説明

コーヒー酸と誘導体の抗ガン用途

本発明は、グリーベックで処理することに耐性である慢性骨髄性白血病(CML)の治療において、以下の一般式(1)[式中、Xは、O、NH、またはヘテロシクリルであり;Rは、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合、H、アルキル、アリール、またはヘテロシクリルである]により示される、全てのその立体異性と互変異性形態のコーヒー酸またはその誘導体、ならびに全ての割合でのその混合物、ならびにその医薬上許容される塩、その医薬上許容される溶媒和物、その医薬上許容される多形体またはそのプロドラッグの使用に関する。本発明はまた、グリーベックに耐性である細胞増殖を減少させる方法であって、一般式(1)の化合物と細胞を接触させることによる方法に関する。本発明はまた、一般式(1)で示されるコーヒー酸または誘導体またはそれらの塩を含む(医薬の製造のための)医薬組成物であって、グリーベックによる治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML)の治療のため、あるいはグリーベックに耐性である細胞の増殖を減少させるための医薬組成物に関する。さらに、本発明は、グリーベックによる治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML)の治療方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリーベック(Glivec、イマチニブまたはSTI571)による治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML)の治療における、あるいはグリーベックに耐性である細胞の成長または増殖を減少させるための、コーヒー酸もしくは誘導体またはその塩の使用に関する。本発明はまた、グリーベックによる治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML)の治療のための、あるいはグリーベックに耐性である細胞の成長または増殖を減少させるための、一般式(1)により示されるコーヒー酸または誘導体またはその塩を含む(医薬の製造のための)医薬組成物に関する。本発明は、さらに、グリーベックによる治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML)の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性骨髄性白血病(CML)は、成熟の全ての段階において過剰な数の骨髄細胞を生じる悪性骨髄前駆細胞のクローン増殖により特徴付けされる。CMLの発生は、フィラデルフィア(Ph)染色体として知られる特異的な染色体転座に関連する。Ph染色体の体細胞変異は、染色体9と22番の長腕の間の相互転座に由来する。この転座の分子的結果は、構成的な活性化チロシンキナーゼの融合タンパク質Bcr−Ablを生じ、このタンパク質は疾病の過程を通して検出可能である。Ph染色体は、細胞増殖および分裂において中心的な役割を担う酵素を産生する。その酵素は、チロシンキナーゼ活性を高める融合タンパク質(Bcr−Abl)であり、細胞の正常な遺伝子の指令を変える。この異常な酵素は、細胞内の複数の経路を介してシグナルを送り出し、体内の白血球細胞の過剰産生を生じる。その結果、健常な血液1立方ミリメータ中には、4000から10000個の白血球が含まれるが、CMLにかかっている患者に由来する血液にはこの量の10から25倍が含まれる。白血球細胞数の大幅な増加がCMLの特徴である。CMLに加えて、一部の急性リンパ球性白血病(ALL)および急性骨髄性白血病AMLもまたPh陽性白血病である。
【0003】
グリーベック(Glivec、イマチニブまたはSTI571)は、Ablキナーゼ抑制剤であり、現在、CML患者に対する最重要薬である。グリーベックは、フィラデルフィア染色体陽性のCML患者の慢性期、加速期、または急性転化における治療に対して適用される。ある場合には、グリーベックは、インターフェロン−アルファ治療不全後に用いられる。さらにまた、ある場合には、インターフェロン−アルファ治療処置はグリーベック治療不全の後に施される。CMLにおけるグリーベックの有効性は、血液学および細胞遺伝学的反応速度全体に基づくものである。グリーベックは、これまで治療の選択肢が限定されていた疾患であるCMLにかかっている患者に対して、新しい治療の選択肢を提供する新規な治療である。また、研究者にガンの生物学的メカニズムへの新しい概念を提供するものである。
【0004】
グリーベックにより治療された患者の大半はいずれ有害事象を経験する。ほとんどの事象は、軽度から中程度であるが、CMLに対する第II相臨床試験では、この薬は、慢性期では2%の患者、加速期では3%および急性転化では5%の有害事象のために中止となった。大半の共通な副作用として、吐き気、体液貯留、嘔吐、下痢、出血、筋痙攣、発疹、疲労、頭痛、消化不良および呼吸困難、ならびに好中球減少および血小板減少が含まれた。肝毒性(1%から4%)、体液貯留症候群(3%から12%)、好中球減少(8%から48%)および血小板減少(1%未満から33%)のごとき深刻かつ重大な副作用もまた患者のいずれかで報告された。現在までに利用可能なグリーベック治療上の長期にわたる安全なデータは存在しない。グリーベックで治療されたCML患者の大半は、著しい血液学および細胞遺伝学的反応を示すが、グリーベックによる治療に対する耐性はいまだ問題であり、主に疾患の加速期または急性転化期の患者で問題となる。
【0005】
Nature publicationのLeukemia(2004、1−11)の総論記事は、グリーベックによる治療に対する耐性の発生についての可能性のある理由を記載する。患者におけるグリーベックの治療に対する耐性は、非特異的な複数薬剤耐性からBcr−Abl固有の遺伝子変化までに及ぶ異種混合(heterogeneous array)のメカニズムに関連している。獲得されたグリーベック耐性の最も高頻度で同定されたメカニズムは、グリーベック結合部位の妨害によるか、グリーベックへの結合の減少を伴うBcr−Abl立体構造の安定化によるかのいずれかでグリーベック結合を障害するBcr−Ablキナーゼドメイン点変異である。
【0006】
US20060057157A1はまた、グリーベックによる治療に対する耐性の発生についての可能性のある理由を記載する。この文献によると、アポトーシスの誘導が、化学治療剤の大半がその機能を発揮する基本的なメカニズムである。したがって、アポトーシスを受けないことが腫瘍における薬剤耐性を介在するメカニズムであろう。
【0007】
ヒトT315Iは、最も一般的に観察されるBcr−Abl変異型であり、グリーベック耐性である。T315Iは、Bcr−Ablタンパク質のキナーゼドメインの位置315におけるスレオニン残基のイソロイシンへの点変異の結果である。
【0008】
Blood,2003,101,690−698は、K−562−R耐性細胞株を記載する。K−562は、野生型Bcr−Ablタンパク質を含むヒト白血球細胞株の1つであり、一方で、K−562−Rは、数回の継代の間にグリーベック(2μg/ml)への継続的な露出によりグリーベックに対して耐性とされるK−562細胞株である。
【0009】
Hematology,2005,183−187は、治験中の2つの小分子ABLキナーゼ阻害剤ダサチニブ(BMS−354825)およびAMN107を記載し、イマチニブ(グリーベック)耐性CMLの治療に対して第I相臨床試験で有効性を示し、臨床的に評価されている。これらの新規な阻害剤の長期間の有効性については残された課題である。
【0010】
Cancer Res.,2006,66(2),1007−1014およびProceedings of the National Academy of Sciences(PNAS),2005,102(6),1992−1997は、グリーベック耐性CML(T315I)に対して活性な2つの化合物VX−680およびON−012380を記載する。
【0011】
Cancer Res.,2005,65(11),4500−4505は、臨床的に関連するイマチニブ耐性AbIキナーゼドメイン変異に対するBcr−AbI阻害剤AMN107およびBMS−354825のインビトロ活性を記載する。この論文は、様々なイマチニブ耐性細胞株−Ba/F3 Bcr−Abl/T315I、Ba/F3 Bcr−Abl/E255K、Ba/F3 Bcr−Abl/H396P、Ba/F3 Bcr−Abl/M351T、Ba/F3 Bcr−Abl/F359V、Ba/F3 Bcr−Abl/E255V、Ba/F3 Bcr−Abl/F317L、Ba/F3 Bcr−Abl/H396R、Ba/F3 Bcr−Abl/M244V、Ba/F3 Bcr−Abl/Q252H、Ba/F3 Bcr−Abl/Y253FおよびBa/F3 Bcr−Abl/Y253Hを記載する。
【0012】
植物化学物質のコーヒー酸(3,4−ジヒドロキシ桂皮酸)は、コーヒー、果物、野菜、穀物およびミツバチプロポリスの構成要素である。コーヒー酸は、抗酸化および抗ウイルス効果のごとき様々な薬理学的活性を有することが知られている。コーヒー酸またはエステルのごとき誘導体は抗ガン活性を示すことが報告されている。
【0013】
その後の報告は、コーヒー酸またはその誘導体の特異的な抗ガン特性を示す。
【0014】
Breast Cancer Res.,2004,6,R63−R74は、T47Dヒト乳ガン細胞におけるコーヒー酸の抗増殖およびアポトーシス効果を記載する。
【0015】
Bull.Korean Chem.,2001,22(10),1131−1135は、Fos−Jun−DNA複合体形成およびガン細胞増殖の抑制におけるコーヒー酸メチルエステルの阻害効果を記載する。この論文は、ヒトガン細胞株(A549およびK−562)に対する細胞障害性効果を記載する。
【0016】
Biol.Pharm.Bull.,2005,28(12),2338−2341は、アポトーシスを介在するヒト組織球性リンパ腫U937細胞のオクチルカフェアート(octylcaffeate)による増殖抑制を記載する。
【0017】
Cancer Letters,1996,108,211−214は、ヒト白血病HL−60細胞におけるコーヒー酸フェネチルエステルの阻害効果を記載する。
【0018】
J. Nutritional Biochemistry,2006,17(5),356−362は、ヒトHT1080線維肉腫細胞におけるマトリックスメタロプロテアーゼ発現の下方調節により介在されるガン細胞転移のコーヒー酸フェネチルエステルの阻害効果を記載する。
【0019】
以下の特許出願は、コーヒー酸またはその誘導体を含む組成物を開示する。
【0020】
WO9105543は、活性成分としてコーヒー酸またはそのエステルもしくはアミドのうちの1つを含む医薬または化粧品組成物を記載する。
【0021】
JP60013712は、5−リポキシゲナーゼ活性の抑制のための、活性成分としてのコーヒー酸メチルエステルを含む薬剤を記載する。
【0022】
例えば、Bcr−Abl変異に対するグリーベックによる治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML)を治療するための医薬に緊急の必要性が存在する。
【0023】
本発明は、グリーベックによる治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML)を治療するためのコーヒー酸またはその誘導体もしくは塩の使用に関する。本発明はまた、グリーベックによる治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML)を治療するための方法に関する。本発明の化合物は、K−562−および32DclBcr−Abl T315I、Ba/F3 Bcr−Abl/T315I、Ba/F3 Bcr−Abl/E255K、Ba/F3 Bcr−Abl/H396P、Ba/F3 Bcr−Abl/M351T、Ba/F3 Bcr−Abl/F359V、Ba/F3 Bcr−Abl/E255V、Ba/F3 Bcr−Abl/F317L、Ba/F3 Bcr−Abl/H396R、Ba/F3 Bcr−Abl/M244V、Ba/F3 Bcr−Abl/Q252H、Ba/F3 Bcr−Abl/Y253F、およびBa/F3 Bcr−Abl/Y253Hを含むグリーベック耐性細胞株の増殖を抑制する方法において用いることができる。
【0024】
本発明はまた、グリーベックによる治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML)を治療するための方法であって、治療上有効な量の式(1)のコーヒー酸もしくは誘導体、またはその塩を投与することを含む方法に関する。
【0025】
本発明はまた、グリーベックに耐性である細胞の増殖を減少させる方法であって、式(1)のコーヒー酸もしくは誘導体、またはその塩と、細胞を接触させることを含む方法に関する。
【0026】
さらに、本発明は、グリーベックによる治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML)を治療するための医薬組成物であって、治療上有効な量の式(1)のコーヒー酸もしくは誘導体、またはその塩を含む医薬組成物を提供する。
【0027】
なおさらに、本発明は、グリーベックによる治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML)を治療するための医薬の製造のための、コーヒー酸もしくは誘導体またはその塩の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、イマチニブ感受性(Ba/F3 Bcr−Abl/WT)およびイマチニブ耐性(Ba/F3 Bcr−Abl/T315I)細胞株における本発明の化合物の抗増殖活性を示す。
【図2】図2は、本発明の化合物の抗増殖活性を示し、臨床中に観察されるごとく、イマチニブ耐性の低頻度変異を有する細胞(Ba/F3 Bcr−Abl/E255K、Ba/F3 Bcr−Abl/H396P、Ba/F3 Bcr−Abl/E255V、Ba/F3 Bcr−Abl/M244VおよびBa/F3 Bcr−Abl/Q252H)における、平均IC50値としてμM単位で表す。
【図3】図3は、本発明の化合物の抗増殖活性を示し、臨床中に観察されるごとく、イマチニブ耐性の高頻度変異を有する細胞(Ba/F3 Bcr−Abl/T315I、Ba/F3 Bcr−Abl/M351T、Ba/F3 Bcr−Abl/F359V、Ba/F3 Bcr−Abl/F317L、Ba/F3 Bcr−Abl/H396R、Ba/F3 Bcr−Abl/Y253FおよびBa/F3 Bcr−Abl/Y253H)における、平均IC50値としてμM単位で表す。
【図4】図4は、イマチニブ感受性および耐性細胞株における、(5μMの)本発明の化合物による、48時間後のアポトーシスの誘導を示す。
【図5】図5Aは、イマチニブ耐性(Ba/F3 Bcr−Abl/T315I)異種移植モデルのSCIDにおける本発明の化合物のインビボ有効性を示す。図5Bは、イマチニブ感受性(Ba/F3 Bcr−Abl/WT)異種移植モデルのSCIDにおける本発明の化合物のインビボ有効性を示す。
【0029】
(発明の詳細な説明)
本発明は、以下の一般式(1)
【化1】

