説明

コーティングされたナノ粒子およびそれを利用した電子素子

【課題】発光効率の高い電子素子を提供する。
【解決手段】光を受けて発光するナノ粒子と、前記ナノ粒子と異なる屈折率を有し、前記ナノ粒子の表面に形成されたコーティング物質と、を含むことを特徴とするコーティングされたナノ粒子によって、上記課題は解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子素子で発光体として使われるナノ粒子に係り、特に電子素子の発光効率を向上させるように、ナノ粒子の表面にナノ粒子より屈折率の低い物質でコーティングされたナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ナノ粒子を電子素子の発光体として使用しようとする試みが多く行われつつある。かかるナノ粒子のうちでも研究が活発なものは、化合物半導体ナノ粒子である量子ドット(QD)である。
【0003】
量子ドットは、ナノサイズの半導体物質であって、量子制限効果を表す物質である。このような量子ドットは、励起源から光を吸収してエネルギー励起状態に達すれば、該量子ドットのエネルギーバンドギャップに該当するエネルギーを放出する。したがって、量子ドットのサイズまたは物質の組成を調節すれば、該エネルギーバンドギャップを調節できて多様な光を発光できて、電子素子の発光体として利用されうる。
【0004】
特許文献1には、量子ドットをマトリックスに分散させて発光体として利用した発光ダイオードに関して開示されている。前記特許文献1には、発光ダイオードを製造するために、量子ドットの表面に置換されている有機リガンド、親和力の強い単量体および少量の触媒を量子ドットと混合した後で塗布し、熱を加えて量子ドットが分散された高分子の製造方法について開示されている。
【特許文献1】米国特許第6,501,091号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1に、量子ドットをマトリックスに分散させて発光体として利用した従来の素子において、光源からの光を発光体が吸収して外部に発光する過程を示した。
【0006】
マトリックスを通じて伝達された光源Lからの入射光Linは、ナノ粒子PとマトリックスMとの界面で一部の光は反射され(S2)、残りは、発光体であるナノ粒子Pに吸収される。このように吸収された光は、ナノ粒子のエネルギー状態を励起させて変化された光として放出される(Lout)。しかしながら、このとき、ナノ粒子PとマトリックスMとの屈折率の差によりナノ粒子から発光される光が反射されれば、発光体に再吸収されうるので、発光効率が低下する。すなわち、マトリックスMの屈折率Nと発光体であるナノ粒子Pの屈折率Nとの差により、マトリックスと発光体との界面で光の散乱が起きるので、光源エネルギーの吸収率が低下するだけでなく、発光体から放出される光がマトリックスとの界面から反射されて発光体に再吸収されて、発光効率が低下する。
【0007】
本発明の目的は、前記のような従来の技術の問題点を解決するためのものであって、損失される光を最小化して発光効率を向上させるナノ粒子および前記ナノ粒子を含む電子素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、光を受けて発光するナノ粒子と、前記ナノ粒子の表面に形成されたコーティング物質と、を含むことを特徴とするコーティングされたナノ粒子を提供する。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記コーティング物質は、前記ナノ粒子の表面に多層構造に形成され、前記多層構造の下部の屈折率が前記多層構造の上部の屈折率よりさらに高いことを特徴とする。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記コーティング物質は、前記ナノ粒子より屈折率が低いことを特徴とする。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記コーティング物質と前記ナノ粒子との屈折率の差は、0.05以上であることを特徴とする。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記ナノ粒子は、II−VI族化合物、III−V族化合物、IV−VI族化合物、IV族化合物またはこれらの混合物から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記II−VI族化合物は、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTeなどの二元素化合物、またはCdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTeなどの三元素化合物、またはCdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTeなどの四元素化合物からなる群から選択され、前記III−V族化合物は、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSbなどの二元素化合物、またはGaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNPなどの三元素化合物、またはGaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSbなどの四元素化合物からなる群から選択され、前記IV−VI族化合物は、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTeなどの二元素化合物、またはSnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTeなどの三元素化合物、またはSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTeなどの四元素化合物からなる群から選択され、前記IV族化合物は、Si、Geなどの単一元素化合物またはSiC、SiGeなどの二元素化合物からなる群から選択されることを特徴とする。