説明

サスペンション用基板の製造方法

【課題】本発明は、低剛性なサスペンション用基板を歩留まり良く製造することができるサスペンション用基板を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、金属基板と、前記金属基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成されたシード層と、前記シード層上にパターン状に形成された金属めっき層からなる配線パターン層と、を少なくとも有し、前記配線パターン層の最大膜厚部および最小膜厚部の差が、2μm以下であるスペンション用基板であって、前記絶縁層には開口部が形成されており、カバー材を用いて前記配線パターン層上に形成され、前記配線パターン層の表面の一部が露出する配線パターン層露出開口部を有するカバー層を有し、前記カバー層の配線パターン層上の最大膜厚部および最小膜厚部の差が、1μm以下であることを特徴とするサスペンション用基板を提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブ(HDD)等に用いられるサスペンション用基板の製造方法に関し、詳しくは、低剛性のサスペンション用基板を得ることができるサスペンション用基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの普及等によりパーソナルコンピュータの情報処理量の増大や情報処理速度の高速化が要求されてきており、それに伴って、パーソナルコンピュータに組み込まれているハードディスクドライブ(HDD)も大容量化や情報伝達速度の高速化が必要となってきている。そして、このHDDに用いられる磁気ヘッドを支持している磁気ヘッドサスペンションと呼ばれる部品も、従来の金ワイヤ等の信号線を接続するタイプから、ステンレスのばねに直接銅配線等の信号線が形成されている、いわゆるワイヤレスサスペンションと呼ばれる配線一体型のもの(フレキシャー)に移行している。
【0003】
最近では、携帯用途を始めとする各種の小型機器に搭載するHDDへの要求が増加してきており、これに伴って情報を記録するためのディスクはサイズが小さくなると共に記録密度が高くなっている。この径の小さくなったディスク上のトラックに対するデータの読取りと書込みを行うには、ディスクをゆっくりと回転させる必要があり、磁気ヘッドに対するディスクの相対速度(周速)は低速となり、このためサスペンション用基板は弱い力でディスクに接近する必要があることから、サスペンション用基板の低剛性化を図る必要がある。
【0004】
低剛性のサスペンション用基板を形成する方法として、金属基板、絶縁層、シード層および金属めっき層がこの順に配置された積層体(例えば特許文献1および2参照)を用いて、この積層体を順次エッチングする方法が知られている。しかしながら、上記の積層体を用いてエッチングを行う場合、搬送時に、加工途中の積層体が変形するという問題が起こる。すなわち、従来は、早い段階で金属基板のエッチングを行い、金属基板の外形加工を行ってしまうが、この外形加工により加工途中の積層体の剛性は著しく低下し、続く絶縁層のエッチング工程へと移動する間に変形しやすくなる。また、配線パターン層を保護する保護めっき部形成工程、およびカバー層形成工程等の後加工においても同様の影響を受け、加工途中の積層体の変形発生率がさらに高くなる。このように、サスペンション部材の低剛性化を図ろうとすると製品の歩留りが悪くなるという問題が生じる。
【0005】
なお、特許文献3においては、ばね性金属層/絶縁層/導電層からなる積層体を用い、ばね性金属層に治具孔を形成する工程と、ばね性金属層の外形加工を行う工程とを別工程にした磁気ヘッドサスペンションの製造方法が開示されている。しかしながら、用いられる積層体については具体的な記載がされておらず、サスペンション用基板の低剛性化を充分に図ることができない場合があった。また、特許文献4においては、いわゆるアディティブ法によるハードディスクヘッド用サスペンションの製造方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−248142号公報
【特許文献2】特開2005−285178号公報
【特許文献3】特開2006−209853号公報
【特許文献4】特開2000−48510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、低剛性なサスペンション用基板を歩留まり良く製造することができるサスペンション用基板の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、金属基板と、上記金属基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成されたシード層と、上記シード層上にパターン状に形成された金属めっき層からなる配線パターン層と、を少なくとも有し、上記配線パターン層の最大膜厚部および最小膜厚部の差が、2μm以下であることを特徴とするサスペンション用基板を提供する。
【0009】
本発明によれば、上記配線パターン層の最大膜厚部および最小膜厚部の差が、2μm以下であることにより、上記配線パターン層の薄膜化を容易なものとし、軽量なものとすることができる。
【0010】
上記発明においては、カバー材を用いて上記配線パターン層上に形成され、上記配線パターン層の表面の一部が露出する配線パターン層露出開口部を有するカバー層を有し、上記カバー層の配線パターン層上の最大膜厚部および最小膜厚部の差が、1μm以下であることが好ましい。
上記カバー層の配線パターン層上の最大膜厚部および最小膜厚部の差が、1μm以下であることにより、上記カバー層の薄膜化を容易なものとし、軽量なものとすることができるからである。
【0011】
本発明は、上記サスペンション用基板を含むことを特徴とするサスペンションを提供する。
【0012】
本発明によれば、上記サスペンション用基板を含むものであるため、低剛性で軽量なものとすることができる。
【0013】
本発明は、上記サスペンションと、上記サスペンション上に搭載された磁気ヘッドスライダーとを有することを特徴とするヘッド付サスペンションを提供する。
【0014】
本発明によれば、上記サスペンションを含むものであるため、低剛性で軽量なものとすることができる。
【0015】
本発明は、上記ヘッド付サスペンションを含むことを特徴とするハードディスクドライブを提供する。
【0016】
本発明によれば、上記ヘッド付サスペンションを含むものであるため、消費電力の少ないものとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、低剛性なサスペンション用基板を歩留まり良く製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のサスペンション用基板の製造方法の一例を説明する説明図である。
【図2】本発明のサスペンション用基板の製造方法の一例を説明する説明図である。
【図3】積層体の層構成を説明する概略断面図である。
【図4】従来のカバー層形成工程を説明する説明図である。
【図5】本発明におけるカバー層形成工程を説明する説明図である。
【図6】保護めっき部を説明する説明図である。
