説明

サイドプレート用研磨調整装置

【課題】塗工装置のサイドプレートを容易に、かつ、精度良く研磨し、形状を調整することの可能なサイドプレート用研磨調整装置の提供を目的とする。

【解決手段】研磨調整装置1は、サイドプレート105の載置される載置板2、サイドプレート105の第一の円弧部を研磨する第一の研磨治具3、サイドプレート105の第二の円弧部を研磨する第二の研磨治具4、及び、サイドプレート105を第一の研磨治具3や第二の研磨治具4に押し付けるための押し付け部材5などを具備し、塗工装置101のサイドプレート105を研磨し、形状を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状基材に塗液を塗工する塗工装置の液槽のサイドプレートを、バックアップロールやメタリングロールなどと対応するように研磨し、形状を調整するサイドプレート用研磨調整装置(適宜、研磨調整装置と略称する。)に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状基材に塗液を塗工する塗工装置として、バックアップロールや液槽(液貯留槽とも呼ばれる。)などの位置、及び、アプリケータロールの有無などに応じて、様々な方式の塗工装置がある。
様々な方式の塗工装置のうち、本発明に関連する塗工装置は、液槽のサイドプレートが、メタリングロールに対応する第一の円弧部、及び、バックアップロール又はアプリケータロールに対応する第二の円弧部を有している。すなわち、本発明の研磨調整装置は、上記の円弧部を研磨し、形状を調整する装置である。なお、形状を調整するとは、各円弧部の円弧形状自体を所定の円弧形状に加工するとともに、各円弧部の位置が所定の位置となるように加工することをいう。
【0003】
次に、本発明に関連する塗工装置、及び、該塗工装置のサイドプレートについて、図面を参照して説明する。
図5は、塗工装置を説明するための要部の概略断面図を示している。
図5において、塗工装置101は、バックアップロール102、液槽106、及び、メタリングロール103などを備えている。この塗工装置101は、シート状基材10がバックアップロール102に掛けられ、塗液11に対して下方から上方に走行するシート状基材10に、塗液11を塗布する。
なお、シート状基材10及び塗液11は、様々なものが用いられ、特に限定されるものではない。
【0004】
液槽106は、金属製のバックプレート104、バックプレート104の両側に取り付けられる一対の樹脂(通常、非付着性を有する樹脂)製のサイドプレート105、メタリングロール103、及び、バックアップロール102に掛けられたシート状基材10などからなっている。この液槽106は、シート状基材10に塗工する塗液11を貯留する。
また、メタリングロール103は、ナイフドクターやコンマロールなどであり、シート状基材10に付着した塗液11の量を調節する。
【0005】
図6は、塗工装置のサイドプレートの概略平面図を示している。
図6において、サイドプレート105は、板厚が数mm(たとえば、5mm)の平板であり、バックプレート用シール面151、メタリングロール用シール面152、及び、基材用シール面153を有している。また、一対のサイドプレート105は、対向した状態で、バックプレート104及びメタリングロール103によって挟まれることにより、保持されている(組み付けられている。)。
バックプレート用シール面151は、サイドプレート105の直線部の端面であり、バックプレート104と当接することにより、塗液11が漏れないようにシールする。なお、このバックプレート用シール面151は、基準となる面であり、通常、製作時に研磨加工された後に、追加工が施されることはない。
また、メタリングロール用シール面152は、サイドプレート105の第一の円弧部の端面であり、メタリングロール103と当接することにより、塗液11が漏れないようにシールする。
さらに、基材用シール面153は、サイドプレート105の第二の円弧部の端面であり、走行するシート状基材10に対して微小隙間Δ(たとえば、100μm)を有することにより、塗液11の漏れを防止し、また、走行するシート状基材10へのダメージ(しわ、傷、破れなど)を防止する。
【0006】
また、図5に示す塗工装置101は、バックプレート104が、回動可能となるように、軸(図1参照)に連結されている。すなわち、塗工装置101は、バックプレート104を回動させ、位置決めすることにより、バックアップロール102に掛けられたシート状基材10に対する微小隙間Δ(Δは、バックプレート104の先端とバックアップロール102に掛けられたシート状基材10との距離である。たとえば、100μm)を調整する。
