説明

コモンレール式燃料供給装置

【課題】燃料が高圧ポンプ装置によって低圧範囲から高圧範囲に搬送され、該範囲が、搬送配管(6)により互いに結合された複数のレールから成るコモンレール(5、6、7、13)を有し、これらレールが、少なくとも1つのシリンダに供給するために絞り、貫流制限および流量制限のための全制御手段が一体に組み込まれたレール蓋(7)によって端面が閉じられている内燃機関の複数のシリンダに対するコモンレール式燃料供給装置を、今迄の利点が失われることなしに、高価な部品を省けるように改良する。
【解決手段】高圧ポンプ装置に少なくとも2つの高圧ポンプ(3)を設け、各高圧ポンプ(3)を各々別個のポンプ配管(12)を経て液圧的に、搬送配管(6)又はレール(5)のレール蓋(7)に接続する。この装置は、従来装置が必須の構成要素としていた高価なポンプ蓄圧器を必要としないと言う利点を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載のコモンレール式燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この燃料供給装置は、特に重油を燃料とする大形ディーゼルエンジンに採用される。
【0003】
請求項1の前文に記載の特徴を有するこの種燃料供給装置は、例えば特許文献1で知られている。燃料噴射器の機能は、十分に短時間で正確な噴射を保証すべく、特に電磁弁によって電子制御される。
【0004】
その場合、大形ディーゼルエンジンへのコモンレール方式の採用は、エンジン軸線に沿った全シリンダに対するコモンレールの必要長ないし一定した蓄圧圧力のために問題があることが既に提起されている。このため、接続配管によって互いに接続された複数の別個のレールからなるコモンレールが既に実現されている。
【0005】
更にそこには、互いに接続された複数の別個のレールから成るコモンレールにおいて、該レールを、各レールが各々少なくとも2つのシリンダに供給するのに十分な容積を有するように設計し、かつ液圧的に並列に配置することが記載されている。
【0006】
特に燃料供給装置、即ちコモンレール式燃料噴射装置を、場所をとらず柔軟な、特にモジュール構造に転換し、かつ燃料供給装置全体の運転安全性を高めるべく、レールの両側端面にレール蓋を設け、各々のシリンダへの燃料噴射のために必要な絞り、貫流制限および流量制限に対する制御手段をレール蓋に組み入れ、高圧ポンプ装置とコモンレールとの間の高圧範囲に少なくとも1つの別個のポンプ蓄圧器を配置し、該蓄圧器を燃料搬送のためにコモンレールのレールのレール蓋に液圧的に開口させることは公知である。
【0007】
コモンレールの個々の各レールが、各々例えば2つのシリンダに供給する貯蔵容積を持つように設計することで、コモンレールの配置および液圧的機能について最良に構成すべく、内燃機関に沿ったレールの位置と長さを決定できる。燃料供給と燃料継続案内に関する全機能ユニットを組み入れたレール蓋を両端面に設けることで、コモンレール式燃料噴射装置の既存形式のエンジンへの追加装備も、新形式のエンジンへの新設もかなり単純になる。全管継手、内燃機関に沿ってレールを位置決めするサポート、レールに対するシール要素および燃料量制限弁等の機能ユニットを全てレール蓋に設け、もってモジュール構造を簡単化し、かつサポートおよび管継手に起因する外力をレール蓋で受けることで、レールとコモンレール全体がその外力を受けないようにして、運転安全性を向上できる。別個のポンプ蓄圧器を高圧ポンプとコモンレールの間の高圧範囲に配置し、燃料を供給すべくコモンレールのレールの少なくとも片側レール蓋に接続し、少なくとも1つの高圧ポンプから供給することで、ポンプで発生した動的圧力成分を、搬送する燃料、即ち重油を最終的にコモンレールに通じるポンプ配管に供給する前に、かなり減少させ得る。
【0008】
その多くの利点にもかかわらず、高圧ポンプ装置とコモンレールとの間の別個のポンプ蓄圧器は、非常に経費がかかるという欠点がある。