【図7】本発明のサスペンションの一例を示す概略図である。
【図8】本発明のヘッド付サスペンションの一例を示す概略図である。
【図9】本発明のハードディスクドライブの内部構造の一例を示す概略図である。
【図10】実施例で作製したサスペンション用基板を説明する説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、サスペンション用基板の製造方法、サスペンション用基板、これを用いたサスペンション、ヘッド付サスペンション、およびハードディスクドライブに関するものである。
以下、本発明のサスペンション用基板の製造方法、サスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、およびハードディスクドライブについて詳細に説明する。
【0020】
A.サスペンション用基板の製造方法
まず、本発明のサスペンション用基板の製造方法について説明する。本発明のサスペンション用基板の製造方法は、金属基板、絶縁層、シード層および金属めっき層がこの順に配置された積層体を準備する積層体準備工程と、上記金属基板の表面および上記金属めっき層の表面に、パターン状のレジストを形成し、エッチングを行うことにより、上記金属基板に治具孔を形成し、かつ、上記金属めっき層を配線パターン層に加工する第一のメタルエッチング工程と、を有することを特徴とするものである。
【0021】
本発明によれば、上記の積層体を用いることにより、低剛性のサスペンション用基板を得ることができる。また、第一のメタルエッチング工程では、金属基板に治具孔や抜き孔等を形成するが、金属基板の大部分はエッチングしない。そのため、積層体の剛性を高く維持した状態で絶縁層のエッチング等を行うことができ、各工程間の搬送時に、加工途中の積層体が変形することを抑制することができる。なお、本発明により得られるサスペンション用基板は、例えばハードディスクドライブ(HDD)の磁気ヘッドサスペンション等に用いることができる。
【0022】
次に、本発明のサスペンション用基板の製造方法について図面を用いて説明する。図1および図2は、本発明のサスペンション用基板の製造方法の一例を説明する説明図である。本発明においては、まず、図1(a)に示すように、金属基板1、絶縁層2、シード層3および金属めっき層4がこの順に配置された積層体10を準備する(積層体準備工程)。ここでは、金属基板1としてのSUSと、絶縁層2としてのポリイミドと、シード層3としてのNi−Cr−Cuスパッタリング層と、金属めっき層4としてのCuめっき層と、を有する積層体10を用意する。
【0023】
次に、この積層体10に対してメタルエッチング用レジストを製版する。具体的には、積層体10の両面にメタルエッチング用のレジスト層を設け、フォトリソグラフィー法により図1(b)に示すようなパターニングをしたレジスト11、12を形成する。この場合、配線側には、目的とする配線パターン層に対応するパターンでレジスト11を形成し、基板側には、治具孔の部分を除くようなパターンでレジスト12を形成する。また、レジスト12は、治具孔の他にフライングリード部も除くように形成する。
【0024】
そして、図1(c)に示すように、化学エッチング液を用いて、金属基板1および金属めっき層4をエッチングし、レジスト11、12を剥離する。これにより、金属めっき層4から配線パターン層4aが形成され、金属基板1に治具孔1aが形成される(第一のメタルエッチング工程)。図中1bはフライングリード部を形成する抜き孔である。
【0025】
次に、図1(d)に示すように、配線パターン層4aの上から、液状カバー材を用いてカバー層5を形成する(カバー層形成工程)。このとき、配線パターン層4aの表面の一部が露出するようにカバー層5が形成され、その露出する部分に後述する保護めっき部が形成される。
【0026】
次に、絶縁層2のエッチング用レジストを製版する。具体的には、積層体10の両面にポリイミドエッチング用のレジスト層を設け、フォトリソグラフィー法により図1(e)に示すようなパターニングをしたレジスト13、14を形成する。この場合、配線側には、配線パターン層4aおよびカバー層5を覆うようにレジスト13を形成し、基板側には、フライングリード部の抜き孔1bの対応部分を除くようにレジスト14を形成する。
【0027】
そして、図1(f)に示すように、エッチング液に有機アルカリ液を用いて絶縁層2をエッチングし、レジスト13、14を剥離する。これにより、金属基板1の上に配線パターン層4aおよびカバー層5が絶縁層2を介して一体的に形成される(絶縁層エッチング工程)。また、金属基板1は、治具孔1aおよびフライングリード部の抜き孔1bが形成された状態となる。なお、絶縁層2の加工はプラズマエッチングで行っても良い。
【0028】
次に、図2(g)に示すように、配線パターン層4aが露出する部分に、Auめっき若しくはNi−Auめっきを施すことにより保護めっき部6を形成する(保護めっき部形成工程)。
【0029】
次に、金属基板1の外形加工を行うため、積層体10の両面にメタルエッチング用レジストを製版する。本発明において、「金属基板の外形加工を行う」とは、第一のメタルエッチング工程で加工されていない金属基板の領域を、目的とするサスペンション用基板の形状に応じて加工することをいう。具体的には、積層体10の両面にメタルエッチング用のレジスト層を設け、フォトリソグラフィー法により図2(h)に示すようなパターニングをしたレジスト15、16を形成する。この場合、配線側には、全面を覆うようにレジスト15を形成し、基板側には、目的とする外形形状に合わせてパターニングをしたレジスト16を形成する。
【0030】
そして、図2(i)に示すように、化学エッチング液を用いて金属基板1をエッチングし、レジスト15、16を剥離する。これにより、所望の形状のサスペンション用基板が得られる(第二のメタルエッチング工程)。その後、必要に応じて、図2(j)に示すように、配線パターン層4aの端子部に印刷により、半田バンプ部7を形成する。なお、図中、Aは、バンプを形成する端子部であり、Bはフライングリード部であり、Cは配線部であり、必要に応じて金属基板1を有していても良い。
【0031】
本発明のサスペンション用基板の製造方法は、通常、積層体準備工程および第一のメタルエッチング工程を有する。さらに、後述するカバー層形成工程、絶縁層エッチング工程、保護めっき部形成工程、第二のメタルエッチング工程、および半田バンプ形成工程を有することが好ましい。
以下、本発明のサスペンション用基板の製造方法について、工程ごとに説明する。
【0032】
1.積層体準備工程
まず、本発明における積層体準備工程について説明する。本発明における積層体準備工程は、金属基板、絶縁層、シード層および金属めっき層がこの順に配置された積層体を準備する工程である。
【0033】
本発明においては、上記の層構成を有する積層体を用いることにより、低剛性のサスペンション用基板を得ることができる。従来、サスペンション用基板を得るための原材料として、5層の積層体が使用されてきた。具体的には、図3(a)に示すように、金属基板21としてのSUSと、接着層22としての熱可塑性ポリイミド(TPI)と、絶縁層23としてのポリイミドと、接着層24としてのTPIと、配線パターン形成層25としてのCuと、を有する5層の積層体が使用されてきた。
