コーティングされたインプラント、その製造および使用
本発明は、デバイス、好ましくはインプラントを物質でコーティングする方法であり、(a)前記デバイスを、前記基質または物質の溶液と接触させる工程と、(b)前記デバイスを、前記溶液中に浸漬させた状態で乾燥させる工程とを備えた方法に関するものである。本発明はまた、デバイス用、好ましくはインプラント用の包装容器に関するものである。前記包装容器は、前記デバイスのコーティングが前記包装容器内で行えるように構成されている。さらに、本発明は、物質でコーティングするデバイス用、好ましくはインプラント用の包装容器の内部表面をコーティングする方法であり、(a)シリコーンエマルションを用いて前記容器の内部表面をシリコーン処理する工程と、(b)熱硬化を行い前記容器の内部表面に焼付けシリコーン層を形成する工程とを含む方法に関する。さらに、前記包装容器は、前記包装容器のコーティング方法の、前記容器と前記デバイスの間における、前記デバイスにコーティングされる物質の分配係数を向上および/または制御するための使用に関する。さらに、本発明は、本発明の方法によって得られるコーティングされたデバイス、好ましくはインプラントを包含する。本発明はまた、デバイス上におけるコーティングの分布の均一性を向上させるための、前記デバイスのコーティング方法の使用に関する。最後に、本発明は、前記包装容器のコーティング方法の使用であり、前記容器と前記デバイスの間における、前記デバイス上にコーティングされる物質の分配係数を向上および/または制御するための使用に関するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイス、好ましくはインプラントを物質でコーティングする方法であり、(a)前記デバイスを、前記物質または基質(substrate)の溶液と接触させる工程と、(b)前記デバイスを、前記溶液と接触させた状態で乾燥させる工程とを備えた方法に関するものである。本発明はまた、デバイス用、好ましくはインプラント用の包装容器であり、前記デバイスのコーティングが前記包装容器内で行えるように構成された包装容器に関するものである。さらに、本発明は、デバイス用、好ましくはインプラント用の包装容器の内部表面をコーティングする周知の方法であり、(a)シリコーンエマルションを用いて前記容器の内部表面をシリコーン処理する工程と、(b)熱硬化を行い前記容器の内部表面に焼付けシリコーン層(baked-in silicone layer)を形成する工程とを含む方法を使用し、前記インプラント上への物質の目標を定めた付着(directed deposition)を達成する。さらに、本発明は、本発明の方法によって得られるコーティングされたデバイス、好ましくはインプラントを包含する。本発明はまた、デバイス上におけるコーティングの分布の均一性を向上させるための、前記デバイスのコーティング方法の使用に関する。最後に、本発明は、デザインされた包装容器における前記コーティング方法の使用であり、前記容器と前記デバイスの間における、前記デバイス上にコーティングされる物質の付着を向上および/または制御するための使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ここ数十年の間に、インプラントの品質を、その生体適合性および周辺組織との相互作用に関して向上させるため、数多くの方法が提案された。インプラントに関する要求は、非常に厳しい(例えば、骨インプラントに関しては、かかるデバイスは堅固に骨に固定され、さらに、例えば、高圧力に対して安定でなければならないためである(例えば、歯、関節))。コーティングされたインプラントのさらに別の応用例として、冠状動脈またはその他の動脈の再狭窄を克服するための薬剤溶出ステントが挙げられる。移植後における最初の組織応答は、細胞の成長および分化を促し、取り込みと細胞成長の調節を促進する、周辺組織から遊離した特定の成長因子の存在に依存する。
【0003】
歯科インプラントに関しては、十分に確立された固定方法が存在するとはいえ、時間の経過と共にインプラントが緩むという傾向が依然として見られる。各インプラントの取り込み(骨結合)を向上させるため、様々なアプローチが提案されている。これらのアプローチには、原材料の異なるインプラント(例えば、セラミック、金属、またはその他の材料、欧州特許第0657146号明細書参照)を、生分解性材料(例えば、リン酸三カルシウム、ヒドロキシルアパタイト、炭酸化アパタイト、カルシウム欠損ヒドロキシルアパタイトでコーティングすることや、デバイス表面の各種前処理方法(例えば、金属表面のエッチング、欧州特許出願公開第0389713号明細書、国際公開第95/13101号パンフレット、欧州特許出願公開第1251889号明細書参照)が含まれる。ナノメートル、マイクロメートルスケールの表面の凹凸は、コラーゲンや細胞の内方成長(ingrowth)を向上させると考えられている(ティー・アルブレクソン(T. Albrektsson), Handbook of Biomaterials(Black, J and Hastings, G (eds.), Chapman & Hall, London, 1998, pp 500 - 512)。
【0004】
セラミック表面による金属インプラントのコーティングが、例えば、金属粉末とリン酸カルシウムを含有する粉末(欧州特許出願公開第0467948号明細書)の2種類の粉末の混合物を、焼結処理においてインプラント材料へと加工することとして提案されている。
【0005】
これ以外にも様々な焼結方法が、複合セラミック材料の製造のために提案されている(独国特許出願公開第2928007号明細書、米国特許第4882196号明細書、欧州特許第1251889号明細書)。中でも特に注目を集めているのが、リン酸三カルシウムまたはヒドロキシアパタイトのようなリン酸カルシウムによる金属表面のコーティングである(ワイ・ツイら(Y. Tsui et al.), (1998), チタン基材上にプラズマ溶射されたヒドロキシアパタイトコーティング(Plasma sprayed hydroxyapatite coatings on titanium substrates), Biomaterials, 19: 2031-43, 19: 2015-29)であり、これによれば、インプラントの取り込みの向上が可能である(米国特許第6312472号明細書、米国特許出願公開第2002/0038149号明細書)。上述の各種リン酸カルシウムおよびその他の様々な無機生体適合性材料は、細孔を形成するという特性を有している。これらの細孔は、患者自身の骨へのインプラントの取り込みを促進すると言われているが(国際公開第00/72776号パンフレット、米国特許第4051598号明細書、欧州特許出願公開第0806211号明細書、ジェニセン・エイチら(Jennissen, H. et al.)(2001), Biomaterialien, 2: 45-53)が、これは、患者自身の骨が前記細孔に向かって成長し、これと同時にインプラントの無機リン酸カルシウム層を生分解するためである(国際公開第96/10370号パンフレット;国際公開第01/97679号パンフレット)。前記複合体材料の他にも、複数の層からなるインプラントであって、多くの場合、チタンまたはチタン合金のような金属または合金を含む(国際公開第98/43550号パンフレット;国際公開第00/72777号パンフレット)前記インプラントの下層が、前記リン酸カルシウムの層(欧州特許出願公開第0478532号明細書)でコーティングされたインプラントが提案されている。前記リン酸カルシウムのコーティングは、水熱処理(欧州特許出願公開第0548365号明細書)、浸漬(soaking)および析出(米国特許第6129928号明細書;国際公開第97/41273号パンフレット)、またはプラズマ溶射(米国特許第5697997号明細書;米国特許第6113993号明細書;欧州特許出願公開第0548365号明細書;欧州特許出願公開第0739191号明細書;リヒティンガー・ティー・ケーら(Lichtinger, T.K. et al.)(2001), Mat.-wiss. u. Werkstofftech, 32: 937-941)によって行われることが典型的である。
【0006】
前記インプラント本体上のリン酸カルシウムの層は、複数の材料の混合物の単層(国際公開第98/48862号パンフレット;米国特許第5934287号明細書;米国特許第2002/0033548号明細書)または多層構造体(国際公開第02/09788号パンフレット;米国特許第6322728号明細書)のいずれかの一部であってもよい。
【0007】
前記表面修飾の他にも、タンパク質またはタンパク質混合物(主に成長因子)を、整形外科または歯科用のインプラントにコーティングする方法がいくつか提案されている。これらのタンパク質は、インプラントの取り込みを著しく促進すると言われている(リヒティンガー・ティー・ケーら(Lichtinger, T.K. et al.)(2001), Mat.-wiss. u. Werkstofftech, 32: 937-941;シャー・エーら(Shah, A. et al.)(1999), Biology of the cell 91: 131-142)。また、金属表面にタンパク質を直接コーティングする方法がいくつか提案されている。しかしながら、これらの方法には、不都合な点がいくつかあり、前記金属表面からの急速なタンパク質の遊離により、前記タンパク質が、骨形成の誘発に必要な時間保持されないことが特に問題となっていた(リヒティンガー・ティー・ケーら(Lichtinger, T.K. et al.)(2001), Mat.-wiss. u. Werkstofftech, 32: 937-941)。
【0008】
前記タンパク質の初期段階での急速な遊離(自発的バースト(spontaneous burst))を防ぐため、エンドー(Endo)(エンドー・ケーら(Endo K. et al.)(1995), Dental Materials Journal 14: 185-198)およびボゲンライター(Voggenreiter)(ボゲンライター・ジーら(Voggenreiter G et al.)(2001), Materialwiss. Werkstofftech. 32: 942-948)は、金属表面への共有結合によるタンパク質の固定化を提案している。前記各タンパク質の活性は維持される。しかしながら、前記共有結合により、タンパク質の活性および免疫原性に影響を及ぼす構造変化が引き起こされる場合がある。
【0009】
多くの研究者が、軟骨性骨形成のための骨形成因子の移植を成功させるためには、タンパク質が、当該タンパク質を適用部位に保持する好適な担体材料またはマトリックスに結合されることが必要であると述べている(米国特許第5344654号明細書)。これらの難点を克服するため、米国特許第5258029号明細書は、「本発明の骨形成タンパク質は、通常は、薬学的に許容可能な固体または液体の担体を用い、骨形成に有効な量が製剤される」と教示している。前記製剤は、骨および軟骨を発達させるための構造を提供しうるマトリックスを含んでいることが好ましい。使用可能なマトリックスは、生分解性であっても、非生分解性であってもよく、化学的または生物学的見地のいずれによって規定されてもよい。TGF−β−タンパク質と担体の懸濁液を乾燥させ、次に、載荷補綴物(load carrying prosthetic)に塗布する。これらの方法の不利な点は、移植の際に磨耗する可能性がある動物性コラーゲンまたは無機成分を使用しているということである。
【0010】
上述のようなタンパク質の迅速な剥脱(outwash)を克服するさらに別の方法が、リヒティンガーら(Lichtinger et al.)(2001)の先の引用箇所に提案されている。リヒティンガーらは、超親水性の生体付着性表面を得るため、チタン合金表面をクロモ硫酸(chromosulfuric acid)で処理することを提案している。しかしながら、クロモ硫酸は、医薬品または医療用デバイスの製造においては使用を避けるべきである。なぜなら、表面に残存するこのような酸の残存量によってタンパク質の酸化が起こる場合があり、これに伴ってタンパク質の構造や機能が変化する場合や、患者に危害を及ぼす場合があるからである(材料安全性データシートCr(VI)(Material safety data sheet Cr (VI)))。
【0011】
さらに別の方法が、国際公開第00/72777号パンフレットおよび国際公開第00/72778号パンフレットに提案されている。これらの方法においては、チタン表面に形成された膜厚の大きい酸化物層の細孔構造、または内部に設けられた空間、流路、または凹部によって形成される貯留部が用いられている。しかしながら、タンパク質は、金属および金属イオンの存在下において酸化されやすいことは周知である(リーら(Li et al.)(1997)、特に、保護物質が存在しない状態で酸素と接触している、触媒活性を有する遷移元素に関する記載、Ann. Occup. Hyg. 41, suppl. 1, 379 - 383)。よって、上述のデバイスの欠点としては、タンパク質がインプラントの表面上で酸化されることが考えられる。前記酸化により構造が変化する場合があるが、このような構造変化の結果、免疫原性反応の形成や活性の喪失が起こり得る。
【0012】
従来公知のコーティングされたデバイスのその他の欠点としては、生物活性物質がデバイスに均一にコーティングされず、これにより、このようなデバイスの、例えば、移植に対する適性が不十分なものとなることが挙げられる。デバイスがこのような不利点を有する理由はいくつか挙げられる。例えば、タンパク質であるコーティング物質は、コーティング処理中に分解または酸化される、および/または、不溶性の凝集体を析出させるか、あるいは不十分な量しか存在しない。したがって、得られたコーティングは、例えば、骨成長の誘発または潜在的な骨形成細胞の誘引のような、所望の生物学的効果を発揮しない。さらに、従来技術のコーティング溶液は、例えば、インプラントにコーティングする物質の可溶化に用いられる有機溶媒のような毒性成分を含有している場合が多い。しかしながら、医療用インプラントにおいて毒性物質が望ましくないことは言うまでもない(EMEA, ICH Topic Q 3 C, 不純物(Impurities):残存溶媒(Residual Solvents))。従来、デバイス、例えば、金属インプラントに対するコーティング溶液の塗布は、主として手作業で行われているが、これは非常に労力を要する作業であり、また、優良製造規範(GMP)に規定の条件下ではほとんど使用できない。しかしながら、インプラントとして使用されるコーティングされたデバイスに対する需要は、医療用途の様々な分野において劇的に増加している。したがって、特に、GMP品質を有する大量生産に関し、費用効率の高い無菌デバイスのコーティングが必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の技術的課題は、デバイス、好ましくはインプラントを物質でコーティングする改良された方法、ならびに、前記方法で使用する容器を提供することである。本発明の目的は、デバイス上に物質を定量的かつ均一に蒸着する費用効率の高い方法を確保することである。これは、特に、薬学的に許容可能な従来技術の無菌処理における商業化を包含する。この問題は、請求項に記載の特徴によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様において、本発明は、デバイスを物質でコーティングする方法であり、(a)前記デバイスを、容器内に存在する前記物質または基質の溶液に接触させる工程と、(b)前記デバイスを、前記溶液と接触させた状態で乾燥させる工程とを備えた方法を提供する。この発明によれば、前記容器は、コーティング用ベッセルとしての特性と、前記コーティングされたデバイスの主要な包装容器としての特性の両方を満たす。
【0015】
本発明の文脈で使用される場合、「物質」および「基質」という用語は置換可能に用いられる。
【0016】
前記方法は、前記物質または基質の溶液から揮発成分を除去する工程をさらに備え、前記除去工程が、前記工程(b)の前、前記工程(b)と同時、または前記工程(b)の後に行われることが好ましい。この揮発成分の除去は、特に、例えば、前記溶液のpH値を変化させて前記物質の溶解度を所望の値に制御するという影響を与える。
【0017】
前記物質は、タンパク質またはペプチド、多糖(シュナールら(Schnaar et al., 1978, N−アセチルグルコサミンによって修飾されたポリアクリルアミドゲルへの肝細胞の付着(Adhesion of hepatocytes to polyacrylamide gels derivitized with N-acetylglucosamine), J. Biol. Chem. 253, 7940-7951)、糖脂質(ブラックボーン(Blackbourn)およびシュナール(Schnaar)(1983) J. Biol. Chem., 258(2), 1180-1188)、あるいはペプチドまたは小分子等の薬学的に活性な物質であることが好ましい。「タンパク質」または「ペプチド」という用語は、本発明の文脈においては、置換可能に用いられている。
【0018】
タンパク質の一例として、溶解骨誘導タンパク質(dissolved osteoinductive protein)、好ましくはTGF−β−スーパーファミリーのメンバーが挙げられる。前記薬学的に活性な物質の範囲内に、後述するような1以上のタンパク質、ペプチドまたは小分子の組み合わせも含まれる。各種タンパク質、ペプチド、または小分子の組み合わせも考えられる。
【0019】
成長分化因子のTGF−βファミリーは、骨形成を含む多数の生物学的プロセスに関与することがわかっている。前記ファミリーのメンバーは全て、特徴的なドメイン構造を備えた分泌ペプチドである。N末端の最端部において、TGF−βファミリーメンバーは、シグナルペプチドまたは分泌リーダーを有している。この配列に続き、C末端において、プロドメインおよび成熟ペプチドの配列を有している。前記成熟ペプチドの配列は、7個の保存システインを有し、そのうちの6個は分子内のジスルフィド結合の形成に必要であり、1個は2個のペプチドの二量化に必要である。生物活性TGF−βファミリーメンバーは二量体であり、2個の成熟ペプチドで構成されていることが好ましい。前記TGF−βファミリーメンバーは、通常は、前記成熟配列に加え、プロドメインを有するプロタンパク質として分泌される。前記プロドメインは、細胞外で切断されており、情報伝達分子の一部とはなっていない。しかしながら、前記プロドメインは、前記成熟ペプチドの細胞外での安定化に必要である可能性があることが報告されている。
【0020】
本発明の文脈において、「TGF−βファミリーメンバー」という用語、または以下に述べる当該ファミリーのタンパク質は、前記タンパク質またはメンバーのあらゆる生物活性変異体、変異体、および非活性前駆体を包含する。よって、単に成熟配列を有するタンパク質、成熟タンパク質とプロドメインとを有するタンパク質、または成熟タンパク質と、プロドメインと、リーダー配列とを有するタンパク質は、これらの生物活性フラグメントと同様、本発明の範囲内である。TGF−βメンバーのフラグメントが生物活性を有するかどうかは、例えば、カタギリら(Katagiri et al.)Biochem. Biophys. Res. Commun. 172: 295-299またはニシトーら(Nishitoh et al.)(1996) J. Biol. Chem. 271: 21345-21352に記載の生物学的検定法によって、容易に測定できる。
【0021】
本発明に係る生物活性は、国際公開第03/043673号パンフレットに記載のような、インビボモデルによって測定可能であることが好ましい。本発明にはさらに、アミノ酸配列が、TGF−βファミリーメンバーのアミノ酸配列と75%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上同一であるTGFメンバーの変異体が包含される。
【0022】
TGF−βスーパーファミリーのメンバーの概要が、ウォズニー・ジェイエム(Wozney JM)、ローゼン・ブイ(Rosen V)のClin Orthop 346: 26-37に示されている。TGF−βファミリーのメンバーのアミノ酸配列は、インターネットを介し、Swiss−Prot等の周知のデータベースから取得可能である(http://www.expasy.ch/sprot/sprot-top.html)。
【0023】
TGF−βファミリーの前記メンバーは、BMPサブファミリーのメンバーであることがより好ましい。
【0024】
骨形成タンパク質(BMP)サブファミリーのメンバーは、特に、骨組織の誘発および再構築に関与することが分かっている。BMPは、もともと骨基質から分離している。これらのタンパク質は、異所で新生骨形成を誘発する能力によって特徴付けられる。様々なインビボ検査により、BMPによる前駆細胞の骨形成および軟骨形成の促進が実証され、各BMP分子が骨格の発達に際して異なる役割を担っている可能性が浮上した。BMPの分子的、生物学的特性に関するさらなる詳細が、ウォズニー・ジェイエム(Wozney JM)、ローゼン・ブイ(Rosen V)(1998)の先の引用箇所、シュミトットら(Schmitt et al.)(1999), J Orthop Res 17: 269-278、およびリンド(Lind)(1996), Acta Orthop Scand 67: 407-17に記載されている。
【0025】
タンパク質のモルフォゲンファミリーのメンバーには、哺乳類の骨形成タンパク質−1(OP−1(別名BMP−7)およびショウジョウバエ同族体(Drosophila homolog)60A)、骨形成タンパク質−2(OP−2(別名BMP−8))、骨形成タンパク質−3(OP−3)、BMP−2(別名BMP−2AまたはCBMP−2A、およびショウジョウバエ同族体DPP)、BMP−3、BMP−4(別名BMP−2BまたはCBMP−2B)、BMP−5、BMP−6およびそのマウス同族体Vgr−1、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、GDF−3(別名Vgr2)、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、GDF−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、GDF−5(別名CDMP−1またはMP52)、GDF−6(別名CDMP−2)、GDF−7(別名CDMP−3)、ツメガエル同族体VglならびにNODAL、UNIVIN、SCREW、ADMP、およびNEURALが含まれる。このファミリーのメンバーは、共通の構造的特徴を共有し、前駆体である「プロフォーム(pro-form)」から成熟ペプチド鎖コンピテントを生成して二量化するプロセシングを有し、かつカルボキシ末端活性ドメインを含有する、約97〜106個のアミノ酸からなる分泌ペプチド鎖をコードしている。メンバーは全て、このドメインにおいてシステインの保存パターンを共有しており、これらのタンパク質の活性型は、単一のファミリーメンバーのジスルフィド結合同質二量体であってもよいし、あるいは2種類の異なるメンバーの異質二量体であってもよい(例えば、マッサギュー(Massague)(1990), Annu. Rev. Cell Biol. 6: 597;サンパスら(Sampath et al.)(1990), J. Biol. Chem. 265: 13198参照)。さらに、米国特許第5011691号明細書;米国特許第5266683号明細書;オズカイナックら(Ozkaynak et al.)(1990), EMBO J. 9: 2085-2093、ワートンら(Wharton et al.)(1991), PNAS 88:9214-9218)、(オズカイナック(Ozkaynak)(1992), J. Biol. Chem. 267: 25220-25227および米国特許第5266683号明細書);(セレステら(Celeste et al.)(1991), PNAS 87:9843-9847);(リョンスら(Lyons et al.)(1989), PNAS 86:4554-4558)も参照されたい。これらの開示には、これらの骨形成タンパク質のアミノ酸およびDNA配列、ならびに化学的および物理的特徴が記載されている。さらに、ウォズニーら(Wozney et al.)(1988), Science 242:1528-1534;BMP9(国際公開第93/00432号パンフレット);DPP(パジェットら(Padgett et al.)(1987), Nature 325:81-84;およびVg−1(ウィークス(Weeks)(1987) Cell 51: 861-867)も参照されたい。
【0026】
BMPファミリーの前記メンバーは、BMP−1、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−14またはBMP−16であることが好ましい。
【0027】
BMPファミリーの前記メンバーは、BMP−2またはBMP−7であることが最も好ましい。
【0028】
BMP−2のプリプロフォーム(preproform)のアミノ酸配列が、Swiss−Protアクセッション番号P12643(Genebankアクセッション番号GI:115068)で寄託されている。アミノ酸1〜23は、シグナル配列に相当し、アミノ酸24〜282は、プロペプチドに相当し、アミノ酸283〜396は、成熟タンパク質に相当する。BMP−7のプリプロフォームのアミノ酸配列が、SwissProtアクセッション番号P18075(Genebankアクセッション番号GI:115078)で寄託されている。BMP−2またはBMP−7は、それぞれ、BMP−2またはBMP−7のプリプロフォーム、プロフォームまたは成熟ペプチドを指すことが好ましい。さらに、本質的に同一の生物活性、好ましくは骨誘導特性を有する前記タンパク質のフラグメントも包含される。BMP−2およびBMP−7の配列に関するさらなる情報を以下に示す。
【0029】
TGF−βファミリーの前記メンバーは、GDFであることがより好ましい。成長分化因子(GDF)もまた、特に、骨組織の誘発および再構築に関与することがわかっている。成長分化因子5(GDF−5)、別名軟骨由来形態形成タンパク質1(CDMP−1)は、BMPファミリーのサブグループのメンバーであり、前記サブグループには、他の関連タンパク質、好ましくは、GDF−6およびGDF−7が含まれる。前記タンパク質の成熟型は、27kDaの同質二量体である。種々のインビボおよびインビトロ検査により、哺乳類の骨格における異なる形態学的特徴を形成する際のGDP−5の役割が実証されている。GDF−5の突然変異は、四肢の長骨の長さの減少、四肢および胸骨における関節の発達異常を含む、骨格異常の原因となる(ストームおよびキングスレイ(Storm & Kingsley)(1999), Development Biology, 209, 11-27)。アミノ酸配列は、マウスとヒト間において高度に保存されている。
【0030】
GDFサブファミリーの前記メンバーは、GDF−1、GDF−3、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、GDF−10またはGDF−11であることが好ましい。
【0031】
GDFサブファミリーの前記メンバーは、GDF−5であることが最も好ましい。GDF−5のプリプロフォームのアミノ酸配列が、Swiss−Protアクセッション番号P43026(Genebankアクセッション番号GI:20141384)で寄託されている。GDF−5は、GDF−5のプリプロフォーム、プロフォームまたは成熟ペプチドを指すことが好ましい。さらに、本質的に同一の生物活性、好ましくは骨誘導特性を有するGDF−5のフラグメントも包含される。
【0032】
