説明

コネクタ

【課題】本発明は、ボルトを締め込む力が低減されたコネクタを提供する。
【解決手段】互いに嵌合可能な一対のコネクタ11,12であって、雄コネクタ11は雌コネクタ12に向かって突出すると共に内部に雄端子25が収容された複数の防水筒部28を備え、雄コネクタ11には複数の防水筒部28の間の位置にボルト52が挿通されるボルト挿通孔40が形成されており、雌コネクタ12は複数の防水筒部28と個別に嵌合可能な複数の嵌合筒部22を備え、防水筒部28には嵌合筒部22の内面に密着するシールリング29が装着されており、嵌合筒部22には雄端子25と接続される複数の雌端子17が収容されており、雌コネクタ12にはボルト挿通孔40に対応する位置にボルト52が螺合されるねじ孔43が形成されており、ボルト挿通孔40に挿通されたボルト52がねじ孔43に螺合されることで雄コネクタ11と雌コネクタ12とが嵌合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに嵌合可能な一対のコネクタとして特許文献1に記載のものが知られている。このコネクタは、一のコネクタに複数の端子が横並びに配されている。一のコネクタには、複数の端子の並び方向と交差する方向について端子と離間した位置に、ボルトが挿通されるボルト挿通孔が形成されている。一方、他のコネクタには、複数の端子に対応する位置に相手側端子が収容されると共に、一のコネクタのボルト挿通孔に対応する位置に、ボルトが螺合されるねじ孔が形成されている。
【0003】
従来技術に係るコネクタにおいては、ボルトをボルト挿通孔に挿通してねじ孔に螺合させることにより、一のコネクタと他のコネクタとが嵌合されるようになっている。これにより、複数の端子と、複数の相手側端子とが電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−92776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の構成において、ボルトをねじ孔内に螺合させると、一のコネクタと他のコネクタとを互いに押し付け合う方向の力が、ボルトの軸部から、一のコネクタと他のコネクタの双方に働く。この力は、ボルトの近傍の領域においては強く作用し、ボルトから離間するにつれて減衰する。
【0006】
上記の構成によると、特許文献1の図6に示されているように、ボルト挿通孔及びねじ孔は、複数の端子の並び方向と交差する方向について端子と離間した位置に形成されている。このため、一のコネクタと他のコネクタとを互いに押し付け合う力は、ボルトから離間した位置に配された端子及び相手側端子に対しては、ボルトの近傍の部分に作用する力に比べて弱くなってしまう。このため、端子と相手側端子とを嵌合させるために必要な力よりも大きな力が、ボルトを締め込む際に必要となってしまう。この結果、コネクタを嵌合させる作業の効率が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ボルトを締め込む力が低減されたコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、互いに嵌合可能な一対のコネクタであって、一のコネクタは他のコネクタに向かって突出すると共に内部に端子が収容された複数の防水筒部を備え、前記一のコネクタには前記複数の防水筒部の間の位置にボルトが挿通されるボルト挿通孔が形成されており、他のコネクタは複数の前記防水筒部と個別に嵌合可能な複数の嵌合筒部を備え、前記防水筒部及び前記嵌合筒部の一方には他方に密着するシールリングが装着されており、前記嵌合筒部には前記端子と接続される複数の相手側端子が収容されており、前記他のコネクタには前記ボルト挿通孔に対応する位置に前記ボルトが螺合されるねじ孔が形成されており、前記ボルト挿通孔に挿通された前記ボルトが前記ねじ孔に螺合されることで前記一のコネクタと前記他のコネクタとが嵌合される。
【0009】
本発明によれば、ボルト挿通孔にボルトを挿通し、ねじ孔に螺合させると、一のコネクタ及び他のコネクタに対して、互いに押し付け合う力がボルトを介して作用する。ボルト挿通孔は複数の防水筒部の間に形成されているので、ボルトを介して一のコネクタ及び他のコネクタに加えられる力は、各防水筒部に対して、大きく減衰することなく作用する。これにより、一のコネクタと他のコネクタとを嵌合させる際に、ボルトを締め込む力が大きくなることを抑制できるので、嵌合作業の効率を向上させることができる。
