部を離脱させるようにする。
【0041】
嵌合筒部38の上壁には、膨出部55が外側に膨出して形成され、膨出部55の内側に、ロックアーム49が撓み可能に配置されている。図5に示すように、膨出部55の上壁には、窓部56が切り欠いて形成され、窓部56を通してロックアーム49が視認可能に露出されている。
【0042】
また、アウタ本体37(受容部39)の前端縁の上下位置には、弾性部材90にその後方から当接可能な第2当接面57が形成されている。アウタ本体37の第2当接面57は、フランジ部20の第1当接面21と略平行に対向するよう径方向に沿って配置され、第1当接面21との間に弾性部材90の挟持空間を保有している。
【0043】
ハウジング10が相手ハウジング120に正規嵌合されると、フランジ部20の第1当接面21とアウタ本体37の第2当接面57との間に弾性部材90が圧縮状態で挟持される。このとき、弾性部材90の弾性復元力によって、ハウジング10と相手ハウジング120との間に、双方を前後方向に離間させる向きの離反力が作用して、相互のがた付きが防止されるようになっている。
【0044】
アウタ本体37の上壁の上面には、弾性部材90の径方向の伸長を抑えることが可能な押さえ部58が突出して形成されている。押さえ部58は、アウタ本体37の上壁の前端部から立ち上がる立上部58Bと、立上部58Bの上端から前方へ張り出す張出部58Aとからなり、全体として断面L字形をなしている。張出部58Aは、弾性部材90が非圧縮状態にあるときに、弾性部材90から径方向外側に離間して配置され、弾性部材90が強固な圧縮状態にあるときに、弾性部材90に径方向外側から押さえ状態に当接して配置されるようになっている。
【0045】
また、押さえ部58は、アウタ本体37の幅方向中央部においてロックアーム49と径方向(本実施形態では上下方向)で重なり合う位置に配置され、正面視によれば、ロックアーム49の両脚片50間に配置されている。押さえ部58の上方には、ロックアーム49のロック溝54が位置し、押さえ部58は、ロック溝54を通して上方から視認可能とされている。
【0046】
次に、本実施形態のコネクタの作用を説明する。
インナハウジング11の装着孔23にリテーナ60を挿入して仮係止位置に留め置く。仮係止位置では、リテーナ本体61の外面がインナハウジング11の外面にほぼ面一で連なり(図18を参照)、かつインナハウジング11の係止突部29の第2係止部31が、リテーナ60の仮係止凹部65に弾性的に嵌り込む(図19を参照)。このとき、図20に示すように、係止突部29の第2係止面33が、仮係止凹部65の第1係止面69と、リテーナ60の抜出方向と略直交する方向にほぼ沿って配置され、これによってリテーナ60のインナハウジング11からの抜け止めがなされる。また、仮係止位置では、係止突部29の第1係止部30が逃がし孔70に進入してリテーナ60側との干渉を回避されるとともに、図21に示すように、係止突部29の第4斜面34が仮係止凹部65の第6斜面68とその面方向にほぼ沿って配置され、かつ係止突部29の第2斜面35が仮係止凹部65の第1係止面69との間に隙間をあけて配置される。
【0047】
かかる状態で、キャビティ13内に端子金具110を挿入する。全ての端子金具110を挿入したら、リテーナ本体61を上方から押圧して、リテーナ60を本係止位置に向けて移動させる。移動の過程では、係止突部29の第4斜面34が仮係止凹部65の第6斜面68を摺動して、弾性片62が撓み空間に撓み変形される。リテーナ60が本係止位置に到達すると、弾性片62が弾性復帰されて、係止突部29の第2係止部31が本係止凹部64に嵌り込む(図22を参照)。このとき、図24に示すように、係止突部29の第2斜面35が本係止凹部64の第1斜面67とその面方向にほぼ沿って配置されるとともに、係止突部29の第4斜面34が本係止凹部64の第5斜面66とその面方向に沿って配置され、もってリテーナ60が本係止位置に移動規制状態に保持される。
【0048】
なお、リテーナ60の本係止位置への移動過程及び移動完了後において、係止突部29の第1係止部30は、図20及び図23に示すように、逃がし孔70に進入していて、リテーナ60側と非干渉状態に保たれる。また、リテーナ60が本係止位置に到達すると、図2に示すように、リテーナ本体61の外面がインナハウジング11の外面よりも一段低く配置され、かつ抜止部63が端子金具110の本体部111の後端に係止可能に配置されて、端子金具110のキャビティ13からの抜け止めがなされる。