さらに、塗工装置101は、メタリングロール103を水平方向に移動させ、位置決めする移動位置決め手段(図示せず)を有している。すなわち、塗工装置101は、メタリングロール103を水平方向に移動させ、位置決めすることにより、バックアップロール102に掛けられたシート状基材10に対する微小隙間Δ(Δは、メタリングロール103とバックアップロール102に掛けられたシート状基材10との距離である。)を調整する。これにより、塗工装置101は、塗工厚さtを調整する。なお、塗工厚さtは、微小隙間Δとほぼ等しく、また、塗工厚さtは、たとえば、100μmより厚くてもよく、あるいは、100μm以下の厚さでもよい。
【0007】
ところで、塗工装置101は、シート状基材10に対し塗液11を均一かつ平滑に塗工するために、所定の深さにより均一な圧力のかかった塗液11に、シート状基材10を浸して濡らす必要がある。また、一般に高液面塗工と呼ばれる塗工法においては、メタリングロール103の下方端部より上方の位置まで、塗液11を貯留している。
また、塗工装置101は、上述したように、バックプレート104を回動させ、微小隙間Δが調整され、続いて、メタリングロール103を水平方向に移動させ、微小隙間Δが調整される。
【0008】
したがって、塗工装置101は、上記の調整が行われた状態において、サイドプレート105のメタリングロール用シール面152は、メタリングロール103と当接し、塗液11が漏れないようにシールする必要がある。また、基材用シール面153は、走行するシート状基材10に対して微小隙間Δ(たとえば、100μm)を有し、塗液11の漏れを防止し、また、走行するシート状基材10へのダメージを防止する必要がある。
このため、作業者は、サイドプレート105を塗工装置101に取り付け、三面(バックプレート用シール面151、メタリングロール用シール面152及び基材用シール面153(実質的には、メタリングロール用シール面152及び基材用シール面153))の形状及び位置などを確認し、不具合があると、サイドプレート105を塗工装置101から取り外し、ヤスリによる研磨で形状を調整し、再び取り付けて形状及び位置などを確認する作業を繰り返していた。
【0009】
なお、本発明に関連する技術として、たとえば、特許文献1には、円弧状の摺接端面を有し、回動可能に取り付けられたテフロン(登録商標)からなる仕切板を有する塗工装置の技術が開示されている。
また、特許文献2には、研磨工具と被加工物のそれぞれを回転させる回転機構、及び、研磨工具と被加工物とのうち、一方を他方に接触させつつ相対的に往復移動させる移動機構などを備えた研磨装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−80657号公報
【特許文献2】特開平10−34511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述したサイドプレート105を塗工装置101に取り付けての確認、サイドプレート105を塗工装置101から取り外した後の、手作業のヤスリによる研磨、及び、再び取り付けての確認といった作業を繰り返すことは、優れた技能を有する作業者を必要とし、また、優れた技能を有する作業者であっても、作業時間を短縮できない場合があるといった問題があった。
さらに、新規のサイドプレート105や形状が大きく変化したサイドプレート105に対しては、作業時間が大幅に長くなる傾向にあり、作業性を向上させることができないといった問題があった。
【0012】
また、研磨し過ぎると、サイドプレート105を廃棄することとなり、かかる場合、製造原価のコストダウンを図ることができないといった問題があった。
さらに、基材用シール面153の不具合(たとえば、一部部の微小隙間Δが小さすぎるといった不具合)によっては、走行するシート状基材10にダメージ(しわ、傷、破れなど)が発生するので、品質の信頼性を向上させることが要望されていた。
【0013】
なお、特許文献1、2の技術は、本発明に関連する技術ではあるものの、上記の課題を解決することはできず、また、本発明に適用することが困難である。
【0014】
本発明は、以上のような問題を解決するために提案されたものであり、塗工装置のサイドプレートを容易に、かつ、精度良く研磨し、形状を調整することの可能なサイドプレート用研磨調整装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明のサイドプレート用研磨調整装置は、塗工装置の液槽のサイドプレートを研磨し、形状を調整するサイドプレート用研磨調整装置である。