本発明のデバイスへのコーティングが考えられるTGF−βファミリーメンバーのさらに別の例が、例えば、欧州特許第10372031号明細書、欧州特許出願公開第0723013号明細書、欧州特許出願公開第1221484号明細書、欧州特許第0362367号明細書、欧州特許出願公開第1225225号明細書、欧州特許第10714665号明細書、欧州特許出願公開第0646022号明細書、欧州特許第0584283号明細書、欧州特許第0448704号明細書、欧州特許第0643767号明細書、欧州特許第0812207号明細書、欧州特許出願公開第1220693号明細書、欧州特許出願公開第1223990号明細書、欧州特許出願公開第1150725号明細書、欧州特許第0679097号明細書、欧州特許第0601106号明細書、欧州特許出願公開第0601135号明細書、欧州特許出願公開第0972520号明細書または欧州特許第0575555号明細書に記載されている。
【0033】
さらに別の有用なタンパク質として、DNAのコンピテントによってコードされ、本明細書に記載の骨形成タンパク質をコードするDNAにハイブリダイズするタンパク質、ならびに関連する類似体、同族体、ムテイン(生合成変異体)等が挙げられる。かかるDNA配列ならびに化学的および物理的性質を開示している出版物として、以下が挙げられる。OP−1およびOP−2:米国特許第5011691号明細書、米国特許第5266683号明細書、オズカイナックら(Ozkaynak et al.)(1990), EMBO J. 9: 2085-2093;OP−3:国際公開第94/10203号パンフレット(PCT/US93/10520);BMP−2、BMP−3、BMP−4:国際公開第88/00205号パンフレット、ウォズニーら(Wozney et al.)(1988), Science 242:1528-1534);BMP−5およびBMP−6:セレステら(Celeste et al.)(1991), PNAS 87: 9843-9847;Vgr−1:リョンスら(Lyons et al.)(1989), PNAS 86: 4554-4558;DPP:パジェットら(Padgett et al.)(1987), Nature 325: 81-84;Vg−1: ウィークス(Weeks)(1987), Cell 51: 861-867;BMP−9:国際公開第95/33830号パンフレット(PCT/US95/07084);BMP−10:国際公開第94/26893号パンフレット(PCT/US94/05290);BMP−11:国際公開第94/26892号パンフレット(PCT/US94/05288);BMP−12:国際公開第95/16035号パンフレット(PCT/US94/14030);BMP−13:国際公開第95/16035号パンフレット(PCT/US94/14030);GDF−1:国際公開第92/00382号パンフレット(PCT/US91/04096)およびリーら(Lee et al.)(1991),PNAS 88: 4250-4254;GDF−8:国際公開第94/21681号パンフレット(PCT/US94/03019);GDF−9:国際公開第94/15966号パンフレット(PCT/US94/00685);GDF−10:国際公開第95/10539号パンフレット(PCT/US94/11440);GDF−11:国際公開第96/01845号パンフレット(PCT/US95/08543);BMP−15:国際公開第96/36710号パンフレット(PCT/US96/06540);MP121:国際公開第96/01316号パンフレット(PCT/EP95/02552);GDF−5(CDMP−1、MP52):国際公開第94/15949号パンフレット(PCT/US94/00657)、国際公開第96/14335号パンフレット(PCT/US94/12814)および国際公開第93/16099号パンフレット(PCT/EP93/00350);GDF−6(CDMP−2、BMP−13):国際公開第95/01801号パンフレット(PCT/US94/07762)、国際公開第96/14335号パンフレットおよび国際公開第95/10635号パンフレット(PCT/US94/14030);GDF−7(CDMP−3、BMP−12):国際公開第95/10802号パンフレット(PCT/US94/07799)および国際公開第95/10635号パンフレット(PCT/US94/14030)。別の実施形態においては、有用なタンパク質として、新規な生合成形態形成タンパク質および2種類以上の公知のモルフォゲン配列を用いて設計したキメラタンパク質を含む、生物活性生合成コンストラクトが挙げられる。米国特許第5011691号明細書に開示の生合成コンストラクト(例えば、COP−1、COP−3、COP−4、COP−5、COP−7、およびCOP−16)も参照されたい。
【0034】
本発明の文脈においては、TGF−βファミリーのメンバーであるタンパク質の生物活性を有するペプチドまたは小分子が好ましい。前記ペプチドまたは小分子は、骨誘導および/または骨形成特性を有することがより好ましい。これらの特性は、本明細書または国際公開第03/043673号パンフレットに記載の方法によって測定することができる。「骨誘導」という用語は、間葉幹細胞および前骨芽細胞を骨芽細胞へと変換する能力を指す。骨誘導の前提条件となるのは、上述の骨芽細胞前駆体および他の間葉細胞の活性化が起こる周辺組織へとデバイスによって配信されるシグナルである。本明細書中で使用される骨誘導は、間葉細胞から骨前駆細胞、骨芽細胞への分化を包含する。さらに、骨誘導は、前記骨芽細胞から骨細胞、骨の成熟細胞への分化も含む。このように、骨誘導には、未分化または分化程度の低い細胞が、骨を形成し得る骨細胞へと分化することが必要である。先に述べたように、本発明に基づいて使用される骨誘導タンパク質は、移植後にゆっくりとデバイスから遊離し、効率よく周辺組織に分配される。さらに、本発明に包含されるタンパク質およびペプチドは、生体内において骨誘導特性を示す。例えば、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)スーパーファミリーが骨誘導特性を有するメンバーを包含することは、当業界において周知である。特に優れた骨誘導特性を有する前記TGF−βスーパーファミリーの個々のメンバーを、上記および下記に列挙し、これらについて本明細書中で言及している。結論として、本発明のデバイスの骨誘導タンパク質は、前記デバイスの表面上において、ならびに担体からの遊離後において、前記デバイスの移植側の周辺組織における骨細胞前駆体に対する骨誘導シグナルとして働く。
【0035】
「骨形成」という用語は、骨芽細胞による新生骨の合成を指す。本発明によれば、前記デバイスの移植側の周辺における既存の骨が、前記デバイスの構造を骨細胞が付着可能なマトリックスとして使用して前記デバイス内へと成長する。
【0036】
薬学的に活性な物質の好ましい例として、インターロイキン、EGF、PDGF、IGF、FGF、TGF−アルファ、TGF−ベータ、ヒルジン、組織プラスミノゲン活性化因子および変異体、パラトルモン等のペプチドが挙げられる。上述の薬学的に活性な物質のいずれかの「変異体」または「誘導体」は、非修飾の薬剤物質と同一の活性または効果を有するものと解釈されるべきである。
【0037】
多糖、脂質、糖脂質、または小分子の好ましい例としては、ヘパリンまたはヘパリン様物質、タキサン類、例えば、パクリタキセル(paclitaxen)、抗生物質、ステロイド、ホルモン、またはホスホリルコリンが挙げられる。
【0038】
本発明のデバイス(例えば、ステントまたは接眼レンズ)にコーティングできる物質の他の例としては、バイオゴールド(biogold)等の有機コーティングが挙げられる。バイオゴールドは、短鎖炭化水素からなる市販のポリマーコーティングである(米国特許第4994498号明細書、バイオゴールドコーポレイション(Biogold Cooperation))。本発明のデバイス(例えば、ステント)にコーティングできる無機コーティング物質の他の例としては、炭化ケイ素(SiC)、酸化イリジウム(オズベック(Ozbek)(1997), Cathet. Cardiovasc Diagn 41: 71-78)またはドイツ、ベルリンのテナックスバイオトロニック社(Tenax、Biotronik GmbH)製のTENISS(ウンバードーベン・エム(Unverdorben M.)(2000), J. of interventional cardiollogy 16(4): 325)が挙げられる。SiCは、セラミックであり、非晶質の水素化炭化ケイ素(hydrogenated silicium carbide)からなる。
【0039】
さらに、生体適合性または分解性ポリマー等の合成ポリマーを本発明のデバイス(例えば、ステント)にコーティングすることも可能であり、好ましい生体適合性または分解性ポリマーとしては、ポリ乳酸、セルロース、ポリウレタンポリエステルメタクリロイルホスホリルコリン(PC)ラウリルメタクリレートまたはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。さらに、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キトサン、アルギン酸塩、またはフィブリン等の天然由来のポリマーを本発明のデバイスにコーティングすることも考えられる。本発明のデバイス(例えば、ステント)にコーティングできるタンパク質の非限定的な例として、糖タンパク質IIb/IIIa抗体が挙げられる。さらに、タキサン類(例えば、パクリタキセル)等の薬剤もまた、本発明のデバイス(例えば、ステント)にコーティングされる物質と考えられる。多種多様な、但し限定的ではないステントのコーティングを記載した論文として、スジョード(Sjoerd)(2001), Curr. Intervent. Cardiol. Rep. 3: 28-36を参照されたい。
【0040】
本明細書に記載の薬学的に活性な物質は、好ましい実施形態において、無機または有機生体吸収性マトリックスまたは材料に固定化されている。
【0041】
あるいは、前記物質は、活性でない成分を含む。本発明の文脈で使用される場合、「活性でない(non-active)」という用語は、「非活性(inactive)」という用語と置換可能であり、薬理学的活性または疾患の診断、治癒、緩和、治療、または予防において直接的な効果を与えること、あるいは、ヒトまたは他の動物の体の構造または何らかの機能に影響を及ぼすことを目的とした薬剤製品に含まれる成分を意味する。非活性成分は、例えば、ブラウン(Brown)(1983), N Engl J Med., 309: 439-441または米国小児科学会、薬剤委員会(American Academy of Pediatrics, Committee on Drugs)による医薬品に含まれる「非活性」成分("Inactive" ingredients in pharmaceutical products), Pediatrics (1985), 76: 635-643に記載されている。非活性成分のリストは、食品医薬品局(FDA)でも入手可能である。かかる成分には、メチオニン、サッカロース、または酢酸が含まれる。
【0042】
リン酸カルシウム等、あらゆる種類のセラミックスを含む物質が、本発明に包含される。「リン酸カルシウム」という用語には、カルシウムイオン、リン酸塩イオンを含み、本発明の担体に好適なさらに別のイオンまたは原子、例えば、CO32-、F-、OH-、Mg2+を任意に含む組成物が包含される。本発明において使用されるリン酸カルシウムは、上述のように、本発明のデバイスに好適な三次元構造を有する結晶質または非晶質である。好ましい周知のリン酸カルシウムを以下に列挙する。前記リン酸カルシウムは、ベータリン酸三カルシウム、アルファリン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸化アパタイトまたはカルシウム欠損ヒドロキシルアパタイトまたはセメントを含有するリン酸カルシウムである。
【0043】
本発明の方法によってコーティングされたデバイスは、本明細書に記載の物質によるコーティングが対象領域に均一に施されていることが好ましい。前記物質は、溶液の形態であることが好ましい。前記溶液は、当業者が、例えば、骨誘導タンパク質の溶解度に基づいて調製することが可能であるが、前記溶解度は、pH、イオン強度、ならびに前記溶液に担体を接触させた後に前記担体が前記パラメータに及ぼす影響に依存する。本発明によれば、本発明の方法に好適な溶液は、骨誘導タンパク質の酸化状態に影響を及ぼさない成分のみを含むものであることがわかっている。
【0044】
「均一にコーティングされる」という用語は、担体の表面が骨誘導タンパク質で完全にコーティングされ、これにより、本質的に再生可能な規定量のタンパク質が、前記担体表面の所望の領域に存在することを意味する。この発明によって均一にコーティングされた担体は、骨誘導タンパク質による被覆がその表面において最大であることが好ましい。均一なコーティングは、移植部位の周辺組織への骨誘導タンパク質の効率的な遊離および均一な分布と活性の前提条件である。さらに、骨誘導タンパク質は凝集せず、沈殿または微量沈殿によって部分的あるいは完全に不活性化するものではなく、均一なコーティングにより、生物活性を有する、凝集しないタンパク質の付着が達成されるものと解釈されるべきである。上述の均一なコーティングは、本発明の方法によって達成できるものであり、本明細書に記載の実施例で言及されている通りである。さらに、均一なコーティングを制御するための手段および方法、固定化タンパク質の定量およびキャラクタリゼーションが、国際公開第03/043673号パンフレットに記載されている。
【0045】
本発明においては、前記タンパク質またはペプチドは、前記デバイスの表面に固定されている。前記タンパク質またはペプチドの担体への結合は、可逆的であることが好ましい。したがって、骨誘導特性を有するタンパク質またはペプチドは、前記デバイスの(例えば、金属製の)表面に、共有結合によって結合されているのではないと考えられる。結合は、静電的相互作用、ファンデルワールス力のような疎水性または非静電的な相互作用によって起こることが好ましい。骨誘導タンパク質の可逆的な結合のおかげで、前記デバイスが一旦骨の空洞または動脈等の好適な生体内環境に配置されてしまえば、前記タンパク質の溶解が起こり得る。前記タンパク質の溶解は、前記デバイスの周辺組織へのタンパク質の拡散を可能にする、ゆっくりとした遊離であることが好ましい。よって、前記デバイスによれば、天然タンパク質が局在でき、これにより、例えば、新生骨の形成が促進され、当該骨のマトリックス表面またはコーティングされたステントへの内方成長により、急速な再狭窄が抑制される。
【0046】
医薬品に含まれるタンパク質を安定化するための多くの方法が提案されている。しかしながら、この発明の基礎を成す実験により、液体または凍結乾燥させたタンパク質製剤中でタンパク質を安定化するための周知の技術は、金属表面に吸着されたタンパク質に対しては、そのままでは適用できないことが実証された。先に述べたような従来技術に開示の方法によるセラミックまたは金属(例えば、チタンまたはチタン合金)の表面へのタンパク質のコーティングによれば、タンパク質の修飾種が生じてしまい、その結果、前記タンパク質の凝集または酸化が起こる(詳細については、実施例6参照)。さらに、還元剤を添加しても、タンパク質の酸化量は減少しない。本発明の方法によれば、移植後に効率よく骨を増大させるデバイスを製造することが可能である。有利なことに、酸化されたタンパク質の強化された免疫原性による炎症等といった望ましくない副作用を回避することが可能である。さらに、本発明の方法によれば、より時間がかからず、かつ、より費用効率の高い、本発明の医療用デバイスの製造プロセスを実現できる。これは、前記インプラントの金属または合金製の本体(corpus)のコーティングとパッケージングが、本明細書に記載のような一工程処理で行えるからである。さらに、前記一工程処理によれば、本明細書に記載のような低温での迅速な乾燥と、コーティング処理時および包装容器内における酸素の不在により、デバイスまたはインプラントにコーティングされた物質の活性が確実に保存される。さらに別の利点として、前記コーティングおよびパッケージングプロセスにより大量生産が可能となり、このような生産は、浸漬、滴下、または噴霧によって行われるその他のコーティング溶液の塗布技術と異なり、無菌処理に関するGMP基準に準拠していることが挙げられる。したがって、本明細書に記載の方法でコーティングされたインプラントは、特に、非経口での医療用途に関して所望される無菌の高品質を有している。
【0047】
本発明のデバイスはインプラントであってもよく、これは、本明細書中で使用される「デバイス」および「インプラント」という用語が置換可能であることを意味している。「インプラント」という用語が、上皮表面下に完全または部分的に埋没するように設計された、本発明によって提供されるあらゆるデバイスを指すことは周知である(コエック・ビーおよびワグナー・ダブリュー(Koeck, B. and Wagner, W.)(Eds.) 1996)。前記インプラントは、扁平、高密度、または複雑な形状であってもよい。すなわち、従来使用されている、または動作可能なあらゆるデバイスを使用することができる。上述のインプラントは、例えば、長骨の代替物または人工歯の土台として使用される単純な円筒形状のものから、頭部扁平骨の代替物および股関節部、膝、または肘等の人工関節として使用される扁平なインプラントまで多岐にわたっている。さらに別のタイプのインプラントとして、天然由来(ウシ、ヒト)または合成材料(ベータ−TCP)から構成された(多孔性の)三次元形状(例えば、ブロックまたは円筒)の生分解性セラミックインプラントが挙げられる。
【0048】
前記インプラントまたはデバイスは、少なくとも2つの構成要素を含む実体であることが好ましい。前記構成要素の一つは担体である。本発明の意味の範囲内において使用可能な担体には、完全な金属または合金製の担体のような固体の担体、ならびに金属または合金のマトリックスが含まれる。さらに本発明には、空所および空洞を有する固体の担体が包含される。さらに、前記担体は、マクロおよびミクロ細孔の形成によって拡大された表面を有していることが好ましい。前記マクロまたはミクロ細孔は、前記担体の表面層にのみ存在することが好ましい。さらに本発明には、少なくとも2つの異なる構成要素からなる担体であり、金属または合金製の構成要素が芯材または芯材層として使用され、例えば、セラミック材料が表面層として使用されている担体も包含される。これは、インプラントまたは外科用補綴全般の形成を包含するものである。これらの補綴は、以下に詳述するような金属表面で形成されるか、あるいはこのような表面でコーティングされることが好ましい。補綴は、チタンもしくはチタン合金、またはステレンス鋼で形成されている。
【0049】
例えば、溶解骨誘導タンパク質を含む溶液を、本明細書に記載の金属または金属合金の表面を含む担体に接触させる前に、前記各金属表面を、大気ガス(例えば、酸素)またはその他の疎水性汚染物質のような表面汚染物質を除去するように洗浄または処理し、コーティングの接着強さを良好なものとすることが好ましいと考えられている。この目的に好適ないくつかの方法が、当業界において周知であり、本明細書中の実施例に例示されている。例えば、本発明のデバイスの金属表面を、例えば、アセトンや、エタノールのようなアルキルアルコールで洗浄してから加熱して揮発性の汚染物質を取り除き、その後、殺菌した蒸留水または脱塩水で洗浄してもよい。
【0050】
本発明の別の態様においては、デバイスまたはインプラントの担体を、合成有機材料、合成無機材料、天然由来の有機材料、および天然由来の無機材料からなる群から選択することが考えられている。天然由来とは、自然界に存在する化合物を意味する。
【0051】
前記合成有機材料は、ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド(PLLA)、ポリ−D/L−ラクチド(PDLLA)、ポリ(グリコール乳酸共重合体)(poly(glycolic-co-lactid acid)) (PLGA)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)(P(3−HB)、ポリ(3−ヒドロキシ吉草酸)P(3−HV)、ポリ(p−ジオキサノン)(PDS)、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、ポリ無水物(polyanhydride)(PA)、ポリオルトエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリグラクチン、ポリアミド(PA)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリヒドロキシメタクリル酸メチル(PHEMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSU)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、またはポリシロキサンであることが好ましい。上述の合成有機材料のあらゆる組み合わせまたはコポリマーも考えられるものと解釈されるべきである。
【0052】
別の好ましい実施形態においては、前記合成無機材料は、スチール316L(steel 316L)、コバルトクロム合金、チタン、本明細書に記載のチタン合金、金、または白金である。上述の合成無機材料のあらゆる組み合わせも考えられるものと解釈されるべきである。
【0053】
さらに好ましい実施形態においては、前記無機材料は、β−リン酸三カルシウム、α−リン酸三カルシウム、ヒドロキシルアパタイト、炭酸化アパタイト、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カルシウム硫酸塩、またはバイオガラスである。上述の無機材料のあらゆる組み合わせも考えられるものと解釈されるべきである。
【0054】
さらに別の好ましい実施形態においては、前記天然由来の有機材料は、コラーゲン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、アルギン酸塩、自己由来の骨、ゼラチン、またはフィブリンである。上述の天然由来の有機材料のあらゆる組み合わせも考えられるものと解釈されるべきである。
【0055】
別の実施形態においては、前記天然由来の無機材料は、石灰化骨またはサンゴ藻由来の材料(coralline derived material)である。
【0056】
本明細書中に記載の有機または無機材料は全て、例えば、カプセル化剤のような医薬品の活性成分の担体として、または薬剤の固定化を達成するための伝達/埋め込みのため、保護および/または安定化のため、および/または制御された遊離のために使用することもできる。
【0057】
前記薬学的に活性な物質は、無機または有機生体吸収性材料に固定化可能であることが好ましい。
【0058】
本発明のデバイスまたはインプラントは、多孔化、ビーズを使用した処理、またはメッシュ化による表面修飾によって拡大された表面を有していることが好ましい。かかる修飾は、化学的または機械的手段を含む当業界において周知の方法によって導入できる。さらに、ナノメートル、マイクロメートルスケールの凹凸を有する拡大された表面は、骨結合に有益であることがわかっている。
【0059】
「骨結合」という用語は、本明細書中で使用される場合には、骨がインプラントの周りに新生骨を形成し、当該インプラントと一体化する能力を有することを意味する。一体化とは、骨細胞がインプラント表面に付着し、その結果、補綴による再構築物の強固かつ永続的な固定が、機能上の負荷の下、痛み、炎症、またはゆるみを伴うことなく得られることを意味する。新生骨の形成を伴う骨結合は、外傷性、悪性、または人工の欠陥の治療、歯の欠陥の治療、または股関節部、肘、背骨、膝、指または足関節の治療のため、あるいは、骨欠陥充填材料として使用するために行われるべきものと考えられている。先に述べたような疾患および障害の症状は、シリンベル(Pschyrembel)やステッドマン(Stedman)等の標準的な医学に関するテキストブックに詳細に記載されている。
【0060】
「新生骨形成」とは、軟骨性骨の形成または膜内骨の形成を意味する。ヒトの場合、骨形成は、胎児成育期における最初の6〜8週目に始まる。間葉由来の前駆幹細胞(progenitor stem cell)が所定の部位に移動し、その部位において、(a)縮合し、増殖し、骨形成細胞(骨芽細胞)へと分化する、頭蓋において観察される「膜内骨形成」と呼ばれるプロセスを経るか、あるいは、(b)縮合し、増殖し、中間生成物である軟骨形成細胞(軟骨芽細胞)へと分化し、続いて、前記中間生成物が骨形成細胞によって置換される。より具体的には、間葉幹細胞が、軟骨細胞へと分化する。そして、前記軟骨細胞は石灰化され、肥大し、この時点で前記部位に存在する、分化した骨芽細胞からなる新たに形成された骨に置換される。続いて、前記石灰化した骨の大幅な再造形が起こり、その後、機能性の骨髄要素が充填された小骨で占められるようになる。このプロセスは、長骨において観察され、「軟骨性骨形成」と呼ばれる。胎児期以降は、骨は、軟骨性骨の発達初期の細胞過程を模することによって損傷を修復する自己修復能を有する。すなわち、骨髄、骨膜、および筋肉から間葉の前駆幹細胞を誘発して欠陥部位へと移動させ、上述のような一連の事象を開始させることができる。ここで、これらの細胞は累積し、増殖し、軟骨へと分化し、次に新たに形成された骨に置換される。
【0061】
本発明の使用に関連して述べた上述の疾患の1以上を治療するための方法であって、本発明のデバイスまたは本発明の方法によって得られるデバイスを、薬学的に許容可能な形態で対象に投与する工程を少なくとも含む方法もまた、本発明の範囲内である。前記対象は、ヒトであることが好ましい。
【0062】
前記デバイスまたはインプラントは、賦形剤をさらに含んでいてもよい。これらの賦形剤は、例えば、糖類、アミノ酸、ポリオール、または界面活性剤のようなタンパク質の安定化または保存、あるいは、例えば、緩衝物質のpHを維持する働きをする。この発明に包含されるその他の好ましい賦形剤としては、デンプンまたは化工デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、天然油(例えば、ヒマシ油)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールプロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。
【0063】
「糖類」という用語は、単糖、二糖、および多糖を包含する。単糖、二糖、および多糖の構造ならびに組成物は、当業界において周知であり、Rompp社の化学辞典等の標準的なテキストブックに記載されている。前記糖類は、二糖であることがより好ましい。前記二糖は、スクロースまたはトレハロースであることが最も好ましい。
【0064】
本発明のデバイスまたは方法の別の好ましい実施形態においては、前記デバイスは、毒性物質を全く含まない。
【0065】
「毒性物質」という用語は、当業界において提案されている方法に用いられる毒性の有機溶媒および添加剤、例えば、アセトニトリルを包含することが好ましい。前記物質は、前記物質を含有するデバイスの移植後に、炎症およびその他の反応を引き起こす場合がある。前記デバイスは、当業界で提案されているコーティング方法では不可避な望ましくない副作用のため、治療上あまり認められない。さらに、治療用タンパク質の開発に関する国際的指針は、製造工程において、有害で毒性のある物質を避けることを要求している(詳細に関しては、国際調和会議(International Conference on Harmonization)(ICH)、表題Q3C(Topic Q3C); www. emea.eu.int/参照)。しかしながら、本発明のデバイスまたは本発明の方法によって得られるデバイスは、毒性物質を全く含まないか、あるいは毒性物質が極力抑えられており、よって、治療上十分に認められ、かつ、監督官庁の要件を満たしているという利点を有ている。
