説明

コンベヤ用カバー

【課題】軽量で機械的強度が高く、追加工が容易で、自己消火性能を有するだけでなく、不燃性能が極めて高いコンベヤ用カバーの提供。
【解決手段】液状レゾール型フェノール樹脂に、難燃剤であるホウ酸と、酸性硬化剤を含有する樹脂組成物を強化繊維基材に含浸して硬化した難燃性FRP製のコンベヤ用カバーにおいて、厚さは、3mm〜7mmとし、前記樹脂組成物中のホウ酸は、フェノール樹脂100重量部に対して50〜100重量部とし、ISO5660−1準拠のコーンカロリーメーター試験における20分間の加熱下で、防火上有害な変形を生じずに、最大発熱速度が200kW/m以下、総発熱量が8MJ/m以下となることを特徴とするコンベヤ用カバーを、解決手段とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤの防塵等を目的としてコンベヤを被覆するコンベヤ用カバーに関し、特には、難燃性を有する、繊維強化プラスチック(以下、単に「FRP」という。)のコンベヤ用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
屋外或いは工場内又はギャラリー内における搬送設備として用いられている、石炭、鉱石、砕石等を搬送するベルトコンベヤ装置には、搬送物の風雨や塵埃からの保護等を目的としてベルトコンベヤ用カバーを装備させることが、作業環境の向上と産業公害の防止の上から必要である。
【0003】
コンベヤ用カバーは、近年、軽量で耐久性に優れたFRP製のものが使用されている。FRP製のコンベヤ用カバーは、金属製のコンベヤ用カバーと比べ、前記したように軽量であることに加え、追加工が容易である利点を有する。このため、FRP製のコンベヤ用カバーを使用することにより、作業性が向上し、また、既設のコンベヤの改造等に合わせて、当該コンベヤ用カバーの形状を変更することができる。
【0004】
このようなFRP製のコンベヤ用カバーの一例としては、例えば、本出願人が先にした発明に係るコンベヤ用カバーであって、長尺のベルトコンベヤが連設されてなる搬送路を多数のカバーユニットの連結によって覆ってなり、搬送路の天井を覆うカバーユニットの一部に、作業員の出入りができる大きさの開口部が設けられ、その開口部に左右方向にスライドして開口部を開閉可能なカバーユニットの縦半部の断面形状と略同一形状の湾曲した扉が設けたコンベヤ用カバー(例えば、特許文献1参照。)が公知である。
【0005】
また、他の材質からなるコンベヤ用カバーとしては、例えば、ステンレスや鉄等の金属製の波板で略半円筒状に形成されたカバー本体と、前記カバー本体の少なくとも一側部に形成された点検口と、可撓性を有する合成樹脂や合成ゴムで形成され上辺部が前記カバー本体の外周面側で前記点検口の上縁側に固定されて前記点検口に覆設された点検蓋とを備えたことを特徴とするコンベヤ用カバー(例えば、特許文献2参照。)が公知である。
【0006】
更に、FRP(繊維強化プラスチック)板状体の表面に、アルミニウム、ステンレス等の金属箔等の耐熱性空気遮断皮膜を形成した難燃性繊維強化プラスチックからなるコンベヤ用カバー(例えば、特許文献3参照。)が公知である。
【0007】
一方、FRPにつき難燃性を向上させる先行技術として、例えば、液状レゾール型フェノール樹脂に酸性硬化剤、難燃剤を配合した樹脂組成物を繊維基材に含浸、硬化させ繊維強化フェノール系樹脂成型品を製造する方法において、難燃剤としてホウ酸1重量部に対し、メタホウ酸ナトリウム3〜8重量部からなる難燃材を用いた繊維強化フェノール系樹脂成型品の製造方法、及び、当該製造方法において、液状レゾール型フェノール樹脂100重量部に対して、ホウ酸及びメタホウ酸ナトリウムからなる難燃剤を1〜5重量部配合した繊維強化フェノール系樹脂成型品の製造方法(例えば、特許文献4参照。)が公知である。
【0008】