(1)
[式中、
Xは、O、NH、またはヘテロシクリルであり;
Rは、存在するか、または存在せず、存在する場合、H、アルキル、アリール、ヘテロシクリル(すなわち、Rは、H、アルキル、アリール、ヘテロシクリル、または存在しない)である]
で示される、全てのその立体異性体および互変異性体形態のコーヒー酸またはその誘導体、ならびに全ての割合におけるその混合物、その医薬上許容される塩、その医薬上許容される溶媒和物、その医薬上許容される多形体、またはそのプロドラッグを提供する。
【0030】
定義
定義を以下に記載し、それらを明細書および特許請求の範囲を通して用いられる用語に適用する。
【0031】
本明細書で用いられるように、用語「アルキル」は、直鎖または分岐鎖アルキル基を含む脂肪族基を意味する。さらに、特に示されていない限り、用語「アルキル」は、置換されていないアルキル基ならびに1つまたはそれ以上の異なる置換基により置換されるアルキル基を含む。
【0032】
1の具体例において、直鎖または分岐鎖アルキルは、その骨格に20個またはそれ以下の炭素原子(例えば、直鎖ではC−C20、分岐鎖ではC−C20)、例えば、15個またはそれ以下の炭素原子を有する。1から20個の炭素原子を含むアルキル残基の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルおよびエイコシル、これらの残基全てのn−異性体、イソプロピル、イソブチル、1−メチルブチル、イソペンチル、ネオペンチル、2,2−ジメチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、イソヘキシル、2,3,4−トリメチルヘキシル、イソデシル、sec−ブチル、またはtert−ブチルである。適当なアルキル残基は、1から6個の炭素原子、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−プロピル、t−ブチル、n−ブチル、sec−ブチル、またはイソ−ブチルのごとき、1から4個の炭素原子を含む。
【0033】
アルキル基は、置換されていてもよく、または置換されていなくてもよい。特に示されていない限り、アルキル基は、置換され得ないか、または1個もしくはそれ以上(例えば、1、2、3、4または5個)の同一のもしくは異なる置換基により置換され得る。置換されたアルキル残基に存在するいかなる種類の置換基も、その置換が不安定な分子を誘導しない限り、いずれの所望の位置に存在することができる。置換されたアルキルは、1個またはそれ以上、例えば、1、2、3、4または5個の水素原子が、置換基、例えば、アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、アルコキシル、シクロアルキル、エステル、エーテル、シアノ、アミノ、モノ−もしくはジ−アルキルアミノ、アミド、イミノ、ニトロ、アラルキル、アシルオキシ、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールに置換されるアルキル残基を意味する。
【0034】
本明細書で用いられるように、用語「アリール」は、14個までの環炭素原子、例えば、10個までの環炭素原子を有し、抱合されたπ電子系を有する少なくとも1個の環状炭素環が存在する単環または多環式炭化水素基を意味する。(C−C14)−アリール残基の適当な例は、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フルオレニルまたはアントラセニル、特に、フェニルおよびナフチルを含む。特に示されない限り、アリール残基、例えば、フェニル、ナフチルまたはフルオレニルは、一般的に、1個またはそれ以上、例えば、ハロゲン、アルキル、フルオロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アリールオキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、チオール、イミン、アミド、カルボニル、アリール、およびヘテロシクリルからなる群から選択される5個までの同一または異なる置換基により置換され得るか、または置換され得ない。
【0035】
用語「ヘテロシクリル」は、14個までの環状原子を含み、そのうちの1、2または3個が窒素、炭素、または硫黄から選択される同一のまたは異なるヘテロ原子である、飽和、部分的に未飽和または芳香族の単環または多環式環系を意味する。ヘテロシクリル基は、例えば、環中に1もしくは2個の酸素原子および/または1もしくは2個の硫黄原子および/または1から4個の窒素原子を有してもよい。環状ヘテロ原子は、生じるヘテロ環系が当該技術分野で知られ、製剤原料中にサブグループとして安定で適切である限り、いかなる所望の数で、かついかなる位置に存在することができる。ヘテロシクリル基の適当な例は、ピペラジニル、ピペリジニル、イミダゾリル、ピロリジニル、モルホリニル、ベンゾオキサゾリル、キノリル、イソキノリル、カルバゾリル、インドリル、イソインドリル、フェノキサジニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、またはベンゾフラザニルを含む。
【0036】
ヘテロシクリル基は、置換されていてもよく、または置換されていなくてもよい。特に示されていない限り、式1の化合物の定義でヘテロシクリル基に結合した置換基のいずれに関わらず、ヘテロシクリル基は、置換され得ないか、または環状炭素原子上で1個またはそれ以上の置換基、5個までの同一または異なる置換基を置換され得る。環状炭素および環状窒素原子の置換基に適当な例は、アルキル、アラルキル、アルコキシル、ハロゲン、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、フルオロアルキル、アリールオキシル、アミノ、シアノ、ニトロ、チオール、イミン、アミド、カルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アリール、またはヘテロシクリルを含む。置換基は、結果として安定な分子が生じる限り、1個またはそれ以上の位置に存在することができる。
【0037】
本明細書で用いられるように、用語「アラルキル」は、アリールまたはヘテロアリール基で置換されたアルキル基を意味し、用語アルキル、アリール、およびヘテロアリールは上述の定義のごとくである。典型的なアラルキル基は、−(CH−フェニルまたは−(CH−ピリジルを含み、ここで、pは1から3の整数である。アラルキル基は、アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、アリール、ヘテロアリール、またはそれらの類似物質でさらに置換されていてもよい。
【0038】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。
【0039】
本明細書で用いられるように、用語「治療」「治療する」および「治療法」ならびにその類似用語は、患っている疾病(例えば、グリーベックによる治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML))を軽減すること、進行を遅延させること、予防、低減または治癒を意味する。「予防する」は、本明細書で用いられるように、グリーベックによる治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML)の発症を遅らせ、遅延させ、抑制し、減少させ、または改善させることを意味する。
【0040】
本明細書で用いられるように、用語「医薬上許容される」は、担体、希釈剤、賦形剤、および/または塩が製剤の他の活性成分に適合されなくてはならず、その受容者に有害であってはならないことを意味する。
【0041】
用語「治療上有効な量」は、本明細書で用いられるように、適切な医学的判断の範囲内において、調節または治療される状態の陽性の改善を有意に導くのに十分であり、もしあれば(妥当な利益/リスクの比率で)副作用を回避するのに十分に低い化合物または組成物(例えば、式(1)のコーヒー酸または誘導体)の量を意味する。化合物または組成物の治療上有効な量は、治療される特定の条件、患者の年齢と身体的状態、治療/予防される状態の重症度、治療期間、併用される治療の形態、適用される特定の化合物または組成物、使用される特定の医薬上許容される担体、およびこれらの類似因子により変動する。
【0042】
コーヒー酸化合物およびそれらを適用する方法
一般式(1)のコーヒー酸または誘導体は、文献中で知られており、下記で示されるスキームIにより合成され、任意選択的に、それらの医薬上許容される塩に変換されうる。
【0043】
3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(A)は、Tetrahedron 2003,59,4383−4387に記載の方法により乾燥N,N−ジメチルホルムアミド中の炭酸セシウムの存在下でジブロモメタンによる処理によりピペロナール(B)に変換されうる。これにより得られたピペロナール(B)は、Eur.J.Med.Chem.2002,37,979−984に記載の方法によりマロン酸とのクネーフェナーゲル縮合にかけられて3,4−(メチレンジオキシ)桂皮酸(C)が得られうる。この酸(C)は、塩化チオニルとメタノールとの反応によりそのメチルエステル(D)に変換されうる。三臭化ホウ素を用いるメチルエステル(D)のメチレンジオキシ基の脱保護は、J.Org.Chem.1974,39,1427−1429に記載の手順により行われうる。反応混合物の仕上げ工程(work up)はエステルの加水分解を生じ、コーヒー酸(E)が得られうる。コーヒー酸(E)は、0℃で適当なアルコールの存在下で塩化チオニルまたは塩化オキサリルとの処理、続いて反応の要件に応じてこの混合物を室温まで温めるか、または還流で加熱させることにより、エステル(F)(X=OおよびR=アルキル、アリール、またはヘテロシクリル)に変換されうる。コーヒー酸(E)は、Bioorg.Med.Chem.Lett.2004,14,4677−4681に記載の手順により室温で塩化メチレン中の1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、および
【化2】