【0049】
一方、メンテナンス等においてリテーナ60を仮係止位置に戻り移動させる際には、リテーナ本体61を仮係止位置側へ向けて引き上げる。仮係止位置への移動過程では、係止突部29の第2斜面35が本係止凹部64の第1斜面67を摺動して弾性片62が撓み空間に撓み変形される。リテーナ60が仮係止位置に到達すると、弾性片62が弾性復帰されて、図20に示すように、係止突部29の第2係止面33が仮係止凹部65の第1係止面69と、リテーナ60の抜出方向と略直交する方向に沿って当接し、これによってリテーナ60が不用意に仮係止位置を通過してインナハウジング11外へ抜け出るのが回避される。
【0050】
なお、上記キャビティ13への端子金具110の挿入作業は、アウタハウジング12にインナハウジング11を組み付けた後から行うことができる。次に、アウタハウジング12にインナハウジング11を組み付ける作業を説明する。
【0051】
インナハウジング11にアウタハウジング12を組み付ける過程では、アウタハウジング12の凸部43がインナハウジング11の凹部19に嵌入され、組み付けが進むに従って、凸部43の先端が凹部19の奥側へ向けて深く進入する。こうして凸部43が凹部19に正規深さで嵌合されると(図16を参照)、インナロック部16がインナロック受け部47を弾性的に係止して、インナハウジング11がアウタハウジング12に嵌合状態に保持される。
【0052】
一方、インナハウジング11が正逆反転した姿勢をとりながらアウタハウジング12に組み付けられようとすると、図17に示すように、延出長さの長い凸部43A(正規姿勢では上側に位置する凸部43A)が、深さの浅い凹部19B(正規姿勢では下側に位置する凹部19B)に正規深さで嵌合される前に、延出長さの長い凸部43Aの先端が、深さの浅い凹部19Bの奥端に干渉して、インナハウジング11のそれ以上の嵌合動作が規制される。このため、インナハウジング11がアウタハウジング12に誤った姿勢で嵌合されるのが回避される。この場合、延出長さの長い凸部43Aは、断面3角形状をなしているため、その先端が凹部19Bの奥端と干渉しても、塑性変形され難い。
【0053】
なお、インナハウジング11がアウタハウジング12に正規嵌合され、かつハウジング10が相手ハウジング120に嵌合される前の状態では、弾性部材90は、フランジ部20の第1当接面21とアウタ本体37の第2当接面57との間にやや圧縮された状態となるものの、押さえ部58との間に若干の隙間をあけている。
【0054】
その後、図1に示すように、アウタハウジング12の嵌合筒部38に前方から相手ハウジング120が嵌合され、フード部121内にインナハウジング11が挿入される。両ハウジング10、120が正規嵌合されると、フード部121の先端がフランジ部20の径方向外側に位置し、かつロックアーム49がロック部を弾性的に係止して、両ハウジング10、120が離脱規制状態に保持される。このとき、シール部材80がフード部121の内面とインナハウジング11の外面との間に圧縮されて、両ハウジング10、120間が液密にシールされる。
【0055】
また、両ハウジング10、120の正規嵌合時には、フランジ部20の第1当接面21とアウタ本体37の第2当接面57との間に弾性部材90が圧縮される。このとき、弾性部材90が径方向外側に伸長しようとするものの、押さえ部58の張出部58Aが弾性部材90の上端に当接することにより、弾性部材90の上端における伸長が規制される。このため、弾性部材90が径方向外側に伸長することに起因して、弾性部材90の弾性復元力が減退するのが抑えられる。その結果、両ハウジング10、120間に適正な離反力が作用し、がた詰めの信頼性が担保される。また、弾性部材90の幅方向中央部に押さえ部58が当接することにより、弾性部材90が幅方向片側に歪に弾性変形するのが回避される。
以上説明したように、本実施形態によれば、次の効果を奏し得る。
【0056】
(1)圧縮状態にある弾性部材90が押さえ部58と径方向で当接することで、弾性部材90の径方向の伸長を抑えることが可能とされるから、径方向の伸長によって弾性部材90の弾性復元力が減ぜられるのが回避され、弾性部材90によるがた詰めの信頼性が高められる。また、押さえ部58がロックアーム49と径方向で重なり合う位置に配置されているから、押さえ部58によってコネクタが径方向に大型化するのが回避される。