また、FRPにつき難燃性を向上させる他の先行技術として、(A)レゾール型フェノール樹脂と、(B)難燃剤として1〜400μmの平均粒径を有するホウ酸と、(C)酸性硬化剤と、を含むフェノール系樹脂組成物であって、前記(B)難燃剤の含有量が前記(A)レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して10〜80質量部であり、前記(C)酸性硬化剤の含有量が前記(A)レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して5〜40質量部である、フェノール系樹脂組成物と、該フェノール系樹脂組成物を繊維基材に含浸し、樹脂含浸繊維基材を硬化および成形させて得られる繊維強化フェノール系樹脂成形品が(例えば、特許文献5参照。)公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−26441号公報
【特許文献2】実用新案登録第3146862号公報
【特許文献3】特開平4−148926号公報
【特許文献4】特許第3754166号公報
【特許文献5】特開2004−331730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に例示されるコンベヤ用カバーは、上記したように、FRPによって形成されていることによって、軽量で機械的強度が高いこと、コンベヤ用カバーのような大型の成型品でありながら、その製作が安価に行え、追加工が容易である点において利点がある。しかしながらその一方で、FRPは可燃性であり、火災が発生すると、独自燃焼により激しく燃焼し、延焼を引き起こす可能性がある点で、問題があった。
【0011】
このため、FRPコンベヤの独自燃焼を解消すべく、いくつかの出願がされるに至っている。例えば、上記特許文献2に開示されるコンベヤ用カバーは、カバー本体にステンレスや鉄等の金属を使用したものであり、重量があるものの、従来のFRPのような独自燃焼を引き起こさない利点がある。しかし、重量があるため、着脱操作等において、作業者に負担がかかる欠点がある。また、コンベヤの形状に合わせた追加工が非常に困難であり、コンベヤの形状によっては部分的にコンベヤ用カバーを被覆できない箇所が生じる等の問題を招来していた。
【0012】
更に、上記特許文献3に開示されるコンベヤ用カバーは、FRPに、アルミニウム、ステンレス等の金属箔等の耐熱性空気遮断皮膜を形成した構成とすることで、金属製のコンベヤ用カバー軽量で機械的強度が高く、難燃性を有する点で優れている。
しかしながら、通常のFRPと比べると重量が増加する欠点がある。また、前記特許文献2と同様に、追加工の利便性が、通常のFRPと比べて大きく損なわれる。
【0013】
上記特許文献4に係る難燃性のFRPを用いて製造したコンベヤ用カバーは、具体的には難燃性の程度が、JIS A 1321における難燃2級程度を実現できる点で優れている。また、上記特許文献5に係るFRPを用いて製造した樹脂成型品は、新規格であるISO5660−1準拠のコーンカロリーメーター試験における「準不燃」を実現できる点で優れている。
しかしながら、上記特許文献4及び5と比べて、より難燃性能の高いISO5660−1準拠のコーンカロリーメーター試験における「不燃性」として利用できるFRP製のコンベヤ用カバーが、依然として求められていた。
【0014】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、軽量で機械的強度が高く、耐候性、柔軟性を有するFRP製のコンベヤ用カバーの性能を確保した上で、独自燃焼による延焼を防止できることは勿論、FRP製のコンベヤ用カバーの追加工の利便性を保持することができ、従来と比べて格別に難燃性に優れ、不燃性として利用できる(不燃性の基準の要件を満たす)、優れたコンベヤ用カバーの提供を、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、液状レゾール型フェノール樹脂に、難燃剤であるホウ酸と、酸性硬化剤を含有する樹脂組成物を強化繊維基材に含浸して硬化した難燃性FRP製のコンベヤ用カバーにおいて、厚さは、3mm〜7mmとし、前記樹脂組成物中のホウ酸は、フェノール樹脂100重量部に対して50〜100重量部とし、ISO5660−1準拠のコーンカロリーメーター試験における20分間の加熱下で、防火上有害な変形を生じずに、最大発熱速度が200kW/m以下、総発熱量が8MJ/m以下となることを特徴とするコンベヤ用カバーを、課題を解決するための手段とする。