説明

コンバインの姿勢安定装置

【課題】コンバインの走行フレーム上の重量変化を検出して実際に走行フレームが傾く前にバランス装置を作動させて機体の重心位置が変化しないようにすることで、機体の前後左右の水平を維持して、脱穀装置の選別性能を良好に維持する。
【解決手段】コンバインの走行フレーム(1)上に備えたグレンタンク(2)との機体中心対称位置に、二次元的に移動可能なバランスウエイト(3)を備えたバランス装置(4)を設け、グレンタンク(2)内に設ける穀粒センサ(S1,S2,S3,S4)の穀粒溜まり具合の検出結果に基づいて、グレンタンク(2)内の穀粒が増加しても機体全体の重心位置が変化しないように前記バランス装置(4)を作動させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫した穀粒を貯留するグレンタンクを有するコンバインの姿勢安定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインは、機体が傾くと脱穀装置の選別性能が悪くなるために、走行時の機体バランスの崩れを修正するコンバインの姿勢安定装置を設ける。この姿勢安定装置は、例えば、下記特許文献1に記載されている。
【0003】
このコンバインの姿勢安定装置は、走行フレームの左右に設けるクローラ走行装置を装着するトラックフレームを昇降可能にすると共に走行フレーム側のトラックフレーム昇降部材の支持部を走行フレームに対して前後動可能にしている。そして、走行フレームに設けた左右水平センサの傾斜検出でトラックフレーム昇降部材を昇降して左右の傾きを修正し、走行フレームに設けた前後傾斜センサの傾斜検出でトラックフレーム昇降部材の支持部を前後に移動して機体のバランス崩れを修正するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−169368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のコンバインの姿勢安定装置は、前記の如く、走行フレームの適所に設けた左右水平センサと前後傾斜センサの傾き検出によって走行フレームの傾きを修正するものであるために、走行フレームがある程度傾いた後に水平に戻す動きが有って、一時的に脱穀装置の選別性能が悪くなる。
【0006】
そこで、本発明は、コンバインにおいて、走行フレーム上の重量変化を検出して実際に走行フレームが傾く前にバランス装置を作動させて機体の重心位置が変化しないようにすることで、機体の前後左右の水平を維持して、脱穀装置の選別性能を良好に維持することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、コンバインの走行フレーム(1)上に備えたグレンタンク(2)との機体中心対称位置に、二次元的に移動可能なバランスウエイト(3)を備えたバランス装置(4)を設け、グレンタンク(2)内に設ける穀粒センサ(S1,S2,S3,S4)の穀粒溜まり具合の検出結果に基づいて、グレンタンク(2)内の穀粒が増加しても機体全体の重心位置が変化しないように前記バランス装置(4)を作動させる構成としたことを特徴とするコンバインの姿勢安定装置とした。
【0008】
この構成で、穀粒センサ(S1,S2,S3,S4)がグレンタンク(2)に収穫した穀粒が溜まってくるのを検出して、機体全体の重心位置が変化しないようにバランス装置(4)のバランスウエイト(3)を移動することで、機体のバランス崩れを防ぐ。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記穀粒センサ(S1,S2,S3,S4)をグレンタンク(2)に溜まった穀粒の重量を検出する複数の重量センサとしたことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの姿勢安定装置とした。
【0010】
この構成で、グレンタンク(2)への穀粒の溜まり具合を重量変化で検出する。
請求項3に記載の発明は、前記穀粒センサ(S1,S2,S3,S4)をグレンタンク(2)内に上下方向に配置した複数の接触センサとしたことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの姿勢安定装置とした。
【0011】
