説明

サスペンションユニット

【課題】共振周波数を低下させ、共振峰と高周波数帯における加速度を低減することができる軽量でコンパクトなサスペンションユニットを提供すること。
【解決手段】下部フレーム2と、下部フレーム2にリンク機構を介して上下動自在に取り付けられた上部フレーム4とを備えたサスペンションユニットに、上部フレーム4を下部フレーム2に対し弾性的に支持する金属ばね14,46及び磁気ばねユニット54と、上部フレーム4に取り付けられ上部フレーム4の上下動を減衰させる磁気ダンパ70とを設けた。また、磁気ダンパ70は銅の電磁誘導を利用し、上部フレーム4の上下動をリンク機構を介して銅板70cの水平移動で減衰させる動吸振器として作用させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ばねと磁気ばねユニットを有するサスペンションユニットに関し、さらに詳しくは、正のばね定数を持つ金属ばねと負のばね定数を持つ磁気ばねユニットを組み合わせてばね定数が所定の領域で略0を示すサスペンションユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車技術をはじめ、様々な乗り物の技術がめまぐるしい発展を遂げ、運動性能だけでなく安全性や快適性も求められてきている。最近では、高保持力、高残留磁束密度を有する永久磁石が実用化されるに伴い、磁気浮上、磁気軸受、磁性流体を用いたダンパー等の磁気制御系の研究が盛んに行われており、本願出願人も、磁気ばねを利用したサスペンションユニットをこれまで種々提案している。
【0003】
しかしながら、正のばね定数を持つ金属ばねと負のばね定数を持つ磁気ばねユニットを組み合わせて所定の領域で略0のばね定数を示すサスペンションユニットにおいて、ストロークを大きく取ろうとすると非常に大きいユニットになるのが現状であった。
【0004】
そこで、本願出願人は、磁気ばねユニットの作動量をサスペンションユニットの作動量より小さくすることにより、大きいストロークを確保するとともに小型化を達成することができるサスペンションユニットを提案している(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−353770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
作業用機械の場合、機構上、一般的な乗り物のようなサスペンションは導入できない。すなわち、尻下スペースに余裕がなく、除振のための十分なストロークが確保できないので、ばね定数も小さくできず、共振点周りの除振が困難になっている。一方、共振点周りの除振で、ばね定数を小さく設定すると、衝撃性振動で底付きが発生する可能性が高くなる。また、オペレータの運転姿勢変化による体重移動でも、除振性能が変動し、悪化するという問題がある。
【0007】
さらに、一般的なシートサスペンションに使用される減衰機構の摩擦ダンパ、オイルダンパでは、共振周波数の上昇を誘導し、高周波帯での加速度の低減が困難になるばかりでなく、機械的な劣化も生じやすい。また、エアサスペンションは大型化、重量増加につながる。
【0008】
本発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、共振周波数を低下させ、共振峰と高周波数帯における加速度を低減することができる軽量でコンパクトなサスペンションユニットを提供することを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のうちで請求項1に記載の発明は、下部フレームと、該下部フレームに第1のリンク機構を介して上下動自在に取り付けられた上部フレームとを備えたサスペンションユニットであって、前記上部フレームを前記下部フレームに対し弾性的に支持する金属ばね及び磁気ばねユニットと、前記上部フレームに取り付けられ前記上部フレームの上下動を減衰させる磁気ダンパをさらに備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記磁気ばねを、所定の間隔を置いて異なる磁極が対向する磁石対と、該磁石対の磁極間に所定のクリアランスを置いて摺動自在に配置された銅板とで構成し、前記上部フレームの上下動により前記銅板を摺動させて前記上部フレームの上下動を減衰させるようにしたことを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記上部フレームが前記第1のリンク機構に連結された前部連結軸を有し、該前部連結軸と前記銅板とを第2のリンク機構を介して連結し、前記