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記二元素化合物、三元素化合物または四元素化合物は、均一な濃度で粒子内に存在するか、または濃度が部分的に異なる状態で粒子内に存在することを特徴とする。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記ナノ粒子は、無機蛍光体またはこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記無機蛍光体は、YBO:Ce3+,Tb3+;BaMgAl1017:Eu2+,Mn2+;(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga):Eu2+;ZnS:Cu,Al;CaMg(SiOCl:Eu2+,Mn2+;BaSiO:Eu2+;(Ba,Sr)SiO:Eu2+;Ba(Mg,Zn)Si:Eu2+;(Ba,Sr)Al:Eu2+;SrSi.2SrCl:Eu2+;(Sr,Mg,Ca)10(POCl:Eu2+;BaMgAl1017:Eu2+;BaMgAl1627:Eu2+;(Sr,Ca,Ba,Mg)P:Eu2+,Mn2+;CaLa:Ce3+;SrY:Eu2+;(Ca,Sr)S:Eu2+;SrS:Eu2+;Y:Eu3+,Bi3+;YVO:Eu3+,Bi3+;YS:Eu3+,Bi3+;YS:Eu3+からなる群から選択された少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記コーティング物質は、SiO、TiO、SnO、ZnO、ZnS、In−SnO、Alまたはこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする。
【0018】
本発明の一実施形態において、前記ナノ粒子を発光させる光は、400nmないし2400nmの波長範囲であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、コーティングされたナノ粒子を発光体として含む電子素子を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるコーティングされたナノ粒子は、光源からの光の散乱量を調節し、ナノ粒子で発生する光の反射を減らして外部に効果的に伝達できるので、該ナノ粒子を用いることにより、発光効率の高い発光体が提供され得、これを発光体として使用した電子素子は、発光効率が向上しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付された図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0022】
本発明は、本発明は、光を受けて発光するナノ粒子と、前記ナノ粒子の表面に形成されたコーティング物質と、を含むことを特徴とするコーティングされたナノ粒子を提供する。
【0023】
図3は、光源からの光を本発明のコーティングされたナノ粒子が吸収して発光し、外部に伝達される過程を示す図面であり、これをによって本発明のコーティングされたナノ粒子の効果を説明できる。
【0024】
図3に示すように、本発明の一実施形態であるコーティングされたナノ粒子は、発光体であるナノ粒子Pにナノ粒子より低い屈折率を有する物質Cがコーティングされている。光源Lからの入射光Linが照射されれば、空気の屈折率とマトリックスMの屈折率N1との差により、マトリックスMの表面で入射光Linが一部反射され(S1)て損失し、マトリックスMを通過した光は、マトリックスMとコーティング物質Cとの界面で、マトリックスMの屈折率N1とコーティング物質Cの屈折率N2との差により一部の光が散乱される(S2)。コーティング物質Cを通過した光は、再びコーティング物質Cとナノ粒子Pとの界面で、コーティング物質Cの屈折率N2とナノ粒子Pの屈折率N3との差により一部の光が散乱され(S3)、残りの光がナノ粒子Pに吸収される。吸収された光は、ナノ粒子Pのエネルギー励起過程を経て、ナノ粒子Pによりエネルギーが変換されて異なる波長の光として発光する。発光した光は、ナノ粒子Pとコーティング物質Cとの屈折率の差、およびコーティング物質CとマトリックスMとの屈折率の差により、それぞれの界面で一部の光が反射され(r2、r1)、反射された光は、再びナノ粒子により再吸収されうる。反射されていない残りの光である出射光Loutは、外部から観察でき、最終的に発光素子の効率を決定する。
【0025】
本発明の一実施形態によるコーティングされたナノ粒子は、ナノ粒子の表面に前記ナノ粒子より屈折率の低いコーティング物質Cが存在する。したがって、屈折率がナノ粒子に比べて顕著に低いマトリックスの屈折率N1とナノ粒子の屈折率N3との差により、界面で散乱あるいは反射されて再吸収される光量が減少されうる。また、コーティング物質は、ナノ粒子の表面をさらに安定化させる効果、ならびに発光効率および寿命を向上させる効果を与える。
【0026】
本発明において、前記コーティング物質の屈折率N2は、発光体であるナノ粒子の屈折率N3より低いことが望ましく、マトリックスの屈折率N1より高いことが望ましい。
【0027】
本発明のナノ粒子は、光源の光を受けて発光する特性を有する粒子ならば特に制限されない。このようなナノ粒子としては、例えば化合物半導体量子ドットおよび無機蛍光体などが挙げられる。