トリエチルアミンを用いて適当なアミンとのカップリングにより、アミド(F)(X=NおよびR=H、アルキル、アリールまたはヘテロシクリル)に変換されうる。代替的な方法において、コーヒー酸は、塩化チオニルまたは塩化オキサリルとの処理によりその酸塩化物に変換され、後に、選択されたアミンとの処理によりアミド(F)(X=NおよびR=H、アルキル、アリールまたはヘテロシクリル)に変換されうる。
【0044】
一般式(1)のコーヒー酸または誘導体はまた、植物抽出物のごとき天然物から得られうる。
【0045】
本発明の式(1)のコーヒー酸または誘導体は、グリーベックによる治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML)に有用である。
【0046】
式(1)の化合物の抗増殖活性は、K−562−Rおよび32DclBcr−Abl T315Iのごときグリーベック耐性変異細胞株に対して評価されうる。数種類の他の造血性細胞株はまた、抗増殖活性に関する化合物を研究するために用いることができる。前記細胞株は、Ba/F3 Bcr−Abl/T315I、Ba/F3 Bcr−Abl/E255K、Ba/F3 Bcr−Abl/H396P、Ba/F3 Bcr−Abl/M351T、Ba/F3 Bcr−Abl/F359V、Ba/F3 Bcr−Abl/E255V、Ba/F3 Bcr−Abl/F317L、Ba/F3 Bcr−Abl/H396R、Ba/F3 Bcr−Abl/M244V、Ba/F3 Bcr−Abl/Q252H、Ba/F3 Bcr−Abl/Y253F、またはBa/F3 Bcr−Abl/Y253Hを含む。
【0047】
本発明の態様は、グリーベックによる治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML)にかかっている哺乳動物(例えば、ヒト)を治療するための方法であって、一般式(1)で示される化合物またはその化合物の医薬上許容される塩の治療上有効な量を前記哺乳動物に投与することによる方法である。
【0048】
本発明の別の態様は、グリーベックによる治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML)から生じる傷害を予防し、減少させ、または最小にするための方法であって、一般式(1)の化合物またはこの化合物の医薬上許容される塩の治療上有効な量を患っている哺乳動物(例、女または男のヒト)に投与することによる方法を対象とする。
【0049】
本発明はまた、グリーベックによる治療に耐性である細胞の増殖を減少させるための方法を提供する。この方法は、コーヒー酸またはその誘導体もしくはその塩と細胞を接触させることを含む。本発明の1の態様では、コーヒー酸、誘導体、または塩は一般式(1)で示される化合物である。化合物は、グリーベック耐性細胞の増殖を減少させるのに治療上有効な量で投与されうる。
【0050】
本発明において、グリーベックによる治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML)の治療に有用である代表的な化合物は:
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸[コーヒー酸];
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸メチルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸エチルエステル;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−アクリル酸2−ニトロ−エチルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸n−プロピルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸i−プロピルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸ブチルエステル;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−1−ピペリジン−1−イル−プロペノン;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−1−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−プロペノン;
1−(4−ベンジル−ピペラジン−1−イル)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノン;
(E)−3−{4−[3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリロイル]−ピペラジン−1−イル}プロピオニトリル;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−[4−(1−メチル−ピペリジン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−プロペノン;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−(4−フェニルピペラジン−1−イル)−プロペノン;
(E)−1−(4−アセチル−ピペラジン−1−イル)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノン;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−1−(4−フェネチル−ピペラジン−1−イル)−プロペノン;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−1−モルホリン−4−イル−プロペノン;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−N−(3−ジメチルアミノ−プロピル)−アクリルアミド;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−N−イソプロピル−アクリルアミド;または
1−(4−ベンジル−ピペリジン−1−イル)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノンを含む。
【0051】
本発明において、グリーベックによる治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML)の治療に適当な化合物は:
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸メチルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸エチルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸n−プロピルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸i−プロピルエステル;
1−(4−ベンジル−ピペラジン−1−イル)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノン;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−N−イソプロピル−アクリルアミド;または
1−(4−ベンジル−ピペリジン−1−イル)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノンを含む。
【0052】
本発明は、さらに、通常の医薬上許容される担体を加えた一般式(1)のうちの少なくとも1つの化合物またはその生理学的に許容される塩の有効な量を含む医薬組成物、ならびに式(1)の化合物の少なくとも1つを、医薬上適切かつ生理学的に耐えられる賦形剤および適当な場合にはさらに適切な活性化合物、添加剤または補助剤を用いて適切な投与形態中に導入することを含む、医薬品の製造方法に関する。
【0053】
本発明の化合物は、ガン、特に、グリーベック治療に反応しない慢性骨髄性白血病(CML)を治療するのに有用である。したがって、本発明は、グリーベック治療に反応しない慢性骨髄性白血病(CML)のごときガンの予防または治療のための、医薬の製造のための一般式(1)の化合物の使用に関する。
【0054】
1の具体例において、本発明は、グリーベック活性による治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML)の治療または予防のための医薬の製造のための方法であって、一般式(1)のうちの少なくとも1つの化合物が医薬上活性な物質として用いられることを特徴とする方法に関する。
【0055】
本発明は、さらに、グリーベックによる治療に耐性である細胞の増殖を減少させるための、一般式(1)のうちの少なくとも1つの化合物を含む医薬の製造のための方法に関する。
【0056】
本発明はまた、一般式(1)の化合物またはこの化合物の医薬上許容される塩の他の医薬上活性な化合物との組み合わせた使用を想定する。例えば、一般式(1)の化合物または医薬上許容される塩を含む医薬組成物は、グリーベック耐性細胞または腫瘍に対して活性であるいずれか他の化合物、または上記疾病のうちの1つを治療するのに有用であることが知られるいずれか他の医薬上活性な化合物と一緒に、相互に混合するかまたは医薬調製物の形態において、哺乳動物、特にヒトに投与されうる。
【0057】
本発明の化合物は、インビボでグリーベック感受性(例えば、K−562またはBa/F3 Bcr−Abl/WT)およびグリーベック耐性(K−562−Rおよび32DclBcr−Abl T315I、Ba/F3 Bcr−Abl/T315I、Ba/F3 Bcr−Abl/E255K、Ba/F3 Bcr−Abl/H396P、Ba/F3 Bcr−Abl/M351T、Ba/F3 Bcr−Abl/F359V、Ba/F3 Bcr−Abl/E255V、Ba/F3 Bcr−Abl/F317L、Ba/F3 Bcr−Abl/H396R、Ba/F3 Bcr−Abl/M244V、Ba/F3 Bcr−Abl/Q252H、Ba/F3 Bcr−Abl/Y253F、またはBa/F3 Bcr−Abl/Y253H)の慢性骨髄性白血病(CML)細胞の集団を減少させる方法において用いることができる。
【0058】
グリーベック感受性およびグリーベック耐性の腫瘍モデルにおける本発明の化合物のインビボ有効性は、SCID(everely ombined mmune−eficient)マウスの異種移植モデルにおいて、全長野生型Bcr−Abl(Ba/F3 Bcr−Abl/WT)または変異型Bcr−Abl(Ba/F3 Bcr−Abl/T315I)を発現するBa/F3トランスフェクタント(transfectant)のごとき細胞株を用いることにより評価することができる。
【0059】
したがって、本発明は、ガン、特に、グリーベック治療に反応しない慢性骨髄性白血病(CML)の予防または治療のための医薬の製造のための一般式(1)の化合物の使用に関する。
【0060】
本発明の1の態様において、本明細書に記載される治療方法および細胞増殖を減少させる方法は、下記の投与経路、様式等により投与することができる上述の医薬組成物を使用する。
【0061】
医薬組成物および方法
医薬品は、経口、例えば、ピル、錠剤、被膜錠剤、カプセル、顆粒またはエリキシル剤の形態で投与することができる。しかし、投与はまた、例えば、坐剤の形態で、直腸内に、あるいは、注射可能な滅菌溶液または懸濁液の形態で、非経口的に、例えば、静脈内、筋肉内または皮下に、あるいは、溶液または経皮貼布の形態、あるいは、他の方法で、例えば、エアロゾルまたは鼻腔用スプレーの形態で、局所的に行うことができる。
【0062】
本発明による医薬調製物は、当業者に公知および慣用な手段で調製される。医薬上許容される不活性な無機および/または有機担体および/または添加剤は、一般式(1)の化合物、および/またはその(それらの)生理学的に許容される塩に添加して用いることができる。ピル、錠剤、被膜錠剤および硬ゼラチンカプセルの生成には、例えば、ラクトース、コーンスターチまたはその誘導体、アラビアゴム、マグネシアまたはグルコース等を使用することができる。軟ゼラチンカプセルおよび坐剤用の担体は、例えば、脂肪、ワックス、天然油または硬化油等である。溶液、例えば、注射溶液、または乳剤もしくはシロップの生成に適当な担体は、例えば、水、生理食塩溶液またはアルコール、例えば、エタノール、プロパノールまたはグリセロール、グルコース溶液またはマンニトール溶液のごとき糖液、あるいは公知である様々な溶媒混合物である。
【0063】
医薬調製物は、通常、約1から99重量%、例えば、約5から70重量%、または約10から約30重量%の式(1)で示される化合物またはその生理学的に許容される塩を含む。医薬調製物中の式(1)またはその生理学的に許容される塩の活性成分の量は、通常、約5から500mgである。投与されるべき本発明の化合物の用量は、広範囲で包含できる。1日に投与されるべき用量は、所望の効果に適するように選択されるべきである。適当な用量は、約0.001から100mg/kg/日の式(1)で示される化合物またはそれらの生理学的に許容される塩、例えば、約0.01から50mg/kg/日の式(1)で示される化合物またはこの化合物の医薬上許容される塩である。必要に応じて、より高いか、またはより低い1日の用量もまた投与されうる。本発明の医薬組成物における活性成分の実際の用量レベルは、患者に毒性を示すことなく、特定の患者、組成物、および投与形態によって所望の治療反応を達成するのに有効な活性成分の量を得るために変動されてもよい。
【0064】
選択される用量レベルは、用いられる本発明の特定の化合物、またはエステル、その塩もしくはアミドの活性、用いられる特定の化合物の投与経路、投与時間、排出速度、治療期間、用いられる特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬剤、化合物および/または物質、治療される患者の年齢、性別、重量、状態、総体的な健康および以前の病歴、ならびに医学分野で周知な類似因子を含む多くの因子に依存する。
【0065】
医薬調製物は、一般式(1)の活性成分またはその生理学的に許容される塩および担体物質に加えて、例えば、充填剤、抗酸化剤、分散剤、乳剤、消泡剤、香味料、保存剤、安定化剤または着色剤のごとき添加剤を含むことができる。それらはまた、2つまたはそれ以上の一般式(1)の化合物またはそれらの生理学的に許容される塩を含む。さらに、医薬調製物はまた、一般式(1)で示される少なくとも1つの化合物またはその生理学的に許容される塩に加えて、1つまたはそれ以上の他の治療上または予防上活性な成分を含むことができる。
【0066】
本発明の様々な実施態様の活性に実質的に影響を与えない改変も、本明細書中で開示される本発明内に含まれるものと理解される。したがって、下記の実施例は例示を意図するものであるが、本発明を限定するものではない。
【0067】
(実施例1)
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸[コーヒー酸](化合物1)
実施例1cの化合物(6.0g、0.029mol)をクロロホルム(20mL)中に溶解し、クロロホルム(90mL)中の25%w/vの三臭化ホウ素溶液を添加し、25℃で16時間撹拌した。反応混合物を25℃で撹拌しながら、10%重炭酸ナトリウム水溶液を滴下して反応を停止させ、最終的にpH7とした。有機相を分離し、水(100mL)、ブライン(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して表題化合物を得た。
収率:2.0g(38.3%)。H NMR(CDCl+DMSO−d):δ 6.83(d,1H,J=15.6Hz)、6.41(d,1H)、6.25(dd,1H)、6.18(d,1H)、6.52(d,1H,J=15.6Hz)。
【0068】
(実施例1a)
ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−カルバルデヒド[ピペロナール]
3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(25g、0.181mol)、炭酸セシウム(88.29g、0.271mol)およびジブロモメタン(19.0mL、0.271mol)をN,N−ジメチルホルムアミド(400mL)中に溶解し、反応混合物を110℃で1.5時間加熱した。N,N−ジメチルホルムアミドを減圧下で蒸発させ、反応混合物を酢酸エチル(500mL)を用いて希釈し、水(2x250mL)およびブライン(2x250mL)で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して表題化合物を得た。
収率:23.0g(84.6%)。H NMR(CDCl):δ 9.8(s,1H)、7.42(d,1H)、7.34(d,1H)、6.94(d,1H)、6.09(s,2H)。
【0069】
(実施例1b)
3−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−アクリル酸
実施例1aの化合物(23g、0.153mol)およびマロン酸(31.77g、0.305mol)の混合物をピリミジン(69mL)中に撹拌しながら溶解し、ピペリジン(0.92mL)を添加した。反応混合物を85℃で1時間加熱し、その後、温度を105℃までさらに上昇させ、この温度を3時間維持した。反応混合物を冷まし、水(50mL)で希釈し、10% 水酸化ナトリウム水溶液を用いて(pH9まで)塩基性にした。混合物を酢酸エチルで抽出した(2x250mL)。水相を50%塩酸水溶液を用いて(pH2まで)酸性にし、生じた固体をろ過し、水で洗浄し、乾燥させて表題化合物を得た。
収率:20.0g(68%)。H NMR(DMSO−d):δ 7.42(d,1H、J=15.9Hz)、7.31(s,1H)、7.10(d,1H)、6.92(d,1H)、6.37(d,1H,J=15.9Hz)、6.04(s,2H);MS(ES−):191(M−1)。
【0070】
(実施例1c)
3−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−アクリル酸メチルエステル
実施例1bの化合物(25g、0.13mol)をメタノール(200mL)中に溶解し、0−5℃まで冷却した。塩化チオニル(14.2mL、0.195mol)を滴下し、混合物を0℃で30分間撹拌した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、16時間撹拌した。反応終了時、混合物を減圧下で濃縮した。残渣を10%重炭酸ナトリウムで希釈してpH7とし、酢酸エチルで抽出した(2x250mL)。有機相を水(100mL)およびブライン(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して白色固体として表題化合物を得た。
収率:20.0g(74.6%)。H NMR(DMSO−d):δ 7.55(d,1H,J=15.9Hz)、7.38(d,1H)、7.17(dd,1H)、6.93(d,1H)、6.48(d,1H,J=15.9Hz)、6.05(s,2H)、3.68(s,3H)。
【0071】
(実施例2)
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸メチルエステル(化合物2)
化合物1(8.0g、0.044mol)をメタノール(70mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。これに、塩化チオニル(4.84mL、0.066mol)を0℃に温度を30分間維持しながら滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、16時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣を10%重炭酸ナトリウムで希釈してpH7にし、酢酸エチルで抽出した(2x100mL)。有機相を水(50mL)およびブライン(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して白色固体として表題化合物を得た。
収率:7.5g(87.8%)。H NMR(DMSO−d):δ 7.45(d,1H,J=15.9Hz)、7.02(s,1H)、6.98(d,1H)、6.73(d,1H)、6.24(d,1H,J=15.9Hz)、3.7(s,3H);MS(ES−):193(M−1)。
【0072】
(実施例3)
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸エチルエステル(化合物3)
化合物1(0.2g、1.11mmol)をエタノール(15mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。これに、塩化チオニル(0.1mL、1.41mmol)を0℃に温度を維持して30分かけて滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、50℃まで加熱し、その温度で一晩(16時間)維持した。反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣を10%重炭酸ナトリウムで希釈してpH7とし、酢酸エチルで抽出した(2x10mL)。有機相を水(5mL)およびブライン(5mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル中の5%酢酸エチル)により精製して表題化合物を得た。
収率:0.11g(47.5%)。H NMR(DMSO−d):δ 9.31(bs,2H)、7.44(d,1H,J=15.9Hz)、7.00(s,1H)、6.97(d,1H)、6.73(d,1H)、6.24(d,1H,J=15.9Hz)、4.12(q,2H)、1.24(t,3H);MS(ES−):207(M−1)。
【0073】
(実施例4)
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸2−ニトロ−エチルエステル(化合物4)
化合物1(0.400g、2.22mmol)をテトラヒドロフラン(30mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。これに、塩化チオニル(0.49mL、6.88mmol)を0℃に温度を維持して30分かけて滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、2時間撹拌した。反応混合物を減圧下で乾燥するまで濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン(5mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。2−ニトロエタノール(1.59mL、22.20mmol)を滴下し、反応混合物を室温(25℃)まで温め、一晩撹拌した(16時間)。反応終了時に、混合物を減圧下で濃縮した。残渣を10%重炭酸ナトリウム水溶液でpH7まで希釈し、酢酸エチルで抽出した(2x15mL)。有機相を水(10mL)およびブライン(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィー(クロロホルム中の1%メタノール)により精製して表題化合物を得た。
収率:0.170g(30.35%)。H NMR(CDCl):δ 7.55(d,1H,J=15.9Hz)、7.03(d,1H)、6.94(dd,1H)、6.76(d,1H)、6.24(d,1H,J=15.9Hz)、4.79(m,2H)、4.66(m,2H)。
【0074】
(実施例5)
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸n−プロピルエステル(化合物5)
化合物1(0.25g、1.38mmol)をプロパン−1−オール(20mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。これに、塩化チオニル(0.12mL、1.65mmol)を0℃に温度を30分間維持しながら滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、50℃まで加熱し、その温度で一晩(16時間)維持した。反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣を10%重炭酸ナトリウムでpH7まで希釈し、酢酸エチルで抽出した(2x10mL)。有機相を水(5mL)およびブライン(5mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル中の5%酢酸エチル)により精製して表題化合物を得た。
収率:0.2g(65.2%)。H NMR(DMSO−d):δ 9.5(bs,2H)、7.40(d,1H,J=15.9Hz)、7.02(s,1H)、6.98(d,1H)、6.73(d,1H)、6.21(d,1H,J=15.9Hz)、4.04(t,2H)、1.61(m,2H)、0.89(t,3H);MS(ES−):221(M−1)。
【0075】
(実施例6)
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸i−プロピルエステル(化合物6)
実施例1の化合物(0.3g、1.66mmol)をプロパン−2−オール(20mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。これに、塩化チオニル(0.18mL、2.5mmol)を0℃に温度を30分間維持しながら滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、次いで70℃まで加熱し、室温で一晩(16時間)維持した。反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣を10%重炭酸ナトリウムでpH7まで希釈し、酢酸エチルで抽出した(2x10mL)。有機相を水(5mL)およびブライン(5mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム中の3%プロパン−2−オール)により精製して表題化合物を得た。
収率:0.2g(54.2%)。H NMR(DMSO−d):δ 9.33(bs,2H)、7.42(d,1H,J=15.9Hz)、7.00(s,1H)、6.97(d,1H)、6.73(d,1H)、6.20(d,1H,J=15.9Hz)、4.96(m,1H)、1.21(d,6H);MS(ES−):221(M−1)。
【0076】
(実施例7)
