説明

コークス炉装置の運転方法

本発明は、コークス製造プロセスにおいて発生するコークス炉ガスが、有益ガスとして材料としての活用に供給される、コークス炉装置の運転方法に関する。本発明によれば、コークス製造プロセスに必要な熱エネルギーの少なくとも一部を提供するために、化石燃料、好ましくは石炭からのガス化プロセスを使って得られた合成ガスが燃焼ガスとして供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコークス炉装置の運転方法に関し、その際、コークス製造プロセスにおいて発生するコークス炉ガスが、有益ガスとして材料としての活用(stofflichen Verwertung)に供給される。
【背景技術】
【0002】
プラクチスでは、コークス製造プロセスの際に発生するコークス炉ガスは通常は燃焼され、そしてそれ故、コークス炉ガスの材料成分である水素及びメタンの大部分を含んでいるにも拘わらず、そのコークス炉ガスはエネルギー的にしか利用されていない。材料として活用する際、コークス炉ガスは加熱ガスとしてはもはや利用されず、また、不足している加熱エネルギーを、他のやり方で提供しなければならないことから、その活用には制限がある。
【0003】
ドイツ国特許出願公開第3424424A1号明細書(特許文献1)からは、コークス製造プロセス中に発生するコークス炉ガスが、材料としての活用に有益ガスとして供給される方法が知られている。その際に、引き続きメタン化によって合成天然ガスを生じさせるために水素が分離され、そして適したH−CO比が調節される。コークス炉ガスは、材料としての活用の際には、コークス製造プロセスに必要な熱エネルギーを生じさせるのにはもはや利用されないため、コークス炉ガスバッテリー(Koksofengasbatterie)の下部燃焼のための代用ガスとして、高炉ガス又は坑ガスが提案されている。高炉ガス又は坑ガスの使用は、コークス製造プラントのすぐ近くに製鋼所又は炭鉱があり、それらの代用ガスの使用が経済的とされる場合に、考慮される。プラクチスではこれらの条件が満たされることはめったにないため、冒頭で述べたように、通常は、コークス炉ガスの加熱目的での活用しか行われていない。
【0004】
コークス炉ガスが材料としての活用に供給される別の方法は、ドイツ国特許出願公開第3515250A1号明細書(特許文献2)並びにドイツ国特許出願公開第3805397A1号明細書(特許文献3)から知られている。これらの方法の場合、高い水素割合を有するコークス炉ガスは、高い一酸化炭素割合を有する精錬用ガス(Huettengas)と混合される。それらの公知の方法は、最初に手間暇かけて精製しなければならない精錬用ガスを、十分な量で利用できることを前提としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第3424424A1号明細書
【特許文献2】ドイツ国特許出願公開第3515250A1号明細書
【特許文献3】ドイツ国特許出願公開第3805397A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、コークス炉装置の運転の際に、発生するコークス炉ガスを柔軟に、かつ、有効に利用することを可能にするという課題に基づくものである。
【0007】
本発明の対象及び上記課題の解決法は、冒頭に記載した特徴を有するコークス炉装置を運転する方法であって、コークス製造プロセスに必要な熱エネルギーの少なくとも一部を提供するために、化石燃料からガス化プロセスを使って得られる合成ガスが燃焼ガスとして供給されることを特徴とする方法である。合成ガスを製造するための化石燃料の使用によって、コークス炉装置を運転するための方法の特に高い柔軟性が得られる。化石燃料の提供と、合成ガスを製造するためのガス化プロセスの実行には追加の投資及び製造費用が伴うにも拘わらず、コークス炉ガス中に含まれる価値のある材料成分の獲得によって、全体として経済上の利点が得られる。これは、化石燃料として石炭が使用される場合に特にあてはまり、石炭は、ガス化プロセスを実施するのに適した、例えば、天然ガスのようなその他の化石燃料と比べて比較的有利であり、いずれにせよ、コークス製造プロセスを実施するのに用意されているものである。それ故、本発明の方法は、炭鉱又は高炉のような別の生産場所に依存することなく使用することができる。しかしながら、すぐ近くに高炉設備が設けられている場合、得られた合成ガスの余剰の部分を熱的に利用するために高炉に供給するという可能性もある。
【0008】
