説明

コーティング

真空ポンプのプラスチック構成要素にコーティングを形成する方法は、金属層を構成要素につける工程と、金属層を電解プラズマ酸化することによって金属層からコーティングを形成する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板にコーティングを形成する方法に関するものである。より詳細には、これに限らないが、本発明は、例えば真空ポンプで使用される加工部品に耐食性コーティングを形成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空ポンプは、半導体チップが製造中に曝されなければならない種々の環境の制御を容易にするために半導体チップの製造において使用される。前記ポンプは、典型的には鋳鉄及び鋳鋼構成要素を用いて製造され、それらの多くはポンプの最適特性を保証するために精密に設計される。プラスチックをベースとする部品も以下に説明される特定の条件下で真空ポンプの構成要素として使用される場合がある。
鉄鋳物及び鋼は、石油化学産業及び半導体産業などの広範囲の産業において使用される設備の構成要素部品の製造において長い間使用されてきた。これらの部品は安価であり、良い熱及び熱動力特性を示し、形作るのが相対的に容易である。しかしながら、半導体産業において、要求される関連した温度及び圧力の上昇とともに高い流速のプロセスガス(例えば、塩素、三塩化ホウ素、臭化水素、フッ素及び三フッ化塩素)の使用の増加は、鉄及び鋼の構成要素部品の激しい腐食を生じさせた。このような腐食は設備の故障、プロセス化学薬品の漏出及びプロセス汚染の可能性、及びプロセス効率の減少、並びに計画外のダウンタイムに関連した負担をもたらす。
【0003】
これらの問題を最小限にする目的で、利用できるより高価なアクティブプロテクションに替わるより安価なものであるため、多くの構成要素部品を不動態化により保護することが多くの産業で一般に実施されている。例えば、鉄鋳物及び鋼のアルミニウムコーティングの使用は、良い耐食性及び耐熱性を与えるために種々の産業で使用されている。さらに、金属表面に直接付けられる熱間スプレーセラミックコーティングも研磨及び高温適用において鉄及び鋼鋳物を保護するために使用されている。
また、腐食問題は鉄及び鋼部品をニッケルリッチ鉄ベース合金、モネル、インコネル又はより高いニッケル含有合金のようなより高価な材料で置き換えることによって克服できることが提案されている。しかしながら、これらの材料は高価であり、構成要素部品として使用するためのコストパフォーマンスの良い代替物ではない。
【0004】
近年、従来から使用されてきた金属構成要素部品の代替を目的として種々の産業でプラスチックベースの構成要素部品の使用が検討されている。プラスチックの広範な特性は、種々の理由で金属部品の代替として使用できることを意味する。プラスチック部品は種々の手段で製造することができ、多くの適用要求を満足するように作ることもできる。さらに、金属と比較して重量及びコストが低いことは、機械部品の製造における魅力的な代替物であることを意味する。しかしながら、半導体産業において直面する激しい腐食、酸化及び攻撃的環境に対するこれらの材料の感受性のために、半導体産業における設備での使用は制限されている。大抵のプラスチック材料は研磨粒子の存在下で容易に磨耗し、多くの炭化水素ベースのプラスチックはフッ素又は酸素ガスの存在下で自発的に燃焼する場合がある。
多くのプラスチック材料に耐磨耗性及び耐食性を与えるために多くの試みがなされ、セラミックコーティングの提供は特に人気がある。しかしながら、プラスチック基板にセラミックコーティングを付けることは、金属表面とは異なって、プラスチック表面に、付着性がよく、使用時に剥がれ落ちないセラミックコーティングを形成することは難しいために、常に容易に提供できるものではない。これは、プラスチック表面の絶縁性によるものと考えられ、スプレープロセスの際に静電荷の蓄積を生じ、スプレーセラミック粒子をはね返すように作用する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、金属又はプラスチック基板に容易に付けることができ、付着性の良い耐食性コーティングが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様において、本発明はプラスチック基板にコーティングを形成する方法を提供し、この方法は基板に金属層を付ける工程及び金属層を電解プラズマ酸化することによって金属層からコーティングを形成する工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
