コモンモードノイズフィルタ
【課題】本発明は、コモンモードノイズおよびノーマルモードノイズを広い周波数帯域で大きく減衰させることができるコモンモードノイズフィルタを提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明のコモンモードノイズフィルタは、第1のコイル導体11と第2のコイル導体12とを接続する第1のローパスフィルタ部15と、第3のコイル導体13と第4のコイル導体14とを接続する第2のローパスフィルタ部16を形成し、さらに、この第1、第2のローパスフィルタ部15、16を、所望の周波数において、第1のコモンモードフィルタ17と第1、第2のローパスフィルタ部15、16との接続点の位相を、第2のコモンモードフィルタ18と第1、第2のローパスフィルタ部15、16との接続点の位相よりも0度より大きくかつ90度以下の位相量で変化させることができる位相調整機能をもたせるようにしたものである。
【解決手段】本発明のコモンモードノイズフィルタは、第1のコイル導体11と第2のコイル導体12とを接続する第1のローパスフィルタ部15と、第3のコイル導体13と第4のコイル導体14とを接続する第2のローパスフィルタ部16を形成し、さらに、この第1、第2のローパスフィルタ部15、16を、所望の周波数において、第1のコモンモードフィルタ17と第1、第2のローパスフィルタ部15、16との接続点の位相を、第2のコモンモードフィルタ18と第1、第2のローパスフィルタ部15、16との接続点の位相よりも0度より大きくかつ90度以下の位相量で変化させることができる位相調整機能をもたせるようにしたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器に使用されるコモンモードノイズフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のコモンモードノイズフィルタは、図19に示すように、第1〜第5の絶縁体層1a〜1eと、第2の絶縁体層1b上に形成された第1、第2のコイル導体2、3と、第3の絶縁体層1c上に形成された第3、第4のコイル導体4、5と、第1のコイル導体2と第2のコイル導体3とを接続する第1の接続導体6と、第3のコイル導体4と第4のコイル導体5とを接続する第2の接続導体7とを備えていた。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−181169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、携帯電話等にデジタルインターフェイスが搭載され、携帯電話で通信に使われる800MHz帯や2GHz帯近傍のコモンモードノイズ低減が望まれている。それ以外にも携帯電話の中では、様々なインターフェイス(HDMI、USB等)や無線機能(無線LAN等)が搭載されており、コモンモードノイズだけでなくノーマルモードのノイズも広い周波数帯域で除去することが望まれている。
【0006】
しかしながら、上記した従来のコモンモードノイズフィルタにおいては、第1の接続導体6、第2の接続導体7を介して単にコモンモードフィルタを2つ直列接続させた特性しか得られず、コモンモードノイズの減衰量が大きく取れないという課題を有していた。
【0007】
また、図20のように第1の接続導体6、第2の接続導体7ではなく位相線路8を介してコイル導体同士を直列接続させることも考えられるが、この場合、ノーマルモードノイズの減衰量が大きく取れず、さらに、高周波領域ではコモンモード減衰量が取れないという課題を有していた。
【0008】
なぜなら、図20において、第1、第3のコイル導体2、4と位相線路8との接続点から第2、第4のコイル導体3、5で構成されるコモンモードフィルタ側をみた場合、コモンインピーダンスが容量性に見える周波数領域では、図20のコモンモードフィルタ全体は、コモンモードに対しては等価的にLCフィルタとして働くため、コモンモード減衰量が大きくなるが、周波数が増加し前記コモンモードインピーダンスがショート状態になる周波数より高い周波数領域になると誘導性に戻るため、等価的に1段のLフィルタとしてしか働かなくなるとともに、各コイル導体の自己共振点を越え、これにより、コモンモード減衰量が悪くなるからである。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、コモンモードノイズおよびノーマルモードノイズを広い周波数帯域で大きく減衰させることができるコモンモードノイズフィルタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0011】
本発明の請求項1に記載の発明は、積層体と、この積層体の内部に形成された第1〜第4のコイル導体と、前記積層体の端部に設けられかつ前記第1〜第4のコイル導体の一端部にそれぞれ接続された第1〜第4の外部電極と、前記第1のコイル導体と前記第2のコイル導体との間に接続された第1のローパスフィルタ部と、前記第3のコイル導体と前記第4のコイル導体との間に接続された第2のローパスフィルタ部とを備え、前記第1のコイル導体と前記第3のコイル導体とが磁気結合し、かつ前記第2のコイル導体と前記第4のコイル導体とが磁気結合するようにそれぞれ上下方向に積層するとともに、前記第1のコイル導体と第3のコイル導体とで第1のコモンモードフィルタを構成し、前記第2のコイル導体と第4のコイル導体とで第2のコモンモードフィルタを構成し、前記第1、第2のローパスフィルタ部はそれぞれ、少なくとも1つのスパイラル状のコイル部と、グランド接続された第1の金属層を有するコンデンサ部とで構成し、前記第1、第2のローパスフィルタ部で構成される1対のディファレンシャル回路の特性インピーダンスを、ディファレンシャル信号の通過周波数帯域において第1のコモンモードフィルタおよび第2のコモンモードフィルタの特性インピーダンスと略同一とし、さらに、所望の周波数において、前記第1、第3のコイル導体と前記第1、第2のローパスフィルタ部との接続点の位相を、前記第2、第4のコイル導体と前記第1、第2のローパスフィルタ部との接続点の位相よりも0度より大きくかつ90度以下の位相量で変化させることができるように前記第1、第2のローパスフィルタ部のコイル部とコンデンサ部の定数を調整したもので、この構成によれば、第1のコモンモードフィルタと第1、第2のローパスフィルタ部の接続点において、第2のコモンモードフィルタ側をみた場合のコモンモードインピーダンスを誘導性高インピーダンス状態から容量性低インピーダンス状態とすることができるため、第1のコモンモードフィルタと第1、第2のローパスフィルタ部の接続点において第2のコモンモードフィルタ側をみた場合の、第1、第2のローパスフィルタ部を含む第2のコモンモードフィルタのコモンモードインピーダンスは対地間に接続された容量性素子(キャパシタンス)として働き、これにより、コモンモードに対して、第1のコモンモードフィルタ、第1、第2のローパスフィルタ部および第2のコモンモードフィルタの直列接続回路全体としては等価的にLCフィルタとして働くため、大きなコモンモードの減衰量が得られ、また、さらに高い周波数領域においても、第1、第2のローパスフィルタ部の減衰効果によりコモンモード減衰量を得ることができ、これにより広い周波数帯域でコモンモードノイズ減衰特性を得ることができる。さらに、ディファレンシャルモードに対しては、第1のコモンモードフィルタ、第1、第2のローパスフィルタ部および第2のコモンモードフィルタの特性インピーダンスがディファレンシャル信号の通過帯域では整合されて接続されているため、ディファレンシャルモードの損失を抑えることができ、そして、ディファレンシャル信号の通過帯域以上の周波数領域では第1、第2のローパスフィルタ部の減衰効果によりノーマルモード減衰量をも得ることができるという作用効果を有するものである。
【0012】
本発明の請求項2に記載の発明は、特に、第1、第2のローパスフィルタ部のコイル部を少なくとも1つの非磁性体層に形成するように構成したもので、この構成によれば、コイル部が磁性体にすべて覆われていないため、磁性体の透磁率の大きな周波数依存性により低周波でのインダクタ成分が大きくなりすぎるのを防止でき、これにより、ディファレンシャルモードでの特性インピーダンスの整合調整が容易になるという作用効果を有するものである。
【0013】
本発明の請求項3に記載の発明は、特に、第1、第2のローパスフィルタ部をそれぞれ、コイル部と、このコイル部に上面視にて対向する第1の金属層とで構成したもので、この構成によれば、コイル部と第1の金属層との間に浮遊容量が連続的に形成されるため、等価的に分布定数型ローパスフィルタが構成され、これにより、他の金属層を形成してコンデンサ部を構成する必要がなくなり、これにより、積層数を削減することができるため、コスト削減と薄層化を実現できるという作用効果を有するものである。
【0014】
本発明の請求項4に記載の発明は、特に、第1の金属層が上面視にて第1〜第4のコイル導体も覆うようにしたもので、この構成によれば、金属層と第1〜第4のコイル導体との間に大きな浮遊容量を発生させることができるため、高周波帯域のコモンモードノイズを大きく減衰させることができるという作用効果を有するものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明のコモンモードノイズフィルタは、磁気結合された第1のコイル導体と第3のコイル導体から構成される第1のコモンモードフィルタと、磁気結合された第2のコイル導体と第4のコイル導体から構成される第2のコモンモードフィルタとの間に接続される第1、第2のローパスフィルタ部を有し、さらに、この第1、第2のローパスフィルタ部を、所望の周波数において、第1のコモンモードフィルタと第1、第2のローパスフィルタ部との接続点の位相を、第2のコモンモードフィルタと第1、第2のローパスフィルタ部との接続点の位相よりも0度より大きくかつ90度以下の位相量で変化させることができるように第1、第2のローパスフィルタ部におけるコイル部とコンデンサ部の定数を調整することで位相調整機能を持たせているため、第1のコモンモードフィルタと第1、第2のローパスフィルタ部の接続点から第2のコモンモードフィルタ側をみた場合でのコモンモードインピーダンスを誘導性高インピーダンス状態から容量性低インピーダンス状態とすることができ、これにより、コモンモードに対しては第1、第2のローパスフィルタ部を含む第2のコモンモードフィルタは対地間に接続された容量性素子(キャパシタンス)として働くため、コモンモードに対して、第1のコモンモードフィルタ、第1、第2のローパスフィルタ部および第2のコモンモードフィルタの直列接続回路全体としては等価的にLCフィルタとして働き、さらに高い周波数領域においても、第1、第2のローパスフィルタ部の減衰効果によりコモンモード減衰量を得ることができ、これにより広い周波数帯域でコモンモードノイズ減衰特性を得ることができる。さらに、ディファレンシャルモードに対しては、第1のコモンモードフィルタ、第1、第2のローパスフィルタ部および第2のコモンモードフィルタの特性インピーダンスがディファレンシャル信号の通過帯域で整合されて接続されているためディファレンシャルモードの損失を抑えることができ、そして、ディファレンシャル信号の通過帯域以上の周波数領域では第1、第2のローパスフィルタ部の減衰効果によりノーマルモード減衰量をも得ることができるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図