【特許文献1】独国特許出願公開第10157135号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、従来技術から出発し、冒頭に述べた形式の燃料供給装置を、高価なポンプ蓄圧器を省き、発生する圧力振幅の欠点をレールが受けることなく、良好な燃料噴射過程を得られるように改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、本発明に基づき、請求項1に記載の特徴事項によって解決される。
【発明の効果】
【0011】
即ち、本発明に基づいて燃料は、吸込み絞り制御される個々の高圧ポンプによって、個々のレール間の接続配管に直接搬送されおよび/又はレール蓋の別個の接続口を経てレールに直接搬送される。燃料はそこから、特許文献1で実施されている如く、レール蓋に一体化された切換弁を経て、内燃機関の各シリンダの噴射器に送られる。即ち、本発明に基づき高圧ポンプ装置は少なくとも2つの高圧ポンプを有し、各ポンプは各々別個のポンプ配管を経て液圧的に、搬送配管および/又はレールのレール蓋に結合される。
【0012】
本発明の他の有利な処置および有利な実施態様を従属請求項に示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図を参照して本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、ディーゼル式内燃機関(図示せず)に対するモジュール構造のコモンレール式燃料供給装置を示す。このディーゼルエンジンは重油での運転用に設計され、該重油は、低圧範囲にある燃料タンク1から燃料低圧系統2を経て、複数の高圧ポンプ3により各々別個のポンプ配管12を経て、高圧ポンプ3の下流に続く高圧範囲に搬送される。内燃機関(図示せず)は各シリンダに燃料噴射器9を備えた六気筒エンジンである。
【0015】
高圧ポンプ3と噴射器9の間の高圧範囲に蓄圧配管5、6、7、8、13があり、該配管は用語「コモンレール」で知られ、搬送配管6により互いに接続された複数、この例では3つの別個のレール5で構成される。各レール5は、高圧下にある他の配管6、12の容積に比べて大きな貯蔵容積を提供する内部蓄圧室により特徴づけられる。
【0016】
レール5は組込み物付き又は組込み物なしの管状部品13で形成され、レール蓋7により端面を密封され、各々内燃機関に沿って略シリンダヘッドの高さに配置されている。
【0017】
レール5は、各々少なくとも1つの高圧配管8によって、通常電子制御式の少なくとも1つの噴射器9に接続されている。
【0018】
この場合、燃料を供給すべき2つのシリンダ毎に1つのレール5を設けている。エンジン形式と用途に応じ、互いに接続された個々のレール5は、複数の高圧ポンプ3、この実施例では2台の高圧ポンプにより充填される。これら高圧ポンプ3は、通常カムと制御シャフトのような公知の手段を経て、ディーゼルエンジンのクランクシャフトでタイミング駆動され、従って通常はクランク室の近くに配置されている。
【0019】
高圧ポンプ3の上流に、各々電磁制御式絞り弁31が配置されている。各高圧ポンプ3の搬送流量は、絞り弁31で調整される。燃料は絞り弁31から吸込み弁32を経てポンプ室33に導かれる。各高圧ポンプ3の搬送質量において吸込み弁32が閉じ、燃料が吐出し弁34を経てコモンレール5、6、7、13に圧送される。
【0020】
即ち高圧ポンプ3は、コモンレール5、6、7、13内に設定可能な高圧を生ずる。図示の全実施例で、高圧ポンプ3からコモンレール5、6、7、13への燃料の搬送方向に見て最後のレール5の下流で、燃料配管を経て燃料を燃料タンク1に戻すべく、放出装置16を分岐して設けている。放出装置16は安全弁11と追加的排出弁10の形で形成されている。安全弁11と排出弁10は唯一の弁要素の形でも実現できる。排出弁10は第1、第2切換位置を持ち、第1切換位置で、燃料はコモンレール5、6、7、13から燃料タンク1に流出し、第2切換位置で、燃料は安全弁11を経て燃料タンク1に戻る。
【0021】
更に第1レール5の上流で、レール蓋7に、コモンレール5、6、7、13の排出過程に対する逆止め弁101付きの分岐管を設けている。
【0022】
他方では、各レール5からの燃料は、レール蓋7に接続された切換弁71を経て、各噴射器9に送られる。該切換弁71は、通常2ポート2位置切換弁で制御される3ポート2位置切換弁として形成され、この切換弁は、高圧配管8および通常のニードル弁として形成された噴射器9を経る噴射を制御する。