【0034】
しかしながら、この積層体は、通常、バネ銅である圧延銅等をプレスで接着積層して形成され、圧延銅を用いるために、薄板化および低剛性化を図ることができなかった。さらに、上記の5層の積層体は、各構成部材をプレスして形成するため、絶縁層(例えばポリイミド)に、配線パターン形成層(例えば圧延銅)の粗化表面のパターンが転写されてしまう。その結果、絶縁層の表面が粗化された状態となり、その粗化面が配線微細加工の妨げの一要因となる問題があった。
【0035】
これに対して、本発明に用いられる積層体は、例えば図3(b)に示すように、通常、金属基板1、絶縁層2、シード層3および金属めっき層4がこの順に配置された4層の積層体である。この4層の積層体の金属めっき層は、電解めっき法等で形成されるものであるため、従来の圧延銅等と比較して、薄板化および低剛性化を図ることができる。また、微細な配線パターン層も形成可能である。さらに、上記の4層の積層体の金属めっき層は、電解めっき法等で形成されるものであるため、上述した5層の積層体の場合のように、絶縁層の表面が粗化されることがない。そのため、異物の残留の問題等が生じないという利点を有する。
【0036】
次に、本発明に用いられる積層体の構成部材について説明する。本発明に用いられる積層体は、通常、金属基板、絶縁層、シード層および金属めっき層を有する。
上記金属基板の材料としては、導電性を有し、適度なばね性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばSUS等を挙げることができる。上記金属基板の膜厚としては、例えば10μm〜30μmの範囲内、中でも15μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。金属基板の膜厚が薄すぎると、機械的強度が低下する可能性があり、金属基板の膜厚が厚すぎると、サスペンション用基板の低剛性化を図ることが困難だからである。
【0037】
上記絶縁層の材料としては、絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばポリイミド(PI)等を挙げることができる。上記絶縁層の膜厚としては、例えば5μm〜30μmの範囲内、中でも5μm〜20μmの範囲内、特に5μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。絶縁層の膜厚が薄すぎると、充分な絶縁性を発揮できない可能性があり、絶縁層の膜厚が厚すぎると、サスペンション用基板の低剛性化を図ることが困難だからである。
【0038】
上記シード層の材料としては、絶縁層と金属めっき層との密着性を向上できるものであれば特に限定されるものではないが、例えばNi、Cu、Cr及びその合金等を挙げることができる。また、上記シード層は、スパッタリング法により形成された層であることが好ましい。上記シード層の膜厚は、所望の密着性を得ることができれば特に限定されるものではないが、通常10nm〜300nmの範囲内である。
【0039】
上記金属めっき層の材料としては、導電性が良好であるものであれば特に限定されるものではないが、例えば銅(Cu)を挙げることができる。上記金属めっき層の膜厚としては、例えば6μm〜18μmの範囲内、中でも8μm〜12μmの範囲内が好ましい。金属めっき層の膜厚が薄すぎると、機械的強度が低下する可能性があり、金属めっき層の膜厚が厚すぎると、サスペンション用基板の低剛性化を図ることが困難だからである。
【0040】
上記金属めっき層は、一般的なめっき法により形成可能である。中でも本発明においては、上記金属めっき層が電解めっき法により形成されたものであることが好ましい。精度良く金属めっき層を形成することができるからである。本発明においては、金属めっき層の最大膜厚部および最小膜厚部の差が、例えば2μm以下、中でも1.6μm以下が好ましい。
【0041】
なお、本発明は、金属めっき層のエッチングを行うことにより配線パターン層を形成するサブトラクティブ法と呼ばれる方法により配線パターン層を形成する。これに対して、アディティブ法により配線パターン層を形成する方法が知られており、具体的には、絶縁層上に所定のレジストパターンを形成し、レジストパターンが形成されていない絶縁層の表面に、電解めっき法等により配線パターン層を形成する方法である。ところで、上記のアディティブ法により配線パターン層を形成する場合は、レジストパターンの粗密により、電場が不均一になり、配線パターン層の膜厚のバラつきが大きくなってしまうという問題があった。これに対して、本発明のように、サブトラクティブ法により配線パターン層を形成する場合は、配線パターン層の膜厚が、原材料である積層体の金属めっき層の膜厚により規定されるため、膜厚のバラつきが小さいという利点を有する。
【0042】
本発明に用いられる積層体の形成方法としては、上記の積層体を得ることができる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、金属基板としてのSUSの表面上に、ポリイミド前駆体含有塗工液を塗布し熱処理することによりポリイミドからなる絶縁層を形成し、次に、スパッタリング法によりシード層を形成し、最後に、電解めっき法によりCuめっきからなる金属めっき層を形成する方法等を挙げることができる。
【0043】
2.第一のメタルエッチング工程
次に、本発明における第一のメタルエッチング工程について説明する。本発明における第一のメタルエッチング工程は、上記金属基板の表面および上記金属めっき層の表面に、パターン状のレジストを形成し、エッチングを行うことにより、上記金属基板に治具孔を形成し、かつ、上記金属めっき層を配線パターン層に加工する工程である。
【0044】
また、本工程は、上記金属基板に治具孔を形成し、かつ、上記金属めっき層を配線パターン層に加工する工程である。したがって、上記金属基板および上記金属めっき層を同時にエッチングするものであっても良いが、上記金属基板および上記金属めっき層を順にエッチングするものであっても良い。また、上記金属基板および上記金属めっき層を順にエッチングする場合におけるエッチングの順番としては、上記金属基板および上記金属めっき層のいずれを先にエッチングするものであっても良い。
なお、上記金属めっき層がエッチングされる場合、通常、上記シード層も同時にエッチングされるものである。
【0045】
具体的には、上述した図1(b)および図1(c)に示すように、金属基板1の表面および金属めっき層4の表面に、パターン状のレジスト11、12を形成し、金属基板1の表面に治具孔1aを形成し、金属めっき層4を配線パターン層4aに加工する工程である。本発明においては、必要に応じて、フライングリード部を形成する抜き孔1bを、治具孔1aと同時に形成しても良い。なお、フライングリード部のような両面接続を行わず、片面接続で良い場合は、抜き孔1bを形成する必要はない。
【0046】
本発明においては、第一のメタルエッチング工程で、金属基板に治具孔や抜き孔等を形成するが、金属基板の大部分はエッチングしない。そのため、積層体の剛性を高く維持した状態で絶縁層のエッチング等を行うことができ、各工程間の搬送時に、加工途中の積層体が変形することを抑制することができる。本発明において、治具孔以外の金属基板の加工は、通常、後述する第二のメタルエッチング工程で行う。