【0028】
量子ドットは、好ましくは、II−VI族化合物、III−V族化合物、IV−VI族化合物、IV族化合物またはこれらの混合物から選択される化合物から形成されるものであって、さらに詳しくは、II−VI族化合物は、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTeなどの二元素化合物、またはCdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTeなどの三元素化合物、またはCdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTeなどの四元素化合物からなる群から選択されることが好ましく、III−V族化合物は、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSbなどの二元素化合物、またはGaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNPなどの三元素化合物、またはGaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSbなどの四元素化合物からなる群から選択されることが好ましく、IV−VI族化合物は、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTeなどの二元素化合物、またはSnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTeなどの三元素化合物、またはSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTeなどの四元素化合物からなる群から選択されることが好ましく、IV族化合物は、Si、Geなどの単一元素化合物またはSiC、SiGeなどの二元素化合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0029】
前記二元素化合物、三元素化合物または四元素化合物の結晶構造は、部分的に分けられて同じ粒子内に存在するか、または合金形態に存在しうる。
【0030】
本発明で使われる無機蛍光体は、好ましくは、YBO:Ce3+,Tb3+;BaMgAl1017:Eu2+,Mn2+;(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga):Eu2+;ZnS:Cu,Al;CaMg(SiOCl:Eu2+,Mn2+;BaSiO:Eu2+;(Ba,Sr)SiO:Eu2+;Ba(Mg,Zn)Si:Eu2+;(Ba,Sr)Al:Eu2+;SrSi.2SrCl:Eu2+;(Sr,Mg,Ca)10(POCl:Eu2+;BaMgAl1017:Eu2+;BaMgAl1627:Eu2+;(Sr,Ca,Ba,Mg)P:Eu2+,Mn2+;CaLa:Ce3+;SrY:Eu2+;(Ca,Sr)S:Eu2+;SrS:Eu2+;Y:Eu3+,Bi3+;YVO:Eu3+,Bi3+;YS:Eu3+,Bi3+;YS:Eu3+およびこれらの混合物からなる群から選択された少なくとも一つである。
【0031】
本発明のコーティングされたナノ粒子のコーティング物質の屈折率とナノ粒子の屈折率との差は、理論的に0以上であればよく、望ましくは、0.05以上であり、さらに望ましくは、0.05ないし2である。
【0032】
前記コーティング物質は、好ましくは、SiO、TiO、SnO、ZnO、ZnS、In−SnO、Al、SiC、AlNまたはこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種が使われうる。
【0033】
本発明のコーティングされたナノ粒子のコーティング物質の厚さは、特に制限されないが、望ましくは、1ないし10nmの厚さを有する。
【0034】
また、本発明のコーティングされたナノ粒子のコーティング物質は、前述した物質のなかの1つの物質から構成される層を有することができ、また、複数の被覆層から形成される多層構造を有することもできる。最外層にあるコーティング物質は最も低い屈折率を有さねばならず、内側へ行くほど屈折率の高い物質が使用されうる。このように、コーティングされたナノ粒子が様々な屈折率を有する多層構造のコーティング物質を有する場合、界面で接触している一つの物質と他の物質との屈折率の差が小さくなり、屈折率の差が小さくなれば、界面での光の散乱が効果的に抑制されうる。
【0035】
本発明に用いられるコーティングされたナノ粒子を分散させるマトリックスは、発光素子の特性に適した物質が使われ、前記コーティング物質より低い屈折率を有するものが使われる。前記マトリックスと前記コーティング物質との屈折率の差は、理論的に0以上であり、望ましくは、0.05以上である。
【0036】
本発明のマトリックスは、好ましくは、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、ガラス、カーボネート系樹脂およびこれらの混合物からなる群から選択して使われうる。
【0037】
合成されたナノ粒子の表面にコーティングする方法として、例えば、結晶面を維持しつつ結晶化させる結晶成長方法、ナノ粒子の表面にコーティング物質の前駆体に置換した後、重合反応を通じて合成する表面開始重合方法、または非結晶コーティング方法などがある。
【0038】
本発明のナノ粒子は、好ましくは、公知の量子ドットの製造方法のうち化学的な湿式合成法により製造されうる。化学的な湿式合成法によりナノサイズの量子ドットを合成するためには、窒素ガスまたはアルゴンガスのような不活性ガス雰囲気下で、適切な溶媒に界面活性剤の種類および濃度を調節して入れて、結晶構造が成長できる反応温度を維持する。そして、量子ドットの前駆体物質を混合反応溶液に注入して、量子ドットのサイズを調節するために反応時間が維持される。反応を終了して温度を下げた後、量子ドットを溶液から分離する。
