説明

コンバインの走行制御装置

【課題】枕地での旋回の際にも脱穀装置を適正に駆動し、しかも、枕地での旋回を走行用の駆動力の不足を避けた状態で適切に行えるコンバインの走行制御装置を提供する。
【解決手段】走行用の静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mにおける容量変更用の操作部7Maを設定目標位置に維持させるように、その操作部7Maが低速側に移動するのを高速側に移動操作する操作力にて保持する保持手段56の操作力を変更調整する操作力調整手段58作動を制御する操作力調整処理を実行する制御手段79が、刈取作業状態検出手段Uにて刈取作業状態から非刈取作業状態切り換ったことが検出されたのちにおいては、操作部7Maが設定目標位置よりも低速側に移動しても、刈取処理直後用の設定上限値を超えて保持手段56の操作力を増加させない形態にて操作力調整手段58の作動を制御する刈取処理直後用の操作力調整処理を実行するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取処理部、脱穀装置及び走行用の静油圧式無段変速装置に対してエンジンの動力が伝達されるように構成されたコンバインの走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
刈取処理部、脱穀装置及び走行用の静油圧式無段変速装置に対してエンジンの動力が伝達されるように構成されたコンバインの走行制御装置の従来例として、静油圧式無段変速装置の可変容量型の油圧ポンプが、変速レバーにより変速操作されるように構成され、さらに、変速レバーを操作する電動モータ、エンジンの回転速度を検出する回転速度検出センサー、電動モータの作動を制御する制御装置が備えられ、制御装置が、エンジンの回転速度の低下により、エンジン負荷が増大したと判別すると、電動モータにより変速レバーを低速側に操作するように構成されたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−159487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のコンバインの走行制御装置は、エンジン負荷が増大すると、走行速度を低下させて、エンジン負荷を軽減させるものであるが、次のような不都合があった。
即ち、従来のコンバインの走行制御装置は、エンジン負荷が増大して、エンジンの回転速度が低下したのちに、走行速度を低下させてエンジン負荷を軽減させるものであり、エンジンの回転速度の低下により脱穀装置の駆動速度も低下するため、脱穀装置を適切な駆動速度にて駆動し続けることができない虞があった。
また、静油圧式無段変速装置の可変容量型の油圧ポンプを低速側に操作することは、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプの吐出量を少なくすることなので、機体の走行速度が低速になると同時に、走行用の駆動力(トルク)も小さくなることになり、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプを低速側に操作すると、走行用の駆動力(トルク)が不足する状態になる虞があり、特に、枕地での旋回においてその不都合が顕著になる虞があった。
【0005】
説明を加えると、刈取処理作業を行うときのコンバインVの走行形態としては、図13に示す回り刈り走行形態を用いることが多い。つまり、回り刈り走行形態は、圃場の穀稈群Wを刈取処理しながら直進状態又はそれに近い状態で一つの作業行程を走行して、穀稈群Wの存在箇所から枕地Zに走行し、そして、枕地Zに走行したのちにおいては、次の作業行程が位置する側に向けて90度向きを変更するように旋回し、旋回後は次の作業行程の存在箇所に向けて枕地を直進状態又はそれに近い状態で走行し、次の作業行程に対応する箇所において、次の作業行程の始端側に向けて90度向きを変更するように旋回し、その旋回後は次の作業行程の始端側に向けて直進状態又はそれに近い状態で走行する形態であり、刈取処理作業を行うときには、このような回り刈り走行形態が一般に用いられることになる。
【0006】
このような回り刈り走行形態にて刈取処理作業を行う際において、コンバインが穀稈群の存在箇所から枕地に走行した刈取処理直後においては、刈取処理部を駆動する負荷はないものの、脱穀装置を駆動する負荷と走行負荷とがエンジンに作用することになる。そして、刈取処理直後においては、脱穀装置内には処理物が多量に残存する状態にあるため、脱穀装置を駆動する負荷は大きな負荷である。また、走行負荷は旋回の際には直進状態よりも大きな負荷となるものである。
【0007】
このため、上述の如く、コンバインが穀稈群の存在箇所から枕地に走行して、枕地において次の作業行程が位置する側に向けて旋回するときには、脱穀装置を駆動する大きな負荷と、旋回のための大きな走行負荷とがエンジンに作用することになり、エンジンの回転速度が大幅に低下する状態となる虞がある。そして、エンジンの回転速度が大幅に低下すると、脱穀装置の駆動速度が適正な駆動速度よりも大幅に低下して、扱き処理や選別処理を良好に行えない不都合を招くものとなる。
【0008】
また、枕地での旋回は90度向きを変更するように急旋回を行うものであり、大きな走行用の駆動力(トルク)を得られることが望まれるものとなるが、上述の如く、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプの吐出量が少なくなって、走行用の駆動力(トルク)も小さくなるため、枕地での急旋回を適切に行いない虞があった。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、枕地での旋回の際にも脱穀装置を適正に駆動し、しかも、枕地での旋回を走行用の駆動力(トルク)の不足を避けた状態で適切に行えるコンバインの走行制御装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、刈取処理部、脱穀装置及び走行用の静油圧式無段変速装置に対してエンジンの動力が伝達されるように構成されたコンバインの走行制御装置であって、その第1特徴構成は、
前記静油圧式無段変速装置の可変容量型の油圧モータにおける容量変更用の操作部が設定目標位置から低速側に移動するのを高速側に移動操作する操作力にて保持する保持手段と、
前記保持手段の操作力を変更調整する操作力調整手段と、
前記操作部の位置を検出する位置検出手段と、
刈取作業状態であるか否かを検出する刈取作業状態検出手段と、
前記位置検出手段の検出情報に基づいて、前記操作部を設定目標位置に維持させるように前記操作力調整手段の作動を制御する操作力調整処理を実行する制御手段が設けられ、
前記制御手段が、前記刈取作業状態検出手段にて前記刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちにおいては、前記操作力調整処理として、前記操作部が前記設定目標位置よりも低速側に移動しても、刈取処理直後用の設定上限値を超えて前記保持手段の操作力を増加させない形態にて前記操作力調整手段の作動を制御する刈取処理直後用の操作力調整処理を実行するように構成されている点にある。
【0011】
すなわち、静油圧式無段変速装置における可変容量型の油圧モータにおける容量変更用の操作部が、走行負荷により、設定目標位置から低速側に移動しようとするが、保持手段が、操作部が設定目標位置から低速側に移動するのを高速側に移動操作する操作力にて保持することになる。
そして、制御手段が、操作部の位置を検出する位置検出手段の検出情報に基づいて、操作部を設定目標位置に維持させるように、保持手段の操作力を変更調整する操作力調整手段の作動の制御することにより、走行負荷が増減しても、操作部が設定目標位置に維持されることになる。
また、制御手段が、刈取作業状態検出手段にて刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちにおいては、操作部が設定目標位置よりも低速側に移動しても、刈取処理直後用の設定上限値を超えて保持手段の操作力を増加させない形態で操作力調整手段の作動を制御することになるため、枕地での旋回によって走行負荷が増加して、保持手段の操作力を設定上限値にまで増加させた状態において、さらに走行負荷が増加すると、操作部が低速側に移動することになり、可変容量型の油圧モータの回転速度が、操作部を設定目標位置に位置させるときの回転速度よりも低速側に操作されて、エンジンの負荷を軽減させることになる。
【0012】
このように、走行負荷が増大したときに、静油圧式無段変速装置の油圧モータを低速側に操作することを、制御手段が、操作部が設定目標位置よりも低速側に移動しても、設定上限値を超えて保持手段の操作力を増加させない形態で操作力調整手段の作動を制御することにより行うものであるから、旋回により走行負荷が増加しても、エンジンの回転速度が低下する前に又は大きく低下する前に、静油圧式無段変速装置の油圧モータの回転速度を、操作部を設定目標位置に位置させるときの回転速度よりも低速側に操作して、走行負荷を軽減できるものとなり、走行負荷のために、エンジン回転速度が低下することを抑制できるものとなる。
【0013】
さらに、走行負荷が増大したときに、静油圧式無段変速装置の油圧モータを低速側に操作することを、制御手段が、操作部が設定目標位置よりも低速側に移動しても、設定上限値を超えて保持手段の操作力を増加させない形態で操作力調整手段の作動を制御することにより行うものであるため、急激に走行負荷が増加しても、エンジンに大きな負荷が掛からないようにすることを、的確に行うことができるものとなる。
つまり、走行負荷が増大したときに、静油圧式無段変速装置の油圧モータを低速側に操作する構成としては、例えば、油圧モータの駆動トルクを検出するトルク検出手段の検出情報に基づいて、操作部を低速側に操作するアクチュエータを作動させるようにすることが考えられるが、駆動トルクを検出してアクチュエータを作動させるには、応答遅れが生じるものとなる。
これに対して、本第1特徴構成によれば、制御手段が、操作部が設定目標位置よりも低速側に移動しても、設定上限値を超えて保持手段の操作力を増加させない形態で操作力調整手段の作動を制御することにより、走行負荷が増加したときに、特別な操作を行うことなしに、可変容量型の油圧モータの回転速度を低速側にするものであるから、応答遅れを生じることなく、走行負荷が増大したときに、静油圧式無段変速装置の油圧モータを低速側に操作することを的確に行えるものであり、旋回により走行負荷が急激に増加する状態にあるときにも、応答遅れ無く的確に油圧モータの回転速度を低速側に操作して、エンジンに大きな負荷が掛からないようにすることができるものとなる。
【0014】
また、静油圧式無段変速装置の油圧モータの回転速度を、操作部を設定目標位置に位置させるときの回転速度よりも低速側に操作することは、静油圧式無段変速装置における可変容量型の油圧モータの容量を小さなものにすることなので、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプから油圧モータに作動油が十分に供給されても、静油圧式無段変速装置の油圧モータはあまり回転しなくてもよいことになる。これにより、静油圧式無段変速装置の油圧モータが低速側に操作された場合、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプの吐出量が確保されていれば、静油圧式無段変速装置の油圧モータから伝動下手側に、十分な走行用の駆動力(トルク)を備えた低速の動力が伝達されることになる。
【0015】
以上の通り、走行負荷が増大すると、静油圧式無段変速装置の油圧モータが低速側に操作されることにより、エンジンに作用する負荷を軽減させてエンジンの回転速度が低下することを抑制し、しかも、十分な走行用の駆動力(トルク)を備えた低速の動力が走行装置に伝達されるようにすることができるので、コンバインが穀稈群の存在箇所から枕地に走行して、枕地において次の作業行程が位置する側に向けて旋回するときに、エンジンの回転速度が低下することを抑制でき、しかも、旋回のための走行用の駆動力(トルク)が不足することを避けることができるものとなる。
そして、旋回のときにもエンジンの回転速度が低下することを抑制できるため、脱穀装置を適正な駆動速度にて駆動し続けることができるものとなる。
【0016】
したがって、本発明の第1特徴構成によれば、枕地での旋回の際にも脱穀装置を適正に駆動し、しかも、枕地での旋回を走行用の駆動力(トルク)の不足を避けた状態で適切に行えるコンバインの走行制御装置を提供できる。
【0017】
本発明の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
旋回状態であるか否かを検出する旋回状態検出手段が設けられ、
前記制御手段が、前記刈取作業状態検出手段にて前記刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちであって、前記旋回状態検出手段にて旋回状態であることが検出されたときに、前記刈取処理直後用の操作力調整処理を実行し、前記刈取作業状態検出手段にて前記刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちであっても、前記旋回状態検出手段にて旋回状態であることが検出されないときには、前記操作力調整処理として、前記刈取処理直後用の設定上限値を超えて前記保持手段の操作力を増加させる形態で前記操作力調整手段の作動を制御する通常走行用の操作力調整処理を実行するように構成されている点にある。
【0018】
すなわち、制御手段が、刈取作業状態検出手段にて記刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちであって、旋回状態検出手段にて旋回状態であることが検出されたときには、操作部が設定目標位置よりも低速側に移動しても、刈取処理直後用の設定上限値を超えて保持手段の操作力を増加させない形態で操作力調整手段の作動を制御する刈取処理直後用の操作力調整処理を実行することになる。