【0047】
本発明においては、金属めっき層を配線パターン層に加工する際に、金属基板に治具孔を形成する。これにより、まず、治具孔と配線パターン層との相対的な位置関係を決定することができる。本発明において、「治具孔」とは、積層体を治具で固定するための孔をいい、この治具孔を基準として各種の位置合わせを行う。本発明においては、位置合わせの基準を治具孔に統一することにより、積層体の加工を精度良く行うことができる。治具孔の形状は、用いられる治具の形状により異なるものであるが、通常円形または長孔等である。治具孔の直径は、特に限定されるものではないが、例えば0.5mm〜3mmの範囲内である。
【0048】
第一のメタルエッチング工程においては、金属基板に対して、少なくとも治具孔を形成し、必要に応じてフライングリード部の抜き孔を同時に形成する。一方、第一のメタルエッチング工程終了後の積層体の金属基板が、ある程度の剛性を維持していれば、搬送時に加工途中の積層体が変形することを防止することができる。金属基板の表面において、第一のメタルエッチング工程により加工される領域の面積をSとし、全面積をSとした場合に、S/Sは、例えば0.6以下、中でも0.01〜0.5の範囲内であることが好ましい。
【0049】
一方、配線側では、金属めっき層をエッチングすることにより、配線パターン層を形成する。本発明に用いられる金属めっき層は、通常、従来の圧延銅等よりも膜厚が薄いため、微細な配線パターン層を形成することができる。配線パターンの幅としては、例えば10μm以上、中でも20μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。一方、隣接する配線パターンの間隔としては、例えば10μm以上、中でも20μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。
【0050】
本発明に用いられるレジストとしては、固体状のレジストであっても良く、液体状のレジストであっても良いが工程が増えるため、固体状のレジストであることが好ましい。具体的には、ドライフィルムレジスト(DFR)を用いることが好ましい。微細な配線パターン層を得ることができるからである。
【0051】
金属基板の表面および金属めっき層の表面にパターン状のレジストを形成する方法は、特に限定されるものではなく、一般的な方法を用いることができる。具体的には、金属基板の表面および金属めっき層の表面に、それぞれレジストを配置し、所望のパターンに露光した後、現像する方法等を挙げることができる。
【0052】
金属基板および金属めっき層をエッチングする方法としては、例えばウェットエッチング等を挙げることができる。さらに、ウェットエッチングに用いられるエッチング液は、用いられる金属基板および金属めっき層の材料に応じて、適宜選択することが好ましい。例えば、金属基板がSUSである場合は、塩化第二鉄系エッチング液を用いることができる。金属めっき層が銅めっき層である場合は、塩化第二鉄系エッチング液または塩化銅系エッチング液を用いることができる。本発明においては、パターン状のレジストを形成した後、金属基板および金属めっき層を別々にエッチングしても良いが、金属基板および金属めっき層を同時にエッチングすることが好ましい。工程数が少なくなるからである。
【0053】
3.カバー層形成工程
次に、本発明におけるカバー層形成工程について説明する。本発明におけるカバー層形成工程は、液状カバー材を用いて、上記配線パターン層の表面の一部が露出する配線パターン層露出開口部を有するカバー層を形成する工程である。
【0054】
具体的には、上述した図1(d)に示すように、配線パターン層4aの表面の一部が露出する配線パターン層露出開口部(図示せず)を有するカバー層5を形成する工程である。配線パターン層露出開口部により露出する配線パターン層4aの表面には、後述する保護めっき部が形成される。
【0055】
本発明においては、絶縁層のエッチングを行う前に、カバー層を形成することにより、液状カバー材が治具孔等に流れ込むことを防止することができる。これにより、均一な膜厚を有するカバー層を形成することができる。ここで図4は、従来のカバー層形成工程を説明する説明図である。なお、便宜上シード層の記載は省略し、図1と重複する一部の符号についても説明を省略する。従来は、図4(a)に示すように、カバー層を形成する前に、既に絶縁層2をエッチングしていたため、治具孔1bが貫通している状態であった。そのため、液状カバー材を用いてカバー層を形成する際には、治具孔1bの下に、流出防止材31を配置する必要があり(図4(b))、流出防止材31を配置した場合であっても、液状カバー材5´が治具孔1bに流れ込む場合があった(図4(c))。その結果、得られるカバー層5の膜厚が不均一になり、カバー層5に覆われていない配線パターン層4aの領域が発生する等の問題があった(図4(d))。また、このようなことから、従来の方法により形成されたサスペンション用基板では、上記治具孔または抜き孔が多く形成されている箇所に形成されたカバー層の膜厚と、上記治具孔または抜き孔が少ない箇所に形成されたカバー層の膜厚との差が大きいものとなるといった問題があった。
【0056】
これに対して、本発明においては、絶縁層のエッチングを行う前に、カバー層を形成することにより、液状カバー材の流れ込みを防止することができる。ここで図5は、本発明におけるカバー層形成工程を説明する説明図である。なお、便宜上シード層の記載は省略し、図1と重複する一部の符号についても説明を省略する。本発明においては、図5(a)に示すように、絶縁層2をエッチングする前の段階で、カバー層を形成する。従来の方法と異なり、治具孔1bは貫通していない状態である。そのため、液状カバー材5´が治具孔1bに流れ込むことはなく(図5(b))、均一な膜厚のカバー層5を得ることができ、カバー層5に覆われていない配線パターン層4aの領域が発生することを防止することができる(図5(c))。そして、カバー層5を形成した後に、絶縁層2のエッチングを行う(図5(d))。
【0057】
このため、本工程を行うことにより作製されたサスペンション用基板では、上記治具孔または抜き孔が多く形成されている箇所に形成されたカバー層の膜厚と、上記治具孔または抜き孔が少ない箇所に形成されたカバー層の膜厚との差が小さいものとなる。したがって、上記サスペンション用基板内における配線パターン層上のカバー層の膜厚を均一なものとすることができる。
ここで、上記カバー層の膜厚の差が大きい場合、カバー層の膜厚が薄いために、上記配線パターン層が十分に被覆されない箇所が生じるおそれがある。そこで、このような被覆されない箇所が生じることを防ぐために、上記カバー層の膜厚を全体的に厚いものとする必要がある。
一方、本工程により形成されるカバー層は、上記配線パターン層上の膜厚が均一なものとすることができるため、上記カバー層による上記配線パターン層の被覆を確実なものとすることができる。また、このようなことより、上記カバー層の膜厚を薄いものとすることができるのである。
さらに、上記カバー層の膜厚を薄いものとすることができることにより、本発明の製造方法により製造されるサスペンション用基板の低剛性化および軽量化を図ることができる。また、その結果、上記サスペンション用基板をハードディスクドライブに用いた場合には、消費電力の少ないものとすることができる。