ここで、防火上有害な変形とは、具体的には、表裏面を貫通する穴や亀裂の発生をいう。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係るコンベヤ用カバーによれば、液状レゾール型フェノール樹脂に、難燃剤であるホウ酸と、酸性硬化剤を含有する樹脂組成物を強化繊維基材に含浸して硬化した難燃性FRP製のコンベヤ用カバーにおいて、厚さは3mm〜7mmとし、前記樹脂組成物中のホウ酸は、フェノール樹脂100重量部に対して50〜100重量部とし、ISO5660−1準拠のコーンカロリーメーター試験における20分間の加熱下で、防火上有害な変形を生じずに、最大発熱速度が200kW/m以下、総発熱量が8MJ/m以下となることを特徴とするコンベヤ用カバーとしたことから、軽量で機械的強度が高く、耐候性、柔軟性を有するFRP製のコンベヤ用カバーの性能を確保した上で、コンベヤ用カバー内で火災が生じた際にも、格別に優れた難燃性によって、高温に一定時間晒されても容易には燃焼しない。また、長時間に亘って高温下におかれることで、仮に燃焼したとしてもコンベヤ用カバーの一部のみがゆっくりと燃焼し、一度に燃え広がることがなく、火元から隔離すればコンベヤ用カバーが自己消火性能によって消火して延焼を抑制できる。
【0017】
また、火災後にコンベヤ用カバーの変色した部分若しくは燃焼した部分のみを切断して新規なコンベヤ用カバーに交換することで、コンベヤ用カバーに関して、復旧を簡単に行うことができる。
【0018】
請求項2に係るコンベヤ用カバーによれば、上記請求項1に係る発明における強化繊維基材としてガラス繊維を用いたことによって、上記請求項1に係る発明の作用効果を発揮することに加え、ガラス繊維の有する弾力性を利用できるとともに、より安価にコンベヤ用カバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の実施例に係るコンベヤ用カバーを示す(a)右側面図、(b)その接続部分の一部断面図である。
【図2】図2は本発明の実施例に係るコンベヤ用カバーを示す右側面図である。
【図3】図3は本発明の実施例に係るコンベヤ用カバーを示す正面図である。
【図4】図4は本発明の実施例に係るコンベヤ用カバーを破断した示す一部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
液状レゾール型フェノール樹脂に難燃剤としてホウ酸を含有した樹脂組成物をガラス繊維基材に含浸して硬化した難燃性FRP製のコンベヤ用カバーにおいて、厚さは、3mm〜7mmとし、前記樹脂組成物中のホウ酸は、フェノール樹脂100重量部に対して50〜100重量部とし、ISO5660−1準拠のコーンカロリーメーター試験における20分間の加熱下で、防火上有害な変形を生じずに、最大発熱速度が200kW/m以下、総発熱量が8MJ/m以下となることを特徴とするコンベヤ用カバーとしたから、FRPの良好な軽量性、機械的強度と耐候性、柔軟性を保持しつつ、従来の難燃性能を超える著しい難燃性を発揮し、コンベヤ用カバー内で火災が生じた際にも、コンベヤの一部のみが燃焼し、一度に燃え広がることがなく、延焼を抑制することができ、優れたコンベヤ用カバーを実現した。
【実施例】
【0021】
以下に、本発明の実施例に係るコンベヤ用カバーを示す。本実施例に係るコンベヤ用カバーは、液状レゾール型フェノール樹脂に、難燃剤としてホウ酸を含有した樹脂組成物をガラス繊維基材に含浸、硬化させて形成した難燃性の繊維強化フェノール系樹脂を用いたコンベヤ用カバーにおいて、ホウ酸は、フェノール樹脂100重量部に対して50〜100重量部としたものであり、基本的に従来と比べて非常に高い難燃性能を有する点で優れるものである。
【0022】