このように、本発明は真空ポンプのプラスチックの構成要素に耐食コーティングを形成する簡単で便利な技術を提供する。「耐食」なる用語は、コーティングが研磨粒子及びフッ素、三フッ化塩素、六フッ化タングステン、塩素、三塩化ホウ素、臭化水素、酸素などのようなガスへの暴露の結果としての磨耗及び分解に耐えることができることを意味するものと理解されるべきである。コーティングは、任意の適したバリア層形成金属又はその合金から都合よく形成できる。「バリア層形成金属」なる用語は、前記金属及びその合金(例えば、Al、Mg、Ti、Ta、Zr、Nb、Hf、Sb、W、Mo、V、Bi)を意味するものと理解されるべきであり、その表面は、コーティング層を形成するために配置される環境の元素(例えば、酸素)と自然に反応し、さらに金属表面の前記環境の反応性元素との反応を阻害する。
【0008】
電解プラズマ酸化(EPO)の技術は、いろいろな他の名前、例えば陽極プラズマ酸化(APO)、陽極スパーク酸化(ASO)、マイクロアーク酸化(MAO)によって知られる。この技術において、部分的な酸素プラズマは金属/ガス/電解質相境界で生じ、セラミック酸化物層を生成する。セラミック酸化物層の金属イオンは金属に由来し、酸素は金属表面で電解水溶液の陽極反応の際に形成される。プラズマの形成に関連した7000Kの温度で、セラミック酸化物は溶融状態で存在する。これは、溶融セラミック酸化物が金属/酸化物境界の金属表面との密接な接触を達成することができることを意味し、溶融セラミック酸化物が収縮して、細孔がほとんどない焼結セラミック酸化物層を形成するのに十分な時間を有することを意味する。しかしながら、電解質/酸化物境界で、溶融セラミック酸化物は電解液及びガス流(特に、酸素及び水蒸気)によってすばやく冷却され、多孔度が増加した酸化物セラミック層となる。
したがって、このように形成されるセラミック酸化物コーティングは3つの層又は領域によって特徴付けられる。第1の層は、金属層と金属表面を改質したコーティングとの間の移行層(transitional layer)であり、コーティングのための優れた付着力を生じる。第2の層は機能層であり、コーティングに高硬度及び耐磨耗性を与える固いクリスタライトを含む焼結セラミック酸化物を含む。第3の層は、表面層であり、機能層よりも低い硬度と高い多孔度を有する。
前述のことから明らかなように、セラミック酸化物コーティングが下層の金属層と原子的に結合し、金属層表面から形成される。これは、このようにして生成されたセラミック酸化物コーティングが外部に付けられた吹き付けられた(sprayed)セラミックコーティングから形成されるよりも下層の金属層への付着力が強いことを意味する。セラミック酸化物コーティングは、優れた表面特性(例えば、極めて高い硬度、非常に低い磨耗性、デトネーション及びキャビテーション耐性、良い耐食性及び耐熱性、高い絶縁耐力及び低い摩擦係数)を示す。さらに、プラズマによって励起されるハロゲン、ハロゲン間化合物及び他の半導体処理化学薬品からの腐食にも耐性がある。
【0009】
前述のことから明らかなように、いくつかの適用において、コーティングの外面は低多孔度によって特徴付けられる。そのような状況では、コートした基板材料からのガス放出は最小にされる。他の適用において、コーティングの外面は、不規則であり、若干の多孔度を示してもよい。極めて高い硬度、低い耐磨耗性及び良い耐食性を保証するために、このコーティングの外面は、下層の焼結セラミック酸化物層を露出させるために研磨することによって取り除かれてもよく、上述の優れた表面特性を提供する。
あるいは、コーティングの外面が若干の多孔性を示す場合、それは複合特性のオプション層の適用のためのマトリックスとして使用できる。そのような状況では、例えば複合層の形成に適した材料は、潤滑剤又は塗料を含む。当然のことながら、第2の層の外面の細孔サイズは第3の層の材料を保持することができるサイズである。そのような複合コーティングの他の例はフルオロカーボン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、二硫化モリブデン(MoS2)、黒鉛などのような潤滑剤を含み、それはコーティングの多孔性外面によって保持される。好ましくは、オプション層はコーティング上に直接形成され、コーティングがこのさらなる層の付着力についての解決方法を提供する。