【図2】同コモンモードノイズフィルタの斜視図
【図3】同コモンモードノイズフィルタの等価回路図
【図4】同コモンモードノイズフィルタの等価回路図
【図5】同コモンモードノイズフィルタのローパスフィルタ部のみ、および位相線路接続の位相線路のみの挿入損失特性を示す図
【図6】同コモンモードノイズフィルタのローパスフィルタ部のみ、および位相線路接続の位相線路のみの位相特性を示す図
【図7】同コモンモードノイズフィルタの第1、第2のローパスフィルタ部のみで構成された1対のディファレンシャル回路、および位相線路接続の位相線路のみで構成された1対のディファレンシャル回路のディファレンシャルモード挿入損失と周波数との関係を示す図
【図8】同コモンモードノイズフィルタの第1、第2のローパスフィルタ部のみで構成された1対のディファレンシャル回路、および位相線路接続の位相線路で構成された1対のディファレンシャル回路のコモンモード減衰特性と周波数の関係を示す図
【図9】図4における点Aから第2のコモンモードフィルタ側を見たディファレンシャルモードのインピーダンスを示すスミスチャート
【図10】図4における点Aから第2のコモンモードフィルタ側を見たコモンモードのインピーダンスを示すスミスチャート
【図11】第1のコモンモードフィルタのみのディファレンシャルモードのインピーダンスを示すスミスチャート
【図12】第1のコモンモードフィルタのみのコモンモードのインピーダンスを示すスミスチャート
【図13】本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタおよび位相線路接続で構成した場合のコモンモードノイズフィルタの周波数とディファレンシャルモード減衰量との関係を示す図
【図14】本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタ、位相線路接続で構成した場合のコモンモードノイズフィルタ、および単純接続で構成した場合のコモンモードノイズフィルタの周波数とコモンモード減衰量の関係を示す図
【図15】同コモンモードノイズフィルタの他の例を示す分解斜視図
【図16】同コモンモードノイズフィルタの他の例の等価回路図
【図17】同コモンモードノイズフィルタ、および同コモンモードノイズフィルタの他の例の周波数とコモンモード減衰量の関係を示す図
【図18】本発明の実施の形態2におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図
【図19】従来のコモンモードノイズフィルタの分解斜視図
【図20】同コモンモードノイズフィルタにおいて位相線路を設けた場合の等価回路図
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1、2,4に記載の発明について説明する。
【0018】
図1は本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図、図2は同コモンモードノイズフィルタの斜視図、図3、図4は同コモンモードノイズフィルタの等価回路図である。
【0019】
本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタは、図1、図2に示すように、積層体10と、この積層体10の内部に形成された第1〜第4のコイル導体11〜14と、前記第1のコイル導体11と前記第2のコイル導体12とを接続する第1のローパスフィルタ部15と、前記第3のコイル導体13と前記第4のコイル導体14とを接続する第2のローパスフィルタ部16とを備え、前記第1のコイル導体11と前記第3のコイル導体13とが磁気結合し、かつ前記第2のコイル導体12と前記第4のコイル導体14とが磁気結合するようにそれぞれ上下方向に積層するとともに、前記第1のコイル導体11と第3のコイル導体13とで第1のコモンモードフィルタ17を構成し、前記第2のコイル導体12と第4のコイル導体14とで第2のコモンモードフィルタ18を構成しており、第1のコモンモードフィルタ17と第2のコモンモードフィルタ18が第1、第2のローパスフィルタ部15、16を介して直列に接続されている。
【0020】
また、前記第1、第2のローパスフィルタ部15、16はそれぞれ、スパイラル状のコイル部19aとコンデンサ部19bとで構成され、このコンデンサ部19bは、グランドに接続された第1の金属層20と、前記第1、第2のコモンモードフィルタ17、18との間に形成された第2の金属層21からなり、この第2の金属層21の一部と第1の金属層20が対向するように構成されている。
【0021】
上記構成において、前記第1〜第4のコイル導体11〜14は、積層体10の内部において、それぞれ銀等の導電材料を渦巻状にめっきまたは印刷することにより形成されている。そして、第1、第2のコイル導体11、12は、ともに第1の絶縁体層22aの上面に形成され、第3、第4のコイル導体13、14は、ともに第2の絶縁体層22bの上面に形成されている。なお、第1〜第4のコイル導体11〜14の渦巻きの中心部に磁性材料からなる磁性体部(図示せず)を設けてもよい。
【0022】
さらに、前記第1〜第4のコイル導体11〜14の一端部11a〜14a(図1では第4のコイル導体14の一端部14aは絶縁体層に隠れて見えない)は、それぞれ積層体10の端部に設けられた第1〜第4の外部電極23〜26と接続されている。
【0023】
また、第1のコイル導体11の他端部11b、第2のコイル導体12の他端部12bは、第1のローパスフィルタ部15を介して接続されている。
【0024】
ここで、前記第1のローパスフィルタ部15は、第3の絶縁体層22cの上面に設けられたスパイラル状のコイル部19a、およびコンデンサ部19bで構成されている。そして、このコンデンサ部19bは、コイル部19aと前記第1、第2のコモンモードフィルタ17、18(第1のコイル導体11、第2のコイル導体12)との間の第4の絶縁体層22dの上面に形成された2つの第2の金属層21、およびこの2つの第2の金属層21とそれぞれと対向するように構成された第1の金属層20からなる。また、この第1の金属層20は、コイル部19aと2つの第2の金属層21との間の第5の絶縁体層22eの上面、および2つの第2の金属層21と第1、第2のコイル導体11、12との間の第6の絶縁体層22fの上面にそれぞれ形成されている。なお、第6の絶縁体層22fの上面に形成された第1の金属層20と第1の絶縁体層22aとの間には第7の絶縁体層22gが形成されている。
【0025】
このとき、第1のコイル導体11の他端部11bと第2の金属層21とが接続され、この第2の金属層21とコイル部19aとが接続され、このコイル部19aと他方の第2の金属層21とが接続され、この他方の第2の金属層21と第2のコイル導体12の他端部12bとが接続されて、第1のコイル導体11、第2の金属層21、コイル部19a、他方の第2の金属層21、第2のコイル導体12の順に直列に接続される。
【0026】
また、第1のコイル導体11の他端部11bと第2の金属層21との接続は、第1の絶縁体層22a、第7の絶縁体層22g、第6の絶縁体層22fに形成された第1のビア電極27aを介してなされる。さらに、第2の金属層21とコイル部19aとの接続は、第4の絶縁体層22d、第5の絶縁体層22eに形成された第2のビア電極27bを介してなされる。そして、コイル部19aと他方の第2の金属層21との接続は、第4の絶縁体層22d、第5の絶縁体層22eに形成された第3のビア電極27cを介してなされる。さらにまた、この他方の第2の金属層21と第2のコイル導体12の他端部12bとの接続は、第1の絶縁体層22a、第7の絶縁体層22g、第6の絶縁体層22fに形成された第4のビア電極27dを介してなされる。
【0027】
さらに、第3のコイル導体13の他端部13b、第4のコイル導体14の他端部14bは、第2のローパスフィルタ部16を介して接続されている。
【0028】
ここで、前記第2のローパスフィルタ部16は、第1のローパスフィルタ部15と同様に、第8の絶縁体層22hの上面に設けられたスパイラル状のコイル部19a、およびコンデンサ部19bで構成されている。そして、このコンデンサ部19bは、コイル部19aと前記第1、第2のコモンモードフィルタ17、18(第3のコイル導体13、第4のコイル導体14)との間の第9の絶縁体層22iの上面に形成された2つの第2の金属層21、およびこの2つの第2の金属層21と対向するように構成された第1の金属層20からなる。また、この第1の金属層20は、コイル部19aと2つの第2の金属層21との間の第10の絶縁体層22jの上面、および2つの第2の金属層21と第3、第4のコイル導体13、14との間の第11の絶縁体層22kの上面にそれぞれ形成されている。なお、第11の絶縁体層22kと第3、第4のコイル導体13、14との間には第12の絶縁体層22lが、コイル部19aの上面には第13の絶縁体層22mが形成されている。
【0029】
また、第3のコイル導体13の他端部13bと第2の金属層21との接続は、第12の絶縁体層22l、第11の絶縁体層22k、第9の絶縁体層22iに形成された第5のビア電極27eを介してなされる。さらに、第2の金属層21とコイル部19aとの接続は、第10の絶縁体層22j、第8の絶縁体層22hに形成された第6のビア電極27fを介してなされる。そして、コイル部19aと他方の第2の金属層21との接続は、第10の絶縁体層22j、第8の絶縁体層22hに形成された第7のビア電極27gを介してなされる。さらにまた、この他方の第2の金属層21と第4のコイル導体14の他端部14bとの接続は、第12の絶縁体層22l、第11の絶縁体層22k、第9の絶縁体層22iに形成された第8のビア電極27hを介してなされる。
【0030】
すなわち、第1、第2のローパスフィルタ部15、16は、それぞれコイル部19aによってインダクタが構成され、第1の金属層20と第2の金属層21とによってコンデンサ部19bが2つ構成される。これにより、第1、第2のローパスフィルタ部15、16は、3素子からなるパイ型のLCフィルタとなっている。さらに、第1のローパスフィルタ部15と第2のローパスフィルタ部16の構成は略同一となっている。
