説明

コンプレッサのベルト保護機構の状態検出装置

【課題】 コンプレッサのベルト保護機能の作動又は非作動を検出する精度が高く、ベルト保護機能が作動している場合には、乗員にベルト保護機能が作動している旨を知らせることができるコンプレッサのベルト保護機構の状態検出装置を提供する。
【解決手段】 コンプレッサ10の電磁クラッチ12に温度ヒューズ13を設け、前記温度ヒューズ13の溶断に伴い電磁クラッチ12が開放されるコンプレッサ10のベルト保護機構において、前記温度ヒューズ13の電源30側に電流が流れているかを判別する信号と前記温度ヒューズ13のエアコンECU16側に電流が流れているかを判別する信号とを検出し、前記両信号を比較することで前記ベルト保護機構の作動又は非作動を検出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載されるエアーコンディショナー等に用いられている、コンプレッサのベルト保護機構の状態検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車等に搭載されるエアーコンディショナー(以下、エアコン)等に用いられているコンプレッサには、コンプレッサが過熱等の理由によりロックしてしまった場合、Vベルトを保護する機構(以下、ベルト保護機構)が設けられているものがある。このベルト保護機構には主にスピードセンサによる方式と温度ヒューズによる方式がある。
【0003】
スピードセンサによる方式は、コンプレッサシャフトの回転数とエンジンの回転数を比較し、ベルトのスリップを検出し、これに伴いコンプレッサの電磁クラッチ(以下、コンプレッサクラッチ)を開放してコンプレッサの作動を停止している。
【0004】
温度ヒューズによる方式は、ベルトのすべり時に発生する熱で温度ヒューズが切れ、これに伴いコンプレッサクラッチを開放し、コンプレッサの作動を停止している。この2つの方法のうち、近年ではコスト的に安価な温度ヒューズによる方式がより多く採用されている。この他にも、ベルト保護機構の一例が下記特許文献1に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−270644号公報
【0006】
また、ベルト保護機構として上記の温度ヒューズによる方式を採用した場合、ベルト保護機能が作動しているか否かを判別する方式として、主に冷媒の圧力差による検出方式とエバポレータの前後空気温度差による検出方式がある。
【0007】
冷媒の圧力差による検出方式では、冷媒の圧力からベルト保護機構が作動しているか否かを判別している。エバポレータの前後空気温度差による検出方式では、エバポレータ前後の空気温度の差からベルト保護機構が作動しているか否かを判別している。
【0008】
上記の冷媒圧力検出方式とエバポレータ前後空気温度検出方式では、ベルト保護機構が作動している場合には、エアコンの運転信号をOFFにし、同時にエアコンの状態表示インジケータを点滅させることにより、乗員にコンプレッサの異常を知らせている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている方式では、ベルト保護機構が作動している場合、乗員にベルト保護機構が作動していることを知らせる機能が無いため、乗員がコンプレッサに問題が発生していることに気が付かない虞がある。
【0010】
また、冷媒の圧力差による検出方式の場合、外気温が低い時は、コンプレッサ作動時と非作動時とで冷媒の圧力差が小さいため、ベルト保護機構が作動しているか否かの判別ができない虞がある。また、冷媒の圧力を検出するための冷媒圧力検出用センサが必要となり、システム構築のためのコストが高価である。さらに、この方式では誤検出防止のため判定時間を長く設定する必要があるため、検出までに時間を要する。
【0011】
また、エバポレータの前後空気温度差による検出方式の場合、外気温が低い時は、コンプレッサ作動時であってもエバポレータ前後の空気温度の差が小さいため、ベルト保護機構が作動しているか否かの判断ができない虞がある。また、エバポレータ前後の空気の温度が安定するまでに時間がかかるため、誤検出防止のため判定時間を長く設定する必要があり検出までに時間を要する。
【0012】
これらのことから、本発明は、コンプレッサのベルト保護機構の作動又は非作動を検出する精度が高く、ベルト保護機構が作動している場合には、ベルト保護機構が作動していることを乗員に知らせることができるコンプレッサのベルト保護機構の状態検出装置を、システムコストを増大させることなく提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための第1の発明(請求項1に対応)に係るコンプレッサのベルト保護機構の状態検出装置は、コンプレッサの電磁クラッチに温度ヒューズを設け、前記温度ヒューズの溶断に伴い電磁クラッチが開放されるコンプレッサのベルト保護機構において、前記温度ヒューズの電源側に電流が流れているかを判別する信号と前記温度ヒューズのエアコンECU側に電流が流れているかを判別する信号とを検出し、前記両信号を比較することで前記ベルト保護機構の作動又は非作動を検出することを特徴とする。