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸ブチルエステル(化合物7)
化合物1(0.1g、5.5mmol)をn−ブタノール(10mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。これに、塩化チオニル(0.04mL、8.3mmol)を0℃に温度を30分間維持しながら滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、16時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣を10%重炭酸ナトリウム水溶液で希釈してpH7にし、酢酸エチルで抽出した(2x25mL)。有機相を水(10mL)およびブライン(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル中の5%酢酸エチル)により精製して表題化合物を得た。
収率:50.0mg(38.4%)。H NMR(CDCl):δ 7.56(d,1H、J=15.9Hz)、7.08(s,1H)、7.01(d,1H)、6.87(d,1H)、6.25(d,1H,J=15.9Hz)、5.86(bs,1H)、5.80(bs,1H)、4.19(t,2H)、1.70(m,2H)、1.44(m,2H)、0.95(t,3H);MS(ES−)235(M−1)。
【0077】
(実施例8)
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−1−ピペリジン−1−イル−プロペノン(化合物8)
化合物1(0.500g、2.77mmol)をテトラヒドロフラン(30mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。これに、塩化チオニル(1mL、13.85mmol)を、0℃に温度を維持して30分かけて滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、2時間撹拌した。反応混合物を減圧下で乾燥するまで濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン(10mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。ピペラジン(1.1mL、11.08mmol)を滴下し、反応混合物を室温(25℃)まで温め、一晩(16時間)撹拌した。反応終了時に、混合物を減圧下で濃縮した。残渣を10%重炭酸ナトリウム水溶液でpH7まで希釈し、酢酸エチルで抽出した(2x25mL)。有機相を水(10mL)およびブライン(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィー(クロロホルム中の2%メタノール)により精製して表題化合物を得た。
収率:0.350g(51.02%)。H NMR(DMSO−d):δ 7.27(d,1H,J=15.3Hz)、7.04(d,1H)、6.95(dd,1H,),6.89(d,1H,J=15.3Hz)、6.71(d,1H,)、3.53(m,4H)、1.57(m,6H);MS(ES−):246.11。
【0078】
(実施例9)
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−1−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−プロペノン(化合物9)
化合物1(0.3g、1.66mmol)をテトラヒドロフラン(5mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。これに、塩化チオニル(0.36mL、5.1mmol)を、0℃に温度を30分間維持しながら滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、2時間撹拌した。反応混合物を減圧下で乾燥するまで濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン(5mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。1−エチル−ピペラジン(1.1mL、8.62mmol)を滴下し、反応混合物を室温(25℃)まで温め、一晩(16時間)撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣を10%重炭酸ナトリウム水溶液でpH7まで希釈し、酢酸エチルで抽出した(2x25mL)。有機相を水(10mL)およびブライン(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム中の5%メタノール)により精製して表題化合物を得た。
収率:180mg(39.2%)。H NMR(DMSO−d):δ 9.43(s,1H)、8.97(s,1H)、7.45(d,1H,J=15.9Hz)、7.05(d,1H)、6.96(dd,1H)、6.89(d,1H,J=15.9Hz)、6.71(d,1H)、3.56(m,4H)、2.32(m,6H)、0.99(t,3H);MS(ES+):277(M+1)。
塩酸塩の調製:
4−[3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリロイル]−1−エチル−ピペラジン−1−イウム塩化物
化合物9(2.0g、7.29mmol)を10mL メタノール中に溶解した。溶液を0−5℃まで冷却し、5%エーテル塩酸溶液(25mL)を添加し、10分間撹拌した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、1時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、生じた固体を完全に乾燥させて所望の生成物を得た。
収率:2.1g(93.3%)。H NMR(DMSO−d):δ10.88(s,1H)、7.35(d,1H,J=15.3Hz)、7.10(d,1H,J=1.5Hz)、6.99(d,1H,J=1.5Hz)、6.97(d,1H,J=15.3Hz)、6.74(d,1H,J=8.4Hz)、4.48(m,2H)、3.46(m,2H)、3.11(m,4H)、2.91(m,2H)、1.23(t,3H)。
【0079】
(実施例10)
1−(4−ベンジル−ピペラジン−1−イル)3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノン(化合物10)
化合物1(0.3g、1.66mmol)をテトラヒドロフラン(5mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。これに、塩化チオニル(0.6mL、8.5mmol)を0℃に温度を30分間維持しながら滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、2時間撹拌した。反応混合物を減圧下で乾燥するまで濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン(5mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。1−ベンジル−ピペラジン(0.9mL、5.2mmol)を滴下し、反応混合物を室温(25℃)まで温め、一晩(16時間)撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣を10%重炭酸ナトリウム水溶液でpH7まで希釈し、酢酸エチルで抽出した(2x25mL)。有機相を水(10mL)およびブライン(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム中の5%メタノール)により精製して表題化合物を得た。
収率:160mg(28.4%)。H NMR(CDOD):δ 7.44(d,1H,J=15.3Hz)、7.32(m,5H)、7.03(d,1H)、6.96(dd,1H)、6.85(d,1H,J=15.3Hz)、6.75(d,1H)、3.71(bs,4H)、3.56(s,2H)、2.49(bs,4H);MS(ES+):339(M+1)。
塩酸塩の調製:
4−[3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリロイル]−1−ベンジル−ピペラジン−1−イウム塩化物
化合物10(0.5g、1.49mmol)を15mLのメタノールに溶解した。溶液を0−5℃まで冷却し、5%エーテル塩酸溶液(25mL)を添加し、10分間撹拌した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、1時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、生じた固体を完全に乾燥させて所望の生成物を得た。
収率:0.52g(94.54%)。H NMR(DMSO−d):δ 9.56(s,1H)、7.56(m,2H)、7.32(d,1H,J=15.3Hz)、9.06(d,1H)、6.95(m,1H)、6.89(d,1H,J=15.3Hz)、6.72(d,1H)、4.43(m,2H)、4.27(m,2H)、3.26(m,3H)、2.89(m,3H)。
【0080】
(実施例11)
(E)−3−{4−[3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリロイル]−ピペラジン−1−イル}プロピオニトリル(化合物11)
化合物1(0.400g、2.22mmol)をテトラヒドロフラン(30mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。これに、塩化オキサリル(0.57mL、6.66mmol)を、温度を0℃に維持して30分かけて滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、2時間撹拌した。反応混合物を減圧下で乾燥するまで濃縮した。残渣をテトラヒドラン(15mL)に溶解し、窒素雰囲気下で0℃まで冷却した。これを、0℃に保持したテトラヒドロフラン中の3−ピペラジン−1−イル−プロピオニトリル(0.37g、2.66mmol)およびトリエチルアミン(0.67ml、48.8mmol)の溶液に滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、一晩(16時間)撹拌した。反応終了時に、混合物を減圧下で濃縮し、シリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィー(クロロホルム中の1%メタノール)により精製して表題化合物を得た。
収率:0.130g(19.43%)。H NMR(CDOD):δ 7.45(d,1H,J=15Hz)、7.04(d,1H)、6.97(dd,1H)、6.86(d,1H,J=15.3Hz)、6.76(d,1H)、3.75(m,4H)、2.71(m,4H)、2.66(m,4H);MS(ES+):302.14。
【0081】
(実施例12)
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−1−[4−(1−メチル−ピペリジン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−プロペノン(化合物12)
化合物1(0.500g、2.77mmol)をテトラヒドロフラン(30mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。これに、塩化オキサリル(0.52mL、6.09mmol)を、温度を0℃に保持して30分かけて滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、3時間撹拌した。反応混合物を減圧下で乾燥するまで濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン(10mL)中に溶解し、窒素雰囲気下で0℃まで冷却した。これを、テトラヒドロフラン中の1−(1−メチルピペリジン−4−イル)ピペラジン(0.45g、2.49mmol)およびトリエチルアミン(0.84mL、6.09mmol)の溶液に0℃に維持しながら滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、撹拌した(16時間)。反応終了時に、混合物を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィー(クロロホルム中の1%メタノール)により精製して表題化合物を得た。
収率:0.170g、(17.74 %)。H NMR(CDOD):δ 7.47(d,1H,J=15.3Hz)、7.06(d,1H)、6.98(dd,1H)、6.87(d,1H,J=15.3Hz)、6.79(d,1H)、3.76(bs,4H)、3.18(m,2H)、2.63(bs,4H)、2.51(s,3H)、2.45(m,3H)、1.96(m,2H)、1.69(m,2H);MS(ES+):346.21。
【0082】
(実施例13)
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−1−(4−フェニルピペラジン−1−イル)−プロペノン(化合物13)
化合物1(0.500g、2.77mmol)をテトラヒドロフラン(30mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。これに、塩化オキサリル(0.71mL、8.31mmol)を、温度を0℃に維持して30分かけて滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、3時間撹拌した。反応混合物を減圧下で乾燥するまで濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン(10mL)中に溶解し、窒素雰囲気下で0℃まで冷却した。これを、テトラヒドロフラン中のN−フェニル−ピペラジン(0.54mL、3.60mmol)およびトリエチルアミン(0.84mL、6.09mmol)の溶液に0℃に維持しながら滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、一晩(16時間)撹拌した。反応終了時に、混合物を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィー(クロロホルム中の1%メタノール)により精製して表題化合物を得た。
収率:0.100mg(11.11%)。H NMR(CDOD):δ 7.47(d,1H,J=15.3Hz)、7.23(t,2H)、7.05(d,1H)、6.98(d,2H)、6.91(1H,J=15.3Hz)、6.84(m,1H)、6.77(d,1H)、3.85(bs,4H)、3.19(bs,4H);MS(ES−):323.12。
【0083】
(実施例14)
(E)−1−(4−アセチル−ピペラジン−1−イル)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノン(化合物14)
化合物1(0.500g、2.77mmol)をテトラヒドロフラン(30mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。これに、塩化オキサリル(0.52mL、6.09mmol)を、温度を0℃に維持して30分かけて滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、3時間撹拌した。反応混合物を減圧下で乾燥するまで濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン(10mL)中に溶解し、窒素雰囲気下で0℃まで冷却した。これを、テトラヒドロフラン中のN−アセチル−ピペラジン(0.35g、2.77mmol)およびトリエチルアミン(0.84mL、6.09mmol)の溶液に0℃に維持しながら滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、一晩(16時間)撹拌した。反応終了時に、混合物を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(クロロホルム中の1%メタノール)により精製して表題化合物を得た。
収率:0.3g(37.26%)。H NMR(DMSO−d):δ 8.93(bs,1H)、7.34(d,1H,J=15.3Hz)、6.99(dd,1H)、7.09(d,1H,J=15Hz)、6.75(d,1H)、3.85(m,8H)、2.03(s,3H);MS(ES+):291.15(M+1)。
【0084】
(実施例15)
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−1−(4−フェネチル−ピペラジン−1−イル)−プロペノン(化合物15)
化合物1(0.500g、2.77mmol)をテトラヒドロフラン(30mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。これに、塩化オキサリル(0.35mL、4.15mmol)を、温度を0℃に維持して30分かけて滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、3時間撹拌した。反応混合物を減圧下で乾燥するまで濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン(10mL)中に溶解し、窒素雰囲気下で0℃まで冷却した。これを、テトラヒドロフラン中の1−フェニルエチル−ピペラジン(0.52g、2.77mmol)およびトリエチルアミン(0.84mL、6.09mmol)の溶液に0℃に維持しながら滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、一晩(16時間)撹拌した。反応終了時に、混合物を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィー(クロロホルム中の1%メタノール)を精製して表題化合物を得た。
収率:0.150g(15.33%)。MS(ES+):353.24。
【0085】
(実施例16)
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−1−モルホリン−4−イル−プロペノン(化合物16)
実施例1の化合物(0.4g、2.22mmol)をテトラヒドロフラン(30mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。これに、塩化チオニル(0.51mL、7.10mmol)を、温度を0℃に維持して30分かけて滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、2時間撹拌した。反応混合物を減圧下で乾燥するまで濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン(10mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。モルホリン(0.77mL、8.88mmol)を滴下し、反応混合物を室温(25℃)まで温め、一晩(16時間)撹拌した。反応終了時に、混合物を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィー(クロロホルム中の1%メタノール)により精製して表題化合物を得た。
収率:0.200g(28.94%)。H NMR(DMSO−d):δ 7.31(d,1H,J=15Hz)、7.06(bs,1H)、6.96(d,1H)、6.89(d,1H,J=15.3Hz)、6.71(d,1H)、3.60(m,8H)。
【0086】
(実施例17)
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−N−(3−ジメチルアミノ−プロピル)−アクリルアミド(化合物17)
化合物1(0.2g、1.11mmol)、N,N−ジメチル−プロパン−1,3−ジアミン(0.13mL、1.11mmol)およびHOBT(0.2g、1.32mmol)の混合物をN,N−ジメチルホルムアミド(5mL)中に溶解した。トリエチルアミン(0.4mL、3.3mmol)をこの溶液に0℃で添加した。10分後、EDC(0.25g、1.3mmol)を0℃で添加し、反応混合物を室温で24時間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮し、残渣を酢酸エチル(25mL)で希釈した。有機相を水(10mL)、ブライン(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム中の0.3%メタノール)により精製して表題化合物を得た。
収率:190mg(64.7%)。MS(ES−):263(M−1)。
【0087】
(実施例18)
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−N−イソプロピル−アクリルアミド(化合物18)
化合物1(0.500g、2.77mmol)をテトラヒドロフラン(30mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。これに、塩化オキサリル(0.71mL、8.31mmol)を、温度を0℃に維持して30分かけて滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、3時間撹拌した。反応混合物を減圧下で乾燥するまで濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン(10mL)中に溶解し、窒素雰囲気下で0℃まで冷却した。これを、イソプロピルアミン(0.30mL、3.60mmol)およびトリエチルアミン(0.84mL、6.09mmol)の溶液に0℃に維持しながら滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、一晩(16時間)撹拌した。反応終了時に、混合物を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィー(クロロホルム中の1%メタノール)により精製して表題化合物を得た。
収率:0.150g(24.42%)。H NMR(CDOD):δ 7.36(d,1H,J=15.6Hz)、6.98(d,1H)、6.88(dd,1H)、6.74(d,1H)、6.32(d,1H,J=15.6Hz)、4.06(m,1H)、1.17(d,6H)。
【0088】
(実施例19)
1−(4−ベンジル−ピペリジン−1−イル)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノン
化合物1(5g、27.7mmol)をテトラヒドロフラン(60mL)中に溶解し、0℃まで冷却した。これに、塩化オキサリル(5.26mL、61.0mmol)を、温度を0℃に維持しながら30分かけて滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、3時間撹拌した。反応混合物を減圧下で乾燥するまで濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン(20mL)中に溶解し、窒素雰囲気下で0℃まで冷却した。これを、4−ベンジルピペリジン(5.35g、30.5mmol)およびトリエチルアミン(5.52mL、41.6mmol)の溶液に0℃に維持しながら滴下した。反応混合物を室温(25℃)まで温め、一晩(16時間)撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム中の1%メタノール)により精製して表題化合物を得た。
収率:2.2g(23.50%)。H NMR(CDOD):δ 7.41(d,1H、J=15.3Hz)、7.25(m,2H)7.15(m,3H)、7.02(d,1H)、6.95(dd,1H)、6.85(d,1H,J=15.3Hz)、6.76(d,1H)、4.57(m,1H)、4.20(m,1H)、3.08(m,1H)、2.67(m,1H)、2.56(d,2H)、1.85(m,1H)、1.73(m,2H)、1.18(m,2H);MS(ES−):336.1(M−1)。
【0089】
グリーベック感受性細胞株K−562、Ba/F3 Bcr−Abl/WTならびにグリーベック耐性細胞株K−562−Rおよび32DclBcr−Abl T315I、Ba/F3 Bcr−Abl/T315I、Ba/F3 Bcr−Abl/E255K、Ba/F3 Bcr−Abl/H396P、Ba/F3 Bcr−Abl/M351T、Ba/F3 Bcr−Abl/F359V、Ba/F3 Bcr−Abl/E255V、Ba/F3 Bcr−Abl/F317L、Ba/F3 Bcr−Abl/H396R、Ba/F3 Bcr−Abl/M244V、Ba/F3 Bcr−Abl/Q252H、Ba/F3 Bcr−Abl/Y253FおよびBa/F3 Bcr−Abl/Y253Hを抑制する時の本発明の化合物の有効性は、以下に記載の多くの薬理学的アッセイにより決定することができる。
【0090】
以下の略記を本明細書中で用いる。
ATCC :アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関
OHSU :アメリカ合衆国、オレゴン州のオレゴン保健科学大学
NPRC :インド、ムンバイのニコラスピラマル研究センター
FBS :ウシ胎児血清
IMDM :イスコフ改変ダルベッコ培地
RPMI :ロズウェルパーク記念研究所
SDS−PAGE:ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動
PBS :リン酸緩衝食塩水
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
NP−40 :ノニデットP−40
HEPES :(N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N’−[2−エタンス ルホン酸])
DTT :ジチオトレイトール
EGTA :エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)−N,N,N ’N’−四酢酸
IL3 :インターロイキン3
【0091】
(実施例20)
細胞増殖アッセイ
H−チミジン取り込みアッセイ:H−チミジン取り込みは、培養中の分裂する細胞数に対して直接的に比例する。
【0092】
プロトコル:
細胞株を異なる供給源から入手し(表1)、供給者により推奨されるごとく増殖の最適条件で維持した。指数増殖している培養物を、以下に記載のごとく異なる濃度の試験化合物および標準物質にかけた。
表1:様々な造血細胞株の記載
【0093】
【表1】