この構成で、グレンタンク(2)への穀粒の溜まり具合を複数の接触センサに穀粒が接触することで検出する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜3記載の発明によると、走行フレーム(1)が傾く前にグレンタンク(2)の穀粒溜まり具合によって機体全体の重量バランス変化を予測してバランス装置(4)を作動させるので、機体が傾くことなく、脱穀装置の選別性能を良好に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例を示すコンバインの一部破断側面図である。
【図2】コンバインの一部破断平面図である。
【図3】バランス装置の第一実施例の斜視図である。
【図4】グレンタンク内のセンサ配置の第一実施例を示す斜視図である。
【図5】(a),(b),(c)第一実施例のセンサ配置によるバランスウエイトの移動位置を示す平面図である。
【図6】バランス装置の第二実施例の斜視図である。
【図7】(a),(b),(c),(d)第二実施例のバランスウエイトの第一実施例センサ配置による移動位置を示す平面図である。
【図8】センサ配置の第二実施例を示すコンバインの側面図である。
【図9】距離センサ取付の第一実施例を示すコンバインの一部平面図である。
【図10】距離センサ取付部の拡大平面図である。
【図11】距離センサ取付の第二実施例を示すコンバインの平面図である。
【図12】距離センサ取付の第二実施例を示すコンバインの側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。なお、以下の説明で、前後左右とはコンバインに登場した作業者からみた方向で、機体を前方へ走行して収穫作業を行う。
【0015】
本発明のコンバインの基本構成は、従来技術と同じで、クローラベルトを前後方向に張架したクローラ走行装置5を走行フレーム1の下部左右に装着し、走行フレーム1上の左側に脱穀装置7を搭載し、右前側に作業者が搭乗して操縦操作を行う操縦部6を設け、その後部に脱穀装置7から排出される収穫穀粒を貯留するグレンタンク2を搭載している。脱穀装置7の後部にはカッター9を装着し、グレンタンク2の後部から上方へ揚穀筒を立ち上げてその上端から前方へ伸ばして穀粒排出用のオーガ10を設けている。
【0016】
走行フレーム1の前側には、刈取搬送装置8を走行フレーム1上に設ける枢支軸11でその前端を昇降可能に装着している。
走行フレーム1の脱穀装置7下部には、バランス装置4を設けている。このバランス装置4は、前後に配置する二個のバランスウエイト3a,3bを二次元的に移動させるもので、前後のバランスウエイト3a,3bの取付構造は同一である。
【0017】
前側のバランスウエイト3aの取付構造を説明すると、左右支持枠12R,12L間に横架するガイド杆14と駆動軸13にバランスウエイト3aを取り付け、左右支持枠12R,12Lが左右レール15R,15Lに沿って前後に移動可能で、駆動軸13の軸端に固着のモータ19aで駆動軸13を回転してバランスウエイト3aを左右に移動する。
【0018】
前後のモータ19a,19bは、走行フレーム1に取り付けた支持ブラケット17との間にそれぞれ油圧シリンダ18F,18Rを取り付け、油圧シリンダ18F,18Rの伸縮で左右支持枠12R,12Lと共に前後バランスウエイト3a,3bをそれぞれ前後に移動可能である。
【0019】
図4は、グレンタンク2内の底部に設ける穀粒センサS1,S2,S3,S4としての重量センサの配置を示し、前側左に設ける前左重量センサS2と前側右に設ける前右重量センサS1と後側左に設ける後左重量センサS4と後側右に設ける後右重量センサS3で構成している。
【0020】
各重量センサS1,S2,S3,S4は、所定重量以上を検出するとオン信号を出力し、オン信号によって図5の(a)、(b)、(c)の位置にバランスウエイト3a,3bを移動してグレンタンク2に溜まる穀粒の重量変化に対応して機体の重心位置が変化即ち重量バランスが崩れないようにして脱穀装置7内の選別部の選別性能を良好に維持する。
【0021】
ちなみに、図5(a)は全ての重量センサS1,S2,S3,S4がオフの場合のバランスウエイト3a,3bの位置を示し、図5(b)は前右重量センサS1と前左重量センサS2がオンで後右重量センサS3と後左重量センサS4がオフの場合のバランスウエイト3a,3bの位置を示し、図5(c)は全ての重量センサS1,S2,S3,S4がオンの場合のバランスウエイト3a,3bの位置を示している。
【0022】
