説明

ゴム物品用補強構造体及び作製方法

タイヤのような成形及び押出物品用の補強手段は、自身に結合したシリカゲルの層を有する金属構造体を有している。このシリカゲルは、ゴム配合物の成形/加硫中に遅い硬化段階を必要とせずに、補強手段をゴム配合物に結合させる。このシリカゲルは、150℃以下の温度でゾルを乾燥させることによってゲルが形成されるゾルゲルプロセスにより金属構造体に塗布してもよい。補強手段は、好ましくは、上記シリカゲルでコーティングされた複数のスチールワイヤーから形成されたケーブルである。シリカゲルのゴム配合物への結合をさらに向上させるために、ゴム配合物に有機シラン結合剤を含ませる、又は結合剤として有機シランを含む第2層を補強手段に設けてもよい。補強手段は、タイヤを強化し、幾何学的安定性を付与するのに特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤのようなゴム物品用の、ワイヤーやケーブルといった補強構造体に関する。特に、本発明は、硬化もしくは加硫サイクルが短縮されたゴムマトリックスに強力に結合し得る補強構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
成形及び押出ゴム製品業界における特定のアプリケーションは、成形及び押出ゴム物品のゴムマトリックス中に、一般的に繊維、ワイヤー、ケーブル、テキスタイル、もしくは織物構造状の補強材を含ませることによって、恩恵を受けている。これにより、成形ゴム製品の良好な寸法制御が得られるので、その分野における性能を高めるために、異方性挙動を盛り込んだ製品設計が可能である。そのような一例として、ゴムタイヤの製造が挙げられ、構造的強度及び幾何学的安定性を付与するため、タイヤのゴムマトリックス中に、金属製コード、通常はスチールコードを含ませている。
【0003】
補強手段がその機能を十分に果たすために、当該補強手段は、(加工可能にするための)耐熱性、(ゴムが過度に伸びてしまわないための)高い弾性率及び(補強されたゴム物品の完成品が真に複合材として作用できるような)マトリックスゴムに対する優れた接着性の点で、充分な性能を有しているべきである。
【0004】
本明細書全体を通じて、次のような略語を用いる。EPDM:エチレン‐プロピレン‐ジエンモノマーから作製されたゴム、BIIR:臭素化ブチルゴム、CR:クロロプレンゴム、CSM:クロロスルホン化ポリエチレンゴム、HNBR:水素化アクリロニトリル‐ブタジエンゴム、NBR:アクリロニトリル‐ブタジエンゴム、SBR:スチレンブタジエンゴム、NR:天然ゴム、及びBR:ブタジエンゴム。
【0005】
現在、ベルト、カーカス、ビードといった空気タイヤの領域における主要な強化部材として、真鍮でコーティングされたスチールコード(真鍮コートスチールコード)が使われている。1946年にミシュランがラジアルタイヤを開発して以来、真鍮コートスチールコードが一般的な補強材となり、世界の乗用車用タイヤの98%、トラック用タイヤの70%〜80%に使われている。真鍮コートスチールコードによって、タイヤメーカーは、強度、剛性、弾性率、安定性及び均一性といったタイヤの様々な物理的パラメータを最適化することができる。実際、ベルト部分の高剛性は、タイヤ溝の良好な摩耗性、タイヤの操作性及び低い転がり抵抗特性にとって必須である。
【0006】
真鍮コートスチールコードの補強構造体とタイヤのゴム配合物との間で加硫時に形成される結合は、乗用車やトラック用タイヤの性能や耐久性を左右する必須特性である。スチールの真鍮めっきは周知の方法であり、それによって、ゴム配合物とスチールとの結合の向上が達成できる。
【0007】
上述したNRのようなゴムと真鍮めっきされたスチールコードとの結合は、以下のように起こると考えられる。加硫時に、真鍮(銅と亜鉛の合金)を、加硫剤である硫黄に曝すと、非化学量論的な硫化銅の形成により、強力な結合が生み出される。第1段階では、硫化亜鉛がゆっくりと形成されて、その後の銅イオンの層内への格子間拡散が、イオン半径の違いにより妨げられ、銅イオンは亜鉛イオンよりゆっくりと真鍮から移動する。硫化亜鉛は、個別の層を形成することができるが、それでも、銅イオンが格子欠陥を通じてこの層へと拡散するにつれ、硫化銅は厚みを増していく。層内の硫化銅の量は、硫化度と直接関連しており、臨界厚さの硫化銅層ができるのに十分なだけ長く架橋過程を遅らせることが、良好な接着性を得るためには必須である。この分野の研究が長年にわたって行われているにもかかわらず、硫化銅の層がゴムとどのように相互作用するかは正確には分かっていないが、硫化銅の層は樹状をしているため、主にこの層と加硫ゴムとの強固な物理的連結により、高い結合力が生まれるものと考えられる。結合メカニズムの一端として、Cu‐S‐NR結合による化学架橋が提案されている。
【0008】
ゴムと真鍮との界面における結合の耐久性を高め、維持するために、カルボン酸コバルトを単体もしくはエポキシ樹脂系と組み合わせて使用してもよい。このようなコバルト塩の使用により、タイヤ業界がゴムと金属との結合力を評価する際の基準と考えている、真鍮コートスチールとゴムとの結合が生じる。米国特許第6059951号は、エラストマー材料の複合要素の作製に使用される、亜鉛とコバルトの合金でコーティングしたスチール製ワイヤーを開示している。エラストマー材料に、ネオデカン酸コバルトといった接着促進剤を加えることにより、エラストマー材料のワイヤーへの接着が促進される。
