説明

ゴム成型体の接合方法及びこれを用いた環状ゴムガスケットの製造方法

【課題】ゴム成型体を所望の間隔を開けて精度良く接合することができるゴム成型体の接合方法と、この接合方法を用いることにより、大掛かりな装置を必要とせずに寸法精度の高い環状ゴムガスケットを効率的に製造することができ、且つ、製品仕様が異なり、そのサイズが多様であるような環状ゴムガスケットの製造にも対応することができる環状ゴムガスケットの製造方法を提供する。
【解決手段】予めゴムの加硫成型によって形成された複数のゴム成型体10を接合するゴム成型体の接合方法であって、接合対象の前記ゴム成型体10における接合対象部位10aを、所定の金型1に位置決め手段4を介し所定の間隔Dを開けて配置し、該間隔Dと前記金型1とにより形成されるキャビティ50に未加硫ゴムGを装填し、該未加硫ゴムGを加硫成型して前記接合対象部位10a,10a同士を接合することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、大型エンジンカバー、大型バッテリーケース、産業プラントの設備等のシール部位に用いられる大型のゴムガスケットのように、成型によって一体に形成しようとすると、大掛かりな成型装置が必要とされるガスケットの製造に好ましく適用されるゴム成型体の接合方法と、この接合方法を用いたゴムガスケットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前記のような大口径の大型ゴムガスケットを一体成型によって製造する場合、成型装置が大掛かりとなり、高額の設備投資が必要となる上に、製造の効率も決して高くない。特に、製品仕様が異なり、そのサイズが多様である場合には、それぞれに対応する成型装置(金型プレス)を準備する必要がある。その為、このような大型のゴムガスケットを成型する場合、所謂送り加硫方式が採用されるが、この場合は、接合部は未加硫ゴム同士に限定される為に、既に加硫成型されたゴム部品の接合には適用されず、しかも、専用のプレス装置が必要とされ、やはり、高額の設備投資が必要となる。
【0003】
特許文献1には、コンベヤベルトやゴムクローラ等のエンドレス体を形成するため、帯状(紐状)の加硫ゴムの両末端部に接着用ゴムを挟み込んだ状態で、該接着用ゴムを加硫することによって両末端部を接着する方法が記載されている。また、特許文献2には、複数のゴムガスケット部間に未加硫のゴムシートを挟み込んだ後に該未加硫のゴムシートを加硫することによってゴムガスケット部を接着して、沈埋函継手部用の環状ガスケットを製造する方法が記載されている。更に、特許文献3には、沈埋函接合用ゴムガスケット同士を、未加硫ゴムシートを介して突合わせた後、モールド(金型)内に挿入し、モールドを加熱すると共に、突合せ部に未加硫ゴムを圧入して加硫一体化することによって沈埋函接合用ゴムガスケット同士を接合する方法が記載されている。更にまた、特許文献4には、金型内で一対のゴム製ウエザーストリップの両端末部を突合わせ、両端末部の対向する端面間に未加硫ゴムシートを介装し、加硫成型して両端末部を接合するシール材端末部の接合方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−176314号公報
【特許文献2】特開平9−85826号公報
【特許文献3】特開平9−13407号公報
【特許文献4】特開2002−36370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された技術は、接着用ゴムが、コンベヤベルトやゴムクローラ等の一部をなすよう加硫成型されるものではない。また、特許文献2に開示された技術は、前記接着用ゴムシートが沈埋函継手部用の該環状ガスケットの一部をなすよう加硫成型されるものではない。更に、特許文献3に開示された技術は、モールド内の前記突合せ部に未加硫ゴムを圧入して加硫一体化することによって沈埋函接合用ゴムガスケット同士を接合するものであるが、この場合、モールド内で前記突合せ部同士を間隔を開けて配置し、この間隔内に未加硫ゴムを圧入しようとすると、相互の正確な位置関係が定まらない。従って、複数のゴムガスケット部に対して順次この接合を繰り返して1個の環状ガスケットを製造する場合、寸法精度の高い環状ゴムガスケットを得ることが難しく、特許文献3に開示された技術思想を、このような環状ゴムガスケットの製造にそのまま適用することはできなかった。更にまた、特許文献4に開示された技術においても、金型内で一対のゴム製ウエザーストリップの両端末部を間隔を開けて配置し、この間隔内に未加硫ゴムを圧入し加硫成型し、これを繰り返して1連の環状ウエザーストリップを得んとすると、金型内に配置する際、前記両端末部の相互の正確な位置関係が定まらない。