【0094】
方法:
細胞を、透明な96ウェル組織培養プレート(アメリカ合衆国のNUNC)に(0.180mL中の)1ウェルあたり3x10から5x10個の密度で撒種し、5%二酸化炭素インキュベーターにおいて37℃で2−6時間培養した。試験化合物を様々な濃度で培地(10%FBS含有RPMI1640)中に希釈し、0.02mLの10xストックを3系にて各ウェルに添加した。プレートを5%二酸化炭素インキュベーターにおいて37℃で72時間培養し、途中、24時間ごとに顕微鏡で観察した。
【0095】
72時間の培養後、プレートをプレート遠心分離器において1000rpmで10分間遠心分離にかけた。上澄み液を慎重に吸引し、H−チミジンを、0.1mLの完全培地に0.5μCi/ウェルの濃度で全ウェルに添加した。さらに、プレートを5%二酸化炭素インキュベーターにおいて37℃で6−14時間培養した。
【0096】
培養期間の終了時に、96ウェルガラスフィルタープレート(カタログ番号6005177、Unifilter−96、GF/B、アメリカ合衆国のPackard)上でcell harvester(アメリカ合衆国のPackard)を用いて、96ウェルプレートから細胞を収集した。フィルタープレートを、60℃で1時間か、または室温(25℃)で一晩(16時間)で完全に乾燥させた。乾燥後、プレートの底面をシールで塞ぎ、0.05mL/ウェルのシンチラント液(scintillant fluid)(Microscint−O、Packard)を添加した。プレートを上部から密封し、シンチレーションカウンター(TopCount、Packard)で読み取り、抑制のパーセント値およびIC50をコントロール値と比較して算出した。
表2:様々な細胞株による化合物2の抗増殖活性
【0097】
【表2】