【0009】
上に詳述したような先行技術の真鍮コートスチールコード用の結合システムは、良好な結合力を達成しようとすると、使用できる組成やプロセスを限定するかもしれない。例えば、ゴムとめっきされたスチールとの良好で耐久性の高い接着性を達成するには、使用するゴム配合物は、結合改良剤としてのカルボン酸コバルトに加え、比較的高濃度の硫黄を含んでいなくてはならない。また、結合層が、いわゆる硬化の「スコーチ期間」に形成されるようにするには、ゴム配合物内における加硫速度はゆっくりでなくてはならない。このように遅い加硫工程は、生産プロセスにおいて律速因子を生じさせる可能性がある。従って、このような遅い硬化工程が不要となるような結合方法を提供することにより、生産速度が速まるようにすることが望ましい。また、製造中の安全性を向上させるとともに、最終的にタイヤを廃棄する際に有毒廃棄物の問題を減らすためには、タイヤに使用するゴム配合物中の、硫黄、亜鉛、コバルトといった望ましくない有毒物質のレベルを削減することも望ましい。ゴム配合物混合中のカルボン酸コバルトの取り扱いには適切な注意が必要である。
【0010】
金属ワイヤーとゴムを結合させる方法の1つは、金属表面をCu/Znでめっきして、得られるゴム複合物内にCu‐S‐ゴム結合を形成するものである。しかしながら、金属ワイヤーの表面がCu/Znでコーティングされているため、この方法には以下のような欠点がある(例えば、スティーブン・フルトン他(Stephen Fulton, et al.)著、「スチール製タイヤコードとゴムとの接着と、コバルトの貢献 (Steel tire cord-rubber adhesion, including the contribution of cobalt)」、ラバーケミストリー・アンド・テクノロジー(Rubber Chemistry and Technology)、2004年、第78巻、426‐457ページ参照)。
【0011】
1)CuS層は、特定の加硫条件下では成長し過ぎ、ワイヤーの表面から簡単に剥がれる。その結果、ゴムへの接着性が低下する。
【0012】
2)高温、高湿、高塩濃度の条件下では、ゴムへの接着性が低下する(CuとZnとのイオン化傾向の違い(CuよりZnのほうがイオン化傾向が大きい)により、金属とゴムとの界面にZnS層が形成される可能性があり、その結果、ゴムへの接着性が低下する)。
【0013】
そこで、タイヤのようなゴム物品用の補強構造体であって、このような先行技術の結合方法の課題の一部もしくは全部を有しない、ゴム物品のゴムマトリックスに強固に結合することのできる補強構造体が必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的の1つは、何より、ゴム物品、特にタイヤ用の補強手段であって、特別な遅い硬化工程が不要で、かつ有毒な結合剤をゴム物品に組み入れる必要もなく、当該物品のゴム配合物に結合可能な補強手段を提供することである。本発明の他の目的は、めっきをしていないスチールを、ゴム物品用の補強手段の金属構造体として使用できるようにする一方で、スチールとゴム配合物との強固な結合を提供することのできる、簡便な手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様は、ゴム物品用の補強手段を提供するものであって、当該補強手段は、自身に結合したシリカゲルの第1層を有する金属構造体を含む。
【0016】
本発明の第2の態様は、ゴム物品用の補強手段を作製するための方法を提供するものであって、当該方法は、
i)金属構造体上にシリカゾル層を堆積させる工程と、
ii)前記シリカゾル層から、前記金属構造体上にシリカゲル層を形成する工程と、
を含む。
【0017】
本発明の第3の態様は、ゴム物品を形成するための方法を提供するものであって、当該方法は、本発明の前記第1の態様による補強手段、又は本発明の前記第2の態様の方法によって作製した補強手段を、ゴム配合物の中に成形(moulding)又は同時押出(co-extruding)する工程を含む。
【0018】
本発明の第4の態様は、ゴム物品を提供するものであって、当該ゴム物品は、ゴム配合物中で結合した、本発明の前記第1の態様による補強手段、又は本発明の前記第2の態様の方法によって作製した補強手段を含む。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の様々な側面について以下に示す特徴は、適用可能な場合には、本発明の他の態様と共に用いてもよく、また、好適な場合には、これら特徴を組み合わせて、例えば特許請求の範囲に示されたような、本発明の別の態様の一部として用いてもよい。
【0020】
本発明の第1の態様は、ゴム物品用の補強手段を提供するものであって、当該補強手段は、自身に結合したシリカゲルの第1層を有する金属構造体を含む。
【0021】
シリカゲルと第1層の金属構造体との結合は、一般的に、シリカゲル層を金属構造体の表面に堆積させるのに用いるプロセスによって達成される。好ましい堆積プロセスには、以下に詳細に説明するゾルゲルプロセスを含む。一般に、金属表面がめっきされていないスチールであっても、金属表面とシリカゲルの第1層との強固な結合を得るのに、結合剤を追加する必要はない。
【0022】
好適には、ゴム物品はタイヤでもよい。金属構造体は、スチール構造体であることが好ましく、金属又は合金でめっきされた、例えば真鍮でめっきされたスチール構造体のような、金属又は合金でめっきした金属構造体でもよい。