このサイドプレート用研磨調整装置は、サイドプレートの載置される載置板と、この載置板に回転可能に設けられ、塗工装置のメタリングロールに対応する円板状であり、サイドプレートの第一の円弧部を研磨する第一の研磨治具と、載置板に回転可能に設けられ、塗工装置のバックアップロール又はアプリケータロールに対応する円板状であり、サイドプレートの第二の円弧部を研磨する第二の研磨治具と、載置板に移動可能に設けられ、塗工装置のバックプレートに対応する棒状又は板状であり、サイドプレートを研磨治具に押し付けるための、サイドプレートの直線部と当接する押し付け部材とを具備した構成としてある。
【発明の効果】
【0016】
本発明のサイドプレート用研磨調整装置によれば、塗工装置のサイドプレートを容易に、かつ、精度良く研磨し、形状を調整することができる。これにより、作業性を大幅に向上させることができ、また、製造原価のコストダウンや品質の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかるサイドプレート用研磨調整装置を説明するための概略平面図を示している。
【図2】図2は、本発明の一実施形態にかかるサイドプレート用研磨調整装置の第一の研磨治具を説明するための概略斜視図を示している。
【図3】図3は、本発明の一実施形態にかかるサイドプレート用研磨調整装置の第二の研磨治具を説明するための概略斜視図を示している。
【図4】図4は、本発明の一実施形態にかかるサイドプレート用研磨調整装置の動作を説明するための概略平面図を示している。
【図5】図5は、塗工装置を説明するための要部の概略断面図を示している。
【図6】図6は、塗工装置のサイドプレートの概略平面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[サイドプレート用研磨調整装置の実施形態]
図1は、本発明の一実施形態にかかるサイドプレート用研磨調整装置を説明するための概略平面図を示している。
図1において、本実施形態の研磨調整装置1は、載置板2、第一の研磨治具3、第二の研磨治具4、及び、押し付け部材5などを備えた構成としてある。この研磨調整装置1は、上述した塗工装置101の液槽106のサイドプレート105を研磨し、サイドプレート105の形状を調整する。
【0019】
(載置板)
載置板2は、通常、金属製のほぼ矩形状の平板であり、サイドプレート105が載置される。また、載置板2は、後述するように、第一の研磨治具3、第二の研磨治具4及び押し付け部材5などが設けられている。これにより、載置板2は、基台あるいは定盤として機能し、載置されたサイドプレート105を容易に研磨でき、また、載置されたサイドプレート105の三面(すなわち、バックプレート用シール面151、メタリングロール用シール面152及び基材用シール面153)の形状及び位置などを確認(あるいは、検査)することができる。
なお、サイドプレート105の載置は、サイドプレート105を直接的に又は間接的に(すなわち、所定厚さのスペーサなどを介して)載置板2に載置してもよい。
【0020】
ここで、好ましくは、載置板2に設けられた第一の研磨治具3、第二の研磨治具4及び押し付け部材5の位置が、塗工装置101のメタリングロール103、バックアップロール102及びバックプレート104の位置にそれぞれ対応するとよい。このようにすると、研磨調整装置1が、塗工装置101の液槽106の平面的なモデルとして機能する。すなわち、サイドプレート105の三面の形状などを確認する際、サイドプレート105を塗工装置101に組み付けなくても、塗工装置101に組み付けて確認するのとほぼ同様に確認することができるので、作業性を向上させることができる。
なお、塗工装置101は、上述したように、バックプレート104を回動させるための軸や、メタリングロール103を水平方向に移動させ、位置決めする移動位置決め手段などを有している。かかる場合、研磨調整装置1は、軸51や移動位置決め手段34などにより、第一の研磨治具3、第二の研磨治具4及び押し付け部材5の位置を、塗工装置101のメタリングロール103、バックアップロール102及びバックプレート104の位置にそれぞれ対応させる。
【0021】
(第一の研磨治具)