【0031】
なお、第2の金属層21と第1〜第8のビア電極27a〜27hとが電気的に接続されないようになっている。そして、第1〜第8のビア電極27a〜27hは、絶縁体層の所定の位置に、レーザで孔あけ加工をし、この孔に銀を充填して形成する。ここで、図1ではビア電極の一部は絶縁体層に隠れて見えなくなっている。
【0032】
また、第1、第2のローパスフィルタ部15、16においては、コイル部19aのL値や第1の金属層20と第2の金属層21間のコンデンサ部19bのC値を調整し、所望の周波数において、第1のコイル導体11と第1のローパスフィルタ部15との接続点および第3のコイル導体13と第2のローパスフィルタ部16との接続点(図4における点A)の位相を、第2のコイル導体12と第1のローパスフィルタ部15との接続点および第4のコイル導体14と第2のローパスフィルタ部16との接続点(図4における点B)の位相よりも0度より大きくかつ90度以下の位相量で変化させることができるように位相調整機能を持たせている。
【0033】
このとき、L値はコイル部19aの巻き数によって調整し、C値は第1の金属層20と第2の金属層21間の距離、第1の金属層20と第2の金属層21との対向面積、あるいは第1の金属層20と第2の金属層21との間に位置する絶縁体層の誘電率によって調整する。
【0034】
また、前記所望の周波数における位相量90度とは、所望の周波数での誘電材料や磁性材料で構成される積層体10内での真空中の波長を基準として波長短縮を考慮した有効的な波長で換算し、その有効波長の1/4に相当する。これは絶縁体層の種類やコモンモードノイズの減衰量を得たい周波数帯域によって変わる。
【0035】
そして、第1のコイル導体11と第3のコイル導体13とが磁気結合し、第2のコイル導体12と第4のコイル導体14とが磁気結合するようになっており、この構成により、図3、図4に示すように、第1のコイル導体11と第3のコイル導体13からなる第1のコモンモードフィルタ17と、第2のコイル導体12と第4のコイル導体14からなる第2のコモンモードフィルタ18の2つのコモンモードフィルタが、第1、第2のローパスフィルタ部15、16を介して接続される。
【0036】
さらに、第1、第2のローパスフィルタ部15、16で構成される1対のディファレンシャル回路の特性インピーダンスは、ディファレンシャル信号の通過周波数帯域において第1のコモンモードフィルタ17および第2のコモンモードフィルタ18の特性インピーダンスと略同一になっており、これにより、ディファレンシャルモードの損失を抑えることができる。
【0037】
なお、第1〜第13の絶縁体層22a〜22mは、シート状に構成され、第3の絶縁体層22c、第7の絶縁体層22g、第11の絶縁体層22k、第13の絶縁体層22mは、Ni−Cu−Znフェライト等の磁性材料で形成され、他の絶縁体層は、Cu−Znフェライト等の非磁性材料により形成されている。そして、第1〜第13の絶縁体層22a〜22mの枚数は、図1に示された枚数に限定されるものではない。
【0038】
この構成により、コイル部19aの片側の面が非磁性体層に接するようになり、これにより、コイル部19aが磁性体にすべて覆われていないため、磁性体の透磁率の大きな周波数依存性により低周波でのインダクタ成分が大きくなりすぎるのを防止でき、これにより、ディファレンシャルモードの特性インピーダンスの整合調整が容易になる。
【0039】
そして、前記第1の金属層20は、第5の絶縁体層22e、第6の絶縁体層22f、第10の絶縁体層22j、第11の絶縁体層22kのそれぞれ上面の1箇所に銀、銅等の導電材料をめっきまたは印刷することにより、あるいは金属板、金属箔を貼り付けることによりシート状に形成されている。また、第2の金属層21は、第4、第9の絶縁体層22d、22iのそれぞれ上面の2箇所に銀、銅等の導電材料をめっきまたは印刷することにより、あるいは金属板、金属箔を貼り付けることによりシート状に形成されている。さらに、この第1の金属層20はそれぞれ、その一部が絶縁体層の側面に露出している。そして、この第1の金属層20は図4に示すように、グランドに接続される。また、第1の金属層20と第2の金属層21とは上面視または下面視により、少なくとも互いにその一部を覆うように配置されている。
【0040】
上記した構成により、積層体10が形成される。また、この積層体10の両端部には、積層体10の焼成後において、上述した第1〜第4の外部電極23〜26と、第1の金属層20の一部に接続された第5、第6の外部電極28、29とが設けられている。さらに、前記第1〜第6の外部電極23〜26、28、29は、積層体10の端面に銀を印刷することにより形成され、またこれらの表面にめっきによってニッケルめっき層を形成するとともに、このニッケルめっき層の表面にめっきによってすずやはんだ等の低融点金属めっき層を形成する。
【0041】
ここで、本実施例においては、ディファレンシャルモードの信号の周波数通過帯域を1GHzの場合を考え、ディファレンシャルモードのカットオフ周波数(挿入損失が3dBとなる周波数)をおよそ1GHzとなるように、また1GHzにおいて第1のコモンモードフィルタ17と、第1のローパスフィルタ部15、第2のローパスフィルタ部16との接続点(図4の点A)の位相を、第2のコモンモードフィルタ18と、第1のローパスフィルタ部15、第2のローパスフィルタ部16との接続点(図4の点B)の位相より90度の位相変化量とするように、図4における第1、第2のローパスフィルタ部15、16のL値、C値を調整している。
【0042】
このような調整方法のひとつとして、図4のパイ型ローパスフィルタを用いた場合を考え、図4の点Bからの位相変化量をθ度とした場合に、コイル部19aのL値、コンデンサ部19bのC値は以下の式で表されることを導出した。ここで、Zoはシングルエンド伝送ラインの特性インピーダンス、fは周波数、πは円周率を示す。
L=Zo/(2πf・sin(2πθ/360))
C=(1−cos(2πθ/360))/(Zo・2πf・sin(2πθ/360))
以上のように構成された本発明の実施の形態1におけるコモンモードフィルタの作用について、図5〜図14を用いて説明する。なお、一部の図面については、比較例として、図20に示す2つのコモンモードフィルタを位相線路を介して接続したもの(以下、「位相線路接続」とする)と、図19に示す2つのコモンモードフィルタを単純に直列接続した位相の変化量が0度とみなせるもの(以下、「単純接続」とする)を用いる。また、この位相線路接続における位相線路も、所望の周波数において、第1、第3のコイル導体11、13と第1、第2のローパスフィルタ部15、16との接続点の位相を、第2、第4のコイル導体12、14と第1、第2のローパスフィルタ部15、16との接続点の位相よりも0度より大きくかつ90度以下の位相量で変化させることができるように線路長を調整している。
【0043】
以下、第1、第2のローパスフィルタ部15、16のみの場合、第1、第2のローパスフィルタ部15、16のみで形成されるディファレンシャル回路の場合、このディファレンシャル回路と第2のコモンモードフィルタ18を接続した場合、さらに第1のコモンモードフィルタ17を接続した場合のそれぞれの作用について順をおって説明していく。
【0044】
まず、第1、第2のローパスフィルタ部15、16のみの作用、第1、第2のローパスフィルタ部15、16のみで形成されるディファレンシャル回路の作用について、図5〜図8を用いて以下説明する。
【0045】
図5は、1つの第1のローパスフィルタ部15あるいは第2のローパスフィルタ部16のみの挿入損失特性、および位相線路接続の位相線路のみの挿入損失特性を示し、図6は、1つの第1のローパスフィルタ部15あるいは第2のローパスフィルタ部16のみの位相特性、および位相線路接続の位相線路のみの位相特性を示している。
【0046】
図7は、第1、第2のローパスフィルタ部15、16で構成される1対のディファレンシャル回路のみのディファレンシャルモード挿入損失と周波数との関係、および位相線路接続の1対の位相線路のみで構成されるディファレンシャル回路のディファレンシャルモード挿入損失と周波数との関係を示している。図8は、第1、第2のローパスフィルタ部15、16で構成される1対のディファレンシャル回路のみのコモンモード減衰特性と周波数の関係、および位相線路接続の1対の位相線路のみで構成されるディファレンシャル回路のコモンモード減衰特性と周波数の関係を示したものである。
【0047】
図5、図6から明らかなように、1GHzまでの周波数において、本実施の形態の第1のローパスフィルタ部15あるいは第2のローパスフィルタ部16は、位相線路接続と同じ位相変化を示しており、挿入損失も小さい。しかし、1GHz以上になるとその挿入損失は、第1のローパスフィルタ部15あるいは第2のローパスフィルタ部16の場合は減衰量が大きくなっている。このような特性を示す位相線路で1対のディファレンシャル回路を形成した場合と1対のローパスフィルタでそれぞれディファレンシャル回路を形成した場合を考えると、図7、図8から明らかなように、従来の位相線路接続を用いた場合と比較して、本実施の形態のローパスフィルタを用いた場合、ディファレンシャルモードに対してもコモンモードに対しても1GHz以上でより大きな減衰が得られる。
【0048】
上記のように構成される1対の第1、第2のローパスフィルタ部15、16と第2のコモンモード18を接続した構成の作用について以下説明する。
【0049】
図9は、図4における点A(第1のコモンモードフィルタ17(第1、第3のコイル導体11、13)と第1、第2のローパスフィルタ部15、16との接続点)から第2のコモンモードフィルタ18側を見たディファレンシャルモードのインピーダンスを示すスミスチャート、図10は、図4における点Aから第2のコモンモードフィルタ18側を見たコモンモードのインピーダンスを示すスミスチャートで、いずれも周波数を1MHzから1GHzまで変化させたものである。なお、図10においては、本発明の効果を示すために1GHzまでの周波数のコモンモードインピーダンスを実線で示し、1GHzを越えた場合の周波数を破線で示している。
【0050】
図9から明らかなように、ディファレンシャルモードに対しては、図4の点Aから第2のコモンモードフィルタ18を見たディファレンシャルモードのインピーダンスは、ほぼ整合がとれていることが分かる。
【0051】
一方、コモンモードに対しては、図10から明らかなように、図4の点Aから第2のコモンモードフィルタ18側を見たコモンモードのインピーダンスは、単純接続の場合は1GHzでほぼオープン状態であるが、第1、第2のローパスフィルタ部15、16を挿入した場合および位相線路接続した場合は、周波数があがると容量性低インピーダンス方向へ移行し、90度の場合には1GHzでショート状態となることが分かる。つまり、容量性に移行した周波数から1GHzまで、図4のA点からみた第1、第2のローパスフィルタ部15、16を含む第2のコモンモードフィルタ18は、コモンモードに対して対グランド間に接続された容量素子として作用することが分かる。