上部フレームの上下動により前記第2のリンク機構を介して前記銅板を前後方向に摺動させるようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、前記前部連結軸を中空状に形成し、前記金属ばねが前記前部連結軸に遊挿された第1のトーションバーを有し、該第1のトーションバーの一端を前記第1のリンク機構の一部に連結するとともに、前記第1のトーションバーの他端を第3のリンク機構を介して回転駆動手段に連結し、該回転駆動手段により前記第3のリンク機構を介して前記第1のトーションバーの他端を捩ることにより前記上部フレームに加わる負荷を調整する一方、前記第1のトーションバーの一端が他端に対して捩られることにより前記上部フレームを弾性的に支持するようにしたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、前記下部フレームが前記第1のリンク機構に連結された中空の後部連結軸を有し、前記金属ばねが前記後部連結軸に遊挿された第2のトーションバーを有し、該第2のトーションバーの一端を前記下部フレームに連結するとともに、前記第2のトーションバーの他端を前記第1のリンク機構の別の一部に連結し前記第2のトーションバーの他端が一端に対して捩られることにより前記上部フレームを弾性的に支持するようにしたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、前記金属ばねが正のばね定数を有する一方、前記磁気ばねユニットが所定の領域で負のばね定数を有し、前記金属ばねのばね定数と前記磁気ばねユニットのばね定数を重畳したばね定数が前記所定の領域で略0を示すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上部フレームに取り付けられ上部フレームの上下動を減衰させる磁気ダンパを設け、この磁気ダンパを動吸振器として用いることで2自由度のサスペンションを実現し、共振周波数の低減と、共振峰及び高周波ゲインの低減が可能となり、低周波の衝撃性振動による底付きを吸収することができる。
【0016】
また、磁気ダンパを採用するとともに、金属ばねとしてトーションバーを採用したので、構成が簡素で軽量のサスペンションユニットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1及び図2は、本発明にかかるサスペンションユニットSを備えた作業用機械(例えば、フォークリフト)のシートを示しており、シートクッション及びシートバックを取り外した状態を示している。また、図3乃至図7は、シートフレームFを取り外した状態のサスペンションユニットSを示しており、図8及び図9は磁気ダンパ取付プレート(後述)を取り外した状態のサスペンションユニットSを示している。
【0018】
図1乃至図9に示されるように、サスペンションユニットSは、車体フロアに取り付けられる下部フレーム2と、下部フレーム2にリンク機構を介して上下動自在に取り付けられた上部フレーム4とを備えており、シートフレームFは上部フレーム4に接合され、シートクッション及びシートバックはシートフレームFに取り付けられる。
【0019】
また、下部フレーム2は、前部及び後部フレーム2a,2bと左右一対のサイドフレーム2cからなり、略矩形状に形成されている。同様に、上部フレーム4も、前部及び後部フレーム4a,4bと左右一対のサイドフレーム4cからなり、略矩形状に形成されている。
【0020】
下部フレーム2と上部フレーム4は、その両側のそれぞれが2本の平行リンク6,8により連結されており、上部フレーム4は下部フレーム2に対し前部リンク6及び後部リンク8からなる平行リンクにより上下動自在に取り付けられている。すなわち、前部リンク6の下端はサイドフレーム2cの前端部近傍に枢着されており、前部リンク6の上端は左右のサイドフレーム4cに両端が枢着された中空の前部連結軸10の一端に接合されている。また、後部リンク8の下端は左右のサイドフレーム2cに両端が枢着された中空の後部連結軸12の一端に接合されており、後部リンク8の上端はサイドフレーム4cの後端部近傍に枢着されている。
【0021】
また、前部連結軸10には、矩形断面の両端を有するトーションバー14が遊挿されており、トーションバー14の一端(シート乗員から見て左側の端部)はL字状レバー16に連結されている。L字状レバー16は、ブラケット17を介して前部フレーム4aに回動自在に取り付けられた円筒状基部16aとプレート状レバー16bからなり、円筒状基部16aには矩形断面の開口部(図示せず)が形成され、この開口部にトーションバー14の一端が嵌入している。また、プレート状レバー16bはリンク18の一端に枢着されるとともに、リンク18の他端はリンク20の一端に枢着されている。リンク20の他端は、負荷調整用回転軸22の一端に固定されており、この回転軸22の他端は、前部フレーム4aに螺着された断面がL字状のブラケット24に枢着されている。