従って、得られる環状ウエザーストリップに寸法精度のばらつきが生じる懸念がある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、ゴム成型体を所望の間隔を開けて精度良く接合することができるゴム成型体の接合方法と、この接合方法を用いることにより、大掛かりな装置を必要とせずに寸法精度の高い環状ゴムガスケットを効率的に製造することができ、且つ、製品仕様が異なり、そのサイズが多様であるような環状ゴムガスケットの製造にも対応することができる環状ゴムガスケットの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の発明としてのゴム成型体の接合方法は、予めゴムの加硫成型によって形成された複数のゴム成型体を接合するゴム成型体の接合方法であって、接合対象の前記ゴム成型体における接合対象部位を、所定の金型に位置決め手段を介し所定の間隔を開けて配置し、該間隔と前記金型とにより形成されるキャビティに未加硫ゴムを装填し、該未加硫ゴムを加硫成型して前記接合対象部位同士を接合することを特徴とする。
【0008】
そして、本発明のゴム成型体の接合方法においては、前記未加硫ゴムの前記キャビティへの装填を、前記金型を型締めした後、前記キャビティ内への当該未加硫ゴムの注入によって行い、該注入と並行して該未加硫ゴムの加硫成型を行うようにしても良い。或いは、前記未加硫ゴムの前記キャビティへの装填を、前記金型の型締め前に前記キャビティに当該未加硫ゴムを配置することによって行い、金型の型締めと並行して該未加硫ゴムの加硫成型を行うようにしても良い。
【0009】
また、本発明のゴム成型体の接合方法においては、前記位置決め手段が、前記ゴム成型体及び前記金型に形成された凹凸部の相互の嵌合関係によって構成されているものとすることができる。更に、前記キャビティの断面形状が、前記ゴム成型体の接合対象部位における被接合端面部の形状と同形状であることが望ましい。
【0010】
第二の発明としての環状ゴムガスケットの製造方法は、所望形状の環状体の一部を構成する複数のゴム成型体を加硫成型によって準備し、前記いずれかのゴム成型体の接合方法によって、前記複数のゴム成型体を順次接合して、前記環状体を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第一の発明に係るゴム成型体の接合方法においては、接合対象の前記ゴム成型体における接合対象部位が、所定の金型に位置決め手段を介し所定の間隔を開けて配置されるから、この間隔と前記金型とにより形成されるキャビティに装填された未加硫ゴムの加硫成型によって、前記接合対象部位同士が意図する間隔をもって的確に接合される。従って、複数のゴム成型体を同様に接合連接して一連のゴム成型体を形成する場合、寸法精度の高いゴム成型体が得られる。しかも、接合に関与する未加硫ゴムは、前記キャビティにおいて、接合対象部位同士間で一体に成型されるから、この加硫成型された接合部のゴムが前記一連のゴム成型体の一部を構成し、一連のゴム成型体としての風合いに違和感を生じることがない。特に、接合対象のゴム成型体と、接合部のゴムとが同材質のゴムである場合には、この違和感は殆ど生じないこととなる。
【0012】
そして、前記未加硫ゴムの前記キャビティへの装填を、前記金型を型締めした後、前記キャビティ内への当該未加硫ゴムの注入によって行い、該注入と並行して該未加硫ゴムの加硫成型を行うようにする場合、未加硫ゴムがキャビティ内の隅々にゆきわたり、成型一体化が確実になされる。また、前記金型の型締め前に前記キャビティに当該未加硫ゴムを配置することによって行い、金型の型締めと並行して該未加硫ゴムの加硫成型を行うようにする場合、金型の型締めと並行して所謂加圧成型がなされることになるから、効率的な成型がなされる。
【0013】
また、前記位置決め手段が、前記ゴム成型体及び前記金型に形成された凹凸部の相互の嵌合関係によって構成されるものとすれば、ゴム成型体を金型に配置する際に、この凹凸部を相互に嵌め合わせることによって、ゴム成型体の金型に対する位置決めが簡易且つ的確になされる。
【0014】
更に、前記キャビティの断面形状が、前記ゴム成型体の接合対象部位における被接合端面部の形状と同形状とすれば、接合対象のゴム成型体が接合対象部位において、成型された接合部を介して連続した同形状とされる。従って、接合によって形成される一連のゴム成型体をガスケットとする場合には、そのシール機能も問題なく発揮される。
【0015】