そして、制御手段が、刈取作業状態検出手段にて前記刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちであっても、旋回状態検出手段にて旋回状態であることが検出されないときには、刈取処理直後用の設定上限値を超えて保持手段の操作力を増加させる形態で操作力調整手段の作動を制御する通常走行用の操作力調整処理を実行することになる。
【0019】
このように、刈取作業状態検出手段にて前記刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちであっても、旋回状態検出手段にて旋回状態であることが検出されないときには、刈取処理直後用の設定上限値を超えて保持手段の操作力を増加させる形態で操作力調整手段の作動を制御する通常走行用の操作力調整処理が行われるものとなるから、旋回により大きな走行負荷が発生して、エンジンに大きな負荷が作用する状態が起こらない場合には、不必要に刈取処理直後用の操作力調整処理を実行しないようにして、走行速度が不必要に低速になることを抑制できるものとなる。
【0020】
したがって、第2特徴構成によれば、上記第1特徴構成による作用効果に加えて、走行速度が不必要に低速になることを抑制できるコンバインの走行制御装置を提供できる。
【0021】
本発明の第3特徴構成は、上記第2特徴構成に加えて、
前記制御手段が、前記刈取作業状態検出手段にて前記刈取作業状態から非刈取作業状態切り換ったことが検出されたのちであって、切り換ったことが検出されてから設定時間が経過するまでの間に、前記旋回状態検出手段にて旋回状態であることが検出されたときに、前記刈取処理直後用の操作力調整処理を実行し、前記刈取作業状態検出手段にて前記刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちであっても、切り換ったことが検出されてから前記設定時間が経過するまでの間に、前記旋回状態検出手段にて旋回状態であることが検出されないときには、前記操作力調整処理として、前記刈取処理直後用の設定上限値を超えて前記保持手段の操作力を増加させる形態で前記操作力調整手段の作動を制御する通常走行用の操作力調整処理を実行するように構成されている点にある。
【0022】
すなわち、制御手段が、刈取作業状態検出手段にて記刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちであって、切り換ったことが検出されてから設定時間が経過するまでの間に、旋回状態検出手段にて旋回状態であることが検出されたときには、操作部が設定目標位置よりも低速側に移動しても、刈取処理直後用の設定上限値を超えて保持手段の操作力を増加させない形態で操作力調整手段の作動を制御する刈取処理直後用の操作力調整処理を実行することになる。
そして、制御手段が、刈取作業状態検出手段にて前記刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちであっても、切り換ったことが検出されてから設定時間が経過するまでの間に、旋回状態検出手段にて旋回状態であることが検出されないときには、刈取処理直後用の設定上限値を超えて保持手段の操作力を増加させる形態で操作力調整手段の作動を制御する通常走行用の操作力調整処理を実行することになる。
【0023】
このように、刈取作業状態検出手段にて前記刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちであっても、切り換ったことが検出されてから設定時間が経過するまでの間に、旋回状態検出手段にて旋回状態であることが検出されないときには、刈取処理直後用の設定上限値を超えて保持手段の操作力を増加させる形態で操作力調整手段の作動を制御する通常走行用の操作力調整処理が行われるものとなるから、旋回により大きな走行負荷が発生しても、エンジンに大きな負荷が作用する状態が起こらない場合には、不必要に刈取処理直後用の操作力調整処理を実行しないようにして、走行速度が不必要に低速になることを抑制できるものとなる。
つまり、前記設定時間として、脱穀装置に残存する処理物を処理するに必要な時間を設定しておけば、刈取作業状態検出手段にて前記刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されてから設定時間が経過したときには、脱穀装置を駆動する負荷が小さくなるために、旋回により大きな走行負荷が発生しても、エンジンに大きな負荷が作用する状態が起こらないことになるのであり、このような場合には不必要に刈取処理直後用の操作力調整処理を実行しないようにして、走行速度が不必要に低速になることを抑制できるものとなる。
【0024】
したがって、第3特徴構成によれば、上記第2特徴構成による作用効果に加えて、走行速度が不必要に低速になることを一層適確に抑制できるコンバインの走行制御装置を提供できる。
【0025】
本発明の第4特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
旋回状態であるか否かを検出する旋回状態検出手段、及び、前記エンジンに作用するエンジン負荷を検出するエンジン負荷検出手段が設けられ、
前記制御手段が、前記刈取作業状態検出手段にて前記刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちであって、前記旋回状態検出手段にて旋回状態であることが検出され且つ前記エンジン負荷検出手段にて検出されるエンジン負荷が設定量以上であることが検出されたときに、前記刈取処理直後用の操作力調整処理を実行し、前記刈取作業状態検出手段にて前記刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちであっても、前記旋回状態検出手段にて旋回状態であることが検出されないとき又は前記エンジン負荷検出手段にてエンジン負荷が設定量以上であることが検出されないときには、前記刈取処理直後用の設定上限値を超えて前記保持手段の操作力を増加させる形態で前記操作力調整手段の作動を制御する通常走行用の操作力調整処理を実行するように構成されている点にある。
【0026】
すなわち、制御手段が、刈取作業状態検出手段にて刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちであって、旋回状態検出手段にて旋回状態であることが検出され且つエンジン負荷検出手段にて検出されるエンジン負荷が設定量以上であることが検出されたときには、操作部が設定目標位置よりも低速側に移動しても、刈取処理直後用の設定上限値を超えて保持手段の操作力を増加させない形態で操作力調整手段の作動を制御する刈取処理直後用の操作力調整処理を実行することになる。
そして、制御手段が、刈取作業状態検出手段にて刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちであっても、旋回状態検出手段にて旋回状態であることが検出されないとき又はエンジン負荷検出手段にてエンジン負荷が設定量以上であることが検出されないときには、刈取処理直後用の設定上限値を超えて保持手段の操作力を増加させる形態で操作力調整手段の作動を制御する通常走行用の操作力調整処理を実行することになる。
【0027】
ちなみに、エンジン負荷検出手段にてエンジン負荷が設定量以上であることが検出されるときとは、脱穀装置内には処理物が多量に残存する状態にあり、脱穀装置を駆動する負荷が大きな負荷であるために、脱穀装置の駆動負荷と走行負荷とが作用するエンジンの負荷が設定量以上となるときであり、逆に、エンジン負荷検出手段にてエンジン負荷が設定量未満であるときとは、脱穀装置内には処理物が少量だけ残存する又は処理物が存在しない状態にあり、脱穀装置を駆動する負荷が小さな負荷であるために、脱穀装置の駆動負荷と走行負荷とが作用するエンジンの負荷が、設定量未満となるときである。
【0028】
このように、取作業状態検出手段にて刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちであっても、旋回状態検出手段にて旋回状態であることが検出されないとき又はエンジン負荷検出手段にてエンジン負荷が設定量以上であることが検出されないときには、刈取処理直後用の設定上限値を超えて保持手段の操作力を増加させる形態で操作力調整手段の作動を制御する通常走行用の操作力調整処理を実行するものであるから、旋回により大きな走行負荷が発生する状態が起こらない場合や、脱穀装置の駆動負荷が小さくてエンジンに大きな負荷が作用することが起こらない場合においては、不必要に刈取処理直後用の操作力調整処理を実行しないようにして、走行速度が不必要に低速になることを抑制できるものとなる。
【0029】
したがって、第4特徴構成によれば、上記第1特徴構成による作用効果に加えて、走行速度が不必要に低速になることを抑制できるコンバインの走行制御装置を提供できる。
【0030】
本発明の第5特徴構成は、上記第2〜第4特徴構成のいずれかに加えて、
前記制御手段が、前記刈取処理直後用の操作力調整処理を実行しているときに、前記刈取作業状態検出手段にて前記非刈取作業状態から前記刈取作業状態切り換ったことが検出されると、その後においては、前記通常走行用の操作力調整処理を実行するように構成されている点にある。
【0031】
すなわち、制御手段が、刈取処理直後用の操作力調整処理を実行しているときに、刈取作業状態検出手段にて非刈取作業状態から刈取作業状態に切り換ったことが検出されると、枕地での走行が終了して刈取作業が開始されるとして、通常走行用の操作力調整処理を実行することになる。
このように、刈取作業が開始されると通常走行用の操作力調整処理を実行することにより、刈取作業の際に走行速度が不必要に低速になることを抑制できるものとなる。
【0032】
したがって、第5特徴構成によれば、上記第2〜第4特徴構成のいずれかによる作用効果に加えて、刈取作業の際に走行速度が不必要に低速になることを抑制できるコンバインの走行制御装置を提供できる。
【0033】
本発明の第6特徴構成は、上記第2〜第4特徴構成のいずれかに加えて、
前記制御手段が、前記刈取処理直後用の操作力調整処理を実行しているときに、前記刈取作業状態検出手段にて前記非刈取作業状態から前記刈取作業状態に切り換ったことが検出される又は前記旋回状態検出手段にて前記旋回状態から非旋回状態に切り換ったことが検出されると、その後においては、前記通常走行用の操作力調整処理を実行するように構成されている点にある。
【0034】
すなわち、制御手段が、刈取処理直後用の操作力調整処理を実行しているときに、刈取作業状態検出手段にて非刈取作業状態から刈取作業状態に切り換ったことが検出されると、枕地での走行が終了して刈取作業が開始されるとして、通常走行用の操作力調整処理を実行することになり、加えて、刈取処理直後用の操作力調整処理を実行しているときに、旋回状態検出手段にて旋回状態から非旋回状態に切り換ったことが検出されると、その後においては、処理物が残存する脱穀装置を駆動しながら、旋回のために大きな走行負荷が発生する状態が無くなったとして、通常走行用の操作力調整処理を実行することになる。
【0035】
このように、枕地走行中において、処理物が残存する脱穀装置を駆動しながら、旋回のために大きな走行負荷が発生する状態が無くなると、通常走行用の操作力調整処理を実行するものであるから、その後の枕地の走行を、走行速度が不必要に低速になることを抑制した状態で行えるものとなるのであり、また、作業済みの作業行程と次の作業行程が近い等により、旋回しながら次の作業行程に移行するようなことがあっても、刈取作業が開始されると通常走行用の操作力調整処理を実行するものであるから、刈取作業の際には走行速度が不必要に低速になることを的確に抑制できるものとなる。
【0036】
したがって、第6特徴構成によれば、上記第2〜第4特徴構成のいずれかによる作用効果に加えて、刈取作業の際に走行速度が不必要に低速になることを抑制した状態で走行でき、また、枕地での走行中において、処理物が残存する脱穀装置を駆動しながら、旋回のために大きな走行負荷が発生する状態が無くなると、その後の枕地の走行を、走行速度が不必要に低速になることを抑制した状態で行うことができるコンバインの走行制御装置を提供できる。
【0037】
本発明の第7特徴構成は、上記第2〜第6特徴構成のいずれかに加えて、
前記制御手段が、前記刈取処理直後用の操作力調整処理を実行しているときに、前記エンジンに作用するエンジン負荷を検出するエンジン負荷検出手段にて検出される前記エンジン負荷が、その刈取処理直後用の操作力調整処理の実行中において以前に検出された最大負荷から設定量減少すると、その後においては、前記通常走行用の操作力調整処理を実行するように構成されている点にある。
【0038】
すなわち、制御手段が、刈取処理直後用の操作力調整処理を実行しているときに、エンジン負荷検出手段にて検出されるエンジン負荷が、その刈取処理直後用の操作力調整処理の実行中において以前に検出された最大負荷から設定量減少すると、その後においては、エンジンに大きな負荷が作用する状態が無いとして、通常走行用の操作力調整処理を実行することになる。
つまり、刈取処理直後用の操作力調整処理の実行中において、エンジン負荷検出手段にて検出されるエンジン負荷の最大負荷は、処理物が残存する脱穀装置を駆動しながら、旋回のために大きな走行負荷が発生するときに検出されるエンジンの負荷であり、この最大負荷よりもエンジン負荷が設定量減少したときとは、脱穀装置に残存する処理物が減少して脱穀装置を駆動する負荷が減少したときや、枕地での旋回中であってもその旋回の終了が近くなって走行負荷が減少したときであると考えることができるものであり、このような状態が検出されたときには、通常走行用の操作力調整処理を実行させるようにすることにより、枕地での走行の際に、できるだけ早い時期に通常走行用の操作力調整処理を実行させることができるものとなり、走行速度が不必要に低速になることを極力抑制した状態で枕地の走行を行えるものとなる。