【0014】
上記の課題を解決するための第2の発明(請求項2に対応)に係るコンプレッサのベルト保護機構の状態検出装置は、コンプレッサの電磁クラッチに温度ヒューズを設け、前記温度ヒューズの溶断に伴い電磁クラッチが開放されるコンプレッサのベルト保護機構において、エンジンを制御するエンジンECUから発信され前記電磁クラッチを接続又は開放させる命令信号と前記温度ヒューズのエアコンECU側に電流が流れているかを判別する信号とを検出し、前記両信号を比較することで前記ベルト保護機構の作動又は非作動を検出することを特徴とする。
【0015】
上記の課題を解決するための第3の発明(請求項3に対応)に係るコンプレッサのベルト保護機構の状態検出装置は、第1の発明又は第2の発明に係るベルト保護機構の状態検出装置において、ベルト保護機構が作動している場合に乗員に対してベルト保護機構が作動している旨を知らせる状態表示手段を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、コンプレッサの電磁クラッチに温度ヒューズを設け、温度ヒューズの溶断に伴い電磁クラッチが開放されるコンプレッサのベルト保護機構において、温度ヒューズの電源側に電流が流れているかを判別する信号と温度ヒューズのエアコンECU側に電流が流れているかを判別する信号とを検出し、両信号を比較することでベルト保護機構の作動又は非作動を検出することにより、空調システムの温度や冷媒圧力に影響を受けない電圧での検出のため、ベルト保護機構の作動又は非作動を確実に検出することができ、さらに、検出にかかる時間を短くすることができる。
【0017】
また、温度ヒューズ前電圧を検出することにより、発進時、加速時及びエンジン低回転時等にエンジンECUが独自に電磁クラッチを開放した状態を的確に検出することができるため、ベルト保護機構の作動又は非作動の誤検出を無くすことができる。
【0018】
また、従来はベルト保護機構作動時の検出にスピードセンサ、冷媒圧センサ、及び、エバポレータ前温度センサ等の特殊なセンサが必要であったが、ハーネスを1回線変更し、1回線追加するだけでよいため、システムコストを低減することができる。
【0019】
第2の発明によれば、コンプレッサの電磁クラッチに温度ヒューズを設け、温度ヒューズの溶断に伴い電磁クラッチが開放されるコンプレッサのベルト保護機構において、エンジンを制御するエンジンECUから発信され電磁クラッチを接続又は開放させる命令信号と温度ヒューズのエアコンECU側に電流が流れているかを判別する信号とを検出し、両信号を比較することでベルト保護機構の作動又は非作動を検出することにより、空調システムの温度や冷媒圧力に影響を受けない電圧での検出のため、ベルト保護機構の作動又は非作動を確実に検出することができ、さらに、検出にかかる時間を短くすることができる。
【0020】
また、エンジンECUから発信される信号により、発進時、加速時及びエンジン低回転時等にエンジンECUが独自に電磁クラッチを開放した状態を的確に検出することができるため、ベルト保護機構の作動又は非作動の誤検出を無くすことができる。
【0021】
また、従来はベルト保護機構作動時の検出にスピードセンサ、冷媒圧センサ、及び、エバポレータ前温度センサ等の特殊なセンサが必要であったが、現在一般的になっているCAN(Controller Area Network)通信採用車であれば、ハーネスを1回線変更するだけでよいため、システムコストを低減することができる。
【0022】
第3の発明によれば、ベルト保護機構が作動している場合に乗員に対してベルト保護機構が作動している旨を知らせる状態表示手段を設けることにより、乗員が的確にコンプレッサの異常を確認することができるため、逸早くコンプレッサの異常に対処することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係るコンプレッサのベルト保護機構の状態検出装置について、図1から図2を用いて説明する。図1は第1の実施例に係るコンプレッサのベルト保護機構の状態検出装置の構成図、図2は第2の実施例に係るコンプレッサのベルト保護機構の状態検出装置の構成図である。
【実施例1】
【0024】
以下、本実施例に係るコンプレッサの構成について説明する。図1に示すように、冷媒を圧縮するコンプレッサ10にはプーリ11が設けられている。このプーリ11はエンジン(図示省略)のクランクシャフト等からVベルトにより動力を得て作動している。コンプレッサ10とプーリ11の間には電磁クラッチであるコンプレッサクラッチ12が設けられている。
【0025】