1の実施態様において、金属層は基板表面に直接形成されず、すでに基板に付けられた金属層表面に形成される。例えばニッケルから形成されるこの金属層を基板表面に付けることにより、続いて金属層が堆積される表面の特性を改善することができる。さらに、ニッケル、アルミニウム及びセラミック酸化物層から形成されるコーティングは、金属基板(例えば、高速真空ポンプの製造において使用されるアルミニウム合金)に、優れた耐食性、耐摩耗性及び熱伝達能を提供する。したがって、別の態様において、本発明は金属又はプラスチック基板にコーティングを形成する方法を提供し、この方法は、第1金属層を基板に付ける工程と、第1金属層に第2金属層を付ける工程と、第2金属層を電解プラズマ酸化することによって第2金属層からコーティングを形成する工程とを含む。
【0010】
好ましくは、(第2)金属層は、100μm未満の厚さで、基板表面に(基板に応じて)直接又は間接的にバリア層形成金属又はその合金の層を堆積することによって付けられる。好ましくは、金属層は、当業者に周知の以下のいずれか1つを用いて基板表面に堆積される。(i)表面に付けられた後、液状接着剤に金属粉末をふるいかけし、又は加圧し、又は液体接着剤を箔で覆うこと、(ii)最初に堆積された金属層への電着、(iii)スパッターリング、プラズマ溶射、アーク噴霧、溶射、真空メタライジング、イオン蒸着、高速オキシ燃料吹付け(oxyfuel-spraying)、低温ガス-スプレー、これらの組合せなどのようなスプレー技術。これらの方法は、金属又はその合金の両方が下層の基板によく付着されて、基板を減成しないことを保証する。手順又はその組合せがたとえ何を採用しても、パラメータは、低い多孔度であって、電解プラズマ酸化によってセラミック酸化物コーティングの形成を危うくするキャストイン(埋め込まれた)粒子、酸化物及びクラックのない、均一なコーティングを得るのに適した値に調整されなければならない。金属及びプラスチック基板について、基板表面への金属層の堆積は基板のバルク温度にほとんど影響を及ぼさず、それによってその歪曲を防ぐ。ホットスプレー技術を使用する場合、従来通り吹き付けられたセラミック粒子と比較して、基板表面の溶融金属粒子の優れた湿潤特性は低い多孔度を有する金属層の形成をもたらす。
【0011】
上で示されるように、コーティングは金属層表面の電解プラズマ酸化によって形成される。コーティングは、対極として作用し、かつ、陽極荷電金属コート部品に250Vを上回るAC電圧を印加するステンレス鋼浴を用いて、陽極荷電金属コート部品をアルカリ電解液(例えば、アルカリ金属水酸化物及びケイ酸ナトリウムの水溶液)に浸漬することによって好適に形成される。この技術において、部分的な酸素プラズマは金属/ガス/電解質相境界で生じ、セラミック酸化物層を生成する。セラミック酸化物層の金属イオンは、金属表面で電解水溶液の陽極反応の際に形成される金属及び酸素から誘導される。プラズマの形成に関して7000Kの温度で、セラミック酸化物は溶融状態で存在する。これは、溶融セラミック酸化物が金属/酸化物境界で金属表面との密接な接触を達成することができることを意味し、溶融セラミック酸化物が収縮して、細孔のほとんどない焼結セラミック酸化物層を形成するのに十分な時間を有することを意味する。しかしながら、電解液/酸化物境界で、溶融セラミック酸化物は電解液及びガス流(特に、酸素及び水蒸気)によってすばやく冷却され、多孔度の増加した酸化物セラミック層となる。浴温度は約20℃で一定に維持される。少なくとも1A/dm2の定電流密度は、電圧が所定の最終値に達するまで、絶縁層の形成と合致して、電解槽で維持される。これらの条件下で、典型的には、1分当たり約1μmのセラミック酸化物コーティングを得る。バリア形成金属タイプ及び合金に応じて、約100μmまでのセラミックコーティングの厚さは、60分で得られる。付けた金属層が粗く多孔性である場合には、プラズマプロセスを始めるのに必要な電流密度は25A/dm2程度であってもよい。
