説明

サスペンション装置

【課題】車体前後方向のコンプライアンスを確保して乗心地の向上を図り、車幅方向の剛性を高めて操縦安定性の向上を図ることができるサスペンション装置を提供する。
【解決手段】サスペンション装置10は、ナックル13を支えるトレーリングアーム14およびロアアーム16を備えている。このロアアーム16は、第1、第2の外端部41,47が車幅方向に並列配置された第1、第2のゴムブッシュ43,51を介してトレーリングアーム14に連結されている。そして、第1、第2のゴムブッシュ43,51間にナックル13が連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪がナックルに回転自在に支持され、このナックルがトレーリングアームおよびロアアームで車体に支持されたサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サスペンション装置のなかには、アッパアームおよびトレーリングアームを介して車体にナックルが連結され、ナックルが連結されたトレーリングアームにロアアームが連結され、ナックルに車輪が回転自在に支持されたものがある。
このサスペンション装置は、ロアアームが車幅方向を向いて配置され、ロアアームの外端部が第1、第2の連結部を介してトレーリングアームの後端部に連結されている。
第1、第2の連結部は、車幅方向に所定間隔をおいて並列配置され、弾性変形可能なゴムブッシュ(ラバーブッシュ)が軸線を車体前後方向に向けて配設されている。
【0003】
このゴムブッシュは、ブッシュの軸線が車体前後方向を向いて配置され、車体前後方向への弾性変形が許容される。よって、車体前後方向のコンプライアンス(入力に対してある程度の変形・変位を許容する構成)を確保することができる。
これにより、例えば、車両の走行中において車輪が段差を乗り越える際に、車体前後方向のコンプライアンスを確保することで乗心地の向上を図ることができる。
【0004】
一方、ゴムブッシュは、ブッシュの軸線に対して直交する方向(車幅方向)への弾性変形が抑制される。よって、車幅方向の剛性を確保して車輪のトー(トー角)やキャンバ(キャンバ角)を好適に維持することができる。
これにより、車両の走行中において車輪のトーやキャンバを好適に維持することで操縦安定性の向上を図ることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−195296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1のサスペンション装置は、乗心地の向上を図るために第1、第2の連結部に弾性変形可能なゴムブッシュが用いられている。
このように、第1、第2の連結部に弾性変形可能なゴムブッシュを用いるために、車幅方向の剛性を高めて車輪のトーやキャンバを一層好適に保つことが望まれている。
【0007】
本発明は、車体前後方向のコンプライアンスを確保して乗心地の向上を図ることができ、さらに、車幅方向の剛性を高めて操縦安定性の向上を図ることができるサスペンション装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体に第1サスペンションアームの前端部が枢支されるとともに前記前端部から車体後方向に向けて前記第1サスペンションアームが延出され、延出された第1サスペンションアームのうち前記前端部より車幅方向外側の部位がナックルに枢支され、前記ナックルが枢支された前記第1サスペンションアームに第2サスペンションアームの外端部が連結されるとともに、前記外端部より車幅方向内側に配置された前記第2サスペンションアームの内端部が前記車体に枢支され、前記ナックルに車輪が支持されたサスペンション装置において、前記第2サスペンションアームは、前記外端部が車幅方向に並列配置された少なくとも2つの弾性連結部を介して第1サスペンションアームに連結され、前記少なくとも2つの弾性連結部間に前記ナックルが連結されたことを特徴とする。
【0009】
請求項2は、前記第1サスペンションアームは、前記ナックルに枢支された前記車幅方向外側の部位が前記車体に枢支された前記前端部より下方に配置され、前記第2サスペンションアームは、前記第1サスペンションアームに連結された外端部が前記車体に枢支された前記内端部より下方に配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、第2サスペンションアームの外端部を、車幅方向に並列配置された弾性連結部を介して第1サスペンションアームに連結した。
弾性連結部を車幅方向に並列配置することで、弾性連結部の軸線が車体前後方向を向いて配置される。よって、弾性連結部は車体前後方向への弾性変形が許容され、車体前後方向のコンプライアンス(入力に対してある程度の変形・変位を許容する構成)を確保することができる。
これにより、例えば、車両の走行中において車輪が段差を乗り越える際に、車体前後方向のコンプライアンスを確保することで乗心地の向上を図ることができる。
【0011】