【0052】
図11は、図4において外部電極25、23からみた第1のコモンモードフィルタ17のみのディファレンシャルモードのインピーダンスを示すスミスチャート、図12は、図4において外部電極25、23からみた第1のコモンモードフィルタ17のみのコモンモードのインピーダンスを示すスミスチャートで、いずれも周波数を1MHzから1GHzまで変化させたものである。
【0053】
第1のコモンモードフィルタ17のみの特性は、図11から明らかなように、ディファレンシャルモードに対しては、ほぼ整合がとれていることが分かる。一方、コモンモードに対しては、図12から明らかなように、コモンモードのインピーダンスは周波数が上がると誘導性のインピーダンスで高インピーダンス状態へ推移していることが分かる。
【0054】
次に、ディファレンシャルモード、コモンモードに対して上述したような特性を示す第1のコモンモードフィルタ17と、第1、第2のローパスフィルタ部15、16と第2のコモンモードフィルタ18を直列接続した本実施の形態1のコモンモードノイズフィルタの作用を、減衰特性を参照しながら説明する。
【0055】
図13は、本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタおよび位相線路接続での周波数とディファレンシャルモード減衰量との関係を示す図である。図14は、本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタ、位相線路接続、および単純接続での周波数とコモンモード減衰量の関係を示す図である。
【0056】
図13から明らかなように、本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタにおいては、ディファレンシャルモードに対して第1のコモンモードフィルタ17、第1、第2のローパスフィルタ部15、16および第2のコモンモードフィルタ18が各々整合されて接続されているため、ディファレンシャル信号の通過帯域の1GHz以下では損失が少ないが、1GHz以上の高周波領域では、第1、第2のローパスフィルタ部15、16の減衰効果により、従来の位相線路接続よりも大きな減衰特性が得られることが分かる。
【0057】
図14によりコモンモードに対して、外部電極23、25からみた場合、1GHzまでの周波数では、前記のように第1のコモンモードフィルタ17が誘導性素子として働き、第1、第2のローパスフィルタ部15、16と第2のコモンモードフィルタ18を含む回路は等価的に容量性素子として働くため、本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタは、外部電極23、25からみた場合、コモンモードに対して等価的にLCフィルタとして働き、1GHzまでの周波数では図14に示されるような大きなコモンモード減衰特性を得ることができる。コモンモードに対して1GHzでショート状態となったあとは、従来の位相線路接続では、図4のA点から第2のコモンモードフィルタ18側をみた場合、1GHzを超えると誘導性へ移行し(図10の破線で図示した状態)、コモンモード減衰量が周波数増加に伴い徐々に劣化するが、本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタは、第1、第2のローパスフィルタ部15、16の減衰効果で1GHz以上の周波数領域でもコモンモードの減衰量を得ることができ、広い周波数帯域に渡りコモンモード減衰量を確保することができる。
【0058】
なお、上記した本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタにおいては、グランド接続された第1の金属層20が第2の金属層21の一部を覆うように配置したものについて説明したが、図15に示すように、第1の金属層20が上面視にて第1〜第4のコイル導体11〜14の略全体も覆うようにしてもよい。
【0059】
この構成によれば、図16に示すように、グランド接続された第1の金属層20と第1〜第4のコイル導体11〜14との間に大きな浮遊容量C0が発生するため、高周波帯域のコモンモードノイズを大きく減衰させることができる。
【0060】
図17は、上記のように第1の金属層20が上面視にて第1〜第4のコイル導体11〜14も覆うようにしたときにおけるコモンモードノイズフィルタの周波数とコモンモード減衰量の関係を示す図である。
【0061】
図17では、比較例として、図1に示す本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタの場合を示している。
【0062】
図17から明らかなように、第1の金属層20が上面視にて第1〜第4のコイル導体11〜14を覆うようにした方が、高周波帯におけるコモンモードノイズ減衰量をより大きくすることができることが分かる。
【0063】
なお、上記した本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタにおいては、第1、第2のローパスフィルタ部15、16をCLC構成のパイ型フィルタとしたが、LCL構成のT型フィルタとしてもよく、また、第1、第2のローパスフィルタ部15、16を3素子で構成するものとしたが、素子数は3素子に限定されるものではない。
【0064】
さらに、コイル部19aを、最外側に形成したが、第1〜第4のコイル導体11〜14と第1の金属層20との間に形成してもよい。
【0065】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を用いて、本発明の特に請求項3に記載の発明について説明する。
【0066】
図18は本発明の実施の形態2におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図である。なお、この本発明の実施の形態2においては、上記した本発明の実施の形態1と同様の構成を有するものについては、同一符号を付しており、その説明は省略する。
【0067】
本発明の実施の形態2が上記した本発明の実施の形態1と相違する点は、図18に示すように、第1、第2のローパスフィルタ部15、16をそれぞれ、スパイラル状のコイル部19aとグランドに接続された第1の金属層20とを対向させ、コイル部19aと第1の金属層20との間で連続的に発生する浮遊容量で分布定数型のローパスフィルタを形成した点である。
【0068】
この構成により、第2の金属層21を形成してコンデンサ部を構成する必要がなくなるため、積層数を削減することができ、これにより、コスト削減と小型化、薄層化を実現できる。
【0069】
なお、上記した本発明の実施の形態1、2におけるコモンモードノイズフィルタにおいては、第1、第2のコイル導体11、12を同一面上に形成し、第3、第4のコイル導体13、14を同一面上に形成したが、それぞれのコイル導体を別個の面に形成してもよい。
【0070】
また、第1の金属層20を2枚形成しているが、1枚だけであってもよい。
【0071】
さらに、コイル部19aの片面を非磁性体層に接するように構成したが、両面を非磁性体層に接するように構成してもよい。この構成により、磁性体の透磁率の周波数依存の影響を受けないため、ディファレンシャルモードの整合をより取り易くなる。
【0072】
そして、上述した実施の形態1、2において、点Bに対する点Aでの位相変化量が、コモンモードの周波数が1GHzで90度となる構成について説明したが、この構成でコモンモードの周波数を例えば1.3GHzとしたときの位相変化量は約120度となる。すなわち、実施の形態1、2では、所望の周波数が1GHzのときの位相変化量が90度以下の場合を示したが、本発明は、図6に示すような位相特性を有し、この位相特性の線上にあれば、コモンモードの周波数が1GHzで位相変化量が90度でなくても、本発明の内容と同義となる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係るコモンモードノイズフィルタは、コモンモードノイズおよびノーマルモードノイズを広い周波数帯域で大きく減衰させることができるという効果を有するものであり、特にデジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器のノイズ対策として使用されるコモンモードノイズフィルタ等において有用となるものである。
【符号の説明】
【0074】
10 積層体
11 第1のコイル導体
12 第2のコイル導体
13 第3のコイル導体
14 第4のコイル導体
15 第1のローパスフィルタ部
16 第2のローパスフィルタ部
17 第1のコモンモードフィルタ
18 第2のコモンモードフィルタ
19a コイル部
19b コンデンサ部
20 第1の金属層
21 第2の金属層
23〜26 第1〜第4の外部電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器に使用されるコモンモードノイズフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のコモンモードノイズフィルタは、図19に示すように、第1〜第5の絶縁体層1a〜1eと、第2の絶縁体層1b上に形成された第1、第2のコイル導体2、3と、第3の絶縁体層1c上に形成された第3、第4のコイル導体4、5と、第1のコイル導体2と第2のコイル導体3とを接続する第1の接続導体6と、第3のコイル導体4と第4のコイル導体5とを接続する第2の接続導体7とを備えていた。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−181169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、携帯電話等にデジタルインターフェイスが搭載され、携帯電話で通信に使われる800MHz帯や2GHz帯近傍のコモンモードノイズ低減が望まれている。それ以外にも携帯電話の中では、様々なインターフェイス(HDMI、USB等)や無線機能(無線LAN等)が搭載されており、コモンモードノイズだけでなくノーマルモードのノイズも広い周波数帯域で除去することが望まれている。
【0006】
しかしながら、上記した従来のコモンモードノイズフィルタにおいては、第1の接続導体6、第2の接続導体7を介して単にコモンモードフィルタを2つ直列接続させた特性しか得られず、コモンモードノイズの減衰量が大きく取れないという課題を有していた。
【0007】