具体的には、ISO5660−1準拠のコーンカロリーメーター試験における20分間の加熱下で、防火上有害な変形を生じずに、最大発熱速度が200kW/m以下、総発熱量が8MJ/m以下となる性能、即ち、ISO5660−1準拠のコーンカロリーメーター試験における「不燃性」の基準を満たす極めて高い難燃性能を実現する。
【0023】
図1(q)に示すように、本発明の実施例に係るコンベヤ用カバーCは、図2及び図3に示す正面視輪郭が蒲鉾形のアーチ形状に成形した、第一カバー体1と第二カバー体2とを、図1(b)相互に連結及び離脱可能とする構成としたコンベヤ用カバーCである。
【0024】
第一カバー体1の一端の外周面11の全周に亘って形成した第一補強リブ10と、第二カバー体2の一端の外周面21の全周に亘って形成した第二補強リブ20とを、第一補強リブ10を上側として重合し、第一カバー体1と第二カバー体2とを連結する構成である。コンベヤ用カバーCは、第一カバー体1と第二カバー体2を交互に連結することで、長手方向へ連続して配置することができる。
【0025】
また、第一カバー体1、第二カバー体2とも、概ね3mm程度の厚さを有し、いずれも両側端部には、長手方向に亘って、一定幅の庇部12、22を形成してある。図4に示すように、コンベヤ側のコンベヤフレームF等に設置されるコンベヤアングルAの取付部A1に対して庇部12(若しくは庇部22)を重合し、固定具Sによって、前記取付部と庇部12(若しくは庇部22)とを固定する。
【0026】
コンベヤに対してコンベヤ用カバーCを被嵌重合した状態を固定維持する手段である固定具Sは、ピンS1とクリップS2と前記ピンの落下を防止する鎖を備えている。図4に示すように、取付部A1を貫通する貫通穴を設け、該貫通穴に対してピンS1を通してクリップS2をロックして、クリップS2によって前記取付部A1と庇部12(若しくは庇部22)とが当接した状態を保持固定する。
尚、固定具Sは、本実施例に限らず、例えば、コンベヤアングル及び庇部12(22)をクリップS2等で挟持固定するものでもよい。また、図示省略するが、コンベヤフレームFにブラケットを設け、コンベヤ用カバーCの庇部12(22)に前記ブラケットに対する係脱手段を設けることもできる。勿論、これらのいずれかの複数の手法を併用することもできる。
【0027】
本実施例では、上記したように、コンベヤ用カバーCを構成する第一カバー体1、第二カバー体2とも、厚さ3mmでありながら、上記不燃性を備えるだけでなく、FRPの良好な軽量性、機械的強度、柔軟性を保持した構成である。
【0028】
上記に示した実施例に係るコンベヤ用カバーCは、第一カバー体1及び第二カバー体2のいずれにおいても、合成樹脂を含浸したガラス繊維を雌型の内側に手作業で積層する一般的なハンドレイアップ法により形成したものである。
【0029】
即ち、液状レゾール型フェノール樹脂(昭和高分子株式会社製BRL−240)100重量部に対して粒状のホウ酸を50重量部添加する。次いで、粘度調節のために水10重量部を添加し、その後、酸性硬化剤(昭和高分子株式会社製FRH−50)を15重量部添加混合する。得られた混合物をガラスマット(450g/m)(4層(4ply))に含浸し、60℃環境下で2時間静置後、更に80℃環境下で3時間静置して、硬化させ、コンベヤ用カバーの板厚が約3mmとなるものとして作製している。
【0030】
本実施例においては、液状レゾール型フェノール樹脂に混合する難燃剤であるホウ酸は、一般に市販されているものを利用できる。ホウ酸の粒径によっては、難燃性の差は生じない。
【0031】
また、本実施例においては、ガラス繊維のコンベヤ用カバー全体に対する重量比率は概ね46重量%程度としている。このようにコンベヤ用カバーC中のガラス繊維を増加させることで、含浸させる合成樹脂量を低減させ、より難燃性を高めるものとしている。
尚、ガラス繊維のコンベヤ用カバー全体に対する重量比率は本実施例における重量比率に限らず、一般的な重量比率(例えば、30重量%〜35重量%等)であってもよいし、これら以上の重量比率で概ね50重量%程度までとしてもよく、必要に応じて適宜決定できる。
【0032】