【0039】
したがって、第7特徴構成によれば、第2〜第6特徴構成のいずれかによる作用効果に加えて、枕地での走行の際に、できるだけ早い時期に通常走行用の操作力調整処理を実行させるようにして、走行速度が不必要に低速になることを極力抑制した状態で枕地の走行を行うことができるコンバインの走行制御装置を提供できる。
【0040】
本発明の第8特徴構成は、上記第2〜第7特徴構成のいずれかに加えて、
前記設定目標位置として、異なる位置となる複数の設定目標位置が定められ、
前記複数の設定目標位置のいずれかを選択する選択手段が設けられ、
前記制御手段が、前記操作力調整処理として、前記複数の設定目標位置のうちで、前記選択手段にて選択された設定目標位置に前記操作部を維持させるように前記操作力調整手段の作動を制御する処理を実行するように構成されている点にある。
【0041】
すなわち、制御手段が、複数の設定目標位置のうち、選択手段にて選択された設定目標位置に操作部を維持させるように操作力調整手段の作動を制御することになる。
そして、操作部を異なる複数の設定目標位置に維持させることによって、油圧モータの回転速度を高低に変更することができるものであるから、地面の硬軟等の走行条件によって、走行速度を変更することができ、しかも、低速側の設定目標位置を選択すれば、大きな走行用の駆動力(トルク)を得ることができるものとなる。
【0042】
したがって、第8特徴構成によれば、上記第1〜第6特徴構成のいずれかによる作用効果に加えて、地面の硬軟等の走行条件に応じた走行速度を選択できるコンバインの走行制御装置を提供できる。
【0043】
本発明の第9特徴構成は、上記第8特徴構成に加えて、
前記制御手段が、前記通常走行用の操作力調整処理として、前記操作部が前記設定目標位置よりも低速側に移動しても、前記刈取処理直後用の設定上限値よりも大きな値に設定された通常制御用の設定上限値を超えて前記保持手段の操作力を増加させない形態で前記操作力調整手段の作動を制御する処理を実行するように構成され、
前記刈取処理直後用の設定上限値が、前記複数の設定目標位置のうちの刈取処理作業用の設定目標位置であって、その刈取処理作業用の設定目標位置のうちの少なくとも高速側の設定目標位置に対応して定められ、
前記通常制御用の設定上限値が、前記複数の設定目標位置の夫々に対して、低速側の設定目標位置ほど低くする状態でかつ同じ設定目標位置について定められた前記刈取処理直後用の設定上限値よりも大きな値とする状態で定められている点にある。
【0044】
すなわち、複数の設定目標位置の夫々に対する通常制御用の設定上限値が、低速側の設定目標位置ほど低くする状態で定められているから、低速側の設定目標位置が設定されたときにも、高速側の設定目標位置が設定されたときにも、走行負荷の増加に応じて油圧モータの回転速度を低速側に操作することを適確に行えるものとなり、エンジンに大きな負荷が掛からないようにすることを的確に行えるものとなる。
つまり、複数の設定目標位置のうちの低速側の設定目標位置を設定するときとは、地面が軟弱である等により、大きな走行用の駆動力(トルク)を必要とするときであるため、油圧モータを低速で回転させるにしても、エンジンに大きな負荷を掛ける状態が生じ易いものであるが、複数の設定目標位置の夫々に対する通常制御用の設定上限値が、低速側の設定目標位置ほど低くする状態で定められているから、油圧モータの駆動のためにエンジンに大きな負荷が掛かることを極力回避できるものとなる。
【0045】
また、刈取処理直後用の設定上限値が、前記複数の設定目標位置のうちの刈取処理作業用の設定目標位置であって、その刈取処理作業用の設定目標位置のうちの少なくとも高速側の設定目標位置に対応して定められているから、高速で走行するために、枕地での旋回の際にエンジンに作用する負荷が過大になるときに、刈取処理直後用の操作力調整処理を実行して、エンジンに作用する負荷が過大になることを抑制できるものとなる。
つまり、刈取処理作業用の設定目標位置のうちの高速側の設定目標位置が選択されて高速で走行するときには、枕地において次の作業行程が位置する側に向けて旋回する際に、高速であるがために、エンジンに作用する負荷が大きくなる虞があるが、このようなときには、刈取処理直後用の操作力調整処理が実行されて、エンジンに作用する負荷が過大になることが抑制されるものとなる。
【0046】
さらに、通常制御用の設定上限値が、同じ設定目標位置について定められた刈取処理直後用の設定上限値よりも大きな値とする状態で定められているから、コンバインが穀稈群の存在箇所から枕地に走行して、枕地において次の作業行程が位置する側に向けて旋回する際において、走行負荷の増加に伴って走行速度を低下させることを適確に行えるものとしながらも、刈取作業のために走行するとき等において、走行速度が不必要に低下することを抑制できるものとなる。
【0047】
したがって、第9特徴構成によれば、上記第8特徴構成による作用効果に加えて、刈取作業を行う等のために高速で走行するときも低速で走行するときも、エンジンに大きな負荷が掛かることを極力回避でき、しかも、高速で走行しながら、枕地において次の作業行程が位置する側に向けて旋回する際において、走行負荷の増加に伴って走行速度を低下させることを適確に行えるものとしながらも、刈取作業のために走行するとき等において、走行速度が不必要に低下することを抑制できるものとなるコンバインの走行制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】ミッションケースの縦断正面図
【図3】油圧ユニットの油圧回路図
【図4】制御構成を示すブロック図
【図5】静油圧式無段変速装置の油圧回路図
【図6】移動走行状態、標準刈取状態及び低速刈取状態を示す図
【図7】制御作動を示すフローチャート
【図8】制御作動を示すフローチャート
【図9】制御作動を示すフローチャート
【図10】制御作動を示すフローチャート
【図11】制御作動を示すフローチャート
【図12】制御作動を示すフローチャート
【図13】刈取処理作業を行うときの走行形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0049】
〔実施形態〕
図1に示すように、右及び左のクローラ式の走行装置1で支持された機体の前部に、刈取処理部としての刈取部2が昇降自在に支持され、機体の前部の右側に運転部3が備えられて、機体の後部の左側に脱穀装置4が備えられ、機体の後部の右側にグレンタンク5が備えられて、コンバインの一例である自脱型のコンバインが構成されている。
前記刈取部2は、機体の進行に伴って圃場に植えられた穀稈を引き起こし装置にて引き起こし、引き起こされた穀稈の株元を刈刃にて切断し、刈取穀稈を穀稈搬送装置にて脱穀装置のフィードチェーンに搬送するように構成されている。
【0050】
図2に示すように、運転部3の下側にエンジン6が備えられ、機体の前部の左右中央付近にミッションケース8が備えられて、静油圧式無段変速装置7がミッションケース8の右側部の上部に連結されており、静油圧式無段変速装置7の入力軸7aとエンジン6の出力軸6aとに亘って、テンションクラッチ機能を備えたベルト伝動機構9が接続されている。
【0051】
図2に示すように、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bが、ミッションケース8に挿入されて、スプライン構造により低速ギヤ10に連結されており、その低速ギヤ10が固定された伝動軸12に、高速ギヤ11が固定されている。出力軸13に低速ギヤ14及び高速ギヤ15が相対回転自在に外嵌されて、低速ギヤ10,14及び高速ギヤ11,15が咬合しており、シフト部材16がスプライン構造により出力軸13にスライド及び一体回転自在に外嵌されている。出力軸13と刈取部2の入力軸2aとに亘って、伝動ベルトによりテンションクラッチ型式の刈取クラッチ17が備えられている。エンジン6の出力軸6aの動力が、テンションクラッチ型式の脱穀クラッチ4A(図4参照)を介して、脱穀装置4に伝達されるように構成されている。
【0052】
図2に示すように、シフト部材16を低速ギヤ14に咬合させると(低速位置)、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bの動力が低速ギヤ10,14及びシフト部材16を介して低速状態で刈取部2に伝達され、シフト部材16を高速ギヤ15に咬合させると(高速位置)、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bの動力が高速ギヤ11,15及びシフト部材16を介して高速状態で刈取部2に伝達される。以上のように、低速ギヤ10,14及び高速ギヤ11,15、シフト部材16等により、高低2段に変速自在な刈取変速装置18が構成されている。
【0053】
次に、ミッションケース8の伝動系(直進系)の構造について説明する。
図2に示すように、伝動軸20に伝動ギヤ19が相対回転自在に外嵌されて、伝動ギヤ19が低速ギヤ10に咬合しており、シフト部材21がスプライン構造により伝動軸20にスライド及び一体回転自在に外嵌されている。伝動軸20に伝動ギヤ22,23が固定されており、伝動軸20の端部に多板摩擦式の駐車ブレーキ24が備えられている。
【0054】
図2に示すように、通常は、シフト部材21は伝動ギヤ19に咬合しており、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bの動力が低速ギヤ10及び伝動ギヤ19を介して、伝動軸20に伝達されている。故障等による機体の牽引時において、シフト部材21を伝動ギヤ19から離間させることにより、右及び左の走行装置1と静油圧式無段変速装置7とをシフト部材21の位置で遮断することができるのであり、静油圧式無段変速装置7の抵抗を受けることなく機体を牽引することができる。
【0055】
図2に示すように、伝動軸26に伝動ギヤ25が固定されて、伝動ギヤ22,25が咬合している。伝動軸26に右及び左の出力ギヤ27が相対回転自在に外嵌され、右及び左の出力ギヤ27の右及び左側に、右及び左の咬合部28がスプライン構造により伝動軸26にスライド及び一体回転自在に外嵌されている。右及び左の車軸29が備えられ、右及び左の車軸29に固定された右及び左の伝動ギヤ30が、右及び左の出力ギヤ27に咬合しており、右及び左の車軸29の端部に右及び左の走行装置1のスプロケット1a(図1参照)が連結されている。
【0056】
図2に示すように、伝動軸26に固定された受け部材31と右の咬合部28との間にバネ32が備えられ、伝動ギヤ25と左の咬合部28との間にバネ32が備えられて、右及び左の咬合部28がバネ32により右及び左の出力ギヤ27の咬合側に付勢されている。右の出力ギヤ27と右の咬合部28との間に右の油室が形成され、左の出力ギヤ27と左の咬合部28との間に左の油室が形成されており、右及び左の油室に作動油を供給することにより、バネ32に抗して右及び左の咬合部28を右及び左の出力ギヤ27から離間させることができる。
【0057】
図2に示すように、右の出力ギヤ27と右の咬合部28との間で咬合式の右のサイドクラッチ33が構成され、左の出力ギヤ27と左の咬合部28との間で咬合式の左のサイドクラッチ33が構成されている。右(左)の咬合部28が右(左)の出力ギヤ27に咬合することにより、右(左)のサイドクラッチ33が伝動状態となり、右(左)の咬合部28が右(左)の出力ギヤ27から離間することにより、右(左)のサイドクラッチ33が遮断状態となる。
【0058】
以上の構造により図2に示すように、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bの動力が、低速ギヤ10、伝動ギヤ19、伝動軸20、伝動ギヤ22,25、伝動軸26、右及び左の咬合部28、右及び左の出力ギヤ27、右及び左の伝動ギヤ30、右及び左の車軸29を介して、右及び左の走行装置1に伝達されて、機体は直進する。
【0059】
次に、ミッションケース8の伝動系(旋回系)の構造について説明する。
図2に示すように、伝動軸34に相対回転自在に外嵌された伝動ギヤ35が、右の咬合部28の外周部のギヤ部に咬合しており、伝動軸34と伝動ギヤ35との間に緩旋回クラッチ36が備えられている。緩旋回クラッチ36は摩擦多板式に構成されて遮断状態に付勢されており、作動油が供給されることで伝動状態に操作され、作動油が排出されることで遮断状態に操作される。
【0060】
図2に示すように、伝動軸26に旋回クラッチケース37が相対回転自在に外嵌されており、伝動軸34に固定された伝動ギヤ38と旋回クラッチケース37の外周部のギヤ部とが咬合している。旋回クラッチケース37は左右対称に構成されており、旋回クラッチケース37と右の出力ギヤ27との間に右の旋回クラッチ39が備えられ、旋回クラッチケース37と左の出力ギヤ27との間に左の旋回クラッチ39が備えられている。右及び左の旋回クラッチ39は摩擦多板式に構成されており、作動油が供給されることで伝動状態に操作される。この場合、右及び左の旋回クラッチ39において、摩擦板が互いに密になるように配置されており、作動油が排出されても右及び左の旋回クラッチ39が半伝動状態となるように構成されている。
【0061】
これにより、図2に示すように、緩旋回クラッチ36が伝動状態に操作されると、伝動軸26の動力が右の咬合部28、伝動ギヤ35、緩旋回クラッチ36、伝動軸34及び伝動ギヤ38を介して、伝動軸26と同方向で伝動軸26よりも低速の動力として、旋回クラッチケース37に伝達される。緩旋回クラッチ36の伝動状態において、右又は左のサイドクラッチ33が遮断状態に操作され、右又は左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作されると、伝動軸26と同方向で伝動軸26よりも低速の動力が右又は左の出力ギヤ27に伝達される。
【0062】