【0098】
結論:本発明の化合物2は、グリーベック耐性細胞K−562、K−562−Rおよび32DclBcr−Abl T315Iの増殖を抑制した。
【0099】
(実施例21)
インビトロ抗増殖活性を用いたイマチニブ耐性細胞株に対する試験化合物の特異性の決定。
数種類のイマチニブ耐性細胞株を、Brian Druker博士の研究室、ハワードヒューズ医療研究所、アメリカ合衆国、オレゴン州、ポートランドのオレゴン保健科学大学(OHSU)ガン研究所から入手した。その詳細を表3に示す。これらの細胞株を供給者により推奨される増殖の最適条件下で維持した。
表3:様々なイマチニブ感受性およびイマチニブ耐性細胞株の記載
【0100】
【表3】

ベクターのみを含むBa/F3−細胞(Ba/F3−pSRα)
**増殖因子としてのIL3
【0101】
表3に記載される細胞株を試験化合物の抗増殖活性をテストするのに用いた。抗増殖薬としての試験化合物の活性を、CCK−8アッセイを用いてイマチニブ耐性細胞株においてイマチニブメシラートと比較した。
【0102】
細胞増殖および細胞障害性CCK−8アッセイ:
Cell Counting Kit−8(CCK−8)は、同仁化学研究所の高水溶性テトラゾリウム塩を利用することにより非常に簡便なアッセイを可能にする。CCK−8は、非放射性であり、細胞増殖時における生存細胞数の測定のための高感度の比色定量アッセイおよび細胞障害性アッセイを可能にする。細胞中のデヒドロゲナーゼにより生じるホルマザン色素の量は、直接的に生存細胞の数に比例する。それゆえ、CCK−8アッセイをH−チミジン取り込みアッセイに置き換えることもできる。
【0103】
化合物の調製
イマチニブメシラートをインドのNatco Pharmaから購入した。試験化合物および標準イマチニブメシラートについて、DMSOで10mMストックを調製した。
【0104】
方法
細胞を、透明な96ウェル組織培養プレート(アメリカ合衆国のNUNC)に1ウェル(0.09mL)あたり〜5x10個の密度で撒種し、37℃、5%COインキュベーターで2−6時間培養した。異なる濃度の試験化合物および標準イマチニブを各ウェルに3系にて添加した。さらに、プレートを37℃、5%COインキュベーターで72時間培養した。10μlのCCK−8溶液を各ウェルに添加し、プレートをインキュベーター内で1−4時間培養した。マイクロプレートリーダーを用いて450nmの吸光度を測定した。
【0105】
A.抑制のパーセント値およびIC50をコントロール値と比較して算出した。結果を以下の表4および5に示す。
【0106】
B.試験化合物の抗増殖活性を、臨床で見られるイマチニブ感受性(Ba/F3 Bcr−Abl/WT)および耐性(Ba/F3 Bcr−Abl/T315I)において、IC50値としてμMで表し、図1で示されるグラフにより表す。
【0107】
化合物の抗増殖活性を、臨床で見られるイマチニブ耐性の低頻度変異における5つの細胞株(Ba/F3 Bcr−Abl/E255K、Ba/F3 Bcr−Abl/H396P、Ba/F3 Bcr−Abl/E255V、Ba/F3 Bcr−Abl/M244VおよびBa/F3 Bcr−Abl/Q252H)において、平均IC50値としてμMで表し、図2に示されるグラフにより表す。
【0108】
化合物の抗増殖活性を、臨床で見られるイマチニブ耐性の高頻度変異における7つの細胞株(Ba/F3 Bcr−AbI/T315I、Ba/F3 Bcr−Abl/M351T、Ba/F3 Bcr−Abl/F359V、Ba/F3 Bcr−Abl/F317L、Ba/F3 Bcr−Abl/H396R、Ba/F3 Bcr−Abl/Y253FおよびBa/F3 Bcr−Abl/Y253H)において、平均IC50値としてμMで表し、図3で示されるグラフにより表す。
表4:イマチニブ感受性および耐性細胞株における本発明の化合物についての抑制濃度(IC50)。
【0109】
【表4】