このコンプレッサクラッチ12により、コンプレッサ10とプーリ11は状況に応じて接続又は開放できるようになっている。コンプレッサクラッチ12には温度ヒューズ13が設けられている。この温度ヒューズ13はコンプレッサクラッチ12のコイル部14への電力を供給する電気配線上で、かつ、プーリ11の温度が高温になった場合に溶断する位置に設置される。
【0026】
次に、本実施例に係るベルト保護機構の状態検出装置の構成について説明する。エンジンを制御するエンジンECU15と、エアコンを制御するエアコンECU16とをA/C信号線17により接続する。
【0027】
エアコンECU15は、乗員がエアコンのスイッチ(図示省略)をONにした時に車内の温度等の状態からエアコンを作動させるべき状態であると判断した場合、コンプレッサ10を作動させるために、エアコンECU16からエンジンECU15へA/C信号線17を通じてA/C信号を送信する。
【0028】
エアコンスイッチにはA/Cインジケータ(図示省略)が設けられており、エアコンスイッチがONの時に点灯し、OFFのときに消灯している。このA/Cインジケータは電球や発光ダイオード等により作製する。また、本実施例においてはA/Cインジケータが警告手段である。
【0029】
エンジンECU15はコンプレッサ10の作動及び非作動を制御するコンプレッサリレー18のコイル部19の一方の端子と電気配線20により接続されている。このコンプレッサリレー18のコイル部19のもう一方の端部は電源30の正極に電気配線21により接続されている。
【0030】
エンジンECU15の判断により、電源30からコンプレッサリレー18のコイル部19へ電流を流し、コンプレッサリレー18のスイッチ部22を接続する。これによりコンプレッサクラッチ12のコイル部14に電流が流れ、コンプレッサクラッチ12が接続される。電源30の負極は車体アース27に接地されている。
【0031】
コンプレッサリレー18のスイッチ部22の一方の端子は、電源の正極に電気配線23により接続されている。このコンプレッサリレー18のスイッチ部22のもう一方の端子は、コンプレッサクラッチ12の温度ヒューズ13の一方の端子と電気配線24により接続されている。
【0032】
コンプレッサクラッチ12の温度ヒューズ13のもう一方の端子は、コンプレッサクラッチ12のコイル部14に接続されている。このコンプレッサクラッチ12のコイル部14のもう一方の端子は電気配線26により、エアコンECUに接続されている。また、エアコンECU16は電気配線28により、車体アース27に接地されている。
【0033】
コンプレッサリレー18とコンプレッサクラッチ12の温度ヒューズ13との間の電気配線24に温度ヒューズ前電圧検出用電気配線25を接続し、この温度ヒューズ前電圧検出用電気配線25をエアコンECU16に接続する。
【0034】
以下、本実施例に係るベルト保護機構の状態検出装置の動作について説明する。エアコンECU16からエンジンECU15へA/C信号が送信されている状態を、A/C信号がONの状態とし、送信されていない状態をA/C信号がOFFの状態とする。
【0035】
また、エアコンECU16において、a点での電圧(以下、温度ヒューズ前電圧)とb点での電圧(以下、温度ヒューズ後電圧)の検出を行い、さらに、a点での温度ヒューズ前電圧とb点での温度ヒューズ後電圧とを比較して、ベルト保護機構の作動又は非作動を検出する。
【0036】
A/C信号がONの状態で、a点での温度ヒューズ前電圧が0ボルトで無く、かつ、b点での温度ヒューズ後電圧が0ボルトで無い場合、エアコンECU16においてベルト保護機構が作動していないと判断する。
【0037】
A/C信号がONの状態で、a点での温度ヒューズ前電圧が0ボルトで無く、かつ、b点での温度ヒューズ後電圧が0ボルトの場合、エアコンECU16においてベルト保護機構が作動していると判断し、エアコンスイッチにあるA/Cインジケータを点滅させる。
【0038】
A/C信号がONで、a点での温度ヒューズ前電圧が0ボルトで、かつ、b点での温度ヒューズ後電圧が0ボルトの場合、発進時、加速時及びエンジン低回転時等であるとエンジンECU15が独自に判断してコンプレッサクラッチ12を開放しているので、エアコンECU16においてベルト保護機構が作動していないと判断する。
【0039】
A/C信号がOFFで、a点での温度ヒューズ前電圧が0ボルトで、かつ、b点での温度ヒューズ後電圧が0ボルトの場合、エアコンECU16においてベルト保護機構が作動していないと判断する。
【0040】
本実施例では、温度ヒューズ前電圧及び温度ヒューズ後電圧を、課題を解決するための手段で言うところの信号とした。
【0041】
本実施例に係るコンプレッサ10のベルト保護機構の状態検出装置によれば、空調システムの温度や冷媒圧力に影響を受けない電圧での検出のため、ベルト保護機構の作動又は非作動を確実に検出することができ、さらに、検出にかかる時間を短くすることができる。
【0042】