以上に示す本実施例に係るコンベヤ用カバーは、FRPの軽量性、良好な機械的強度と柔軟性を保持しつつ、前記したように、従来の難燃性能を超える著しい難燃性(ISO5660−1準拠のコーンカロリーメーター試験における「不燃性」を満たす難燃性)を発揮できる。また、コンベヤ用カバー内で火災が生じた際にも、コンベヤの一部のみが燃焼し、一度に燃え広がることがなく、延焼を抑制することができる。
【0033】
(試験)
本発明におけるコンベヤ用カバーにおいて、良好な機械的強度と柔軟性を保持しつつ、従来の難燃性能を超える著しい難燃性を発揮できる、具体的な処方を特定すべく、以下に示す試験を行った。
【0034】
液状レゾール型フェノール樹脂(昭和高分子株式会社製BRL−240)100重量部に対して、以下、表1に示す試料1〜試料5に示す、粒状のホウ酸を、各処方に示す重量部添加する。次いで、粘度調節のために水10重量部を添加し、その後、酸性硬化剤(昭和高分子株式会社製FRH−50)を15重量部添加混合する。得られた混合物をガラスマット(450g/m)(4層)に含浸し、60℃環境下で2時間静置後、更に80℃環境下で3時間静置して、硬化させ、板厚が約3mm、ガラス含有率が約46重量%となる、試料1〜試料5のFRP板を作製した。
【表1】

【0035】
以上によって得られた各FRP板について、下記に示すように、コーンカロリーメーター試験(ISO5660−1準拠)を行った。
保持した試料に対してヒータで600℃で加熱し、強制的に試料を熱分解させ、着火させる。開始から20分間において、着火までの時間を測定し、燃焼後の最大発熱速度、総発熱量を計測する。
(試験結果)
【表2】

【0036】
以上に示すように、試料2、3、4において、最大発熱速度が200kW/m以下、総発熱量が8MJ/m以下となり、ISO5660−1準拠のコーンカロリーメーター試験における不燃性の基準を満たす結果を得ることができた。
また、試料1では、最大発熱量においては問題はないものの、総発熱量が8.6MJ/mとなり、十分な防火性能を得ることができなかった。
【0037】
一方で、試料5は、数値的には、不燃性の基準を満たすことができたものの、液状レゾール型フェノール樹脂(昭和高分子株式会社製BRL−240)100重量部に対して、粒状のホウ酸を105重量部添加すると、製造工程における流動性、含浸性の低下が生じ、作業性が低下するとともに、成型品物性が試料2、3、4と比べて劣る結果となったため不適当であった。
【0038】
以上の結果から、液状レゾール型フェノール樹脂100重量部に対してホウ酸粉末が概ね50重量部〜100重量部において、ISO5660−1準拠のコーンカロリーメーター試験における20分間の加熱下で、防火上有害な変形を生じずに、最大発熱速度が200kW/m以下、総発熱量が8MJ/m以下となることが確認できた。
【0039】
一方、上記した液状レゾール型フェノール樹脂100部に対してホウ酸粉末が概ね50部未満である場合には、ホウ酸粉末による難燃性は得られるものの、ISO5660−1準拠のコーンカロリーメーター試験における不燃性の基準にまでは及ばないことが判明した。
また、液状レゾール型フェノール樹脂100部に対してホウ酸粉末が100部を超える場合には、製造段階では流動性が悪くなり、含浸性が低下することが判明した。
【0040】
また、上記したように、コンベヤ用カバーの厚さが3mmで、ホウ酸がフェノール樹脂100重量部に対して50重量部〜100重量部として、ISO5660−1準拠のコーンカロリーメーター試験における20分間の加熱下で、防火上有害な変形を生じずに、最大発熱速度が200kW/m以下、総発熱量が8MJ/m以下となり、コンベヤ用カバーの厚みが大きいほど、有害性変形は生じにくくなり防火性能は向上するところ、厚さが7mmを超えると、一般的な鉄等の金属製のコンベヤ用カバーに対して軽量であるFRPの利点が損なわれる。即ち、具体的には、一般的にコンベヤ用カバーとして多用される鉄では比重が7.8で、FRPの比重は1.5であるため、鉄製コンベヤ用カバーの板厚が1.5mm程度の場合と比較すると、FRP製コンベヤ用カバーは7mmを超えると、概ね金属製コンベヤ用カバーと近似した重量となり、軽量性が失われる。