表5:イマチニブ耐性細胞株における本発明の化合物の細胞障害性抑制活性
【0110】
【表5】

I−化合物1、II−化合物2、III−化合物3、IV−化合物5、V−化合物6、VI−化合物10、VII−化合物19、VIII−イマチニブメシラート
【0111】
結論:本発明の化合物がBcr−Abl変異イマチニブ耐性細胞に対して有意な抑制活性を示したという結果から明らかである。
【0112】
(実施例22)
Bcr−ablキナーゼアッセイ
目的:
Bcr−ablの自己リン酸化の抑制を研究するためである。K−562細胞溶解物に由来するp210bcr−ablチロシンキナーゼの免疫沈殿、次いでキナーゼ酵素アッセイにより研究を行った。反応混合物をSDS−PAGE、次にオートラジオグラフィーにかけた。
【0113】
イントロダクション:
免疫沈殿は、粗細胞溶解物から特定の抗体を用いて特定のタンパク質の精製を可能にする技術である。この一次抗体は、残ったサンプルから抗体−抗原複合体を物理的に分離するために、その方法において、すでにアガロースに結合しているか、またはプロテイン−A−セファロースビーズに結合しうるかのどちらかである。
【0114】
方法:
本発明の化合物によるp210bcr−ablチロシンキナーゼの自己リン酸化抑制について調べるため、野生型Bcr−ablを発現するK−562細胞を用いた。2x10個のK−562細胞を、(実施例20に記載されるごとく、K−562を用いた抗増殖活性データに基づいた)IC50および3xIC50濃度で処理し、加湿5%COインキュベーターで24時間培養した。細胞をPBS溶液で洗浄し、溶解緩衝液(CelLytic M Cell Lysis reagent、アメリカ合衆国のSigma Aldrich)を用いて低温条件で2−3時間溶解した。タンパク質をブラッドフォード法(Bradford reagent、アメリカ合衆国のSigma Aldrich)により測定した。免疫沈殿では、等量のタンパク質を全てのサンプルから取得する。p210bcr−ablタンパク質をポリクローナル抗c−abl抗体(アメリカ合衆国のSanta Cruz Biotechnologies)を用いて免疫沈殿し、次いでプロテインA−セファロースと4℃で一晩インキュベートした。免疫複合体を単離し、NET−N緩衝液(20mM Tris−HCl pH7.5、100mM NaCl、1mM EDTAおよび0.5% NP40)で3回洗浄し、次いで、キナーゼ緩衝(50mM HEPES pH7.5、1mM DTT、2.5 EGTA、10mM β−グリセロリン酸、1mM NaFおよび10mM MgCl)水溶液で再懸濁した。
【0115】
1反応あたり0.5μCiの(γ32P)−アデノシン三リン酸を用いてキナーゼ反応を行い、室温(25℃)で30分間インキュベートした。SDSサンプル緩衝液を添加し、95℃で5分間加熱することよりキナーゼ反応を停止した。自己リン酸化反応生成物をSDS−PAGE上で分離させ、オートラジオグラフィーにより検出する。
【0116】
結果:免疫沈殿、次いでSDS−PAGEおよびオートラジオグラフィーは、バンド密度の減少により観察されるように、Bcr−Abl自己リン酸化の減少を示した。化合物2が強力なBcr−ablチロシンキナーゼ阻害剤であることがわかった。
【0117】
(実施例23)
フローサイトメトリーを用いるBcr−Abl変異型イマチニブ耐性細胞株における細胞周期およびアポトーシスについての本発明の化合物の効果。
フローサイトメトリー用の細胞を10x10細胞/mLの密度で撒種し、試験化合物/イマチニブ(5μM)と37℃で5%COインキュベーターにおいて24時間培養した。培養終了時に、1000rpmで10分間遠心分離することにより細胞を収集し、次いでリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄した。最終洗浄からの細胞沈殿物を70%氷冷エタノール中に除々に再懸濁して染色の透過性を促進させた。細胞懸濁液をヨウ化プロピジウムで染色する前に最低4時間保存した。固定した細胞をRNase A(50μg/mL)の存在下においてPI(80μg/mL)で染色し、細胞周期分析用のBD FACS caliberで読み取った。この実験の結果を図4に示す。
【0118】
結論:イマチニブ耐性細胞株における本発明の化合物により誘導されるアポトーシス誘導は顕著である。
【0119】
(実施例24)
イマチニブ耐性およびイマチニブ感受性腫瘍モデルにおける本発明の化合物のインビボ有効性試験を、全長野生型Bcr−Abl(Ba/F3 Bcr−Abl/WT)または変異型Bcr−Abl(Ba/F3 Bcr−Abl/T315I)を発現するBa/F3トランスフェクタントのごとき細胞株を用いることにより行った。
【0120】
目的
イマチニブ耐性およびイマチニブ感受性腫瘍モデルにおけるコーヒー酸誘導体のインビボ有効性試験。
【0121】
細胞株
全長野生型イマチニブ感受性(Ba/F3 Bcr−Abl/WT)または変異型イマチニブ耐性(Ba/F3 Bcr−Abl/T315I)を発現する細胞株Ba/F3トランスフェクタントをこの実験で用いた。これらの組み換え細胞株は、Brian Druker博士の研究室、ハワードヒューズ医療研究所、アメリカ合衆国、オレゴン州、ポートランドのオレゴン保健科学大学(OHSU)から使用を許諾された(Cancer Research,2002,62,7149−7153)。
【0122】
化合物保存
標準物質を含む全ての化合物を、琥珀色の瓶中で4−8℃において保存した。溶液中の化合物もまた冷蔵庫で4−8℃において保管した。動物注入用のサンプルを、毎日作りたてを調製し、残存量を貯めておき、化学物質廃棄用の標準実施要領に従って廃棄した。
【0123】
用量調製
必要な化合物の量を測り、0.5%(w/v)カルボキシメチルセルロース(CMC)と混合し、除々に水を添加しながらTween−20(secundum artum)で粉砕して最終濃度に調合した。
【0124】
SCIDマウスにおける有効性実験
6−9週齢、〜20gの重量である110匹のeverly ombined mmune−eficient(SCID系統−CBySmn.CB17−Prkdcscid/J、ジャクソン研究室、ストック番号001803)雄マウスの群を用いた。
【0125】
Ba/F3 Bcr−Abl/WT細胞およびBa/F3 Bcr−Abl/T315I細胞を、10%ウシ胎児血清を含有するRPMI1640培地において5%COインキュベーターにて37℃で増殖させた。細胞を1000rpmで10分間の遠心分離により沈殿させた。細胞を生理食塩水中に再懸濁させて1mLあたり80−100x10細胞数とし、この細胞懸濁液の0.2mLをSCIDマウスに皮下(s.c.)経路により注入した。マウスを、目に見える腫瘍塊について1日おきに観察した。腫瘍の大きさが直径5−7mmの大きさに達したら、動物を無作為に各処理群に分けた。コントロールまたは試験化合物を毎日投与した。腫瘍の大きさを2−5日の間隔で記録した。腫瘍の重さ(mg)を、比重を1、πを3と仮定して長楕円に関する式:{長さ(mm)x[幅(mm)]x0.5}に従って算出した。化合物で処理した動物における腫瘍の増殖を、T/C(処理/コントロール)x100%として算出し、増殖抑制パーセント(GI%)を[100−T/C%]とした。
各処理群を表6に示す。
結果を図5Aおよび図5Bに図示する。
表6:異種移植モデルにおける処理群(セットIおよびセットII)
(セットI)命名:Ba/F3 Bcr−Abl/T315I
【0126】
【表6】

p.o.=経口;n=動物数
q1dx12=12日間単回投与
(セットII)命名:Ba/F3 Bcr−Abl/WT
【0127】
【表7】

p.o.=経口;n=動物数
q1dx14=14日間単回投与
【0128】
結論:図5Aおよび図5Bに表されるデータは、異種移植モデルを発現する野生型Bcr−Abl、すなわちBa/F3 Bcr−Abl/WTの濃度と同じ濃度でテストする場合、Bcr−Ablの最も優勢な変異型、すなわちBa/F3 Bcr−Abl/T315Iを抑制する時に、本発明の化合物がイマチニブメシラートより有意に高いインビボ有効性を示したことを示す。
【0129】
この明細書および特許請求の範囲で用いられるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、内容が明確に別のことを示していない限り、複数の対象を含むことに注意すべきである。それゆえ、例えば、「化合物」を含む組成物は、2またはそれ以上の化合物の混合を含むものとする。用語「または」は、内容が明確に別のことを示していない限り、一般的に、「および/または」を含む意味で用いられることにも注意すべきである。
【0130】
本明細書における全ての刊行物および特許出願は、本明細書が関連する技術分野のレベルを示している。
【0131】
本発明は、様々な特定のおよび好ましい具体例と技術について記載されている。しかしながら、多くのバリエーションと修飾がなされうるが、それらもまた本発明の精神と範囲内であると理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリーベックによる治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML)の治療方法であって、一般式(1)
【化1】

(1)
[式中、
Xは、O、NH、またはヘテロシクリルであり;
Rは、H、アルキル、アリール、ヘテロシクリル、または存在しない]
で示される、全てのその立体異性体および互変異性体形態のコーヒー酸またはその誘導体、ならびに全ての割合におけるその混合物、その医薬上許容される塩、その医薬上許容される溶媒和物、その医薬上許容される多形体、またはそのプロドラッグの治療上有効な量を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項2】
グリーベックによる治療に耐性である細胞の増殖を減少させる方法であって、一般式(1)
【化2】