また、図20のように第1の接続導体6、第2の接続導体7ではなく位相線路8を介してコイル導体同士を直列接続させることも考えられるが、この場合、ノーマルモードノイズの減衰量が大きく取れず、さらに、高周波領域ではコモンモード減衰量が取れないという課題を有していた。
【0008】
なぜなら、図20において、第1、第3のコイル導体2、4と位相線路8との接続点から第2、第4のコイル導体3、5で構成されるコモンモードフィルタ側をみた場合、コモンインピーダンスが容量性に見える周波数領域では、図20のコモンモードフィルタ全体は、コモンモードに対しては等価的にLCフィルタとして働くため、コモンモード減衰量が大きくなるが、周波数が増加し前記コモンモードインピーダンスがショート状態になる周波数より高い周波数領域になると誘導性に戻るため、等価的に1段のLフィルタとしてしか働かなくなるとともに、各コイル導体の自己共振点を越え、これにより、コモンモード減衰量が悪くなるからである。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、コモンモードノイズおよびノーマルモードノイズを広い周波数帯域で大きく減衰させることができるコモンモードノイズフィルタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0011】
本発明の請求項1に記載の発明は、積層体と、この積層体の内部に形成された第1〜第4のコイル導体と、前記積層体の端部に設けられかつ前記第1〜第4のコイル導体の一端部にそれぞれ接続された第1〜第4の外部電極と、前記第1のコイル導体と前記第2のコイル導体との間に接続された第1のローパスフィルタ部と、前記第3のコイル導体と前記第4のコイル導体との間に接続された第2のローパスフィルタ部とを備え、前記第1のコイル導体と前記第3のコイル導体とが磁気結合し、かつ前記第2のコイル導体と前記第4のコイル導体とが磁気結合するようにそれぞれ上下方向に積層するとともに、前記第1のコイル導体と第3のコイル導体とで第1のコモンモードフィルタを構成し、前記第2のコイル導体と第4のコイル導体とで第2のコモンモードフィルタを構成し、前記第1、第2のローパスフィルタ部はそれぞれ、少なくとも1つのスパイラル状のコイル部と、グランド接続された第1の金属層を有するコンデンサ部とで構成し、前記第1、第2のローパスフィルタ部で構成される1対のディファレンシャル回路の特性インピーダンスを、ディファレンシャル信号の通過周波数帯域において第1のコモンモードフィルタおよび第2のコモンモードフィルタの特性インピーダンスと略同一とし、さらに、所望の周波数において、前記第1、第3のコイル導体と前記第1、第2のローパスフィルタ部との接続点の位相を、前記第2、第4のコイル導体と前記第1、第2のローパスフィルタ部との接続点の位相よりも0度より大きくかつ90度以下の位相量で変化させることができるように前記第1、第2のローパスフィルタ部のコイル部とコンデンサ部の定数を調整したもので、この構成によれば、第1のコモンモードフィルタと第1、第2のローパスフィルタ部の接続点において、第2のコモンモードフィルタ側をみた場合のコモンモードインピーダンスを誘導性高インピーダンス状態から容量性低インピーダンス状態とすることができるため、第1のコモンモードフィルタと第1、第2のローパスフィルタ部の接続点において第2のコモンモードフィルタ側をみた場合の、第1、第2のローパスフィルタ部を含む第2のコモンモードフィルタのコモンモードインピーダンスは対地間に接続された容量性素子(キャパシタンス)として働き、これにより、コモンモードに対して、第1のコモンモードフィルタ、第1、第2のローパスフィルタ部および第2のコモンモードフィルタの直列接続回路全体としては等価的にLCフィルタとして働くため、大きなコモンモードの減衰量が得られ、また、さらに高い周波数領域においても、第1、第2のローパスフィルタ部の減衰効果によりコモンモード減衰量を得ることができ、これにより広い周波数帯域でコモンモードノイズ減衰特性を得ることができる。さらに、ディファレンシャルモードに対しては、第1のコモンモードフィルタ、第1、第2のローパスフィルタ部および第2のコモンモードフィルタの特性インピーダンスがディファレンシャル信号の通過帯域では整合されて接続されているため、ディファレンシャルモードの損失を抑えることができ、そして、ディファレンシャル信号の通過帯域以上の周波数領域では第1、第2のローパスフィルタ部の減衰効果によりノーマルモード減衰量をも得ることができるという作用効果を有するものである。
【0012】
本発明の請求項2に記載の発明は、特に、第1、第2のローパスフィルタ部のコイル部を少なくとも1つの非磁性体層に形成するように構成したもので、この構成によれば、コイル部が磁性体にすべて覆われていないため、磁性体の透磁率の大きな周波数依存性により低周波でのインダクタ成分が大きくなりすぎるのを防止でき、これにより、ディファレンシャルモードでの特性インピーダンスの整合調整が容易になるという作用効果を有するものである。
【0013】
本発明の請求項3に記載の発明は、特に、第1、第2のローパスフィルタ部をそれぞれ、コイル部と、このコイル部に上面視にて対向する第1の金属層とで構成したもので、この構成によれば、コイル部と第1の金属層との間に浮遊容量が連続的に形成されるため、等価的に分布定数型ローパスフィルタが構成され、これにより、他の金属層を形成してコンデンサ部を構成する必要がなくなり、これにより、積層数を削減することができるため、コスト削減と薄層化を実現できるという作用効果を有するものである。
【0014】
本発明の請求項4に記載の発明は、特に、第1の金属層が上面視にて第1〜第4のコイル導体も覆うようにしたもので、この構成によれば、金属層と第1〜第4のコイル導体との間に大きな浮遊容量を発生させることができるため、高周波帯域のコモンモードノイズを大きく減衰させることができるという作用効果を有するものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明のコモンモードノイズフィルタは、磁気結合された第1のコイル導体と第3のコイル導体から構成される第1のコモンモードフィルタと、磁気結合された第2のコイル導体と第4のコイル導体から構成される第2のコモンモードフィルタとの間に接続される第1、第2のローパスフィルタ部を有し、さらに、この第1、第2のローパスフィルタ部を、所望の周波数において、第1のコモンモードフィルタと第1、第2のローパスフィルタ部との接続点の位相を、第2のコモンモードフィルタと第1、第2のローパスフィルタ部との接続点の位相よりも0度より大きくかつ90度以下の位相量で変化させることができるように第1、第2のローパスフィルタ部におけるコイル部とコンデンサ部の定数を調整することで位相調整機能を持たせているため、第1のコモンモードフィルタと第1、第2のローパスフィルタ部の接続点から第2のコモンモードフィルタ側をみた場合でのコモンモードインピーダンスを誘導性高インピーダンス状態から容量性低インピーダンス状態とすることができ、これにより、コモンモードに対しては第1、第2のローパスフィルタ部を含む第2のコモンモードフィルタは対地間に接続された容量性素子(キャパシタンス)として働くため、コモンモードに対して、第1のコモンモードフィルタ、第1、第2のローパスフィルタ部および第2のコモンモードフィルタの直列接続回路全体としては等価的にLCフィルタとして働き、さらに高い周波数領域においても、第1、第2のローパスフィルタ部の減衰効果によりコモンモード減衰量を得ることができ、これにより広い周波数帯域でコモンモードノイズ減衰特性を得ることができる。さらに、ディファレンシャルモードに対しては、第1のコモンモードフィルタ、第1、第2のローパスフィルタ部および第2のコモンモードフィルタの特性インピーダンスがディファレンシャル信号の通過帯域で整合されて接続されているためディファレンシャルモードの損失を抑えることができ、そして、ディファレンシャル信号の通過帯域以上の周波数領域では第1、第2のローパスフィルタ部の減衰効果によりノーマルモード減衰量をも得ることができるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図
【図2】同コモンモードノイズフィルタの斜視図
【図3】同コモンモードノイズフィルタの等価回路図
【図4】同コモンモードノイズフィルタの等価回路図
【図5】同コモンモードノイズフィルタのローパスフィルタ部のみ、および位相線路接続の位相線路のみの挿入損失特性を示す図
【図6】同コモンモードノイズフィルタのローパスフィルタ部のみ、および位相線路接続の位相線路のみの位相特性を示す図
【図7】同コモンモードノイズフィルタの第1、第2のローパスフィルタ部のみで構成された1対のディファレンシャル回路、および位相線路接続の位相線路のみで構成された1対のディファレンシャル回路のディファレンシャルモード挿入損失と周波数との関係を示す図
【図8】同コモンモードノイズフィルタの第1、第2のローパスフィルタ部のみで構成された1対のディファレンシャル回路、および位相線路接続の位相線路で構成された1対のディファレンシャル回路のコモンモード減衰特性と周波数の関係を示す図
【図9】図4における点Aから第2のコモンモードフィルタ側を見たディファレンシャルモードのインピーダンスを示すスミスチャート
【図10】図4における点Aから第2のコモンモードフィルタ側を見たコモンモードのインピーダンスを示すスミスチャート
【図11】第1のコモンモードフィルタのみのディファレンシャルモードのインピーダンスを示すスミスチャート
【図12】第1のコモンモードフィルタのみのコモンモードのインピーダンスを示すスミスチャート
【図13】本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタおよび位相線路接続で構成した場合のコモンモードノイズフィルタの周波数とディファレンシャルモード減衰量との関係を示す図
【図14】本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタ、位相線路接続で構成した場合のコモンモードノイズフィルタ、および単純接続で構成した場合のコモンモードノイズフィルタの周波数とコモンモード減衰量の関係を示す図
【図15】同コモンモードノイズフィルタの他の例を示す分解斜視図
【図16】同コモンモードノイズフィルタの他の例の等価回路図
【図17】同コモンモードノイズフィルタ、および同コモンモードノイズフィルタの他の例の周波数とコモンモード減衰量の関係を示す図
【図18】本発明の実施の形態2におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図
【図19】従来のコモンモードノイズフィルタの分解斜視図
【図20】同コモンモードノイズフィルタにおいて位相線路を設けた場合の等価回路図