【0023】
金属構造体はワイヤーでもよいし、ケーブル状に形成された複数のワイヤーを含んでいてもよい。好ましくは、補強手段が複数のワイヤーを含んでおり、各ワイヤーが自身に結合したシリカゲルの層を有するとともに、前記複数のワイヤーが、例えば当該複数のワイヤーを編んだり巻いたりしてケーブル構造体にすることによってケーブル状に形成されていることである。
【0024】
金属構造体に結合したシリカゲルは、多孔質シリカゲル、例えばナノ多孔質シリカゲルでもよい。「ナノ多孔質シリカゲル」とは、そのシリカゲルの平均孔径が0.1〜50nm、好ましくは1〜30nmであることを意味する。一般的には、第1層のシリカの細孔容積は0.1〜0.8cm/g、好ましくは0.2〜0.6cm/gであろう。細孔容積は、好適には水銀圧入測孔法により測定され、孔径は、例えば窒素吸着を利用したBET法によって測定した表面積と細孔容積との組み合わせから導き出してもよい。
【0025】
理論に拘束されることなく、ゴム配合物は、ゴム物品が補強構造体の周りに形成されるにつれ、細孔の空隙に流れ込むことができ、それによってゴムと第1層との化学的結合を高めるような機械的結合を生み出すものと考えられる。
【0026】
好適には、シリカゲルからなる第1層の厚みは、20〜300nm、好ましくは30〜200nm、より好ましくは50〜150nmである。
【0027】
シリカゲル層は、ゴム配合物が補強手段に結合することによってゴム物品が形成されるときの取り扱いや処理に耐え得るだけの密着性を持ち、比較的柔らかく、柔軟であるべきである。
【0028】
「シリカゲル」とは、その構造内に主にシリカを含む化合物である。ただし、例えばアルミナ、ジルコニア、チタニアといった他の元素の酸化物がシリカゲル内に存在していても、それらがシリカゲル層の構造的完全性を損なわないのであれば、構わない。好適には、シリカゲルは、ゲル内の全元素酸化物に対する割合で表して、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%のシリカを含んでいる。
【0029】
好適には、補強手段は、第1層の上に、有機シラン結合剤を含む又は実質的に有機シラン結合剤からなる第2層をさらに備えていてもよい。有機シランは、好適には、アミノシラン、ペルフルオロアルキル基を含むトリクロロシラン、ペルフルオロアルキル基を含むトリアルコキシシラン、ペルフルオロアルキル基を含むトリアシルオキシシラン、ペルフルオロアルキル基を含むトリイソシアネートシラン、アルキル基を含むクロロシラン、アルキル基を含むアルコキシシラン、アルキル基を含むイソシアネートシラン、及びその混合物からなる群から選択されてもよい。
【0030】
より具体的には、ある種の有機シラン系カップリング剤又は結合剤が、ゴム配合物を含む高分子材料をシリカに結合させるのに用いられる。このような結合剤又はカップリング剤はゴム業界においては周知であり、アミノシラン、ビニルシラン、アクリルシラン、エポキシシラン、クロロシラン及びメルカプトシランのような硫黄を含むシランが例として挙げられる。例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐フェニル‐r‐アミノプロピル‐トリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、クロロプロピル‐トリメトキシシラン、メルカプトアルキルトリアルコキシシラン、及びビス[3‐トリエトキシシリルプロピル]テトラスルファン、である。このような有機シラン結合剤の混合物も使用できる。
【0031】
好ましいカップリング剤又は結合剤はアミノシランであり、好適にはN‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルシランでもよい。シランは置換されていてもよい。例えば、N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルシランは、N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルジメトキシシラン、N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン及びこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0032】
本発明の第2の態様は、ゴム物品用の補強手段を作製するための方法を提供するものであって、当該方法は、
i)金属構造体上にシリカゾル層を堆積させる工程と、
ii)前記シリカゾル層から、前記金属構造体上にシリカゲル層を形成する工程と、
を含み、それによって前記補強手段を形成する。
【0033】
一般的に、工程(ii)は、シリカゾル層を乾燥させてシリカゲル層を形成する工程を含む。このような多孔質の、特にナノ多孔質のシリカ層を形成するプロセスは、ゾルゲルプロセスとして知られている。
【0034】