【0022】
負荷調整用回転軸22にはさらに、平行に延びる一対のナット取付レバー26の一端が固定されており、ナット取付レバー26の他端には直方体の形状を呈するナット28が取付軸(図示せず)を介して取り付けられている。このナット28は操作軸30に形成された雄ねじと螺合しており、操作軸30は減速ギヤユニット32を介して回転駆動手段としての電動モータ34に連結されている。電動モータ34は、その取付部がU字状ブラケット36に取り付けられており、U字状ブラケット36は前部フレーム4aに接合されたブラケット38に取り付けられている。
【0023】
前部フレーム4aにはさらに、負荷調整用の目盛板40が取り付けられており、この負荷目盛板40に形成された長孔40aには、負荷調整用回転軸22に固定されたポインタ42の先端が長孔40aに沿って移動できるように遊挿されている。
【0024】
また、一端がL字状レバー16に連結されたトーションバー14の他端はリンク44の一端に連結されており、リンク44の他端がピン45(図13参照)を介して前部リンク6の中間部に枢着されることで、上部フレーム4を下部フレーム2に対し弾性的に支持している。
【0025】
後部連結軸12にも同様に、矩形断面の両端を有するトーションバー46が遊挿されており、トーションバー46の一端(シート乗員から見て右側の端部)はサイドフレーム2cに固定されている。また、トーションバー46の他端はリンク48の一端に連結されており、リンク48の他端はピン50を介して後部リンク8の中間部に枢着されている。
【0026】
また、下部フレーム2を構成する前部及び後部フレーム2a,2bにはサポート部材52の前端部と後端部がそれぞれ接合されており、このサポート部材52には、上部フレーム4を下部フレーム2に対し弾性的に支持する磁気ばねユニット54の固定磁石ユニット56が取り付けられている。
【0027】
さらに詳述すると、磁気ばねユニット54は固定磁石ユニット56と可動磁石ユニット58とにより構成されており、図10に示されるように、固定磁石ユニット56は、所定の間隔を置いて同一磁極が対向する上部磁石対56aと下部磁石対56bとを有し、同じ側に配置された上部及び下部永久磁石は異なる磁極が同じ方向(内方あるいは外方)に向くように互いに接合されている。一方、可動磁石ユニット58は、固定磁石ユニット56の内部スペースに挿入された永久磁石を有し、この永久磁石は上下方向に磁極が形成されており、上部磁極は固定磁石ユニット56の上部磁石対56aと同一磁極が対向する一方、下部磁極は固定磁石ユニット56の下部磁石対56bと同一磁極が対向するように設定されている。なお、図10(b)に示されるように固定磁石ユニット56と可動磁石ユニット58との間には所定のクリアランスが設けられている。
【0028】
また、固定磁石ユニット56は金属製枠体59の側壁内面に取り付けられており、この金属製枠体59がサポート部材52に取り付けられている。さらに、図2、図8あるいは図9に示されるように、上部フレーム4を構成する前部及び後部フレーム4a,4bにはサポート部材60の前端部と後端部がそれぞれ接合されており、このサポート部材60には、可動磁石ユニット56の支持軸62の両端がブラケット64,66を介して取り付けられている。
【0029】
また、上部フレーム4の前部フレーム4aと一方のサイドフレーム(シート乗員から見て右側のサイドフレーム)4cとサポート部材60には、磁気ダンパ取付プレート68が取り付けられており、この磁気ダンパ取付プレート68に取り付けられた磁気ダンパ70の構成を図11乃至図16を参照しながら説明する。
【0030】
磁気ダンパ70は、所定の間隔を置いて異なる磁極が対向する前部磁石対70aと後部磁石対70bとを有し、同じ側(上方あるいは下方)に配置された前部及び後部永久磁石は異なる磁極が同じ方向(上方あるいは下方)に向くように互いに接合されている。また、前部磁石対70aの磁極間及び後部磁石対70bの磁極間には所定のクリアランスを置いて銅板70cが前後方向に摺動自在に配置されており、前部磁石対70aと後部磁石対70bと銅板70cは枠体70dにより保持されている。なお、図16は枠体70dを除く前部磁石対70aと後部磁石対70bと銅板70cの構成を模式的に図示したものである。
【0031】