【0012】
好ましくは、電解プラズマ酸化は、7〜8.5の範囲、好ましくは7.5〜8の範囲のpHの弱アルカリ電解水溶液中で、約20℃の温度で行われ、これは、基板材料の完全性がほとんど影響を受けないことを意味する。上で示されるように、セラミックコーティングの形成の際に生じる融解は下層の金属層の任意の細孔を詰める傾向があり、その結果層間に不浸透性界面領域を生じる。
プラスチック基板について、下層の金属層上のセラミック酸化物コーティングの形成は、プラスチック基板の表面に直接セラミック粒子を堆積する場合、一般に遭遇する静電反発の問題を解決する。
基板は、好ましくは真空ポンプの構成要素であり、したがって、本発明も、金属又はプラスチック材料から形成され、かつ、構成要素に付けられる金属層の電解プラズマ酸化によって形成されるコーティングを有する真空ポンプ構成要素を提供する。
ここで、本発明の好ましい特徴は、ほんの一例として、添付の図面を参照しながら説明される。
【0013】
本発明において、厳しい精度要件で精密な部品へのその適用を可能にする、比較的簡単で費用効果のよい方法で、鉄鋳物、鋼及びプラスチックの付着性のコヒーレントセラミックコーティングを得ることができる。そのような部品の例は、真空ポンプの構成要素であり、特に真空ポンプのローターの構成要素である。図1に関して、既知の複合真空ポンプ10は再生部分(regenerative section)及び分子ドラッグ(molecular drag)(Holweck)部分を有する。回転可能に駆動軸(図示せず)に取り付けられたローター12は再生部分及びHolweck部分のためのローター要素を有する。Holweck部分のためのローター要素は1つ以上の同心円筒を有し、又はチューブ14の縦軸がローター12の軸及び駆動軸と平行であるように、ローター12に取り付けられたチューブ14(図1で示されるだけのもの)を有する。これらのチューブは、カーボン繊維強化エポキシ樹脂から典型的に形成される。
【0014】
真空ポンプの前記構成要素にコーティングを付ける一般的な方法を以下に記載し、さらに具体的な実施例を示す。
(1.)構成要素の表面を粗くするオプションの最初の処置。そのような方法は、ピーニング及びブラスティング、酸洗い及び/又はその組み合わせを含んでもよい。プラスチックについて、粗面処理後に、液状接着剤(例えば、ポリイミド又はエポキシ)又は金属(例えば、ニッケル)の薄層を付けてもよい。
(2.)付けられた接着剤層に金属粉末を振りかけ又は圧縮し、又は接着剤層を箔で覆うこと、又は最初に付けられた金属層への金属の電着、真空メタライジング、スパッターリング、プラズマ溶射、アーク噴霧、溶射、高速オキシ燃料吹付け(oxyfuel-spraying)、及びこれらの組合せなどのような技術を用いる、軽金属(例えば、Al、Ti、Mg及びそれらの合金)又は合金(Al−Ni、Al−Cu、Al−Zn、Al−Mgなど)の(必要により)粗面化した表面(液状接着剤又は金属の薄層を含んでもよい)への堆積。プラスチック構成要素の場合、最も有望なコーティング技術は付けられた接着剤層への金属粉末の圧縮又は付けられた接着剤層を金属箔で覆うこと、又は最初に付けられた金属層への金属の電着、プラズマ溶射、高速オキシ燃料吹付け(oxyfuel-spraying)、及びこれらの組合せであり、これらは他の技術に比べて熱動力負荷が低い。当然のことながら、上述のスプレー技術は金属基板に対する熱動力の影響も少ない。図に関して、図2(a)は金属層20が構成要素14の表面に直接堆積された実施例の断面図であり、図3(a)は金属層20が構成要素14に最初に付けられた金属層22に堆積された実施例の断面図である。
【0015】
(3.)セラミック酸化物コーティングを生成するための金属層表面の電解プラズマ酸化。図2(b)は酸化後の図2(a)の実施例の断面図であり、図3(b)は酸化後の図3(a)の実施例の断面図である。金属層20がすべてセラミックに変換されるとは限らないことが重要である。このようにして形成されたセラミック酸化物コーティングは、それ自身3つの層又は領域によって特徴付けられる。第1の層30は金属層20とコーティングの間の移行層であり、金属層が変換されて、コーティングのために優れた付着性を生じる。第2の層32は機能層であり、コーティングにその高い硬度及び耐磨耗性を与える固いクリスタライトを含む焼結セラミック酸化物を含む。第3の層34は表面層であり、機能層32よりも低い硬度及び高い多孔度を有する。