米国特許第6465108号は、このようなゾルゲルプロセスによって、シリカベースの塗膜又は層でコーティングされた物品の製造プロセスを開示している。シリカゲル膜は、製造コストや時間の増加の原因となる焼成や硬化といった追加の工程を必要とせず、短時間で塗布及び形成できるという点で、この特許公報に詳細に示されたプロセスによって形成されたシリカ層は、本発明に特に適している。このプロセスにおいて、シリコンアルコキシド及び揮発酸を含むアルコール溶液を基板に塗布することによって、当該基板の表面をシリカゾルでコーティングしてもよい。シリカ源として、コロイダルシリカ、又はシリコンアルコキシド及び/又はコロイダルシリカを使用することが可能である。
【0035】
よって、シリカゾルは、シリコンアルコキシド及び/又はコロイダルシリカを含んでいることが好ましく、酸かアルカリを含んでいてもよい。ゾルは、シリコンアルコキシド及び/又はコロイダルシリカに由来するシリカを0.1〜20%含んでいることが好ましい。ゾルのpHは、酸やアルカリを使って好適な範囲に調節してもよい。この酸又はアルカリは、触媒として機能してもよい。
【0036】
ゾルのシリカ以外の部分は、好適には、アルコール、ケトンなど含む有機溶媒溶液であってよく、例えば、その溶媒溶液中の水分量が80重量%以下のものである。エタノール/水といったアルコール水溶液が特に好適である。
【0037】
ゾル膜は、乾燥によってゲルに変化するが、この乾燥は、一般的に25℃程度の室温〜200℃で行われてもよい。必要に応じて、乾燥によって有機物質を取り除いてから、シリカゲルでコーティングした材料をさらに200〜600℃で加熱してもよい。このプロセスで用いられるシリコンアルコキシドは特に限定されず、例えば、好適なシリコンアルコキシドとして、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、などが挙げられる。他の好適なシリコンアルコキシドとしては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン及びトリエチルエトキシシランが含まれる。
【0038】
上記のコーティング液に用いる酸触媒については、塩酸、フッ化水素酸、硝酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸などが好ましく用いられる。混合物を用いてもよい。
【0039】
上記のコーティング液に用いるアルカリについては、アンモニア及び/又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムといったアルカリ金属の水酸化物などが好適である。混合物を用いてもよい。
【0040】
ゾルに用いられる有機溶媒は特に限定されない。好適なアルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパン‐1‐オール、プロパン‐2‐オール、ブチルアルコール、アミルアルコールなどが含まれる。とりわけ、メタノール、エタノール、プロパン‐1‐オール、プロパン‐2‐オールなどの、炭素数3以下の直鎖状の飽和一価アルコール類は室温における蒸発率が高いため好ましい。
【0041】
高い稠密度を有し、厚さ5〜300nmのシリカにより主に構成される膜を、室温(すなわち20〜40℃、例えば25℃)又は200℃以下で乾燥させるだけのプロセスによって形成してもよい。
【0042】
シリカゲル層の膜を高温で加熱すると、残存しているアルコキシル基が消失し、ヒドロキシル基と置き換わる。よって、シリカゲル層を補強すべきゴム物品に組み込む前に、200℃を超える温度まで加熱しないことが好ましい。
【0043】
アルミニウム、ジルコニウム、チタン、セシウムなどのようなシリコン以外の元素の酸化物がシリカゲル内に存在してもよい量は、ゲル内の全元素酸化物に対する割合で表して、30重量%以下又は20重量%以下のように、50重量%以下である。このような付加的な酸化物は、アルコキシド、コロイド又は金属塩の形で、シリカゾルに組み込まれてもよい。
【0044】
一般に、ゾルは、室温及び大気圧で金属構造体の表面に塗布され、常圧又は200℃以下の温度で自然乾燥又は強制乾燥される。金属表面は親水性なため、ゾルは次第に金属構造体の表面を湿らせて、膜が形成されていく。
【0045】
ゾルを塗布する方法は特に限定されず、例えば、ディップコーティング、フローコーティング、スピンコーティング、バーコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、刷毛塗りのような手動による塗布などが挙げられる。金属構造体がワイヤー又はケーブルの場合は、ディップコーティングが好ましい。選択したコーティングプロセスに適した粘度をゾルに付与するため、ゾルの粘度を調整することにより、塗布したゾル層が乾燥してゲルになる時に第1層として必要な膜厚になるようにしてもよい。一般に、ラテックスの水分量は20〜90重量%であるが、特定のコーティングプロセスに必要であれば、さらに高くてもよい。
【0046】
本発明の第2の態様の方法は、iii)前記シリカゲルの第1層の上に、有機シラン結合剤を含む又は実質的に有機シラン結合材からなる第2層を塗布する工程をさらに含む。有機シラン結合剤は、本発明の第1の態様に関連して上述した有機シラン結合剤やカップリング剤、及びその混合物の中から好適に選択される。
【0047】
理論に拘束されることなく、有機シランは、補強すべきゴム物品のゴム配合物にシリカゲル層を結合させる補助をするものと考えられる。
【0048】