【0039】
本発明の一実施形態で使われる溶媒は、例えば、炭素数6ないし22のアルキルホスフィン、炭素数6ないし22のアルキルホスフィンオキサイド、炭素数6ないし22のアルキルアミン、炭素数6ないし22のアルカン、炭素数6ないし22のアルケンまたはこれらの混合物が挙げられる。結晶成長の容易さ、および溶媒の安定性のための望ましい反応温度の範囲は、100ないし4000℃であり、さらに望ましくは、180ないし360℃である。そして、反応時間は、望ましくは、1秒ないし4時間であり、さらに望ましくは、10秒ないし3時間である。
【0040】
一方、化学的な湿式合成法により製造された量子ドットは、コロイド状態で溶液内に分散されているので、量子ドットは遠心分離を通じて溶媒から分離される。分離した量子ドットを、非溶媒であるエタノールを添加して再び遠心分離した後、沈殿を活性塩基を有する溶媒に分散させて攪拌して、量子ドットに活性塩基を置換させる。
【0041】
このように製造された置換された活性塩基を有する量子ドットにコーティング物質の前駆体が添加され、所定の時間攪拌され、量子ドットの表面にコーティング層が形成される。
【0042】
本発明で使われる前記活性塩基は、例えば、ピリジン、3−メルカプトプロピルアルコール、3−メルカプトプロピルシラン、3−アミノプロピルシランなどが挙げられる。また、本発明で使われるコーティング物質の前駆体としては、例えば、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリブトキシシラン、ケイ酸ナトリウム、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、スズブトキシド、スズ酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0043】
本発明は、上述のコーティングされたナノ粒子を発光体として含む電子素子を提供する。
【0044】
本発明の電子素子は、発光体を使用する全ての電子素子を意味するものであって、かかる電子素子としては、例えば、発光ダイオード、レーザダイオード、LCD、PDPなどが挙げられる。
【0045】
本発明の電子素子の一例として、発光ダイオードは、図8に示したように、コーティングされたナノ粒子、前記コーティングされたナノ粒子を分散するマトリックス、前記マトリックスを取り囲む成形用樹脂および光源を含んで構成されうる。
【0046】
本発明のコーティングされたナノ粒子を分散させるマトリックスは、光源から出てくる波長の範囲の光を吸収しない材質が使われ、前記コーティング物質よりさらに低い屈折率を有するものが用いられうる。マトリックスと前記コーティング物質との屈折率の差は、理論的に0以上であり、望ましくは、0.05以上である。本発明のマトリックスは、好ましくは、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、ガラス、カーボネート系樹脂およびこれらの混合物からなる群から選択して使われうる。
【0047】
本発明で使われる光源の波長は、ナノ粒子を発光させる波長ならばいずれも使われ、一例として、光源の波長は、好ましくは、400nmないし2400nmの範囲であり、このような波長の光を受けた本発明のコーティングされたナノ粒子は、400nmないし2500nmの光を発光できる。
【0048】
また、前記のような本発明の電子素子を製造するためには、本発明のコーティングされたナノ粒子をマトリックスに分散させた後、前記マトリックスを光源が発光される素子のチップ上に塗布し、120℃のオーブンで硬化させて1次塗布および硬化工程を行う。このように1次塗布されて硬化された混合物をランプ状にするために、成形できる枠内に成形用の樹脂を入れ、1次塗布および硬化工程を経たチップを浸す。再び硬化させた後、オーブンから取り出す。最後に、枠を除去すれば、量子ドット蛍光体を発光体として使用したランプ状の発光ダイオードを製造できる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、下記の実施例は、説明の目的のためのものであり、本発明が下記の実施例にのみ限定されるものではない。
【0050】
<ピリジン置換したCdSeSナノ粒子の合成>
トリオクチルアミン(TOA)16g、オレイン酸0.5gおよび酸化カドミウム0.4mmolを同時に還流コンデンサが設置された125mlのフラスコに入れ、攪拌しつつ反応温度を300℃に調節した。これと別途に、Se粉末をトリオクチルホスフィン(TOP)に溶かしてSe濃度が約0.25MであるSe−TOP錯体溶液を作り、S粉末をTOPに溶かしてS濃度が約1.0MであるS−TOP錯体溶液を作った。前記カドミウムを含む反応混合物にS−TOP錯体溶液0.9mlおよびSe−TOP錯体溶液0.1mlの混合物を速く注入し、4分ほどさらに攪拌した。反応が終結した後、反応混合物の温度を可能な限り速く下げ、非溶媒であるエタノールを添加して遠心分離を実施した。遠心分離した溶液の上澄液は捨て、沈殿をトルエンに約1質量%溶液となるように分散させた。
【0051】
このように製造されたCdSeSナノ結晶のトルエン溶液に非溶媒であるエタノールを付加して遠心分離を実施した後、沈殿をピリジンに分散させて約30分間攪拌した。攪拌後、再び非溶媒であるヘキサンを付加して遠心分離を実施し、沈殿をブタノール(屈折率:1.4)に約1質量%溶液となるように分散させた。
【0052】
このようにブタノールに分散されたCdSeS溶液の光吸収スペクトルおよび光励起発光スペクトルを図6および図7にそれぞれ示した。