(4.)基板(例えば、CFx、フルオロカーボン、PTFE、MoS2及びグラファイト、Ni、Cr、Mo、W及びその炭化物、塗料及び樹脂)のキーイングイン(keying in)、グラインディング、ポリッシング、タンブリング、ランブリング(rumbling)等及びこれらの組み合わせのような技術を用いる、セラミックコーティング表面のオプションの仕上げ処理。
ここで、本発明は以下の非限定的実施例に関して説明する。本発明の範囲内のこれらについての変化は当業者にとって明らかであろう。
【実施例】
【0016】
実施例1
炭素繊維(金属ローター部品に適合する熱動力ひずみを満足するような繊維の方向)を含むエポキシ樹脂において製造される複合チューブをコーティング処理した。チューブの表面を、60メッシュのグリットを用いる低圧グリットブラストし、又はボーキサイトを用いるライトピーニングした。また、熱サンドブラストを使用してもよい。すべての方法は、チューブの表面から光沢を除去し、繊維に損傷を与えることなく表面を粗くするのに役立つ。次いで、表面をアルコールでふき取り、乾燥させてグリースを除去した。
公称40kWの電力レベルの標準Ar/H2プラズマを用いて、〜10μmの公称サイズの粉末を有するアルミニウム及びアルミニウム−ニッケル合金(80/20)をチューブにプラズマ溶射した。45〜90μmの公称サイズを有する標準粉末の使用がより多い多孔性のコートを与える傾向にあるということも注意すべきである。各粉末タイプは、チューブ(60rpmで回転)上に150〜180mmの距離から発射される前に、約0.1ms間、〜15000℃のプラズマ中に滞留させた。チューブに影響を与える粒子のスピードは225m/s〜300m/sの範囲であり、したがって溶融粒子の広がり(又はぬれ)を可能にし、チューブ中にある程度浸透させた。プラズマ溶射処理の間の平均表面温度は100〜150℃の範囲であった。コーティングの厚さは溶射の持続によって制御した。溶射後、チューブを静かな大気中でゆっくり冷却し、コーティングを緻密にするためにグリットブラストし、表面粗さを除去するために180 SiC研磨用ホイールでのグラインディングによって表面を加工し、このようにしてチューブに形成された金属層の最終厚さは約50μmとなった。
【0017】
上述の通りに付けた金属層を、電解液(アルカリ金属水酸化物及びケイ酸ナトリウム又はアルミン酸ナトリウム、又はメタリン酸ナトリウムの水溶液)中で、7.6のpHで電解プラズマ酸化した。12A/dm2の電流密度、20±3℃の電解液温度、及び60分のコーティング時間を用いて、350Vの電圧の最終値を登録した。このようにして形成されたセラミックコーティングを有する構成要素を洗浄し、乾燥した。セラミックコーティングの厚さは30μmであった。
このようにコートされた複合チューブの耐食性は、半導体用途で未コートエポキシ−炭素繊維複合チューブの4倍の耐食性を有する。特に、セラミックコーティングによってコートされた構成要素を有するBOC Edwards IPXポンプは、各4500リットルの塩素、臭素及びフッ素に曝したときに未コートポンプの4倍の期間持続することが分かった。
最終のオプションの処置として、セラミックコート構成要素を〜0.3μmの粒子サイズを有するアニオン性PTFE水性分散液に浸漬し、移動させ、熱水(90℃)の流れの下で洗浄し、コーティングの耐食性を高めるために熱風で乾燥させた。
【0018】
実施例2
実施例1と同様の複合チューブを、60メッシュグリットを用いて低圧グリットブラストし、複合体の表面から光沢を除き、繊維に損傷を与えることなく表面を粗くした。次いで、はけを用いてエポキシ接着剤の薄い液体層を付ける前に、表面をアルコールでふき取り、乾燥させてグリースを除いた。
金属粉末の層を転圧することによって、〜10μmの公称サイズの粉末を有するアルミニウム及びアルミニウム−ニッケル合金(80/20)をチューブの表面に圧縮した。接着剤の硬化は、120℃に予めセットされたオーブンに1時間粉末コートチューブを入れて行った。コーティングは、金属粉末が接着剤と混合された内層及び粉末が内層に適合された外層を有する。次いで、108 SiC研磨用ホイールでグラインディングすることによって表面を加工して表面粗さを除去し、研磨金属層の最終厚さは約30μmとなった。