第2層用の有機シラン結合剤は、好適には、酸触媒でアルコール溶媒に溶解させてもよく、得られた溶液が、第1シリカゲル層に塗布される。下塗り膜の表面上のアルコキシ基と有機シラン結合剤のシラノール基との間で脱アルコール反応が起こり、その結果、加熱処理の必要なく、シロキサン結合によって第1層が有機シラン結合剤に結合する。有機シラン結合剤の加水分解性の官能基が高い反応性を有する場合、例えば、有機シラン結合剤が、クロロ基、イソシアネート基、アシルオキシ基などを有している場合、シリカゲルの第1層の表面上でのシラノール基とアルコキシル基との反応により、下塗り膜と有機シラン結合剤との結合が形成される。この場合、有機シラン結合剤を希釈せずに塗布してもよいし、ペルフルオロカーボン、塩化メチレン、炭化水素、シリコーンなどの非水溶媒で有機シラン結合剤を希釈することによって作製した溶液を塗布してもよい。有機結合剤の第2層を塗布する方法は特に限定されない。金属構造体がワイヤーかケーブルの場合、ディップコーティングが好ましい。
【0049】
金属構造体はスチール構造体であることが好ましいが、金属又は合金でめっきされたスチール構造体のようなめっき金属構造体でもよい。好ましくは、金属構造体はワイヤーであるが、この場合、上記方法は、第1シリカゲル層と任意である第2の有機結合剤層とを有する複数のワイヤーをケーブル状に形成する工程をさらに含んでもよい。
【0050】
本発明の第3の態様は、ゴム物品を形成するための方法を提供するものであって、当該方法は、請求項1〜11の何れか1項に記載の補強手段、又は請求項12〜19の何れか1項に記載の方法によって作製した補強手段を、ゴム配合物に成形又は同時押出する工程を含む。
【0051】
好適には、ゴム配合物は、EPDM、BIIR、CR、CSM、HNBR、NBR、SBR、NR及びBRゴム、及びその混合物から選択されるゴム配合物でよく、さらに有機結合剤、好ましくはゴム配合物の中に均一に混入されている有機結合剤を含んでいてもよい。好適には、有機シラン結合剤は、本発明の第2層に適したものとして詳述した通りである。
【0052】
一般的に、有機シラン結合剤は、ペルフルオロアルキル基を含むトリクロロシラン、ペルフルオロアルキル基を含むトリアルコキシシラン、ペルフルオロアルキル基を含むトリアシルオキシシラン、ペルフルオロアルキル基を含むトリイソシアネートシラン、アルキル基を含むクロロシラン、アルキル基を含むアルコキシシラン、アルキル基を含むイソシアネートシラン、及びその混合物からなる群から選択される。この他の好適な結合剤又はカップリング剤はゴム業界においては周知であり、アミノシラン、ビニルシラン、アクリルシラン、エポキシシラン、クロロシラン、及びメルカプトシランのような硫黄を含むシランを含む。例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐フェニル‐r‐アミノプロピル‐トリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、クロロプロピル‐トリメトキシシラン、メルカプトアルキルトリアルコキシシラン及びビス[3‐トリエトキシシリルプロピル]テトラスルファン、が挙げられる。このような有機シラン結合剤の混合物も使用できる。
【0053】
好ましいカップリング剤又は結合剤はアミノシランであり、好適にはN‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルシランでもよい。シランは置換されていてもよい。例えば、N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルシランは、N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルジメトキシシラン、N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン及びこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0054】
一般的に1phr〜15phr(すなわち、ゴム100部に対する割合)の有機シラン結合剤が存在することが好適である。補強手段が有機シラン結合剤の第2層を含んでいるか否かは関係なく、ゴム配合物と補強手段との結合を向上させるよう、有機シランが結合剤として作用してもよい。
【0055】
好適には、本方法は、タイヤであるゴム物品を作製するために用いられる。
【0056】
本発明の第4の態様は、ゴム物品、好ましくはタイヤを提供するものであって、当該ゴム物品は、本発明の第1の態様による補強手段、又は本発明の第2の態様の方法によって作製した補強手段であって、ゴム配合物に結合した補強手段を含む。本発明の第3の態様について示したように、補強手段が有機シラン結合剤の第2層を含んでいるか否かは関係なく、ゴム配合物を補強手段に結合させる補助をするよう、ゴム配合物は成分として有機結合剤を1phr〜15phr含んでいることが好適であり、ゴム配合物内に均一に分散していることが好ましい。
【0057】
以下に実施例を挙げて本発明の特定の実施形態についてさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0058】
アセトンを使って洗浄した、長さ60mm、直径1.5mmのスチールワイヤーを、実施例においてコーティング剤を塗布するための基材として用いた。
【0059】
(実施例1)
テトラメトキシシラン50重量部、プロパン‐2‐オール300重量部、1N‐硝酸2.5重量部、及び純水30重量部を混合し、50℃で2時間攪拌した後、得られた溶液を30℃で1日硬化させて、シリカゾル溶液を得た。