第一の研磨治具3は、載置板2に回転可能に設けられ、塗工装置101のメタリングロール103に対応する円板状である。また、第一の研磨治具3は、側面に研磨部(細かい並列の刃や研磨材など)を有している。第一の研磨治具3は、通常、載置板2の裏面に設けられたモータによって回転し、回転軸に着脱可能に取り付けられる。この第一の研磨治具3は、サイドプレート105の第一の円弧部(すなわち、塗工装置101において、メタリングロール103と当接するメタリングロール用シール面152)を研磨する。
【0022】
また、上記のメタリングロール103に対応する円板状とは、メタリングロール103と同じ半径(なお、微小な寸法公差は、許容される。)を有する円板状といった意味である。これにより、第一の研磨治具3によって研磨されたメタリングロール用シール面152は、メタリングロール103と当接した際、塗液11の漏れを確実に防止することができる。また、手作業のヤスリによる研磨と比べると、容易に、かつ、精度良く研磨することができる。
【0023】
ここで、好ましくは、研磨調整装置1は、第一の研磨治具3を移動させ、位置決めする移動位置決め手段34を有するとよい。この移動位置決め手段34は、通常、載置板2の裏面に設けられ、図示してないが、移動レール(あるいは、リニアベアリングなど)、ボールねじ、固定用ねじ、リニアゲージ(たとえば、位置測定器)などを有している。また、移動位置決め手段34は、塗工装置101のメタリングロール103と対応するように、第一の研磨治具3を左右方向に移動させる構成としてあり、第一の研磨治具3と第二の研磨治具4との微小隙間Δを調節する。
ここで、第一の研磨治具3の微小隙間Δの調節により、塗工厚さtが調整される。この際、第二の研磨治具4は、後述するように、バックアップロール102の半径+シート状基材10の厚さt10+微小隙間Δ(たとえば、100μm)の半径(なお、微小な寸法公差は、許容される。)を有する円板状としてある。したがって、微小隙間Δは、Δ=t−Δの関係にもとづいて調節される。
一般的に、塗工装置101は、上述したように、メタリングロール103を移動させ、位置決めする移動位置決め手段を有しているので、研磨調整装置1が移動位置決め手段34を有することにより、実機(塗工装置101)とほぼ同様の状態で、研磨や確認の作業を行うことができる。
【0024】
また、好ましくは、第一の研磨治具3は、模範部33などを有するとよい。
次に、好ましい第一の研磨治具3について、図面を参照して説明する。
図2は、本発明の一実施形態にかかるサイドプレート用研磨調整装置の第一の研磨治具を説明するための概略斜視図を示している。
図2において、第一の研磨治具3は、側面に、第一やすり部31、第二やすり部32及び模範部33が上下方向に並設されている。
なお、これらの並び順は、特に限定されるものではない。また、第一の研磨治具3は、たとえば、半径が100mmであり、厚さが30mmであるが、これらの寸法は、特に限定されるものではない。さらに、第一やすり部31、第二やすり部32及び模範部33は、一つの円板に設けられているが、これに限定されるものではなく、たとえば、三つの円板にそれぞれ設けられてもよい。
【0025】
模範部33は、金属面であり、塗工装置101のメタリングロール103と同じ半径(なお、微小な寸法公差は、許容される。)を有している。このようにすると、研磨前及び研磨後のサイドプレート105の形状及び位置などを容易に、かつ、精度よく確認することができる。
また、第二やすり部32及び第一やすり部31は、粗さの異なるサンドペーパー(紙やすりや研磨布紙)であり、本実施形態では、第二やすり部32が第一やすり部31より目の細かいやすりとしてある。このようにすると、研磨する量が多い場合、まず、第一やすり部31を用いてメタリングロール用シール面152を研磨し、続いて、第二やすり部32を用いてメタリングロール用シール面152を研磨することができ、作業性を向上させることができる。また、研磨する量が少ない場合は、第二やすり部32を用いてメタリングロール用シール面152を研磨する。
【0026】
(第二の研磨治具)
第二の研磨治具4は、載置板2に回転可能に設けられ、塗工装置101のバックアップロール102に対応する円板状である。また、第二の研磨治具4は、側面に研磨部(細かい並列の刃や研磨材など)を有している。第二の研磨治具4は、通常、載置板2の裏面に設けられたモータによって回転し、回転軸に着脱可能に取り付けられる。この第二の研磨治具4は、サイドプレート105の第二の円弧部(すなわち、塗工装置101において、バックアップロール102に掛けられたシート状基材10と対向する基材用シール面153)を研磨する。
【0027】