さらに、第2サスペンションアームのうち弾性連結部間にナックルを連結させた。
よって、ナックルが車幅方向に移動することを第2サスペンションアームで抑制して車幅方向の剛性を高めることができる。
これにより、車両の走行中において車輪のトー(トー角)やキャンバ(キャンバ角)を好適に維持することが可能になり操縦安定性の向上を図ることができる。
【0012】
ここで、ナックルが車幅方向に移動することを抑制する手段として、第2サスペンションアームの外端部を車体外側に延ばし、延ばした連結部位にナックルを連結することが考えられる。
しかし、車体外側に延ばした連結部位にナックルを連結した場合、第2サスペンションアームの内端部および連結部位間の距離が大きくなる。
【0013】
よって、車輪の制動時にナックルを経て連結部位に荷重が作用したとき、連結部位に比較的大きなトルク(モーメント)が作用する。
このトルクを相殺するために、弾性連結部に比較的大きな荷重が作用する。このため、例えば、弾性連結部の耐久性を保つために、弾性連結部の品質を必要以上に高めたり、ボルトのサイズ(形状)を大きくして締結タフネス(締結信頼性)を高める必要がある。
【0014】
そこで、請求項1において、第2サスペンションアームのうち弾性連結部間にナックルを連結させた。
以下、ナックルを連結させた弾性連結部間の部位を「ナックル枢支部」という。
弾性連結部間のナックル枢支部にナックルを連結させることで、ナックル枢支部および第2サスペンションアームの内端部間の距離を小さく抑えることができる。
【0015】
よって、車輪の制動時にナックルを経てナックル枢支部に荷重が作用したとき、ナックル枢支部に作用するトルクを小さく抑えることができる。
これにより、ナックル枢支部に作用する小さなトルクを、弾性連結部に作用する小さな荷重で相殺することができるので、弾性連結部の耐久性を高めることができる。
【0016】
請求項2に係る発明では、第1サスペンションアームの車幅方向外側の部位(以下、「外側部位」という)を前端部より下方で、かつ、車幅方向外側に配置した。
一方、第2サスペンションアームの外端部を内端部より下方に配置した。
ここで、車両の走行中に車輪を制動した場合、第1サスペンションアームの外側部位に下向きの荷重が作用するとともに、第2サスペンションアームの外端部に上向きの荷重が作用する。
【0017】
このように、第1サスペンションアームの外側部位を前端部より下方で、かつ、車幅方向外側に配置した状態で外側部位に下向きの荷重を作用させることで、外側部位が車幅方向内側に移動(変位)する。
一方、第2サスペンションアームの外端部を内端部より下方に配置した状態で外端部に上向きの荷重を作用させることで、外端部が車幅方向外側に移動(変位)する。
これにより、制動時の車輪をトーインの状態に保持することができるので、制動時の操縦安定性を好適に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るサスペンション装置を示す斜視図である。
【図2】図1のサスペンション装置を示す分解斜視図である。
【図3】図1のサスペンション装置を下方から見た状態を示す斜視図である。
【図4】図1の4矢視図である。
【図5】図4の5矢視図である。
【図6】図1の6矢視図である。
【図7】図1の7矢視線断面図である。
【図8】図1の8矢視線断面図である。
【図9】本発明に係るサスペンション装置を備えた車両の乗心地や操縦安定性について説明する図であり、図9(b)は図9(a)の9b矢視線断面図、図9(c)は図9(a)の9c矢視線断面図である。
【図10】本発明に係るサスペンション装置に備えた第1、第2のゴムブッシュの耐久性について説明する図である。
【図11】比較例のサスペンション装置に備えた第1、第2のゴムブッシュに大きな荷重が作用する例を説明する図である。
【図12】本発明に係るサスペンション装置に備えた車輪の制動する例を説明する図である。
【図13】本発明に係るサスペンション装置に備えた車輪を制動した状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前(Fr)」、「後(Rr)」、「左(L)」、「右(R)」は運転者から見た方向にしたがう。
【実施例】
【0020】
実施例に係るサスペンション装置10について説明する。
図1に示すように、サスペンション装置10は、車輪(後輪)12を車軸(図示せず)を介して回転自在に支持するナックル13と、ナックル13の前下連結部22を支えるトレーリングアーム14と、ナックル13の上連結部23を支えるアッパアーム15と、ナックル13の後下連結部24を支えるロアアーム16と、トレーリングアーム14を支えるダンパ17およびサスペンションスプリング18とを備えたリヤサスペンション装置である。
【0021】
トレーリングアーム14は、請求項1〜2に記載の第1サスペンションアームの代表例を示す。
ロアアーム16は、請求項1〜2に記載の第2サスペンションアームの代表例を示す。
【0022】