【0066】
また、本発明のインプラントまたは方法のさらに好ましい実施形態においては、前記デバイスは、感染性材料を全く含まない。
【0067】
毒性物質以外にも、前記インプラントに含まれる感染性材料により、前記デバイスを移植した対象に深刻な感染が引き起こされる場合がある。しかしながら、ウシまたはブタの骨由来の潜在的に感染性のゼラチンが、多くの従来技術の方法において、保護タンパク質として使用されている(エム・リンド(M. Lind (1996), Acta Orthop Scand 67: 407-17)。
【0068】
例えば、骨誘導タンパク質による本発明のデバイスのコーティングは、間葉幹細胞の骨芽細胞および軟骨細胞への変換の開始と促進を目的としている。したがって、本発明のデバイスの、前記各骨組織に向けられる部分のみをコーティングすればよいものと考えられている。前記部分は、表面全体または少なくとも前記骨組織と隣り合う部分であることが好ましい。例えば、欠損した歯の代替として使用される歯科インプラントは、下顎骨に螺合されるねじ部と、人工の歯冠の固定に使いられる拡張部(ソケット)とを有する。したがって、前記ねじ部のみを骨誘導タンパク質でコーティングすればよい。しかしながら、骨誘導タンパク質でコーティングされていない部分を、リン酸カルシウム、コラーゲン、または同様の作用物質等のその他の作用物質でコーティングしてもよい。
【0069】
先に述べたような「骨誘導タンパク質」という用語は、成長分化因子-5または本明細書または先に述べた欧州特許出願もしくは欧州特許に記載のタンパク質のような、骨誘導特性を有するトランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)スーパーファミリーメンバーを指す。金属表面に対するこのような吸着プロセスの重要な前提条件は、国際公開第03/043673号パンフレットに記載されているように、コーティング溶液におけるタンパク質の十分な溶解度である。
【0070】
本発明の第1の態様に係る方法で用いられる乾燥工程においては、以下に述べるような等温乾燥を用いることが好ましい。また、真空乾燥または凍結乾燥による乾燥を行ってもよい。「乾燥させる」という用語には、液体を除去する手段も包含される(凍結乾燥に関する詳細は、「良好な製薬凍結乾燥の実践」、ピーター・キャメロン編、インターファームプレス社、バッファローグローブ、イリノイ州、米国("Good Pharmaceutical Freeze-Drying Practice", edited by Peter Cameron, interpharm Press, Inc., Buffalo Grove, IL, USA)から取得できる)。
【0071】
「等温乾燥」という用語は、液相から気相へと溶媒を蒸発させることによって溶媒を除去し、続いてアイスコンデンサで凝結させるという乾燥方法を指す。前記アイスコンデンサは、前記溶媒の飽和蒸気圧を下げ、前記溶液から前記アイスコンデンサへの前記溶媒の大量輸送を達成し、前記溶媒を固定化するために、非常に低温に設定されている。前記アイスコンデンサは、−50℃未満に設定されていることが好ましい。
【0072】
前記溶媒の蒸発を促進するため、このプロセスは、減圧(すなわち、標準的な大気圧より低い圧力)下において、好ましくは前記製品が配置される温度規制棚を用いることによって、前記溶液の温度を規定の温度に保ちつつ行われる。
【0073】
前記温度は、前記溶媒の蒸発を促進し、前記溶媒の蒸発のエンタルピーによって温度が低下することによる前記溶液の凍結を防止し、温度によって誘発される分解から前記基質を保護するため、一定レベルの蒸発と加熱の平衡により設定される。前記温度は、前記乾燥プロセスの間中、一定であることが好ましい。
【0074】
乾燥の間中、前記溶液が確実に液体の状態でいられるように、温度および圧力の両方を慎重に設定する必要がある。前記乾燥プロセスは、前記乾燥プロセス中における規定の乾燥パラメータの保持と制御のため、凍結乾燥機内で実施されることが好ましい。前記乾燥プロセスは、例えば、窒素、アルゴン等を用いて乾燥チャンバ内を排気することにより、酸素を全く含まない環境で実施することが好ましい。
【0075】
最近、ステントのコーティングが、血液適合性および組織適合性を強化するため重要となってきている。新規な薬剤溶出ステントに関して進行中の試験は、再狭窄、特に、ステント内再狭窄の治療を改善するものと考えられている(例えば、「コーティングされたステントの最近の進展(Recent Developments in Coated Stents)」というレポート参照)、ハフマ(Hofma)、スジョード・エイチら(Sjoerd H. et al.)(2001), Current Interventional Cardiology Reports, 3: 28-36)。本発明はさらに、本発明の方法によるステントのコーティングも包含する。本発明によるステントのコーティングによれば、本明細書に記載のように、ステント、例えば、(ニチノールステントのような)金属製のステントの表面全体にわたって均一なコーティングを有するステントが得られる。
【0076】
本発明においては、前記デバイスのコーティングは、前記デバイス用に構成された包装容器内において、前記デバイスをコーティング溶液と接触させた状態で行われる。言い換えれば、本発明によれば、コーティングプロセスにおいてコーティングを施すデバイスを収容する収容容器(containment)が、前記コーティングされたデバイスのパッケージングおよび保存に用いられる容器と同一である。すなわち、コーティングおよびこれに続くパッケージング(例えば、単回投与の無菌製品、特に、医薬品の大規模生産で使用)に同一の容器が用いられる。
【0077】
前記物質を含有する溶液は、水溶液であることが好ましく、酸性の溶液であることが最も好ましい。もちろん、当業界において周知であるように、前記物質を含有する溶液のpHおよび前記pHを調整するための賦形剤は、慎重に選ぶ必要がある。
【0078】
例えば、Tiデバイスは、金属表面にタンパク質の水溶液を塗布し、さらに乾燥させることにより、前記タンパク質でコーティングされていることが好ましい。このコーティング溶液は、加工時および保存時において、前記タンパク質が十分な安定性を発揮できるように調製されている。例えば、rhGDF−5は、酸性の溶液にのみ溶解できる。よって、前記コーティング溶液のpH値は、一方では前記タンパク質の酸性の分解を、他方では高pH値での沈殿を回避するよう、慎重に設定する必要がある。研究の結果、3.0〜3.5が理想的なpH範囲と特定された(国際公開第03/043673号パンフレット)。このpHは、乾燥処理中は一定とすべきであり、前記溶媒の蒸発時に前記溶液が濃縮されても、その値が高くなったり、低くなったりしてはならない。実験により、弱酸、例えば、酢酸が、この目的において理想的な賦形剤であることが分かった。
【0079】
「弱酸」という用語は、イオノゲンによって結合した(ionogenically bound)水素原子を1以上含有する有機または無機化合物を指す。弱酸は、当業界において周知であり、Rompp社の化学辞典等の標準的なテキストブックに記載されている。前記弱酸は解離度が低く、かつpK値が3〜7、好ましくは4〜6であることが好ましい。
【0080】
本明細書において述べたように、デバイスにコーティングされる物質が溶解された溶液は、酸性の水溶液である。前記酸性の水溶液は、HCl、酢酸、クエン酸、および/またはコハク酸を含有することが好ましい。
【0081】
本発明の別の好ましい実施形態においては、デバイスにコーティングされる物質が溶解された溶液は、有機溶媒である。前記有機溶媒は、氷酢酸、DSMO、アニソールであることが好ましい。
【0082】
しかしながら、本発明においては、本発明の方法によりデバイスにコーティングされる物質が、脂肪族または芳香族アルコール、エステル、エーテル、炭素水和物(carbon hydrates)、ハロゲン化脂肪族または芳香族炭素水和物等に溶解された溶液も考えられる。
【0083】
前記溶液は、メチオニンもしくはその誘導体(亜硫酸塩、アスコルビン酸、グルタチオン)または標準的なテキストブック(バウアー(Bauer)、Fromming Fuhrer, Lehrbuch der Pharmaceutischen Technologie, 6. Auflage, 1999)に記載の遊離基捕捉剤のような酸化防止剤を含有することがさらに好ましい。例として、ブチルヒドロキシトルオール、ブチル化ヒドロキシアニソール、EDTA、マンニトール、イソプロパノール、トコフェロール、ガリュリック酸エステル(galuric acid esters)が挙げられる。
【0084】
コーティングを施すデバイスは、例えば、金属または金属合金、好ましくはチタンまたはチタン合金、あるいは本明細書において述べた材料のいずれか1種の材料で形成されている。前記金属/金属合金または本発明の明細書に記載のその他の材料は、生体適合性であることが好ましい。「生体適合性」という用語は、生体システムに対して有毒または有害な影響を及ぼさない品質(ウィリアムス・ディー・エフ(Williams, D.F.),(1988), バイオマテリアルに関するコンセンサスと定義(Consensus and definitions in biomaterials), Advances in Biomaterials, 8, デ・プッター・シー(de Putter, C.), デ・ランジ・ケー(de Lange K.), デ・グルート・ケー(de Groot K.),リー・エイ・ジェイ・シー(Lee A.J.C.)(編集), エルセビアーサイセンスパブリッシャー・ビー・ブイ(Elsevier Science Publishers B.V.),アムステルダム(Amsterdam))を意味する。チタンまたはチタン合金に関しては、前記特性を有することが公知である。前記チタン合金は、チタンを50%以上含有するチタン合金であることがより好ましい。前記チタン合金は、Ti−Al−V−合金、Ti−Al−Fe合金、Ti−Al−Nb−合金、またはTi−Mo−Zr−Al−合金、Ti−Ni−合金であることがさらに好ましく、Ti6Al4Vであることが最も好ましい。
【0085】
第1の態様の方法によってコーティングを施すデバイスは、インプラントまたはステントであることが好ましく、歯科インプラントまたは冠動脈ステントであることが最も好ましい。
【0086】
より詳細には、本発明の第1の態様に係る方法の工程(a)は、前記デバイス用の包装容器を準備する工程(a1)と、前記容器に前記コーティング溶液を充填する工程(a2)と、前記コーティング溶液を予め充填した前記容器に前記デバイスを入れる工程(a3)とを有している。前記工程(a2)と(a3)の順序を入れ替え、まず、前記デバイスを前記容器に入れ、次いで前記コーティング溶液を充填するようにしてもよい。対象表面の完全な湿潤を実現するため、前記方法は、前記工程(b)の前に、例えば、気泡を除去するために、雰囲気下において陰圧をかける工程をさらに備えていることがより好ましい。本明細書中で説明した方法により、前記包装容器をコーティングすることも可能と考えられている。あるいは、前記包装容器は、例えば、本明細書に記載の疎水性材料のような材料で、既にコーティングされていてもよい。
【0087】
より詳細には、前記コーティング溶液を調製し、殺菌濾過し、マイクロピストンポンプを使用して前記容器(例えば、ガラスバイアル)に分配することが好ましい。Ti固定具(Ti fixtures)のようなデバイスは、例えば、タンパク質溶液に添加され、浸漬される。次に、前記容器に、ストッパーを取り付ける。前記ストッパーは、前記容器を凍結乾燥装置に装填する前に、その一部分のみを前記容器に挿入するようにして取り付ける。前記固定具のチタン表面の細孔内に捕捉されていることが考えられる気泡を除去するため、例えば、30hPa(前記タンパク質溶液の室温での沸騰条件を上回る)の陰圧をかける。次に、前記凍結乾燥機のチャンバの圧力を、例えば、500hPa以下、より好ましくは250hPa以下、最も好ましくは100hPa以下に設定し、窒素下において周囲温度(約25℃)で等温乾燥を行い、前記溶媒を除去する。蒸発した溶媒の蒸気を、マーガトロイド・ケーの凍結乾燥機と凍結乾燥機の設計、良好な製薬凍結乾燥の実践2、キャメロン・ピー編、インターファームプレス社、バッファローグローブ、アムステルダム、1997(Murgatroyd K, The Freeze Dryer and Freeze Dryer Design, in Good Pharmaceutical Freeze-Drying Practice, 2, Cameron, P (ed.), Interpharm Press, Inc, Buffalo Grove Amsterdam, 1997)に記載されているように、非常に低温(例えば、約−50℃以下)に設定したアイスコンデンサで凝結させる。乾燥処理の後、前記デバイスを装填した状態で凍結乾燥用棚を折りたたむことによって前記凍結乾燥機内にて前記デバイスを閉塞する前に、前記チャンバを最高真空度まで真空化し、殺菌した窒素を用いて前記チャンバ内を排気する。
【0088】
第2の態様において、本発明は、デバイス用の包装容器であって、前記デバイスのコーティングが直接前記包装容器内で行えるように構成された包装容器を提供する。したがって、本発明の容器は、デバイス(例えば、インプラント)のインサイチュ・コーティングプロセスのためのベッセルとしての機能と、長期保存のための主要な包装システムとしての機能の両方を果たす。
【0089】
前記包装容器は、コーティングが施されるデバイスを収容するための収容室を備え、前記収容室が、前記デバイスの大きさおよび形状に適合する大きさおよび形状とされていることが好ましい。前記収容室の内部表面は、例えば、不活性な、疎水性等の駆散性もしくは親水性の材料(水溶性のコーティング溶液の場合には、シリコーンまたはPTFEもしくはPTFE様材料)の層でコーティングされていることが好ましい。疎水性物質による疎水性表面のコーティングには、前記ベッセルの親水性のコーティングが必要である。
【0090】
内部表面をコーティングすることにより、前記デバイスまたはインプラントにコーティングする物質の定量的な付着が確実に行われる。このことは、コーティングされたデバイスまたはインプラントの費用効率の高い製造を行う上で極めて有利である。
【0091】
好ましい設計によれば、前記容器の収容室が、容器筐体内に同軸に配置されている。前記容器筐体は、前記デバイスと前記コーティング溶液/基質または物質とを前記収容室へと通すための開口と、前記開口の反対側に位置する底部とを備えている。さらに、前記収容室は、前記デバイスと前記コーティング基質または物質とを受け入れるための開口と、前記開口の反対側に位置する底部とを備えている。前記筐体の開口と前記収容室の開口とは互いに位置合わせされており、前記収容室の底部が前記筐体の底部に取り付けられている。前記収容室の開口部は、前記筐体の開口部から離間していることが好ましい。前記包装容器は、ガラス製であることが好ましい。あるいは、前記包装容器は、プラスチック材料からなる。このガラス容器の外寸法は、標準型のバイアル(DIN ISO 8362: Injektionsbehaltnisse fur Injektionspraparate und Zubehor)の外寸法と同一であることが好ましい。内寸法は、例えば、Ti固定具のようなデバイスのコーティングおよび保存用のマイクロベッセルの形成に適合するものとされている。
【0092】
本発明の第3の態様によれば、物質によってコーティングされるデバイス用、好ましくはインプラント用の包装容器の内部表面をコーティングする方法であり、(A)前記容器の内部表面に疎水性材料を塗布する工程と、(B)塗布した前記材料を熱硬化させ、前記容器の内部表面に焼付け層を形成する工程を備え、前記コーティングは、前記容器と前記デバイスとの間における、前記デバイスにコーティングされる物質の分配係数に影響を与える方法が提供される。既に説明したように、前記疎水性材料は、シリコーンまたはPTFEもしくはPTFE様材料であることが好ましい。より詳細には、前記工程(A)には、シリコーンエマルションを用いて前記容器の内部表面をシリコーン処理することが含まれる。
【0093】
第4の態様において、本発明は、本発明の第1の態様に係る方法によって得られるコーティングされたデバイスを提供する。前記デバイスは、歯科インプラントまたは冠動脈ステントのようなインプラントであることが好ましい。例えば、前記インプラントは、ステント、釘、ねじ、ケージ、またはプレートのいずれかである。
【0094】
よって、第4の態様のコーティングされたデバイスは、先に述べた本発明の第1の態様の方法がもたらす特徴によって特徴付けられる。具体的には、前記デバイスは、前記デバイスの金属または合金の多孔性または非多孔性表面に均一にコーティングされた骨誘導タンパク質を有し、これにより、前記金属または合金表面にコーティングされていない骨誘導タンパク質と比べ、前記骨誘導タンパク質の酸化状態が著しく増加することがない。
【0095】
本発明はさらに、前記デバイス上におけるコーティングの分布の均一性を向上させるための、本発明の第1の態様に係るデバイスのコーティング方法の使用を包含する。
【0096】
本発明はまた、本発明の第3の態様に係る包装容器のコーティング方法の、前記容器と前記デバイスの間における、前記デバイスにコーティングされる物質の分配係数を向上および/または制御するための使用を包含する。
【0097】
本発明はさらに、本発明の第1の態様の方法によって得られるデバイスを含むキットを包含する。本発明の方法、デバイス、および使用に関連して先に述べた用語の定義および説明は、ここで述べるキットにも準用される。本発明のキットの部品は、バイアルまたは各部品に応じた他の適切な手段によって個別に包装してもよいし、複数の部品を組み合わせて好適な容器または多容器ユニット内に包装してもよい。前記キットの製造は、好ましくは当業者に公知な標準的な手順に従って行うことが好ましい。前記デバイスは、不活性ガス雰囲気、好ましくは窒素のみで構成される雰囲気等、酸素を全く含まない雰囲気下において、容器またはバイアルに包装されることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0098】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を説明する。
【0099】
図1は、チタン固定具のコーティングに使用される本発明の第1の態様に係るコーティング方法を概略的に示している。本発明に従ってインプラント(ここでは、チタン固定具)のコーティングに使用される包装容器を、図1において、5つの処理工程に関して示している。第1の工程において、タンパク質溶液を容器(図1に示す好ましい実施形態においては、シリコーン処理されたベッセルである)に添加する。次に、前記デバイス(例えば、ねじ状のインプラント)を前記容器に挿入し、これにより、前記デバイスを前記液体に完全に包囲された状態とする。第3の工程においては、ストッパーを用いて容器を閉塞する。但し、前記ストッパーは、最終的な閉塞位置(図1の右端の図に示す)ではなく、中間位置に配置される。前記ストッパーを前記容器に部分的に挿入した状態で乾燥プロセスを開始し、これにより、前記デバイスにコーティングが施される。前記ストッパーが準閉塞位置にあることにより、例えば、前記乾燥プロセスにおいて、前記容器から水を逃がすことができる。前記乾燥/コーティング処理の後、前記ストッパーを前記容器に押し込んで前記容器を完全に閉塞する前に、殺菌した窒素またはその他の不活性ガスを用い、前記凍結乾燥装置のチャンバを排気してもよい。あるいは、前記容器を閉塞する前に、陰圧をかけることもできる。完全にコーティングされたインプラントは、既に前記包装容器内に収容されており、出荷できる状態となっている。
【0100】
図2は、本発明の第2の態様に係る容器のさらに別の例を示している。この包装容器は、特殊なデザインの固体のガラスバイアルを備えている。このガラスバイアルの外寸法は、標準的な2Rバイアルの外寸法と同一である。内寸法は、例えば、Ti固定具のコーティングおよび保存用のマイクロベッセルの形成に適合するものとされている。このガラスバイアルは、熱処理によって当該ガラスに焼付けられた医療グレードのシリコーンエマルションを用いてシリコーン処理されている。
【0101】
図3は、本発明の第2の態様に係る好ましい容器の断面図を示している。この好ましい包装容器は、内部のガラス管がバイアルの底に堅固に鋳込まれている標準的な2R型のガラスバイアルからなる(一成分用ガラスバイアル)。このガラス管により、(Ti固定具のような)インプラントを上下逆の状態でコーティングするためのマイクロベッセルが形成される。前記バイアルは、熱処理によって当該ガラスに焼付けられた医療グレードのシリコーンエマルションを用い、本発明に従ってシリコーン処理されている。
【0102】
図4は、本発明の第2の態様に係る容器のさらに別の例を示している。この容器は、標準的な2Rガラスバイアルと、標準的なブロモブチル凍結乾燥用ストッパーと、前記バイアル内に配置された、熱シリコーン処理されたマイクロガラスカートリッジと、前記カートリッジ用の可撓性プラスチックホルダー(PE)を備えている。前記バイアルは、アルミニウムキャップ(図示せず)を圧着することによって封止することが好ましい。
【0103】
カートリッジは、熱処理によってガラスに焼付けられた、医療グレードのシリコーンエマルションを用いてシリコーン処理されている(4.3章のプロセスも参照)。バイアルは、洗浄され、シリコーンエマルションを用いてシリコーン処理されている。焼付けシリコーン層を形成し、かつ、前記バイアルを殺菌するための熱硬化は、250℃以上の温度で行われる。プラスチックホルダーは、手作業でカートリッジに取り付けられ、バイアル内に配置される。
【0104】
図5は、コーティングを施すデバイスを直立した状態(左図)および上下逆の状態(右図)で収容する容器のさらに別の容器デザインを概略的に示している。いずれの代替例においても、容器の形状は、インプラントの形状に適合するものとされており、これにより、有効なコーティングを確実に行える。上下逆の配置でのコーティングによれば、固定具の表面により均一なタンパク質層を形成できることが実験によってわかっている。これは、前記デバイスの複雑な幾何学的形状と、圧力を低下させる際に生じる気泡によりコーティングの欠陥が生じる可能性があるという事実に起因する。固定具が直立した状態にある場合、前記固定具のボルト頭にこれらの気泡が容易に捕捉されるが、前記固定具が上下逆に配置されていれば、これらの気泡をカートリッジから逃がすことができる。
【0105】
図6は、本発明の第1の態様に係る無菌プロセスに適合させたコーティング方法を、製造フローチャートで示している。第1の工程、すなわち、調合工程において、バルクタンパク質溶液と賦形剤とが混合される。その後、殺菌濾過が行われる。これは、フィルターユニットを用いて行われる。前記ガラスバイアル、すなわち、前記容器を、まず洗浄してシリコーン処理し、その後、加熱殺菌し、最後に、充填ステーションに配置する。充填ステーションにおいて、例えば、マイクロピストンポンプを用いて、前記溶液を前記容器に充填する。これに続く取り上げ/配置ステーション(pick-and-place station)において、すなわち加熱殺菌された固定具が、コーティング材料の溶液を含有する容器内に配置される。続いて、前記容器はストッパー取付けステーションへと送られ、高圧滅菌した凍結乾燥用ストッパーによって部分的に閉塞される。次に、この組立品を凍結乾燥装置に装填し、当該凍結乾燥装置内にて乾燥およびそれに続く最終的なストッパー取付け処理が行われる。圧着ステーションにおいて、前記容器を、圧着キャップで封止する。最終の工程は、ラベル付けおよび出荷のための二次的パッケージングを含む。
【0106】
ゴム製の部品、すなわち、凍結乾燥用ストッパーは、標準型の凍結乾燥用ストッパーである。前記バイアルは、はね上げて引き剥がす(Flip-Tear up)標準型の圧着キャップで封止されることが好ましい。
【0107】
図7は、rhGDF−5でコーティングされたチタンインプラント(使用したコーティング溶液は、rhGDF−5の50mM酢酸溶液、および10mMメチオニンを添加したrhGDF−5の50mM酢酸溶液)におけるタンパク質分解を、RP−HPLCによって定量化した結果を示している。出発物質と比較すると、観察されるタンパク質分解の増加はごくわずかである。これは、本発明のコーティング方法の実用可能性を示している。
【0108】
図8は、異なるコーティング溶液(10mM HCl(白色の棒)と50mM酢酸(黒色の棒))中の2種類のタンパク質溶液(rhGDF−5)(それぞれについて、メチオニンを添加したものと添加しなかったものを準備)に関し、コーティングを施すインプラントに7時間まで接触させた場合における安定性を示している。データは、前記製剤を前記コーティングプロセスに適合させた場合(10mMメチオニンを添加した50mM酢酸)には、タンパク質分解を回避することが可能であることを示している。さらに、この実験は、コーティング溶液の安定性が一定の製品品質を確保するための前提条件となる意図した大規模な製造プロセスに関する構想の第1の根拠である。A=実験開始時のGDF−5溶液;B=7時間経過後のGDF−5溶液;C=GDF−5溶液+TiU固定具;D=7時間経過後のGDF−5溶液+メチオニン;E=7時間経過後のGDF−5溶液+メチオニン+TiU
図9は、シリコーン処理された容器をコーティングに用いることの効果を示している。図9に示す取得データは、容器とインプラントとの間におけるタンパク質分布に関する利点をはっきりと示している。
【0109】
非処理の容器においては、30%を超えるrhGDF−5が容器内に残存しているが、この量は、シリコーン処理された容器を使用すれば、5%にまで大幅に低減できる。この効果は、絶対的なrhGDF−5充填量とはほぼ無関係であり、2種類の異なるタンパク質量(固定具1個当たり、34μgと121.5μg)について示しているように、再現可能である。
【0110】
図10は、大気圧で乾燥させたrhGDF−5の分布を示している。泡の形成を回避するため、陰圧をかけずに前記インプラントを乾燥させる第1の実験を行った。したがって、乾燥は、極冷アイスコンデンサ上に水を凝結させることのみによって行われた。図10はさらに、インプラント1個当たりコーティング適用量(coating dosage)を298μgのrhGDF−5まで増加させた場合であっても、前記容器と前記インプラントとの間におけるタンパク質分布は、前記インプラント上において依然としてほぼ定量的であることを示している。これらの知見は、タンパク質分布がコーティング適用量とは無関係であることを実証しており、また、このことが本発明のコーティング方法のさらなる利点である。
【0111】
図11は、上述のように乾燥させた固定具のそれぞれに関する蛍光分析結果を示している。写真から、固定具のヘッド部分(rhGDF−5が明らかに濃縮されている)と下部との間において、タンパク質の分離の程度が著しく高いことが見て取れる。興味深いことに、コーティングは、各位置の半径全体にわたって比較的均一であるように見える。
【0112】
図12は、インプラント表面に吸着されたrhGDF−5の均一な分布を、乾燥条件を最適化した後に乾燥させた固定具の蛍光染色により示している。コーティング条件を最適化するため、タンパク質分布に影響を与えるいくつかのパラメータを変更した。
・圧力:微細構造の固定具表面の空洞内部まで完全に湿潤できるように、一定圧力からパルス陰圧(pulsed vacuum)へと変更した。
・容器内の固定具を、直立状態の配置対上下逆の配置とした。これは、前記固定具の円錐形状により、より容易に気泡を容器から逃がすことができるためである。
・容器の形状を変更した。
【0113】
写真は、上下逆の配置で乾燥させた固定具は、前記固定具のテーパー部分において若干タンパク質が集中してはいるが、半径方向に対称性を示す(radial symmetric)有利なコーティングを有することを実証している。
