説明

コンタクトの形成方法、共振器構造、及びEL装置

【課題】 共振器にエッチングを用いて形成されたコンタクトホールの凹凸部による、導電部の断線を防止し、歩留まりを向上した、コンタクトの形成方法、共振器構造及びこの共振器構造を備えたEL装置を提供する。
【解決手段】 下部導電部236と上部導電部141との間に設けられた、異なる誘電体層10a、10bが複数積層されてなる共振器10に、エッチングによって内壁面に凹凸部15のあるコンタクトホール20を設けて、コンタクトホール20の内壁面を覆う、下部導電部236と上部導電部141とを導通させるための、導電材料からなるコンタクト25の形成方法である。下部導電部236上に共振器20を形成し、共振器10にエッチングによってコンタクトホール20を形成する。そして、コンタクトホール20の内壁面を、凹凸部15の凹部に対する凸部の高さの150%以上の厚みの導電材料によって覆うようにしてコンタクト25を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトの形成方法、共振器構造、及び共振器構造を備えたEL装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に形成された下部電極と、この下部配線上に層間膜を介して形成された上部電極とを電気的に接続させるために、前記層間膜にコンタクトホールを形成して下部電極と上部電極とを電気的に導通させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。一般的に、このようなコンタクトホールは、ドライエッチングによる異方性エッチングもしくはウエットエッチングによって形成されている。
【0003】
ところで、異なる誘電体積層膜からなる共振器をEL素子に設けることで、発光層が出射した光を共振させて強める技術がある。このような共振器を、例えば有機EL装置におけるドレイン電極と画素電極との間に設けた場合に、前記共振器を介してドレイン電極(下部導電部)と画素電極(上部導電部)とを接続させる必要がある。そこで、前述したようなエッチングを用いることで共振器にコンタクトホールを形成して、これら電極間を導通させる方法が考えられる。
【特許文献1】特開平9−213798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、共振器は、例えば異なる誘電体層であるSiN層とSiO層とが交互に積層された構造となっているため、ドライエッチングもしくはウエットエッチングによってコンタクトホールの形成を行う場合に、SiN層とSiO層との間でエッチング速度が異なってしまう。また、エッチング条件としてドレイン電極との間で十分な選択比を取る場合には、例えばカーボン系のガス(CやCH)によって保護しながらエッチングを行うため、SiN層とSiO層との間でのエッチング速度の差がより大きくなってしまう。
このように積層構造の間でエッチング速度が異なる場合、エッチング速度が高い誘電体層ではエッチング量が多くなり、エッチング速度が低い誘電体層では前記エッチング速度の高い誘電体層に比べてエッチング量が少なくなってしまう。すると、共振器にコンタクトホールを形成する際に、積層構造の間でエッチング量による差から凹凸が発生し、コンタクトホールの内壁面には凹凸部が生じてしまう。
【0005】
このように、コンタクトホール内壁面に凹凸部が生じてしまうと、例えばコンタクトホール内に導電性材料を埋め込んで形成したドレイン電極と画素電極とを接続するための導通部(コンタクト)は、前述した凹凸部によってコンタクトホールの内壁面との密着性が低下してしまう。
また、前記導通部が凹凸部の凹部と凸部との段差によって導通部の断線が起こる可能性があり、導通部の接続信頼性が得られなかった。したがって、前記導通部で断線が生じると、ドレイン電極と画素電極とを前記導通部を介して良好に導通させることができず、歩留まりを低下させていた。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、共振器にエッチングを用いて形成されたコンタクトホールの凹凸部による、導電部の断線を防止し、歩留まりを向上した、コンタクトの形成方法、共振器構造及びこの共振器構造を備えたEL装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のコンタクトの形成方法は、下部導電部と上部導電部との間に設けられた、異なる誘電体層が複数積層されてなる共振器に、エッチングによって内壁面に凹凸部のあるコンタクトホールが設けられていて、該コンタクトホール内に埋め込まれて前記下部導電部と上部導電部とを導通させるための、導電材料からなるコンタクトの形成方法であって、前記下部導電部上に前記共振器を形成する工程と、前記共振器にエッチングによってコンタクトホールを形成する工程と、前記コンタクトホールの内壁面を、前記凹凸部の凹部に対する凸部の高さの150%以上の厚みの導電材料によって覆うようにしてコンタクトを形成する工程と、を備えた特徴とする。