また、銅板70cの後端部には連結部材72の一端が固定されており、連結部材72の他端には長尺リンク74の一端が枢着されている。さらに、長尺リンク74の他端は、中間部がブラケット76を介して磁気ダンパ取付プレート70に枢着されたL字状リンク78の一端に枢着されており、L字状リンク78の他端は短尺リンク80の一端に枢着されている。また、短尺リンク80の他端は、一端が前部連結軸10に固定されたレバー82の他端に枢着されている。
【0032】
また、下部フレーム2の後部には、ベルト保持部材84が取り付けられており、上部フレーム4の後部フレーム4bに巻回されたストローク規制用ベルト86の両端はベルト保持部材84により下部フレーム2に保持されている。さらに、シート乗員から見て左側に位置する上下のサイドフレーム2c,4cには、例えばラバー等のクッション部材88が互いに対向した状態でそれぞれ取り付けられている。
【0033】
上記構成の本発明にかかるサスペンションユニットSの作用を以下説明する。
シートクッションフレームFに取り付けられたシートクッションに人が着座すると、負荷(着座者の体重)に応じて上部フレーム4が下降する。上部フレーム4が下降すると、前部トーションバー14及び後部トーションバー46がそれぞれ捩れ、上部フレーム4の下降量に応じて上部フレーム4の持ち上げ力が発生する。一方、磁気ばねユニット54は、上部フレーム4に所定値以上の負荷が加わり、上部フレーム4が所定値(例えば、25mm)以上下降するまでは、負のばね定数を示し、上部フレーム4が前記所定値よりさらに下降すると、正のばね定数を示し、上部フレーム4の下降量に応じて持ち上げ力を徐々に発生する。
【0034】
図17は金属ばねの正のばね定数と磁気ばねユニット54の負のばね定数を重畳したばね特性を示している。図17のグラフから分かるように、変位に関係なく荷重が一定となる領域(ばね定数が略0となる領域)が存在し、本発明においては、この領域の略中央に負荷質量との平衡点を設定している。
【0035】
ここで、電動モータ34を駆動して行われる負荷(体重)調整について説明する。
操作軸30は減速ギヤユニット32を介して電動モータ34に連結されており、操作軸30に形成された雄ねじとナット28に形成された雌ねじが螺合していることから、電動モータ34を駆動して操作軸30を回転することにより、ナット28が前後に移動する。その結果、ナット28が取り付けられたナット取付レバー26が揺動することになるので、負荷調整用回転軸22が回転して、負荷調整用回転軸22の端部に固定されたリンク20が揺動する。リンク20が揺動すると、リンク18を介してL字状レバー16が回転するので、前部トーションバー14の端部(シート乗員から見て左側の端部)が捩られ、捩られる方向に応じて負荷調整が行われる。
【0036】
この負荷調整は、ポインタ42が指し示す負荷目盛板40の目盛を見ながら行うことができ、例えば50〜130kgの負荷範囲で調整可能である。
【0037】
次に、磁気ダンパ70の作用を図18を参照しながら説明する。
図18(b)は負荷調整後の標準位置を示しており、図18(a)は上部フレーム4が上死点(例えば、標準位置より上方に20mm)まで上昇した状態を、図18(c)は上部フレーム4が下死点(例えば、標準位置より下方に20mm)まで下降した状態をそれぞれ示している。なお、図18において、ハッチングで示した丸印は前部リンク6の回転中心を示しており、レバー82が固定された前部連結軸10は前部リンク6の回転中心回りに回動する。
【0038】
図18(b)に示される標準位置から上部フレーム4が図18(a)に示される上死点まで上昇すると、前部連結軸10は上部後方に上昇しながら前部リンク6の回転中心回りに反時計方向に回転し、レバー82はこの方向に揺動する。その結果、短尺リンク80を介してL字状リンク78が時計方向に回転することになるので、長尺リンク74及び連結部材72を介して磁気ダンパ70を構成する銅板70cが後方に摺動する。
【0039】
一方、図18(b)に示される標準位置から上部フレーム4が図18(c)に示される下死点まで下降すると、前部連結軸10は下部前方に下降しながら前部リンク6の回転中心回りに時計方向に回転し、レバー82はこの方向に揺動する。その結果、短尺リンク80を介してL字状リンク78が反時計方向に回転することになるので、長尺リンク74及び連結部材72を介して磁気ダンパ70の銅板70cが前方に摺動する。
【0040】
図19は、上部フレーム4の上下方向のストローク量と銅板70cの前後方向のストローク量との関係を示しており、上部フレーム4の上方へのストローク量を正に、銅板70cの前方へのストローク量を正にとったものである。