【0010】
防水筒部と嵌合筒部とはシールリングによってシールされているので、比較的に大きな嵌合力が必要とされる。本発明によれば、ボルトをねじ孔に螺合することにより一のコネクタ及び他のコネクタに作用する力を大きく減衰させることなく防水筒部及び嵌合筒部に作用させることができるので、ボルトを締め込む力を低減させることができる。
【0011】
また、上記の防水筒部の内部には端子が個別に収容されているので、上記の力が各端子に対して作用する。これにより、端子と相手側端子との接圧が比較的に大きな場合でも、ボルトを比較的に小さな力で締め込むことにより、端子と相手側端子とを接続させることができる。
【0012】
本発明の実施態様としては以下の態様が好ましい。
前記防水筒部は前記端子を合成樹脂によってモールド成形してなることが好ましい。
【0013】
上記の態様によれば、防水筒部の防水性を向上させることができる。
【0014】
前記他のコネクタは前記相手側端子を包囲する金属製のケースを備え、前記一のコネクタは前記他のコネクタと嵌合した状態で前記ケースとの間で前記端子を包囲する金属製のシールドシェルを備えており、前記ケース及び前記シールドシェルの一方には、他方に向かって延びる当接部が形成されており、前記当接部の先端は、前記一のコネクタと前記他のコネクタとが正規嵌合した状態では、前記ケース及び前記シールドシェルの他方に当接することが好ましい。
【0015】
上記の態様では、ボルトを締め込んで一のコネクタと他のコネクタとを正規嵌合させることにより、シールドシェルとケースとを、当接部を介して電気的に接続させることができる。これにより、一のコネクタと他のコネクタの嵌合作業と、シールドシェルとケースとの電気的な接続作業の双方を、ボルトを締め込むことで実行することができるので、コネクタの接続作業の効率を向上させることができる。
【0016】
前記嵌合筒部は前記ケースに形成されていることが好ましい。
【0017】
上記の態様によれば、一のコネクタと他のコネクタとの間の防水と、電磁的なシールドとを、同時に行うことができる。
【0018】
前記当接部は、前記シールドシェルから前記ケースに向かって延びると共に前記ボルト挿通孔が貫通された筒状に形成されていることが好ましい。
【0019】
上記の態様によれば、当接部は、ボルト挿通孔が貫通された筒状に形成されているので、ボルトをねじ孔に螺合することにより発生する一のコネクタと他のコネクタとを互いに押し付け合う力は、ボルトの近傍に位置する当接部に効率的に伝達される。この結果、シールドシェルとケースとの電気的な接続を確実なものとすることができる。
【0020】
前記一のコネクタには、3つ以上の前記防水筒部が、前記防水筒部の個数と同じ個数の頂点を有する多角形の各頂点に対応する位置に形成されており、前記ボルト挿通孔は前記多角形の内側の領域に形成されていることが好ましい。
【0021】
上記の態様によれば、ボルトを締め込む際に一のコネクタ及び他のコネクタに作用する力を、大きく減衰させることなく各防水筒部に作用させることができる。これにより、ボルトの締め付け力が大きくなることを一層抑制できる。
【0022】
前記ボルト挿通孔は、前記多角形の重心の位置に形成されていることが好ましい。
【0023】
上記の態様によれば、ボルトを締め込む際に一のコネクタ及び他のコネクタに作用する力を、各防水筒部に均等に作用させることができる。これにより、一のコネクタと他のコネクタとの接続信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、コネクタをボルトによって締結させる場合に、ボルトを締め込む力を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係るコネクタを示す断面図
【図2】雄コネクタと雌コネクタとを示す断面図
【図3】雄コネクタを示す分解斜視図
【図4】雄コネクタを示す斜視図
【図5】雄コネクタを示す正面図
【図6】雄コネクタを示す背面図
【図7】電線の端部に雄端子が接続された状態を示す側面図