また、上記のバックアップロール102に対応する円板状とは、バックアップロール102の半径+シート状基材10の厚さt10+微小隙間Δ(たとえば、100μm)の半径(なお、微小な寸法公差は、許容される。)を有する円板状といった意味である。これにより、第二の研磨治具4によって研磨された基材用シール面153は、走行するシート状基材10に対して塗液11の漏れを防止し、また、走行するシート状基材10へのダメージを防止することができる。また、手作業のヤスリによる研磨と比べると、容易に、かつ、精度良く研磨することができる。
【0028】
また、好ましくは、第二の研磨治具4は、模範部43などを有するとよい。
次に、好ましい第二の研磨治具4について、図面を参照して説明する。
図3は、本発明の一実施形態にかかるサイドプレート用研磨調整装置の第二の研磨治具を説明するための概略斜視図を示している。
図3において、第二の研磨治具4は、側面に、第一やすり部41、第二やすり部42及び模範部43が上下方向に並設されている。
なお、これらの並び順は、特に限定されるものではない。また、第二の研磨治具4は、たとえば、半径が150mmであり、厚さが30mmであるが、これらの寸法は、特に限定されるものではない。さらに、第一やすり部41、第二やすり部42及び模範部43は、一つの円板に設けられているが、これに限定されるものではなく、たとえば、三つの円板にそれぞれ設けられてもよい。
【0029】
模範部43は、金属面であり、塗工装置101のバックアップロール102と同じ半径(なお、微小な寸法公差は、許容される。)を有している。このようにすると、研磨前及び研磨後のサイドプレート105の形状などを容易に確認することができる。すなわち、模範部43の半径(バックアップロール102の半径)に、シート状基材10の厚さt10+微小隙間Δ(たとえば、100μm)を加算することにより、あるいは、模範部43に、シート状基材10の帯状の小片及び微小隙間Δに相当するダミーシート(図示せず)を貼り付けることにより、サイドプレート105の形状及び位置などを容易に、かつ、精度よく確認することができる。
【0030】
また、第二やすり部42及び第一やすり部41は、粗さの異なるサンドペーパー(紙やすりや研磨布紙)であり、本実施形態では、第二やすり部42が第一やすり部41より目の細かいやすりとしてある。このようにすると、研磨する量が多い場合、まず、第一やすり部41を用いてバックプレート用シール面151を研磨し、続いて、第二やすり部42を用いてバックプレート用シール面151を研磨することができ、作業性を向上させることができる。また、研磨する量が少ない場合は、第二やすり部42を用いてバックプレート用シール面151を研磨する。
なお、第二やすり部42は、バックアップロール102の半径+シート状基材10の厚さt10+微小隙間Δ(たとえば、100μm)の半径(なお、微小な寸法公差は、許容される。)を有する円板状としてある。これにより、第二やすり部42によって研磨された基材用シール面153は、走行するシート状基材10に対して塗液11の漏れを防止し、また、走行するシート状基材10へのダメージを防止することができる。また、やすり部をサンドペーパーとしてあるので、シート状基材10の厚さの変更があっても、シムなどを用いることにより、容易に対応することができる。
【0031】
(押し付け部材)
押し付け部材5は、載置板2に移動可能(本実施形態では、回動可能)に設けられ、塗工装置101のバックプレート104に対応する板状である。この押し付け部材5は、サイドプレート105を第一の研磨治具3や第二の研磨治具4に押し付けるための部材であり、サイドプレート105のバックプレート用シール面151と当接する。バックプレート用シール面151は、通常、平面であり、押し付け部材5の当接面も、通常、平面である。また、押し付け部材5の幅は、第一の研磨治具3や第二の研磨治具4と対応するように、たとえば、30mmとしてある。
【0032】
ここで、好ましくは、研磨調整装置1は、押し付け部材5を回動させ、位置決めするための軸51を有するとよい。この軸51は、通常、載置板2に突設され、図示してないが、スリーブ(あるいは、ボールベアリングなど)、固定用ねじ、角度計測器などを有している。また、押し付け部材5によって、研磨調整装置1は、塗工装置101のバックプレート104と対応するように、押し付け部材5を回動させる構成としてあり、押し付け部材5の先端と第二の研磨治具4との微小隙間Δを調節する。