図2に示すように、伝動軸34の左側にブレーキ40が備えられている。ブレーキ40は摩擦多板式に構成されて、作動油が供給されることで制動状態に操作され、作動油が排出されることで解除状態に操作される。
これにより図2に示すように、ブレーキ40が制動状態に操作されると、伝動軸34及び伝動ギヤ38を介して、旋回クラッチケース37が制動状態となる。ブレーキ40の制動状態において、右又は左のサイドクラッチ33が遮断状態に操作され、右又は左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作されると、右又は左の出力ギヤ27が制動状態となる。
【0063】
図2に示すように、伝動軸34に伝動ギヤ41が相対回転自在に外嵌されて、伝動ギヤ23,41が咬合しており、伝動軸34と伝動ギヤ41との間に、逆転クラッチ42が備えられている。逆転クラッチ42は摩擦多板式に構成されて遮断状態に付勢されており、作動油が供給されることで伝動状態に操作され、作動油が排出されることで遮断状態に操作される。
【0064】
これにより、図2に示すように、逆転クラッチ42が伝動状態に操作されると、伝動軸20の動力が伝動ギヤ23,41、逆転クラッチ42、伝動軸34及び伝動ギヤ38を介して、伝動軸26と逆方向の動力として、旋回クラッチケース37に伝達される。逆転クラッチ42の伝動状態において、右又は左のサイドクラッチ33が遮断状態に操作され、右又は左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作されると、伝動軸26と逆方向の動力が右又は左の出力ギヤ27に伝達される。
【0065】
次に、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)、右及び左の旋回クラッチ39、緩旋回クラッチ36、ブレーキ40、逆転クラッチ42に作動油を給排操作する油圧ユニット59について説明する。
図2及び図3に示すように、油圧ユニット59がミッションケース8の左側部の下部に連結されている。静油圧式無段変速装置7の入力軸7aに油圧ポンプ60が接続され、静油圧式無段変速装置7の入力軸7aにより油圧ポンプ60が駆動されるように構成されており、油圧ポンプ60から延出された油路61が油圧ユニット59に接続されている。
【0066】
図3に示すように、ミッションケース8と油圧ポンプ60とに亘って供給油路62が接続されて、供給油路62にオイルクーラー63が備えられており、供給油路62における油圧ポンプ60とオイルクーラー63との間の部分にフィルタ64が備えられている。ミッションケース8に貯留された潤滑油が作動油として、オイルクーラー63及びフィルタ64を通過して油圧ポンプ60に供給される。油圧ポンプ60の作動油が油路61を介して油圧ユニット59に供給されるのであり、後述するように油圧ユニット59の各部から排出された作動油がミッションケース8に戻される。
【0067】
図3に示すように、油圧ユニット59の内部に右旋回制御弁67、左旋回制御弁68、第1リリーフ弁69、アンロード弁70、第2リリーフ弁76、比例制御弁71、旋回切換制御弁72、パイロット操作弁73,74が備えられている。油圧ポンプ60の油路61が油圧ユニット59に接続され、油路61に接続された油路66に右及び左旋回制御弁67,68、第1リリーフ弁69、アンロード弁70が並列的に接続されている。
【0068】
図3に示すように、右旋回制御弁67が右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)及び右の旋回クラッチ39に接続されており、左旋回制御弁68が左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)及び左の旋回クラッチ39に接続されている。右及び左旋回制御弁67,68は供給位置67a,68a及び排出位置67b,68bに操作自在な電磁操作型式に構成されて、排出位置67b,68bに付勢されている。アンロード弁70は遮断位置70a及び排出位置70bに操作自在な電磁操作型式に構成されて、遮断位置70aに付勢されている。
【0069】
図3に示すように、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)から分岐した油路75に、第2リリーフ弁76が接続され、油路75に比例制御弁71及び旋回切換制御弁72が直列的に接続されており、旋回切換制御弁72が緩旋回クラッチ36、ブレーキ40及び逆転クラッチ42に接続されている。比例制御弁71は電磁操作型式に構成されて、作動油の圧力制御が可能である。旋回切換制御弁72は、緩旋回位置72a、信地旋回位置72b及び超信地旋回位置72cに操作自在なパイロット操作型式に構成されており、緩旋回位置72aに付勢されている。この場合、第1リリーフ弁69のリリーフ圧が比較的高い値に設定され、第2リリーフ弁76のリリーフ圧が比較的低い値に設定されている。
【0070】
図3に示すように、油路75から分岐したパイロット作動油を旋回切換制御弁72に供給して信地旋回位置72bに操作するように、パイロット操作弁73が構成され、油路75から分岐したパイロット作動油を旋回切換制御弁72に供給して超信地旋回位置72cに操作するように、パイロット操作弁74が構成されている。油圧ユニット59とミッションケース8との連結面(合わせ面)に、ドレン油路(図示せず)が形成されており、右旋回制御弁67、左旋回制御弁68、第1リリーフ弁69、アンロード弁70、第2リリーフ弁76、比例制御弁71、旋回切換制御弁72、パイロット操作弁73,74の作動油がドレン油路を介してミッションケース8に戻される。
右及び左旋回制御弁67,68、アンロード弁70、比例制御弁71、パイロット操作弁73,74は、図4に示すように、制御手段としての制御装置79によって、後述の如く操作される。
【0071】
次に、操向レバー77による直進状態について説明する。
図1及び図4に示すように、右及び左に操作自在な操向レバー77が運転部3に備えられ、操向レバー77の操作位置を検出する操作位置検出センサーQの検出情報が制御装置79に入力されており、操向レバー77は直進位置n、右及び左第1旋回位置R1,L1、右及び左第2旋回位置R2,L2に操作自在に構成されている。ダイヤル操作型式の旋回モードスイッチ78が運転部3に備えられ、旋回モードスイッチ78の操作情報が制御装置79に入力されており、旋回モードスイッチ78は緩旋回位置、信地旋回位置及び超信地旋回位置を備えている。
【0072】
図2,3,4に示すように、旋回モードスイッチ78の操作位置に関係なく、操向レバー77が直進位置nに操作されると、右及び左旋回制御弁67,68が排出位置67b,68bに操作され、アンロード弁70が排出位置70bに操作される。これにより、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)、右及び左の旋回クラッチ39から作動油が排出され、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)が伝動状態に操作されて、右及び左の旋回クラッチ39が半伝動状態に操作される。比例制御弁71により緩旋回及び逆転クラッチ36,42が遮断状態に操作され、ブレーキ40が解除状態に操作される。
【0073】
図2に示すように、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bの動力が、低速ギヤ10、伝動ギヤ19、伝動軸20、伝動ギヤ22,25、伝動軸26、右及び左の咬合部28、右及び左の出力ギヤ27、右及び左の伝動ギヤ30、右及び左の車軸29を介して、右及び左の走行装置1に伝達されて、機体は直進する。
【0074】
次に、操向レバー77による緩旋回状態について説明する。
図2〜4に示すように、旋回モードスイッチ78が緩旋回位置に操作されると、パイロット操作弁73,74により旋回切換制御弁72が緩旋回位置72aに操作される。
これにより、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)及び右の旋回クラッチ39に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。
【0075】
図2に示すように、左の旋回クラッチ39が半伝動状態であるので、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)の動力が、左の出力ギヤ27及び左の旋回クラッチ39から、右の旋回クラッチ39を介して右の出力ギヤ27に伝達され、伝動軸26と同方向で伝動軸26より少し低速の動力が右の出力ギヤ27に伝達される。これにより、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0076】
図2,3,4に示すように、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、前述のように右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されアンロード弁70が遮断位置70aに操作されるのと同時に、比例制御弁71及び旋回切換制御弁72(緩旋回位置72a)を介して、緩旋回クラッチ36に作動油が供給され始めるのであり、操向レバー77が右第1旋回位置R1から右第2旋回位置R2に操作されるほど、比例制御弁71により緩旋回クラッチ36の作動圧が昇圧操作される。
【0077】
図2,3,4に示すように、操向レバー77の操作位置に基づいて比例制御弁71により緩旋回クラッチ36の作動圧が昇圧操作されるのに伴って、伝動軸26の動力が右の咬合部28、伝動ギヤ35、緩旋回クラッチ36、伝動軸34、伝動ギヤ38、旋回クラッチケース37及び右の旋回クラッチ39を介して、伝動軸26と同方向で伝動軸26よりも低速の動力として右の出力ギヤ27に伝達される。
【0078】
この場合、図2に示すように、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力と緩旋回クラッチ36からの動力とが、同時に右の出力ギヤ27に伝達される状態となるので、緩旋回クラッチ36の作動圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力が緩旋回クラッチ36からの動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される。これにより緩旋回クラッチ36の作動圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0079】
次に操向レバー77の操作位置が右第2旋回位置R2に接近し、緩旋回クラッチ36の作動圧が高圧になると、図2に示すように、緩旋回クラッチ36からの動力が左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力に打ち勝って、緩旋回クラッチ36からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される。この状態において、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力により右の出力ギヤ27が駆動されるよりも、緩旋回クラッチ36からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される方が、右の出力ギヤ27が低速で駆動されることになり、機体は右に緩旋回する。
【0080】
図2〜4に示すように、操向レバー77が左第1旋回位置L1に操作されると、左旋回制御弁68が供給位置68aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)及び左の旋回クラッチ39に作動油が供給され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)が遮断状態に操作されて、左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。これと同時に前述と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。操向レバー77が左第1旋回位置L1から左第2旋回位置L2に操作されると、前述と同様な操作が行われて、機体は左に緩旋回する。
【0081】
次に、操向レバー77による信地旋回状態について説明する。
図2〜4に示すように、旋回モードスイッチ78が信地旋回位置に操作されると、パイロット操作弁73,74により旋回切換制御弁72が信地旋回位置72bに操作される。
これにより、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)及び右の旋回クラッチ39に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。この場合、左の旋回クラッチ39が半伝動状態であるので、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0082】
図2〜4に示すように、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、前述のように右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されアンロード弁70が遮断位置70aに操作されるのと同時に、比例制御弁71及び旋回切換制御弁72(信地旋回位置72b)を介して、ブレーキ40に作動油が供給され始めるのであり、操向レバー77が右第1旋回位置R1から右第2旋回位置R2に操作されるほど、比例制御弁71によりブレーキ40の作動圧が昇圧操作される。
【0083】
図2〜4に示すように、操向レバー77の操作位置に基づいて比例制御弁71によりブレーキ40の作動圧が昇圧操作され、それに伴って、伝動軸34、伝動ギヤ38、旋回クラッチケース37及び右の旋回クラッチ39を介して、右の出力ギヤ27に制動力が掛かる。