【0041】
以上に示すように、本発明は、液状レゾール型フェノール樹脂100重量部に対して50重量部〜100重量部のホウ酸を添加した、厚さ3mm〜7mmのコンベヤ用カバーとしたものである。このホウ酸の添加率は、常識的な範囲を超え、極めて過剰量である。本発明者は、この過剰量のホウ酸を添加することにより、それまで補助的にしか現れていなかった燃焼後の樹脂の難燃性能を飛躍的に向上して従来の難燃性能を超える著しい難燃性を発揮させ、更に、実質的に製造を良好に行うことができ、上記所定範囲の厚さとして、コンベヤ用カバーとして十分な軽量性、機械的強度、耐候性、柔軟性を確保し、実用的な「不燃性」のレベルにまで難燃性を顕著化させた優れたコンベヤ用カバーの開発に成功した。
【0042】
尚、上記実施例においては強化繊維としてガラス繊維を使用したが、本発明はこれに限定するものではなく、他の強化繊維として、炭素繊維や天然繊維(例えば、ケナフ繊維、竹繊維、麻繊維等)等を使用することもできる。
【0043】
また、本実施例においては、酸性硬化剤として、FRH−50(昭和高分子株式会社製)を用いているが、これに限らず、例えば、レゾール型フェノール樹脂に用いられる他の酸性硬化剤、例えば、有機スルホン酸系の硬化剤(ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フェノールスルホン酸等)、及び、リン酸等を、単独若しくは併用して使用することができる。また、酸性硬化剤の添加比率は、本実施例では、ポットライフや製品物性の観点から好適と認められる15重量部としている。尚、当該添加比率は、本発明では特に限定するものではなく、樹脂や酸性硬化剤の種類等に応じて適宜決定できる。
【0044】
尚、上記実施例では、ハンドレイアップ法によってコンベヤ用カバーを製造したが、本発明によれば、これに限るものではなく、例えば、ハンドレイアップ法に加えてRTM(レジン・トランスファー・モールディング)法を利用したり、或いは、インフュージョン成形等、種々の公知の成形方法を使用することもできる。
【0045】
また、本発明のコンベヤ用カバーCの形状、各部の寸法は、コンベヤのベルト幅や、長さ、耐加重、コンベヤ等に取付けられた部品等の形状等に応じて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0046】
A コンベヤアングル
A1 取付部
C コンベヤ用カバー
F コンベヤフレーム
S 固定具
S1 ピン
S2 クリップ
1 第一カバー体
10 第一補強リブ
11 外周面
12 庇部
2 第二カバー体
20 第二補強リブ
21 外周面
22 庇部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状レゾール型フェノール樹脂に、難燃剤であるホウ酸と、酸性硬化剤を含有する樹脂組成物を強化繊維基材に含浸して硬化した難燃性FRP製のコンベヤ用カバーにおいて、
厚さは、3mm〜7mmとし、
前記樹脂組成物中のホウ酸は、フェノール樹脂100重量部に対して50〜100重量部とし、
ISO5660−1準拠のコーンカロリーメーター試験における20分間の加熱下で、防火上有害な変形を生じずに、最大発熱速度が200kW/m以下、総発熱量が8MJ/m以下となることを特徴とするコンベヤ用カバー。
【請求項2】
強化繊維基材はガラス繊維としたことを特徴とする請求項1記載のコンベヤ用カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−26454(P2011−26454A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173787(P2009−173787)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(591041107)株式会社村田商会 (1)
【Fターム(参考)】