説明

コンバイン

【課題】 エンジンを収容配備した運転部の後方に穀粒回収部を設けたコンバインにおいて、燃料タンクの設置構造を工夫することでコスト低減を図る。
【解決手段】 穀粒回収部4の前部に立設した支持枠36の上部に燃料タンク42を装着してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを収容配備した運転部の後方に穀粒回収部を設けたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記構成のコンバインにおいて、燃料タンクは例えば、特許文献1に開示されているように、機体後部下方に設置されたり、あるいは、特許文献2に開示されているように、運転部におけるステップ下方に配備されている。
【特許文献1】特開2002−95331号公報
【特許文献2】特開2000−262133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、燃料タンクを機体の低位置に設置することで燃料補給が容易に行うことができるが、燃料タンクがエンジンに対して低い位置にあるので、燃料タンクからエンジンへの燃料供給系に電動式のフィードポンプを装備する必要があり、その分、コストアップとなるものであった。
【0004】
燃料の残量を知るために、燃料タンクに液面センサを備え、これに機械的あるいは電気的に連係した燃料計を運転部の操作パネルなどに設けており、これもコストアップの一因となっていた。
【0005】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、燃料タンクの設置構造を工夫することでコスト低減を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、エンジンを収容配備した運転部の後方に穀粒回収部を設けたコンバインにおいて、
前記穀粒回収部の前部に立設した支持枠の上部に燃料タンクを装着してあることを特徴とする。
【0007】
上記構成によると、燃料タンクはエンジンよりも高い位置に設置されることになり、自重流下によって燃料をエンジンに供給することができる。
【0008】
従って、第1の発明によると、燃料タンクからエンジンへの燃料供給用のフィードポンプをなくすことができ、その分、コスト低減を図ることができる。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、
袋詰め用の吐出口を供えた穀粒ホッパを前記支持枠に連結支持して穀粒回収部を構成してあるものである。
【0010】
上記構成によると、穀粒ホッパを支持する頑丈な支持枠を燃料タンクの支持に共用することができ、部材の共用化によるコスト低減を図ることができる。
【0011】
第3の発明は、上記第1または2の発明において、
前記燃料タンクの上面と前記穀粒ホッパの上面とを略同高さに設定してあるものである。
【0012】
上記構成によると、燃料タンクへの燃料補給の際、補給用容器を燃料タンクや穀粒ホッパの上に載せて補給作業を楽に行うことができる。
【0013】
第4の発明は、上記第1〜3のいずれか一項の発明において、
前記燃料タンクの外側面に、液面透視式の燃料ゲージを設けてあるものである。
【0014】
上記構成によると、液面センサや燃料計が不要となり、コスト低減に有効となる。
【0015】
第5の発明は、上記第1〜4のいずれか一項の発明において、
上方に屈曲された鉤形の支持アームを前記支持枠に突設し、この支持アームに上方から前記燃料タンクを係入支持し、支持枠と支持アームとの亘って掛け渡した支持バンドで燃料タンクを上方から押さえ込み固定するよう構成してあるものである。
【0016】
上記構成によると、燃料タンクを支持アームで抱き込み支持できるので、重量の大きい大容量の燃料タンクでも確実強固に支持することができる。
【0017】
第6の発明は、上記第15のいずれか一項の発明において、
前記エンジンを覆うボンネットを機体横外方に回動開放可能に構成し、このボンネットの回動軌跡より上方に前記燃料タンクを設置してあるものである。
【0018】
上記構成によると、ボンネットを揺動開放してエンジンルームを大きく開放することができ、エンジン回りのメンテナンス性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1および図3に、本発明に係る普通型のコンバインの全体側面が、また、図2に、その全体平面がそれぞれ示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2に、軸流型の脱穀装置3と穀粒回収部4が左右に並列して配備されるとともに、穀粒回収部4の前方に運転部5が配備されている。脱穀装置3の前部に支点P周りに上下揺動自在に刈取り穀稈物搬送用のフィーダ6が連結され、このフィーダ6の前端に略機体横幅に相当する刈幅を有する刈取り部7が連結されている。