【0114】
図13は、上述のrhGDF−5のコーティングに用いられた多孔性のチタンインプラント表面のSEM写真を示している(図A:倍率100倍、図B:倍率1000倍)。
【実施例1】
【0115】
RP−HPLCによる溶液中のGDF−5の定量
GDF−5の含有量を、逆相(RP−)HPLC分析によって測定した。試料のアリコートを、Poros C8−18カラム(R2/10、2.1* 30mm、アプライドバイオシステム社(Applied Biosystems))を用いて分析した。0.1%ギ酸を含む21%アセトニトリル(溶媒A)および0.1%ギ酸を含む84%アセトニトリル(溶媒B)を、流速0.4ml/minで溶媒として用いた。220nmにおける吸光度を測定することにより、溶出プロフィルを記録した。GDF−5の量を、220nmにおけるピーク面積から、検量線を用いて算出した。
【実施例2】
【0116】
固定化されたタンパク質の抽出と定量
コーティングされたデバイスを、まず、10mmol/lのHCl中にて室温で3時間インキュベートすることにより、タンパク質を抽出した。PBS試料をpH2に調整した後、前記抽出された骨成長因子を含有するHCl溶液を、RP−HPLCにより、実施例1に記載の方法で分析した。
【実施例3】
【0117】
抽出したタンパク質の化学修飾の測定
化学修飾量、すなわち、抽出したタンパク質を含有する溶液における骨成長因子の酸化を、RP−HPLCにより求めた。前記試料を、0.15%TFAと20%アセトニトリルで平衡させたVydak C8−18カラム(2×250mM)に供する。前記カラムを洗浄した後、0.1%TFAと、20%〜84%のアセトニトリル(流速:0.3ml/min)の段階的勾配物との混合物で、骨成長因子の溶出が起こる。220nmにおける吸収を測定することにより、前記溶出が観察される。総ピーク面積に対する修飾種のピーク面積の比によって、定量が行われる。
【実施例4】
【0118】
蛍光顕微鏡検査によるチタン表面における骨成長因子コーティングの均一性の測定
タンパク質に対する蛍光マーカーを用い、チタンインプラント上におけるrhGDF−5のコーティングの均一性を調査した。測定は、蛍光顕微鏡検査によって行った。
【0119】
固定化したタンパク質の蛍光染色
コーティングを施したデバイスを、実施例5に記載の方法によって作成した。染色のため、Alexa Fluor(商標)488の10mmol/l溶液2.3μlを、0.15MのNaHCO3溶液に1ml添加した。前記インプラントを、前記蛍光染料の混合物1ml中で、室温において暗所で4時間インキュベートした。タンパク質と蛍光物質との比は、タンパク質:蛍光物質=1:10であった。ブランクとして使用したインプラントは、20分間だけインキュベートした。インキュベート期間の終了後、前記インプラントを脱塩水で十分に洗浄し、真空下において暗所で15分間乾燥させた。
【0120】
前記蛍光シグナルを、蛍光顕微鏡検査によって検出し、イメージング用ソフトウェアを用いて記録した。
【0121】
図11および12において、rhGDF−5の分布が、蛍光顕微鏡検査によってはっきりと確認できる。これは、蛍光マーカーがタンパク質に結合していることを意味している。前記溶媒の影響を除去するため、rhGDF−5でコーティングすることなく、蛍光マーカーであるAlexa Fluor(商標)中でインキュベートしたインプラントも作成した(データは示していない)。
【実施例5】
【0122】
rhGDF−5によるチタンインプラントのコーティング
この実施例の目的は、このコーティング方法の実用可能性を実証することであった。より詳細には、抗酸化防腐賦形剤としてのメチオニンが、rhGDF−5の分解率に対して有益な効果を及ぼすかどうかについての試験を行った。
【0123】
2つの固定具をそれぞれ備えた2種類の異なる実験機材を用い、コーティング試験を行った。第1の機材においては、新たに調製したrhGDF−5の50mM酢酸溶液を用いて試験を行った。第2の機材においては、メチオニンをさらに含有するrhGDF−5の50mM酢酸コーティング溶液を用いて試験を行い、酸化率を最小限に抑えられる可能性を評価した。試験を行ったコーティング機材の概要を表1に示している。試料は全て、約−80℃に設定したアイスコンデンサを用い、凍結乾燥機内において、約66mbarで4時間乾燥させた。凍結乾燥棚は、常に約20℃の周囲温度に保たれ、よって、凍結や凍結乾燥は起こらなかった。前記溶媒を蒸発させ、前記溶媒の蒸気を前記極冷アイスコンデンサで凝結させることにより、有効な乾燥が行われた。
【0124】
【表1】
【0125】
(結果)
前記2種類の実験で得られたrhGDF−5の分解に関する知見を、図7に要約している。分解の増加を、実施例2に記載の方法によって測定した。
【0126】
メチオニンを添加したコーティング溶液と、添加しなかったコーティング溶液とを比較すると、驚くべきことに、rhGDF−5に関しては、分解物の生成に著しい差はないことがわかる。いずれの場合においても、若干のタンパク質分解の増加が観察されている(2%未満)。このことは、酢酸の安定化効果によって説明できるが、酢酸は、遊離基捕捉剤として作用し、これにより短期的な保護作用物質として働いている可能性がある。しかしながら、メチオニンによる影響がないという現象は、小規模な製造における理想的な条件下に限られる。大規模な製造を設定し、製造工程において、例えば、7時間という長い保持時間が避けられない実施例7においては、メチオニンの使用により、タンパク質分解の増加を回避することが可能である。
【0127】
要約すると、これらの結果は、rhGDF−5による金属インプラント表面のコーティングが成功したことを実証している。さらに、等温乾燥方法に関する構想の根拠も実証された。
【実施例6】
【0128】
実験室規模で手作業で行う、骨成長因子によるチタンまたはチタン合金のコーティング方法
コーティング処理は、酸素を除去するため、不活性ガス雰囲気下で行われる。これらの条件を維持するため、チャンバが使用される。前記チャンバは、不活性ガス(例えば、N2ガス)が絶え間なく流れる密閉された空間からなる。前記チャンバ内において、若干過剰な圧力が保たれている。コーティング処理に必要な材料が、気密通路を通して前記チャンバへと搬送される。前記チャンバにより、手作業でのコーティング処理が可能となる。前記コーティング処理の規定と画一化のため、前記チャンバ内の相対湿度を監視して調整する。
(コーティング)
チタンシートを清浄化し、脱塩水で洗浄して乾燥させた。前記チタンシートを、60μgのrhGDF−5でコーティングした。各シートを皿内に水平に配置し、前記金属シートの片側にrhGDF−5溶液を塗布した。塗布は、上述のように、チャンバ内においてN2ガス雰囲気下で、0℃〜4℃の温度で行った。塗布後、前記シートを、各条件で30分間真空下で乾燥させた。
(抽出)
生理条件に近い条件を模するため、まず、rhGDF−5をPBS中でインキュベートした。試料をほぼ無酸素状態に保つため、前記試料のそれぞれに対して、前記PBS溶液をN2ガスで飽和させるという処理を行った。
【0129】
PBS中でのインキュベートの後、前記シートを10mmol/lのHCl内にて、各温度で3時間インキュベートした。抽出溶液中のrhGDF−5を、RP−HPLC(実施例1参照)によって定量化した。rhGDF−5の酸化量も、RP−HPLCによって求めた(実施例2参照)。
【0130】
上述の方法でコーティングと抽出を行った試料と比較するため、同一の処理を、室温において酸素雰囲気下で行った。
【0131】
【表2】
【0132】
前記実験において試験したパラメータは、前記チタンシートからの抽出後における酸化rhGDF−5の量に影響を及ぼす。空気中の酸素の存在下において室温でコーティングされた試料は、表2に示すように、酸化rhGDF−5量が10.0%±1.6%である。
【0133】
N2ガス雰囲気下で4℃で処理された試料は、抽出後における酸化rhGDF−5量が5.6%±0.6%であった。、N2ガス雰囲気下で4℃で処理された試料の酸化rhGDF−5量は、rhGDF−5バルク溶液のもの(4.7%±0%)と比べて、著しく相違してはいなかった。
【実施例7】
【0134】
工業規模のプロセスの評価
以下の実験は、シリコーン処理された収容容器を用いて行う、コーティングされたインプラントの工業規模での製造用に開発されたコーティング方法の適性を実証している。
【0135】
第1の工程において、rhGDF−5バルク溶液から、メチオニンを添加したものと添加していないものという2種類の異なる酸性製剤を調製した。前記製剤について、シリコーン処理された収容容器中での製造における実用可能性と安定性を試験した。チタン固定具によって生じた分解を特定して定量化するため、全ての製剤について、シリコーン処理された収容容器に充填された溶液への固定具の添加を行った場合と行っていない場合に関して試験を行った。実験機材の概要を、下記表3に示している。
【0136】
工業規模の製造をシミュレートするため、前記溶液を、通常の空気雰囲気(最悪の場合を想定)において、23℃で7時間インキュベートした。その後、この結果起こったタンパク質分解の程度を、RP−HPLC分析によって定量化した。
【0137】
【表3】
【0138】
(結果)
得られたRP−HPLCデータを、図8に示している。10mM HCl中のrhGDF−5製剤に関するデータ(赤色の棒)は、保存時間が7時間を超えた時点で既に、rhGDF−5分解物の量が、当初の比率である4.8%から7.8%まで増加するという影響が見られたことを示している。チタン固定具の存在下では、前記値は、さらに9.3%まで上昇した。
【0139】
メチオニンを含有する溶液では、完全に異なる結果が得られる。前記分析は、この賦形剤がrhGDF−5の分解率に対し、明らかに有益な効果を及ぼしたことを示している。前記溶液単独または前記チタン固定具を含有する溶液のいずれにおいても、酸化/脱アミドの著しい増加は見られない。
【0140】
同じく調査を行った50mM酢酸中のrhGDF−5製剤においても、非常によく似た結果が得られた。初期値は5.2%であり、10mM HCl中のバルク薬剤rhGDF−5溶液(4.8%)と比べて若干高かったものの、その他の測定値は全て著しく低かった。
(結論)
前記データは、シリコーン処理された収容容器中での用途に関し、HCl中の製剤と比べて、酢酸中のrhGDF−5製剤の安定性が向上していたことを実証している。調査を行ったあらゆる処理パラメータの中でも、前記酢酸製剤の分解率は、HCl中の標準的な製剤の対応値と比べて著しく低い。さらにこの実験は、シリコーン処理された収容容器中で使用するように設計された製剤におけるrhGDF−5の分解を防止するという、メチオニンの有利な効果をはっきりと実証している。
【0141】
この実験の結果、プロセシングと安定性に関して最適化されたrhGDF−5製剤は、rhGDF−5の50mM酢酸/10mMメチオニン製剤であることがわかった。さらに、この実験は、意図した大規模な製造プロセスに関する構想の第1の根拠である。
【実施例8】
【0142】
シリコーン処理された収容容器を使用してrhGDF−5でコーティングされたインプラントの適用量整合性(dosage conformity)
この実施例の主たる目的は、インプラント表面とシリコーン処理された収容容器との間におけるrhGDF−5の分布に関し、特に、再現性および適用量整合性についての詳細情報を得ることであった。さらに、異なるコーティング密度(すなわち、固定具1個当たりのタンパク質適用量)の実用可能性も試験すべきである。
【0143】
シリコーン処理された収容容器とチタンインプラントの間で起こるrhGDF−5の制御された付着について、前記インプラント上のタンパク質の量および前記シリコーン処理された収容容器内のタンパク質残存量の定量化によって分析した。制御された付着に関する疑問を検討するため、コーティング溶液中での濃度が異なるrhGDF−5(インプラント1個当たり、34μg、122μg、298μg)を用いて実験を行った。この方法を用いてコーティングされたインプラントの適用量整合性を統計的に評価するため、各適用量でのコーティングを、6個の固定具について行った。その後、前記インプラントおよび対応収容容器について、rhGDF−5量とタンパク質分解物に関する分析を別個に行った。前記収容容器のシリコーン処理の重要性を評価するため、シリコーン処理していない収容容器を使用した別個の実験により、rhGDF−5の分布に関する影響について、さらなる試験を行った。
(結果)
シリコーン処理された収容容器をコーティングに用いる必要性に関し、図8および図9に示す取得データは、収容容器とインプラントとの間におけるタンパク質分布に関する利点をはっきりと示している。非処理の収容容器においては、30%を超えるrhGDF−5がバイアル内に残存しているが、この量は、シリコーン処理された収容容器を使用すれば、5%にまで大幅に低減できる。この効果は、絶対的なrhGDF−5充填量とはほぼ無関係であり、調査した全ての適用量(固定具1個当たり、34μg、121.5μg、298μg)に関して再現可能である。
【0144】
適用量整合性に関する統計分析を、表4にまとめている。使用した収容容器はハンドメイドであり、寸法が異なっているにもかかわらず、適用量の整合性は、信頼性があるものと思われる。
【0145】
【表4】
【0146】
興味深いことに、シリコーン処理された収容容器が、rhGDF−5分解に及ぼすさらなる有益な効果を観察することができる。前記4種類のコーティング機材について測定されたrhGDF−5分解を、表5にまとめている。非処理の収容容器とシリコーン処理された収容容器(コーティング適用量は同一)とを比較すると、シリコーン処理された収容容器の方が、rhGDF−5分解が約1%高いことがわかる。
【0147】
【表5】
【0148】
さらに、前記データは、コーティング適用量の増加に伴い、rhGDF−5分解のパーセンテージは、インプラント1個当たりの適用量が34μgである場合の6.6%から、インプラント1個当たりの適用量が298μgである場合の4.8%まで抑制されることを示している。前記コーティング溶液の既知の初期分解量に基づき、前記コーティング処理によって起こったrhGDF−5分解の絶対量を算出したところ、シリコーン処理された収容容器では各インプラントにつき約0.5μgであり、コーティング適用量とは無関係であった。非処理の収容容器においては、この値は約0.9μgと2倍近かった。
(結論)
提示したデータは、シリコーン処理された収容容器を使用することにより、インプラントと収容容器との間におけるタンパク質分布および適用量整合性に関し、再現可能なrhGDF−5のコーティングが可能であることを示している。
【実施例9】
【0149】
蛍光顕微鏡検査による、rhGDF−5コーティングを施したインプラントにおける均一な分布の測定
RP−HPLCデータでは、インプラント表面におけるコーティングの均一性に関する情報を観察することができないため、蛍光顕微鏡検査を使用し、インプラント表面におけるタンパク質分布に関する詳細な情報を得た。
【0150】
rhGDF−5コーティングの均一性を、実施例4に記載のように、蛍光顕微鏡を使用して分析した。最初に分析した試料は、上述の実験8で得た、298μgのrhGDF−5によってコーティングされたインプラントであった。
【0151】
考えられるタンパク質コーティングの不均一性の原因となるパラメータを特定するため、乾燥プロセスの綿密な目視検査を行った。この目的のため、全プロセスをデジタルカメラで記録した。これらの結果に基づき、凍結乾燥機内の圧力を低下させる際、インプラントの多孔性表面(図13参照)から気泡が生じる場合があることがわかった。
【0152】
コーティング条件を最適化するためのさらなる試みとして、タンパク質分布に影響を与えるいくつかのパラメータを変更した。
・圧力:インプラント表面の細孔内部まで完全に湿潤できるように、陰圧を、一定圧力レベルから設計されたパルス状圧力プロファイルへと変更した。
・容器内のインプラントを、直立状態の配置対上下逆の配置とした。これは、前記インプラントの円錐形状により、より容易に気泡を容器から逃がすことができるためである。
・容器の形状を変更した。
【0153】
容器内におけるインプラントの両配置、ならびに最適化した乾燥パラメータに関する試験結果を、図11に示している。写真は、上下逆の配置で乾燥させたインプラントは、前記インプラントのテーパー部分において若干タンパク質が集中してはいるが、半径方向に対称性を示す有利なコーティングを有することを実証している。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】図1は、本発明の第1の態様に係るコーティング方法を、チタンに関して概略的に示している。
【図2】図2は、本発明の第2の態様に係る好ましい容器の断面図を示している。
【図3a】図3は、本発明の第2の態様に係る容器のさらに別の例を示している。
【図3b】図3は、本発明の第2の態様に係る容器のさらに別の例を示している。
【図4】図4は、本発明の第2の態様に係る容器のさらに別の例を示している。
【図5】図5は、コーティングを施すデバイスを収容した容器を概略的に示している。デバイス直立(左)および上下逆(右)
【図6】図6は、本発明の第1の態様に係る無菌プロセスに適合させたコーティング方法を、製造フローチャートで示している。
【図7】図7は、タンパク質の安定性に対するメチオニンの保護効果を示している。
【図8】図8は、異なるrhGDF−5製剤(メチオニンを添加したものと添加していないもの)のRP−HPLC分析によって得られた、rhGDF−5の安定性に対するメチオニンの保護効果を示している。TiU=TiUite
【図9】図9は、(RP−HPLC分析)第1の態様によって得られた、シリコーン処理していない容器と、シリコーン処理した容器が、タンパク質分布(黒色の棒は、インプラント上のタンパク質含有量を示し、白色の棒は、容器における損失を示す)およびタンパク質分解の低減に及ぼす効果を示している。TiU=TiUite、ICC=浸漬コーティング用カートリッジ
【図10】図10は、チタンインプラントに最大rhGDF−5充填量でコーティングされたrhGDF−5の分布と分解(RP−HPLC分析による)を示している。ICC=浸漬コーティング用カートリッジ
【図11】図11は、最適化されていない条件下において大気圧で乾燥させたrhGDF−5の分布を、蛍光染色を用いて示している。
【図12】図12は、インプラント表面に吸着されたrhGDF−5の均一な分布を、乾燥条件を最適化した後に乾燥させた固定具の蛍光染色により示している。
【図13】図13は、多孔性のインプラント表面のSEM写真を示している(図A:倍率100倍、図B:倍率1000倍)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイス、好ましくはインプラントを物質でコーティングする方法であり、(a)前記デバイスを、前記物質または基質(substrate)の溶液と接触させる工程と、(b)前記デバイスを、前記溶液と接触させた状態で乾燥させる工程とを備えた方法に関するものである。本発明はまた、デバイス用、好ましくはインプラント用の包装容器であり、前記デバイスのコーティングが前記包装容器内で行えるように構成された包装容器に関するものである。さらに、本発明は、デバイス用、好ましくはインプラント用の包装容器の内部表面をコーティングする周知の方法であり、(a)シリコーンエマルションを用いて前記容器の内部表面をシリコーン処理する工程と、(b)熱硬化を行い前記容器の内部表面に焼付けシリコーン層(baked-in silicone layer)を形成する工程とを含む方法を使用し、前記インプラント上への物質の目標を定めた付着(directed deposition)を達成する。さらに、本発明は、本発明の方法によって得られるコーティングされたデバイス、好ましくはインプラントを包含する。本発明はまた、デバイス上におけるコーティングの分布の均一性を向上させるための、前記デバイスのコーティング方法の使用に関する。最後に、本発明は、デザインされた包装容器における前記コーティング方法の使用であり、前記容器と前記デバイスの間における、前記デバイス上にコーティングされる物質の付着を向上および/または制御するための使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ここ数十年の間に、インプラントの品質を、その生体適合性および周辺組織との相互作用に関して向上させるため、数多くの方法が提案された。インプラントに関する要求は、非常に厳しい(例えば、骨インプラントに関しては、かかるデバイスは堅固に骨に固定され、さらに、例えば、高圧力に対して安定でなければならないためである(例えば、歯、関節))。コーティングされたインプラントのさらに別の応用例として、冠状動脈またはその他の動脈の再狭窄を克服するための薬剤溶出ステントが挙げられる。移植後における最初の組織応答は、細胞の成長および分化を促し、取り込みと細胞成長の調節を促進する、周辺組織から遊離した特定の成長因子の存在に依存する。
【0003】
歯科インプラントに関しては、十分に確立された固定方法が存在するとはいえ、時間の経過と共にインプラントが緩むという傾向が依然として見られる。各インプラントの取り込み(骨結合)を向上させるため、様々なアプローチが提案されている。これらのアプローチには、原材料の異なるインプラント(例えば、セラミック、金属、またはその他の材料、欧州特許第0657146号明細書参照)を、生分解性材料(例えば、リン酸三カルシウム、ヒドロキシルアパタイト、炭酸化アパタイト、カルシウム欠損ヒドロキシルアパタイトでコーティングすることや、デバイス表面の各種前処理方法(例えば、金属表面のエッチング、欧州特許出願公開第0389713号明細書、国際公開第95/13101号パンフレット、欧州特許出願公開第1251889号明細書参照)が含まれる。ナノメートル、マイクロメートルスケールの表面の凹凸は、コラーゲンや細胞の内方成長(ingrowth)を向上させると考えられている(ティー・アルブレクソン(T. Albrektsson), Handbook of Biomaterials(Black, J and Hastings, G (eds.), Chapman & Hall, London, 1998, pp 500 - 512)。
【0004】
セラミック表面による金属インプラントのコーティングが、例えば、金属粉末とリン酸カルシウムを含有する粉末(欧州特許出願公開第0467948号明細書)の2種類の粉末の混合物を、焼結処理においてインプラント材料へと加工することとして提案されている。
【0005】
これ以外にも様々な焼結方法が、複合セラミック材料の製造のために提案されている(独国特許出願公開第2928007号明細書、米国特許第4882196号明細書、欧州特許第1251889号明細書)。中でも特に注目を集めているのが、リン酸三カルシウムまたはヒドロキシアパタイトのようなリン酸カルシウムによる金属表面のコーティングである(ワイ・ツイら(Y. Tsui et al.), (1998), チタン基材上にプラズマ溶射されたヒドロキシアパタイトコーティング(Plasma sprayed hydroxyapatite coatings on titanium substrates), Biomaterials, 19: 2031-43, 19: 2015-29)であり、これによれば、インプラントの取り込みの向上が可能である(米国特許第6312472号明細書、米国特許出願公開第2002/0038149号明細書)。上述の各種リン酸カルシウムおよびその他の様々な無機生体適合性材料は、細孔を形成するという特性を有している。これらの細孔は、患者自身の骨へのインプラントの取り込みを促進すると言われているが(国際公開第00/72776号パンフレット、米国特許第4051598号明細書、欧州特許出願公開第0806211号明細書、ジェニセン・エイチら(Jennissen, H. et al.)(2001), Biomaterialien, 2: 45-53)が、これは、患者自身の骨が前記細孔に向かって成長し、これと同時にインプラントの無機リン酸カルシウム層を生分解するためである(国際公開第96/10370号パンフレット;国際公開第01/97679号パンフレット)。前記複合体材料の他にも、複数の層からなるインプラントであって、多くの場合、チタンまたはチタン合金のような金属または合金を含む(国際公開第98/43550号パンフレット;国際公開第00/72777号パンフレット)前記インプラントの下層が、前記リン酸カルシウムの層(欧州特許出願公開第0478532号明細書)でコーティングされたインプラントが提案されている。前記リン酸カルシウムのコーティングは、水熱処理(欧州特許出願公開第0548365号明細書)、浸漬(soaking)および析出(米国特許第6129928号明細書;国際公開第97/41273号パンフレット)、またはプラズマ溶射(米国特許第5697997号明細書;米国特許第6113993号明細書;欧州特許出願公開第0548365号明細書;欧州特許出願公開第0739191号明細書;リヒティンガー・ティー・ケーら(Lichtinger, T.K. et al.)(2001), Mat.-wiss. u. Werkstofftech, 32: 937-941)によって行われることが典型的である。
【0006】
前記インプラント本体上のリン酸カルシウムの層は、複数の材料の混合物の単層(国際公開第98/48862号パンフレット;米国特許第5934287号明細書;米国特許第2002/0033548号明細書)または多層構造体(国際公開第02/09788号パンフレット;米国特許第6322728号明細書)のいずれかの一部であってもよい。
【0007】
前記表面修飾の他にも、タンパク質またはタンパク質混合物(主に成長因子)を、整形外科または歯科用のインプラントにコーティングする方法がいくつか提案されている。これらのタンパク質は、インプラントの取り込みを著しく促進すると言われている(リヒティンガー・ティー・ケーら(Lichtinger, T.K. et al.)(2001), Mat.-wiss. u. Werkstofftech, 32: 937-941;シャー・エーら(Shah, A. et al.)(1999), Biology of the cell 91: 131-142)。また、金属表面にタンパク質を直接コーティングする方法がいくつか提案されている。しかしながら、これらの方法には、不都合な点がいくつかあり、前記金属表面からの急速なタンパク質の遊離により、前記タンパク質が、骨形成の誘発に必要な時間保持されないことが特に問題となっていた(リヒティンガー・ティー・ケーら(Lichtinger, T.K. et al.)(2001), Mat.-wiss. u. Werkstofftech, 32: 937-941)。
【0008】
前記タンパク質の初期段階での急速な遊離(自発的バースト(spontaneous burst))を防ぐため、エンドー(Endo)(エンドー・ケーら(Endo K. et al.)(1995), Dental Materials Journal 14: 185-198)およびボゲンライター(Voggenreiter)(ボゲンライター・ジーら(Voggenreiter G et al.)(2001), Materialwiss. Werkstofftech. 32: 942-948)は、金属表面への共有結合によるタンパク質の固定化を提案している。前記各タンパク質の活性は維持される。しかしながら、前記共有結合により、タンパク質の活性および免疫原性に影響を及ぼす構造変化が引き起こされる場合がある。
【0009】