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1、2,4に記載の発明について説明する。
【0018】
図1は本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図、図2は同コモンモードノイズフィルタの斜視図、図3、図4は同コモンモードノイズフィルタの等価回路図である。
【0019】
本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタは、図1、図2に示すように、積層体10と、この積層体10の内部に形成された第1〜第4のコイル導体11〜14と、前記第1のコイル導体11と前記第2のコイル導体12とを接続する第1のローパスフィルタ部15と、前記第3のコイル導体13と前記第4のコイル導体14とを接続する第2のローパスフィルタ部16とを備え、前記第1のコイル導体11と前記第3のコイル導体13とが磁気結合し、かつ前記第2のコイル導体12と前記第4のコイル導体14とが磁気結合するようにそれぞれ上下方向に積層するとともに、前記第1のコイル導体11と第3のコイル導体13とで第1のコモンモードフィルタ17を構成し、前記第2のコイル導体12と第4のコイル導体14とで第2のコモンモードフィルタ18を構成しており、第1のコモンモードフィルタ17と第2のコモンモードフィルタ18が第1、第2のローパスフィルタ部15、16を介して直列に接続されている。
【0020】
また、前記第1、第2のローパスフィルタ部15、16はそれぞれ、スパイラル状のコイル部19aとコンデンサ部19bとで構成され、このコンデンサ部19bは、グランドに接続された第1の金属層20と、前記第1、第2のコモンモードフィルタ17、18との間に形成された第2の金属層21からなり、この第2の金属層21の一部と第1の金属層20が対向するように構成されている。
【0021】
上記構成において、前記第1〜第4のコイル導体11〜14は、積層体10の内部において、それぞれ銀等の導電材料を渦巻状にめっきまたは印刷することにより形成されている。そして、第1、第2のコイル導体11、12は、ともに第1の絶縁体層22aの上面に形成され、第3、第4のコイル導体13、14は、ともに第2の絶縁体層22bの上面に形成されている。なお、第1〜第4のコイル導体11〜14の渦巻きの中心部に磁性材料からなる磁性体部(図示せず)を設けてもよい。
【0022】
さらに、前記第1〜第4のコイル導体11〜14の一端部11a〜14a(図1では第4のコイル導体14の一端部14aは絶縁体層に隠れて見えない)は、それぞれ積層体10の端部に設けられた第1〜第4の外部電極23〜26と接続されている。
【0023】
また、第1のコイル導体11の他端部11b、第2のコイル導体12の他端部12bは、第1のローパスフィルタ部15を介して接続されている。
【0024】
ここで、前記第1のローパスフィルタ部15は、第3の絶縁体層22cの上面に設けられたスパイラル状のコイル部19a、およびコンデンサ部19bで構成されている。そして、このコンデンサ部19bは、コイル部19aと前記第1、第2のコモンモードフィルタ17、18(第1のコイル導体11、第2のコイル導体12)との間の第4の絶縁体層22dの上面に形成された2つの第2の金属層21、およびこの2つの第2の金属層21とそれぞれと対向するように構成された第1の金属層20からなる。また、この第1の金属層20は、コイル部19aと2つの第2の金属層21との間の第5の絶縁体層22eの上面、および2つの第2の金属層21と第1、第2のコイル導体11、12との間の第6の絶縁体層22fの上面にそれぞれ形成されている。なお、第6の絶縁体層22fの上面に形成された第1の金属層20と第1の絶縁体層22aとの間には第7の絶縁体層22gが形成されている。
【0025】
このとき、第1のコイル導体11の他端部11bと第2の金属層21とが接続され、この第2の金属層21とコイル部19aとが接続され、このコイル部19aと他方の第2の金属層21とが接続され、この他方の第2の金属層21と第2のコイル導体12の他端部12bとが接続されて、第1のコイル導体11、第2の金属層21、コイル部19a、他方の第2の金属層21、第2のコイル導体12の順に直列に接続される。
【0026】
また、第1のコイル導体11の他端部11bと第2の金属層21との接続は、第1の絶縁体層22a、第7の絶縁体層22g、第6の絶縁体層22fに形成された第1のビア電極27aを介してなされる。さらに、第2の金属層21とコイル部19aとの接続は、第4の絶縁体層22d、第5の絶縁体層22eに形成された第2のビア電極27bを介してなされる。そして、コイル部19aと他方の第2の金属層21との接続は、第4の絶縁体層22d、第5の絶縁体層22eに形成された第3のビア電極27cを介してなされる。さらにまた、この他方の第2の金属層21と第2のコイル導体12の他端部12bとの接続は、第1の絶縁体層22a、第7の絶縁体層22g、第6の絶縁体層22fに形成された第4のビア電極27dを介してなされる。
【0027】
さらに、第3のコイル導体13の他端部13b、第4のコイル導体14の他端部14bは、第2のローパスフィルタ部16を介して接続されている。
【0028】
ここで、前記第2のローパスフィルタ部16は、第1のローパスフィルタ部15と同様に、第8の絶縁体層22hの上面に設けられたスパイラル状のコイル部19a、およびコンデンサ部19bで構成されている。そして、このコンデンサ部19bは、コイル部19aと前記第1、第2のコモンモードフィルタ17、18(第3のコイル導体13、第4のコイル導体14)との間の第9の絶縁体層22iの上面に形成された2つの第2の金属層21、およびこの2つの第2の金属層21と対向するように構成された第1の金属層20からなる。また、この第1の金属層20は、コイル部19aと2つの第2の金属層21との間の第10の絶縁体層22jの上面、および2つの第2の金属層21と第3、第4のコイル導体13、14との間の第11の絶縁体層22kの上面にそれぞれ形成されている。なお、第11の絶縁体層22kと第3、第4のコイル導体13、14との間には第12の絶縁体層22lが、コイル部19aの上面には第13の絶縁体層22mが形成されている。
【0029】
また、第3のコイル導体13の他端部13bと第2の金属層21との接続は、第12の絶縁体層22l、第11の絶縁体層22k、第9の絶縁体層22iに形成された第5のビア電極27eを介してなされる。さらに、第2の金属層21とコイル部19aとの接続は、第10の絶縁体層22j、第8の絶縁体層22hに形成された第6のビア電極27fを介してなされる。そして、コイル部19aと他方の第2の金属層21との接続は、第10の絶縁体層22j、第8の絶縁体層22hに形成された第7のビア電極27gを介してなされる。さらにまた、この他方の第2の金属層21と第4のコイル導体14の他端部14bとの接続は、第12の絶縁体層22l、第11の絶縁体層22k、第9の絶縁体層22iに形成された第8のビア電極27hを介してなされる。
【0030】
すなわち、第1、第2のローパスフィルタ部15、16は、それぞれコイル部19aによってインダクタが構成され、第1の金属層20と第2の金属層21とによってコンデンサ部19bが2つ構成される。これにより、第1、第2のローパスフィルタ部15、16は、3素子からなるパイ型のLCフィルタとなっている。さらに、第1のローパスフィルタ部15と第2のローパスフィルタ部16の構成は略同一となっている。
【0031】
なお、第2の金属層21と第1〜第8のビア電極27a〜27hとが電気的に接続されないようになっている。そして、第1〜第8のビア電極27a〜27hは、絶縁体層の所定の位置に、レーザで孔あけ加工をし、この孔に銀を充填して形成する。ここで、図1ではビア電極の一部は絶縁体層に隠れて見えなくなっている。
【0032】
また、第1、第2のローパスフィルタ部15、16においては、コイル部19aのL値や第1の金属層20と第2の金属層21間のコンデンサ部19bのC値を調整し、所望の周波数において、第1のコイル導体11と第1のローパスフィルタ部15との接続点および第3のコイル導体13と第2のローパスフィルタ部16との接続点(図4における点A)の位相を、第2のコイル導体12と第1のローパスフィルタ部15との接続点および第4のコイル導体14と第2のローパスフィルタ部16との接続点(図4における点B)の位相よりも0度より大きくかつ90度以下の位相量で変化させることができるように位相調整機能を持たせている。
【0033】
このとき、L値はコイル部19aの巻き数によって調整し、C値は第1の金属層20と第2の金属層21間の距離、第1の金属層20と第2の金属層21との対向面積、あるいは第1の金属層20と第2の金属層21との間に位置する絶縁体層の誘電率によって調整する。
【0034】
また、前記所望の周波数における位相量90度とは、所望の周波数での誘電材料や磁性材料で構成される積層体10内での真空中の波長を基準として波長短縮を考慮した有効的な波長で換算し、その有効波長の1/4に相当する。これは絶縁体層の種類やコモンモードノイズの減衰量を得たい周波数帯域によって変わる。
【0035】
そして、第1のコイル導体11と第3のコイル導体13とが磁気結合し、第2のコイル導体12と第4のコイル導体14とが磁気結合するようになっており、この構成により、図3、図4に示すように、第1のコイル導体11と第3のコイル導体13からなる第1のコモンモードフィルタ17と、第2のコイル導体12と第4のコイル導体14からなる第2のコモンモードフィルタ18の2つのコモンモードフィルタが、第1、第2のローパスフィルタ部15、16を介して接続される。
【0036】
さらに、第1、第2のローパスフィルタ部15、16で構成される1対のディファレンシャル回路の特性インピーダンスは、ディファレンシャル信号の通過周波数帯域において第1のコモンモードフィルタ17および第2のコモンモードフィルタ18の特性インピーダンスと略同一になっており、これにより、ディファレンシャルモードの損失を抑えることができる。
【0037】
なお、第1〜第13の絶縁体層22a〜22mは、シート状に構成され、第3の絶縁体層22c、第7の絶縁体層22g、第11の絶縁体層22k、第13の絶縁体層22mは、Ni−Cu−Znフェライト等の磁性材料で形成され、他の絶縁体層は、Cu−Znフェライト等の非磁性材料により形成されている。そして、第1〜第13の絶縁体層22a〜22mの枚数は、図1に示された枚数に限定されるものではない。
【0038】
この構成により、コイル部19aの片側の面が非磁性体層に接するようになり、これにより、コイル部19aが磁性体にすべて覆われていないため、磁性体の透磁率の大きな周波数依存性により低周波でのインダクタ成分が大きくなりすぎるのを防止でき、これにより、ディファレンシャルモードの特性インピーダンスの整合調整が容易になる。
【0039】