上述の通りに付けられた金属層を電解液(アルカリ金属水酸化物及びケイ酸ナトリウム又はアルミン酸ナトリウム、又はメタリン酸ナトリウムの水溶液)中で、7.6のpHで電解プラズマ酸化した。20A/dm2の電流密度、20±3℃の電解液温度、及び75分のコーティング時間を用いて、400Vの電圧の最終値を登録した。このようにして形成されたセラミックコーティングを有するチューブを洗浄し、乾燥した。セラミックコーティングの厚さは10μmであった。このようにコートされた複合チューブの耐食性は、半導体用途で未コートエポキシ−炭素繊維複合チューブの4倍の耐食性を有する。
セラミックコートチューブには、実施例1と同様にコーティングの耐食性を高めるためにオプションのコートをすることができる。
【0019】
実施例3
上記実施例2のサンプル(研磨金属層のみを有する)をさらに実施例1で使用した条件下でアルミニウム及びアルミニウム合金粉末のプラズマ溶射処理した。溶射後、チューブを静かな大気中でゆっくり冷却し、グリットブラストしてコーティングを緻密にした。次いで、108 SiC研磨用ホイールでグラインディングすることによって表面を加工して表面粗さを除去し、研磨金属層の最終厚さは約60μmとなった。
上述の通りに付けられた金属層を電解液(アルカリ金属水酸化物及びケイ酸ナトリウム又はアルミン酸ナトリウム、又はメタリン酸ナトリウムの水溶液)中で、7.6のpHで電解プラズマ酸化した。12A/dm2の電流密度、20±3℃の電解液温度、及び60分のコーティング時間を用いて、350Vの電圧の最終値を登録した。このようにして形成されたセラミックコーティングを有するチューブを洗浄し、乾燥した。セラミックコーティングの厚さは40μmであった。このようにコートされた複合チューブの耐食性は、半導体用途で未コートエポキシ−炭素繊維複合チューブの4倍の耐食性を有する。
セラミックコートチューブは、実施例1と同様にコーティングの耐食性を高めるためにオプションのコートをすることができる。
【0020】
実施例4
実施例1と同様の複合チューブを60メッシュグリットを用いる低圧グリットブラストして複合体の表面から光沢を除き、繊維に損傷を与えることなく表面を粗くした。次いで、はけを用いてエポキシ接着剤の薄い液体層を付ける前に、表面をアルコールでふき取り、乾燥させてグリースを除いた。
〜50μmの厚さのアルミニウム箔で液状接着剤を覆った。箔の切断部に対してチューブをプレスロールすることによってチューブの外径をコートし、過剰にトリミングし、重なりかみあい長さは〜1mmとなった。内径について、箔の同様の切断部を表面にゆっくりと置き、ローラーで圧密し、過剰にトリミングし、重なりかみあい長さは〜1mmとなった。接着剤の硬化は、120℃に予めセットされたオーブンに1時間箔コートチューブを入れて行った。
上述の通りに付けられた金属層を電解液(アルカリ金属水酸化物及びケイ酸ナトリウム又はアルミン酸ナトリウム、又はメタリン酸ナトリウムの水溶液)中で、7.6のpHで電解プラズマ酸化した。6A/dm2の電流密度、20±3℃の電解液温度、及び45分のコーティング時間を用いて、300Vの電圧の最終値を登録した。続いて、チューブを洗浄し、乾燥した。チューブに形成されたセラミックコーティングの厚さは35μmであった。このようにコートされた複合チューブの耐食性は、半導体用途で未コートエポキシ−炭素繊維複合チューブの4倍の耐食性を有する。
セラミックコートチューブは、実施例1と同様にコーティングの耐食性を高めるためにオプションのコートをすることができる。
【0021】
実施例5
実施例1と同様の複合チューブをきれいにし、グリットブラスト又はプラズマエッチングとのその組合せを用いて、粗面化及び活性化によって表面を改質した。
次いで、改質したポリマー表面をPd/Snコロイドによって活性化し、無電解ニッケルメッキによるニッケル層の堆積のための部位を与えた。次いで、ニッケル層(ボンディングコートとして作用する)にアルミニウム層を堆積させる電解プロセスを行う。ニッケル層の典型的なコーティング厚さは5〜25μmの範囲であり、オーバーコートアルミニウム層の厚さは15〜50μmの範囲であった。こうして得られたコーティングは複合チューブに対して優れた接着性を持ち、滑らかで、非多孔性であり、液体不浸透性である。