【図8】モールド部が形成された状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図8を参照しつつ説明する。本実施形態に係るコネクタ10は、互いに嵌合可能な雄コネクタ11(一のコネクタに相当)と、雌コネクタ12(他のコネクタに相当)と、を備える。以下の説明においては、各コネクタ11,12の嵌合方向の前方を前方とし、後方を後方とする。このため、雄コネクタ11と雌コネクタ12とでは、前後方向が反対向きとなる。また、図1における上方を上方とし、下方を下方とする。
【0027】
(雌コネクタ12)
雌コネクタ12は、絶縁性の合成樹脂からなる端子台13と、この端子台13にボルト14によって固定された金属製のバスバー15と、端子台13と導電部材16を介して接続された金属製の雌端子17(相手側端子に相当)と、雌端子17が収容された合成樹脂製のハウジング18と、を備える。
【0028】
バスバー15は金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。バスバー15は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等、必要に応じて任意の金属により形成しうる。バスバー15の表面には、スズ、ニッケル等、必要に応じて任意の金属からなるメッキ層が形成されていてもよい。
【0029】
端子台13には図示しない取り付け手段によりハウジング18が取り付けられている。取り付け手段としては、ねじ止め、ロック突部とロック受け部とが弾性的に係合するロック構造等、必要に応じて任意の構成を採用しうる。ハウジング18には導電部材16及び雌端子17が収容されるキャビティ19が形成されている。
【0030】
導電部材16はバスバー15に半田付け、ロウ付け、レーザ溶接、超音波溶接、抵抗溶接等、必要に応じて任意の手法により接続されている。導電部材16は側方から見て略直角に曲げられ形状をなしている。導電部材16と雌端子17とは、半田付け、ロウ付け、溶接、かしめ等、必要に応じて任意の手法により接続されている。導電部材16は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、必要に応じて任意の金属により形成される。また、導電部材16は、板状でもよく、また、金属細線からなる可撓性を有する編組線からなる構成としてもよい。
【0031】
雌端子17は金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。雌端子17を形成する金属としては、銅、銅合金等、必要に応じて任意の金属を用いることができる。金属板材の表面にはスズ、ニッケル等、必要に応じて任意の金属からなるメッキ層が形成されていてもよい。雌端子17の後端部(図1における右端部)は、半田付け、ロウ付け、レーザ溶接、超音波溶接、抵抗溶接、かしめ等、必要に応じて任意の手法により導電部材16と接続されている。雌端子17の前端部(図1における左端部)には雄端子25(端子に相当)が挿入される接続筒部20が形成されている。雌コネクタ12には雄端子25と同数の雌端子17が配されている。
【0032】
端子台13、バスバー15、ハウジング18、導電部材16、及び雄端子25は、金属製のケース21によって包囲されている。ケース21は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、鉄、ステンレス鋼等、必要に応じて任意の金属により形成しうる。本実施形態においては、ケース21はアルミニウム製とされる。
【0033】
ケース21には、後述する雄コネクタ11の防水筒部28が内嵌される嵌合筒部22が、前方(図2における左方)に向かって突出して形成されている。嵌合筒部22は略円筒形状をなしている。嵌合筒部22の内部にはハウジング18が配されており、このハウジング18のキャビティ19内には雌端子17の接続筒部20が収容されている。
【0034】
(雄コネクタ11)