【0053】
<ピリジン置換したCdSeSナノ結晶をSiOでコーティングする工程>
上述の方法で製造されたCdSeSナノ粒子のトルエン溶液に非溶媒であるエタノールを添加して、遠心分離を実施した。遠心分離された沈殿を除いた溶液の上澄液は捨て、沈殿をピリジンに分散させて約30分間常温で攪拌した。攪拌後、非溶媒であるヘキサンを添加して遠心分離を実施した。遠心分離した沈殿を再びピリジンに分散させた後、トリエトキシシラン(TEOS)0.1mLを加えて約3時間常温で攪拌し、CdSeSの表面にSiO膜を形成させた。攪拌後、非溶媒であるヘキサンを添加して遠心分離を実施した。遠心分離した溶液の上澄液を捨て、沈殿をブタノール(屈折率:1.4)に約1質量%溶液となるように分散させた。分散されたナノ結晶溶液の光吸収スペクトルおよび光励起発光スペクトルを図6および図7にそれぞれ示した。
【0054】
図6および図7は、CdSeSナノ粒子およびシリカでコーティングしたCdSeS/SiOナノ粒子の、ブタノールに分散させた溶液の光吸収スペクトルおよび光励起発光スペクトルをそれぞれ示した図面である。
【0055】
図6に示したように、CdSeSナノ粒子および本発明のCdSeS/SiOナノ粒子の吸収波長および吸光度の同一の条件下では、図7に示したように、CdSeSナノ粒子に比べて、本発明のCdSeS/SiOナノ粒子では発光強度が約1.2倍であった。これは、屈折率2.4であるCdSeS物質と屈折率1.4であるブタノール溶媒との高い屈折率差のために起きる発光効率の損失を、屈折率1.5であるSiOが中間に存在することによって減少させるためであると説明されうる。
【0056】
図4Aおよび図4Bは、それぞれ、CdSeSナノ粒子および本発明のCdSeS/SiOナノ粒子の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。図4Bに示すように、本発明のコーティングされたナノ粒子は、粒子の周辺に非晶質の薄い膜を有しているということが分かる。しかし、これに対して、図4Aに示すように、コーティングされていないナノ粒子は、非晶質の構造のない結晶構造のみが観察される。
【0057】
本発明のコーティングされたナノ粒子の成分を分析するために、エネルギー分散分光法(EDS)によって確認した結果、図5に示したように、Cd、Se、S元素以外にSi、Oが検出され、これによって、コーティングされたナノ粒子は、化合物半導体物質以外にコーティング物質であるシリカ成分を有しているということが分かった。
【0058】
本発明は、図面に示した一実施形態を参考にして説明されたが、これは、例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これから多様な変形および均等な他の実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術範囲は、特許請求の範囲の技術的思想により決まらねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、電子素子関連の技術分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】従来の技術により光源からの光を発光体が吸収して外部に発光する過程を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態により製造されたコーティングされたナノ粒子がマトリックスに分散されたことを示す概略図である。
【図3】光源からの光を本発明の一実施形態であるコーティングされたナノ粒子が吸収して外部に発光する過程を示す概略図である。
【図4A】コーティング前のナノ粒子の構造についてのTEM写真である。
【図4B】シリカでコーティングされたナノ粒子の構造についてのTEM写真である。
【図5】シリカでコーティングされたナノ粒子の成分についてのEDS分析結果を示す図面である。
【図6】コーティング前後のナノ粒子の光吸収スペクトルを示す図面である。
【図7】コーティング前後のナノ粒子の光励起発光スペクトルを示す図面である。
【図8】本発明のコーティングされたナノ粒子を用いた電子素子の概略図である。
【符号の説明】
【0061】
L 光源、
M マトリックス、
P ナノ粒子、
C コーティング物質、
in 入射光、
out 出射光、
N1、N2、N3 屈折率、
S1、S2、S3、r1、r2 反射光または散乱光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を受けて発光するナノ粒子と、
前記ナノ粒子と異なる屈折率を有し、前記ナノ粒子の表面に形成されたコーティング物質と、
を含むことを特徴とするコーティングされたナノ粒子。
【請求項2】
前記コーティング物質は、前記ナノ粒子の表面に多層構造に形成され、前記多層構造の下部の屈折率が前記多層構造の上部の屈折率よりさらに高いことを特徴とする請求項1に記載のコーティングされたナノ粒子。
【請求項3】
前記コーティング物質は、前記ナノ粒子より屈折率が低いことを特徴とする請求項1または2に記載のコーティングされたナノ粒子。
【請求項4】
前記コーティング物質と前記ナノ粒子との屈折率の差は、0.05以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティングされたナノ粒子。
【請求項5】
前記ナノ粒子は、II−VI族化合物、III−V族化合物、IV−VI族化合物、IV族化合物またはこれらの混合物から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコーティングされたナノ粒子。
【請求項6】