【0023】
図1の2つの高圧ポンプ3は、各々別個のポンプ配管12を経て、液圧的に搬送配管6に接続されている。該高圧ポンプ3は空間的に直列に連続する接続配管6に開口しているが、特にエンジン形式とその用途に応じた高圧ポンプ3の台数に従い、高圧ポンプ3と接続配管6の他の割り当てや組合せも採用できる。
【0024】
ポンプ配管12の接続配管6への接続は、一般に搬送配管6が2つの部材から成るなら3つの接続口付きのアダプタ、搬送配管が単一部材であるなら1つの溶接された継手を経て直接行われる。
【0025】
図2は、図1と同じ配管系統図を示す。ここでは、例えば高圧ポンプ3のコモンレール5、6、7、13への接続方式が異なっている。右側の第1高圧ポンプ3はポンプ配管12を経てコモンレール5、6、7、13の右端の第1レール5のレール蓋7に直接接続され、他の全ての高圧ポンプ、ここでは第2高圧ポンプ3は、互に空間的に連続しコモンレール5、6、7、13の軸方向に見て連続する搬送配管6に、3つの接続口を備えたアダプタで接続されている。
【0026】
図3の異なる実施例では、全ての高圧ポンプ3を、各々ポンプ配管12を経てレール蓋7に直接、即ちレール5に接続している。そのため、レール蓋7は別個の接続口又は補助接続口を有している。右側の第1レールのレール蓋には搬送配管が接続されないので、補助接続口は不要である。レール5毎に1台の高圧ポンプ3を接続するとよい。
【0027】
しかし異なった実施例では、レール5に各々レール蓋7を経て2つ迄の高圧ポンプ3を接続できる(レール蓋7毎に1台の高圧ポンプ3)。勿論、空間的配置上好適な位置にある任意の個々のレール蓋7だけに高圧ポンプ3を液圧的に直接接続してもよい。
【0028】
図4は、各接続配管6に2つ以上の高圧ポンプ3を接続した実施例を示す。
【0029】
いずれの場合も、ポンプ配管12は少なくとも同じ大きさの流れ断面積、好適には接続配管部材又は搬送配管6と同じ流れ断面積を有している。
【0030】
更に別の実施例では、全ポンプ配管12を、搬送配管6への接続のため、接続すべき高圧ポンプ3の吸込み弁32と吐出弁34を含む弁ホルダの2つの接続口を経ての直接継手としても形成できる。この結果高圧ポンプ3は必要に応じて1つ、2つ又はそれ以上のレール5に燃料を供給し、更に隣のレールへの配管6を経て、レール間の接続もなし得る。
【0031】
即ち、従来のコモンレール構想と異なり、高価なポンプ蓄圧器が不要となる。高圧ポンプ3のコモンレール5、6、7、13への本発明に基づく接続により、レール内での圧力振幅も低減し、かくして良好な燃料噴射が可能となる。
【0032】
更に第1又は最終レール5の燃料排出接続口ないし第1又は最終高圧ポンプ3の吸込み接続口に、燃料低圧系統2への逆止め弁101付き接続配管を接続している。この逆止め弁101は、排出弁10の開放時にエンジン上流の燃料低圧系統2からエンジン下流の燃料帰還路への燃料の流れが生ずるように接続されている。その排出に伴い、重油燃料エンジンの停止時、燃料供給装置全体が貫流する重油で暖められ、運転性が保たれる。エンジン始動時、排出弁10が閉じられ、逆止め弁101が、高圧ポンプ3の動作による圧力発生に伴い自動的に閉鎖する。
【0033】
低圧系統から逆止め弁101を経て中間の1つのレール5又は高圧ポンプ3への燃料供給および各1つの排出弁10を経た両端レール5での排出も実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に基づく燃料供給装置の全体配管系統図。
【図2】図1と異なった本発明に基づく燃料供給装置の実施例の配管系統図。
【図3】本発明に基づく燃料供給装置の更に異なった実施例の配管系統図。
【図4】本発明に基づく燃料供給装置の更に異なった実施例の配管系統図。
【符号の説明】
【0035】