雄コネクタ11は、電線23の端部から露出された芯線24に接続された雄端子25を備える。本実施形態においては、3本の電線23のそれぞれに雄端子25が接続されている。雄端子25は側方から見て略直角に曲げられた形状をなしている。雄端子25の後端部(図2における左端部)は、半田付け、ロウ付け、レーザ溶接、超音波溶接、抵抗溶接、かしめ等、必要に応じて任意の手法により芯線24と接続されている。雄端子25の前端部(図2における右端部)は、略円筒形状をなすと共に前方(図2における右方)に突出するピン部26とされている。本実施形態においては、ピン部26は略円筒形状をなしている。ピン部26の外径寸法は、上記した接続筒部20の内径寸法と同じかやや小さく設定されている。これにより、ピン部26が接続筒部20内に収容された状態で、接続筒部20の内壁面がピン部26の外側面に対して密着することにより、雄端子25と雌端子17とが電気的に接続されるようになっている。
【0035】
電線23、芯線24、及び雄端子25は、合成樹脂によってモールド成形されたモールド部27を備える。モールド部27には前方(図2における右方)に延びる防水筒部28が形成されている。防水筒部28は略円筒形状をなしている。防水筒部28の内部には、雄端子25のピン部26が収容されている。
【0036】
防水筒部28の外面には、ゴム製のシールリング29が外嵌されている。防水筒部28が上述した接続筒部20内に嵌合すると、シールリング29の外面が接続筒部20の内壁面と密着する。これにより防水筒部28と接続筒部20との間がシールされるようになっている。
【0037】
電線23及びモールド部27は、合成樹脂製のスペーサ30に挿通される。スペーサ30は扁平な形状をなしており、電線23と同数の貫通孔31が間隔を空けて並んで形成されている。この貫通孔31内に、電線23及びモールド部27が挿通されることにより、3つの電線23が、雄コネクタ11内の正規位置に配されるようになっている。貫通孔31の下端部寄りの位置には内方に突出する段差が形成されており、この段差にモールド部27が上方から当接することにより電線23及びモールド部27の下方への抜け止めが図られている。
【0038】
(シールドシェル32)
電線23、モールド部27、雄端子25、及びスペーサ30は、金属製のシールドシェル32によって包囲されている。シールドシェル32はアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等、必要に応じて任意の金属によって形成されている。雄コネクタ11と雌コネクタ12とが嵌合した状態では、雌コネクタ12のケース21と、雄コネクタ11のシールドシェル32とによって雄端子25が包囲されるようになっている。
【0039】
シールドシェル32は、後ろ側(図2における左側)に位置するリアシェル33と、前側(図2における右側)に位置するフロントシェル34と、を備える。図3に示すように、リアシェル33とフロントシェル34とは、ビス35によって固定されている。
【0040】
フロントシェル34は、前板36と、前板36の下方に延出されたリング状をなすリング部37と、を備える。リング部37は上下方向に開口されている。前板36は、電線23が並ぶ方向について、略中央部分が下方に切り欠かれおり、前後方向から見て略U字形状をなしている。この前板36の上縁部と、下方に切り欠かれた部分とに、3つの防水筒部28がそれぞれ上方から配されるようになっている。前板36によって、雄コネクタ11の前側は電磁的にシールドされるようになっている。
【0041】
リング部37は、断面形状が長円形状をなしている。リング部37内にはスペーサ30が内嵌されるようになっている。
【0042】
リアシェル33は、前方(図2における右方)が開口した浅い皿状をなすと共に、下方が開放された形状をなしている。図3に示すように、リアシェル33の壁部には、フロントシェル34をビス35によりねじ止めするためのねじ孔38が前方に開口して形成されている。このリアシェル33によって雄コネクタ11の後ろ側が電磁的にシールドされるようになっている。
【0043】
リアシェル33の内部には、複数のリブ39が前方に立ち上がって形成されており、防水筒部28を所定の位置に保持するようになっている。詳細には、リブ39の下面と、上記したフロントシェル34の上縁部及び下方に切り欠かれた部分との間に、各防水筒部28が挟持されるようになっている
【0044】
図2に示すように、リアシェル33の後ろ壁には、ボルト52の軸部44が挿通されるボルト挿通孔40が前後方向(図2における左右方向)に貫通して形成されている。リアシェル33の後ろ壁から前方に向かって筒状をなす当接部41が形成されており、この当接部41には、上記したボルト挿通孔40が形成されている。