なお、第二の研磨治具4は、バックアップロール102の半径+シート状基材10の厚さt10+微小隙間Δ(たとえば、100μm)の半径(なお、微小な寸法公差は、許容される。)を有する円板状としてあるので、微小隙間Δの調節においては、微小隙間Δ=0mmとするように調節する。
一般的に、塗工装置101は、上述したように、バックプレート104を回動させるための軸を有しているので、研磨調整装置1が軸51を有することにより、実機(塗工装置101)とほぼ同様の状態で、研磨や確認の作業を行うことができる。
【0033】
次に、上記構成の研磨調整装置1の動作などについて、図面を参照して説明する。
研磨量が多くなる傾向にある新規のサイドプレート105(あるいは、形状が変化したサイドプレート105)に対する動作について説明する。
研磨調整装置1は、第一の研磨治具3及び押し付け部材5が、塗工装置101のメタリングロール103及びバックプレート104と対応するように位置決めされ、その状態で固定される。
すなわち、押し付け部材5は、上述したように、微小隙間Δ=0mmとなるように、反時計回り方向に回動され、先端部が第二の研磨治具4の第二やすり部42と当接する位置に位置決めされ、固定される。また、この状態の角度(適宜、所定の角度と略称する。)を計測しておくことにより、固定を解除しても、計測された角度にもとづいて、上記所定の角度を再現することができる。
また、第一の研磨治具3は、上述したように、塗工厚さtに応じて微小隙間Δが調節される、すなわち、左右方向に移動され、位置決め後に固定される。また、この状態の位置(適宜、所定の位置と略称する。)を計測しておくことにより、固定を解除しても、計測された位置にもとづいて、上記所定の位置を再現することができる。
これにより、研磨調整装置1は、塗工装置101の液槽106の平面的なモデルとして機能する。
【0034】
次に、研磨調整装置1は、複数のスペーサ(厚さは、たとえば、22mm)を介して、新規のサイドプレート105が、バックプレート用シール面151が押し付け部材5と当接する状態で、載置板2上に載置される。ここで、メタリングロール用シール面152及び基材用シール面153は、通常、研磨代を有している。したがって、メタリングロール用シール面152が第一の研磨治具3に嵌入できないときは、押し付け部材5を時計回り方向に回動させて、メタリングロール用シール面152を第一の研磨治具3に嵌入させる。また、ここで、押し付け部材5の角度や、基材用シール面153と模範部43とのクリアランスなどを計測することにより、第一の研磨治具3や第二の研磨治具4による研磨量を求めることができる。
また、形状が変化したサイドプレート105の場合も、押し付け部材5の角度、メタリングロール用シール面152と模範部33とのクリアランス、基材用シール面153と模範部43とのクリアランスなどを計測することにより、第一の研磨治具3や第二の研磨治具4による研磨量を求めることができる。
このように、研磨調整装置1は、塗工装置101の液槽106の平面的なモデルとして機能するので、サイドプレート105を塗工装置101に組み付けなくても、第一の研磨治具3や第二の研磨治具4による研磨量を容易に求めることができる。
【0035】
図4は、本発明の一実施形態にかかるサイドプレート用研磨調整装置の動作を説明するための概略平面図を示している。
次に、図4(a)に示すように、研磨調整装置1は、第一の研磨治具3がメタリングロール用シール面152を研磨する。なお、図4(a)において、サイドプレート105は、破線で示してある。
この際、研磨調整装置1は、第二の研磨治具4が回転軸から取り外されている。また、新規のサイドプレート105は、複数のスペーサ(厚さは、たとえば、2mm)を介して、バックプレート用シール面151が押し付け部材5と当接する状態で、載置板2上に載置される。また、押し付け部材5は、微小角度だけ時計回り方向に回動しており、第一の研磨治具3は、上述したように、所定の位置に、位置決めされ固定されている。
続いて、第一の研磨治具3が回転し、押し付け部材5が反時計回り方向に回動され、メタリングロール用シール面152は、第一やすり部31によって研磨(粗く研磨)される。通常、作業者は、押し付け部材5の角度を確認しながら研磨するので、研磨し過ぎるといった不具合を容易に防止することができる。
【0036】
次に、第一の研磨治具3の回転が停止し、サイドプレート105は、複数のスペーサ(厚さは、たとえば、12mm)を介して、バックプレート用シール面151が押し付け部材5と当接する状態で、載置板2上に載置される。