そして、前記第1の金属層20は、第5の絶縁体層22e、第6の絶縁体層22f、第10の絶縁体層22j、第11の絶縁体層22kのそれぞれ上面の1箇所に銀、銅等の導電材料をめっきまたは印刷することにより、あるいは金属板、金属箔を貼り付けることによりシート状に形成されている。また、第2の金属層21は、第4、第9の絶縁体層22d、22iのそれぞれ上面の2箇所に銀、銅等の導電材料をめっきまたは印刷することにより、あるいは金属板、金属箔を貼り付けることによりシート状に形成されている。さらに、この第1の金属層20はそれぞれ、その一部が絶縁体層の側面に露出している。そして、この第1の金属層20は図4に示すように、グランドに接続される。また、第1の金属層20と第2の金属層21とは上面視または下面視により、少なくとも互いにその一部を覆うように配置されている。
【0040】
上記した構成により、積層体10が形成される。また、この積層体10の両端部には、積層体10の焼成後において、上述した第1〜第4の外部電極23〜26と、第1の金属層20の一部に接続された第5、第6の外部電極28、29とが設けられている。さらに、前記第1〜第6の外部電極23〜26、28、29は、積層体10の端面に銀を印刷することにより形成され、またこれらの表面にめっきによってニッケルめっき層を形成するとともに、このニッケルめっき層の表面にめっきによってすずやはんだ等の低融点金属めっき層を形成する。
【0041】
ここで、本実施例においては、ディファレンシャルモードの信号の周波数通過帯域を1GHzの場合を考え、ディファレンシャルモードのカットオフ周波数(挿入損失が3dBとなる周波数)をおよそ1GHzとなるように、また1GHzにおいて第1のコモンモードフィルタ17と、第1のローパスフィルタ部15、第2のローパスフィルタ部16との接続点(図4の点A)の位相を、第2のコモンモードフィルタ18と、第1のローパスフィルタ部15、第2のローパスフィルタ部16との接続点(図4の点B)の位相より90度の位相変化量とするように、図4における第1、第2のローパスフィルタ部15、16のL値、C値を調整している。
【0042】
このような調整方法のひとつとして、図4のパイ型ローパスフィルタを用いた場合を考え、図4の点Bからの位相変化量をθ度とした場合に、コイル部19aのL値、コンデンサ部19bのC値は以下の式で表されることを導出した。ここで、Zoはシングルエンド伝送ラインの特性インピーダンス、fは周波数、πは円周率を示す。
L=Zo/(2πf・sin(2πθ/360))
C=(1−cos(2πθ/360))/(Zo・2πf・sin(2πθ/360))
以上のように構成された本発明の実施の形態1におけるコモンモードフィルタの作用について、図5〜図14を用いて説明する。なお、一部の図面については、比較例として、図20に示す2つのコモンモードフィルタを位相線路を介して接続したもの(以下、「位相線路接続」とする)と、図19に示す2つのコモンモードフィルタを単純に直列接続した位相の変化量が0度とみなせるもの(以下、「単純接続」とする)を用いる。また、この位相線路接続における位相線路も、所望の周波数において、第1、第3のコイル導体11、13と第1、第2のローパスフィルタ部15、16との接続点の位相を、第2、第4のコイル導体12、14と第1、第2のローパスフィルタ部15、16との接続点の位相よりも0度より大きくかつ90度以下の位相量で変化させることができるように線路長を調整している。
【0043】
以下、第1、第2のローパスフィルタ部15、16のみの場合、第1、第2のローパスフィルタ部15、16のみで形成されるディファレンシャル回路の場合、このディファレンシャル回路と第2のコモンモードフィルタ18を接続した場合、さらに第1のコモンモードフィルタ17を接続した場合のそれぞれの作用について順をおって説明していく。
【0044】
まず、第1、第2のローパスフィルタ部15、16のみの作用、第1、第2のローパスフィルタ部15、16のみで形成されるディファレンシャル回路の作用について、図5〜図8を用いて以下説明する。
【0045】
図5は、1つの第1のローパスフィルタ部15あるいは第2のローパスフィルタ部16のみの挿入損失特性、および位相線路接続の位相線路のみの挿入損失特性を示し、図6は、1つの第1のローパスフィルタ部15あるいは第2のローパスフィルタ部16のみの位相特性、および位相線路接続の位相線路のみの位相特性を示している。
【0046】
図7は、第1、第2のローパスフィルタ部15、16で構成される1対のディファレンシャル回路のみのディファレンシャルモード挿入損失と周波数との関係、および位相線路接続の1対の位相線路のみで構成されるディファレンシャル回路のディファレンシャルモード挿入損失と周波数との関係を示している。図8は、第1、第2のローパスフィルタ部15、16で構成される1対のディファレンシャル回路のみのコモンモード減衰特性と周波数の関係、および位相線路接続の1対の位相線路のみで構成されるディファレンシャル回路のコモンモード減衰特性と周波数の関係を示したものである。
【0047】
図5、図6から明らかなように、1GHzまでの周波数において、本実施の形態の第1のローパスフィルタ部15あるいは第2のローパスフィルタ部16は、位相線路接続と同じ位相変化を示しており、挿入損失も小さい。しかし、1GHz以上になるとその挿入損失は、第1のローパスフィルタ部15あるいは第2のローパスフィルタ部16の場合は減衰量が大きくなっている。このような特性を示す位相線路で1対のディファレンシャル回路を形成した場合と1対のローパスフィルタでそれぞれディファレンシャル回路を形成した場合を考えると、図7、図8から明らかなように、従来の位相線路接続を用いた場合と比較して、本実施の形態のローパスフィルタを用いた場合、ディファレンシャルモードに対してもコモンモードに対しても1GHz以上でより大きな減衰が得られる。
【0048】
上記のように構成される1対の第1、第2のローパスフィルタ部15、16と第2のコモンモード18を接続した構成の作用について以下説明する。
【0049】
図9は、図4における点A(第1のコモンモードフィルタ17(第1、第3のコイル導体11、13)と第1、第2のローパスフィルタ部15、16との接続点)から第2のコモンモードフィルタ18側を見たディファレンシャルモードのインピーダンスを示すスミスチャート、図10は、図4における点Aから第2のコモンモードフィルタ18側を見たコモンモードのインピーダンスを示すスミスチャートで、いずれも周波数を1MHzから1GHzまで変化させたものである。なお、図10においては、本発明の効果を示すために1GHzまでの周波数のコモンモードインピーダンスを実線で示し、1GHzを越えた場合の周波数を破線で示している。
【0050】
図9から明らかなように、ディファレンシャルモードに対しては、図4の点Aから第2のコモンモードフィルタ18を見たディファレンシャルモードのインピーダンスは、ほぼ整合がとれていることが分かる。
【0051】
一方、コモンモードに対しては、図10から明らかなように、図4の点Aから第2のコモンモードフィルタ18側を見たコモンモードのインピーダンスは、単純接続の場合は1GHzでほぼオープン状態であるが、第1、第2のローパスフィルタ部15、16を挿入した場合および位相線路接続した場合は、周波数があがると容量性低インピーダンス方向へ移行し、90度の場合には1GHzでショート状態となることが分かる。つまり、容量性に移行した周波数から1GHzまで、図4のA点からみた第1、第2のローパスフィルタ部15、16を含む第2のコモンモードフィルタ18は、コモンモードに対して対グランド間に接続された容量素子として作用することが分かる。
【0052】
図11は、図4において外部電極25、23からみた第1のコモンモードフィルタ17のみのディファレンシャルモードのインピーダンスを示すスミスチャート、図12は、図4において外部電極25、23からみた第1のコモンモードフィルタ17のみのコモンモードのインピーダンスを示すスミスチャートで、いずれも周波数を1MHzから1GHzまで変化させたものである。
【0053】
第1のコモンモードフィルタ17のみの特性は、図11から明らかなように、ディファレンシャルモードに対しては、ほぼ整合がとれていることが分かる。一方、コモンモードに対しては、図12から明らかなように、コモンモードのインピーダンスは周波数が上がると誘導性のインピーダンスで高インピーダンス状態へ推移していることが分かる。
【0054】
次に、ディファレンシャルモード、コモンモードに対して上述したような特性を示す第1のコモンモードフィルタ17と、第1、第2のローパスフィルタ部15、16と第2のコモンモードフィルタ18を直列接続した本実施の形態1のコモンモードノイズフィルタの作用を、減衰特性を参照しながら説明する。
【0055】
図13は、本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタおよび位相線路接続での周波数とディファレンシャルモード減衰量との関係を示す図である。図14は、本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタ、位相線路接続、および単純接続での周波数とコモンモード減衰量の関係を示す図である。
【0056】
図13から明らかなように、本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタにおいては、ディファレンシャルモードに対して第1のコモンモードフィルタ17、第1、第2のローパスフィルタ部15、16および第2のコモンモードフィルタ18が各々整合されて接続されているため、ディファレンシャル信号の通過帯域の1GHz以下では損失が少ないが、1GHz以上の高周波領域では、第1、第2のローパスフィルタ部15、16の減衰効果により、従来の位相線路接続よりも大きな減衰特性が得られることが分かる。
【0057】
図14によりコモンモードに対して、外部電極23、25からみた場合、1GHzまでの周波数では、前記のように第1のコモンモードフィルタ17が誘導性素子として働き、第1、第2のローパスフィルタ部15、16と第2のコモンモードフィルタ18を含む回路は等価的に容量性素子として働くため、本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタは、外部電極23、25からみた場合、コモンモードに対して等価的にLCフィルタとして働き、1GHzまでの周波数では図14に示されるような大きなコモンモード減衰特性を得ることができる。コモンモードに対して1GHzでショート状態となったあとは、従来の位相線路接続では、図4のA点から第2のコモンモードフィルタ18側をみた場合、1GHzを超えると誘導性へ移行し(図10の破線で図示した状態)、コモンモード減衰量が周波数増加に伴い徐々に劣化するが、本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタは、第1、第2のローパスフィルタ部15、16の減衰効果で1GHz以上の周波数領域でもコモンモードの減衰量を得ることができ、広い周波数帯域に渡りコモンモード減衰量を確保することができる。