多くの研究者が、軟骨性骨形成のための骨形成因子の移植を成功させるためには、タンパク質が、当該タンパク質を適用部位に保持する好適な担体材料またはマトリックスに結合されることが必要であると述べている(米国特許第5344654号明細書)。これらの難点を克服するため、米国特許第5258029号明細書は、「本発明の骨形成タンパク質は、通常は、薬学的に許容可能な固体または液体の担体を用い、骨形成に有効な量が製剤される」と教示している。前記製剤は、骨および軟骨を発達させるための構造を提供しうるマトリックスを含んでいることが好ましい。使用可能なマトリックスは、生分解性であっても、非生分解性であってもよく、化学的または生物学的見地のいずれによって規定されてもよい。TGF−β−タンパク質と担体の懸濁液を乾燥させ、次に、載荷補綴物(load carrying prosthetic)に塗布する。これらの方法の不利な点は、移植の際に磨耗する可能性がある動物性コラーゲンまたは無機成分を使用しているということである。
【0010】
上述のようなタンパク質の迅速な剥脱(outwash)を克服するさらに別の方法が、リヒティンガーら(Lichtinger et al.)(2001)の先の引用箇所に提案されている。リヒティンガーらは、超親水性の生体付着性表面を得るため、チタン合金表面をクロモ硫酸(chromosulfuric acid)で処理することを提案している。しかしながら、クロモ硫酸は、医薬品または医療用デバイスの製造においては使用を避けるべきである。なぜなら、表面に残存するこのような酸の残存量によってタンパク質の酸化が起こる場合があり、これに伴ってタンパク質の構造や機能が変化する場合や、患者に危害を及ぼす場合があるからである(材料安全性データシートCr(VI)(Material safety data sheet Cr (VI)))。
【0011】
さらに別の方法が、国際公開第00/72777号パンフレットおよび国際公開第00/72778号パンフレットに提案されている。これらの方法においては、チタン表面に形成された膜厚の大きい酸化物層の細孔構造、または内部に設けられた空間、流路、または凹部によって形成される貯留部が用いられている。しかしながら、タンパク質は、金属および金属イオンの存在下において酸化されやすいことは周知である(リーら(Li et al.)(1997)、特に、保護物質が存在しない状態で酸素と接触している、触媒活性を有する遷移元素に関する記載、Ann. Occup. Hyg. 41, suppl. 1, 379 - 383)。よって、上述のデバイスの欠点としては、タンパク質がインプラントの表面上で酸化されることが考えられる。前記酸化により構造が変化する場合があるが、このような構造変化の結果、免疫原性反応の形成や活性の喪失が起こり得る。
【0012】
従来公知のコーティングされたデバイスのその他の欠点としては、生物活性物質がデバイスに均一にコーティングされず、これにより、このようなデバイスの、例えば、移植に対する適性が不十分なものとなることが挙げられる。デバイスがこのような不利点を有する理由はいくつか挙げられる。例えば、タンパク質であるコーティング物質は、コーティング処理中に分解または酸化される、および/または、不溶性の凝集体を析出させるか、あるいは不十分な量しか存在しない。したがって、得られたコーティングは、例えば、骨成長の誘発または潜在的な骨形成細胞の誘引のような、所望の生物学的効果を発揮しない。さらに、従来技術のコーティング溶液は、例えば、インプラントにコーティングする物質の可溶化に用いられる有機溶媒のような毒性成分を含有している場合が多い。しかしながら、医療用インプラントにおいて毒性物質が望ましくないことは言うまでもない(EMEA, ICH Topic Q 3 C, 不純物(Impurities):残存溶媒(Residual Solvents))。従来、デバイス、例えば、金属インプラントに対するコーティング溶液の塗布は、主として手作業で行われているが、これは非常に労力を要する作業であり、また、優良製造規範(GMP)に規定の条件下ではほとんど使用できない。しかしながら、インプラントとして使用されるコーティングされたデバイスに対する需要は、医療用途の様々な分野において劇的に増加している。したがって、特に、GMP品質を有する大量生産に関し、費用効率の高い無菌デバイスのコーティングが必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の技術的課題は、デバイス、好ましくはインプラントを物質でコーティングする改良された方法、ならびに、前記方法で使用する容器を提供することである。本発明の目的は、デバイス上に物質を定量的かつ均一に蒸着する費用効率の高い方法を確保することである。これは、特に、薬学的に許容可能な従来技術の無菌処理における商業化を包含する。この問題は、請求項に記載の特徴によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様において、本発明は、デバイスを物質でコーティングする方法であり、(a)前記デバイスを、容器内に存在する前記物質または基質の溶液に接触させる工程と、(b)前記デバイスを、前記溶液と接触させた状態で乾燥させる工程とを備えた方法を提供する。この発明によれば、前記容器は、コーティング用ベッセルとしての特性と、前記コーティングされたデバイスの主要な包装容器としての特性の両方を満たす。
【0015】
本発明の文脈で使用される場合、「物質」および「基質」という用語は置換可能に用いられる。
【0016】
前記方法は、前記物質または基質の溶液から揮発成分を除去する工程をさらに備え、前記除去工程が、前記工程(b)の前、前記工程(b)と同時、または前記工程(b)の後に行われることが好ましい。この揮発成分の除去は、特に、例えば、前記溶液のpH値を変化させて前記物質の溶解度を所望の値に制御するという影響を与える。
【0017】
前記物質は、タンパク質またはペプチド、多糖(シュナールら(Schnaar et al., 1978, N−アセチルグルコサミンによって修飾されたポリアクリルアミドゲルへの肝細胞の付着(Adhesion of hepatocytes to polyacrylamide gels derivitized with N-acetylglucosamine), J. Biol. Chem. 253, 7940-7951)、糖脂質(ブラックボーン(Blackbourn)およびシュナール(Schnaar)(1983) J. Biol. Chem., 258(2), 1180-1188)、あるいはペプチドまたは小分子等の薬学的に活性な物質であることが好ましい。「タンパク質」または「ペプチド」という用語は、本発明の文脈においては、置換可能に用いられている。
【0018】
タンパク質の一例として、溶解骨誘導タンパク質(dissolved osteoinductive protein)、好ましくはTGF−β−スーパーファミリーのメンバーが挙げられる。前記薬学的に活性な物質の範囲内に、後述するような1以上のタンパク質、ペプチドまたは小分子の組み合わせも含まれる。各種タンパク質、ペプチド、または小分子の組み合わせも考えられる。
【0019】
成長分化因子のTGF−βファミリーは、骨形成を含む多数の生物学的プロセスに関与することがわかっている。前記ファミリーのメンバーは全て、特徴的なドメイン構造を備えた分泌ペプチドである。N末端の最端部において、TGF−βファミリーメンバーは、シグナルペプチドまたは分泌リーダーを有している。この配列に続き、C末端において、プロドメインおよび成熟ペプチドの配列を有している。前記成熟ペプチドの配列は、7個の保存システインを有し、そのうちの6個は分子内のジスルフィド結合の形成に必要であり、1個は2個のペプチドの二量化に必要である。生物活性TGF−βファミリーメンバーは二量体であり、2個の成熟ペプチドで構成されていることが好ましい。前記TGF−βファミリーメンバーは、通常は、前記成熟配列に加え、プロドメインを有するプロタンパク質として分泌される。前記プロドメインは、細胞外で切断されており、情報伝達分子の一部とはなっていない。しかしながら、前記プロドメインは、前記成熟ペプチドの細胞外での安定化に必要である可能性があることが報告されている。
【0020】
本発明の文脈において、「TGF−βファミリーメンバー」という用語、または以下に述べる当該ファミリーのタンパク質は、前記タンパク質またはメンバーのあらゆる生物活性変異体、変異体、および非活性前駆体を包含する。よって、単に成熟配列を有するタンパク質、成熟タンパク質とプロドメインとを有するタンパク質、または成熟タンパク質と、プロドメインと、リーダー配列とを有するタンパク質は、これらの生物活性フラグメントと同様、本発明の範囲内である。TGF−βメンバーのフラグメントが生物活性を有するかどうかは、例えば、カタギリら(Katagiri et al.)Biochem. Biophys. Res. Commun. 172: 295-299またはニシトーら(Nishitoh et al.)(1996) J. Biol. Chem. 271: 21345-21352に記載の生物学的検定法によって、容易に測定できる。
【0021】
本発明に係る生物活性は、国際公開第03/043673号パンフレットに記載のような、インビボモデルによって測定可能であることが好ましい。本発明にはさらに、アミノ酸配列が、TGF−βファミリーメンバーのアミノ酸配列と75%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上同一であるTGFメンバーの変異体が包含される。
【0022】
TGF−βスーパーファミリーのメンバーの概要が、ウォズニー・ジェイエム(Wozney JM)、ローゼン・ブイ(Rosen V)のClin Orthop 346: 26-37に示されている。TGF−βファミリーのメンバーのアミノ酸配列は、インターネットを介し、Swiss−Prot等の周知のデータベースから取得可能である(http://www.expasy.ch/sprot/sprot-top.html)。
【0023】
TGF−βファミリーの前記メンバーは、BMPサブファミリーのメンバーであることがより好ましい。
【0024】
骨形成タンパク質(BMP)サブファミリーのメンバーは、特に、骨組織の誘発および再構築に関与することが分かっている。BMPは、もともと骨基質から分離している。これらのタンパク質は、異所で新生骨形成を誘発する能力によって特徴付けられる。様々なインビボ検査により、BMPによる前駆細胞の骨形成および軟骨形成の促進が実証され、各BMP分子が骨格の発達に際して異なる役割を担っている可能性が浮上した。BMPの分子的、生物学的特性に関するさらなる詳細が、ウォズニー・ジェイエム(Wozney JM)、ローゼン・ブイ(Rosen V)(1998)の先の引用箇所、シュミトットら(Schmitt et al.)(1999), J Orthop Res 17: 269-278、およびリンド(Lind)(1996), Acta Orthop Scand 67: 407-17に記載されている。
【0025】
タンパク質のモルフォゲンファミリーのメンバーには、哺乳類の骨形成タンパク質−1(OP−1(別名BMP−7)およびショウジョウバエ同族体(Drosophila homolog)60A)、骨形成タンパク質−2(OP−2(別名BMP−8))、骨形成タンパク質−3(OP−3)、BMP−2(別名BMP−2AまたはCBMP−2A、およびショウジョウバエ同族体DPP)、BMP−3、BMP−4(別名BMP−2BまたはCBMP−2B)、BMP−5、BMP−6およびそのマウス同族体Vgr−1、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、GDF−3(別名Vgr2)、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、GDF−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、GDF−5(別名CDMP−1またはMP52)、GDF−6(別名CDMP−2)、GDF−7(別名CDMP−3)、ツメガエル同族体VglならびにNODAL、UNIVIN、SCREW、ADMP、およびNEURALが含まれる。このファミリーのメンバーは、共通の構造的特徴を共有し、前駆体である「プロフォーム(pro-form)」から成熟ペプチド鎖コンピテントを生成して二量化するプロセシングを有し、かつカルボキシ末端活性ドメインを含有する、約97〜106個のアミノ酸からなる分泌ペプチド鎖をコードしている。メンバーは全て、このドメインにおいてシステインの保存パターンを共有しており、これらのタンパク質の活性型は、単一のファミリーメンバーのジスルフィド結合同質二量体であってもよいし、あるいは2種類の異なるメンバーの異質二量体であってもよい(例えば、マッサギュー(Massague)(1990), Annu. Rev. Cell Biol. 6: 597;サンパスら(Sampath et al.)(1990), J. Biol. Chem. 265: 13198参照)。さらに、米国特許第5011691号明細書;米国特許第5266683号明細書;オズカイナックら(Ozkaynak et al.)(1990), EMBO J. 9: 2085-2093、ワートンら(Wharton et al.)(1991), PNAS 88:9214-9218)、(オズカイナック(Ozkaynak)(1992), J. Biol. Chem. 267: 25220-25227および米国特許第5266683号明細書);(セレステら(Celeste et al.)(1991), PNAS 87:9843-9847);(リョンスら(Lyons et al.)(1989), PNAS 86:4554-4558)も参照されたい。これらの開示には、これらの骨形成タンパク質のアミノ酸およびDNA配列、ならびに化学的および物理的特徴が記載されている。さらに、ウォズニーら(Wozney et al.)(1988), Science 242:1528-1534;BMP9(国際公開第93/00432号パンフレット);DPP(パジェットら(Padgett et al.)(1987), Nature 325:81-84;およびVg−1(ウィークス(Weeks)(1987) Cell 51: 861-867)も参照されたい。
【0026】
BMPファミリーの前記メンバーは、BMP−1、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−14またはBMP−16であることが好ましい。
【0027】
BMPファミリーの前記メンバーは、BMP−2またはBMP−7であることが最も好ましい。
【0028】
BMP−2のプリプロフォーム(preproform)のアミノ酸配列が、Swiss−Protアクセッション番号P12643(Genebankアクセッション番号GI:115068)で寄託されている。アミノ酸1〜23は、シグナル配列に相当し、アミノ酸24〜282は、プロペプチドに相当し、アミノ酸283〜396は、成熟タンパク質に相当する。BMP−7のプリプロフォームのアミノ酸配列が、SwissProtアクセッション番号P18075(Genebankアクセッション番号GI:115078)で寄託されている。BMP−2またはBMP−7は、それぞれ、BMP−2またはBMP−7のプリプロフォーム、プロフォームまたは成熟ペプチドを指すことが好ましい。さらに、本質的に同一の生物活性、好ましくは骨誘導特性を有する前記タンパク質のフラグメントも包含される。BMP−2およびBMP−7の配列に関するさらなる情報を以下に示す。
【0029】
TGF−βファミリーの前記メンバーは、GDFであることがより好ましい。成長分化因子(GDF)もまた、特に、骨組織の誘発および再構築に関与することがわかっている。成長分化因子5(GDF−5)、別名軟骨由来形態形成タンパク質1(CDMP−1)は、BMPファミリーのサブグループのメンバーであり、前記サブグループには、他の関連タンパク質、好ましくは、GDF−6およびGDF−7が含まれる。前記タンパク質の成熟型は、27kDaの同質二量体である。種々のインビボおよびインビトロ検査により、哺乳類の骨格における異なる形態学的特徴を形成する際のGDP−5の役割が実証されている。GDF−5の突然変異は、四肢の長骨の長さの減少、四肢および胸骨における関節の発達異常を含む、骨格異常の原因となる(ストームおよびキングスレイ(Storm & Kingsley)(1999), Development Biology, 209, 11-27)。アミノ酸配列は、マウスとヒト間において高度に保存されている。
【0030】
GDFサブファミリーの前記メンバーは、GDF−1、GDF−3、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、GDF−10またはGDF−11であることが好ましい。
【0031】
GDFサブファミリーの前記メンバーは、GDF−5であることが最も好ましい。GDF−5のプリプロフォームのアミノ酸配列が、Swiss−Protアクセッション番号P43026(Genebankアクセッション番号GI:20141384)で寄託されている。GDF−5は、GDF−5のプリプロフォーム、プロフォームまたは成熟ペプチドを指すことが好ましい。さらに、本質的に同一の生物活性、好ましくは骨誘導特性を有するGDF−5のフラグメントも包含される。
【0032】
本発明のデバイスへのコーティングが考えられるTGF−βファミリーメンバーのさらに別の例が、例えば、欧州特許第10372031号明細書、欧州特許出願公開第0723013号明細書、欧州特許出願公開第1221484号明細書、欧州特許第0362367号明細書、欧州特許出願公開第1225225号明細書、欧州特許第10714665号明細書、欧州特許出願公開第0646022号明細書、欧州特許第0584283号明細書、欧州特許第0448704号明細書、欧州特許第0643767号明細書、欧州特許第0812207号明細書、欧州特許出願公開第1220693号明細書、欧州特許出願公開第1223990号明細書、欧州特許出願公開第1150725号明細書、欧州特許第0679097号明細書、欧州特許第0601106号明細書、欧州特許出願公開第0601135号明細書、欧州特許出願公開第0972520号明細書または欧州特許第0575555号明細書に記載されている。
【0033】
さらに別の有用なタンパク質として、DNAのコンピテントによってコードされ、本明細書に記載の骨形成タンパク質をコードするDNAにハイブリダイズするタンパク質、ならびに関連する類似体、同族体、ムテイン(生合成変異体)等が挙げられる。かかるDNA配列ならびに化学的および物理的性質を開示している出版物として、以下が挙げられる。OP−1およびOP−2:米国特許第5011691号明細書、米国特許第5266683号明細書、オズカイナックら(Ozkaynak et al.)(1990), EMBO J. 9: 2085-2093;OP−3:国際公開第94/10203号パンフレット(PCT/US93/10520);BMP−2、BMP−3、BMP−4:国際公開第88/00205号パンフレット、ウォズニーら(Wozney et al.)(1988), Science 242:1528-1534);BMP−5およびBMP−6:セレステら(Celeste et al.)(1991), PNAS 87: 9843-9847;Vgr−1:リョンスら(Lyons et al.)(1989), PNAS 86: 4554-4558;DPP:パジェットら(Padgett et al.)(1987), Nature 325: 81-84;Vg−1: ウィークス(Weeks)(1987), Cell 51: 861-867;BMP−9:国際公開第95/33830号パンフレット(PCT/US95/07084);BMP−10:国際公開第94/26893号パンフレット(PCT/US94/05290);BMP−11:国際公開第94/26892号パンフレット(PCT/US94/05288);BMP−12:国際公開第95/16035号パンフレット(PCT/US94/14030);BMP−13:国際公開第95/16035号パンフレット(PCT/US94/14030);GDF−1:国際公開第92/00382号パンフレット(PCT/US91/04096)およびリーら(Lee et al.)(1991),PNAS 88: 4250-4254;GDF−8:国際公開第94/21681号パンフレット(PCT/US94/03019);GDF−9:国際公開第94/15966号パンフレット(PCT/US94/00685);GDF−10:国際公開第95/10539号パンフレット(PCT/US94/11440);GDF−11:国際公開第96/01845号パンフレット(PCT/US95/08543);BMP−15:国際公開第96/36710号パンフレット(PCT/US96/06540);MP121:国際公開第96/01316号パンフレット(PCT/EP95/02552);GDF−5(CDMP−1、MP52):国際公開第94/15949号パンフレット(PCT/US94/00657)、国際公開第96/14335号パンフレット(PCT/US94/12814)および国際公開第93/16099号パンフレット(PCT/EP93/00350);GDF−6(CDMP−2、BMP−13):国際公開第95/01801号パンフレット(PCT/US94/07762)、国際公開第96/14335号パンフレットおよび国際公開第95/10635号パンフレット(PCT/US94/14030);GDF−7(CDMP−3、BMP−12):国際公開第95/10802号パンフレット(PCT/US94/07799)および国際公開第95/10635号パンフレット(PCT/US94/14030)。別の実施形態においては、有用なタンパク質として、新規な生合成形態形成タンパク質および2種類以上の公知のモルフォゲン配列を用いて設計したキメラタンパク質を含む、生物活性生合成コンストラクトが挙げられる。米国特許第5011691号明細書に開示の生合成コンストラクト(例えば、COP−1、COP−3、COP−4、COP−5、COP−7、およびCOP−16)も参照されたい。
【0034】
本発明の文脈においては、TGF−βファミリーのメンバーであるタンパク質の生物活性を有するペプチドまたは小分子が好ましい。前記ペプチドまたは小分子は、骨誘導および/または骨形成特性を有することがより好ましい。これらの特性は、本明細書または国際公開第03/043673号パンフレットに記載の方法によって測定することができる。「骨誘導」という用語は、間葉幹細胞および前骨芽細胞を骨芽細胞へと変換する能力を指す。骨誘導の前提条件となるのは、上述の骨芽細胞前駆体および他の間葉細胞の活性化が起こる周辺組織へとデバイスによって配信されるシグナルである。本明細書中で使用される骨誘導は、間葉細胞から骨前駆細胞、骨芽細胞への分化を包含する。さらに、骨誘導は、前記骨芽細胞から骨細胞、骨の成熟細胞への分化も含む。このように、骨誘導には、未分化または分化程度の低い細胞が、骨を形成し得る骨細胞へと分化することが必要である。先に述べたように、本発明に基づいて使用される骨誘導タンパク質は、移植後にゆっくりとデバイスから遊離し、効率よく周辺組織に分配される。さらに、本発明に包含されるタンパク質およびペプチドは、生体内において骨誘導特性を示す。例えば、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)スーパーファミリーが骨誘導特性を有するメンバーを包含することは、当業界において周知である。特に優れた骨誘導特性を有する前記TGF−βスーパーファミリーの個々のメンバーを、上記および下記に列挙し、これらについて本明細書中で言及している。結論として、本発明のデバイスの骨誘導タンパク質は、前記デバイスの表面上において、ならびに担体からの遊離後において、前記デバイスの移植側の周辺組織における骨細胞前駆体に対する骨誘導シグナルとして働く。
【0035】
「骨形成」という用語は、骨芽細胞による新生骨の合成を指す。本発明によれば、前記デバイスの移植側の周辺における既存の骨が、前記デバイスの構造を骨細胞が付着可能なマトリックスとして使用して前記デバイス内へと成長する。
【0036】
薬学的に活性な物質の好ましい例として、インターロイキン、EGF、PDGF、IGF、FGF、TGF−アルファ、TGF−ベータ、ヒルジン、組織プラスミノゲン活性化因子および変異体、パラトルモン等のペプチドが挙げられる。上述の薬学的に活性な物質のいずれかの「変異体」または「誘導体」は、非修飾の薬剤物質と同一の活性または効果を有するものと解釈されるべきである。
【0037】
多糖、脂質、糖脂質、または小分子の好ましい例としては、ヘパリンまたはヘパリン様物質、タキサン類、例えば、パクリタキセル(paclitaxen)、抗生物質、ステロイド、ホルモン、またはホスホリルコリンが挙げられる。
【0038】
本発明のデバイス(例えば、ステントまたは接眼レンズ)にコーティングできる物質の他の例としては、バイオゴールド(biogold)等の有機コーティングが挙げられる。バイオゴールドは、短鎖炭化水素からなる市販のポリマーコーティングである(米国特許第4994498号明細書、バイオゴールドコーポレイション(Biogold Cooperation))。本発明のデバイス(例えば、ステント)にコーティングできる無機コーティング物質の他の例としては、炭化ケイ素(SiC)、酸化イリジウム(オズベック(Ozbek)(1997), Cathet. Cardiovasc Diagn 41: 71-78)またはドイツ、ベルリンのテナックスバイオトロニック社(Tenax、Biotronik GmbH)製のTENISS(ウンバードーベン・エム(Unverdorben M.)(2000), J. of interventional cardiollogy 16(4): 325)が挙げられる。SiCは、セラミックであり、非晶質の水素化炭化ケイ素(hydrogenated silicium carbide)からなる。
【0039】
さらに、生体適合性または分解性ポリマー等の合成ポリマーを本発明のデバイス(例えば、ステント)にコーティングすることも可能であり、好ましい生体適合性または分解性ポリマーとしては、ポリ乳酸、セルロース、ポリウレタンポリエステルメタクリロイルホスホリルコリン(PC)ラウリルメタクリレートまたはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。さらに、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キトサン、アルギン酸塩、またはフィブリン等の天然由来のポリマーを本発明のデバイスにコーティングすることも考えられる。本発明のデバイス(例えば、ステント)にコーティングできるタンパク質の非限定的な例として、糖タンパク質IIb/IIIa抗体が挙げられる。さらに、タキサン類(例えば、パクリタキセル)等の薬剤もまた、本発明のデバイス(例えば、ステント)にコーティングされる物質と考えられる。多種多様な、但し限定的ではないステントのコーティングを記載した論文として、スジョード(Sjoerd)(2001), Curr. Intervent. Cardiol. Rep. 3: 28-36を参照されたい。
【0040】
本明細書に記載の薬学的に活性な物質は、好ましい実施形態において、無機または有機生体吸収性マトリックスまたは材料に固定化されている。
【0041】
あるいは、前記物質は、活性でない成分を含む。本発明の文脈で使用される場合、「活性でない(non-active)」という用語は、「非活性(inactive)」という用語と置換可能であり、薬理学的活性または疾患の診断、治癒、緩和、治療、または予防において直接的な効果を与えること、あるいは、ヒトまたは他の動物の体の構造または何らかの機能に影響を及ぼすことを目的とした薬剤製品に含まれる成分を意味する。非活性成分は、例えば、ブラウン(Brown)(1983), N Engl J Med., 309: 439-441または米国小児科学会、薬剤委員会(American Academy of Pediatrics, Committee on Drugs)による医薬品に含まれる「非活性」成分("Inactive" ingredients in pharmaceutical products), Pediatrics (1985), 76: 635-643に記載されている。非活性成分のリストは、食品医薬品局(FDA)でも入手可能である。かかる成分には、メチオニン、サッカロース、または酢酸が含まれる。