【0060】
洗浄したスチールワイヤーを30cm/minの速度でシリカゾル溶液の中を通し、スチールワイヤーの表面をシリカゾルでコーティングした。次に、コーティングされたワイヤーを100℃で5分間乾燥した後、500℃で3時間加熱処理した。その結果、コーティング厚さ約250nmの、シリカゲルでコーティングされたスチールワイヤーを得た。
【0061】
(実施例2)
アセト酢酸エチル1重量部にジルコニウムブトキシド5重量部を加え、30℃で2時間攪拌した(溶液A)。同時に、テトラエトキシシラン50重量部、プロパン‐2‐オール1000重量部、1N‐硝酸2.5重量部、及び純水50重量部を混合し、30℃で2時間攪拌した(溶液B)。次に、溶液Aと溶液Bを混合し、50℃で3時間攪拌しながら混ぜた後、30℃で1日硬化させて、ゾル溶液を得た。
【0062】
洗浄したスチールワイヤーを10cm/minの速度でシリカゾル溶液の中を通し、スチールワイヤーの表面をシリカゾルでコーティングした。次に、コーティングしたワイヤーを室温(25℃)で10分間乾燥した後、500℃で3時間加熱処理した。その結果、コーティング厚さ約30nmの、シリカ‐ジルコニアゲルでコーティングされたスチールワイヤーを得た。
【0063】
(実施例3)
テトラエトキシシラン25重量部を、1N硝酸1.6重量部と共にプロパン‐2‐オール380重量部に加え、50℃で3時間攪拌した後、さらに30℃で24時間攪拌した。
【0064】
直径30〜60nmのチタニア含有量が30重量%、水分量が70重量%のコロイドチタニア溶液23重量部を、トリメチルメトキシシラン1重量部と共に上記溶液に加え、30℃で5時間攪拌した。その後、得られた溶液10重量部にエタノール57.2重量部を加え、固体濃度0.5重量%のゾルを得た。
【0065】
洗浄したスチールワイヤーを20℃、30%相対湿度の空気雰囲気中に垂直に置き、スチールワイヤーの上部からゾル溶液を注ぐことにより(フローコーティング法)、ゾル溶液でコーティングした。次に、ゾルでコーティングしたワイヤーを150℃で30分間乾燥した後、500℃で3時間加熱処理した。その結果、厚さ約100nmのシリカ‐チタニアゲルのコーティング層でコーティングされたスチールワイヤーを得た。
【0066】
(実施例4)
テトラエトキシシラン31重量部を、プロパン‐2‐オール380重量部、1N硝酸1.6重量部及び純水6.5重量部と混ぜて、50℃で5時間攪拌した後、30℃で24時間攪拌した。
【0067】
直径50nmのシリカ含有量が20重量%、水分量が80重量%のコロイドシリカ溶液30重量部を上記溶液に加え、30℃で5時間攪拌した。その後、得られた溶液10重量部にエタノール6.6重量部を加え、固体濃度2重量%のゾルを得た。
【0068】
ゾル溶液は、洗浄したスチールワイヤー上にロールコーターでコーティングされた。引き続き、コーティングされたワイヤーを120℃で20分間乾燥した後、600℃で1時間加熱処理した。その結果、コーティング厚さ約80nmの、シリカゲルでコーティングされたスチールワイヤーを得た。
【0069】
(実施例5)
アセト酢酸エチル1重量部にジルコニウムブトキシド5重量部を加え、30℃で2時間攪拌した(溶液C)。同時に、テトラエトキシシラン16重量部、プロパン‐2‐オール170重量部、1N硝酸0.8重量部、及び純水3.5重量部を混合し、30℃で2時間攪拌した(溶液D)。次に、溶液C及びDを、直径10〜20nm、長さ40〜300nmの紡錘状のシリカ含有量15重量%と水分量85重量%のシリカコロイドゾル15重量部と混合し、50℃で3時間攪拌した後、30℃で24時間攪拌した。引き続き、得られた溶液11重量部にエタノール136重量部を加え、固体濃度0.3重量%のジルコニア‐シリカゾルを得た。
【0070】
洗浄したスチールワイヤーを20℃、30%相対湿度の空気雰囲気中に垂直に置き、スチールワイヤーの上部からゾル溶液を注ぐことにより(フローコーティング法)、ゾル溶液でコーティングした。次に、ゾルでコーティングしたワイヤーを120℃で1分間乾燥した後、500℃で1時間加熱処理した。その結果、厚さ約50nmのジルコニア‐シリカゲル層でコーティングされたスチールワイヤーを得た。
【0071】
(実施例6)
スチールワイヤー(イギリス標準規格BS1429:1980)をアセトンに30分間浸漬後、リン酸濃度が1重量%になるようにリン酸をエタノールで希釈して得た溶液に浸漬させた。HPC7003(JSR製)濃度が5重量%になるようにHPC7003をイソプロピルアルコールで希釈して得たシリカゾルを、スチールワイヤーにフローコーティング法によって塗布した。コーティングされたワイヤーを200℃で20分間、乾燥した。これにより、シリカゲルでコーティングされたスチールワイヤーを得た。
【0072】
次にアミノシラン類のカップリング剤としてKBM‐603(N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業製)を、KBM‐603の濃度が50重量%になるようにイソプロピルアルコールで希釈した溶液を得た。得られた溶液を、フローコーティングによってスチールワイヤーに塗布して、シリカゲルコーティングを施した。コーティングされたワイヤーを、150℃で30分間乾燥した。これにより、シリカゲル層とアミノシラン類のカップリング剤層とでコーティングされたスチールワイヤーを得た。