なお、このような上記配線パターン層上のカバー層の最大膜厚部および最小膜厚部の差としては、例えば1.3μm以下、なかでも1.0μm以下が好ましい。
【0058】
本発明に用いられる液状カバー材は、少なくともカバー層形成用樹脂を含有するものである。さらに、必要に応じて、カバー層形成用樹脂を溶解させる溶媒を含有していても良い。カバー層形成用樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ系樹脂等を挙げることができる。また、カバー層形成用樹脂は、感光性樹脂であっても良く、非感光性樹脂であっても良いが、中でも非感光性樹脂が好ましい。膜厚の薄いカバー層を形成することができるからである。
【0059】
上記液状カバー材は、粘度が低いものであることが好ましい。膜厚の薄いカバー層を得ることができるからである。液状カバー材の粘度としては、例えば、常温で500cP〜5000cPの範囲内、中でも500cP〜1000cPの範囲内であることが好ましい。
配線パターン層上に形成されるカバー層の膜厚としては、特に限定されるものではないが、例えば3μm〜20μmの範囲内、中でも5μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。
また、上記液状カバー材の粘度としては、上記液状カバー材を用いたカバー層の形成が、フープ加工により行なわれる場合、通常500cP〜10,000cPの範囲内である。また、スクリーン印刷法により行なわれる場合、通常10,000cP〜40,000cPの範囲内である。
【0060】
カバー層を形成する方法としては、液状カバー材を用いる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、液状カバー材が感光性樹脂を含有する場合は、配線パターン層を覆うように液状カバー材を塗布し、乾燥させ、露光現像する方法等を挙げることができる。一方、液状カバー材が非感光性樹脂を含有する場合は、以下の方法を採用することができる。すなわち、まず配線パターン層を覆うように液状カバー材を塗布し、乾燥させることにより非感光性樹脂層を形成する。次に、その非感光性樹脂層の上に、感光性樹脂層を形成し、その感光性樹脂層をパターン状に露光する。次に、露光された感光性樹脂層の現像と同時に、非感光性樹脂層のエッチングを行い、最後に、感光性樹脂層を剥離する。この方法により、膜厚の薄いカバー層を得ることができる。
【0061】
4.絶縁層エッチング工程
次に、本発明における絶縁層エッチング工程について説明する。本発明における絶縁層エッチング工程は、上記カバー層を形成した後に、上記絶縁層のエッチングを行う工程である。
【0062】
具体的には、上述した図1(e)および図1(f)に示すように、積層体10の両面に、ポリイミドエッチング用のパターン状のレジスト13、14を形成し、エッチング液を用いて絶縁層2をエッチングする工程である。本工程により、初めて治具孔1aが貫通する。また、必要に応じて、同時にフライングリード部の抜き孔1bを形成しても良い。
【0063】
なお、本発明において、絶縁層エッチング工程と、後述する保護めっき部形成工程とは、どちらの工程を先に行っても良いが、例えば、両面で接続可能なフライングリード部を有するサスペンション用基板を形成する時には、通常、最初に絶縁層エッチング工程を行い、次に保護めっき部形成工程を行う。フライングリード部の抜き孔を形成する必要があるからである。一方、フライングリード部のような両面接続を行わず、片面接続で良い場合は、絶縁層エッチング工程および保護めっき部形成工程は、どちらの工程を先に行っても良い。
【0064】
本発明において、絶縁層のエッチングパターンは、目的とするサスペンション用基板の形状等に応じて、適宜設定することが好ましい。また、絶縁層をエッチングする方法としては、上述したように、エッチングしない領域にパターン状のレジストを形成し、その後、所定のエッチング液で絶縁層をエッチングする方法等を挙げることができる。本発明においては、ドライフィルムレジストを用いることが好ましい。また、プラズマエッチング等により、絶縁層のエッチングを行っても良い。
【0065】
5.保護めっき部形成工程
次に、本発明における保護めっき部形成工程について説明する。本発明における保護めっき部形成工程は、上記配線パターン層露出開口部により露出する配線パターン層の表面に、保護めっき部を形成する工程である。
【0066】
具体的には、上述した図2(g)に示すように、カバー層形成工程により形成された配線パターン層露出開口部から露出する配線パターン層4aの表面に、保護めっき部6を形成する工程である。
【0067】
本発明においては、まずカバー層を形成し、そのカバー層の配線パターン層露出開口部から露出する配線パターン層の表面のみに保護めっき部を形成することで、低剛性のサスペンション用基板を得ることができる。従来は、カバー層を形成する前に保護めっき部を形成しており、例えば図6(a)に示すように、配線パターン層4aの表面および側面に保護めっき部6が形成されていた。そのため、サスペンション用基板の低剛性化を充分に図ることができないという問題があった。
【0068】
これに対して、本発明においては、保護めっき部を形成する前にカバー層を形成することにより、例えば図6(b)に示すように、配線パターン層4aの表面の必要な部分のみに保護めっき部6を形成することができ、サスペンション用基板の低剛性化を充分に図ることができる。なお、図6において、図1と重複する一部の符号については説明を省略する。
【0069】
本発明に用いられる保護めっき部の材料としては、配線パターン層等の腐食を防止することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ニッケル(Ni)、金(Au)等を挙げることができ、中でも金(Au)が好ましい。耐腐食性に優れているからである。
【0070】
上記保護めっき部の膜厚は、例えば5μm以下、中でも1μm〜2μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲であることにより、配線パターン層の腐食等を効果的に防止できるからである。
また、上記保護めっき部は、一般的なめっき法により形成可能である。中でも本発明においては、上記保護めっき部が電解めっき法により形成されたものであることが好ましい。精度良く保護めっき部を形成することができるからである。
【0071】
6.第二のメタルエッチング工程
次に、本発明における第二のメタルエッチング工程について説明する。本発明における第二のメタルエッチング工程は、上記絶縁層エッチング工程および上記保護めっき部形成工程の後に、上記金属基板の外形加工を行う工程である。
【0072】
具体的には、上述した図2(h)および図2(i)に示すように、積層体10の両面にメタルエッチング用のパターン状のレジスト15、16を形成し、エッチング液を用いて金属基板1の外形加工を行う工程である。
【0073】