【0084】
この場合、図2に示すように、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力と、ブレーキ40の制動力とが、同時に右の出力ギヤ27に伝達される状態となるので、ブレーキ40の作動圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力がブレーキ40の制動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される。これにより、ブレーキ40の作動圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0085】
次に操向レバー77の操作位置が右第2旋回位置R2に接近し、ブレーキ40の作動圧が高圧になると、図2に示すように、ブレーキ40の制動力が左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力に打ち勝って、ブレーキ40の制動力により右の出力ギヤ27が制動状態となり、機体は右に信地旋回する。
【0086】
図2〜4に示すように、操向レバー77が左第1旋回位置L1に操作されると、左旋回制御弁68が供給位置68aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)及び左の旋回クラッチ39に作動油が供給され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)が遮断状態に操作されて、左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。これと同時に前述と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。操向レバー77が左第1旋回位置L1から左第2旋回位置L2に操作されると、前述と同様な操作が行われて、機体は左に信地旋回する。
【0087】
次に、操向レバー77による超信地旋回状態について説明する。
図2〜4に示すように、旋回モードスイッチ78が超信地旋回位置に操作されると、パイロット操作弁73,74により旋回切換制御弁72が超信地旋回位置72cに操作される。
これにより、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)及び右の旋回クラッチ39に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。この場合、左の旋回クラッチ39が半伝動状態であるので、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0088】
図2〜4に示すように、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、前述のように右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されアンロード弁70が遮断位置70aに操作されるのと同時に、比例制御弁71及び旋回切換制御弁72(超信地旋回位置72c)を介して、逆転クラッチ42に作動油が供給され始めるのであり、操向レバー77が右第1旋回位置R1から右第2旋回位置R2に操作されるほど、比例制御弁71により逆転クラッチ42の作動圧が昇圧操作される。
【0089】
図2〜4に示すように、操向レバー77の操作位置に基づいて比例制御弁71により逆転クラッチ42の作動圧が昇圧操作されるのに伴って、伝動軸20の動力が伝動ギヤ23,41、逆転クラッチ42、伝動軸34、伝動ギヤ38、旋回クラッチケース37及び右の旋回クラッチ39を介して、伝動軸26と逆方向の動力として右の出力ギヤ27に伝達される。
【0090】
この場合、図2に示すように、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力と、逆転クラッチ42からの動力とが、同時に右の出力ギヤ27に伝達される状態となるので、逆転クラッチ42の作動圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力が逆転クラッチ42からの動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される。これにより逆転クラッチ42の作動圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0091】
次に操向レバー77の操作位置が右第2旋回位置R2に接近し、逆転クラッチ42の作動圧が高圧になると、図2に示すように、逆転クラッチ42からの動力が左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力に打ち勝って、逆転クラッチ42からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される。この状態において、左の出力ギヤ27に対して、右の出力ギヤ27が逆方向に駆動されて、機体は右に超信地旋回する。
【0092】
図2〜4に示すように、操向レバー77が左第1旋回位置L1に操作されると、左旋回制御弁68が供給位置68aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)及び左の旋回クラッチ39に作動油が供給され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)が遮断状態に操作されて、左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。これと同時に前述と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。操向レバー77が左第1旋回位置L1から左第2旋回位置L2に操作されると、前述と同様な操作が行われて、機体は左に超信地旋回する。
【0093】
次に、静油圧式無段変速装置7の油圧回路構造について説明する。
図5に示すように、静油圧式無段変速装置7はアキシャルプランジャ型式の可変容量型の油圧ポンプ7P及びアキシャルプランジャ型式の可変容量型の油圧モータ7Mを備え、油圧ポンプ7P及び油圧モータ7Mを一対の油路7cで接続して構成されている。静油圧式無段変速装置7の入力軸7aにチャージポンプ44が接続されて、静油圧式無段変速装置7の入力軸7aによりチャージポンプ44が駆動される。
【0094】
図5に示すように、静油圧式無段変速装置7の油路7cに亘ってバイパス油路83が接続され、チャージポンプ44から延出されたチャージ油路45がバイパス油路83に接続されており、チャージ油路45にフィルタ49が備えられている。バイパス油路83においてチャージ油路45が接続される部分と静油圧式無段変速装置7の油路7cとの間に、逆止弁84及び絞り部85、リリーフ弁86が備えられており、リリーフ弁86のリリーフ圧が、静油圧式無段変速装置7の全体として許容される最高圧力に設定されている。ミッションケース8とは別に備えられたオイルタンク46と、チャージポンプ44とに亘って、供給油路47が接続されており、供給油路47にフィルタ48が備えられている。
【0095】
図5に示すように、チャージ油路45にリリーフ弁50が接続されて、リリーフ弁50が静油圧式無段変速装置7を収容するケース51に接続されている。ケース51とオイルタンク46とに亘って油路52が接続され、油路52にオイルクーラー53が備えられている。以上の構造により、オイルタンク46の作動油が、フィルタ48、供給油路47、チャージポンプ44、チャージ油路45を介して静油圧式無段変速装置7の油路7cに供給されて、余剰の作動油がリリーフ弁50を介してケース51に排出される。静油圧式無段変速装置7の各部からの作動油がケース51に排出されるのであり、ケース51の作動油が油路52及びオイルクーラー53を通過してオイルタンク46に戻される。
【0096】
次に、静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7Pの操作構造について説明する。
図4及び図5に示すように、静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7Pは中立状態、前進側及び後進側に無段階に変速自在に構成され、中立位置N、前進側F及び後進側Rに操作自在な変速レバー43(油圧ポンプ操作具に相当)が運転部3に備えられ、変速レバー43と静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7Pの斜板7Paとが、連係リンク80を介して機械的に連係されている。尚、例示はしないが、操作された変速レバー43をその位置で保持するための摩擦式保持機構が設けられている。
【0097】
図4に示すように、変速レバー43に操作力(アシスト力)を付加する電動モータ55と、変速レバー43が前進側F又は後進側Rに操作されようとしていることを検出する操作センサー(図示せず)とが備えられており、操作センサーの検出値に基づいて電動モータ55が制御装置79により以下のように操作される。
【0098】
図4に示すように、変速レバー43が前進側Fに操作されようとすると、この操作が操作センサーにより検出されて、電動モータ55が作動して前進側Fへの操作力を変速レバー43に与える。変速レバー43が後進側Rに操作されようとすると、この操作が操作センサーにより検出されて、電動モータ55が作動して後進側Rへの操作力を変速レバー43に与える。
【0099】
図4に示すように、変速レバー43により静油圧式無段変速装置7における油圧ポンプ7Pの斜板7Paを操作して、油圧ポンプ7Pの斜板7Paを中立位置N、前進側F及び後進側Rに操作するのであり、電動モータ55の操作力の付加によって、変速レバー43により、油圧ポンプ7Pの斜板7Paを前進側F及び後進側Rに楽に操作することができる。変速レバー43の前進側F及び後進側Rへの操作が止まると、電動モータ55も停止して、油圧ポンプ7Pの斜板7Paがその位置に保持される。
【0100】
次に、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7M、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ4A、刈取変速装置18の操作について説明する。
図4に示すように、変速レバー43の上部の握り部43aにおいて、変速レバー43の握り部43aの横面部の下部に、走行変速スイッチ81が備えられており、変速レバー43の握り部43aの後面部の上部に、刈取変速スイッチ82か備えられている。走行変速スイッチ81及び刈取変速スイッチ82は、戻り側(突出側)に復帰付勢された押しボタン型式に構成されており、走行変速スイッチ81及び刈取変速スイッチ82の操作信号が制御装置79に入力される。
【0101】
図4及び図5に示すように、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mは、高速位置H及び低速位置Lの範囲で無段階に変速自在に構成され、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mの斜板7Ma(容量変更用の操作部に相当)が低速側に移動するのを高速側に移動操作する操作力にて保持する操作シリンダ56(保持手段に相当)が備えられている。
油圧モータ7Mの斜板7Maの位置として、操作シリンダ56のピストンの位置を検出するポテンショメータ89(位置検出手段に相当)が備えられて、ポテンショメータ89により操作シリンダ56のピストンの位置を検出することにより、油圧モータ7Mの斜板7Maの位置が検出されて、ポテンショメータ89の検出値Pが制御装置79に入力される。
【0102】
図4及び図5に示すように、チャージ油路45から油路57が分岐し、操作シリンダ56を高速側に作動させる油室56aに油路57が接続されており、操作シリンダ56を低速側に付勢するバネ56bが備えられている。操作シリンダ56の操作力を変更調整する操作力調整手段としての、電磁比例弁にて構成される圧力制御弁58が油路57に備えられており、操作シリンダ56の油室56aの圧力が上昇すると、走行負荷及びバネ56bの付勢力に抗して操作シリンダ56が油圧モータ7Mの斜板7Maを高速側に操作し、操作シリンダ56の油室56aの圧力が下降すると、油圧モータ7Mの斜板7Maが走行負荷及びバネ56bの付勢力により低速側に操作する。
説明を加えると、操作シリンダ56は、油圧モータ7Mの斜板7Maを高速側に移動操作する操作力が供給される油圧にて変更される油圧シリンダであり、圧力制御弁58が、操作シリンダ56に供給する油圧の圧力を変更調整するように構成されている。
【0103】
図4に示すように、操作モータ65が備えられて、操作モータ65と刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ4A、刈取変速装置18とが機械的に連係されており、操作モータ65により刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ4A、刈取変速装置18が操作される。操作モータ65により、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ4Aが遮断状態に操作されて刈取変速装置18が低速位置に操作された状態、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ4Aが伝動状態に操作されて刈取変速装置18が低速位置に操作された状態、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ4Aが伝動状態に操作されて刈取変速装置18が高速位置に操作された状態の3状態が現出される。
【0104】