【0008】
本発明のコンタクトの形成方法によれば、異なる誘電体層からなる共振器にエッチングによってコンタクトホールを形成するので、このコンタクトホールの内壁面には凹凸部が形成されるようになる。また、コンタクトホールの内壁面を前記凹凸部における凹部に対する凸部の高さの150%以上の厚みの導電材料によって覆うようにしてコンタクトを形成しているので、このコンタクトを形成する導電材料は前記凹凸部の段差に対して十分な膜厚となる。すると、前記凹凸部の段差によって導電材料からなるコンタクトが断線することが防止される。
よって、断線が防止されたコンタクトを介して、前記下部導電部と上部導電部とを良好に導通させるので、これら下部導電部と上部導電部との間における接続信頼性を向上できる。
【0009】
本発明の共振器構造は、下部導電部と上部導電部との間に設けられた共振器とを備えた共振器構造であって、前記コンタクトの形成方法により形成されたコンタクトを有したことを特徴とする。
本発明の共振器構造によれば、前述したように共振器に形成されたコンタクトホールの内壁面に形成された凹凸部の段差による断線を防止したコンタクトを備えているので、このコンタクトを備えた共振器構造は下部導電部と上部導電部との間で接続信頼性が高く、歩留まりが高いものとなる。
【0010】
本発明のEL装置は、前記共振器構造を備えたことを特徴とする。
本発明のEL装置によれば、前述した共振器構造を備えているので、例えば、下部導電部としてドレイン電極、上部導電部として画素電極を用いた場合に、前記ドレイン電極と画素電極とを共振器に形成されたコンタクトを介して良好に導通させるようになる。よって、EL装置を良好に動作させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のコンタクトの形成方法、共振器構造、及び有機EL装置について説明する。
図1は、本発明のコンタクトの形成方法によって得られた共振器構造を備えた有機EL装置(EL装置)を模式的に示した側断面図である。
図1中符号1は、本発明のコンタクト形成方法によって得られた共振器構造、符号100は有機EL装置である。
また、図2は前記共振器構造1の要部拡大図である。図2に示すように、共振器構造1は、後述する有機EL装置のドレイン電極(下部導電部)236と、画素電極(上部導電部)141との間に共振器10を備えている。また、前記共振器10には、後述するエッチングによって前記ドレイン電極236に向かって、その内径を狭めるようなテーパ状のコンタクトホール20が形成されている。また、本実施形態では、このコンタクトホール20の内壁面を前記画素電極141の一部(導電材料)で覆うことで、本発明のコンタクト25を形成している。
また、前記コンタクト25を構成するための導電性材料として、本実施形態では前記画素電極141の材料であるITO(インジウム錫酸化物)を用いたが、前記画素電極141とドレイン電極236との間で導通性が高い導電材料を適宜用いることで、コンタクトを形成して、画素電極141と導通させるようにしてもよい。
このような構成の基に、前記共振器構造1は、前記コンタクト25を介して前記ドレイン電極236と前記画素電極141とを導通させるようになっている。
【0012】
(共振器)
図3は、前記共振器10を模式的に示した図である。なお、図3中においては、コンタクトホール及びコンタクトの図示は省略している。図3に示すように、共振器10は、誘電体積層膜が積層された構造である。本実施形態では、誘電体積層膜の構成として、例えばドレイン電極236側(図2参照)から120nmの膜厚のSiO層10aと、75nmの膜厚のSiNからなるSiN層10bとを1ペアとする膜厚195nmの誘電体積層膜を3ペア積層した上に、再度120nmの膜厚のSiO層10aを形成し、層厚705nmの共振器10を構成している。
また、後述するようにこの共振器10は、SiN層10bとSiO層10aとの屈折率差によって、有機EL装置100が出射した光の発光スペクトルを強めることができるようになっている。
【0013】
(コンタクト)
図4(a)は、前記共振器10に設けられたコンタクトホール20内に形成されたコンタクト25を模式的に示した図である。図4(b)は、コンタクトホール20の内壁面に形成された凹凸部15の拡大図である。