【0042】
リン酸カルシウム等、あらゆる種類のセラミックスを含む物質が、本発明に包含される。「リン酸カルシウム」という用語には、カルシウムイオン、リン酸塩イオンを含み、本発明の担体に好適なさらに別のイオンまたは原子、例えば、CO32-、F-、OH-、Mg2+を任意に含む組成物が包含される。本発明において使用されるリン酸カルシウムは、上述のように、本発明のデバイスに好適な三次元構造を有する結晶質または非晶質である。好ましい周知のリン酸カルシウムを以下に列挙する。前記リン酸カルシウムは、ベータリン酸三カルシウム、アルファリン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸化アパタイトまたはカルシウム欠損ヒドロキシルアパタイトまたはセメントを含有するリン酸カルシウムである。
【0043】
本発明の方法によってコーティングされたデバイスは、本明細書に記載の物質によるコーティングが対象領域に均一に施されていることが好ましい。前記物質は、溶液の形態であることが好ましい。前記溶液は、当業者が、例えば、骨誘導タンパク質の溶解度に基づいて調製することが可能であるが、前記溶解度は、pH、イオン強度、ならびに前記溶液に担体を接触させた後に前記担体が前記パラメータに及ぼす影響に依存する。本発明によれば、本発明の方法に好適な溶液は、骨誘導タンパク質の酸化状態に影響を及ぼさない成分のみを含むものであることがわかっている。
【0044】
「均一にコーティングされる」という用語は、担体の表面が骨誘導タンパク質で完全にコーティングされ、これにより、本質的に再生可能な規定量のタンパク質が、前記担体表面の所望の領域に存在することを意味する。この発明によって均一にコーティングされた担体は、骨誘導タンパク質による被覆がその表面において最大であることが好ましい。均一なコーティングは、移植部位の周辺組織への骨誘導タンパク質の効率的な遊離および均一な分布と活性の前提条件である。さらに、骨誘導タンパク質は凝集せず、沈殿または微量沈殿によって部分的あるいは完全に不活性化するものではなく、均一なコーティングにより、生物活性を有する、凝集しないタンパク質の付着が達成されるものと解釈されるべきである。上述の均一なコーティングは、本発明の方法によって達成できるものであり、本明細書に記載の実施例で言及されている通りである。さらに、均一なコーティングを制御するための手段および方法、固定化タンパク質の定量およびキャラクタリゼーションが、国際公開第03/043673号パンフレットに記載されている。
【0045】
本発明においては、前記タンパク質またはペプチドは、前記デバイスの表面に固定されている。前記タンパク質またはペプチドの担体への結合は、可逆的であることが好ましい。したがって、骨誘導特性を有するタンパク質またはペプチドは、前記デバイスの(例えば、金属製の)表面に、共有結合によって結合されているのではないと考えられる。結合は、静電的相互作用、ファンデルワールス力のような疎水性または非静電的な相互作用によって起こることが好ましい。骨誘導タンパク質の可逆的な結合のおかげで、前記デバイスが一旦骨の空洞または動脈等の好適な生体内環境に配置されてしまえば、前記タンパク質の溶解が起こり得る。前記タンパク質の溶解は、前記デバイスの周辺組織へのタンパク質の拡散を可能にする、ゆっくりとした遊離であることが好ましい。よって、前記デバイスによれば、天然タンパク質が局在でき、これにより、例えば、新生骨の形成が促進され、当該骨のマトリックス表面またはコーティングされたステントへの内方成長により、急速な再狭窄が抑制される。
【0046】
医薬品に含まれるタンパク質を安定化するための多くの方法が提案されている。しかしながら、この発明の基礎を成す実験により、液体または凍結乾燥させたタンパク質製剤中でタンパク質を安定化するための周知の技術は、金属表面に吸着されたタンパク質に対しては、そのままでは適用できないことが実証された。先に述べたような従来技術に開示の方法によるセラミックまたは金属(例えば、チタンまたはチタン合金)の表面へのタンパク質のコーティングによれば、タンパク質の修飾種が生じてしまい、その結果、前記タンパク質の凝集または酸化が起こる(詳細については、実施例6参照)。さらに、還元剤を添加しても、タンパク質の酸化量は減少しない。本発明の方法によれば、移植後に効率よく骨を増大させるデバイスを製造することが可能である。有利なことに、酸化されたタンパク質の強化された免疫原性による炎症等といった望ましくない副作用を回避することが可能である。さらに、本発明の方法によれば、より時間がかからず、かつ、より費用効率の高い、本発明の医療用デバイスの製造プロセスを実現できる。これは、前記インプラントの金属または合金製の本体(corpus)のコーティングとパッケージングが、本明細書に記載のような一工程処理で行えるからである。さらに、前記一工程処理によれば、本明細書に記載のような低温での迅速な乾燥と、コーティング処理時および包装容器内における酸素の不在により、デバイスまたはインプラントにコーティングされた物質の活性が確実に保存される。さらに別の利点として、前記コーティングおよびパッケージングプロセスにより大量生産が可能となり、このような生産は、浸漬、滴下、または噴霧によって行われるその他のコーティング溶液の塗布技術と異なり、無菌処理に関するGMP基準に準拠していることが挙げられる。したがって、本明細書に記載の方法でコーティングされたインプラントは、特に、非経口での医療用途に関して所望される無菌の高品質を有している。
【0047】
本発明のデバイスはインプラントであってもよく、これは、本明細書中で使用される「デバイス」および「インプラント」という用語が置換可能であることを意味している。「インプラント」という用語が、上皮表面下に完全または部分的に埋没するように設計された、本発明によって提供されるあらゆるデバイスを指すことは周知である(コエック・ビーおよびワグナー・ダブリュー(Koeck, B. and Wagner, W.)(Eds.) 1996)。前記インプラントは、扁平、高密度、または複雑な形状であってもよい。すなわち、従来使用されている、または動作可能なあらゆるデバイスを使用することができる。上述のインプラントは、例えば、長骨の代替物または人工歯の土台として使用される単純な円筒形状のものから、頭部扁平骨の代替物および股関節部、膝、または肘等の人工関節として使用される扁平なインプラントまで多岐にわたっている。さらに別のタイプのインプラントとして、天然由来(ウシ、ヒト)または合成材料(ベータ−TCP)から構成された(多孔性の)三次元形状(例えば、ブロックまたは円筒)の生分解性セラミックインプラントが挙げられる。
【0048】
前記インプラントまたはデバイスは、少なくとも2つの構成要素を含む実体であることが好ましい。前記構成要素の一つは担体である。本発明の意味の範囲内において使用可能な担体には、完全な金属または合金製の担体のような固体の担体、ならびに金属または合金のマトリックスが含まれる。さらに本発明には、空所および空洞を有する固体の担体が包含される。さらに、前記担体は、マクロおよびミクロ細孔の形成によって拡大された表面を有していることが好ましい。前記マクロまたはミクロ細孔は、前記担体の表面層にのみ存在することが好ましい。さらに本発明には、少なくとも2つの異なる構成要素からなる担体であり、金属または合金製の構成要素が芯材または芯材層として使用され、例えば、セラミック材料が表面層として使用されている担体も包含される。これは、インプラントまたは外科用補綴全般の形成を包含するものである。これらの補綴は、以下に詳述するような金属表面で形成されるか、あるいはこのような表面でコーティングされることが好ましい。補綴は、チタンもしくはチタン合金、またはステレンス鋼で形成されている。
【0049】
例えば、溶解骨誘導タンパク質を含む溶液を、本明細書に記載の金属または金属合金の表面を含む担体に接触させる前に、前記各金属表面を、大気ガス(例えば、酸素)またはその他の疎水性汚染物質のような表面汚染物質を除去するように洗浄または処理し、コーティングの接着強さを良好なものとすることが好ましいと考えられている。この目的に好適ないくつかの方法が、当業界において周知であり、本明細書中の実施例に例示されている。例えば、本発明のデバイスの金属表面を、例えば、アセトンや、エタノールのようなアルキルアルコールで洗浄してから加熱して揮発性の汚染物質を取り除き、その後、殺菌した蒸留水または脱塩水で洗浄してもよい。
【0050】
本発明の別の態様においては、デバイスまたはインプラントの担体を、合成有機材料、合成無機材料、天然由来の有機材料、および天然由来の無機材料からなる群から選択することが考えられている。天然由来とは、自然界に存在する化合物を意味する。
【0051】
前記合成有機材料は、ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド(PLLA)、ポリ−D/L−ラクチド(PDLLA)、ポリ(グリコール乳酸共重合体)(poly(glycolic-co-lactid acid)) (PLGA)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)(P(3−HB)、ポリ(3−ヒドロキシ吉草酸)P(3−HV)、ポリ(p−ジオキサノン)(PDS)、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、ポリ無水物(polyanhydride)(PA)、ポリオルトエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリグラクチン、ポリアミド(PA)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリヒドロキシメタクリル酸メチル(PHEMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSU)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、またはポリシロキサンであることが好ましい。上述の合成有機材料のあらゆる組み合わせまたはコポリマーも考えられるものと解釈されるべきである。
【0052】
別の好ましい実施形態においては、前記合成無機材料は、スチール316L(steel 316L)、コバルトクロム合金、チタン、本明細書に記載のチタン合金、金、または白金である。上述の合成無機材料のあらゆる組み合わせも考えられるものと解釈されるべきである。
【0053】
さらに好ましい実施形態においては、前記無機材料は、β−リン酸三カルシウム、α−リン酸三カルシウム、ヒドロキシルアパタイト、炭酸化アパタイト、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カルシウム硫酸塩、またはバイオガラスである。上述の無機材料のあらゆる組み合わせも考えられるものと解釈されるべきである。
【0054】
さらに別の好ましい実施形態においては、前記天然由来の有機材料は、コラーゲン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、アルギン酸塩、自己由来の骨、ゼラチン、またはフィブリンである。上述の天然由来の有機材料のあらゆる組み合わせも考えられるものと解釈されるべきである。
【0055】
別の実施形態においては、前記天然由来の無機材料は、石灰化骨またはサンゴ藻由来の材料(coralline derived material)である。
【0056】
本明細書中に記載の有機または無機材料は全て、例えば、カプセル化剤のような医薬品の活性成分の担体として、または薬剤の固定化を達成するための伝達/埋め込みのため、保護および/または安定化のため、および/または制御された遊離のために使用することもできる。
【0057】
前記薬学的に活性な物質は、無機または有機生体吸収性材料に固定化可能であることが好ましい。
【0058】
本発明のデバイスまたはインプラントは、多孔化、ビーズを使用した処理、またはメッシュ化による表面修飾によって拡大された表面を有していることが好ましい。かかる修飾は、化学的または機械的手段を含む当業界において周知の方法によって導入できる。さらに、ナノメートル、マイクロメートルスケールの凹凸を有する拡大された表面は、骨結合に有益であることがわかっている。
【0059】
「骨結合」という用語は、本明細書中で使用される場合には、骨がインプラントの周りに新生骨を形成し、当該インプラントと一体化する能力を有することを意味する。一体化とは、骨細胞がインプラント表面に付着し、その結果、補綴による再構築物の強固かつ永続的な固定が、機能上の負荷の下、痛み、炎症、またはゆるみを伴うことなく得られることを意味する。新生骨の形成を伴う骨結合は、外傷性、悪性、または人工の欠陥の治療、歯の欠陥の治療、または股関節部、肘、背骨、膝、指または足関節の治療のため、あるいは、骨欠陥充填材料として使用するために行われるべきものと考えられている。先に述べたような疾患および障害の症状は、シリンベル(Pschyrembel)やステッドマン(Stedman)等の標準的な医学に関するテキストブックに詳細に記載されている。
【0060】
「新生骨形成」とは、軟骨性骨の形成または膜内骨の形成を意味する。ヒトの場合、骨形成は、胎児成育期における最初の6〜8週目に始まる。間葉由来の前駆幹細胞(progenitor stem cell)が所定の部位に移動し、その部位において、(a)縮合し、増殖し、骨形成細胞(骨芽細胞)へと分化する、頭蓋において観察される「膜内骨形成」と呼ばれるプロセスを経るか、あるいは、(b)縮合し、増殖し、中間生成物である軟骨形成細胞(軟骨芽細胞)へと分化し、続いて、前記中間生成物が骨形成細胞によって置換される。より具体的には、間葉幹細胞が、軟骨細胞へと分化する。そして、前記軟骨細胞は石灰化され、肥大し、この時点で前記部位に存在する、分化した骨芽細胞からなる新たに形成された骨に置換される。続いて、前記石灰化した骨の大幅な再造形が起こり、その後、機能性の骨髄要素が充填された小骨で占められるようになる。このプロセスは、長骨において観察され、「軟骨性骨形成」と呼ばれる。胎児期以降は、骨は、軟骨性骨の発達初期の細胞過程を模することによって損傷を修復する自己修復能を有する。すなわち、骨髄、骨膜、および筋肉から間葉の前駆幹細胞を誘発して欠陥部位へと移動させ、上述のような一連の事象を開始させることができる。ここで、これらの細胞は累積し、増殖し、軟骨へと分化し、次に新たに形成された骨に置換される。
【0061】
本発明の使用に関連して述べた上述の疾患の1以上を治療するための方法であって、本発明のデバイスまたは本発明の方法によって得られるデバイスを、薬学的に許容可能な形態で対象に投与する工程を少なくとも含む方法もまた、本発明の範囲内である。前記対象は、ヒトであることが好ましい。
【0062】
前記デバイスまたはインプラントは、賦形剤をさらに含んでいてもよい。これらの賦形剤は、例えば、糖類、アミノ酸、ポリオール、または界面活性剤のようなタンパク質の安定化または保存、あるいは、例えば、緩衝物質のpHを維持する働きをする。この発明に包含されるその他の好ましい賦形剤としては、デンプンまたは化工デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、天然油(例えば、ヒマシ油)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールプロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。
【0063】
「糖類」という用語は、単糖、二糖、および多糖を包含する。単糖、二糖、および多糖の構造ならびに組成物は、当業界において周知であり、Rompp社の化学辞典等の標準的なテキストブックに記載されている。前記糖類は、二糖であることがより好ましい。前記二糖は、スクロースまたはトレハロースであることが最も好ましい。
【0064】
本発明のデバイスまたは方法の別の好ましい実施形態においては、前記デバイスは、毒性物質を全く含まない。
【0065】
「毒性物質」という用語は、当業界において提案されている方法に用いられる毒性の有機溶媒および添加剤、例えば、アセトニトリルを包含することが好ましい。前記物質は、前記物質を含有するデバイスの移植後に、炎症およびその他の反応を引き起こす場合がある。前記デバイスは、当業界で提案されているコーティング方法では不可避な望ましくない副作用のため、治療上あまり認められない。さらに、治療用タンパク質の開発に関する国際的指針は、製造工程において、有害で毒性のある物質を避けることを要求している(詳細に関しては、国際調和会議(International Conference on Harmonization)(ICH)、表題Q3C(Topic Q3C); www. emea.eu.int/参照)。しかしながら、本発明のデバイスまたは本発明の方法によって得られるデバイスは、毒性物質を全く含まないか、あるいは毒性物質が極力抑えられており、よって、治療上十分に認められ、かつ、監督官庁の要件を満たしているという利点を有ている。
【0066】
また、本発明のインプラントまたは方法のさらに好ましい実施形態においては、前記デバイスは、感染性材料を全く含まない。
【0067】
毒性物質以外にも、前記インプラントに含まれる感染性材料により、前記デバイスを移植した対象に深刻な感染が引き起こされる場合がある。しかしながら、ウシまたはブタの骨由来の潜在的に感染性のゼラチンが、多くの従来技術の方法において、保護タンパク質として使用されている(エム・リンド(M. Lind (1996), Acta Orthop Scand 67: 407-17)。
【0068】
例えば、骨誘導タンパク質による本発明のデバイスのコーティングは、間葉幹細胞の骨芽細胞および軟骨細胞への変換の開始と促進を目的としている。したがって、本発明のデバイスの、前記各骨組織に向けられる部分のみをコーティングすればよいものと考えられている。前記部分は、表面全体または少なくとも前記骨組織と隣り合う部分であることが好ましい。例えば、欠損した歯の代替として使用される歯科インプラントは、下顎骨に螺合されるねじ部と、人工の歯冠の固定に使いられる拡張部(ソケット)とを有する。したがって、前記ねじ部のみを骨誘導タンパク質でコーティングすればよい。しかしながら、骨誘導タンパク質でコーティングされていない部分を、リン酸カルシウム、コラーゲン、または同様の作用物質等のその他の作用物質でコーティングしてもよい。
【0069】
先に述べたような「骨誘導タンパク質」という用語は、成長分化因子-5または本明細書または先に述べた欧州特許出願もしくは欧州特許に記載のタンパク質のような、骨誘導特性を有するトランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)スーパーファミリーメンバーを指す。金属表面に対するこのような吸着プロセスの重要な前提条件は、国際公開第03/043673号パンフレットに記載されているように、コーティング溶液におけるタンパク質の十分な溶解度である。
【0070】
本発明の第1の態様に係る方法で用いられる乾燥工程においては、以下に述べるような等温乾燥を用いることが好ましい。また、真空乾燥または凍結乾燥による乾燥を行ってもよい。「乾燥させる」という用語には、液体を除去する手段も包含される(凍結乾燥に関する詳細は、「良好な製薬凍結乾燥の実践」、ピーター・キャメロン編、インターファームプレス社、バッファローグローブ、イリノイ州、米国("Good Pharmaceutical Freeze-Drying Practice", edited by Peter Cameron, interpharm Press, Inc., Buffalo Grove, IL, USA)から取得できる)。
【0071】
「等温乾燥」という用語は、液相から気相へと溶媒を蒸発させることによって溶媒を除去し、続いてアイスコンデンサで凝結させるという乾燥方法を指す。前記アイスコンデンサは、前記溶媒の飽和蒸気圧を下げ、前記溶液から前記アイスコンデンサへの前記溶媒の大量輸送を達成し、前記溶媒を固定化するために、非常に低温に設定されている。前記アイスコンデンサは、−50℃未満に設定されていることが好ましい。
【0072】
前記溶媒の蒸発を促進するため、このプロセスは、減圧(すなわち、標準的な大気圧より低い圧力)下において、好ましくは前記製品が配置される温度規制棚を用いることによって、前記溶液の温度を規定の温度に保ちつつ行われる。
【0073】
前記温度は、前記溶媒の蒸発を促進し、前記溶媒の蒸発のエンタルピーによって温度が低下することによる前記溶液の凍結を防止し、温度によって誘発される分解から前記基質を保護するため、一定レベルの蒸発と加熱の平衡により設定される。前記温度は、前記乾燥プロセスの間中、一定であることが好ましい。
【0074】
乾燥の間中、前記溶液が確実に液体の状態でいられるように、温度および圧力の両方を慎重に設定する必要がある。前記乾燥プロセスは、前記乾燥プロセス中における規定の乾燥パラメータの保持と制御のため、凍結乾燥機内で実施されることが好ましい。前記乾燥プロセスは、例えば、窒素、アルゴン等を用いて乾燥チャンバ内を排気することにより、酸素を全く含まない環境で実施することが好ましい。
【0075】
最近、ステントのコーティングが、血液適合性および組織適合性を強化するため重要となってきている。新規な薬剤溶出ステントに関して進行中の試験は、再狭窄、特に、ステント内再狭窄の治療を改善するものと考えられている(例えば、「コーティングされたステントの最近の進展(Recent Developments in Coated Stents)」というレポート参照)、ハフマ(Hofma)、スジョード・エイチら(Sjoerd H. et al.)(2001), Current Interventional Cardiology Reports, 3: 28-36)。本発明はさらに、本発明の方法によるステントのコーティングも包含する。本発明によるステントのコーティングによれば、本明細書に記載のように、ステント、例えば、(ニチノールステントのような)金属製のステントの表面全体にわたって均一なコーティングを有するステントが得られる。
【0076】
本発明においては、前記デバイスのコーティングは、前記デバイス用に構成された包装容器内において、前記デバイスをコーティング溶液と接触させた状態で行われる。言い換えれば、本発明によれば、コーティングプロセスにおいてコーティングを施すデバイスを収容する収容容器(containment)が、前記コーティングされたデバイスのパッケージングおよび保存に用いられる容器と同一である。すなわち、コーティングおよびこれに続くパッケージング(例えば、単回投与の無菌製品、特に、医薬品の大規模生産で使用)に同一の容器が用いられる。
【0077】
前記物質を含有する溶液は、水溶液であることが好ましく、酸性の溶液であることが最も好ましい。もちろん、当業界において周知であるように、前記物質を含有する溶液のpHおよび前記pHを調整するための賦形剤は、慎重に選ぶ必要がある。
【0078】
例えば、Tiデバイスは、金属表面にタンパク質の水溶液を塗布し、さらに乾燥させることにより、前記タンパク質でコーティングされていることが好ましい。このコーティング溶液は、加工時および保存時において、前記タンパク質が十分な安定性を発揮できるように調製されている。例えば、rhGDF−5は、酸性の溶液にのみ溶解できる。よって、前記コーティング溶液のpH値は、一方では前記タンパク質の酸性の分解を、他方では高pH値での沈殿を回避するよう、慎重に設定する必要がある。研究の結果、3.0〜3.5が理想的なpH範囲と特定された(国際公開第03/043673号パンフレット)。このpHは、乾燥処理中は一定とすべきであり、前記溶媒の蒸発時に前記溶液が濃縮されても、その値が高くなったり、低くなったりしてはならない。実験により、弱酸、例えば、酢酸が、この目的において理想的な賦形剤であることが分かった。
【0079】
「弱酸」という用語は、イオノゲンによって結合した(ionogenically bound)水素原子を1以上含有する有機または無機化合物を指す。弱酸は、当業界において周知であり、Rompp社の化学辞典等の標準的なテキストブックに記載されている。前記弱酸は解離度が低く、かつpK値が3〜7、好ましくは4〜6であることが好ましい。
【0080】
本明細書において述べたように、デバイスにコーティングされる物質が溶解された溶液は、酸性の水溶液である。前記酸性の水溶液は、HCl、酢酸、クエン酸、および/またはコハク酸を含有することが好ましい。
【0081】
本発明の別の好ましい実施形態においては、デバイスにコーティングされる物質が溶解された溶液は、有機溶媒である。前記有機溶媒は、氷酢酸、DSMO、アニソールであることが好ましい。
【0082】
しかしながら、本発明においては、本発明の方法によりデバイスにコーティングされる物質が、脂肪族または芳香族アルコール、エステル、エーテル、炭素水和物(carbon hydrates)、ハロゲン化脂肪族または芳香族炭素水和物等に溶解された溶液も考えられる。
【0083】
前記溶液は、メチオニンもしくはその誘導体(亜硫酸塩、アスコルビン酸、グルタチオン)または標準的なテキストブック(バウアー(Bauer)、Fromming Fuhrer, Lehrbuch der Pharmaceutischen Technologie, 6. Auflage, 1999)に記載の遊離基捕捉剤のような酸化防止剤を含有することがさらに好ましい。例として、ブチルヒドロキシトルオール、ブチル化ヒドロキシアニソール、EDTA、マンニトール、イソプロパノール、トコフェロール、ガリュリック酸エステル(galuric acid esters)が挙げられる。
【0084】
コーティングを施すデバイスは、例えば、金属または金属合金、好ましくはチタンまたはチタン合金、あるいは本明細書において述べた材料のいずれか1種の材料で形成されている。前記金属/金属合金または本発明の明細書に記載のその他の材料は、生体適合性であることが好ましい。「生体適合性」という用語は、生体システムに対して有毒または有害な影響を及ぼさない品質(ウィリアムス・ディー・エフ(Williams, D.F.),(1988), バイオマテリアルに関するコンセンサスと定義(Consensus and definitions in biomaterials), Advances in Biomaterials, 8, デ・プッター・シー(de Putter, C.), デ・ランジ・ケー(de Lange K.), デ・グルート・ケー(de Groot K.),リー・エイ・ジェイ・シー(Lee A.J.C.)(編集), エルセビアーサイセンスパブリッシャー・ビー・ブイ(Elsevier Science Publishers B.V.),アムステルダム(Amsterdam))を意味する。チタンまたはチタン合金に関しては、前記特性を有することが公知である。前記チタン合金は、チタンを50%以上含有するチタン合金であることがより好ましい。前記チタン合金は、Ti−Al−V−合金、Ti−Al−Fe合金、Ti−Al−Nb−合金、またはTi−Mo−Zr−Al−合金、Ti−Ni−合金であることがさらに好ましく、Ti6Al4Vであることが最も好ましい。
【0085】
第1の態様の方法によってコーティングを施すデバイスは、インプラントまたはステントであることが好ましく、歯科インプラントまたは冠動脈ステントであることが最も好ましい。
【0086】
より詳細には、本発明の第1の態様に係る方法の工程(a)は、前記デバイス用の包装容器を準備する工程(a1)と、前記容器に前記コーティング溶液を充填する工程(a2)と、前記コーティング溶液を予め充填した前記容器に前記デバイスを入れる工程(a3)とを有している。前記工程(a2)と(a3)の順序を入れ替え、まず、前記デバイスを前記容器に入れ、次いで前記コーティング溶液を充填するようにしてもよい。対象表面の完全な湿潤を実現するため、前記方法は、前記工程(b)の前に、例えば、気泡を除去するために、雰囲気下において陰圧をかける工程をさらに備えていることがより好ましい。本明細書中で説明した方法により、前記包装容器をコーティングすることも可能と考えられている。あるいは、前記包装容器は、例えば、本明細書に記載の疎水性材料のような材料で、既にコーティングされていてもよい。