図6に示すように、移動走行状態、標準刈取状態及び低速刈取状態が設定されており、移動走行状態、標準刈取状態及び低速刈取状態において、図4及び図6に示すように、制御装置79により圧力制御弁58及び操作モータ65、運転部3に備えられた表示部87が以下のように操作される。
【0105】
移動走行状態は、静油圧式無段変速装置7における油圧モータ7Mの斜板7Maが移動走行用の高速位置Hに操作され、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ4Aが遮断状態に操作され、刈取変速装置18が低速位置に操作された状態であり、表示部87に高速位置Hが表示される。
標準刈取状態は、静油圧式無段変速装置7における油圧モータ7Mの斜板7Maが刈取作業用の中速位置Mに操作され、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ4Aが伝動状態に操作され、刈取変速装置18が低速位置に操作された状態であり、表示部87に中速位置Mが表示される。
低速刈取状態は、静油圧式無段変速装置7における油圧モータ7Mの斜板7Maが倒伏刈取作業用の低速位置Lに操作され、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ4Aが伝動状態に操作され、刈取変速装置18が高速位置に操作された状態であり、表示部87に低速位置Lが表示される。この低速刈取状態は、倒伏が激しい作物を刈り取るときに選択されることになる。
【0106】
図6に示すように、走行変速スイッチ81及び刈取変速スイッチ82の押し操作に基づいて、制御装置79が圧力制御弁58及び操作モータ65を以下のように作動させるように構成されている。
移動走行状態が設定された状態において走行変速スイッチ81が押し操作されると、標準刈取状態が設定され、標準刈取状態が設定された状態において走行変速スイッチ81が押し操作されると、移動走行状態が設定される。このように、走行変速スイッチ81が押し操作される毎に、移動走行状態及び標準刈取状態が交互に設定される。
この場合、移動走行状態が設定された状態において刈取変速スイッチ82が押し操作されても、この押し操作が無視されて移動走行状態が維持される。走行変速スイッチ81が押し操作されることにより、標準刈取状態が設定された状態において刈取変速スイッチ82が押し操作されると、低速刈取状態が設定される。
【0107】
標準刈取状態が設定された状態において、刈取変速スイッチ82が押し操作されると、低速刈取状態が設定される。低速刈取状態が設定された状態において刈取変速スイッチ82が押し操作されると、標準刈取状態が設定される。このように刈取変速スイッチ82が押し操作される毎に、標準刈取状態及び低速刈取状態が交互に設定される。
この場合、低速刈取状態が設定された状態において走行変速スイッチ81が押し操作されても、この押し操作が無視されて低速刈取状態が維持される。刈取変速スイッチ82が押し操作されることにより、標準刈取状態が設定された状態において走行変速スイッチ81が押し操作されると、移動走行状態が設定される。
【0108】
上述した通り、静油圧式無段変速装置7における油圧モータ7Mの斜板7Maの設定目標位置として、高速位置H、中速位置M、及び、低速位置Lが定められることになり、走行変速スイッチ81及び刈取変速スイッチ82が、それらの設定目標位置のいずれかを選択する選択手段として機能することになる。
そして、制御装置79が、複数の設定目標位置のうちで、走行変速スイッチ81及び刈取変速スイッチ82にて設定された目標位置に油圧モータ7Mの斜板7Maを維持させるように、圧力制御弁58に通電する電流値を制御する操作力調整処理を実行するように構成されている。
【0109】
さらに、制御装置79が、操作力調整処理として、油圧モータ7Mの斜板7Maが設定目標位置よりも低速側に移動しても、通常制御用の設定上限値を超えて、油圧モータ7Mの斜板7Maを高速側に移動操作する操作力を増加させない形態で圧力制御弁58を制御する通常走行用の操作力調整処理を実行するように構成されている。
説明を加えると、圧力制御弁58に通電する電流値は、操作シリンダ56により油圧モータ7Mの斜板7Maを高速側に移動操作する操作力に対応するものであり、図4に示すように、圧力制御弁58に通電される電流値aを検出する電流検出センサーD、及び、圧力制御弁58の駆動回路93が設けられている。
そして、油圧モータ7Mの斜板7Maを維持する設定目標位置としての、高速位置H、中速位置M、及び、低速位置Lの夫々に対応して、前記通常制御用の設定上限値に対応する通常制御用の設定上限電流値A1、A2、及び、A3が、低速側の設定目標位置ほど低くする状態で設定され、制御装置79が、電流検出センサーDの検出情報に基づいて、圧力制御弁58に通電する電流値aを通常制御用(通常走行用)の設定上限電流値A1、A2、及び、A3を超えて増加させない形態で圧力制御弁58に通電する電流値aを制御するように構成されている。
【0110】
このように、圧力制御弁58に通電する電流値aを通常制御用の設定上限電流値A1、A2、及び、A3を超えて増加させない形態で圧力制御弁58に通電する電流値を制御することにより、エンジン6の負荷が過大となるのを抑制できることになる。
つまり、油圧モータ7Mの斜板7Maを高速位置Hに維持するときに、走行負荷が増加して、通常制御用の設定上限電流値A1に対応する操作力にては、油圧モータ7Mの斜板7Maを高速位置Hに維持できなくなると、油圧モータ7Mの斜板7Maが高速位置Hよりも低速側に移動することになり、走行速度が低速になり、エンジン6の負荷が増大するのを抑制することになる。
同様に、油圧モータ7Mの斜板7Maを中速位置Hに維持するときに、走行負荷が増加して、通常制御用の設定上限電流値A2に対応する操作力にては、油圧モータ7Mの斜板7Maを中速位置Mに維持できなくなると、油圧モータ7Mの斜板7Maが中速位置Hよりも低速側に移動することになり、走行速度が低速になり、エンジン6の負荷が増大するのを抑制することになる。
【0111】
尚、油圧モータ7Mの斜板7Maの設定目標位置としての低速位置Lは、斜板7Maの低速側への移動限度よりも少し高速側の位置に定められており、油圧モータ7Mの斜板7Maを低速位置Hに維持するときに、走行負荷が増加して、通常制御用の設定上限電流値A3に対応する操作力にては、油圧モータ7Mの斜板7Maを低速位置Lに維持できなくなると、油圧モータ7Mの斜板7Maが低速位置Lよりも低速側に移動することになるものの、その移動量はわずかであり、走行速度が少量だけ低速になるだけであり、エンジン6の負荷を軽減することにはあまり有効でないものである。
ちなみに、油圧モータ7Mの斜板7Maの設定目標位置としての高速位置Hは、斜板7Maの高速側への移動限度よりも少し低速側の位置に定められている。
【0112】
また、制御装置79は、操作力調整処理として、油圧モータ7Mの斜板7Maが設定目標位置よりも低速側に移動しても、刈取処理直後用の設定上限値を超えて、油圧モータ7Mの斜板7Maを高速側に移動操作する操作力を増加させない形態で圧力制御弁58を制御する刈取処理直後用の操作力調整処理を実行するように構成されている。
つまり、制御装置79は、刈取処理直後用の操作力調整処理を、刈取処理作業を行った直後である刈抜け走行中で、且つ、油圧モータ7Mの斜板7Maを設定目標位置としての中速位置Mに維持する際において実行し、刈抜け走行中であっても、油圧モータ7Mの斜板7Maを設定目標位置としての高速位置Hや低速位置Lに維持する際、並びに、刈抜け走行中で無い場合、つまり、非刈抜け走行中においては、前述した通常走行用の操作力調整処理を実行するように構成されている。
尚、刈抜け走行中であるか否かの判別については後述する。
【0113】
刈取処理直後用の操作力調整処理について説明を加えると、刈取処理直後用の設定上限値に対応する刈取処理直後用の設定上限電流値が、通常走行用の操作力調整処理における中速位置Mに対応する通常制御用の設定上限電流値A2よりも小さく定められている。具体的には、刈取処理直後用の設定上限電流値が、通常制御用の設定上限電流値A2から設定量βを減算した値(A2−β)に定められている。ちなみに、設定量βは、中速位置Mに対応する設定上限電流値A2と低速位置Lに対応する設定上限電流値A3との差よりも小さい値である。換言すれば、通常制御用の設定上限電流値A2が、刈取処理直後用の設定上限電流値A2−βよりも、設定量βだけ大きく定められている。
【0114】
したがって、制御装置79は、上述の如く、油圧モータ7Mの斜板7Maを維持する設定目標位置として中速位置Mが選択されているときに、上記した刈抜け走行中であると判断すると、刈取処理直後用の操作力調整処理を実行することになる。
そして、刈取処理直後用の操作力調整処理おいては、圧力制御弁58に通電する電流値aが、通常走行用の設定上限電流値A2よりも小さい刈取処理直後用の設定上限電流値A2−βを超えて増加させることがないため、通常走行用の操作力調整処理を実行するときよりも、小さな走行負荷にて油圧モータ7Mの斜板7Maが中速位置Mよりも低速側に操作されることになり、エンジン6に作用する走行負荷が小さくなる。
ちなみに、上述の如く、通常走行用の設定上限電流値A2が刈取処理直後用の設定上限電流値A2−βよりも大きく定められるから、刈取処理直後用の操作力調整処理は、刈取処理直後用の設定上限電流値A2−βを超えて圧力制御弁58に通電する電流値aを増加させる形態にて圧力制御弁58に通電する電流値を制御する処理を行うことになる。
【0115】
又、上述の如く、走行負荷が増大したときには、静油圧式無段変速装置7における油圧モータ7Mの斜板7Maを、設定目標位置としての高速位置H、中速位置M、及び、低速位置Lから低速側に移動させることにより、エンジン6の負荷を軽減させるものであるが、このように走行速度を減速させるのにも拘らず、エンジン6の負荷が過大であるときには、制御装置79が、静油圧式無段変速装置7における油圧ポンプ7Pの斜板7Paを電動モータ55により減速側に操作する減速操作処理を行うように構成されている。
説明を加えると、図4に示すように、エンジン6の回転数Eを検出する回転数センサー90が備えられており、回転数センサー90の検出値E1が制御装置79に入力されている。運転部3に、ボリューム等にて構成されるダイヤル操作型式のアクセル操作具91が備えられて、アクセル操作具91の操作位置情報が制御装置79に入力されている。アクセル操作具91は無負荷状態でのエンジン6の回転数E2を設定するものであり、詳述はしないが、アクセル操作具91の操作位置情報に基づいてエンジン6の電子ガバナ(図示せず)が操作されるように構成されている。
そして、制御装置79は、アクセル操作具91によって設定された無負荷状態でのエンジン6の回転数E2と、回転数センサー90により検出されるエンジン6の回転数E1との差(エンジン負荷に相当)を求めて、その差が過負荷判別用の設定値E3よりも大きいと電動モータ55により変速レバー43を低速側に操作して、静油圧式無段変速装置7における油圧ポンプ7Pの斜板7Paを低速側に操作するように構成されている。
【0116】
次に、刈抜け走行中の判別について説明する。
図1に示すように、刈取穀稈を脱穀装置4に搬送する穀稈搬送装置にて搬送される穀稈の株元に検出作用して、その存否を検出する株元センサーUが、刈取作業状態であるか否かを検出する刈取作業状態検出手段として設けられており、この株元センサーUの検出情報が、図4に示すように、制御装置79に入力されている。
【0117】
また、制御装置79が、操向レバー77の操作位置を検出する操作位置検出センサーQの検出情報に基づいて、操向レバー77が中立位置nから左右に設定角度(例えば2度)を超えて揺動されると、旋回状態であると検出し、操向レバー77が中立位置n及びそれから左右に設定角度(例えば2度)を超えて揺動されていないと非旋回状態であると検出するように構成されている。つまり、操作位置検出センサーQが、旋回状態であるか否かを検出する旋回状態検出手段と機能するように構成されている。
【0118】
さらに、制御装置79が、アクセル操作具91によって設定された無負荷状態でのエンジン6の回転数E2と、回転数センサー90により検出されるエンジン6の回転数E1との差(エンジン負荷に相当)を求めて、その差が刈抜け走行判別用の設定値より大きい状態であるか否か、換言すれば、エンジン負荷が設定量以上であるか否かを検出するように構成されている。ちなみに、刈抜け走行判別用の設定値は、過負荷判別用の設定値E3よりも十分小さな値である。例えば、エンジン6が1分当たりに3000回を回転するとして、刈抜け走行判別用の設定値は、1分当たりに100回程度の値に設定されるのに対して、過負荷判別用の設定値E3は、1分当たりに300〜500回程度の値に設定されることになる。
尚、本実施形態においては、回転数センサー90が、エンジン6に作用するエンジン負荷を検出するエンジン負荷検出手段として機能することになる。
【0119】
そして、制御装置79が、株元センサーUにて刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちであって、切り換わりが検出されてから設定時間(例えば、3秒)が経過する間において、旋回状態であり且つエンジン負荷が設定量以上であることを検出すると、刈抜け走行中であると判別し、そして、株元センサーUにて刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちであっても、切り換わりが検出されてから設定時間(例えば、3秒)が経過する間において、旋回状態を検出しない又は
エンジン負荷が設定量以上であることを検出しないと、非刈抜け走行中であると判別するように構成され、そして、非刈抜け走行中であると判別すると、上述の如く、刈取処理直後用の操作力調整処理を実行することになる。
【0120】
さらに、制御装置79が、刈抜け走行中であると判別しているとき、つまり、刈取処理直後用の操作力調整処理を実行しているときに、株元センサーUにて非刈取作業状態から刈取作業状態に切り換ったことが検出される、又は、旋回状態から非旋回状態に切り換ったことが検出されると、非刈抜け走行中であると判別するように構成され、そして、非刈抜け中であると判別すると、上述の如く、刈取処理直後用の操作力調整処理に代えて、通常走行用の操作力調整処理を実行することになる。