図4(a)に示すように、コンタクト25は、前述したようにコンタクトホール20の内壁面を、画素電極141を構成するための導電材料が覆うことで形成されている。また、コンタクトホール20の内壁面には、本実施形態におけるエッチング条件では、後述するように共振器10を構成する誘電体積層膜間でのエッチング速度の違いから凹凸部15が形成されている。具体的には、SiO層10aにおけるエッチング速度は、この上に積層されたSiN層10bにおけるエッチング速度に比べて低いので、SiO層10aのエッチング量は、SiN層10bのエッチング量より少なくなる。また、本実施形態では、前述したようにドレイン電極236に向かって内径を狭めるテーパ形状のコンタクトホール20となっており、ドレイン電極236上にはエッチング量が少ないSiO層10aが形成されているので、コンタクトホール20のSiO層10aによる内壁面は、図4(a)に示すように前記ドレイン電極236に対して順テーパ形状になっている。よって、前記ドレイン電極236と前記コンタクト25を形成する画素電極141との接触部が、前記SiO層10aによる順テーパ形状に沿ってなめらかに接続されるようになっている。
ここで、図4(b)に示すように、前記コンタクトホール20の内壁面に形成された凹凸部15のSiN層10bからなる凹部に対する、SiO層10aからなる凸部の高さをhとし、以下、凹凸部高さhとする。また、図4(b)に示すように、前記コンタクトホール20の内壁面を覆うようにして形成する本実施形態の導電材料となる画素電極236の一部の厚みをAとし、以下、導電材料厚さAとする。なお、本実施形態においては、前記凹凸部高さhは、同一条件のエッチングを用いていることから各誘電体層の間で同じものとした。このとき、本発明においては、前記凹凸部高さhの150%以上の導電材料厚さAの画素電極141がコンタクトホール20の内壁面に形成されるようにしている。
【0014】
図1に戻り、前記共振器構造1を備えた有機EL装置100について説明する。
図1に示したように、駆動用TFT143は、半導体膜210に形成されたソース領域143a、ドレイン領域143b、及びチャネル領域143cと、半導体層表面に形成されたゲート絶縁膜220を介してチャネル領域143cに対向するゲート電極143Aとを主体として構成されている。半導体膜210及びゲート絶縁膜220を覆う層間絶縁膜230が形成されており、この層間絶縁膜230を貫通して半導体膜210に達するコンタクトホール232,234内に、それぞれドレイン電極236、ソース電極238が埋設され、各々の電極はドレイン領域143b、ソース領域143aに導電接続されている。層間絶縁膜230上には、ソース電極238及びドレイン電極236を覆うようにして前述した共振器10が形成されており、この共振器10に形成されたコンタクトホール20の内壁面に前述したコンタクト25が形成されている。つまり、本発明の有機EL装置100は、一般的な有機EL装置の層間絶縁膜230上に設けられる平坦化絶縁膜の代わりとして、前記共振器10を備えた構造となっている。
【0015】
前述したような共振器構造1を備えることで、画素電極141とドレイン電極236とが共振器10に形成されたコンタクトホール20を介して導通接続されることで、駆動用TFT143と画素電極141(有機EL素子200)とが電気的に接続されている。画素電極141の周縁部に一部乗り上げるようにして無機絶縁材料からなる無機バンク149が形成されている。無機バンク149上には、有機材料からなるバンク150が積層され、この有機EL装置100における隔壁部材を成している。
【0016】
上記有機EL素子200は、画素電極141上に、正孔注入層(電荷輸送層)140Aと発光層140Bとを積層し、この発光層140Bとバンク150とを覆う共通電極154を形成することにより構成されている。
【0017】
基板Pとしては、いわゆるトップエミッション型の有機EL装置の場合、有機EL素子200が配設された側から光を取り出す構成であるので、ガラス等の透明基板のほか、不透明基板も用いることができる。不透明基板としては、例えばアルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、また熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、さらにはそのフィルム(プラスチックフィルム)などが挙げられる。
画素電極141は、基板Pを介して光を取り出すボトムエミッション型の場合には、ITO(インジウム錫酸化物)等の透光性導電材料により形成されるが、トップエミッション型の場合には透光性である必要はなく、金属材料等の適宜な導電材料によって形成できる。
【0018】