本発明によれば、コークス製造プロセスの際にコークス炉中で発生する水素及び/又はメタンのようなガス成分が分離され、そして最終生成物として使用されるか、又は更に価値の高い製品に転化され、ここでその時に、コークス製造プロセスに及び場合によっては高炉プロセスにも、不足のエネルギー量が、化石燃料からのガス化を使って得た合成ガスによって補償されることが提案される。生成された粗製合成ガスは、一般に、コークス製造プロセスに必要な熱エネルギーの一部を提供するために燃焼ガスとして供給される前に、特にコークス炉バッテリーの下部を加熱するために投入される前に、脱硫だけはしなければならない。とりわけ二酸化炭素の除去も含む、手間のかかる合成ガスの精製は、燃焼ガスとして利用される合成ガスの場合には必要ではない。
【0009】
本発明の範囲において、化石燃料から形成された合成ガスは、専ら、熱エネルギーを提供するために燃焼ガスとして利用することが企図できる。しかしながら、本発明の好ましい形態の一つによれば、本発明に従って材料として活用されるコークス炉ガスの補償に必要な量よりも多量の合成ガスが生成される。それ故、得られた合成ガスの第一の部分が燃焼ガスとして投入され、そしてその得られた合成ガスの余剰の部分が、更なる転化及び材料としての活用に使用される。
【0010】
コークス製造プロセスの際に発生するコークス炉ガスは、本発明による方法の範囲においては、先ず、それ自体公知の方法で、慣用的なコークス製造プロセスの場合に従来技術によってもそうするように、タール、ナフタレン、芳香族炭化水素(BTX成分)、硫黄及びアンモニアのような不純物が最初に取り除かれる。本発明の好ましい形態の一つによれば、そのように 精製されたコークス炉ガスは、水素及び/又は炭化水素を分離するために圧縮される。水素を分離するために、例えば、PSA装置における圧力スイング吸着(Druckwechseladsorption、PSA)を設けることができ、その際、そのPSA装置の加圧側に水素が高純度の形態で得られる。圧力スイング吸着は、慣用的なPSA装置又は真空PSA装置(VPSA装置)のいずれかにおいて実施することができる。
【0011】
そのPSA装置の圧力解放側では、メタン富化ガスが得られ、そのガスは、更なる精製工程で、残存するガス成分、特に一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、窒素、アセチレン及び依然として含まれる水素から分離される。窒素、一酸化炭素並びに依然として含まれている水素の除去は、例えば、低温蒸留によって行うことができ、その際、適切な方法、例えば、Armin洗浄及び/又は分子篩脱水を使って、まずは予め二酸化炭素及び水蒸気が除去される。そのように有益ガスとして得られた炭化水素成分は、天然ガスパイプライン網(Erdgasnetz)に供給することができる及び/又は更なる合成のために準備しておくことができる。
【0012】
すでに説明したように、コークス炉ガスから得られるガス成分は最終製品として使用できるか、又は更に高価値の製品に転化させることができ、その際、更なる合成及び変換のために、化石燃料のガス化の際に形成された合成ガスの一部も利用することができる。利用の有利な方法を以下に説明する。
【0013】
分離された水素は、隣接する化学装置、例えば、製油所に、一般的に水素化用水素として投入することができる。好ましい一形態によれば、発生した水素及び化石燃料のガス化によって形成された合成ガスの一部が、更なる変換に供されることが企図され、その際、その水素が、該合成ガスの一酸化炭素の一部と反応して、より価値の高い製品となる。それ故、例えば、メタノールの合成並びにさらなる MTG法(メタノール・ツー・ガソリン)による動力用燃料の製造、フィッシャー−トロプシュ法によるディーゼルの合成又はアンモニアの合成も企図できる。
【0014】
得られる水素を、本質的に一酸化炭素を含む化石燃料から生じる合成ガスと共に更なる合成に利用する場合、適切な流入量の制御によって、特定の水素/一酸化炭素比を広範囲にわたって自由に選択できるという利点が得られる。
【0015】
特に、該方法全体に関して、水素の収量を更にもっと高めるために、得られた合成ガスの一部をCO転化に供することを企図することができる。この目的のために、そのCO転化は水蒸気の添加下で行うことができ、その際、転化された合成ガスの脱硫後、二酸化炭素は少なくとも部分的に除去され、その際、後続して、水素を除去するべく、残存するガス流は圧力スイング吸着に供され、そしてその際、そのときに発生する水素が欠乏したオフガスが、コークス製造プロセスの燃焼ガスとして投入される。通常は、この熱的に使用されるオフガスは、熱エネルギーを提供するのに全体として必要な燃焼ガスの一部である。
【0016】