第二の発明に係る環状ゴムガスケットの製造方法においては、予め加硫成型によって準備された複数のゴム成型体は所望形状の環状体の一部を構成するものであるから、これらを前記いずれかのゴム成型体の接合方法によって順次接合することにより、環状ゴムガスケットとしての環状体を簡易に得ることができる。また、接合対象の前記ゴム成型体が、所定の金型に前記位置決め手段を介して所定の間隔を開けた配置された上で、当該間隔と金型によって形成されるキャビティに装填された未加硫ゴムの加硫成型によって接合対象部位の接合がなされるから、寸法精度の高い環状ゴムガスケットが的確に作成される。そして、大型のガスケットであっても、分割した部分を接合してゆくことによって形成されるから、小型の成型装置でこれが可能とされ、特に、同じ形状毎に金型を複数に分割すれば、金型点数も減らすことができ設備投資額を抑えることができる。更に、インサート成型ガスケットにおいても、インサート部を含む形状に分割した後で接合成型するようにすれば、ガスケットの製造が効率化される。
【0016】
そして、接合すべきゴム成型体の数を適宜設定することにより、或いは、ゴム成型体の長さ寸法を各種準備してこれらの適宜組合せにより、製品としての環状ゴムガスケットの仕様が異なり、その外形サイズが多様であるような場合でも、大掛かりな装置を必要とせず、金型の共有化が可能で、フレキシブルに対応することができる。形状変更の場合も、大型ガスケットを一体で製造する場合のように、金型全体を作り直す必要がなく、変更部に対応する金型のみを作り直せば良い。また、前記キャビティの断面形状を、前記ゴム成型体の接合対象部位における被接合端面部の形状と同形状とすれば、周方向に沿ったシール機能が均一に発現され、ガスケットとしての適性を充分に備えたものが確実に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)(b)(c)は本発明に係るゴム成型体の接合方法の一実施形態を示す概念的断面図であり、(a)は金型の準備段階を、(b)は金型にゴム成型体を配置する段階を、(c)は金型を型締めして未加硫ゴムをキャビティに注入しながら加硫成型する段階をそれぞれ示している。
【図2】(a)は図1(c)におけるX−X線矢視拡大断面図であり、(b)は同Y−Y線矢視拡大断面図である。
【図3】図1(c)におけるZ−Z線矢視拡大断面図である。
【図4】図3に相当する部分の変形例を示す同様図である。
【図5】図3に相当する部分の別の変形例を示す同様図である。
【図6】図3に相当する部分の更に別の変形例を示す同様図である。
【図7】(a)(b)(c)(d)は、それぞれ図3〜図6に示す例のゴム成型体の部分破断平面図である。
【図8】(a)(b)(c)は、本発明に係るゴム成型体の接合方法の他の実施形態を示す概念的断面図であり、(a)は金型の準備段階を、(b)は金型にゴム成型体を配置すると共にキャビティに未加硫ゴムを配置する段階を、(c)は金型を型締めして未加硫ゴムを圧縮しながら加硫成型する段階をそれぞれ示している。
【図9】本発明のゴム成型体の接合方法を用いて作製した環状ゴムガスケットの一例を示す部分破断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1(a)(b)(c)は本発明に係るゴム成型体の接合方法の一実施形態を示している。図1(a)は、本接合方法に用いられる成型装置(金型)1の準備段階を示し、該成型装置1は、下金型2と上金型3とよりなる。下金型2は、横長のブロック体からなり、上面には後記するゴム成型体10の下部を受容する上向きの凹溝2aがその長手方向に亘って設けられている。また、上金型3は、下金型2より短寸のブロック体からなり、下面には後記するゴム成型体10の上部を受容する下向きの凹溝3aがその長手方向に亘って設けられている。上金型3は、下金型2に対してその長手方向中央部の上面に、型締めによって合体されるよう構成されている。そして、この上金型3が合体される部分の両側に位置する下金型2の上面には、後記する位置決め手段4を構成するピン2bが、前記凹溝2aの両側部に設けられている。上金型3の中央部には、その上面より凹溝3aに至る注入口3bが貫設されており、該注入口3bには射出装置(不図示)のノズル部が連接されるよう構成されている。更に、上金型3及び該上金型3が合体される部分の下金型2には、未加硫ゴムを加硫する為のヒータ(不図示)が埋設若しくは付設されている。
【0019】