本発明においては、第一のメタルエッチング工程で、金属基板に治具孔や抜き孔等を形成するが、金属基板の大部分はエッチングされない。そのため、積層体の剛性を高く維持した状態で絶縁層のエッチング等を行うことができ、搬送時に、加工途中の積層体が変形することを抑制することができる。その後、絶縁層等のエッチング等が終わった後に、加工されていない金属基板を所定の形状に合わせてエッチングすることにより、低剛性のサスペンション用基板を歩留まり良く製造することができる。
【0074】
なお、金属基板をエッチングする方法、および用いられるエッチング液の種類等については、上記「1.第一のメタルエッチング工程」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0075】
7.半田バンプ部形成工程
本発明においては、第二のメタルエッチング工程の後に、端子部の保護めっき部上に、半田バンプ部を形成する半田バンプ部形成工程を行っても良い。半田バンプ部形成工程は、上述した図2(j)に示すように、端子部Aの保護めっき部6の表面に、半田バンプ部7を形成する工程である。
【0076】
上記半田バンプ部を形成するために用いられるはんだは、鉛含有はんだと、鉛フリーはんだとに大別することができる。中でも、本発明においては、鉛フリーはんだを用いることが好ましい。環境への負荷を低減できるからである。上記鉛フリーはんだとしては、具体的には、Sn−Sb系、Sn−Cu系、Sn−Cu−Ni系、Sn−Ag系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Ag−Cu−Bi系、Sn−Zn系、Sn−Ag−In−Bi系、Sn−Zn系、Sn−Bi系、およびSn−In系、Sn−Sb系のはんだ等を挙げることができる。
【0077】
上記半田バンプ部を形成する方法としては、所望の半田バンプ部を形成できる方法であえば特に限定されるものではないが、例えばスクリーン印刷法、ディスペンス法、インクジェット法等を挙げることができ、中でもスクリーン印刷法が好ましい。
【0078】
8.その他
上記「3.カバー層形成工程」に記載したように、本発明においては、絶縁層のエッチングを行う前に、カバー層を形成することにより、液状カバー材が治具孔に流れ込むことを防止することができる。この観点から、本発明においては、積層体準備工程と、第一のメタルエッチング工程と、カバー層形成工程と、絶縁層エッチング工程と、第二のメタルエッチング工程とを有することを特徴とするサスペンション用基板の製造方法を提供することができる。各工程については、上述した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0079】
また、上記「5.保護めっき部形成工程」に記載したように、本発明においては、まずカバー層を形成し、そのカバー層の配線パターン層露出開口部から露出する配線パターン層の表面のみに保護めっき部を形成することで、低剛性のサスペンション用基板を得ることができる。この観点から、本発明においては、積層体準備工程と、第一のメタルエッチング工程と、カバー層形成工程と、保護めっき部形成工程と、第二のメタルエッチング工程とを有することを特徴とするサスペンション用基板の製造方法を提供することができる。各工程については、上述した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0080】
本発明においては、上記カバー層形成工程に替えて、カバー層形成用ドライフィルムを用いてカバー層を形成するドライカバー層形成工程を行なっても良い。絶縁層のエッチングを行う前にカバー層を形成することにより、カバー層形成用ドライフィルムを上記配線パターン層上に積層する際に、上記カバー層形成用ドライフィルムが治具孔等に流れこむことを防止することができるからである。これにより、均一な膜厚を有するカバー層を形成することができるからである。さらに、上記サスペンション用基板内におけるカバー層の膜厚を均一なものとすることができるからである。
【0081】
上記ドライカバー層形成工程において、カバー層を形成する方法としては、カバー層形成用ドライフィルムを用いる方法であれば良い。具体的には、上記カバー層形成用ドライフィルムを、上記配線パターン層表面を覆うように配置した後、加熱圧着することにより積層する。次いで、積層されたカバー層形成用ドライフィルムを、露光および現像する方法を挙げることができる。
ここで、露光および現像する方法としては、上記「3.カバー層形成工程」の項に記載した内容と同様とすることができる。また、上記カバー層形成用ドライフィルムとしては、サスペンション用基板の製造に一般的に用いられるものを使用することができる。
【0082】
B.サスペンション用基板
次に、本発明のサスペンション用基板について説明する。本発明のサスペンションは、金属基板と、上記金属基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成されたシード層と、上記シード層上にパターン状に形成された金属めっき層からなる配線パターン層と、を少なくとも有し、上記配線パターン層の最大膜厚部および最小膜厚部の差が、2μm以下であることを特徴とするものである。
【0083】
このようなサスペンション用基板としては、既に説明した図2(j)に示すものとすることができる。
ここで、上記配線パターン層4aの最大膜厚部および最小膜厚部の差が2μm以下のものである。
【0084】
本発明によれば、上記配線パターン層の最大膜厚部および最小膜厚部の差が、2μm以下であることにより、上記配線パターン層の薄膜化を容易なものとし、軽量なものとすることができる。
【0085】
本発明のサスペンション用基板は、少なくとも、金属基板、絶縁層、シード層および配線パターン層を有するものである。また、必要に応じて、カバー層を有するものであっても良い。
なお、金属基板、絶縁層、およびシード層としては、上記「A.サスペンション用基板の製造方法」の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0086】
1.配線パターン層
本発明に用いられる配線パターン層は、上記シード層上にパターン状に形成された金属めっき層からなるものである。また、上記配線パターン層の最大膜厚部および最小膜厚部の差が、2μm以下であるものである。
【0087】
このような配線パターン層としては、例えば、上記シード層の全面に金属めっき層を形成した後、パターン状のレジストを形成し、エッチングすることにより形成されるものを挙げることができる。
本発明においては、なかでも、上記シード層の全面に形成された金属めっき層の最大膜厚部および最小膜厚部の差が2μm以下であることが好ましい。上記配線パターン層の最大膜厚部および最小膜厚部の差が確実に2μm以下となるからである。
【0088】
なお、上記金属めっき、上記金属めっきをエッチングする方法、および配線パターン層としては、具体的には、上記「A.サスペンション用基板の製造方法」の項に記載された内容と同様とすることができる。
【0089】
2.カバー層
本発明に用いられるカバー層は、上記カバー材を用いて上記配線パターン層上に形成され、上記配線パターン層の表面の一部が露出する配線パターン層露出開口部を有するものであれば良い。
【0090】