陰極154は、発光層140Bとバンク150の上面、さらにはバンク150の側面部を形成する壁面を覆った状態で基板P上に形成される。この陰極154を形成するための材料としては、トップエミッション型の場合、透明導電材料が用いられる。透明導電材料としてはITOが好適であるが、他の透光性導電材料であっても構わない。また、前記陰極154上には、保護膜等からなる封止部(図示せず)を形成し、この封止部の上にカバーとなる基板(図示せず)が形成されている。
【0019】
(コンタクトの形成方法)
次に、前記共振器構造1を備えた有機EL装置100の製造方法に基づいて、前記コンタクト25の形成方法について説明する。なお、以下に示す手順や材料構成は一例であってこれに限定されるものではない。
本発明に係る有機EL装置100では、有機EL素子200の光を基板側から取り出す構成(ボトムエミッション)、及び基板Pと反対側から取り出す構成(トップエミッション)のいずれも採用できるが、本実施形態ではボトムミッション型の有機EL装置100として説明する。
【0020】
まず、図5に示すように、基板P上に駆動用TFT143を形成する。トップエミッション型では、基板は不透明であってもよいため、アルミナ等のセラミックス、ステンレス等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂なども用いることができるが、従来から液晶装置等に用いられているガラス基板であってもよい。
【0021】
上記駆動用TFT143の作製手順は、例えば以下のような工程による。
まず、基板Pに対し、必要に応じてTEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約200〜500nmのシリコン酸化膜からなる下地保護膜(図示せず)を形成しておく。その後、基板温度を350℃程度に設定して基板Pの表面にプラズマCVD法により厚さ約30〜70nmのアモルファスシリコン膜を形成し、公知のフォトリソグラフィ技術を用いてパターニングすることで半導体膜210を形成する。そしてこの半導体膜210を、レーザアニールまたは固相成長法などによる結晶化工程に供することで結晶化してポリシリコン膜とする。レーザアニール法では、例えばエキシマレーザであってビームの長寸が400mmのラインビームを用いることができ、その出力強度は例えば200mJ/cm2である。ラインビームについては、その短寸方向におけるレーザ強度のピーク値の90%に相当する部分が各領域毎に重なるようにラインビームを走査する。
【0022】
次いで、半導体膜210及び基板Pの表面に対して、TEOSや酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約60〜150nmのシリコン酸化膜または窒化膜からなるゲート絶縁膜220を形成する。なお、半導体膜210は、駆動用TFT143のチャネル領域及びソース・ドレイン領域となるものであるが、異なる断面位置においてはスイッチング用TFTのチャネル領域及びソース・ドレイン領域となる半導体膜も形成されている。
【0023】
次に、アルミニウム、タンタル、モリブデン、チタン、タングステンなどの金属膜、ないしこれらの積層膜からなる導電膜をスパッタ法等により形成した後、パターニングすることで、ゲート電極143Aを形成する。続いて、半導体膜210に対して、高濃度のリンイオンを打ち込むことで、ゲート電極143Aに対して自己整合的にソース・ドレイン領域143a、143bを形成する。このとき、ゲート電極143Aにより遮蔽されて不純物が導入されなかった部分がチャネル領域143cとなる。
【0024】
次に、層間絶縁膜230を貫通するコンタクトホール232及び234を形成し、これらコンタクトホール232及び234内にドレイン電極236及びソース電極238を埋め込むように形成し、駆動用TFT143を得る。
【0025】
次に、図5に示すように、前記ソース電極238及びドレイン電極236を覆うようにして、前記層間絶縁膜230上に誘電体積層膜からなる共振器10を形成する。
このような共振器10は、層間絶縁膜230上に最下層として120nmの膜厚となるようにSiOを、例えばCVD法等によってSiO層10aを形成する。そして、このSiO層10a上に、同様にして75nmの膜厚のSiNからなるSiN層10bを形成する。SiO層10aとSiN層10bとを1ペアとする膜厚195nmの誘電体層を3ペア(合計6層)を順次積層し、その上に再度120nmのSiO層10aを積層することで、層厚705nmの誘電体積層膜を形成する。
【0026】
(コンタクトの形成方法)
次に、図6(a)〜(d)を用いて前記コンタクト25の形成方法について説明する。
前記ソース電極238及びドレイン電極236を覆うようにして、前記層間絶縁膜230上に共振器10を形成した後、エッチングを用いて、前記共振器10にコンタクトホール20を形成する。