上述の通りに付けられた金属層を電解液(アルカリ金属水酸化物及びケイ酸ナトリウム又はアルミン酸ナトリウム、又はメタリン酸ナトリウムの水溶液)中で、7.6のpHで電解プラズマ酸化した。4A/dm2の電流密度、20±3℃の電解液温度、及び10分のコーティング時間を用いて、350Vの電圧の最終値を登録した。続いて、チューブを洗浄し、乾燥した。チューブに形成されたセラミックコーティングの厚さは15μmであった。このようにコートされた複合チューブの耐食性は、半導体用途で未コートエポキシ−炭素繊維複合チューブの6倍の耐食性を有する。
セラミックコートチューブは、実施例1と同様にコーティングの耐食性を高めるためにオプションのコートをすることができる。
【0022】
実施例6
この実施例において、SG鉄サンプル(100mm×100mm×5mm)及び軟鋼(100mm×100mm×5mm)をコーティング処理した。サンプルの表面をサンドブラストによって粗面化し、60分間室温で10%HF水溶液で酸洗いした。次いで、サンプルを洗浄及び乾燥した。
次いで、サンプルを実施例1で使用した条件下でアルミニウム及びアルミニウム合金粉末のプラズマ溶射処理した。溶射後、サンプルを静かな大気中でゆっくり冷却し、グリットブラストしてコーティングを緻密にした。次いで、108 SiC研磨用ホイールでグラインディングすることによって表面を加工して表面粗さを除去し、研磨金属層の最終厚さは約50μmとなった。
上述の通りに付けられた金属層を電解液(アルカリ金属水酸化物及びケイ酸ナトリウム又はアルミン酸ナトリウム、又はメタリン酸ナトリウムの水溶液)中で、7.6のpHで電解プラズマ酸化した。〜8A/dm2の電流密度、20±3℃の電解液温度、及び60分のコーティング時間を用いて、300Vの電圧の最終値を登録した。サンプルを洗浄し、乾燥した。サンプルに形成したセラミックコーティングの厚さは〜30μmであった。このようにコートされたSG鉄は、半導体用途で未コートSG鉄の4倍の耐食性を有する。
セラミックコートチューブは、実施例1と同様にコーティングの耐食性を高めるためにオプションのコートをすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】真空ポンプのローターの簡略化した断面である。
【図2】本発明の第1の実施態様におけるローターの構成要素のコーティングの形成における工程を示す。(a)は電解プラズマ酸化する前の構成要素の部品の断面であり、(b)は電解プラズマ酸化した後の部品の断面である。
【図3】本発明の第2の実施態様におけるローターの構成要素のコーティングの形成における工程を示す。(a)は電解プラズマ酸化する前の構成要素の部品の断面であり、(b)は電解プラズマ酸化した後の部品の断面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基板にコーティングを形成する方法であって、金属層を基板に付ける工程と、金属層を電解プラズマ酸化することによって金属層からコーティングを形成する工程とを含む方法。
【請求項2】
金属層がアルミニウム、マグネシウム、チタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、錫、タングステン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、ビスマス及びこれらの金属の合金の1つから形成される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
金属層を基板に堆積する、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
金属層を基板に吹き付ける、請求項3記載の方法。
【請求項5】
金属層を基板に固着する、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項6】
基板に付けられた金属層の厚さが100μm未満である、請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
金属層を基板に付ける前に、基板を粗面化処理する、請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