(1)
[式中、
Xは、O、NH、またはヘテロシクリルであり;
Rは、H、アルキル、アリール、ヘテロシクリル、または存在しない]
で示される、全てのその立体異性体および互変異性体形態のコーヒー酸またはその誘導体、ならびに全ての割合におけるその混合物、その医薬上許容される塩、その医薬上許容される溶媒和物、その医薬上許容される多形体、またはそのプロドラッグの治療上有効な量を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項3】
コーヒー酸またはその誘導体が:
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸[コーヒー酸];
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸メチルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸エチルエステル;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−アクリル酸2−ニトロ−エチルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸n−プロピルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸i−プロピルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸ブチルエステル;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−1−ピペリジン−1−イル−プロペノン;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−1−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−プロペノン;
1−(4−ベンジル−ピペラジン−1−イル)3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノン;
(E)−3−{4−[3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリロイル]−ピペラジン−1−イル}プロピオニトリル;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−[4−(1−メチル−ピペリジン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−プロペノン;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−(4−フェニルピペラジン−1−イル)−プロペノン;
(E)−1−(4−アセチル−ピペラジン−1−イル)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノン;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−1−(4−フェネチル−ピペラジン−1−イル)−プロペノン;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−1−モルホリン−4−イル−プロペノン;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−N−(3−ジメチルアミノ−プロピル)−アクリルアミド;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−N−イソプロピル−アクリルアミド;または
1−(4−ベンジル−ピペリジン−1−イル)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノン
である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
コーヒー酸誘導体が:
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸メチルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸エチルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸n−プロピルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸i−プロピルエステル;
1−(4−ベンジル−ピペラジン−1−イル)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノン;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−N−イソプロピル−アクリルアミド;または
1−(4−ベンジル−ピペリジン−1−イル)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノン
である、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項5】
式(1)で示されるコーヒー酸またはその誘導体が、合成されるか、または天然物に由来する、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項6】
グリーベックに対する耐性が、Bcr−Abl変異により引き起こされる、請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
細胞が、K−562−R、32DclBcr−Abl T315I、Ba/F3 Bcr−Abl/T315I、Ba/F3 Bcr−Abl/E255K、Ba/F3 Bcr−Abl/H396P、Ba/F3 Bcr−Abl/M351T、Ba/F3 Bcr−Abl/F359V、Ba/F3 Bcr−Abl/E255V、Ba/F3 Bcr−Abl/F317L、Ba/F3 Bcr−Abl/H396R、Ba/F3 Bcr−Abl/M244V、Ba/F3 Bcr−Abl/Q252H、Ba/F3 Bcr−Abl/Y253F、またはBa/F3 Bcr−Abl/Y253H細胞株を含む、請求項2記載の方法。
【請求項8】
一般式(1)
【化3】

(1)
[式中、
Xは、O、NH、またはヘテロシクリルであり;
Rは、H、アルキル、アリール、ヘテロシクリル、または存在しない]
で示される、全てのその立体異性体および互変異性体形態のコーヒー酸またはその誘導体、ならびに全ての割合におけるその混合物、その医薬上許容される塩、その医薬上許容される溶媒和物、その医薬上許容される多形体、またはそのプロドラッグの治療上有効な量を活性成分として、単独でまたは少なくとも1つの医薬上許容される賦形剤を一緒に含む、グリーベックによる治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML)の治療のための医薬組成物。
【請求項9】
請求項8記載の医薬組成物の治療上有効な量をそれを必要とする哺乳動物に投与することを含む、グリーベックによる治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML)を治療する方法。
【請求項10】
一般式(1)
【化4】

(1)
[式中、
Xは、O、NH、またはヘテロシクリルであり;
Rは、H、アルキル、アリール、ヘテロシクリル、または存在しない]
で示される、全てのその立体異性体および互変異性体形態のコーヒー酸またはその誘導体、ならびに全ての割合におけるその混合物、その医薬上許容される塩、その医薬上許容される溶媒和物、その医薬上許容される多形体、またはそのプロドラッグの使用であって、グリーベックによる治療に耐性である慢性骨髄性白血病(CML)の治療のための医薬の製造のための使用。
【請求項11】
別の抗ガン剤をさらに含む、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項12】
コーヒー酸またはその誘導体が:
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸[コーヒー酸];
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸メチルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸エチルエステル;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−アクリル酸2−ニトロ−エチルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸n−プロピルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸i−プロピルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸ブチルエステル;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−1−ピペリジン−1−イル−プロペノン;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−1−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−プロペノン;
1−(4−ベンジル−ピペラジン−1−イル)3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノン;
(E)−3−{4−[3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリロイル]−ピペラジン−1−イル}プロピオニトリル;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−[4−(1−メチル−ピペリジン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−プロペノン;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−(4−フェニルピペラジン−1−イル)−プロペノン;
(E)−1−(4−アセチル−ピペラジン−1−イル)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノン;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−1−(4−フェネチル−ピペラジン−1−イル)−プロペノン;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−1−モルホリン−4−イル−プロペノン;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−N−(3−ジメチルアミノ−プロピル)−アクリルアミド;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−N−イソプロピル−アクリルアミド;または
1−(4−ベンジル−ピペリジン−1−イル)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノン
である、請求項10記載の使用。
【請求項13】
コーヒー酸誘導体が:
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸メチルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸エチルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸n−プロピルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸i−プロピルエステル;
1−(4−ベンジル−ピペラジン−1−イル)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノン;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−N−イソプロピル−アクリルアミド;または
1−(4−ベンジル−ピペリジン−1−イル)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノン
である、請求項10記載の使用。
【請求項14】
式(1)で示されるコーヒー酸またはその誘導体が、合成されるか、または天然物に由来する、請求項10記載の使用。
【請求項15】
グリーベックに対する耐性が、Bcr−Abl変異により引き起こされる、請求項10記載の使用。
【請求項16】
耐性が、K−562−R、32DclBcr−Abl T315I、Ba/F3 Bcr−Abl/T315I、Ba/F3 Bcr−Abl/E255K、Ba/F3 Bcr−Abl/H396P、Ba/F3 Bcr−Abl/M351T、Ba/F3 Bcr−Abl/F359V、Ba/F3 Bcr−Abl/E255V、Ba/F3 Bcr−Abl/F317L、Ba/F3 Bcr−Abl/H396R、Ba/F3 Bcr−Abl/M244V、Ba/F3 Bcr−Abl/Q252H、Ba/F3 Bcr−Abl/Y253F、またはBa/F3 Bcr−Abl/Y253H細胞株中で見出される変異から生じる、請求項10記載の使用。
【請求項17】
耐性が、K−562−R、32DclBcr−Abl T315I、Ba/F3 Bcr−Abl/T315I、Ba/F3 Bcr−Abl/E255K、Ba/F3 Bcr−Abl/H396P、Ba/F3 Bcr−Abl/M351T、Ba/F3 Bcr−Abl/F359V、Ba/F3 Bcr−Abl/E255V、Ba/F3 Bcr−Abl/F317L、Ba/F3 Bcr−Abl/H396R、Ba/F3 Bcr−Abl/M244V、Ba/F3 Bcr−Abl/Q252H、Ba/F3 Bcr−Abl/Y253F、またはBa/F3 Bcr−Abl/Y253H細胞株中で見出される変異から生じる、請求項1記載の方法。
【請求項18】
グリーベックによる治療に耐性である細胞の増殖を減少させる方法であって、一般式(1)

(1)
[式中、
Xは、O、NH、またはヘテロシクリルであり;
Rは、H、アルキル、アリール、ヘテロシクリル、または存在しない]
により示される、全てのその立体異性体および互変異性体形態のコーヒー酸またはその誘導体、ならびに全ての割合におけるその混合物、その医薬上許容される塩、その医薬上許容される溶媒和物、その医薬上許容される多形体、またはそのプロドラッグの治療上有効な量と、細胞を接触させることを含む方法。
【請求項19】
コーヒー酸またはその誘導体が:
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸[コーヒー酸];
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸メチルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸エチルエステル;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−アクリル酸2−ニトロ−エチルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸n−プロピルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸i−プロピルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸ブチルエステル;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−1−ピペリジン−1−イル−プロペノン;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−1−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−プロペノン;
1−(4−ベンジル−ピペラジン−1−イル)3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノン;
(E)−3−{4−[3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリロイル]−ピペラジン−1−イル}プロピオニトリル;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−[4−(1−メチル−ピペリジン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−プロペノン;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−(4−フェニルピペラジン−1−イル)−プロペノン;
(E)−1−(4−アセチル−ピペラジン−1−イル)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノン;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−1−(4−フェネチル−ピペラジン−1−イル)−プロペノン;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−1−モルホリン−4−イル−プロペノン;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−N−(3−ジメチルアミノ−プロピル)−アクリルアミド;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−N−イソプロピル−アクリルアミド;または
1−(4−ベンジル−ピペリジン−1−イル)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノン
である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
コーヒー酸誘導体が:
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸メチルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸エチルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸n−プロピルエステル;
3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸i−プロピルエステル;
1−(4−ベンジル−ピペラジン−1−イル)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノン;
(E)−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−N−イソプロピル−アクリルアミド;または
1−(4−ベンジル−ピペリジン−1−イル)−3−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロペノン
である、請求項18記載の方法。
【請求項21】
式(1)で示されるコーヒー酸またはその誘導体が、合成または天然物である、請求項18記載の方法。
【請求項22】
グリーベックに対する耐性が、Bcr−Abl変異により引き起こされる、請求項18記載の方法。
【請求項23】
耐性が:K−562−R、32DclBcr−Abl T315I、Ba/F3 Bcr−Abl/T315I、Ba/F3 Bcr−Abl/E255K、Ba/F3 Bcr−Abl/H396P、Ba/F3 Bcr−Abl/M351T、Ba/F3 Bcr−Abl/F359V、Ba/F3 Bcr−Abl/E255V、Ba/F3 Bcr−Abl/F317L、Ba/F3 Bcr−Abl/H396R、Ba/F3 Bcr−Abl/M244V、Ba/F3 Bcr−Abl/Q252H、Ba/F3 Bcr−Abl/Y253F、またはBa/F3 Bcr−Abl/Y253H細胞株で見出される変異から生じる、請求項18記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−502586(P2010−502586A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526219(P2009−526219)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【国際出願番号】PCT/IB2007/053308
【国際公開番号】WO2008/026125
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(508097663)ピラマル・ライフ・サイエンシーズ・リミテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】Piramal Life Sciences Limited
【Fターム(参考)】