なお、本実施形態ではドライエッチングを用いて、例えば反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)により前記コンタクトホール20を形成する。
また、炭素を多く含むガス(例えば、C、CH)を添加することでSiN層10b又はSiO層10aとドレイン電極236との間で選択比を、例えば5以上取るようにした。また、側壁保護膜の堆積速度とエッチング速度を調節することでドレイン電極236に向かってその内径を狭めるようなテーパ形状のコンタクトホール20を形成する。
【0027】
このようにドレイン電極236と共振器10との間で選択比を取るようなエッチングによって、コンタクトホール20を形成する場合に、前記共振器10は、前述したように異なる誘電体層であるSiN層10bとSiO層10aとが積層されて構成されているので、本実施形態におけるエッチング条件では、SiN層10bとSiO層10aとのエッチング速度の比がSiN/SiO=10/8となる。
【0028】
よって、図6(a)に示すように、前記共振器10にテーパ形状のコンタクトホール20を形成していく。このとき、エッチング速度の比がSiN/SiO=10/8となっているので、SiO層10aはSiN層10bに比べてエッチング速度が低いのでエッチング量が少なくなる。よって、図6(b)に示すようにコンタクトホール20の内壁面には、凹凸部15によって、凹部と凸部の間に凹凸部高さhの段差が生じている。同様にして、図6(c)に示すように、共振器10をドレイン電極236まで貫通するコンタクトホール20を形成する。
このとき、共振器10を構成している誘電体積層膜の最下層は、SiO層10aであるので、エッチング量は積層のペアとなるSiN層10bに比べて小さくなる。したがって、前記SiO層10aは、前記SiN層10bに対して庇状(凸状)となっている。また、本実施形態では、コンタクトホール20の最下層の側壁面がテーパ形状になる。
【0029】
次に、導電性材料をスパッタ法や蒸着法によって堆積し、前記コンタクトホール20の内壁面を導電性材料で覆うことにより、コンタクト25を形成する。前述したように、本実施形態においては、前記コンタクト25を画素電極141の一部によって形成するようにしている。
そこで、公知のフォトリソグラフィ技術やパターニング技術を用いることで、図6(dに示すようにコンタクトホール20の内壁面を覆う画素電極141を形成する。
このとき、前述したように、エッチング速度の違いからSiO層10aはSiN層10bに対して庇状(凸状)となっているので、画素電極141の膜厚が薄い場合にはコンタクトホール20の内壁面で、前記凹凸部15の凹凸部高さhによる段差でコンタクトホール20の内壁面を覆う画素電極141に断線が生じるおそれがある。
本実施形態では、50nmの凹凸部高さhが生じているコンタクトホール20の内壁面に、導電材料厚みAが75nmの画素電極236によってコンタクト25を形成した。このとき、コンタクトホール20内の凹凸部15の段差によるコンタクト25の断線は、発生しなかった。なお、画素電極236の厚みは大きいほど好ましいが、凹凸部高さhの150%以上の導電材料厚みAのコンタクト25を形成すれば、凹凸部15の段差による断線が防止できる。
【0030】
したがって、本発明のコンタクト25の形成方法では、図4(b)を用いて説明したように、コンタクトホール20の内壁面を凹凸部15における凹部に対する凸部の高さの凹凸部高さhの150%以上の導電材料厚みAの画素電極141によって覆うようにしてコンタクト25を形成している。よって、このコンタクト15を形成する画素電極141は前記凹凸部高さAによって生じる段差に対して十分な膜厚とすることができる。したがって、前記凹凸部15による段差によって生じる画素電極141の断線を防止することができる。
よって、このコンタクト25を介して、前記ドレイン電極236と画素電極141とを導通させるので、これら電極間での断線を防止することで接続信頼性を向上できる。
また、本実施形態では、コンタクトホール20の最下層における内壁面がテーパ形状となっているので、前記コンタクト25を構成する前記画素電極141の一部が前記テーパ形状によって、ドレイン電極236とコンタクト25との境界で滑らかに接続されることで密着性が高まり、歩留まりを向上できる。
以上の工程により、共振器10に形成したコンタクトホール20内にコンタクト25を形成することができ、本発明の共振器構造1が得られた。
本発明の共振器構造1によれば、前述したように凹凸部の段差による断線を防止したコンタクト25を備えているので、このコンタクト25を備えた共振器構造1はドレイン電極236と画素電極141との間で接続信頼性が高く、歩留まりが向上することができる。