【0073】
このスチールワイヤーと表1に示す組成を有するゴムマトリックスとの接着性を評価した。上記の処理を施したスチールワイヤーをゴムマトリックスに埋め込み、160℃で25分間加熱して互いに結合させて試験片を作製した。この後、試験片を引張り試験機を用いた引張り試験に掛けて、ゴムとスチールワイヤーとの間の引抜強度(接着強度)を測定した。また、試験片の破壊面を目視で観察して、ワイヤー側にゴムが残った状態の「ゴム破壊」であるのか、あるいはゴムがワイヤー側に全く残らない「界面剥離」であるのかを確認した。
【0074】
比較のため、真鍮製ワイヤーと無処理のスチールワイヤーも同様に試験片を作製して、引抜強度(接着強度)を測定し、破壊面の観察も行った。ここで、真鍮製ワイヤーは市販されている真鍮めっきのスチールワイヤーの代表例として試験を行うために用いた。
【0075】
【表1】

【0076】
実施例6のスチールワイヤーはゴムとの接着力が強く、真鍮製ワイヤーの接着強度の1.4倍であることがわかった。この真鍮製ワイヤーは従来から用いられている真鍮めっきのスチールワイヤーと同じように表面が真鍮であるので、真鍮製ワイヤーのゴムとの接着強度は、真鍮めっきのスチールワイヤーの強度に相当するはずである。従って、実施例6のスチールワイヤーを使用することにより、真鍮製ワイヤー、従来から用いられている真鍮めっきのスチールワイヤー又は無処理のスチールワイヤーに比べて、ゴムとの接着強度を向上できるものと考えられる。
【0077】
添付した特許請求の範囲において定義された本発明の範囲から逸脱しない限り、上記の実施形態の様々な変更が可能であることは言うまでもない。
【0078】
以上説明し図示した実施形態は、その性格上説明的であって限定的なものではなく、好ましい実施形態が示され、説明されているだけであって、特許請求の範囲において定義された本発明の範囲内の変更や修正はすべて保護されるべきであることは言うまでもない。本明細書中の、「好ましい(preferable)」、「好ましくは(preferably)」、「好ましい(preferred)」、「より好ましい(more preferred)」といった単語の使用は、そのように説明された特徴が望ましいことを示唆しているが、必要なものではなく、そのような特徴のない実施形態であっても、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲内に含まれるものとみなされる。クレームに関して、「ある(1つの)(a、an)」、「少なくとも1つの(at least one)」、又は「少なくとも一部の(at least one portion)」といった単語を使用してある特徴を述べる際は、そのクレーム中において、それと逆の内容を特に述べていない限り、そのクレームがそのような特徴だけに限定されるものではないことを意図している。「少なくとも一部(at least a portion)」及び/又は「一部(a portion)」という語を使用する際は、それと逆の内容を特に述べていない限り、その項目の一部及び/又は項目全体を含み得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身に結合したシリカゲルの第1層を有する金属構造体を含む、ゴム物品用の補強手段。
【請求項2】
前記金属構造体がスチール構造体である、請求項1に記載の補強手段。
【請求項3】
前記金属構造体が、金属又は合金でめっきされたスチール構造体である、請求項1又は2に記載の補強手段。
【請求項4】
前記金属構造体がワイヤーである、請求項1〜3の何れか1項に記載の補強手段。
【請求項5】
前記補強手段が、ケーブル状に形成された複数のワイヤーを含む、請求項1〜4の何れか1項に記載の補強手段。
【請求項6】
前記補強手段が複数のワイヤーを含み、各ワイヤーが自身に結合したシリカゲルの層を有するとともに、前記複数のワイヤーがケーブル状に形成されている、請求項5に記載の補強手段。
【請求項7】
前記シリカゲルが多孔質シリカゲルである、請求項1〜6の何れか1項に記載の補強手段。
【請求項8】
前記シリカゲルがナノ多孔質シリカゲルである、請求項1〜7の何れか1項に記載の補強手段。
【請求項9】
前記第1層が50〜200nmの厚さを有する、請求項1〜8の何れか1項に記載の補強手段。
【請求項10】
前記第1層の上に、有機シラン結合剤を含む又は実質的に有機シラン結合剤からなる第2層をさらに含む、請求項1〜9の何れか1項に記載の補強手段。
【請求項11】
前記有機シラン結合剤は、アミノシラン、ビニルシラン、アクリルシラン、エポキシシラン、クロロシラン、メルカプトシラン及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜10の何れか1項に記載の補強手段。
【請求項12】
前記アミノシランが、N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルシランである、請求項11に記載の補強手段。
【請求項13】
前記N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルシランが、N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルジメトキシシラン、N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項12に記載の補強手段。