【0045】
ボルト52の軸部44は、雄コネクタ11のハウジング18に埋設された袋ナット42に形成されたねじ孔43に螺合されるようになっている。袋ナット42はハウジング18にモールド成形される構成としてもよく、また、圧入等により埋設される構成としてもよい。
【0046】
ボルト52の軸部44には、その長さ方向の略中央付近の位置に、ゴム製のボルトシールリング45が外嵌されている。このボルトシールリング45の外面が、ケース21に形成されたケース側ボルト挿通孔46の内壁面と密着することにより、ボルト52とケース21とのシールが図られるようになっている。
【0047】
ボルト52の頭部には、ボルト52の径方向外方に突出するフランジ47が形成されている。リアシェル33の後ろ壁の後面には、フランジ47が収容される凹部48が形成されている。リアシェル33の後ろ壁には、凹部48の後方から受板部49がビス50により取り付けられている。受板部49の中央位置にはボルト52の頭部を締め込むための治具を挿入可能な治具挿入孔51が形成されている。治具挿入孔51の内径寸法はフランジ47の外径寸法よりも小さく設定されている。これにより、ボルト52を緩めてボルト52を後方に移動させると、フランジ47が前方から受板部49に当接し、リアシェル33を後方に押圧するようになっている。
【0048】
図5に示すように、雄コネクタ11の前面には、3つの防水筒部28の中心軸が三角形の頂点の位置になるように配されている。防水筒部28は、上側に2つ、下側に1つが位置している。
【0049】
図4及び5に示すように、三角形の頂点位置に配された3つの防水筒部28の間に囲まれた位置には、当接部41と、この当接部41に形成されたボルト挿通孔40に挿通されたボルト52が配されている。詳細には、軸部44に形成されたボルト挿通孔40は、各防水筒部28の中心軸により形成された三角形の重心に配されている。なお、三角形の重心は、頂点とその対辺の中点を結ぶ3つの線分の交点をいう。
【0050】
(組み付け工程)
続いて、本実施形態に係るコネクタ10の組付工程の一例について説明する。なお、コネクタ10の組み付け工程は以下の記述に限定されない。
【0051】
まず、雌端子17の後端部と導電部材16とを接続する。次いで、導電部材16とバスバー15とを接続する。導電部材16に対して雌端子17とバスバー15を接続する順序は、上記と反対でもよく、また、導電部材16に対して雌端子17及びバスバー15を同一の工程で接続してもよい。
【0052】
次に、バスバー15を端子台13にボルト14により固定する。続いて、端子台13にハウジング18を組み付ける。このとき、ハウジング18のキャビティ19内に雌端子17が収容されるようにする。続いて、ハウジング18を覆うようにしてケース21を組み付ける。これにより雌コネクタ12が完成する
【0053】
次に、電線23の端末において、芯線24の外周を包囲する絶縁被覆を剥がす。これにより芯線24を露出させる。露出された芯線24に雄端子25の後端部を接続する(図7参照)。
【0054】
続いて、合成樹脂によりモールド成形を行うことによりモールド部27を成形する。モールド部27の防水筒部28の内部には雄端子25のピン部26が位置するようになっている(図8参照)。次いで、防水端子の外周にシールリング29を外嵌させる。
【0055】
続いて、電線23及びモールド部27をスペーサ30の貫通孔31内に上方から挿通させる。次いで、スペーサ30をフロントシェル34のリング部37に、上方から挿入する。その後、フロントシェル34をリアシェル33にビス35によりねじ止めする。これにより、防水筒部28が雄コネクタ11の所定の位置に保持される。詳細には、3つの防水筒部28の中心軸が、三角形の頂点に位置するように配される。
【0056】
次に、リアシェル33の凹部48内に、ボルト52を後方から挿入する。更に、ボルト52の軸部44をボルト挿通孔40内に挿入する。次いで、ボルト52の頭部が凹部48内に収容された後、受板部49をリアシェル33にビス50によりねじ止めする。これにより雄コネクタ11が完成する。
【0057】