【0031】
図7(a)〜(d)を用いて、前記共振器構造1を備えた有機EL装置100の形成方法の続きを説明する。
図7(a)に示すように、前記画素電極141は、コンタクト25を介してドレイン電極236に接続し、このドレイン電極236を介して駆動用TFT143のドレイン領域143aと導電接続された画素電極141が形成されている。
【0032】
尚、この画素電極141の形成に先立って、共振器10の表面を清浄化する処理(例えば酸素プラズマ処理、UV照射処理、オゾン処理等)を施しておいてもよい。これにより、画素電極141と共振器10との密着性を向上させることができる。
【0033】
次に、図7(b)に示すように、画素電極141の周縁部と一部平面的に重なるように、酸化シリコン等の無機絶縁材料からなる無機バンク149を形成する。
具体的には、画素電極141及び共振器10を覆うように酸化シリコン膜を形成した後、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて酸化シリコン膜をパターニングし、画素電極141の表面を部分的に開口させることで形成できる。
【0034】
次に、図7(c)に示すように、無機バンク149上に、アクリル、ポリイミド等の有機絶縁材料からなるバンク150を形成する。バンク150の高さは、例えば1〜2μm程度に設定され、基板P上で有機EL素子の仕切部材として機能する。このような構成のもと、有機EL素子の正孔注入層や発光層の形成場所、すなわちこれらの形成材料の塗布位置とその周囲のバンク150との間に十分な高さの段差からなる開口部151が形成される。
また、このバンク150を形成するに際しては、バンク150の開口部151の壁面を、無機バンク149の開口部149bから若干外側へ後退させて形成するのがよい。このようにバンク150の開口部151内に無機バンク149を一部露出させておくことで、バンク150内での液体材料の濡れ広がりを良好なものとすることができる。
【0035】
バンク150を形成したならば、次に、バンク150及び画素電極141を含む基体上の領域に対して撥液処理を施す。バンク150は、有機EL素子を区画する仕切部材として機能するので、液滴吐出ヘッド20から吐出される液体材料に対して非親和性(撥液性)を示すものであることが好ましく、前記撥液処理により、バンク150に選択的に非親和性を発現させることができる。
係る撥液処理として、例えばバンクの表面をフッ素系化合物などで表面処理するといった方法を採用できる。フッ素化合物としては、例えばCF、SF、CHFなどがあり、表面処理としては、例えばプラズマ処理、UV照射処理などが挙げられる。
【0036】
次に、基板Pの上面を上に向けた状態で正孔注入層形成材料を含む液体材料を、例えば液滴吐出法によってバンク150に囲まれた塗布位置に選択的に塗布する。
【0037】
正孔注入層形成材料としては、ポリマー前駆体がポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N,N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム、バイトロンP、ポリスチレンスルフォン酸等を例示することができる。また、溶媒としては、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリノン等の極性溶媒を例示することができる。
【0038】
上述した正孔注入層形成材料を含む液体材料が液滴吐出法によって基板P上に吐出されると、流動性が高いため水平方向に広がろうとするが、塗布された位置を囲んでバンク150が形成されているので、液体材料はバンク150を越えてその外側に広がらないようになっている。
【0039】
続いて、加熱あるいは光照射により液体材料114aの溶媒を蒸発させて画素電極141上に固形の正孔注入層140Aを形成する。または、大気環境下又は窒素ガス雰囲気下において所定温度及び時間(一例として200℃、10分)焼成するようにしてもよい。あるいは大気圧より低い圧力環境下(真空環境下)に配置することで溶媒を除去するようにしてもよい。
【0040】
続いて、基板Pの上面を上に向けた状態で発光層形成材料と溶媒とを含む液体材料をバンク150内の正孔注入層140A上に液滴吐出法によって、発光層140Bを形成する。これにより、これにより正孔注入層140Aと発光層140Bとからなる有機機能層140が得られる。そして、この有機機能層140上に、例えば蒸着法を利用することで陰極154を形成する。また、陰極154を覆うようにして、保護膜等からなる封止部(図示せず)を形成し、この封止部の上にカバーとなる基板(図示せず)を形成することで有機EL装置100が完成する。