【請求項14】
i)金属構造体上にシリカゾル層を堆積させる工程と、
ii)前記シリカゾル層から、前記金属構造体上にシリカゲル層を形成する工程と、
を含む、ゴム物品用の補強手段を作製するための方法。
【請求項15】
前記工程(ii)は、前記シリカゾル層を乾燥させて前記シリカゲル層を形成する工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記シリカゾルは、シリコンアルコキシド及び揮発酸を含むアルコール溶液を含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記シリコンアルコキシドはテトラアルコキシシランである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記シリカゲルの第1層の上に、有機シラン結合剤を含む又は実質的に有機シラン結合剤からなる第2層を塗布する工程(iii)をさらに含む、請求項14〜17の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記有機シラン結合剤は、アミノシラン、ビニルシラン、アクリルシラン、エポキシシラン、クロロシラン、メルカプトシラン及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記アミノシランが、N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルシランである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルシランが、N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルジメトキシシラン、N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記金属構造体がスチール構造体である、請求項14〜21の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記金属構造体が、金属又は合金でめっきされたスチール構造体である、請求項14〜22の何れか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記金属構造体がワイヤーである、請求項14〜23の何れか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記方法は、請求項24に記載の方法で作製された複数のワイヤーをケーブル状に形成する工程をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ゴム物品を形成するための方法であって、当該方法は、請求項1〜14の何れか1項に記載の補強手段、又は請求項14〜25の何れか1項の方法で作製された補強手段を、ゴム配合物の中に成形又は同時押出する工程を含む、方法。
【請求項27】
前記ゴム配合物が有機シラン結合剤を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記有機シラン結合剤は、アミノシラン、ビニルシラン、アクリルシラン、エポキシシラン、クロロシラン、メルカプトシラン及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記アミノシランが、N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルシランである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルシランが、N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルジメトキシシラン、N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐2(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ゴム物品がタイヤである、請求項26〜30の何れか1項に記載の方法。
【請求項32】
ゴム配合物中で結合した、請求項1〜13の何れか1項に記載の補強手段、又は請求項14〜25の何れか1項の方法で作製した補強手段を含む、ゴム物品。
【請求項33】
前記ゴム物品がタイヤである、請求項32に記載のゴム物品。

【公表番号】特表2013−503266(P2013−503266A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526111(P2012−526111)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001575
【国際公開番号】WO2011/023936
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(508247545)エヌ・ジー・エフ ヨーロッパ リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】NGF EUROPE LIMITED
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】