化石燃料から形成された合成ガスの更なる利用として、組み合わされたガス火力発電所及び蒸気発電所(GUDプロセス)による発電もまた提供することができる。
【0017】
本発明によれば、コークス製造プロセスに必要な熱エネルギーの一部が、合成ガスから燃焼ガスとして提供され、該合成ガスは、化石燃料からのガス化プロセス、好ましくは石炭ガス化を使って得られる。熱エネルギーの更なる一部を提供するために、様々な後続の方法段階で発生する残留ガス及び排ガスもまた、燃焼に利用することができる。とりわけ、好ましく設けられるPSA装置のオフガスは、一般に、燃焼させることによって熱的に利用することができる多量の可燃性成分を依然として含んでいる。そのほかに、より高い発熱量を有する価値の高い燃料、例えば、天然ガスを混合することもできる。そのような混合は、所望のウォッベ数を調節するために、あるいはその更なる燃焼ガスによって依然として満たされないエネルギー需要を補償するために、必要なことがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス製造プロセスにおいて発生するコークス炉ガスが、有益ガスとして材料としての活用に供給される、コークス炉装置の運転方法であって、そのコークス製造プロセスに必要な熱エネルギーの少なくとも一部を提供するために、化石燃料からのガス化プロセスを使って得られた合成ガスが燃焼ガスとして供給されることを特徴とする、上記の方法。
【請求項2】
化石燃料として石炭が投入されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コークス炉ガスが圧縮、脱硫され、その後、それから水素が除去され、そして次に炭化水素が残留ガス成分から分離されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
圧力スイング吸着(Druckwechseladsorption)によって前記コークス炉ガスから水素が分離され、その際、その後、低温蒸留を使って炭化水素が分離されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記得られた合成ガスの第一の部分が燃焼ガスとして投入されること、および前記得られた合成ガスの余剰の部分が、前記コークス炉ガスから分離された水素と一緒に、更なる合成に利用されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記得られた合成ガスの第一の部分が燃料ガスとして投入されること、及び前記得られた合成ガスの余剰の部分がCO転化に供されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記CO転化が水蒸気の添加下で行われ、その際、転化された合成ガスの脱硫後に、二酸化炭素が少なくとも部分的に除去され、その際、続いて、水素を除去するために、残留するガス流が圧力スイング吸着に供され、そしてその際、その時発生した、水素が欠乏したオフガスがコークス製造プロセスのための燃焼ガスとして投入されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記得られた合成ガスの第一の部分が燃焼ガスとして投入されること、および前記得られた合成ガスの余剰の部分が、ガス火力発電所及び水蒸気発電所における発電に利用されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記コークス製造プロセスに必要な熱エネルギーを提供するために、前記合成ガスに対して追加的に、そのほかの加熱ガスが供給されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記得られた合成ガスの余剰の部分が、熱的な利用のために高炉に供給されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。

【公表番号】特表2013−505342(P2013−505342A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530196(P2012−530196)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062024
【国際公開番号】WO2011/035993
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(597014730)ティッセンクルップ・ウーデ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (20)
【Fターム(参考)】