【0020】
刈取り部7は、左右一対の分草フレーム8に亘ってバリカン型の刈取り装置9、および、刈り取った作物を刈り幅中間に横送りするオーガ10が架設された構造となっており、オーガ10には横送り用の螺旋羽根10aと横送りされた穀稈をフィーダ6の始端に送り込む掻き込みフィンガー10bとが備えられている。フィーダ6には、縦回し巻回された左右のチェーン11aに亘って搬送バー11bを横架連結してなる掻き揚げコンベア11が内装されており、掻き込みフィンガー10bで送り込まれた穀稈がフィーダ底面に沿って掻き揚げ搬送されて脱穀装置3の前端に投入供給されるようになっている。
【0021】
走行機体2における機体フレーム12の前部とフィーダ6の下部との間に油圧シリンダ13が架設され、この油圧シリンダ13の伸縮作動によって刈取り部7がフィーダ6と一体に前記支点P周りに揺動昇降されるようになっている。刈取り部7の前部上方に、植立した穀稈を後方に掻き込んで引き上げる掻き込みリール14が、油圧シリンダ15によって支点r周りに昇降揺動される支持アーム16に前後位置調節可能に装備されている。
【0022】
運転部5には、運転座席17、操縦塔18、および、側部操作パネル19が設けられており、正面の操縦塔18には、左右操作によって機体操向を行い、前後操作によって刈取り部7の昇降を行う十字操作式の操縦レバー20や掻き込みリール14を昇降する操作レバー21などが備えられるとともに、側部操作パネル19には走行用の主変速レバー22、副変速レバー23、作業クラッチ用の操作レバー24が備えられている。運転座席15は、機体フレーム12に搭載されたエンジン25を囲繞する箱形のボンネット26の上に装着されている。
【0023】
図4,5に示すように、側部操作パネル19と運転ステップ27との間は側板28によって塞がれており、この側板28は、その上端辺においてのみ側部操作パネル19にネジ連結され、側板28の折出し下端辺28aが運転ステップ27に押さえ込み係止され、側板28の後端辺28bがボンネット26によって押さえ込み係止されるようになっている。
【0024】
前記穀粒回収部4は穀粒を袋詰め回収する仕様に構成されており、脱穀装置3で選別された穀粒を揚送するスクリュー式の揚送装置31、揚送された穀粒を貯留する穀粒ホッパ32、回収袋33を係止保持する袋受け棒34、作業デッキ35、等が備えられている。
【0025】
穀粒ホッパ32は機体フレーム12から立設された前後一対の支持枠36の上部に連結支持されており、その底部にスライドシャッター37を備えた吐出口38が前後一対備えられている。袋受け棒34は各吐出口38ごとに前後一対づつ横向き片持ち状に配備されており、複数枚の回収袋33が袋受け棒34に差し込まれてぶら下げ支持されるようになっている。
【0026】
作業デッキ35の外側端には、作業デッキ35に連なる作業姿勢と略鉛直に起立された格納姿勢とに切換え揺動可能な補助デッキ39が装備されており、作業デッキ35および補助デッキ39に搭乗した袋詰め作業者が、袋受け棒34に装着された回収袋33を、手前のものから順に吐出口38の下に装填し、満杯になった回収袋33における上端開口のファスナ(図示せず)を閉じて袋受け棒34から抜き外し、満杯の回収袋33を補助デッキ39に仮置きしたり圃場に放置したりする。なお、前側の支持枠36からは、デッキ上で立つ袋詰め作業者が身体を支えるための腰当てアーム40が延出されている。
【0027】
図6,7に示すように、穀粒ホッパ32を支持した前側の支持枠36は、左右一対の支柱枠36aを上下の横枠36b、36cで連結して構成されており、下側の横枠36cが機体内方に延長されて脱穀装置3の右側面に連結されている。各支柱枠36aの上部には、上方に屈曲された鉤型の支持アーム41が前方に突設されており、この支持アーム41に上方から燃料タンク42が係入支持されている。係入支持された燃料タンク42は、支持枠36と支持アーム41の先端部との亘って掛け渡した支持バンド43で上方から押さえ込み固定されるようになっている。
【0028】
燃料タンク42から供給管44を介して自重流出した燃料は、支持枠36に装着支持された水分離器45を経て燃料フィルタ46に流入し、水分およびゴミが除去された清浄な燃料がエンジン25の燃料噴射ポンプ30に流下供給される。燃料噴射ポンプ30から吐出された燃料の余剰分は戻し管47を介して燃料タンク42の上部に還元される。
【0029】
ボンネット26で囲繞されたエンジン25は、横外側にラジエータ48を立設配備した水冷横型のディーゼルエンジンが利用されており、ボンネット26の横外側に連設された吸気ダクト部49を介して導入された外気がラジエータ48に供給されるようになっている。前記吸気ダクト49は、ボンネット26の上面よりも高い縦長箱状に構成されるとともに、その横外側面には防塵網付きの吸気口50が形成されており、吸気口50を通過して除塵された外気がラジエータファン48aによって吸引されてラジエータ48に導かれ、ラジエータ48を通過した冷却排風が機体内方に流出することで、エンジンルーム内が換気されるようになっている。