(2)ロックアーム49がハウジング10の幅方向中央部に一対の脚片50を有する形態とされ、押さえ部58が正面視で幅方向に並ぶ両脚片50間に位置しているから、弾性部材90の伸長がハウジング10の幅方向中央部でバランス良く抑えられ、がた詰めの信頼性がよりいっそう高められる。
(3)押さえ部58がハウジング10の一部であるアウタハウジング12に形成されているから、押さえ部58がハウジング全体の中に形成されるよりも、成型用金型の構造を簡素化できる。
【0057】
(4)凸部43が嵌合方向の延出長さを異にする複数種によって構成され、凹部19が対応する凸部43の延出長さに応じた深さを有する複数種によって構成されているから、凸部43が凹部19に正規深さで挿入される場合には、インナハウジング11及びアウタハウジング12が正規嵌合状態にあることがわかり、凸部43が凹部19に正規深さで挿入されない場合には、インナハウジング11及びアウタハウジング12が正規嵌合状態にないことがわかる。したがって、インナハウジング11及びアウタハウジング12の誤嵌合を防止するにあたり、形状検知及び位置検知以外の別の検知手段が提供される。
(5)インナハウジング11が、筒状のタワー部17を有する形態とされ、タワー部17が2つ並んで形成され、隣接するタワー部17間に、凹部19が構成されているから、隣接するタワー部17間のデッドスペースが有効に活用され、スペース効率に優れる。
(6)上側の凸部43A(誤嵌合時に下側の凹部19Bと干渉する先方凸部)が、上側の凹部19Aと対応する開き角をもった直線状の対辺45を有する断面3角形状をなしているから、誤嵌合時に上側の凸部43Aが下側の凹部19Bとの干渉に起因して削り取られたりするのが回避される。
【0058】
(7)本係止凹部64が、リテーナ60の抜出方向先方に、リテーナ60の抜出方向に沿って傾斜する第1斜面67を有し、係止突部29が、リテーナ60の抜出方向先方に、第1斜面67にその面方向にほぼ沿って配置される第2斜面35を有しているから、リテーナ60が本係止位置から仮係止位置に戻る際に、第1斜面67と第2斜面35とが互いに摺動して、リテーナ60の戻り移動が円滑になされる。また、仮係止凹部65が、リテーナ60の抜出方向先方に、リテーナ60の抜出方向と略直交する方向に沿った第1係止面69を有し、係止突部29が、仮係止位置で第1係止面69とその面方向にほぼ沿って配置される第2係止面33を有しているから、リテーナ60が仮係止位置に至るに伴い、第1係止面69と第2係止面33がリテーナ60の抜出方向に抗して緊密に係止し合い、リテーナ60のハウジング10からの離脱が防止される。この場合に、係止突部29に第2斜面35及び第2係止面33がまとめて形成されているから、第2斜面35及び第2係止面33がそれぞれ別に形成されているよりも、構成が簡素化される。
(8)第2斜面35が係止突部29において第2係止面33を挟んだ両側に配置されているから、第2斜面35が第1斜面67と摺動する際に、リテーナ60の移動姿勢のバランスが良好となる。
(9)リテーナ60に、本係止凹部64と仮係止凹部65との間において、リテーナ60の移動方向に延出して、リテーナ60の移動過程で、係止突部29の第1係止部30が進入する逃がし孔70が形成されているから、第1係止部30が本係止凹部64の第1斜面67等に干渉することがなく、リテーナ60の移動がスムーズになされる。また、第1係止部30の第2係止面33の係止代を大きく確保できるから、リテーナ60の抜け止め信頼性が高められる。
【0059】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上側の凸部に加え、下側の凸部も断面3角形状をなすものであってもよい。
(2)仮係止凹部及び本係止凹部がハウジングに形成され、係止突部がリテーナに形成されるものであってもよい。
(3)逃がし孔は有底孔であってもよい。
(4)第1斜面〜第6斜面は曲面状の斜面であってもよい。
(5)押さえ部がインナハウジングに形成されるものであってもよい。
(6)押さえ部が周方向に複数形成されるものであってもよい。