また、温度ヒューズ前電圧を検出することにより、発進時、加速時及びエンジン低回転時等にエンジンECU15が独自にコンプレッサクラッチ12を開放した状態を的確に検出することができるため、ベルト保護機構の作動又は非作動の誤検出を無くすことができる。
【0043】
また、ベルト保護機構作動時の検出にスピードセンサ、冷媒圧センサ、及び、エバポレータ前温度センサ等の特殊なセンサが不要であり、電気配線26のハーネスを1回線変更し、温度ヒューズ前電圧検出用電気配線25のハーネスを1回線追加するだけでよいため、システムコストを低減することができる。
【実施例2】
【0044】
本実施例にかかるコンプレッサの構成は実施例1にかかるコンプレッサの構成と同様である。以下、本実施例に係るベルト保護機構の状態検出装置の構成について説明する。図2に示すように、エンジンを制御するエンジンECU15と、エアコンを制御するエアコンECU16とを、A/C信号線17及びコンプレッサクラッチ信号線29により接続する。
【0045】
エアコンECU15は、乗員がエアコンのスイッチ(図示省略)をONにした時に車内の温度等の状態からエアコンを作動させるべき状態であると判断した場合、コンプレッサ10を作動させるために、エアコンECU16からエンジンECU15へA/C信号線17を通じてA/C信号を送信する。
【0046】
エアコンスイッチにはA/Cインジケータが設けられており、エアコンスイッチがONの時に点灯し、OFFのときに消灯している。このA/Cインジケータは電球や発光ダイオード等により作製する。また、本実施例においてはA/Cインジケータが警告手段である。
【0047】
また、エンジンECU15は、エンジンにかかっている負荷等を考慮した上で、コンプレッサ10を作動させてもよいと判断した場合、エンジンECU15からエアコンECU16へコンプレッサクラッチ信号線29を通じてコンプレッサクラッチ信号を送信する。
【0048】
本実施例では、コンプレッサクラッチ信号は車内LANであるCAN(Controller Area Network)通信から取得したが、その他の通信手段やハードワイヤ等でも実現することが可能である。また、コンプレッサクラッチ信号のみをCAN通信から取得したが、A/C信号についてもCAN通信から取得することも可能である。
【0049】
エンジンECU15はコンプレッサ10の作動及び非作動を制御するコンプレッサリレー18のコイル部19の一方の端子と電気配線20により接続されている。このコンプレッサリレー18のコイル部19のもう一方の端部は電源30の正極に電気配線21により接続されている。
【0050】
エンジンECU15がコンプレッサリレーのコイル部19に電流を流し、コンプレッサリレーのスイッチ部22を接続する。これによりコンプレッサクラッチ12のコイル部14に電流が流れ、コンプレッサクラッチ12が接続される。電源30の負極は車体アース27に接地されている。
【0051】
コンプレッサリレー18のスイッチ部22の一方の端子は、電源30の正極に電気配線23により接続されている。このコンプレッサリレー18のスイッチ部22のもう一方の端子は、コンプレッサクラッチ12の温度ヒューズ13の一方の端子と電気配線24により接続されている。
【0052】
コンプレッサクラッチ12の温度ヒューズ13のもう一方の端子は、コンプレッサクラッチ12のコイル部14に接続されている。コンプレッサクラッチ12のコイル部14のもう一方の端子は電気配線26により、エアコンECUに接続されている。また、エアコンECU16は電気配線28により、車体アース27に接地されている。
【0053】
以下、本実施例に係るベルト保護機構の状態検出装置の動作について説明する。エアコンECU16からエンジンECU15へA/C信号が送信されている状態を、A/C信号がONの状態とし、送信されていない状態をA/C信号がOFFの状態とする。
【0054】
また、エアコンECU16において、A/C信号とc点での電圧(以下、温度ヒューズ後電圧)の検出を行い、さらに、A/C信号とc点での温度ヒューズ後電圧とを比較して、ベルト保護機構の作動又は非作動を検出する。
【0055】
また、エンジンECU15からエアコンECU16へコンプレッサクラッチ信号が送信されている状態を、コンプレッサクラッチ信号がONの状態、コンプレッサクラッチ信号が送信されていない状態を、コンプレッサクラッチ信号がOFFの状態とする。
【0056】
A/C信号がONの状態、コンプレッサクラッチ信号がONの状態で、かつ、c点での温度ヒューズ後電圧が0ボルトで無い場合、エアコンECU16においてベルト保護機構が作動していないと判断する。
【0057】
A/C信号がONの状態、コンプレッサクラッチ信号がONの状態で、かつ、c点での温度ヒューズ後電圧が0ボルトの場合、エアコンECU16においてベルト保護機構が作動していると判断し、エアコンECU16はA/Cインジケータを点滅させる。
【0058】