【0030】
ボンネット26はその外側下端の前後向き支点qを中心に横外方に揺動開放して、エンジンルームを大きく開放することができるように構成されており、このボンネット26の回動軌跡より上方に燃料タンク42が配置されることになる。
【0031】
燃料タンク42は板金構造で箱形に構成されており、その上面の横外側より箇所にキャップ付きの補給口42aが突設されるとともに、燃料タンク42の横外側面には、上下端がタンク内に連通した透明管からなる燃料ゲージ51が装備され、燃料液面を外部から透視することができるようになっている。燃料タンク42の上面は、穀粒回収部4における穀粒ホッパ32の上面と略同高さとなるよう配置されており、燃料補給の際に、燃料補給容器を持ち上げて燃料タンク42や穀粒ホッパ32の上に載せることが可能となっている。
【0032】
前側の支持枠36にはエンジン25の吸気系に配管接続されたエアークリーナ52が取り付け支持されている。エアークリーナ52からは吸気管53が上方に延出され、その先端にプレクリーナ54が取り付けており、プレクリーナ54およびエアークリーナ52で除塵された清浄な空気が燃焼用空気としてエンジン25に供給さるようになっている。なお、プレクリーナ54を備えた吸気管53は脱穀装置3と穀粒ホッパ32との間に形成された空隙に挿通立設され、穀粒ホッパ32の側面に連結支持されている。
【0033】
〔他の実施例〕
【0034】
(1)燃料タンク42を支持枠36にスライド上下動可能に支持して、燃料タンク42を低い位置に降ろして燃料補給を行えるようにすることも可能である。
【0035】
(2)穀粒ホッパ32に代えて背の高い穀粒タンク(図示せず)を前記支持枠36に支持して、穀粒回収部4を構成することもできる。
【0036】
(3)板金構造の燃料タンク42の側面に、透明な樹脂板あるいはガラス板で閉塞された縦長の透視窓を設けて液面透視式の燃料ゲージ51とすることもできる。
【0037】
(4)簡易には、燃料タンク42を、燃料液面が外部から透視可能な半透明樹脂材で形成して、タンク側面全体が液面透視式の燃料ゲージとなる形態で実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】コンバイン全体の左側面図
【図2】コンバイン全体の平面図
【図3】コンバイン全体の右側面図
【図4】運転部の側面図
【図5】運転部の正面図
【図6】運転部周辺の側面図
【図7】運転部の縦断正面図
【符号の説明】
【0039】
4 穀粒回収部
5 運転部
25 エンジン
26 ボンネット
32 穀粒ホッパ
36 支持枠
38 吐出口
41 支持アーム
42 燃料タンク
43 支持バンド
51 燃料ゲージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを収容配備した運転部の後方に穀粒回収部を設けたコンバインにおいて、
前記穀粒回収部の前部に立設した支持枠の上部に燃料タンクを装着してあることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
袋詰め用の吐出口を供えた穀粒ホッパを前記支持枠に連結支持して前記穀粒回収部を構成してある請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記燃料タンクの上面と前記穀粒ホッパの上面とを略同高さに設定してある請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記燃料タンクの外側面に、液面透視式の燃料ゲージを設けてある請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項5】
上方に屈曲された鉤形の支持アームを前記支持枠に突設し、この支持アームに上方から前記燃料タンクを係入支持し、支持枠と支持アームとの亘って掛け渡した支持バンドで燃料タンクを上方から押さえ込み固定するよう構成してある請求項1〜4のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記エンジンを覆うボンネットを機体横外方に回動開放可能に構成し、このボンネットの回動軌跡より上方に前記燃料タンクを設置してある請求項1〜5のいずれか一項に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−151440(P2007−151440A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349381(P2005−349381)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】