(7)押さえ部が全周に亘って形成されるものであってもよい。
(8)各タワー部及び各対向筒部が3つ以上並んで形成され、各凹部及び各凸部が複数形成されるものであってもよい。
(9)ハウジングに後方からカバーを取り付ける場合に、ハウジングとカバーのいずれか一方に、上記実施形態に対応する各凹部を形成し、他方に、上記実施形態に対応する各凸部を形成するものであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
10…ハウジング
11…インナハウジング
12…アウタハウジング
17…タワー部
19…凹部
23…装着孔
29…係止突部
33…第2係止面
35…第2斜面
43…凸部
45…対辺
49…ロックアーム
50…脚片
58…押さえ部
60…リテーナ
62…弾性片
64…本係止凹部
65…仮係止凹部
67…第1斜面
69…第1係止面
70…逃がし孔
90…弾性部材
110…端子金具
120…相手ハウジング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手ハウジングとの嵌合時に前記相手ハウジングを離脱規制状態に保持するロックアームを有するハウジングと、
前記ハウジングに嵌着され、両ハウジングの嵌合時に、嵌合方向に圧縮されることで、前記両ハウジング間のがたを詰めることが可能な環状の弾性部材とを備えたコネクタであって、
前記ハウジングには、圧縮状態にある前記弾性部材と、前記嵌合方向と略直交する径方向で当接することで、前記弾性部材の前記径方向の伸長を抑えることが可能な押さえ部が形成され、
前記押さえ部が、前記ロックアームと前記径方向で重なり合う位置に配置されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記ロックアームが、前記ハウジングの幅方向中央部に一対の脚片を有する形態とされ、前記押さえ部が、正面視で幅方向に並ぶ両脚片の間に位置している請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングが、筒状のアウタハウジングと、前記アウタハウジング内に挿入されて保持されるブロック状のインナハウジングとを備え、
前記押さえ部が、前記アウタハウジング又はインナハウジングに形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のコネクタ。
【請求項1】
相手ハウジングとの嵌合時に前記相手ハウジングを離脱規制状態に保持するロックアームを有するハウジングと、
前記ハウジングに嵌着され、両ハウジングの嵌合時に、嵌合方向に圧縮されることで、前記両ハウジング間のがたを詰めることが可能な環状の弾性部材とを備えたコネクタであって、
前記ハウジングには、圧縮状態にある前記弾性部材と、前記嵌合方向と略直交する径方向で当接することで、前記弾性部材の前記径方向の伸長を抑えることが可能な押さえ部が形成され、
前記押さえ部が、前記ロックアームと前記径方向で重なり合う位置に配置されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記ロックアームが、前記ハウジングの幅方向中央部に一対の脚片を有する形態とされ、前記押さえ部が、正面視で幅方向に並ぶ両脚片の間に位置している請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングが、筒状のアウタハウジングと、前記アウタハウジング内に挿入されて保持されるブロック状のインナハウジングとを備え、
前記押さえ部が、前記アウタハウジング又はインナハウジングに形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のコネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2011−243480(P2011−243480A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116074(P2010−116074)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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