【0041】
図19のグラフから分かるように、上部フレーム4のストローク量に応じて銅板70cのストローク量は略線型に変化している。
【0042】
銅板70cの上下には所定のクリアランスを置いて前部磁石対70a及び後部磁石対70bが配置されているので、銅板70cは磁界の中を前後方向に移動することになる。したがって、銅板70cの内部の磁力線が変化して、磁力線の変化を妨げる方向に渦電流が発生する。その結果、銅板70cが前部磁石対70a及び後部磁石対70bから離反する方向に移動すると引力を生じる一方、近づく方向に移動すると斥力(反発力)を生じる。すなわち、磁気ダンパ70は銅の電磁誘導を利用した減衰機構で、上部フレーム4の上下動をリンク機構を介して銅板70cの前後(水平)移動で減衰させる動吸振器として作用するとともに、底付き軽減の役割を担っている。
【0043】
図20は、本発明にかかるサスペンションユニットSと、金属ばねとオイルダンパを使用した従来のサスペンションユニットの振動伝達率を測定した結果を示しており、被験者の体重は85kgであった。
【0044】
図20から明らかなように、従来のサスペンションユニットに比べ、本発明にかかるサスペンションユニットSは、共振点の振動伝達率は低く抑えられ、共振点の振動特性や衝撃力の吸収性が良好で、かつ高周波領域の振動特性も良好である。
【0045】
なお、衝撃力が入力されて下部フレーム2が上部フレーム4に異常に接近すると、互いに対向する二つのクッション材88が当接し、衝撃(底付き)を吸収する。また、下部フレーム2が上部フレーム4から異常に離反しようとすると、ストローク規制用ベルト86に張力が加わり、下部フレーム2に対する上部フレーム4のストロークを規制する。
【0046】
上記実施の形態は、シートサスペンションを例にとり説明したが、本発明はシートサスペンションに限定されるものではなく、シート以外の装置を載置して外部からの振動を減衰する除振ユニットとしても使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明にかかるサスペンションユニットは、共振周波数を低下させ、共振峰と高周波数帯における加速度を低減することができ、軽量かつコンパクトな構成なので、尻下スペースに余裕のないフォークリフト等の作業用機械やトラック等のサスペンションとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】シートクッション及びシートバックを取り外した状態の本発明にかかるサスペンションユニットを備えたシートの斜視図である。
【図2】図1のシートの分解斜視図である。
【図3】図1に示されるサスペンションユニットの斜視図である。
【図4】図3のサスペンションユニットの別の斜視図である。
【図5】図3のサスペンションユニットの平面図である。
【図6】図3のサスペンションユニットの正面図である。
【図7】図3のサスペンションユニットの側面図である。
【図8】磁気ダンパ取付プレートを取り外した状態の図3のサスペンションユニットの斜視図である。
【図9】図8のサスペンションユニットの平面図である。
【図10】図3のサスペンションユニットに設けられた磁気ばねユニットの概略斜視図である。
【図11】図3のサスペンションユニットに設けられた上部フレームに磁気ダンパを取り付けたときの側面図である。
【図12】図11の上部フレームの底面図である。
【図13】図11の上部フレームを下から見たときの斜視図である。
【図14】図11に示される磁気ダンパの斜視図である。
【図15】図14の磁気ダンパの側面図である。
【図16】図14の磁気ダンパの概略構成を示す側面図である。
【図17】金属ばねのばね定数と磁気ばねユニットのばね定数を重畳したばね特性を示すグラフである。
【図18】磁気ダンパの作用を示す側面図である。
【図19】上部フレームの上下方向のストローク量と磁気ダンパを構成する銅板の前後方向のストローク量との関係を示すグラフである。
【図20】本発明にかかるサスペンションユニットと、金属ばねとオイルダンパを使用した従来のサスペンションユニットの振動伝達率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0049】
2 下部フレーム、 2a 前部フレーム、 2b 後部フレーム、
2c サイドフレーム、 4 上部フレーム、 4a 前部フレーム、
4b 後部フレーム、 4c サイドフレーム、 6 前部リンク、 8 後部リンク、
10 前部連結軸、 12 後部連結軸、 14 トーションバー、
16 L字状レバー、 16a 円筒状基部、 16b プレート状レバー、