続いて、第一の研磨治具3が回転し、押し付け部材5が反時計回り方向に所定の角度となるまで回動され、メタリングロール用シール面152は、第二やすり部32によって研磨(滑らかに研磨)される。このように、研磨調整装置1は、メタリングロール用シール面152を容易に、かつ、精度よく研磨することができる。
【0037】
次に、第一の研磨治具3の回転が停止し、サイドプレート105は、複数のスペーサ(厚さは、たとえば、22mm)を介して、バックプレート用シール面151が押し付け部材5と当接する状態で、載置板2上に載置される。このとき、押し付け部材5は、所定の角度で固定されている。
続いて、作業者は、メタリングロール用シール面152と模範部33との接触状態を目視検査し、サイドプレート105を塗工装置101に組み付けても、塗液11の漏れが発生しないことを確認する。
【0038】
次に、図4(b)に示すように、研磨調整装置1は、第二の研磨治具4が基材用シール面153を研磨する。なお、図4(b)において、サイドプレート105は、破線で示してある。
この際、研磨調整装置1は、第一の研磨治具3が回転軸から取り外され、第二の研磨治具4が回転軸に取り付けられている。また、新規のサイドプレート105は、複数のスペーサ(厚さは、たとえば、2mm)を介して、バックプレート用シール面151が押し付け部材5と当接する状態で、載置板2上に載置される。
また、押し付け部材5は、所定の角度に位置決めされ固定されており、サイドプレート105は、第二の研磨治具4から離れた状態にある。
続いて、第二の研磨治具4が回転し、サイドプレート105が作業者によって押し付け部材5に沿って第二の研磨治具4の方向に移動され、基材用シール面153は、第一やすり部41によって研磨(粗く研磨)される。通常、作業者は、基材用シール面153の近傍にマーキングし、基材用シール面153の研磨量を確認しながら研磨するので、研磨し過ぎるといった不具合を容易に防止することができる。
【0039】
次に、第二の研磨治具4の回転が停止し、サイドプレート105は、複数のスペーサ(厚さは、たとえば、12mm)を介して、バックプレート用シール面151が押し付け部材5と当接する状態で、載置板2上に載置される。
続いて、第二の研磨治具4が回転し、サイドプレート105が作業者によって押し付け部材5に沿って第二の研磨治具4の方向に移動され、基材用シール面153は、第二やすり部42によって研磨(滑らかに研磨)される。このように、研磨調整装置1は、基材用シール面153を容易に、かつ、精度よく研磨することができる。
【0040】
次に、第二の研磨治具4の回転が停止し、サイドプレート105は、複数のスペーサ(厚さは、たとえば、22mm)を介して、バックプレート用シール面151が押し付け部材5と当接する状態で、載置板2上に載置される。このとき、第一の研磨治具3が回転軸に取り付けられ、模範部33とメタリングロール用シール面152が当接していてもよい。
続いて、作業者は、基材用シール面153と模範部43とのクリアランスの状態を目視検査する。すなわち、模範部43の半径(バックアップロール102の半径)に、シート状基材10の厚さt10+微小隙間Δ(たとえば、100μm)を加算することにより、あるいは、模範部43に、シート状基材10の帯状の小片及び微小隙間Δに相当するダミーシート(図示せず)を貼り付けることにより、基材用シール面153の形状などを容易に、かつ、精度よく確認することができる。これにより、基材用シール面153は、走行するシート状基材10に対して微小隙間Δ(たとえば、100μm)を有することにより、塗液11の漏れを防止し、また、走行するシート状基材10へのダメージを防止することができる。
【0041】
なお、上記の状態においては、研磨調整装置1は、第一の研磨治具3、第二の研磨治具4及び押し付け部材5が、塗工装置101のメタリングロール103、バックアップロール102及びバックプレート104と同じ状態にあるので、サイドプレート105のバックプレート用シール面151、メタリングロール用シール面152及び基材用シール面153の形状及び位置などの最終確認を容易に、かつ、精度よく行うことができる。
また、研磨調整装置1によって研磨及び調整されたサイドプレート105は、塗工装置101に、一回で、かつ、支障なく組み付けられる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の研磨調整装置1によれば、塗工装置101のサイドプレート105を容易に、かつ、精度良く研磨し、形状を調整することができる。これにより、作業性を大幅に向上させることができ、また、製造原価のコストダウンや品質の信頼性を向上させることができる。