【0087】
より詳細には、前記コーティング溶液を調製し、殺菌濾過し、マイクロピストンポンプを使用して前記容器(例えば、ガラスバイアル)に分配することが好ましい。Ti固定具(Ti fixtures)のようなデバイスは、例えば、タンパク質溶液に添加され、浸漬される。次に、前記容器に、ストッパーを取り付ける。前記ストッパーは、前記容器を凍結乾燥装置に装填する前に、その一部分のみを前記容器に挿入するようにして取り付ける。前記固定具のチタン表面の細孔内に捕捉されていることが考えられる気泡を除去するため、例えば、30hPa(前記タンパク質溶液の室温での沸騰条件を上回る)の陰圧をかける。次に、前記凍結乾燥機のチャンバの圧力を、例えば、500hPa以下、より好ましくは250hPa以下、最も好ましくは100hPa以下に設定し、窒素下において周囲温度(約25℃)で等温乾燥を行い、前記溶媒を除去する。蒸発した溶媒の蒸気を、マーガトロイド・ケーの凍結乾燥機と凍結乾燥機の設計、良好な製薬凍結乾燥の実践2、キャメロン・ピー編、インターファームプレス社、バッファローグローブ、アムステルダム、1997(Murgatroyd K, The Freeze Dryer and Freeze Dryer Design, in Good Pharmaceutical Freeze-Drying Practice, 2, Cameron, P (ed.), Interpharm Press, Inc, Buffalo Grove Amsterdam, 1997)に記載されているように、非常に低温(例えば、約−50℃以下)に設定したアイスコンデンサで凝結させる。乾燥処理の後、前記デバイスを装填した状態で凍結乾燥用棚を折りたたむことによって前記凍結乾燥機内にて前記デバイスを閉塞する前に、前記チャンバを最高真空度まで真空化し、殺菌した窒素を用いて前記チャンバ内を排気する。
【0088】
第2の態様において、本発明は、デバイス用の包装容器であって、前記デバイスのコーティングが直接前記包装容器内で行えるように構成された包装容器を提供する。したがって、本発明の容器は、デバイス(例えば、インプラント)のインサイチュ・コーティングプロセスのためのベッセルとしての機能と、長期保存のための主要な包装システムとしての機能の両方を果たす。
【0089】
前記包装容器は、コーティングが施されるデバイスを収容するための収容室を備え、前記収容室が、前記デバイスの大きさおよび形状に適合する大きさおよび形状とされていることが好ましい。前記収容室の内部表面は、例えば、不活性な、疎水性等の駆散性もしくは親水性の材料(水溶性のコーティング溶液の場合には、シリコーンまたはPTFEもしくはPTFE様材料)の層でコーティングされていることが好ましい。疎水性物質による疎水性表面のコーティングには、前記ベッセルの親水性のコーティングが必要である。
【0090】
内部表面をコーティングすることにより、前記デバイスまたはインプラントにコーティングする物質の定量的な付着が確実に行われる。このことは、コーティングされたデバイスまたはインプラントの費用効率の高い製造を行う上で極めて有利である。
【0091】
好ましい設計によれば、前記容器の収容室が、容器筐体内に同軸に配置されている。前記容器筐体は、前記デバイスと前記コーティング溶液/基質または物質とを前記収容室へと通すための開口と、前記開口の反対側に位置する底部とを備えている。さらに、前記収容室は、前記デバイスと前記コーティング基質または物質とを受け入れるための開口と、前記開口の反対側に位置する底部とを備えている。前記筐体の開口と前記収容室の開口とは互いに位置合わせされており、前記収容室の底部が前記筐体の底部に取り付けられている。前記収容室の開口部は、前記筐体の開口部から離間していることが好ましい。前記包装容器は、ガラス製であることが好ましい。あるいは、前記包装容器は、プラスチック材料からなる。このガラス容器の外寸法は、標準型のバイアル(DIN ISO 8362: Injektionsbehaltnisse fur Injektionspraparate und Zubehor)の外寸法と同一であることが好ましい。内寸法は、例えば、Ti固定具のようなデバイスのコーティングおよび保存用のマイクロベッセルの形成に適合するものとされている。
【0092】
本発明の第3の態様によれば、物質によってコーティングされるデバイス用、好ましくはインプラント用の包装容器の内部表面をコーティングする方法であり、(A)前記容器の内部表面に疎水性材料を塗布する工程と、(B)塗布した前記材料を熱硬化させ、前記容器の内部表面に焼付け層を形成する工程を備え、前記コーティングは、前記容器と前記デバイスとの間における、前記デバイスにコーティングされる物質の分配係数に影響を与える方法が提供される。既に説明したように、前記疎水性材料は、シリコーンまたはPTFEもしくはPTFE様材料であることが好ましい。より詳細には、前記工程(A)には、シリコーンエマルションを用いて前記容器の内部表面をシリコーン処理することが含まれる。
【0093】
第4の態様において、本発明は、本発明の第1の態様に係る方法によって得られるコーティングされたデバイスを提供する。前記デバイスは、歯科インプラントまたは冠動脈ステントのようなインプラントであることが好ましい。例えば、前記インプラントは、ステント、釘、ねじ、ケージ、またはプレートのいずれかである。
【0094】
よって、第4の態様のコーティングされたデバイスは、先に述べた本発明の第1の態様の方法がもたらす特徴によって特徴付けられる。具体的には、前記デバイスは、前記デバイスの金属または合金の多孔性または非多孔性表面に均一にコーティングされた骨誘導タンパク質を有し、これにより、前記金属または合金表面にコーティングされていない骨誘導タンパク質と比べ、前記骨誘導タンパク質の酸化状態が著しく増加することがない。
【0095】
本発明はさらに、前記デバイス上におけるコーティングの分布の均一性を向上させるための、本発明の第1の態様に係るデバイスのコーティング方法の使用を包含する。
【0096】
本発明はまた、本発明の第3の態様に係る包装容器のコーティング方法の、前記容器と前記デバイスの間における、前記デバイスにコーティングされる物質の分配係数を向上および/または制御するための使用を包含する。
【0097】
本発明はさらに、本発明の第1の態様の方法によって得られるデバイスを含むキットを包含する。本発明の方法、デバイス、および使用に関連して先に述べた用語の定義および説明は、ここで述べるキットにも準用される。本発明のキットの部品は、バイアルまたは各部品に応じた他の適切な手段によって個別に包装してもよいし、複数の部品を組み合わせて好適な容器または多容器ユニット内に包装してもよい。前記キットの製造は、好ましくは当業者に公知な標準的な手順に従って行うことが好ましい。前記デバイスは、不活性ガス雰囲気、好ましくは窒素のみで構成される雰囲気等、酸素を全く含まない雰囲気下において、容器またはバイアルに包装されることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0098】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を説明する。
【0099】
図1は、チタン固定具のコーティングに使用される本発明の第1の態様に係るコーティング方法を概略的に示している。本発明に従ってインプラント(ここでは、チタン固定具)のコーティングに使用される包装容器を、図1において、5つの処理工程に関して示している。第1の工程において、タンパク質溶液を容器(図1に示す好ましい実施形態においては、シリコーン処理されたベッセルである)に添加する。次に、前記デバイス(例えば、ねじ状のインプラント)を前記容器に挿入し、これにより、前記デバイスを前記液体に完全に包囲された状態とする。第3の工程においては、ストッパーを用いて容器を閉塞する。但し、前記ストッパーは、最終的な閉塞位置(図1の右端の図に示す)ではなく、中間位置に配置される。前記ストッパーを前記容器に部分的に挿入した状態で乾燥プロセスを開始し、これにより、前記デバイスにコーティングが施される。前記ストッパーが準閉塞位置にあることにより、例えば、前記乾燥プロセスにおいて、前記容器から水を逃がすことができる。前記乾燥/コーティング処理の後、前記ストッパーを前記容器に押し込んで前記容器を完全に閉塞する前に、殺菌した窒素またはその他の不活性ガスを用い、前記凍結乾燥装置のチャンバを排気してもよい。あるいは、前記容器を閉塞する前に、陰圧をかけることもできる。完全にコーティングされたインプラントは、既に前記包装容器内に収容されており、出荷できる状態となっている。
【0100】
図2は、本発明の第2の態様に係る容器のさらに別の例を示している。この包装容器は、特殊なデザインの固体のガラスバイアルを備えている。このガラスバイアルの外寸法は、標準的な2Rバイアルの外寸法と同一である。内寸法は、例えば、Ti固定具のコーティングおよび保存用のマイクロベッセルの形成に適合するものとされている。このガラスバイアルは、熱処理によって当該ガラスに焼付けられた医療グレードのシリコーンエマルションを用いてシリコーン処理されている。
【0101】
図3は、本発明の第2の態様に係る好ましい容器の断面図を示している。この好ましい包装容器は、内部のガラス管がバイアルの底に堅固に鋳込まれている標準的な2R型のガラスバイアルからなる(一成分用ガラスバイアル)。このガラス管により、(Ti固定具のような)インプラントを上下逆の状態でコーティングするためのマイクロベッセルが形成される。前記バイアルは、熱処理によって当該ガラスに焼付けられた医療グレードのシリコーンエマルションを用い、本発明に従ってシリコーン処理されている。
【0102】
図4は、本発明の第2の態様に係る容器のさらに別の例を示している。この容器は、標準的な2Rガラスバイアルと、標準的なブロモブチル凍結乾燥用ストッパーと、前記バイアル内に配置された、熱シリコーン処理されたマイクロガラスカートリッジと、前記カートリッジ用の可撓性プラスチックホルダー(PE)を備えている。前記バイアルは、アルミニウムキャップ(図示せず)を圧着することによって封止することが好ましい。
【0103】
カートリッジは、熱処理によってガラスに焼付けられた、医療グレードのシリコーンエマルションを用いてシリコーン処理されている(4.3章のプロセスも参照)。バイアルは、洗浄され、シリコーンエマルションを用いてシリコーン処理されている。焼付けシリコーン層を形成し、かつ、前記バイアルを殺菌するための熱硬化は、250℃以上の温度で行われる。プラスチックホルダーは、手作業でカートリッジに取り付けられ、バイアル内に配置される。
【0104】
図5は、コーティングを施すデバイスを直立した状態(左図)および上下逆の状態(右図)で収容する容器のさらに別の容器デザインを概略的に示している。いずれの代替例においても、容器の形状は、インプラントの形状に適合するものとされており、これにより、有効なコーティングを確実に行える。上下逆の配置でのコーティングによれば、固定具の表面により均一なタンパク質層を形成できることが実験によってわかっている。これは、前記デバイスの複雑な幾何学的形状と、圧力を低下させる際に生じる気泡によりコーティングの欠陥が生じる可能性があるという事実に起因する。固定具が直立した状態にある場合、前記固定具のボルト頭にこれらの気泡が容易に捕捉されるが、前記固定具が上下逆に配置されていれば、これらの気泡をカートリッジから逃がすことができる。
【0105】
図6は、本発明の第1の態様に係る無菌プロセスに適合させたコーティング方法を、製造フローチャートで示している。第1の工程、すなわち、調合工程において、バルクタンパク質溶液と賦形剤とが混合される。その後、殺菌濾過が行われる。これは、フィルターユニットを用いて行われる。前記ガラスバイアル、すなわち、前記容器を、まず洗浄してシリコーン処理し、その後、加熱殺菌し、最後に、充填ステーションに配置する。充填ステーションにおいて、例えば、マイクロピストンポンプを用いて、前記溶液を前記容器に充填する。これに続く取り上げ/配置ステーション(pick-and-place station)において、すなわち加熱殺菌された固定具が、コーティング材料の溶液を含有する容器内に配置される。続いて、前記容器はストッパー取付けステーションへと送られ、高圧滅菌した凍結乾燥用ストッパーによって部分的に閉塞される。次に、この組立品を凍結乾燥装置に装填し、当該凍結乾燥装置内にて乾燥およびそれに続く最終的なストッパー取付け処理が行われる。圧着ステーションにおいて、前記容器を、圧着キャップで封止する。最終の工程は、ラベル付けおよび出荷のための二次的パッケージングを含む。
【0106】
ゴム製の部品、すなわち、凍結乾燥用ストッパーは、標準型の凍結乾燥用ストッパーである。前記バイアルは、はね上げて引き剥がす(Flip-Tear up)標準型の圧着キャップで封止されることが好ましい。
【0107】
図7は、rhGDF−5でコーティングされたチタンインプラント(使用したコーティング溶液は、rhGDF−5の50mM酢酸溶液、および10mMメチオニンを添加したrhGDF−5の50mM酢酸溶液)におけるタンパク質分解を、RP−HPLCによって定量化した結果を示している。出発物質と比較すると、観察されるタンパク質分解の増加はごくわずかである。これは、本発明のコーティング方法の実用可能性を示している。
【0108】
図8は、異なるコーティング溶液(10mM HCl(白色の棒)と50mM酢酸(黒色の棒))中の2種類のタンパク質溶液(rhGDF−5)(それぞれについて、メチオニンを添加したものと添加しなかったものを準備)に関し、コーティングを施すインプラントに7時間まで接触させた場合における安定性を示している。データは、前記製剤を前記コーティングプロセスに適合させた場合(10mMメチオニンを添加した50mM酢酸)には、タンパク質分解を回避することが可能であることを示している。さらに、この実験は、コーティング溶液の安定性が一定の製品品質を確保するための前提条件となる意図した大規模な製造プロセスに関する構想の第1の根拠である。A=実験開始時のGDF−5溶液;B=7時間経過後のGDF−5溶液;C=GDF−5溶液+TiU固定具;D=7時間経過後のGDF−5溶液+メチオニン;E=7時間経過後のGDF−5溶液+メチオニン+TiU
図9は、シリコーン処理された容器をコーティングに用いることの効果を示している。図9に示す取得データは、容器とインプラントとの間におけるタンパク質分布に関する利点をはっきりと示している。
【0109】
非処理の容器においては、30%を超えるrhGDF−5が容器内に残存しているが、この量は、シリコーン処理された容器を使用すれば、5%にまで大幅に低減できる。この効果は、絶対的なrhGDF−5充填量とはほぼ無関係であり、2種類の異なるタンパク質量(固定具1個当たり、34μgと121.5μg)について示しているように、再現可能である。
【0110】
図10は、大気圧で乾燥させたrhGDF−5の分布を示している。泡の形成を回避するため、陰圧をかけずに前記インプラントを乾燥させる第1の実験を行った。したがって、乾燥は、極冷アイスコンデンサ上に水を凝結させることのみによって行われた。図10はさらに、インプラント1個当たりコーティング適用量(coating dosage)を298μgのrhGDF−5まで増加させた場合であっても、前記容器と前記インプラントとの間におけるタンパク質分布は、前記インプラント上において依然としてほぼ定量的であることを示している。これらの知見は、タンパク質分布がコーティング適用量とは無関係であることを実証しており、また、このことが本発明のコーティング方法のさらなる利点である。
【0111】
図11は、上述のように乾燥させた固定具のそれぞれに関する蛍光分析結果を示している。写真から、固定具のヘッド部分(rhGDF−5が明らかに濃縮されている)と下部との間において、タンパク質の分離の程度が著しく高いことが見て取れる。興味深いことに、コーティングは、各位置の半径全体にわたって比較的均一であるように見える。
【0112】
図12は、インプラント表面に吸着されたrhGDF−5の均一な分布を、乾燥条件を最適化した後に乾燥させた固定具の蛍光染色により示している。コーティング条件を最適化するため、タンパク質分布に影響を与えるいくつかのパラメータを変更した。
・圧力:微細構造の固定具表面の空洞内部まで完全に湿潤できるように、一定圧力からパルス陰圧(pulsed vacuum)へと変更した。
・容器内の固定具を、直立状態の配置対上下逆の配置とした。これは、前記固定具の円錐形状により、より容易に気泡を容器から逃がすことができるためである。
・容器の形状を変更した。
【0113】
写真は、上下逆の配置で乾燥させた固定具は、前記固定具のテーパー部分において若干タンパク質が集中してはいるが、半径方向に対称性を示す(radial symmetric)有利なコーティングを有することを実証している。
【0114】
図13は、上述のrhGDF−5のコーティングに用いられた多孔性のチタンインプラント表面のSEM写真を示している(図A:倍率100倍、図B:倍率1000倍)。
【実施例1】
【0115】
RP−HPLCによる溶液中のGDF−5の定量
GDF−5の含有量を、逆相(RP−)HPLC分析によって測定した。試料のアリコートを、Poros C8−18カラム(R2/10、2.1* 30mm、アプライドバイオシステム社(Applied Biosystems))を用いて分析した。0.1%ギ酸を含む21%アセトニトリル(溶媒A)および0.1%ギ酸を含む84%アセトニトリル(溶媒B)を、流速0.4ml/minで溶媒として用いた。220nmにおける吸光度を測定することにより、溶出プロフィルを記録した。GDF−5の量を、220nmにおけるピーク面積から、検量線を用いて算出した。
【実施例2】
【0116】
固定化されたタンパク質の抽出と定量
コーティングされたデバイスを、まず、10mmol/lのHCl中にて室温で3時間インキュベートすることにより、タンパク質を抽出した。PBS試料をpH2に調整した後、前記抽出された骨成長因子を含有するHCl溶液を、RP−HPLCにより、実施例1に記載の方法で分析した。
【実施例3】
【0117】
抽出したタンパク質の化学修飾の測定
化学修飾量、すなわち、抽出したタンパク質を含有する溶液における骨成長因子の酸化を、RP−HPLCにより求めた。前記試料を、0.15%TFAと20%アセトニトリルで平衡させたVydak C8−18カラム(2×250mM)に供する。前記カラムを洗浄した後、0.1%TFAと、20%〜84%のアセトニトリル(流速:0.3ml/min)の段階的勾配物との混合物で、骨成長因子の溶出が起こる。220nmにおける吸収を測定することにより、前記溶出が観察される。総ピーク面積に対する修飾種のピーク面積の比によって、定量が行われる。
【実施例4】
【0118】
蛍光顕微鏡検査によるチタン表面における骨成長因子コーティングの均一性の測定
タンパク質に対する蛍光マーカーを用い、チタンインプラント上におけるrhGDF−5のコーティングの均一性を調査した。測定は、蛍光顕微鏡検査によって行った。
【0119】
固定化したタンパク質の蛍光染色
コーティングを施したデバイスを、実施例5に記載の方法によって作成した。染色のため、Alexa Fluor(商標)488の10mmol/l溶液2.3μlを、0.15MのNaHCO3溶液に1ml添加した。前記インプラントを、前記蛍光染料の混合物1ml中で、室温において暗所で4時間インキュベートした。タンパク質と蛍光物質との比は、タンパク質:蛍光物質=1:10であった。ブランクとして使用したインプラントは、20分間だけインキュベートした。インキュベート期間の終了後、前記インプラントを脱塩水で十分に洗浄し、真空下において暗所で15分間乾燥させた。
【0120】
前記蛍光シグナルを、蛍光顕微鏡検査によって検出し、イメージング用ソフトウェアを用いて記録した。
【0121】
図11および12において、rhGDF−5の分布が、蛍光顕微鏡検査によってはっきりと確認できる。これは、蛍光マーカーがタンパク質に結合していることを意味している。前記溶媒の影響を除去するため、rhGDF−5でコーティングすることなく、蛍光マーカーであるAlexa Fluor(商標)中でインキュベートしたインプラントも作成した(データは示していない)。
【実施例5】
【0122】
rhGDF−5によるチタンインプラントのコーティング
この実施例の目的は、このコーティング方法の実用可能性を実証することであった。より詳細には、抗酸化防腐賦形剤としてのメチオニンが、rhGDF−5の分解率に対して有益な効果を及ぼすかどうかについての試験を行った。
【0123】
2つの固定具をそれぞれ備えた2種類の異なる実験機材を用い、コーティング試験を行った。第1の機材においては、新たに調製したrhGDF−5の50mM酢酸溶液を用いて試験を行った。第2の機材においては、メチオニンをさらに含有するrhGDF−5の50mM酢酸コーティング溶液を用いて試験を行い、酸化率を最小限に抑えられる可能性を評価した。試験を行ったコーティング機材の概要を表1に示している。試料は全て、約−80℃に設定したアイスコンデンサを用い、凍結乾燥機内において、約66mbarで4時間乾燥させた。凍結乾燥棚は、常に約20℃の周囲温度に保たれ、よって、凍結や凍結乾燥は起こらなかった。前記溶媒を蒸発させ、前記溶媒の蒸気を前記極冷アイスコンデンサで凝結させることにより、有効な乾燥が行われた。
【0124】
【表1】
【0125】
(結果)
前記2種類の実験で得られたrhGDF−5の分解に関する知見を、図7に要約している。分解の増加を、実施例2に記載の方法によって測定した。
【0126】
メチオニンを添加したコーティング溶液と、添加しなかったコーティング溶液とを比較すると、驚くべきことに、rhGDF−5に関しては、分解物の生成に著しい差はないことがわかる。いずれの場合においても、若干のタンパク質分解の増加が観察されている(2%未満)。このことは、酢酸の安定化効果によって説明できるが、酢酸は、遊離基捕捉剤として作用し、これにより短期的な保護作用物質として働いている可能性がある。しかしながら、メチオニンによる影響がないという現象は、小規模な製造における理想的な条件下に限られる。大規模な製造を設定し、製造工程において、例えば、7時間という長い保持時間が避けられない実施例7においては、メチオニンの使用により、タンパク質分解の増加を回避することが可能である。
【0127】
要約すると、これらの結果は、rhGDF−5による金属インプラント表面のコーティングが成功したことを実証している。さらに、等温乾燥方法に関する構想の根拠も実証された。
【実施例6】
【0128】
実験室規模で手作業で行う、骨成長因子によるチタンまたはチタン合金のコーティング方法
コーティング処理は、酸素を除去するため、不活性ガス雰囲気下で行われる。これらの条件を維持するため、チャンバが使用される。前記チャンバは、不活性ガス(例えば、N2ガス)が絶え間なく流れる密閉された空間からなる。前記チャンバ内において、若干過剰な圧力が保たれている。コーティング処理に必要な材料が、気密通路を通して前記チャンバへと搬送される。前記チャンバにより、手作業でのコーティング処理が可能となる。前記コーティング処理の規定と画一化のため、前記チャンバ内の相対湿度を監視して調整する。
(コーティング)
チタンシートを清浄化し、脱塩水で洗浄して乾燥させた。前記チタンシートを、60μgのrhGDF−5でコーティングした。各シートを皿内に水平に配置し、前記金属シートの片側にrhGDF−5溶液を塗布した。塗布は、上述のように、チャンバ内においてN2ガス雰囲気下で、0℃〜4℃の温度で行った。塗布後、前記シートを、各条件で30分間真空下で乾燥させた。
(抽出)
生理条件に近い条件を模するため、まず、rhGDF−5をPBS中でインキュベートした。試料をほぼ無酸素状態に保つため、前記試料のそれぞれに対して、前記PBS溶液をN2ガスで飽和させるという処理を行った。
【0129】
PBS中でのインキュベートの後、前記シートを10mmol/lのHCl内にて、各温度で3時間インキュベートした。抽出溶液中のrhGDF−5を、RP−HPLC(実施例1参照)によって定量化した。rhGDF−5の酸化量も、RP−HPLCによって求めた(実施例2参照)。
【0130】
上述の方法でコーティングと抽出を行った試料と比較するため、同一の処理を、室温において酸素雰囲気下で行った。
【0131】
【表2】
【0132】
前記実験において試験したパラメータは、前記チタンシートからの抽出後における酸化rhGDF−5の量に影響を及ぼす。空気中の酸素の存在下において室温でコーティングされた試料は、表2に示すように、酸化rhGDF−5量が10.0%±1.6%である。
【0133】
N2ガス雰囲気下で4℃で処理された試料は、抽出後における酸化rhGDF−5量が5.6%±0.6%であった。、N2ガス雰囲気下で4℃で処理された試料の酸化rhGDF−5量は、rhGDF−5バルク溶液のもの(4.7%±0%)と比べて、著しく相違してはいなかった。
【実施例7】
【0134】
工業規模のプロセスの評価
以下の実験は、シリコーン処理された収容容器を用いて行う、コーティングされたインプラントの工業規模での製造用に開発されたコーティング方法の適性を実証している。
【0135】
第1の工程において、rhGDF−5バルク溶液から、メチオニンを添加したものと添加していないものという2種類の異なる酸性製剤を調製した。前記製剤について、シリコーン処理された収容容器中での製造における実用可能性と安定性を試験した。チタン固定具によって生じた分解を特定して定量化するため、全ての製剤について、シリコーン処理された収容容器に充填された溶液への固定具の添加を行った場合と行っていない場合に関して試験を行った。実験機材の概要を、下記表3に示している。
【0136】
工業規模の製造をシミュレートするため、前記溶液を、通常の空気雰囲気(最悪の場合を想定)において、23℃で7時間インキュベートした。その後、この結果起こったタンパク質分解の程度を、RP−HPLC分析によって定量化した。
【0137】
【表3】
【0138】
(結果)
得られたRP−HPLCデータを、図8に示している。10mM HCl中のrhGDF−5製剤に関するデータ(赤色の棒)は、保存時間が7時間を超えた時点で既に、rhGDF−5分解物の量が、当初の比率である4.8%から7.8%まで増加するという影響が見られたことを示している。チタン固定具の存在下では、前記値は、さらに9.3%まで上昇した。
【0139】
メチオニンを含有する溶液では、完全に異なる結果が得られる。前記分析は、この賦形剤がrhGDF−5の分解率に対し、明らかに有益な効果を及ぼしたことを示している。前記溶液単独または前記チタン固定具を含有する溶液のいずれにおいても、酸化/脱アミドの著しい増加は見られない。
【0140】
同じく調査を行った50mM酢酸中のrhGDF−5製剤においても、非常によく似た結果が得られた。初期値は5.2%であり、10mM HCl中のバルク薬剤rhGDF−5溶液(4.8%)と比べて若干高かったものの、その他の測定値は全て著しく低かった。
(結論)
前記データは、シリコーン処理された収容容器中での用途に関し、HCl中の製剤と比べて、酢酸中のrhGDF−5製剤の安定性が向上していたことを実証している。調査を行ったあらゆる処理パラメータの中でも、前記酢酸製剤の分解率は、HCl中の標準的な製剤の対応値と比べて著しく低い。さらにこの実験は、シリコーン処理された収容容器中で使用するように設計された製剤におけるrhGDF−5の分解を防止するという、メチオニンの有利な効果をはっきりと実証している。
【0141】
この実験の結果、プロセシングと安定性に関して最適化されたrhGDF−5製剤は、rhGDF−5の50mM酢酸/10mMメチオニン製剤であることがわかった。さらに、この実験は、意図した大規模な製造プロセスに関する構想の第1の根拠である。