【0121】
加えて、制御装置79が、刈抜け走行中であると判別しているときに、つまり、刈取処理直後用の操作力調整処理を実行しているときに、回転数センサー90にて検出されるエンジン回転数をサンプリングして、そのサンプリングしたエンジン回転数が、以前にサンプリングした最も低い回転数(エンジン負荷の最大負荷に相当)から設定量(例えば、1分当たりで30回転)増加すると(エンジン負荷としては設定量減少すると)、非刈抜け走行中であると判別するように構成され、そして、刈取処理直後用の操作力調整処理に代えて、通常走行用の操作力調整処理を実行するように構成されている。
つまり、刈抜け走行中において、極力早期に非刈抜け走行中であると判別して、極力早期に通常走行用の操作力調整処理が実行されるようにしてある。
【0122】
以下、制御装置79の制御作動について、図7〜図11に示すフローチャートに基づいて説明を加える。
図7は、メインフローを示すものであり、電源が投入されると、先ず初期設定を行うことになる(#1)。この初期設定において、移動走行状態を設定する。
初期設定を行うと、次に、移動走行状態であるか否かを判別し(#2)、移動走行状態であるときには、走行変速スイッチ81が操作されたか否か、つまり、走行変速スイッチ81がONになったか否かを判別し(#3)、走行変速スイッチ81が操作されていなければ、刈取りクラッチ17及び脱穀クラッチ4Aを遮断状態とし、刈取変速装置18を低速にする移動走行状態用処理(#4)、及び、静油圧式無段変速装置7における油圧モータ7Mの斜板7Maを高速位置Hに維持する高速操作処理(#5)を実行する。
次に、エンジン6の負荷が過大のときには、静油圧式無段変速装置7における油圧ポンプ7Pの斜板7Paを電動モータ55により減速側に操作する減速操作処理を実行し(#6)、その後、#2の移動走行状態であるか否かを判別する処理に戻ることになる。
【0123】
#3にて走行変速スイッチ81が操作されたことを判別されると、標準刈取状態への変更であるとして、刈取りクラッチ17及び脱穀クラッチ4Aを伝動状態とし、刈取変速装置18を低速にする標準刈取状態用処理(#10)、及び、静油圧式無段変速装置7における油圧モータ7Mの斜板7Maを中速位置Mに維持する中速操作処理(#11)を実行し、その後、#6の減速操作処理に移行する。
【0124】
#2にて移動走行状態でないことを判別すると、標準刈取状態であるか否かを判別し(#7)、標準刈取状態である場合には、走行変速スイッチ81がONになったか否かを判別する(#8)。走行変速スイッチ81が操作されていなければ、刈取変速スイッチ82が操作されたか否か、つまり、刈取変速スイッチ82がONになったか否かを判別し(#9)、刈取変速スイッチ82が操作されていなければ、#10の標準刈取状態用処理に移行する。
【0125】
#8にて走行変速スイッチ81がONになったことを判別すると、移動走行状態への変更であるとして、#4の移動走行状態用処理に移行することになる。
#9にて刈取変速スイッチ82がONになったことを判別すると、低速刈取状態への変更であるとして、刈取りクラッチ17及び脱穀クラッチ4Aを伝動状態とし、刈取変速装置18を高速にする低速刈取状態用処理(#13)、及び、静油圧式無段変速装置7における油圧モータ7Mの斜板7Maを低速位置Lに維持する低速操作処理(#14)を実行し、その後、#6の減速操作処理に移行する。
【0126】
#7にて標準刈取状態でないことを判別すると、つまり、低速刈取状態であることを判別すると、#12にて刈取変速スイッチ82がONになったか否かを判別し、刈取変速スイッチ82がONになったことを判別すると、標準刈取状態への変更であるとして、#10の標準刈取状態用処理に移行し、そして、#12にて刈取変速スイッチ82がONになったことを判別しないと、#13の低速刈取状態用処理に移行することになる。
【0127】
図8は、上述した高速操作処理の制御作動を示すものであり、この高速操作処理は、制御装置79が通常走行用の操作力調整処理を実行することに対応することになる。
先ず、操作シリンダ56のピストンの位置を検出するポテンショメータ89の検出値Pが高速位置Hに対応する位置であるか否かを判別し(#21)、検出値Pが高速位置Hに対応する位置である場合には、メインフローに戻ることになる。
#21にて検出値Pが高速位置Hに対応する位置でないことを判別した場合には、検出値Pが高速位置Hに対応する位置よりも高速側であるか否かを判別し(#22)、高速側であることを判別すると、現在の目標電流値Aから設定量αを減算した値を新たな目標電流値Aとして設定し(#23)、電流検出センサーDにて検出される電流値aが新たな目標電流値Aになるように駆動回路93に対して電流増減指令を指令する電流制御処理を実行し(#24)、その後、メインフローに戻ることになる。
【0128】
#22にて検出値Pが高速位置Hに対応する位置よりも高速側でないこと、つまり、検出値Pが高速位置Hに対応する位置よりも低速側であることを判別すると、目標電流値Aが高速位置Hに対応する設定上限電流値A1よりも小であるか否かを判別し(#25)、小であることが判別した場合には、#26にて現在の目標電流値Aに設定量αを加算した値を新たな目標電流値Aとして設定し、その後、#24の電流制御処理に移行することになる。
また、#25にて目標電流値Aが高速位置Hに対応する設定上限電流値A1よりも小でないこと判別した場合は、#27にて現在の目標電流値Aを設定上限電流値A1に設定して、#24の電流制御処理に移行することになる。
【0129】
図9は、上述した中速操作処理の制御作動を示すものであり、この中速操作処理は、制御装置79が通常走行用の操作力調整処理と刈取処理直後用の操作力調整処理とを実行することに対応することになる。
先ず、刈抜け走行中であるか否かを判別する刈抜け走行中判別処理を実行し(#40)、次に、操作シリンダ56のピストンの位置を検出するポテンショメータ89の検出値Pが中速位置Mに対応する位置であるか否かを判別し(#41)、検出値Pが中速位置Mに対応する位置である場合には、メインフローに戻ることになる。
#41にて検出値Pが中速位置Mに対応する位置でないことを判別した場合には、検出値Pが中速位置Mに対応する位置よりも高速側であるか否かを判別し(#42)、高速側であることを判別すると、現在の目標電流値Aから設定量αを減算した値を新たな目標電流値Aとして設定し(#43)、電流検出センサーDにて検出される電流値aが新たな目標電流値Aになるように駆動回路93に対して電流増減指令を指令する電流制御処理を実行し(#44)、その後、メインフローに戻ることになる。
【0130】
#42にて検出値Pが中速位置Mに対応する位置よりも高速側でないこと、つまり、検出値Pが中速位置Hに対応する位置よりも低速側であることを判別すると、前述の刈抜け走行中判別処理にて判別された結果が刈抜け走行中であるか否かを判別する(#45)。
そして、#45にて刈抜け走行中でないと判別したとき、つまり、非刈抜け走行中であると判別したときには、通常制御用の設定上限電流値A2を、判別用設定値Sに設定する(#46)。また、#45にて刈抜け走行中であると判別したときには、刈抜け直後用の設定電流値A2−βを、判別用設定値Sに設定する(#47)。
【0131】
次に、目標電流値Aが判別用設定値Sよりも小であるか否かを判別し(#48)、小であることが判別した場合には、#49にて現在の目標電流値Aに設定量αを加算した値を新たな目標電流値Aとして設定し、その後、#44の電流制御処理に移行する。
また、#48にて目標電流値Aが判別用設定値Sよりも小でないこと判別した場合は、#50にて目標電流値Aとして判別用設定値Sを設定して、#44の電流制御処理に移行することになる。
【0132】
尚、この中速操作処理においては、#45にて刈抜け走行中であると判別したときに、#47にて刈抜け直後用の設定電流値A2−βを、判別用設定値Sに設定する処理を行うようにすることにより、制御装置79が、刈取処理直後用の操作力調整処理を実行することになり、そして、#45にて刈抜け走行中でないと判別したとき、つまり、非刈抜け走行中であると判別したときに、#46にて通常制御用の設定上限電流値A2を、判別用設定値Sに設定する処理を行うようにすることにより、制御装置79が、通常走行用の操作力調整処理を実行する。
【0133】
図10は、上述した低速操作処理の制御作動を示すものであり、この低速操作処理は、制御装置79が通常走行用の操作力調整処理を実行することに対応することになる。
先ず、操作シリンダ56のピストンの位置を検出するポテンショメータ89の検出値Pが低速位置Lに対応する位置であるか否かを判別し(#61)、検出値Pが低速位置Lに対応する位置である場合には、メインフローに戻ることになる。
#61にて検出値Pが低速位置Lに対応する位置でないことを判別した場合には、検出値Pが低速位置Lに対応する位置よりも高速側であるか否かを判別し(#62)、高速側であることを判別すると、現在の目標電流値Aから設定量αを減算した値を新たな目標電流値Aとして設定し(#63)、電流検出センサーDにて検出される電流値aが新たな目標電流値Aになるように駆動回路93に対して電流増減指令を指令する電流制御処理を実行し(#64)、その後、メインフローに戻ることになる。
【0134】
#62にて検出値Pが低速位置Lに対応する位置よりも高速側でないこと、つまり、検出値Pが低速位置Hに対応する位置よりも低速側であることを判別すると、目標電流値Aが低速位置Lに対応する設定上限電流値A3よりも小であるか否かを判別し(#65)、小であることが判別した場合には、#66にて現在の目標電流値Aに設定量αを加算した値を新たな目標電流値Aとして設定し、その後、#64の電流制御処理に移行することになる。
また、#65にて目標電流値Aが低速位置Lに対応する設定上限電流値A3よりも小でないこと判別した場合は、#67にて現在の目標電流値Aを設定上限電流値A3に設定して、#64の電流制御処理に移行することになる。
【0135】
図11は、上述した減速操作処理の制御作動を示すものである。
アクセル操作具91によって設定された無負荷状態でのエンジン6の回転数E2と、回転数センサー90により検出されるエンジン6の回転数E1との差(走行負荷に相当)を求めて、その差が設定値E3よりも大きいか否かを判別し(#80)、大きくないと判別した場合には、メインフローに戻ることになる。
【0136】
#80にて、無負荷状態でのエンジン6の回転数E2と回転数センサー90により検出されるエンジン6の回転数E1との差が設定値E3よりも大きいと判別した場合には、電動モータ55により変速レバー43を設定量低速側に操作する設定量減速処理を実行することになる(#81)。
この設定量減速操作処理としては、詳述はしないが、変速レバー43の位置を検出する位置検出手段の検出情報に基づいて、変速レバー43を現在位置から設定量減速した位置に移動させるように電動モータ55を作動させることになる。
【0137】
図12は、上述した刈抜け走行中判別処理の制御作動を示すものである。
先ず、刈抜け走行中を設定済みであるか否かを判別する(#90)。
#90にて設定済みでないと判別した場合においては、#91にて株元センサーUの検出情報が刈取作業状態から非刈取作業状態切り換ってからの時間が設定時間としての3秒以内であること、つまり、株元センサーUの検出情報がONからOFFになってからの経過時間が3秒以内であることが判別され、#92にて旋回が開始されたことが判別され、さらに、#93にてエンジン負荷が設定量以上であること、つまり、無負荷状態でのエンジン6の回転数E2と回転数センサー90により検出されるエンジン6の回転数E1との差(エンジン負荷に相当)が、刈抜け走行判別用の設定値より大きい状態であることが判別されると、#94にて刈抜け走行中であることが設定されることになる。
【0138】
#91にて株元センサーUの検出情報がONからOFFになってからの経過時間が3秒以内でないことが判別された場合、#92にて旋回が開始されていないことが判別された場合、さらに、#93にてエンジン負荷が設定量未満であることが判別された場合には、#99にて非刈取走行中であることが設定されることになる。
【0139】
#90にて刈抜け走行中を設定済みであると判別した場合には、刈抜け走行中が設定されたのちにおいて回転数センサー90にて検出されるエンジン6の回転数E1のうちで最も低い回転数を記憶する処理を実行する(#95)。この記憶する処理は、順次サンプリングする回転数が、以前に記憶した回転数よりも低ければその回転数を記憶し、以前に記憶した回転数以上であれば、以前に記憶した回転数を継続して記憶する処理である。
【0140】
その後、#96にて株元センサーUが刈取作業状態を検出したことが判別される場合、#97にて旋回が終了したことが判別される場合、及び、#98にて、エンジン6の回転数E1が#95の処理にて記憶されている回転数よりも設定回転数以上上昇したことが判別される場合のいずれかの場合が満たされると、#99にて非刈抜け走行中であることが設定される。
【0141】
また、#96にて株元センサーUが刈取作業状態を検出したことが判別されず、#97にて旋回が終了したことが判別されず、さらに、#98にて、エンジン6の回転数E1が#95の処理にて記憶されている回転数よりも設定回転数以上上昇したことが判別されないと、#94に移行することになる。
【0142】
〔別の実施形態〕
以下、本発明の別実施形態について説明する。
【0143】
(1)上記実施形態では、保持手段として、操作力が供給される油圧の圧力にて変更され る油圧シリンダを例示したが、その他の構成のものを使用できる。
例えば、操作部を高速側に移動されるための駆動回転体と、その駆動回転体と操作部 とを伝達力を変更調整自在な摩擦伝動機構を用いて連動連結して、摩擦伝動機構の伝達 力を変更調整することにより、操作部を高速側に移動する操作力を変更調整できるよう に構成して実施できる。