続いて、雄コネクタ11と雌コネクタ12との嵌合動作について説明する。図2に示すように、雄コネクタ11の前面と雌コネクタ12の前面とを対向させて配置する。この配置において、雄コネクタ11の防水筒部28は雌コネクタ12に向かって突出しており、雌コネクタ12の嵌合筒部20は雄コネクタ11に向かって突出している。次いで、図2の矢線Aに示す方向から、雄コネクタ11を雌コネクタ12に接近させて、雄コネクタ11の前方に突出するボルト52の軸部44を雌コネクタ12のボルト挿通孔40内に挿入する。更に雄コネクタ11を雌コネクタ12に接近させて、ボルト52の軸部44の先端が袋ナット42のねじ孔43に噛み込むようにする。
【0058】
次に、受板部49の治具挿入孔51内に図示しない治具を挿入して、ボルト52の軸部44が袋ナット42のねじ孔43内に螺入するようにボルト52の頭部を回転させる。すると、ボルト52がねじ孔43に螺合されることにより、雄コネクタ11と雌コネクタ12とが互いに押し付け合う力が作用する。これにより、雄コネクタ11と雌コネクタ12とが互いに接近する。
【0059】
更にボルト52をねじ込むと、防水筒部28に外嵌されたシールリング29が嵌合筒部22の内壁面と密着する。これにより防水筒部28と嵌合筒部22とがシールされる。
【0060】
更にボルト52をねじ込むと、雄端子25のピン部26が雌端子17の接続筒部20の内部に進入する。これにより、ピン部26の外周面に接続筒部20の内壁面が接触する。これにより、雄端子25と雌端子17とが電気的に接続される。
【0061】
更にボルト52をねじ込むとリアシェル33の当接部41の先端が、ケース21に当接する。これにより、シールドシェル32とケース21とが電気的に接続される。これにより、雄コネクタ11と雌コネクタ12との嵌合が完了する。
【0062】
次に、雄コネクタ11と雌コネクタ12との離脱動作について説明する。受板部49の治具挿入孔51内に治具を挿入し、ボルト52を緩める。すると、ボルト52の頭部に形成されたフランジ47が、受板部49に対して、雄コネクタ11の嵌合方向前側から当接する。すると、受板部49は後方に押圧されるので、受板部49がねじ止めされたリアシェル33も後方に押圧される。この結果、ボルト52を緩めると、雄コネクタ11が後方に押圧される。
【0063】
更にボルト52を緩めると、雄コネクタ11が後方に押圧されることにより、雄コネクタ11が後方に移動し、雌コネクタ12から離脱する。
【0064】
(実施形態の作用、効果)
続いて、本実施形態の作用、効果について説明する。本実施形態によれば、雄コネクタ11には複数の防水筒部28の間に囲まれた位置にボルト52が挿通されるボルト挿通孔40が形成されており、雌コネクタ12には、ボルト挿通孔40に対応する位置にボルト52が螺合されるねじ孔43が形成されている。これにより、ボルト挿通孔40にボルト52を挿通し、ねじ孔43に螺合させると、雄コネクタ11及び雌コネクタ12に対して、互いに押し付け合う力がボルト52を介して作用する。ボルト挿通孔40は複数の防水筒部28の間に形成されているので、ボルト52を介して雄コネクタ11及び雌コネクタ12に加えられる力は、各防水筒部28に対して、大きく減衰することなく作用する。これにより、雄コネクタ11と雌コネクタ12とを嵌合させる際に、ボルト52を締め込む力が大きくなることを抑制できるので、嵌合作業の効率を向上させることができる。
【0065】
防水筒部28と嵌合筒部22とはシールリング29によってシールされているので、比較的に大きな嵌合力が必要とされる。本実施形態によれば、ボルト52をねじ孔43に螺合することにより雄コネクタ11及び雌コネクタ12に作用する力を大きく減衰させることなく防水筒部28及び嵌合筒部22に作用させることができるので、ボルト52を締め込む力を低減させることができる。
【0066】
また、上記の防水筒部28の内部には雄端子25が個別に収容されているので、上記の力が各雄端子25に対して作用する。これにより、雄端子25と雌端子17との接圧が比較的に大きな場合でも、ボルト52を比較的に小さな力で締め込むことにより、雄端子25と雌端子17とを接続させることができる。
【0067】