【実施例8】
【0142】
シリコーン処理された収容容器を使用してrhGDF−5でコーティングされたインプラントの適用量整合性(dosage conformity)
この実施例の主たる目的は、インプラント表面とシリコーン処理された収容容器との間におけるrhGDF−5の分布に関し、特に、再現性および適用量整合性についての詳細情報を得ることであった。さらに、異なるコーティング密度(すなわち、固定具1個当たりのタンパク質適用量)の実用可能性も試験すべきである。
【0143】
シリコーン処理された収容容器とチタンインプラントの間で起こるrhGDF−5の制御された付着について、前記インプラント上のタンパク質の量および前記シリコーン処理された収容容器内のタンパク質残存量の定量化によって分析した。制御された付着に関する疑問を検討するため、コーティング溶液中での濃度が異なるrhGDF−5(インプラント1個当たり、34μg、122μg、298μg)を用いて実験を行った。この方法を用いてコーティングされたインプラントの適用量整合性を統計的に評価するため、各適用量でのコーティングを、6個の固定具について行った。その後、前記インプラントおよび対応収容容器について、rhGDF−5量とタンパク質分解物に関する分析を別個に行った。前記収容容器のシリコーン処理の重要性を評価するため、シリコーン処理していない収容容器を使用した別個の実験により、rhGDF−5の分布に関する影響について、さらなる試験を行った。
(結果)
シリコーン処理された収容容器をコーティングに用いる必要性に関し、図8および図9に示す取得データは、収容容器とインプラントとの間におけるタンパク質分布に関する利点をはっきりと示している。非処理の収容容器においては、30%を超えるrhGDF−5がバイアル内に残存しているが、この量は、シリコーン処理された収容容器を使用すれば、5%にまで大幅に低減できる。この効果は、絶対的なrhGDF−5充填量とはほぼ無関係であり、調査した全ての適用量(固定具1個当たり、34μg、121.5μg、298μg)に関して再現可能である。
【0144】
適用量整合性に関する統計分析を、表4にまとめている。使用した収容容器はハンドメイドであり、寸法が異なっているにもかかわらず、適用量の整合性は、信頼性があるものと思われる。
【0145】
【表4】
【0146】
興味深いことに、シリコーン処理された収容容器が、rhGDF−5分解に及ぼすさらなる有益な効果を観察することができる。前記4種類のコーティング機材について測定されたrhGDF−5分解を、表5にまとめている。非処理の収容容器とシリコーン処理された収容容器(コーティング適用量は同一)とを比較すると、シリコーン処理された収容容器の方が、rhGDF−5分解が約1%高いことがわかる。
【0147】
【表5】
【0148】
さらに、前記データは、コーティング適用量の増加に伴い、rhGDF−5分解のパーセンテージは、インプラント1個当たりの適用量が34μgである場合の6.6%から、インプラント1個当たりの適用量が298μgである場合の4.8%まで抑制されることを示している。前記コーティング溶液の既知の初期分解量に基づき、前記コーティング処理によって起こったrhGDF−5分解の絶対量を算出したところ、シリコーン処理された収容容器では各インプラントにつき約0.5μgであり、コーティング適用量とは無関係であった。非処理の収容容器においては、この値は約0.9μgと2倍近かった。
(結論)
提示したデータは、シリコーン処理された収容容器を使用することにより、インプラントと収容容器との間におけるタンパク質分布および適用量整合性に関し、再現可能なrhGDF−5のコーティングが可能であることを示している。
【実施例9】
【0149】
蛍光顕微鏡検査による、rhGDF−5コーティングを施したインプラントにおける均一な分布の測定
RP−HPLCデータでは、インプラント表面におけるコーティングの均一性に関する情報を観察することができないため、蛍光顕微鏡検査を使用し、インプラント表面におけるタンパク質分布に関する詳細な情報を得た。
【0150】
rhGDF−5コーティングの均一性を、実施例4に記載のように、蛍光顕微鏡を使用して分析した。最初に分析した試料は、上述の実験8で得た、298μgのrhGDF−5によってコーティングされたインプラントであった。
【0151】
考えられるタンパク質コーティングの不均一性の原因となるパラメータを特定するため、乾燥プロセスの綿密な目視検査を行った。この目的のため、全プロセスをデジタルカメラで記録した。これらの結果に基づき、凍結乾燥機内の圧力を低下させる際、インプラントの多孔性表面(図13参照)から気泡が生じる場合があることがわかった。
【0152】
コーティング条件を最適化するためのさらなる試みとして、タンパク質分布に影響を与えるいくつかのパラメータを変更した。
・圧力:インプラント表面の細孔内部まで完全に湿潤できるように、陰圧を、一定圧力レベルから設計されたパルス状圧力プロファイルへと変更した。
・容器内のインプラントを、直立状態の配置対上下逆の配置とした。これは、前記インプラントの円錐形状により、より容易に気泡を容器から逃がすことができるためである。
・容器の形状を変更した。
【0153】
容器内におけるインプラントの両配置、ならびに最適化した乾燥パラメータに関する試験結果を、図11に示している。写真は、上下逆の配置で乾燥させたインプラントは、前記インプラントのテーパー部分において若干タンパク質が集中してはいるが、半径方向に対称性を示す有利なコーティングを有することを実証している。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】図1は、本発明の第1の態様に係るコーティング方法を、チタンに関して概略的に示している。
【図2】図2は、本発明の第2の態様に係る好ましい容器の断面図を示している。
【図3a】図3は、本発明の第2の態様に係る容器のさらに別の例を示している。
【図3b】図3は、本発明の第2の態様に係る容器のさらに別の例を示している。
【図4】図4は、本発明の第2の態様に係る容器のさらに別の例を示している。
【図5】図5は、コーティングを施すデバイスを収容した容器を概略的に示している。デバイス直立(左)および上下逆(右)
【図6】図6は、本発明の第1の態様に係る無菌プロセスに適合させたコーティング方法を、製造フローチャートで示している。
【図7】図7は、タンパク質の安定性に対するメチオニンの保護効果を示している。
【図8】図8は、異なるrhGDF−5製剤(メチオニンを添加したものと添加していないもの)のRP−HPLC分析によって得られた、rhGDF−5の安定性に対するメチオニンの保護効果を示している。TiU=TiUite
【図9】図9は、(RP−HPLC分析)第1の態様によって得られた、シリコーン処理していない容器と、シリコーン処理した容器が、タンパク質分布(黒色の棒は、インプラント上のタンパク質含有量を示し、白色の棒は、容器における損失を示す)およびタンパク質分解の低減に及ぼす効果を示している。TiU=TiUite、ICC=浸漬コーティング用カートリッジ
【図10】図10は、チタンインプラントに最大rhGDF−5充填量でコーティングされたrhGDF−5の分布と分解(RP−HPLC分析による)を示している。ICC=浸漬コーティング用カートリッジ
【図11】図11は、最適化されていない条件下において大気圧で乾燥させたrhGDF−5の分布を、蛍光染色を用いて示している。
【図12】図12は、インプラント表面に吸着されたrhGDF−5の均一な分布を、乾燥条件を最適化した後に乾燥させた固定具の蛍光染色により示している。
【図13】図13は、多孔性のインプラント表面のSEM写真を示している(図A:倍率100倍、図B:倍率1000倍)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスを物質でコーティングする方法であり、
(a)前記デバイスを、前記物質の溶液と接触させる工程と、
(b)前記デバイスを、前記溶液と接触させた状態で乾燥させる工程とを備えた方法。
【請求項2】
前記物質の溶液から揮発成分を除去する工程をさらに備えた請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記除去工程が、前記工程(b)の前、前記工程(b)と同時、または前記工程(b)の後に行われる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記物質が、薬学的に活性な物質である請求項1、2、または3に記載の方法。
【請求項5】
前記薬学的に活性な物質が、タンパク質、ペプチド、多糖、糖脂質または小分子である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記薬学的に活性な物質が、無機または有機生体吸収性材料に固定化されている請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記薬学的に活性な物質が、溶解骨誘導タンパク質(dissolved osteoinductive protein)である請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記物質が、活性でない成分を含む請求項1、2、または3に記載の方法。
【請求項9】
前記物質が、リン酸カルシウムを含む請求項1、2、または3に記載の方法。
【請求項10】
前記乾燥工程が、等温乾燥を含む請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記デバイスのコーティングが、前記デバイスがその包装容器内に収容されている間に行われる請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記溶液が、水溶液または有機溶媒である請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記溶液が、酸性水溶液である請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記溶液が、酸化防止剤を含有する請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記酸化防止剤が、メチオニンまたはその誘導体である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記デバイスが、金属または金属合金製であり、好ましくは、チタンまたはチタン合金製である請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記デバイスが、歯科インプラントまたは冠動脈ステントである請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記工程(a)が、
(a1)前記デバイス用の包装容器を準備することと、
(a2)前記容器に前記コーティング溶液を充填することと、
(a3)前記コーティング溶液を充填した前記容器に前記デバイスを入れることとを含み、
前記工程(a2)と(a3)の順序は入れ替え可能である請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
(A)前記容器の内部表面に疎水性材料を塗布する工程と、
(B)塗布した前記材料を熱硬化させ、前記容器の内部表面に焼付け層(baked-in layer)を形成する工程をさらに備え、
前記コーティングは、前記容器と前記デバイスとの間における、前記デバイスにコーティングされる物質の分配係数に影響を与える請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記疎水性材料が、シリコーンまたはPTFEである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記工程(A)には、シリコーンエマルションを用いて前記内部表面をシリコーン処理することが含まれる請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記包装容器が、コーティングが施される前記デバイスを収容するための収容室を備え、前記収容室が、前記デバイスの大きさおよび形状に適合する大きさおよび形状とされている請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記収容室の内部表面にコーティングが施されている請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記工程(b)の前に、気泡を除去するために陰圧をかける工程をさらに備えた請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記工程(b)が、周囲温度において約100hPaで行われる請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記工程(b)が、アイスコンデンサを用いて行われる請求項1〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記容器を真空化し、窒素を用いて容器内を排気し、前記容器を窒素下で閉塞する工程をさらに備えた請求項18〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
デバイス用の包装容器であり、前記デバイスのコーティングが直接前記包装容器内で行えるように構成された包装容器。
【請求項29】
前記デバイスの大きさおよび形状に適合する大きさおよび形状とされている請求項28に記載の包装容器。
【請求項30】
前記包装容器の内部表面にコーティングが施されている請求項28または29に記載の包装容器。
【請求項31】
前記包装容器の内部表面が、不活性な、駆散性(疎水性/あるいは親水性)の材料の層でコーティングされている請求項30に記載の包装容器。
【請求項32】
コーティングが施される前記デバイスを収容するための収容室を備え、前記収容室が、前記デバイスの大きさおよび形状に適合する大きさおよび形状とされている請求項28に記載の包装容器。
【請求項33】
前記収容室の内部表面にコーティングが施されている請求項32に記載の包装容器。
【請求項34】
前記収容室の内部表面が、不活性な、駆散性(疎水性/あるいは親水性)の材料の層でコーティングされている請求項33に記載の包装容器。
【請求項35】
前記疎水性材料が、シリコーンである請求項31または34に記載の包装容器。
【請求項36】
前記疎水性材料が、PTFEである請求項31または34に記載の包装容器。
【請求項37】
前記収容室が、容器筐体内に同軸に配置されている請求項32〜36のいずれかに記載の包装容器。
【請求項38】
前記容器筐体は、前記デバイスと前記コーティング物質とを受け入れるための開口と、前記開口の反対側に位置する底部とを備え、
前記収容室は、前記デバイスと前記コーティング物質とを受け入れるための開口と、前記開口の反対側に位置する底部とを備え、
前記筐体の開口と前記収容室の開口とが互いに位置合わせされており、
前記収容室の底部が、前記筐体の底部に取り付けられている請求項37に記載の包装容器。
【請求項39】
前記収容室の開口部が、前記筐体の開口部から離間している請求項38に記載の包装容器。
【請求項40】
ガラス製である請求項28〜39のいずれかに記載の包装容器。
【請求項41】
物質によってコーティングされるデバイス用、好ましくはインプラント用の包装容器の内部表面をコーティングする方法であり、
(A)前記容器の内部表面に疎水性材料を塗布する工程と、
(B)塗布した前記材料を熱硬化させ、前記容器の内部表面に焼付け層を形成する工程を備え、
前記コーティングは、前記容器と前記デバイスとの間における、前記デバイスにコーティングされる物質の分配係数に影響を与える方法。
【請求項42】
前記疎水性材料が、シリコーンまたはPTFEである請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記工程(A)には、シリコーンエマルションを用いて前記内部表面をシリコーン処理することが含まれる請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
請求項1〜27のいずれかに記載の方法によって得られるコーティングされたデバイス。
【請求項45】
前記デバイスが、インプラントである請求項44に記載のコーティングされたデバイス。
【請求項46】
前記インプラントが、歯科インプラントである請求項45に記載のコーティングされたデバイス。
【請求項47】
前記インプラントが、ステント、釘、ケージ、ねじ、またはプレートのいずれかである請求項45に記載のコーティングされたデバイス。
【請求項48】
請求項1〜27のいずれかに記載されたデバイスのコーティング方法の、デバイス上におけるコーティングの分布の均一性を向上させるための使用。
【請求項49】
請求項41〜43のいずれかに記載された包装容器のコーティング方法の、前記容器と前記デバイスの間における、前記デバイスにコーティングされる物質の分配係数を向上および/または制御するための使用。
【請求項50】
請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法によって得られるデバイスを備えたキット。
【請求項1】
デバイスを物質でコーティングする方法であり、
(a)前記デバイスを、前記物質の溶液と接触させる工程と、
(b)前記デバイスを、前記溶液と接触させた状態で乾燥させる工程とを備えた方法。
【請求項2】
前記物質の溶液から揮発成分を除去する工程をさらに備えた請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記除去工程が、前記工程(b)の前、前記工程(b)と同時、または前記工程(b)の後に行われる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記物質が、薬学的に活性な物質である請求項1、2、または3に記載の方法。
【請求項5】
前記薬学的に活性な物質が、タンパク質、ペプチド、多糖、糖脂質または小分子である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記薬学的に活性な物質が、無機または有機生体吸収性材料に固定化されている請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記薬学的に活性な物質が、溶解骨誘導タンパク質(dissolved osteoinductive protein)である請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記物質が、活性でない成分を含む請求項1、2、または3に記載の方法。
【請求項9】
前記物質が、リン酸カルシウムを含む請求項1、2、または3に記載の方法。
【請求項10】
前記乾燥工程が、等温乾燥を含む請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記デバイスのコーティングが、前記デバイスがその包装容器内に収容されている間に行われる請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記溶液が、水溶液または有機溶媒である請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記溶液が、酸性水溶液である請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記溶液が、酸化防止剤を含有する請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記酸化防止剤が、メチオニンまたはその誘導体である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記デバイスが、金属または金属合金製であり、好ましくは、チタンまたはチタン合金製である請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記デバイスが、歯科インプラントまたは冠動脈ステントである請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記工程(a)が、
(a1)前記デバイス用の包装容器を準備することと、
(a2)前記容器に前記コーティング溶液を充填することと、
(a3)前記コーティング溶液を充填した前記容器に前記デバイスを入れることとを含み、
前記工程(a2)と(a3)の順序は入れ替え可能である請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
(A)前記容器の内部表面に疎水性材料を塗布する工程と、
(B)塗布した前記材料を熱硬化させ、前記容器の内部表面に焼付け層(baked-in layer)を形成する工程をさらに備え、
前記コーティングは、前記容器と前記デバイスとの間における、前記デバイスにコーティングされる物質の分配係数に影響を与える請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記疎水性材料が、シリコーンまたはPTFEである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記工程(A)には、シリコーンエマルションを用いて前記内部表面をシリコーン処理することが含まれる請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記包装容器が、コーティングが施される前記デバイスを収容するための収容室を備え、前記収容室が、前記デバイスの大きさおよび形状に適合する大きさおよび形状とされている請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記収容室の内部表面にコーティングが施されている請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記工程(b)の前に、気泡を除去するために陰圧をかける工程をさらに備えた請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記工程(b)が、周囲温度において約100hPaで行われる請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記工程(b)が、アイスコンデンサを用いて行われる請求項1〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記容器を真空化し、窒素を用いて容器内を排気し、前記容器を窒素下で閉塞する工程をさらに備えた請求項18〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
デバイス用の包装容器であり、前記デバイスのコーティングが直接前記包装容器内で行えるように構成された包装容器。
【請求項29】
前記デバイスの大きさおよび形状に適合する大きさおよび形状とされている請求項28に記載の包装容器。
【請求項30】
前記包装容器の内部表面にコーティングが施されている請求項28または29に記載の包装容器。
【請求項31】
前記包装容器の内部表面が、不活性な、駆散性(疎水性/あるいは親水性)の材料の層でコーティングされている請求項30に記載の包装容器。
【請求項32】
コーティングが施される前記デバイスを収容するための収容室を備え、前記収容室が、前記デバイスの大きさおよび形状に適合する大きさおよび形状とされている請求項28に記載の包装容器。
【請求項33】
前記収容室の内部表面にコーティングが施されている請求項32に記載の包装容器。
【請求項34】
前記収容室の内部表面が、不活性な、駆散性(疎水性/あるいは親水性)の材料の層でコーティングされている請求項33に記載の包装容器。
【請求項35】
前記疎水性材料が、シリコーンである請求項31または34に記載の包装容器。
【請求項36】
前記疎水性材料が、PTFEである請求項31または34に記載の包装容器。
【請求項37】
前記収容室が、容器筐体内に同軸に配置されている請求項32〜36のいずれかに記載の包装容器。
【請求項38】
前記容器筐体は、前記デバイスと前記コーティング物質とを受け入れるための開口と、前記開口の反対側に位置する底部とを備え、
前記収容室は、前記デバイスと前記コーティング物質とを受け入れるための開口と、前記開口の反対側に位置する底部とを備え、
前記筐体の開口と前記収容室の開口とが互いに位置合わせされており、
前記収容室の底部が、前記筐体の底部に取り付けられている請求項37に記載の包装容器。
【請求項39】
前記収容室の開口部が、前記筐体の開口部から離間している請求項38に記載の包装容器。
【請求項40】
ガラス製である請求項28〜39のいずれかに記載の包装容器。
【請求項41】
物質によってコーティングされるデバイス用、好ましくはインプラント用の包装容器の内部表面をコーティングする方法であり、
(A)前記容器の内部表面に疎水性材料を塗布する工程と、
(B)塗布した前記材料を熱硬化させ、前記容器の内部表面に焼付け層を形成する工程を備え、
前記コーティングは、前記容器と前記デバイスとの間における、前記デバイスにコーティングされる物質の分配係数に影響を与える方法。
【請求項42】
前記疎水性材料が、シリコーンまたはPTFEである請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記工程(A)には、シリコーンエマルションを用いて前記内部表面をシリコーン処理することが含まれる請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
請求項1〜27のいずれかに記載の方法によって得られるコーティングされたデバイス。
【請求項45】
前記デバイスが、インプラントである請求項44に記載のコーティングされたデバイス。
【請求項46】
前記インプラントが、歯科インプラントである請求項45に記載のコーティングされたデバイス。
【請求項47】
前記インプラントが、ステント、釘、ケージ、ねじ、またはプレートのいずれかである請求項45に記載のコーティングされたデバイス。
【請求項48】
請求項1〜27のいずれかに記載されたデバイスのコーティング方法の、デバイス上におけるコーティングの分布の均一性を向上させるための使用。
【請求項49】
請求項41〜43のいずれかに記載された包装容器のコーティング方法の、前記容器と前記デバイスの間における、前記デバイスにコーティングされる物質の分配係数を向上および/または制御するための使用。
【請求項50】
請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法によって得られるデバイスを備えたキット。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2007−527758(P2007−527758A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502290(P2007−502290)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002506
【国際公開番号】WO2005/089829
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(506305218)サイル テクノロジー ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002506
【国際公開番号】WO2005/089829
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(506305218)サイル テクノロジー ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】
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