そして、保持手段の操作力を変更調整する操作力調整手段は、保持手段の構成に応じ て種々変更される。
【0144】
(2)上記実施形態では、操作部を維持させる設定目標位置が、高速位置、中速位置、及 び、低速位置の異なる3つの位置である場合を例示したが、例えば、中速位置だけを設 定目標位置として定める形態で実施してもよく、また、4つ以上の多数位置を設定目標 位置として定める形態で実施してもよい。
【0145】
(3)上記実施形態では、通常走行用の操作力調整処理を実行させる際において、通常制 御用の設定上限値を設定する場合を例示したが、通常制御用の設定上限値を設定しない 形態で実施するようにしてもよい。
また、上記実施形態で述べた如く、通常制御用の設定上限値を設定する場合において も、上記実施形態の如く、操作部を維持させる3つの設定目標位置の夫々に対して、低 速側の設定目標位置ほど低くする状態で各別に定めるようにするに代えて、例えば、高 速位置に対応する設定上限値のみを定める形態で実施してもよい。
【0146】
(4)上記実施形態では、引き起こし装置を備えたコンバインを例示したが、引き起こし 装置を備えない形態等の各種形式のコンバインに本願発明は適用できるものである。
【0147】
(5)上記実施形態では、エンジンが過負荷になると、静油圧式無段変速装置の油圧モー タを減速操作する減速操作処理を行う場合を例示したが、この減速操作処理を備えない 形態で実施してもよい。
【0148】
(6)上記実施形態では、刈取作業状態検出手段にて刈取作業状態から非刈取作業状態に 切り換ったことが検出されたときには、そのときから設定時間(例えば3秒)が経過す るまでの間に、旋回状態であることが検出され且つエンジン負荷が設定量以上であるこ とが検出されたときに、刈抜け走行中であるとして、刈取直後用の操作力調整処理を実 行するように構成する場合を例示したが、刈取作業状態検出手段にて刈取作業状態から 非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたときから設定時間(例えば3秒)が経過 するまでの間の条件を外して、単に、刈取作業状態検出手段にて刈取作業状態から非刈 取作業状態に切り換ったことが検出されたのちに、旋回状態であることが検出され且つ エンジン負荷が設定量以上であることが検出されたときに、刈抜け走行中であるとして 、刈取直後用の操作力調整処理を実行するように構成するようにしてもよい。
ちなみに、刈取作業状態検出手段にて刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換った ことが検出されたときから設定時間(例えば3秒)が経過するまでの間の条件は、脱穀 装置内に残存する処理物が多量に存在する時間であることを判断するための条件であり 、この条件を加えた方が、不必要に刈抜け走行中であると判別することを回避し易いも のとなる。
【0149】
(7)上記実施形態では、刈取作業状態検出手段にて刈取作業状態から非刈取作業状態に 切り換ったことが検出されたときには、そのときから設定時間(例えば3秒)が経過す るまでの間に、旋回状態であることが検出され且つエンジン負荷が設定量以上であるこ とが検出されたときに、刈抜け走行中であるとして、刈取直後用の操作力調整処理を実 行するように構成する場合を例示したが、刈取作業状態検出手段にて刈取作業状態から 非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちにおいては、単に、刈取処理直後用 の操作力調整処理を実行するように構成してもよい。
【0150】
(8)上記実施形態では、刈取作業状態検出手段にて刈取作業状態から非刈取作業状態に 切り換ったことが検出されたときには、そのときから設定時間(例えば3秒)が経過す るまでの間に、旋回状態であることが検出され且つエンジン負荷が設定量以上であるこ とが検出されたときに、刈抜け走行中であるとして、刈取直後用の操作力調整処理を実 行するように構成する場合を例示したが、エンジン負荷が設定量以上であることが検出 されたことを判別する条件を外して、刈取作業状態検出手段にて刈取作業状態から非刈 取作業状態に切り換ったことが検出されたときには、そのときから設定時間(例えば3 秒)が経過するまでの間に、旋回状態であることが検出されたときに、刈抜け走行中で あるとして、刈取直後用の操作力調整処理を実行するように構成してもよい。
この場合、刈取作業状態検出手段にて刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換った ことが検出されたときから設定時間(例えば3秒)が経過するまでの間の条件を外して 、単に、刈取作業状態検出手段にて刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったこと が検出されたのちに、旋回状態であることが検出されたときに、刈抜け走行中であると して、刈取直後用の操作力調整処理を実行するように構成するようにしてもよい。
【0151】
(9)上記実施形態では、刈取作業状態検出手段として、穀稈搬送装置にて搬送される穀稈を検出作用する株元センサーを例示したが、例えば、機体の前方に位置する圃場の穀稈の存否を検出するセンサー等の種々の形態のものを、刈取作業状態検出手段として用いることができる。
【0152】
(10)上記実施形態では、エンジンの回転数を検出する回転数センサーを、エンジン負荷検出手段として用いる場合を例示したが、エンジンが出力するトルクを検出するトルクセンサーをエンジン負荷検出手段として用いてエンジン負荷を検出する等、エンジン負荷を検出する構成は種々変更できる。
【0153】
(11)上記実施形態では、刈取処理直後用の設定上限値としての刈取処理直後用の設定上限電流値を、通常制御用の設定上限電流値から設定量を減算する形態で定めるようにしたが、通常制御用の設定上限電流値から減算する設定量を、制御手段によって、エンジンの負荷が大きいときほど大きな量に定めるようにしてもよい。このようにすれば、エンジン負荷が大きいときには、油圧モータの回転速度を低速側に操作し易いものとなり、走行負荷を十分に軽減させることができる。
【符号の説明】
【0154】
2 刈取処理部
4 脱穀装置
6 エンジン
7 静油圧式無段変速装置
7M 静油圧式無段変速装置の油圧モータ
7Ma 操作部(斜板)
46 保持手段(油圧シリンダ)
48 操作力調整手段(電磁比例弁)
79 制御手段
81,82 選択手段
89 位置検出手段



【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取処理部、脱穀装置及び走行用の静油圧式無段変速装置に対してエンジンの動力が伝達されるように構成されたコンバインの走行制御装置であって、
前記静油圧式無段変速装置の可変容量型の油圧モータにおける容量変更用の操作部が設定目標位置から低速側に移動するのを高速側に移動操作する操作力にて保持する保持手段と、
前記保持手段の操作力を変更調整する操作力調整手段と、
前記操作部の位置を検出する位置検出手段と、
刈取作業状態であるか否かを検出する刈取作業状態検出手段と、
前記位置検出手段の検出情報に基づいて、前記操作部を設定目標位置に維持させるように前記操作力調整手段の作動を制御する操作力調整処理を実行する制御手段が設けられ、
前記制御手段が、前記刈取作業状態検出手段にて前記刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちにおいては、前記操作力調整処理として、前記操作部が前記設定目標位置よりも低速側に移動しても、刈取処理直後用の設定上限値を超えて前記保持手段の操作力を増加させない形態にて前記操作力調整手段の作動を制御する刈取処理直後用の操作力調整処理を実行するように構成されているコンバインの走行制御装置。
【請求項2】
旋回状態であるか否かを検出する旋回状態検出手段が設けられ、
前記制御手段が、前記刈取作業状態検出手段にて前記刈取作業状態から非刈取作業状態切り換ったことが検出されたのちであって、前記旋回状態検出手段にて旋回状態であることが検出されたときに、前記刈取処理直後用の操作力調整処理を実行し、前記刈取作業状態検出手段にて前記刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちであっても、前記旋回状態検出手段にて旋回状態であることが検出されないときには、前記操作力調整処理として、前記刈取処理直後用の設定上限値を超えて前記保持手段の操作力を増加させる形態で前記操作力調整手段の作動を制御する通常走行用の操作力調整処理を実行するように構成されている請求項1記載のコンバインの走行制御装置。
【請求項3】
前記制御手段が、前記刈取作業状態検出手段にて前記刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちであって、切り換ったことが検出されてから設定時間が経過するまでの間に、前記旋回状態検出手段にて旋回状態であることが検出されたときに、前記刈取処理直後用の操作力調整処理を実行し、前記刈取作業状態検出手段にて前記刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちであっても、切り換ったことが検出されてから前記設定時間が経過するまでの間に、前記旋回状態検出手段にて旋回状態であることが検出されないときには、前記操作力調整処理として、前記刈取処理直後用の設定上限値を超えて前記保持手段の操作力を増加させる形態で前記操作力調整手段の作動を制御する通常走行用の操作力調整処理を実行するように構成されている請求項2記載のコンバインの走行制御装置。
【請求項4】
旋回状態であるか否かを検出する旋回状態検出手段、及び、前記エンジンに作用するエンジン負荷を検出するエンジン負荷検出手段が設けられ、
前記制御手段が、前記刈取作業状態検出手段にて前記刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちであって、前記旋回状態検出手段にて旋回状態であることが検出され且つ前記エンジン負荷検出手段にて検出されるエンジン負荷が設定量以上であることが検出されたときに、前記刈取処理直後用の操作力調整処理を実行し、前記刈取作業状態検出手段にて前記刈取作業状態から非刈取作業状態に切り換ったことが検出されたのちであっても、前記旋回状態検出手段にて旋回状態であることが検出されないとき又は前記エンジン負荷検出手段にてエンジン負荷が設定量以上であることが検出されないときには、前記刈取処理直後用の設定上限値を超えて前記保持手段の操作力を増加させる形態で前記操作力調整手段の作動を制御する通常走行用の操作力調整処理を実行するように構成されている請求項1記載のコンバインの走行制御装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記刈取処理直後用の操作力調整処理を実行しているときに、前記刈取作業状態検出手段にて前記非刈取作業状態から前記刈取作業状態に切り換ったことが検出されると、その後においては、前記通常走行用の操作力調整処理を実行するように構成されている請求項2〜4のいずれか1項に記載のコンバインの走行制御装置。
【請求項6】
前記制御手段が、前記刈取処理直後用の操作力調整処理を実行しているときに、前記刈取作業状態検出手段にて前記非刈取作業状態から前記刈取作業状態切り換ったことが検出される又は前記旋回状態検出手段にて前記旋回状態から非旋回状態に切り換ったことが検出されると、その後においては、前記通常走行用の操作力調整処理を実行するように構成されている請求項2〜4のいずれか1項に記載のコンバインの走行制御装置。
【請求項7】
前記制御手段が、前記刈取処理直後用の操作力調整処理を実行しているときに、前記エンジンに作用するエンジン負荷を検出するエンジン負荷検出手段にて検出される前記エンジン負荷が、その刈取処理直後用の操作力調整処理の実行中において以前に検出された最大負荷から設定量減少すると、その後においては、前記通常走行用の操作力調整処理を実行するように構成されている請求項2〜6のいずれか1項に記載のコンバインの走行制御装置。
【請求項8】
前記設定目標位置として、異なる位置となる複数の設定目標位置が定められ、
前記複数の設定目標位置のいずれかを選択する選択手段が設けられ、
前記制御手段が、前記操作力調整処理として、前記複数の設定目標位置のうちで、前記選択手段にて選択された設定目標位置に前記操作部を維持させるように前記操作力調整手段の作動を制御する処理を実行するように構成されている請求項2〜7のいずれか1項に記載のコンバインの走行制御装置。
【請求項9】
前記制御手段が、前記通常走行用の操作力調整処理として、前記操作部が前記設定目標位置よりも低速側に移動しても、前記刈取処理直後用の設定上限値よりも大きな値に設定された通常制御用の設定上限値を超えて前記保持手段の操作力を増加させない形態で前記操作力調整手段の作動を制御する処理を実行するように構成され、
前記刈取処理直後用の設定上限値が、前記複数の設定目標位置のうちの刈取処理作業用の設定目標位置であって、その刈取処理作業用の設定目標位置のうちの少なくとも高速側の設定目標位置に対応して定められ、
前記通常制御用の設定上限値が、前記複数の設定目標位置の夫々に対して、低速側の設定目標位置ほど低くする状態でかつ同じ設定目標位置について定められた前記刈取処理直後用の設定上限値よりも大きな値とする状態で定められている請求項8記載のコンバインの走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−158222(P2010−158222A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3801(P2009−3801)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】