17 ブラケット、 18 リンク、 20 リンク、 22 負荷調整用回転軸、
24 ブラケット、 26 ナット取付レバー、 30 操作軸、
32 減速ギヤユニット、 34 電動モータ、 36 U字状ブラケット、
38 ブラケット、 40 負荷目盛板、 40a 長孔、 42 ポインタ、
44 リンク、 45 ピン、 46 トーションバー、 48 リンク、
50 ピン、 52 サポート部材、 54 磁気ばねユニット、
56 固定磁石ユニット、 56a 上部磁石対、 56b 下部磁石対、
58 可動磁石ユニット、 59 枠体、 60 サポート部材、 62 支持軸、
64 ブラケット、 66 ブラケット、 68 磁気ダンパ取付プレート、
70 磁気ダンパ、 70a 前部磁石対、 70b 後部磁石対、 70c 銅板、
70d 枠体、 72 連結部材、 74 長尺リンク、 76 ブラケット、
78 L字状リンク、 80 短尺リンク、 82 レバー、 84 ベルト保持部材、
86 ストローク規制用ベルト、 88 クッション材、 F シートフレーム、
S サスペンションユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部フレームと、該下部フレームに第1のリンク機構を介して上下動自在に取り付けられた上部フレームとを備えたサスペンションユニットであって、
前記上部フレームを前記下部フレームに対し弾性的に支持する金属ばね及び磁気ばねユニットと、前記上部フレームに取り付けられ前記上部フレームの上下動を減衰させる磁気ダンパをさらに備えたことを特徴とするサスペンションユニット。
【請求項2】
前記磁気ばねを、所定の間隔を置いて異なる磁極が対向する磁石対と、該磁石対の磁極間に所定のクリアランスを置いて摺動自在に配置された銅板とで構成し、前記上部フレームの上下動により前記銅板を摺動させて前記上部フレームの上下動を減衰させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のサスペンションユニット。
【請求項3】
前記上部フレームが前記第1のリンク機構に連結された前部連結軸を有し、該前部連結軸と前記銅板とを第2のリンク機構を介して連結し、前記上部フレームの上下動により前記第2のリンク機構を介して前記銅板を前後方向に摺動させるようにしたことを特徴とする請求項2に記載のサスペンションユニット。
【請求項4】
前記前部連結軸を中空状に形成し、前記金属ばねが前記前部連結軸に遊挿された第1のトーションバーを有し、該第1のトーションバーの一端を前記第1のリンク機構の一部に連結するとともに、前記第1のトーションバーの他端を第3のリンク機構を介して回転駆動手段に連結し、該回転駆動手段により前記第3のリンク機構を介して前記第1のトーションバーの他端を捩ることにより前記上部フレームに加わる負荷を調整する一方、前記第1のトーションバーの一端が他端に対して捩られることにより前記上部フレームを弾性的に支持するようにしたことを特徴とする請求項2に記載のサスペンションユニット。
【請求項5】
前記下部フレームが前記第1のリンク機構に連結された中空の後部連結軸を有し、前記金属ばねが前記後部連結軸に遊挿された第2のトーションバーを有し、該第2のトーションバーの一端を前記下部フレームに連結するとともに、前記第2のトーションバーの他端を前記第1のリンク機構の別の一部に連結し前記第2のトーションバーの他端が一端に対して捩られることにより前記上部フレームを弾性的に支持するようにしたことを特徴とする請求項4に記載のサスペンションユニット。
【請求項6】
前記金属ばねが正のばね定数を有する一方、前記磁気ばねユニットが所定の領域で負のばね定数を有し、前記金属ばねのばね定数と前記磁気ばねユニットのばね定数を重畳したばね定数が前記所定の領域で略0を示すことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のサスペンションユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−128315(P2008−128315A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312528(P2006−312528)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年9月15日社団法人日本機械学会主催の「2006年度年次大会講演論文集(7)」において文書をもって発表
【出願人】(594176202)株式会社デルタツーリング (111)
【Fターム(参考)】