このようなカバー層の形成に用いられるカバー材としては、液状カバー材およびカバー層形成用ドライフィルム等を用いることができるが、本発明においては、なかでも、液状カバー材を用いることが好ましい。上記カバー層の膜厚を薄いものとすることができるからである。また、その結果、低剛性化および軽量化を図ることができるからである。さらに、このようなことにより、本発明のサスペンション用基板をハードディスクドライブに用いた場合には、低消費電力化を図ることができるからである。
【0091】
なお、上記カバー材、および、上記カバー層の配線パターン層上における最大膜厚部および最小膜厚部の差等については、上記「A.サスペンション用基板の製造方法」の項に記載した内容と同様とすることができるので、ここでの説明を省略する。
【0092】
3.サスペンション用基板
本発明のサスペンション用基板は、少なくとも、金属基板、絶縁層、シード層および配線パターン層を有するものである。また、必要に応じて、カバー層を有するものである。さらに、必要に応じて、保護めっき部、半田バンプ部等を有するものであっても良い。
なお、このような保護めっき部および半田バンプ部については、上記「A.サスペンション用基板の製造方法」の項に記載されたものと同様とすることができる。
【0093】
本発明のサスペンション用基板の製造方法としては、少なくとも、上記金属基板、絶縁層、シード層および配線パターン層を、本発明のサスペンション用基板の用途に応じて、精度良く積層されたものとする方法であれば良く、具体的には、上記「A.サスペンション用基板の製造方法」に記載の方法を用いることができる。
【0094】
本発明のサスペンション用基板の用途としては、ハードディスクドライブに用いられるサスペンションを挙げることができ、なかでも、低剛性で軽量であることが要求されるサスペンションに好適に用いられる。
【0095】
C.サスペンション
次に、本発明のサスペンションについて説明する。本発明のサスペンションは、上記サスペンション用基板を含むことを特徴とするものである。
【0096】
このような本発明のサスペンションを図を参照して説明する。図7は、本発明のサスペンションの一例を示す概略図である。図7に例示するように、本発明のサスペンション40は、上記サスペンション用基板20と、ロードビーム41とを有するものであり、ロードビーム41は上記サスペンション用基板20のうち磁気ヘッドスライダーが設置されるスライダー設置位置30が形成されていない側の表面に接着されている。
ここで、上記サスペンション用基板は、上記「B.サスペンション用基板」の項に記載のサスペンション用基板である。
【0097】
本発明によれば、上記サスペンション用基板を含むものであるため、低剛性で軽量なものとすることができる。
【0098】
本発明のサスペンションは、上記サスペンション用基板を少なくとも有するものである。
このようなサスペンション用基板としては、上記「B.サスペンション用基板」の項に記載の内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0099】
本発明のサスペンションは、上記サスペンション用基板を少なくとも有するものであるが、通常、ロードビームを有するものである。このようなロードビームとしては、本発明のサスペンションをハードディスクドライブに用いた際に、上記サスペンションに所望の剛性を付与することができるものであれば良く、ハードディスクドライブに一般的に使用されるものを用いることができる。
【0100】
本発明のサスペンションの用途としては、ハードディスクドライブのヘッド付サスペンションを挙げることができ、なかでも、低剛性で軽量であることが要求されるヘッド付サスペンションに好適に用いられる。
【0101】
D.ヘッド付サスペンション
次に、本発明のヘッド付サスペンションについて説明する。本発明のヘッド付サスペンションは、上記サスペンションと、上記サスペンション上に搭載された磁気ヘッドスライダーとを有することを特徴とするものである。
【0102】
このような本発明のヘッド付サスペンションを図を参照して説明する。図8は、本発明のヘッド付サスペンションの一例を示す概略図である。図8に例示するように、本発明のヘッド付サスペンション50は、上記サスペンション40と、上記サスペンション40上のスライダー設置位置上に搭載された磁気ヘッドスライダー51とを有するものである。
ここで、上記サスペンションは、上記「C.サスペンション」の項に記載のサスペンションである。
なお、図8中の符号については、図7のものと同一のものである。
【0103】
本発明によれば、上記サスペンションを含むものであるため、低剛性で軽量なものとすることができる。
【0104】
本発明のヘッド付サスペンションは、上記サスペンションおよび磁気ヘッドスライダーを少なくとも有するものである。
上記サスペンションとしては、上記「C.サスペンション」の項に記載の内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0105】
本発明に用いられる磁気ヘッドスライダーとしては、本発明のヘッド付サスペンションをハードディスクドライブに用いた際に、ディスク上へのデータの書き込みおよび読み込みを行なえるものであれば良く、ハードディスクドライブに一般的に使用されるものを用いることができる。
【0106】
本発明のヘッド付サスペンションの用途としては、ハードディスクドライブを挙げることができ、なかでも、低剛性で軽量であることが要求されるハードディスクドライブに好適に用いられる。
【0107】
E.ハードディスクドライブ
次に、本発明のハードディスクドライブについて説明する。本発明のハードディスクドライブは、上記ヘッド付サスペンションを含むことを特徴とするものである。
【0108】
このような本発明のハードディスクドライブを図を参照して説明する。図9は、本発明のハードディスクドライブの内部構造の一例を示す概略平面図である。図9に例示するように、本発明のハードディスクドライブ60は、上記ヘッド付サスペンション50と、上記ヘッド付サスペンション50にデータの書き込みおよび読み込みがされるディスク61と、上記ディスク61を回転させるスピンドルモータ62と、上記ヘッド付サスペンション50に接続されたアーム63と、上記アーム63を移動することにより上記ヘッド付サスペンション50のスライダーを、上記ディスク61上の所望の位置に移動させるボイスコイルモータ64と、上記各構成を密閉するケース65とを有するものである。
ここで、上記ヘッド付サスペンションは、上記「D.ヘッド付サスペンション」の項に記載のサスペンションである。
【0109】
本発明によれば、上記ヘッド付サスペンションを含むものであるため、消費電力の少ないものとすることができる。
【0110】
本発明のハードディスクドライブは、上記ヘッド付サスペンションを少なくとも有するものである。
このようなヘッド付サスペンションとしては、上記「D.ヘッド付サスペンション」の項に記載の内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0111】
本発明のハードディスクドライブは、上記ヘッド付サスペンションを少なくとも有するものであるが、通常、ディスク、スピンドルモータ、アーム、およびボイスコイルモータを有するものである。このようなディスク、スピンドルモータ、アーム、およびボイスコイルモータとしては、ハードディスクドライブに一般的に使用されるものを用いることができる。