【0058】
なお、上記した本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタにおいては、グランド接続された第1の金属層20が第2の金属層21の一部を覆うように配置したものについて説明したが、図15に示すように、第1の金属層20が上面視にて第1〜第4のコイル導体11〜14の略全体も覆うようにしてもよい。
【0059】
この構成によれば、図16に示すように、グランド接続された第1の金属層20と第1〜第4のコイル導体11〜14との間に大きな浮遊容量C0が発生するため、高周波帯域のコモンモードノイズを大きく減衰させることができる。
【0060】
図17は、上記のように第1の金属層20が上面視にて第1〜第4のコイル導体11〜14も覆うようにしたときにおけるコモンモードノイズフィルタの周波数とコモンモード減衰量の関係を示す図である。
【0061】
図17では、比較例として、図1に示す本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタの場合を示している。
【0062】
図17から明らかなように、第1の金属層20が上面視にて第1〜第4のコイル導体11〜14を覆うようにした方が、高周波帯におけるコモンモードノイズ減衰量をより大きくすることができることが分かる。
【0063】
なお、上記した本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタにおいては、第1、第2のローパスフィルタ部15、16をCLC構成のパイ型フィルタとしたが、LCL構成のT型フィルタとしてもよく、また、第1、第2のローパスフィルタ部15、16を3素子で構成するものとしたが、素子数は3素子に限定されるものではない。
【0064】
さらに、コイル部19aを、最外側に形成したが、第1〜第4のコイル導体11〜14と第1の金属層20との間に形成してもよい。
【0065】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を用いて、本発明の特に請求項3に記載の発明について説明する。
【0066】
図18は本発明の実施の形態2におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図である。なお、この本発明の実施の形態2においては、上記した本発明の実施の形態1と同様の構成を有するものについては、同一符号を付しており、その説明は省略する。
【0067】
本発明の実施の形態2が上記した本発明の実施の形態1と相違する点は、図18に示すように、第1、第2のローパスフィルタ部15、16をそれぞれ、スパイラル状のコイル部19aとグランドに接続された第1の金属層20とを対向させ、コイル部19aと第1の金属層20との間で連続的に発生する浮遊容量で分布定数型のローパスフィルタを形成した点である。
【0068】
この構成により、第2の金属層21を形成してコンデンサ部を構成する必要がなくなるため、積層数を削減することができ、これにより、コスト削減と小型化、薄層化を実現できる。
【0069】
なお、上記した本発明の実施の形態1、2におけるコモンモードノイズフィルタにおいては、第1、第2のコイル導体11、12を同一面上に形成し、第3、第4のコイル導体13、14を同一面上に形成したが、それぞれのコイル導体を別個の面に形成してもよい。
【0070】
また、第1の金属層20を2枚形成しているが、1枚だけであってもよい。
【0071】
さらに、コイル部19aの片面を非磁性体層に接するように構成したが、両面を非磁性体層に接するように構成してもよい。この構成により、磁性体の透磁率の周波数依存の影響を受けないため、ディファレンシャルモードの整合をより取り易くなる。
【0072】
そして、上述した実施の形態1、2において、点Bに対する点Aでの位相変化量が、コモンモードの周波数が1GHzで90度となる構成について説明したが、この構成でコモンモードの周波数を例えば1.3GHzとしたときの位相変化量は約120度となる。すなわち、実施の形態1、2では、所望の周波数が1GHzのときの位相変化量が90度以下の場合を示したが、本発明は、図6に示すような位相特性を有し、この位相特性の線上にあれば、コモンモードの周波数が1GHzで位相変化量が90度でなくても、本発明の内容と同義となる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係るコモンモードノイズフィルタは、コモンモードノイズおよびノーマルモードノイズを広い周波数帯域で大きく減衰させることができるという効果を有するものであり、特にデジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器のノイズ対策として使用されるコモンモードノイズフィルタ等において有用となるものである。
【符号の説明】
【0074】
10 積層体
11 第1のコイル導体
12 第2のコイル導体
13 第3のコイル導体
14 第4のコイル導体
15 第1のローパスフィルタ部
16 第2のローパスフィルタ部
17 第1のコモンモードフィルタ
18 第2のコモンモードフィルタ
19a コイル部
19b コンデンサ部
20 第1の金属層
21 第2の金属層
23〜26 第1〜第4の外部電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体と、この積層体の内部に形成された第1〜第4のコイル導体と、前記積層体の端部に設けられかつ前記第1〜第4のコイル導体の一端部にそれぞれ接続された第1〜第4の外部電極と、前記第1のコイル導体と前記第2のコイル導体との間に接続された第1のローパスフィルタ部と、前記第3のコイル導体と前記第4のコイル導体との間に接続された第2のローパスフィルタ部とを備え、前記第1のコイル導体と前記第3のコイル導体とが磁気結合し、かつ前記第2のコイル導体と前記第4のコイル導体とが磁気結合するようにそれぞれ上下方向に積層するとともに、前記第1のコイル導体と第3のコイル導体とで第1のコモンモードフィルタを構成し、前記第2のコイル導体と第4のコイル導体とで第2のコモンモードフィルタを構成し、前記第1、第2のローパスフィルタ部はそれぞれ、少なくとも1つのスパイラル状のコイル部と、グランド接続された第1の金属層を有するコンデンサ部とで構成し、前記第1、第2のローパスフィルタ部で構成される1対のディファレンシャル回路の特性インピーダンスを、ディファレンシャル信号の通過周波数帯域において第1のコモンモードフィルタおよび第2のコモンモードフィルタの特性インピーダンスと略同一とし、さらに、所望の周波数において、前記第1、第3のコイル導体と前記第1、第2のローパスフィルタ部との接続点の位相を、前記第2、第4のコイル導体と前記第1、第2のローパスフィルタ部との接続点の位相よりも0度より大きくかつ90度以下の位相量で変化させることができるように前記第1、第2のローパスフィルタ部のコイル部とコンデンサ部の定数を調整したコモンモードノイズフィルタ。
【請求項2】
第1、第2のローパスフィルタ部のコイル部を少なくとも1つの非磁性体層に形成するように構成した請求項1記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項3】
第1、第2のローパスフィルタ部をそれぞれ、コイル部と、このコイル部に上面視にて対向する第1の金属層とで構成した請求項1記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項4】
第1の金属層が上面視にて第1〜第4のコイル導体も覆うようにした請求項1記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項1】
積層体と、この積層体の内部に形成された第1〜第4のコイル導体と、前記積層体の端部に設けられかつ前記第1〜第4のコイル導体の一端部にそれぞれ接続された第1〜第4の外部電極と、前記第1のコイル導体と前記第2のコイル導体との間に接続された第1のローパスフィルタ部と、前記第3のコイル導体と前記第4のコイル導体との間に接続された第2のローパスフィルタ部とを備え、前記第1のコイル導体と前記第3のコイル導体とが磁気結合し、かつ前記第2のコイル導体と前記第4のコイル導体とが磁気結合するようにそれぞれ上下方向に積層するとともに、前記第1のコイル導体と第3のコイル導体とで第1のコモンモードフィルタを構成し、前記第2のコイル導体と第4のコイル導体とで第2のコモンモードフィルタを構成し、前記第1、第2のローパスフィルタ部はそれぞれ、少なくとも1つのスパイラル状のコイル部と、グランド接続された第1の金属層を有するコンデンサ部とで構成し、前記第1、第2のローパスフィルタ部で構成される1対のディファレンシャル回路の特性インピーダンスを、ディファレンシャル信号の通過周波数帯域において第1のコモンモードフィルタおよび第2のコモンモードフィルタの特性インピーダンスと略同一とし、さらに、所望の周波数において、前記第1、第3のコイル導体と前記第1、第2のローパスフィルタ部との接続点の位相を、前記第2、第4のコイル導体と前記第1、第2のローパスフィルタ部との接続点の位相よりも0度より大きくかつ90度以下の位相量で変化させることができるように前記第1、第2のローパスフィルタ部のコイル部とコンデンサ部の定数を調整したコモンモードノイズフィルタ。
【請求項2】
第1、第2のローパスフィルタ部のコイル部を少なくとも1つの非磁性体層に形成するように構成した請求項1記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項3】
第1、第2のローパスフィルタ部をそれぞれ、コイル部と、このコイル部に上面視にて対向する第1の金属層とで構成した請求項1記載のコモンモードノイズフィルタ。
【請求項4】
第1の金属層が上面視にて第1〜第4のコイル導体も覆うようにした請求項1記載のコモンモードノイズフィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−160810(P2012−160810A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17540(P2011−17540)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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