接合対象のゴム成型体10,10は、ゴムの加硫成型により事前に所定長さに形成された中実の棒状体であり、断面形状が縦方向に延びる長円形とされている。該ゴム成型体10,10は、図1(b)に示すように、下金型2の所定位置にその下部を前記凹溝2aに受容させた状態で配置される。この所定位置は、両ゴム成型体10,10の接合対象部位10a,10aにおける被接合端面部10b,10bが所定の間隔Dをもって対面する位置であって、この位置は、下金型2に形成された前記ピン2bと、各ゴム成型体10,10に形成されたピン孔10cとにより構成される位置決め手段4によって定められる。即ち、各ゴム成型体10の前記接合対象部位10aの幅方向両側には、舌片部10dが鍔状に突設されており、該舌片部10dのそれぞれに前記ピン孔10cが形成されている(図3及び図7(a)も参照)。これらピン孔10cは、各ゴム成型体10の前記接合対象部位10aを下金型2の上に配置する際、前記ピン2bに嵌装され、この凹凸の嵌合関係によって、接合対象部位10aが前記間隔Dを開けて位置決めされるように形成位置が設定されている。
【0020】
このように、下金型2の上に一対のゴム成型体10,10が配置された後、図1(c)に示すように、上金型3がその凹溝3aをしてゴム成型体10,10の接合対象部位10a,10aに跨るように被せられ、下金型2と上金型3との型締め合体がなされる。この合体によって、下金型2の凹溝2aと、前記被接合端面部10b,10bと、上金型3の凹溝3aとによりキャビティ50が形成される。前記注入口3bより該キャビティ50に未加硫ゴムGが注入されると共に、並行して前記ヒータによる加熱がなされ、該未加硫ゴムGがキャビティ50内でその内部形状に沿うよう加硫成型される。この加硫成型により前記接合対象部位10a,10aを相互に固着一体に接合する加硫ゴムによる接合部5が形成される。そして、前記合体によって形成される前記キャビティ50の断面形状が、図2(a)(b)にも示すように、ゴム成型体10,10の接合対象部位10a,10aにおける被接合端面部10b,10bの形状と同形状となるから、接合対象部位10a,10aは加硫ゴムによる接合部5を介して連続した外形状をなす。
【0021】
前記ゴム成型体10及び接合部5を構成するゴムとしては、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリルゴム(ACM)、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)、シリコーンゴム(VMQ)、フロロシリコーンゴム(FVMQ)、フッ素ゴム(FKM)等が採用される。特に、本接合方法によって、オイルに接する部分に用いられる大型の環状ゴムガスケットを作製する場合は、NBR、ACM、FKM、FVMQ等が、水やLLCに接する部分に用いられる大型の環状ゴムガスケットを作製する場合は、EPDM、HNBR、VMQが望ましく採用される。両者を構成するゴムは、相互の馴染み性や接合強度の点で同質のものが望ましいが、所定の接合強度が得られる場合には異質のものであっても良い。例示のように射出成型によってゴム成型体10,10を互いに接合する場合は、前記間隔Dは、前記注入口3bの径より大とされ、従って、1mm以上とされる。未加硫ゴムGを注入によって加硫成型する方法としては、例示のような射出成型法以外にトランスファー成型法が採用可能である。
【0022】
図4及び図7(b)は、前記位置決め手段4の変形例を示している。この例の場合、下金型2の上面には、小穴2cが形成され、各ゴム成型体10の前記接合対象部位10aの幅方向両側には、前記と同様に舌片部10dが鍔状に突設されており、該舌片部10dのそれぞれの下面に下向きに小突部10eが一体に形成されている。前記小穴2cは、この小突部10eを嵌挿し得るよう形成され、小穴2cと小突部10eとにより位置決め手段4が構成される。小突部10eは、接合成型後は、切除しても良い。特に、ガスケットの製造に適用する場合は、シール性に影響する場合には、切除することが望ましい。
【0023】
図5及び図7(c)は、前記位置決め手段4の別の変形例を示している。この例の場合、下金型2の上面には、前記凹溝2aの片側部にピン2bが形成され、ゴム成型体10の前記接合対象部位10aの幅方向片側には、前記と同様に舌片部10dが鍔状に突設されており、該舌片部10dに金属製カラー10fを介してピン孔10gが形成されている。ピン孔10gは、本接合方法によって得られる接合体をシール対象の2部材(不図示)間に介在される環状ガスケットとする場合において、該シール対象の2部材を相互に締結させる為のボルト用挿通孔であって、前記接合時におけるゴムガスケット10の位置決め手段4の一部を兼ねるものである。カラー10fは、ゴム成型体10の成型時にインサート成型によって一体に組付けられるか、成型後に圧入によって組付けられるもので、前記締結時の環状ガスケットの過圧縮を防止する機能を奏する。そして、前記接合を行う際には、下金型2に形成された前記ピン2bに該ピン孔10gを嵌装させることによって、ゴム成型体10の位置決めがなされる。従って、ピン2bとピン孔10gとにより位置決め手段4が構成される。