また、本実施形態においては、雄端子25と雌端子17とは、防水筒部28及び嵌合筒部22によって個別にシールされている。これにより、ボルト52が防水されるべき領域内を貫通しないようになっている。これにより、コネクタ10の防水性を向上させることができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、防水筒部28は雄端子25を合成樹脂によってモールド成形してなる。これにより、防水筒部28の防水性を向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、雌コネクタ12は雌端子17を包囲する金属製のケース21を備え、雄コネクタ11は雌コネクタ12と嵌合した状態でケース21との間で雄端子25を包囲する金属製のシールドシェル32を備えており、シールドシェル32には、ケース21に向かって延びる当接部41が形成されており、この当接部41の先端は、雄コネクタ11と雌コネクタ12とが正規嵌合した状態では、ケース21に当接するようになっている。これにより、ボルト52を締め込んで雄コネクタ11と雌コネクタ12とを正規嵌合させることにより、シールドシェル32とケース21とを、当接部41を介して電気的に接続させることができる。これにより、雄コネクタ11と雌コネクタ12の嵌合作業と、シールドシェル32とケース21との電気的な接続作業の双方を、ボルト52を締め込むことで実行することができるので、コネクタ10の接続作業の効率を向上させることができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、嵌合筒部22はケース21に形成されている。これにより、雄コネクタ11と雌コネクタ12との間の防水と、電磁的なシールドとを、同時に行うことができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、当接部41は、シールドシェル32からケース21に向かって延びると共にボルト挿通孔40が貫通された筒状に形成されている。これにより、当接部41は、ボルト挿通孔40が貫通された筒状に形成されているので、ボルト52をねじ孔43に螺合することにより発生する雄コネクタ11と雌コネクタ12とを互いに押し付け合う力は、ボルト52の近傍に位置する当接部41に効率的に伝達される。この結果、シールドシェル32とケース21との電気的な接続を確実なものとすることができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、雄コネクタ11には、3つの防水筒部28が、三角形の各頂点に対応する位置に形成されており、ボルト挿通孔40は上記した三角形の内側の領域に配されている。これにより、ボルト52を締め込む際に雄コネクタ11及び雌コネクタ12に作用する力を、大きく減衰させることなく各防水筒部28に作用させることができる。これにより、ボルト52の締め付け力が大きくなることを一層抑制できる。
【0073】
また、本実施形態によれば、ボルト挿通孔40は、3つの防水筒部28によって形成される三角形の重心の位置に形成されている。これにより、ボルト52を締め込む際に雄コネクタ11及び雌コネクタ12に作用する力を、各防水筒部28に均等に作用させることができる。これにより、雄コネクタ11が雌コネクタ12に対して傾くことを抑制できる。この結果、雄コネクタ11と雌コネクタ12との接続信頼性を向上させることができる。
【0074】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)シールドシェル32、及びケース21は省略してもよい。
(2)防水筒部28及び嵌合筒部22は2つでもよく、また、4つ以上でもよい。
(3)ボルト挿通孔40は、防水筒部28によって形成される多角形の重心の位置に形成されていなくてもよい。
(4)本実施形態においては、シールリング29は防水筒部28に外嵌されて、嵌合筒部22の内面に密着する構成としたが、これに限られず、シールリング29は、嵌合筒部22に内嵌されて、防水筒部28の外面に密着する構成としてもよい。
(5)本実施形態においては、雄コネクタ11を一のコネクタとし、雌コネクタ12を他のコネクタとしたが、これに限られず、雌端子17が収容された雌コネクタ12を一のコネクタとし、雄端子25が収容された雄コネクタ11を他のコネクタとしてもよい。