1 燃料タンク、2 燃料低圧系統、3 高圧ポンプ、5 レール、6 接続配管、7 レール蓋、8 高圧配管、9 噴射器、10 排出弁、11 安全弁、12 ポンプ配管、13 管状部品、14 カム、15 制御シャフト、16 放出装置、31 絞り弁、32 吸込み弁、33 ポンプ室、34 吐出し弁、71 切換弁、101 逆止め弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料が高圧ポンプ装置によって低圧範囲から高圧範囲に搬送され、高圧範囲が搬送配管(6)により互いに結合された複数のレールから成るコモンレール(5、6、7、13)を有し、前記レールが、少なくとも1つのシリンダに供給すべく絞り、貫流制限および流量制限のための全制御手段を一体に組み込んだレール蓋(7)により端面を閉じられている内燃機関の複数のシリンダに対するコモンレール式燃料供給装置において、
高圧ポンプ装置が少なくとも2つの高圧ポンプ(3)を有し、該ポンプ(3)が各々別個のポンプ配管(12)を経て液圧的に、搬送配管(6)の1つおよび/又は1つのレール(5)のレール蓋(7)の1つに接続されたことを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
個々の高圧ポンプ(3)のポンプ配管(12)が、各々空間的に連続しコモンレール(5、6、7、13)の軸方向に見て互いに連続する搬送配管(6)に、3つの接続口を備えたアダプタによって接続され、又は搬送配管(6)に直接接続されたことを特徴とする請求項1記載の燃料供給装置。
【請求項3】
第1高圧ポンプ(3)が、ポンプ配管(12)を経てコモンレールの第1レール(5)のレール蓋(7)に直接接続され、他の全ての高圧ポンプ(3)が、各々空間的に連続しコモンレール(5、6、7、13)の軸方向に見て互いに連続する搬送配管(6)に、3つの接続口を備えたアダプタによって接続され、又は搬送配管(6)に直接接続されたことを特徴とする請求項1記載の燃料供給装置。
【請求項4】
全高圧ポンプ(3)が各々ポンプ配管(12)を経て、コモンレールのレール蓋(7)に液圧的に直接接続されたことを特徴とする請求項1記載の燃料供給装置。
【請求項5】
各レール蓋(7)が、高圧ポンプ(3)に接続するための別個の管継手を備えることを特徴とする請求項4記載の燃料供給装置。
【請求項6】
各レール(5)の少なくとも片側のレール蓋(7)に、高圧ポンプ(3)が接続されたことを特徴とする請求項4又は5記載の燃料供給装置。
【請求項7】
少なくとも2つの高圧ポンプ(3)が、各々空間的に連続し、コモンレール(5、6、7、13)の軸方向に見て連続する各搬送配管(6)に開口することを特徴とする請求項2記載の燃料供給装置。
【請求項8】
ポンプ配管(12)が搬送配管(6)より大きな流れ断面積を有することを特徴とする請求項1から3および7の1つに記載の燃料供給装置。
【請求項9】
高圧ポンプ(3)が1つ又は複数のレール(5)に燃料を供給し、配管によって隣のレール(5)への接続が形成されるように、全ポンプ配管(12)が搬送配管(6)への接続のために、接続すべき高圧ポンプ(3)の吸込み弁(32)と吐出し弁(34)を含む弁ホルダの少なくとも2つの接続口を経ての直接継手として形成されていることを特徴とする請求項1から3、7および8の1つに記載の燃料供給装置。
【請求項10】
第1又は最終レール(5)の燃料排出接続口に、或いは第1又は最終ポンプ(3)の吸込み接続口に、燃料低圧系統(2)への逆止め弁(101)付き接続配管が接続されたことを特徴とする請求項1から9の1つに記載の燃料供給装置。
【請求項11】
中間レール(5)に又は中間高圧ポンプ(3)における燃料供給のために、燃料低圧系統への逆止め弁(101)付き接続配管が利用され、両端レール(5)における排出のために、各々排出弁付き接続配管が接続されたことを特徴とする請求項1から10の1つに記載の燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−170201(P2006−170201A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355982(P2005−355982)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(390041520)エムアーエヌ、ベーウントヴエー、デイーゼル、アクチエンゲゼルシヤフト (59)
【氏名又は名称原語表記】MAN B&W DIESEL AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】