前記II−VI族化合物は、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTeなどの二元素化合物、またはCdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTeなどの三元素化合物、またはCdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTeなどの四元素化合物からなる群から選択され、
前記III−V族化合物は、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSbなどの二元素化合物、またはGaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNPなどの三元素化合物、またはGaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSbなどの四元素化合物からなる群から選択され、
前記IV−VI族化合物は、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTeなどの二元素化合物、またはSnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTeなどの三元素化合物、またはSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTeなどの四元素化合物からなる群から選択され、
前記IV族化合物は、Si、Geなどの単一元素化合物またはSiC、SiGeなどの二元素化合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項5に記載のコーティングされたナノ粒子。
【請求項7】
前記二元素化合物、三元素化合物または四元素化合物は、均一な濃度で粒子内に存在するか、または濃度が部分的に異なる状態で粒子内に存在することを特徴とする請求項6に記載のコーティングされたナノ粒子。
【請求項8】
前記ナノ粒子は、無機蛍光体またはこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のコーティングされたナノ粒子。
【請求項9】
前記無機蛍光体は、YBO:Ce3+,Tb3+;BaMgAl1017:Eu2+,Mn2+;(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga):Eu2+;ZnS:Cu,Al;CaMg(SiOCl:Eu2+,Mn2+;BaSiO:Eu2+;(Ba,Sr)SiO:Eu2+;Ba(Mg,Zn)Si:Eu2+;(Ba,Sr)Al:Eu2+;SrSi.2SrCl:Eu2+;(Sr,Mg,Ca)10(POCl:Eu2+;BaMgAl1017:Eu2+;BaMgAl1627:Eu2+;(Sr,Ca,Ba,Mg)P:Eu2+,Mn2+;(CaLa:Ce3+;SrY:Eu2+;(Ca,Sr)S:Eu2+;SrS:Eu2+;Y:Eu3+,Bi3+;YVO:Eu3+,Bi3+;YS:Eu3+,Bi3+;YS:Eu3+からなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項8に記載のコーティングされたナノ粒子。
【請求項10】
前記コーティング物質は、SiO、TiO、SnO、ZnO、ZnS、In−SnO、Alまたはこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のコーティングされたナノ粒子。
【請求項11】
前記ナノ粒子を発光させる光は、400nmないし2400nmの波長範囲であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のコーティングされたナノ粒子。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のコーティングされたナノ粒子を発光体として含むことを特徴とする電子素子。
【請求項13】
発光ダイオード、レーザダイオード、LCDまたはPDPのうちいずれか一つであることを特徴とする請求項12に記載の電子素子。
【請求項14】
発光体である前記コーティングされたナノ粒子と、
前記コーティングされたナノ粒子を分散させるマトリックスと、
前記マトリックスに光を照射する光源と、
を含むことを特徴とする請求項12または13に記載の電子素子。
【請求項15】
前記光源は、400nmないし2400nmの範囲の波長の光を発光することを特徴とする請求項14に記載の電子素子。
【請求項16】
前記マトリックスは、前記コーティングされたナノ粒子のコーティング物質よりさらに低い屈折率を有することを特徴とする請求項14または15に記載の電子素子。
【請求項17】
前記マトリックスと前記コーティングされたナノ粒子のコーティング物質との屈折率の差は、0.05以上であることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の電子素子。
【請求項18】
前記マトリックスは、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、ガラス、カーボネート系樹脂およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項14〜17のいずれか1項に記載の電子素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−322001(P2006−322001A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136915(P2006−136915)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】