A/C信号がONの状態、コンプレッサクラッチ信号がOFFの状態で、かつ、c点での温度ヒューズ後電圧が0ボルトの場合、発進時、加速時及びエンジン低回転時等であるとエンジンECU15が独自に判断してコンプレッサクラッチ12を開放しているので、エアコンECU16においてベルト保護機構が作動していないと判断する。
【0059】
A/C信号がOFFの状態、コンプレッサクラッチ信号がOFFの状態で、かつ、c点での温度ヒューズ後電圧が0ボルトの場合、エアコンECU16においてベルト保護機構が作動していないと判断する。
【0060】
本実施例では、コンプレッサクラッチ信号及び温度ヒューズ後電圧を、課題を解決するための手段で言うところの信号とした。
【0061】
本実施例に係るコンプレッサ10のベルト保護機構によれば、空調システムの温度や冷媒圧力に影響を受けない電圧での検出のため、ベルト保護機構の作動又は非作動を確実に検出することができ、さらに、検出にかかる時間を短くすることができる。
【0062】
また、コンプレッサクラッチ信号により、発進時、加速時及びエンジン低回転時等にエンジンECU15が独自にコンプレッサクラッチ12を開放した状態を的確に検出することができるため、ベルト保護機構の作動又は非作動の誤検出を無くすことができる。
【0063】
また、ベルト保護機構作動時の検出にスピードセンサ、冷媒圧センサ、及び、エバポレータ前温度センサ等の特殊なセンサが不要であり、現在一般的になっているCAN通信採用車であれば、電気配線26のハーネスを1回線変更するだけでよいため、システムコストを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、コンプレッサのベルト保護機構が作動か非作動かを検出し、ベルト保護機構が作動している場合には乗員にベルト保護機構の作動を知らせる場合に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】第1の実施例に係るコンプレッサのベルト保護機構の状態検出装置の構成図である。
【図2】第2の実施例に係るコンプレッサのベルト保護機構の状態検出装置の構成図である。
【符号の説明】
【0066】
10 コンプレッサ
11 プーリ
12 コンプレッサクラッチ
13 温度ヒューズ
14 コンプレッサクラッチコイル部
15 エンジンECU
16 エアコンECU
17 A/C信号線
18 コンプレッサリレー
19 コンプレッサリレーコイル部
20 コンプレッサリレーコイル部−エンジンECU間電気配線
21 電源−コンプレッサリレーコイル部間電気配線
22 コンプレッサリレースイッチ部
23 電源−コンプレッサリレースイッチ部間電気配線
24 コンプレッサリレースイッチ部−温度ヒューズ間電気配線
25 温度ヒューズ前電圧検出用電気配線
26 コンプレッサクラッチコイル部−エアコンECU間電気配線
27 車体アース
28 エアコンECU−車体アース間電気配線
29 コンプレッサクラッチ信号線
30 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサの電磁クラッチに温度ヒューズを設け、前記温度ヒューズの溶断に伴い電磁クラッチが開放されるコンプレッサのベルト保護機構において、
前記温度ヒューズの電源側に電流が流れているかを判別する信号と前記温度ヒューズのエアコンECU側に電流が流れているかを判別する信号とを検出し、前記両信号を比較することで前記ベルト保護機構の作動又は非作動を検出する
ことを特徴とするコンプレッサのベルト保護機構の状態検知装置。
【請求項2】
コンプレッサの電磁クラッチに温度ヒューズを設け、前記温度ヒューズの溶断に伴い電磁クラッチが開放されるコンプレッサのベルト保護機構において、
エンジンを制御するエンジンECUから発信され前記電磁クラッチを接続又は開放させる命令信号と前記温度ヒューズのエアコンECU側に電流が流れているかを判別する信号とを検出し、前記両信号を比較することで前記ベルト保護機構の作動又は非作動を検出する
ことを特徴とするコンプレッサのベルト保護機構の状態検知装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載するコンプレッサのベルト保護機構の状態検知装置において、
ベルト保護機構が作動している場合に乗員に対してベルト保護機構が作動している旨を知らせる状態表示手段を設ける
ことを特徴とするコンプレッサのベルト保護機構の状態検知装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−16603(P2007−16603A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195783(P2005−195783)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】