(6)本実施形態では、雄端子25はピン部26を有する構成としてが、これに限られず、雄端子25は平板状をなすタブ部を有する構成としてもよく、必要に応じて任意の構成としうる。
(7)本実施形態では、リアシェル33からケース21に向かって当接部41が延びる構成としたが、これに限られず、ケース21からリアシェル33に向かって当接部41が延びる構成としてもよい。
(8)本実施形態においては、当接部41にはボルト52が挿通されるボルト挿通孔40が形成される構成としたが、ボルト挿通孔40は当接部41と異なる部分に形成されてもよい。
(9)本実施形態においては、雌コネクタ12に形成されたねじ孔43は、ハウジング18にモールド成形された袋ナット42に形成される構成としたが、これに限られず、ねじ孔43が形成されたナットをハウジング18に回転不能に固定することにより、雌コネクタ12にねじ孔43を設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10…コネクタ
11…雄コネクタ(一のコネクタ)
12…雌コネクタ(他のコネクタ)
17…雌端子(相手側端子)
21…ケース
22…嵌合筒部
25…雄端子(端子)
28…防水筒部
29…シールリング
32…シールドシェル
33…リアシェル
34…フロントシェル
38…ねじ孔
40…ボルト挿通孔
41…当接部
52…ボルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌合可能な一対のコネクタであって、
一のコネクタは他のコネクタに向かって突出すると共に内部に端子が収容された複数の防水筒部を備え、前記一のコネクタには前記複数の防水筒部の間の位置にボルトが挿通されるボルト挿通孔が形成されており、
他のコネクタは複数の前記防水筒部と個別に嵌合可能な複数の嵌合筒部を備え、前記防水筒部及び前記嵌合筒部の一方には他方に密着するシールリングが装着されており、前記嵌合筒部には前記端子と接続される複数の相手側端子が収容されており、前記他のコネクタには前記ボルト挿通孔に対応する位置に前記ボルトが螺合されるねじ孔が形成されており、
前記ボルト挿通孔に挿通された前記ボルトが前記ねじ孔に螺合されることで前記一のコネクタと前記他のコネクタとが嵌合されるコネクタ。
【請求項2】
前記防水筒部は前記端子を合成樹脂によってモールド成形してなる請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記他のコネクタは前記相手側端子を包囲する金属製のケースを備え、前記一のコネクタは前記他のコネクタと嵌合した状態で前記ケースとの間で前記端子を包囲する金属製のシールドシェルを備えており、
前記ケース及び前記シールドシェルの一方には、他方に向かって延びる当接部が形成されており、
前記当接部の先端は、前記一のコネクタと前記他のコネクタとが正規嵌合した状態では、前記ケース及び前記シールドシェルの他方に当接する請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記嵌合筒部は前記ケースに形成されている請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記当接部は、前記シールドシェルから前記ケースに向かって延びると共に前記ボルト挿通孔が貫通された筒状に形成されている請求項3または請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記一のコネクタには、3つ以上の前記防水筒部が、前記防水筒部の個数と同じ個数の頂点を有する多角形の各頂点に対応する位置に形成されており、前記ボルト挿通孔は前記多角形の内側の領域に形成されている請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記ボルト挿通孔は、前記多角形の重心の位置に形成されている請求項6に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−221876(P2012−221876A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89157(P2011−89157)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】