図6は、バランス装置4の第二実施例を示し、左右支持枠12R,12Lを走行フレーム1に固定して、バランスウエイト3a,3bが左右に移動するのみである。
図7(a)は、バランス装置4の第二実施例において、全ての重量センサS1,S2,S3,S4がオフの場合のバランスウエイト3a,3bの位置を示し、図7(b)は前右重量センサS1のみがオンで前左重量センサS2と後右重量センサS3と後左重量センサS4がオフの場合のバランスウエイト3a,3bの位置を示し、図7(c)は前右重量センサS1と前左重量センサS2がオンで後右重量センサS3と後左重量センサS4がオフの場合のバランスウエイト3a,3bの位置を示し、図7(d)は全ての重量センサS1,S2,S3,S4がオンの場合のバランスウエイト3a,3bの位置を示している。
【0023】
図8は、穀粒センサS1,S2,S3,S4を接触センサとして、グレンタンク2の上下方向に等間隔で複数の接触センサS1,S2,S3,S4を設けて、穀粒の溜まり位置を検出して事前に制御装置に入力した溜まり位置と重心位置のデータを利用して油圧シリンダ18F,18Rとモータ19a,19bを制御してバランスウエイト3a,3bを移動させるようにする。
【0024】
また、グレンタンク2内でなく、走行フレーム1の四隅に重量検出センサを設け、各重量検出センサの検出する重量から重心位置を算出し、この算出重心位置が変動しないようにバランスウエイト3a,3bを移動させることも出来る。
【0025】
図9は、刈取搬送装置8の右先端に設ける分草杆20の前面に前方に向かってフロント距離センサFSを複数個縦に設け、分草杆20の右側面に側方に向かってサイド距離センサSSを複数個横に設けている。
【0026】
フロント距離センサFSは機体の前方向の畔等の障害物や圃場に傾斜を検出し、障害物や圃場面の上り傾斜を検出すると、警報を表示或いは鳴らしたり自動的に減速停止したり後進させたり圃場面の上り傾斜に沿わせるように刈取搬送装置8の前を上昇させたりするように制御する。サイド距離センサSSは機体右側部の畔を検出して近づき過ぎを警報する。
【0027】
なお、機体前方の障害物検出は、オーガ10の先端に下方へ向けてオーガ距離センサDSを設けて、図10の如くオーガ10を横振りしたり前後に伸縮したりして機体前方の障害物を検出して適宜の制御を行うようにすることも出来る。
【0028】
また、オーガ距離センサDSの代わりにCCDカメラをオーガ10の先端に取り付けて、機体前方の圃場面を映して操縦部6の作業者がその圃場面画像を見ながら刈取搬送装置8を昇降操作するようにすることも出来る。
【符号の説明】
【0029】
1 走行フレーム
2 グレンタンク
3a バランスウエイト
3b バランスウエイト
4 バランス装置
S1 穀粒センサ
S2 穀粒センサ
S3 穀粒センサ
S4 穀粒センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバインの走行フレーム(1)上に備えたグレンタンク(2)との機体中心対称位置に、二次元的に移動可能なバランスウエイト(3)を備えたバランス装置(4)を設け、グレンタンク(2)内に設ける穀粒センサ(S1,S2,S3,S4)の穀粒溜まり具合の検出結果に基づいて、グレンタンク(2)内の穀粒が増加しても機体全体の重心位置が変化しないように前記バランス装置(4)を作動させる構成としたことを特徴とするコンバインの姿勢安定装置。
【請求項2】
前記穀粒センサ(S1,S2,S3,S4)をグレンタンク(2)に溜まった穀粒の重量を検出する複数の重量センサとしたことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの姿勢安定装置。
【請求項3】
前記穀粒センサ(S1,S2,S3,S4)をグレンタンク(2)内に上下方向に配置した複数の接触センサとしたことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの姿勢安定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−135792(P2011−135792A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296492(P2009−296492)
【出願日】平成21年12月26日(2009.12.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】