金属層を、あらかじめ基板に付けられた第2金属層に形成する、請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
金属層を、あらかじめ基板に付けられた第2ポリマー層に形成する、請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
基板がエポキシ-炭素繊維複合体又は繊維強化プラスチック材料である、請求項1〜請求項9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
金属層からコーティングを形成する前に、金属層を平滑化する、請求項1〜請求項10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
7〜8.5の範囲のpHで、電解プラズマ酸化を行う、請求項1〜請求項11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
金属層から形成されるコーティングの厚さが100μm未満である、請求項1〜請求項12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
金属層から形成されるコーティングの厚さが50μm未満である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
さらに金属層から形成されるコーティングの外面を処理して、基板に形成されるコーティングの物理的及び/又は化学的特性を改質する、請求項1〜請求項14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
その形成後に、コーティングの外層を金属層から少なくとも部分的に除去する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
外層の少なくとも一部をコーティングから研磨により除去する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
コーティングの多孔度を小さくする材料をコーティングに付けることを含む、請求項15〜請求項17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
コーティングの耐食性を高める材料をコーティングに付けることを含む、請求項15〜請求項17のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
フルオロカーボン、ポリテトラフルオロエチレン、MoS2、カーボン、Ni、Cr、Mo、W、これらの金属のいずれかの炭化物、塗料及び樹脂の1つから形成される層をコーティングに付けることを含む、請求項15〜請求項19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
金属又はプラスチック基板にコーティングを形成する方法であって、基板に第1金属層を付ける工程と、第1金属層に第2金属層を付ける工程と、第2金属層を電解プラズマ酸化することによって第2金属層からコーティングを形成する工程とを含む方法。
【請求項22】
基板が真空ポンプの構成要素である、請求項1〜請求項21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
金属又はプラスチック材料から形成される真空ポンプの構成要素であって、この構成要素に付けられた金属層の電解プラズマ酸化によってこの構成要素に形成されたコーティングを有する構成要素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−528279(P2006−528279A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520879(P2006−520879)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003010
【国際公開番号】WO2005/014892
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(591004445)ザ ビーオーシー グループ ピーエルシー (59)
【Fターム(参考)】