このような工程の基に、共振器構造1と画素電極および正孔注入層や発光層のと屈折率差と最適化した膜厚から最適な構造の共振機能とを備えた有機EL装置100を得る事ができる。
なお、本実施形態においては、有機EL素子を備えたEL装置について説明したが、本発明の共振器構造1を備えた無機EL素子からなるEL装置についても同様である。
また、本実施形態においては、コンタクトホール20の形状をドレイン電極236に向かってその内径を狭めるようなテーパ形状としたが、コンタクトホール20の形状がテーパ形状でない場合についても、同様に接続信頼性のあるコンタクトを得ることができる。
また、共振器20を構成する誘電体層の最下層の側壁形状が庇状になる場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、コンタクト25を形成する導電材料の厚みが凹凸部高さhの150%以上であれば、誘電体層の最下層が凹部となることで側壁形状が庇状の逆テーパになる場合でもコンタクト25の断線を防止することができる。
【0041】
本発明の有機EL装置100によれば、コンタクトホール20の凹凸部15による断線を防止して、画素電極141とドレイン電極236とを接続させるコンタクト25を有した共振器構造1を備えているので、有機EL装置100を良好に動作させることができる。また、共振器10を備えているので、有機EL素子200が発光する光を強めることができる。
【0042】
なお、本発明の有機EL装置100を、例えばラインヘッドプリンタの画像形装置の露光手段として、ラインヘッドの発光素子に用いるようにしてもよい。このようにすれば、前記有機EL装置100は、画素電極141とドレイン電極236との断線を防止して、良好に動作させることで、正確な露光が可能となる。
また、前記有機EL装置200は、共振器10を備えているので、有機EL素子200が発光した光を効率的に利用することができ、画像形成装置の感光体ドラムなどを効率的に露光することができ、高精細な印字を得ることができる。
また、本発明の有機EL装置100を、携帯電話等の電子機器の表示部に用いるようにしてもよい。このようにすれば、これを備えた携帯電話の歩留まりを向上でき、また良好な表示を得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の有機EL装置を示す側断面図。
【図2】本発明の共振器構造を示す側断面図。
【図3】本発明の共振器の構造を示す側断面図。
【図4】(a)はコンタクトの側断面図、(b)は凹凸部高さを示す図。
【図5】本発明の有機EL装置の途中製造工程を示す図。
【図6】(a)〜(d)は、本発明のコンタクトの形成方法の工程説明図。
【図7】(a)〜(d)は、本発明の有機EL装置の製造方法の工程説明図。
【符号の説明】
【0044】
1…共振器構造、10…共振器、10a…SiO層、
10b…SiN層(第1の誘電体層)、15…凹凸部、20…コンタクトホール、
25…コンタクト、141…画素電極(上部導電部)、
200…有機EL装置(EL装置)、236…ドレイン電極(下部導電部)、
h…凹凸部高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部導電部と上部導電部との間に設けられた、異なる誘電体層が複数積層されてなる共振器に、エッチングによって内壁面に凹凸部のあるコンタクトホールを設けて、該コンタクトホールの内壁面を覆う、前記下部導電部と上部導電部とを導通させるための、導電材料からなるコンタクトの形成方法であって、
前記下部導電部上に前記共振器を形成する工程と、
前記共振器にエッチングによってコンタクトホールを形成する工程と、
前記コンタクトホールの内壁面を、前記凹凸部の凹部に対する凸部の高さの150%以上の厚みの導電材料によって覆うようにしてコンタクトを形成する工程と、
を備えたことを特徴とするコンタクトの形成方法。
【請求項2】
下部導電部と上部導電部との間に設けられた共振器を備えた共振器構造であって、請求項1に記載のコンタクトの形成方法により形成されたコンタクトを有したことを特徴とする共振器構造。
【請求項3】
請求項2に記載の共振器構造を備えたことを特徴とするEL装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−147218(P2006−147218A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332747(P2004−332747)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】