【0024】
図6及び図7(d)は、前記位置決め手段4の更に別の変形例を示している。この例は、図5及び図7(c)の例と同様に、環状ガスケットに適用した場合におけるボルト用挿通孔を位置決め手段4の一部を兼ねるようにしたものである。この例の場合、ボルト用挿通孔の形成部位を迂回するようにゴム成型体10が形成され、この迂回の為の凹湾曲部分に平坦部10hが形成されている。該平坦部10hには、図5及び図7(c)の例と同様に、金属製カラー10fを介してピン孔10gが形成されている。そして、下金型2の上面には前記と同様にピン2bが形成され、前記接合を行う際、下金型2に形成されたピン2bに該ピン孔10gを嵌装させることによって、ゴム成型体10の位置決めがなされる。従って、ピン2bとピン孔10gとにより、同様に位置決め手段4が構成される。
【0025】
図8は、本発明に係るゴム成型体の接合方法の別の実施形態を示す。図例の接合方法は、接合部を形成する為の成型が加圧(コンプレッション)成型によってなされる点で、図1の例と異なる。即ち、図示の成型装置(金型)1は、図1の例と同様の凹溝2aを備えた下金型2と、図1の例と同様の凹溝3aを備えるが注入口3bを有さない上金型3とにより構成される。そして、下金型2の上面には、図1の例と同様に、後記するピン孔10cと共に位置決め手段4を構成するピン2bが設けられている。
【0026】
而して、図8(a)において、図1の例と同様に、下金型2と上金型3が準備される。そして、図8(b)に示すように、下金型2の凹溝2aにゴム成型体10がその下部を受容させた状態で配置される。この配置の際には、ゴム成型体10に前記と同様に形成されたピン孔10cを前記ピン2bに嵌装させることによって位置決めされ、これによって接合対象部10a,10aの被接合端面部10b,10bが、所定の間隔Dをもって対面する。この被接合端面部10b,10bと前記凹溝2aとにより形成される空域部に、未加硫のゴムGが、図に示すようにこの空域部より若干食み出すように配置される。
【0027】
次いで、図8(c)に示すように、上金型3がその凹溝3aをしてゴム成型体10,10の接合対象部位10a,10aに跨るように被せられ、下金型2と上金型3との型締め合体がなされる。この合体によって、下金型2の凹溝2aと、前記被接合端面部10b,10bと、上金型3の凹溝3aとによりキャビティ50が形成される。キャビティ50の形成に伴い、前記空域部に配置されている未加硫ゴムGが圧縮され、これと並行して前記と同様にヒータによる加熱がなされ、該未加硫ゴムGがキャビティ50内で加硫成型される。この加硫成型により前記接合対象部位10a,10aを相互に固着一体に接合する加硫ゴムによる接合部5が形成される。そして、前記合体によって形成される前記キャビティ50の断面形状が、前記と同様に、ゴム成型体10,10の接合対象部位10a,10aにおける被接合端面部10b,10bの形状と同形状であり、接合対象部位10a,10aは接合部5を介して連続した外形状をなす。
その他の構成は、図1に示す例と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、ここではその説明を割愛する。
【0028】
図9は、前記の接合方法を適用した製造方法によって作製した環状ガスケットの一例を示している。図に示す環状ガスケット6は、自動車用のバッテリー等に用いられる大口径の大型ガスケットであり、全体形状が方形である場合を例示しているが、これに限らず、円形、長円形、或いは、蛇行形状が組み合わさった形状等の形状であっても良い。図例の環状ガスケット6は、複数の直状ゴム成型体10…と、4個のコーナー用ゴム成型体10´…とをパーツ部品とし、これらゴム成型体10,10´を適宜組合せ前記接合方法によって互いに接合して方形の環状体としたものである。これらパーツ部品としての各ゴム成型体10,10´は、前記接合時における成型装置での位置決め手段4の一部を構成するピン孔10c、10gを有している。この位置決め手段4によって、前記接合対象部位10a,10aの被接合端面部10b,10bが所定の間隔Dをもって配置され、当該被接合端面部10b,10bを前記加硫ゴムによる接合部5によって順次固着接合することによって、図例のような環状ゴムガスケット6が形成される。ピン孔10gは、前述のとおり、当該環状ゴムガスケット6を介在させてシール対象2部材を締結させる際のボルト挿通孔を兼ねるものであり、環状ゴムガスケット6の周方向に沿って適宜間隔で配される。
【0029】