【0043】
以上、本発明のサイドプレート用研磨調整装置について、好ましい実施形態などを示して説明したが、本発明に係るサイドプレート用研磨調整装置は、上述した実施形態などにのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、研磨前や研磨後に、メタリングロール用シール面152や基材用シール面153を確認する際、図示してないが、サイドプレート105の要部の形状を拡大表示するモニタ装置を備える構成としてもよい。このようにすると、確認を容易に、かつ、精度よく行うことができ、作業性などを向上させることができる。
【0044】
また、上述した研磨調整装置1は、塗工装置101のサイドプレート105に対応した構成としてあるが、塗工装置が、アプリケータロール(図示せず)を有する場合であっても、本発明のサイドプレート用研磨調整装置は、対応することができる。
なお、かかる場合、第二の研磨治具4におけるアプリケータロールに対応する円板状とは、アプリケータロールの半径+微小隙間Δ(たとえば、100μm)の半径(なお、微小な寸法公差は、許容される。)を有する円板状といった意味である。
【符号の説明】
【0045】
1 研磨調整装置
2 載置板
3 第一の研磨治具
4 第二の研磨治具
5 押し付け部材
10 シート状基材
11 塗液
31 第一やすり部
32 第二やすり部
33 模範部
34 移動位置決め手段
41 第一やすり部
42 第二やすり部
43 模範部
51 軸
101 塗工装置
102 バックアップロール
103 メタリングロール
104 バックプレート
105 サイドプレート
106 液槽
151 バックプレート用シール面
152 メタリングロール用シール面
153 基材用シール面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗工装置の液槽のサイドプレートを研磨し、形状を調整するサイドプレート用研磨調整装置であって、
前記サイドプレートの載置される載置板と、
この載置板に回転可能に設けられ、前記塗工装置のメタリングロールに対応する円板状であり、前記サイドプレートの第一の円弧部を研磨する第一の研磨治具と、
前記載置板に回転可能に設けられ、前記塗工装置のバックアップロール又はアプリケータロールに対応する円板状であり、前記サイドプレートの第二の円弧部を研磨する第二の研磨治具と、
前記載置板に移動可能に設けられ、前記塗工装置のバックプレートに対応する棒状又は板状であり、前記サイドプレートを前記研磨治具に押し付けるための、前記サイドプレートの直線部と当接する押し付け部材と
を具備したことを特徴とするサイドプレート用研磨調整装置。
【請求項2】
前記載置板に設けられた前記第一の研磨治具、第二の研磨治具、及び、押し付け部材の位置が、前記塗工装置のメタリングロール、バックアップロール又はアプリケータロール、及び、バックプレートの位置に対応することを特徴とする請求項1に記載のサイドプレート用研磨調整装置。
【請求項3】
前記第一の研磨治具を移動させ、位置決めする移動位置決め手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のサイドプレート用研磨調整装置。
【請求項4】
前記研磨治具の側面に、粗さの異なる複数のサンドペーパーが上下方向に配設されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のサイドプレート用研磨調整装置。
【請求項5】
前記第一の研磨治具が、前記塗工装置のメタリングロールに対応する模範部を有し、前記第二の研磨治具が、前記塗工装置のバックアップロール又はアプリケータロールに対応する模範部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のサイドプレート用研磨調整装置。
【請求項6】
前記サイドプレートの要部の形状を拡大表示するモニタ装置を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のサイドプレート用研磨調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−96314(P2012−96314A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245903(P2010−245903)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】