【0112】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0113】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
厚さ20μmのSUS304(金属基板)上に、厚さ10μmのポリイミド(絶縁層)を塗工方法にて形成し、更にその絶縁層上にシード層となるNi−Cr−Cuをスパッタ工法で約300nmコーティングし、それを導通層としCuめっきにて厚さ9μmのCuめっき層(金属めっき層)を形成し、4層の積層体を得た(図1(a)参照)。この4層の積層体を用いて、低剛性で微細配線を有するサスペンション用基板を作製した。
【0114】
まず、SUS側で位置精度が重要な治具孔と、Cuめっき層側で目的とする配線パターン層とを形成できるように、ドライフィルムを用いて同時にパターニングし、パターン状のレジストを得た。その後、塩化第二鉄液を用いてエッチングし、エッチング後レジスト剥膜を行った(第一のメタルエッチング工程、図1(b)、(c)参照)。ここでは、ドライフィルムを同時にパターニングすることで、SUS側および配線パターン層側の両面の位置精度を向上させることができる。なお、配線パターン層に形成された銅配線の幅は20μmであり、銅配線の間隔は20μmであった。配線の微細化の実現は、配線パターン層にアンカー形状が無いこと、および高感度なDFRレジストを用いたことが大きく寄与していると考えられる。
【0115】
次に、非感光性ポリイミド系の液状カバー材をダイコーターでコーティングし、乾燥後、レジスト製版し現像と同時に液カバー材をエッチングし、その後、硬化させ、カバー層を得た(図1(d)参照)。硬化後のカバー層の膜厚は、配線上で5μmであった。このようなカバー層を形成することにより、反りの制御および低剛性化を図り、且つ配線パターン層の保護を図ることができる。
【0116】
次に、厚さ10μmのポリイミド(絶縁層)をレジスト製版し、有機アルカリエッチング液を用いてエッチングし、パターン状の絶縁層を得た(図1(e)、(f)参照)。その後、露出する配線パターン層に対して、厚さ2μmのAuめっきを行い、保護めっき部を形成した(図2(g)参照)。本発明においては、先に配線カバーを実施しており、カバー層で被覆されていない部位のみにAuめっきができ、低剛性化とAu量の削減に大きな効果を得ることができる。
【0117】
次に、SUSの外形加工を行うため、上述した第一のメタルエッチング工程と同様の手法により、レジスト製版を行い、SUS側のみエッチングを行った(第二のメタルエッチング工程、図2(h)、(i)参照)。最後に、第二のメタルエッチング工程の後に、鉛フリーの半田ペーストを用いてスクリーン印刷にて半田バンプを形成した(図2(j))。こうして得られたサスペンション用基板は、従来製品に比べ、低剛性で且つ微細配線を有するものであった。
【0118】
[実施例2]
非感光性ポリイミド系の液状カバー材を、ダイコーターでコーティングした以外は、実施例1と同様にしてサスペンション用基板を作製した。
【0119】
[実施例3]
コーティングする非感光性ポリイミド系の液状カバー材の量を変更した以外は、実施例2と同様にしてサスペンション用基板を作製した。
【0120】
[比較例1]
パターン状の絶縁層を得た後に、カバー層を形成した以外は、実施例2と同様にしてサスペンション用基板を作製した。
【0121】
[比較例2]
コーティングする非感光性ポリイミド系の液状カバー材の量を変更した以外は、比較例1と同様にしてサスペンション用基板を作製した。
【0122】
[評価]
実施例2〜3および比較例1〜2で作製したサスペンション用基板について、図10のXで示すように、周囲にエッチングされた絶縁層、すなわち、貫通孔が形成されている箇所におけるカバー層の厚みを測定した。結果を下記表1に示す。
また、図10のYで示すように、周囲にエッチングされた絶縁層が形成されていない箇所におけるカバー層の厚みを測定した。結果を下記表2に示す。
なお、測定は、上記サスペンション用基板を8枚作製し、それぞれについてXおよびYにおける膜厚を測定することにより行なった。
さらに、サスペンション用基板におけるカバー層の膜厚差として、各サンプルにおける図10のXおよびYで示される領域における膜厚の差の平均(X−Y膜厚差)を計算した。結果を、下記表3に示す。
【0123】
【表1】

【0124】
【表2】

【0125】
【表3】

【0126】
表3より、カバー層を形成した後に、パターン状の絶縁層を形成した実施例においては、図10においてXで示される領域と、Yで示される領域とにおける膜厚の差の平均(X-Y膜厚差)を1μm以下とすることができた。一方、パターン状の絶縁層を得た後に、カバー層を形成した比較例においては、X−Y膜厚差が2μm以上となった。
【符号の説明】
【0127】
1 … 金属基板
1a … 治具孔
1b … 抜き孔
2 … 絶縁層
3 … シード層
4 … 金属めっき層
4a … 配線パターン層
5 … カバー層
6 … 保護めっき部
7 … 半田部
10 … 積層体
20 … サスペンション用基板
30 … スライダー設置位置
40 … サスペンション
50 … ヘッド付サスペンション
51 … 磁気ヘッドスライダー
60 … ハードディスクドライブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板と、
前記金属基板上に形成された絶縁層と、
前記絶縁層上に形成されたシード層と、
前記シード層上にパターン状に形成された金属めっき層からなる配線パターン層と、
を少なくとも有し、
前記配線パターン層の最大膜厚部および最小膜厚部の差が、2μm以下であるサスペンション用基板であって、
前記絶縁層には開口部が形成されており、
カバー材を用いて前記配線パターン層上に形成され、前記配線パターン層の表面の一部が露出する配線パターン層露出開口部を有するカバー層を有し、
前記カバー層の配線パターン層上の最大膜厚部および最小膜厚部の差が、1μm以下であることを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項2】
請求項1に記載のサスペンション用基板を含むことを特徴とするサスペンション。
【請求項3】
請求項2に記載のサスペンションと、前記サスペンション上に搭載された磁気ヘッドスライダーとを有することを特徴とするヘッド付サスペンション。
【請求項4】
請求項3に記載のヘッド付サスペンションを含むことを特徴とするハードディスクドライブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−249000(P2011−249000A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160999(P2011−160999)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【分割の表示】特願2008−109195(P2008−109195)の分割
【原出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】