環状ゴムガスケット6における舌片部10dの形成部位を除く断面形状は、例えば、図2に示すように縦長の長円形であり、全周に亘り前記接合部5を含んでこの長円形が連続する形状とされる。そして、その上半部分が、前記シール対象2部材における上側部材の被シール面に形成された周溝に嵌装された状態でシール対象2部材の締結がなされる。従って、シール対象2部材間に介在された状態では、全周に亘り均一なシール性が得られる。この種の環状ゴムガスケットの場合、適用対象の製品仕様によって、断面形状(大きさ)は同じであるが全体形状(大きさ)が異なるものを複数種準備することが必要とされることがある。このような場合、前記パーツ部品としてのゴム成型体10の使用数を変えたり、或いは、各ゴム成型体10の長さの異なるものを複数準備しておき、これらを適宜選択して組合せることによって、これに対応することができる。従って、製品仕様毎に前記成型装置1を準備する必要がない。このように、大型の環状ゴムガスケット6であっても、分割した部分を接合してゆくことによって形成されるから、小型の成型装置(金型)1でこれが可能とされ、特に、同じ形状毎に金型を複数準備するようにすれば、金型点数も減らすことができ設備投資額を抑えることができる。この場合、ガスケットの形状の変更等がある場合には、対応する金型のみを作り直せば良く、このような対応が多額の費用を要さずに的確になされる。
【0030】
尚、ゴム成型体10(環状ゴムガスケット6)の断面形状は図例のものに限定されず、例えば山形状、円形状、方形状等、用途に応じて種々の形状が採用可能である。また、本発明の接合方法は、大型の環状ゴムガスケットの製造のみならず、他の自動車分野、産業機械分野、電池分野、産業プラント分野等におけるガスケット、パッキンその他のゴム製品の製造にも適用することができる。更に、図9に示す環状ゴムガスケット6において、図7(b)や図7(d)のゴム成型体10を周方向に適宜配し、或いは、これらを順次接合して、環状ゴムガスケット6を構成することも可能である。
【符号の説明】
【0031】
1(2,3) 成型装置(金型)
4 位置決め手段
5 接合部
50 キャビティ
6 環状ゴムガスケット(環状体)
10 ゴム成型体
10a 接合対象部位
10b 被接合端面部
D 間隔
G 未加硫ゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予めゴムの加硫成型によって形成された複数のゴム成型体を接合するゴム成型体の接合方法であって、
接合対象の前記ゴム成型体における接合対象部位を、所定の金型に位置決め手段を介し所定の間隔を開けて配置し、該間隔と前記金型とにより形成されるキャビティに未加硫ゴムを装填し、該未加硫ゴムを加硫成型して前記接合対象部位同士を接合することを特徴とするゴム成型体の接合方法。
【請求項2】
請求項1に記載のゴム成型体の接合方法において、
前記未加硫ゴムの前記キャビティへの装填を、前記金型を型締めした後、前記キャビティ内への当該未加硫ゴムの注入によって行い、該注入と並行して該未加硫ゴムの加硫成型を行うことを特徴とするゴム成型体の接合方法。
【請求項3】
請求項1に記載のゴム成型体の接合方法において、
前記未加硫ゴムの前記キャビティへの装填を、前記金型の型締め前に前記キャビティに当該未加硫ゴムを配置することによって行い、金型の型締めと並行して該未加硫ゴムの加硫成型を行うことを特徴とするゴム成型体の接合方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のゴム成型体の接合方法において、
前記位置決め手段が、前記ゴム成型体及び前記金型に形成された凹凸部の相互の嵌合関係によって構成されることを特徴とするゴム成型体の接合方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のゴム成型体の接合方法において、
前記キャビティの断面形状が、前記ゴム成型体の接合対象部位における被接合端面部の形状と同形状であることを特徴とするゴム成型体の接合方法。
【請求項6】
所望形状の環状体の一部を構成する複数のゴム成型体を加硫成型によって準備し、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のゴム成型体の接合方法によって、前記複数のゴム成型体を順次接合して、前記環状体を得ることを特徴とする環状ゴムガスケットの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−84034(P2011−84034A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240269(P2009−240269)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(000225359)内山工業株式会社 (204)
【Fターム(参考)】