図2、図3に示すように、ナックル13は、車軸を回転自在に支持するナックル本体部21と、ナックル本体部21の前下部位から下方に向けて延ばされた前下連結部22と、ナックル本体部21の上部位から上方に向けて延ばされた上連結部23と、ナックル本体部21の後下部位から車幅方向内かつ車体後方に向けて延ばされた後下連結部24とを備える。
前下連結部22がトレーリングアーム14に枢支され、上連結部23がアッパアーム15に枢支されている。また、後下連結部24がロアアーム16に枢支されている。
【0023】
トレーリングアーム14は、車体前後方向に延びるメインアーム26と、メインアーム26のメイン中央部26aから車体後方に延びるサブアーム27と、メインアーム26およびサブアーム27を連結するクロス部材28とを備える。
【0024】
メインアーム26は、車体11にメイン前端部26bが支持軸31およびボルト32を介して回動自在に枢支され、メイン中央部26aの連結ブラケット33にボルト34・ナット35を介して前下連結部22が枢支され、メイン後端部26cにロアアーム16の第1外端部(外端部)41が第1ボルト42を介して連結されている。
このメインアーム26は、メイン前端部26bからメイン中央部26aまで車体後方向かつ車幅方向外側に向けて延ばされたメイン傾斜部36と、メイン中央部26aからメイン後端部26cまで車体後方に向けて延ばされたメイン直線部37とを備える。
【0025】
図4、図5に示すように、メインアーム26のメイン中央部(すなわち、メイン傾斜部36の後端)26aは、メイン前端部26bより距離L1(図5参照)だけ車幅方向外側に位置する部位である。
メイン中央部26aに連結ブラケット33を介してナックル13の前下連結部22が枢支されている。
また、メイン中央部26aは、メイン前端部26bより距離H1(図4参照)だけ下方に配置されている。
【0026】
すなわち、メインアーム26は、メイン前端部26bからメイン中央部26aまで車体後方に向けて延び、車幅方向外側に向けて傾斜角θ1だけ傾斜されるとともに下方に向けて傾斜角θ2だけ傾斜されている。
【0027】
図2、図3に示すように、メインアーム26のメイン後端部26cにダンパ17の下端部17aが枢支され、ダンパ17の上端部17bが車体11に連結されている。
【0028】
サブアーム27は、メインアーム26のメイン中央部26aから二股状に分岐され、サブ後端部27aにロアアーム16の第2外端部(外端部)47が第2ボルト48を介して連結されている。
第2外端部47は、第1外端部41からロアアーム16の内端部55側に所定間隔L2だけ離れた位置に形成されている。
【0029】
サブアーム27の後端部27aにサスペンションスプリング18の下端部18aが支持され、サスペンションスプリング18の上端部18bが車体11に支持されている。
【0030】
アッパアーム15は、車幅方向を向いて配置され、内端部15aが支持軸61およびボルト62を介して車体11に回動自在に枢支され、外端部15bが支持軸63を介してナックル13の上連結部23に回動自在に枢支されている。
【0031】
図2、図6に示すように、ロアアーム16は、第1外端部41が第1ボルト42を介してメインアーム26のメイン後端部26cに連結され、第2外端部47が第2ボルト48を介してサブアーム27のサブ後端部27aに連結され、第1、第2の外端部41,47より車幅方向内側に配置された内端部55が車体11にボルト56を介して回動自在に枢支されている。
【0032】
図7に示すように、第1外端部41は、取付孔41aに第1ゴムブッシュ(弾性連結部)43、具体的には外筒44が嵌合されている。
第1ゴムブッシュ43は、その軸線が車体前後方向を向いて配置され、外筒44および内筒45間にブッシュ単体46が介在されている。
ブッシュ単体46は弾性変形可能なゴム製の部材である。
【0033】
第1ゴムブッシュ43の内筒45に第1ボルト42が差し込まれ、内筒45から突出された第1ボルト42のねじ部42aがメインアーム26のメイン後端部26cにねじ結合されている。
換言すれば、第1外端部41は、第1ゴムブッシュ43を介してメインアーム26のメイン後端部26cに連結されている。
この状態において、メイン後端部26cに車体前後方向の荷重が作用した場合、ブッシュ単体46が弾性変形してメイン後端部26cの車体前後方向への移動が許容される。
【0034】
図2に示すように、第2外端部47は、第1外端部41と同様に、取付孔47aに第2ゴムブッシュ(弾性連結部)51が嵌合されている。
第2ゴムブッシュ51は、第1ゴムブッシュ43と同一構成であり、各構成部材に第1ゴムブッシュ43と同じ符号を付して説明を省略する。
この第2ゴムブッシュ51は、第1ゴムブッシュ43と同様に、その軸線が車体前後方向を向いて配置されている。
【0035】
第2ゴムブッシュ51の内筒45(図示せず)に第2ボルト48が差し込まれ、内筒45から突出された第2ボルト48のねじ部48aがサブアーム27のサブ後端部27aにねじ結合されている。
換言すれば、第2外端部47は、第2ゴムブッシュ51を介してサブアーム27のサブ後端部27aに連結されている。
この状態において、サブ後端部27aに車体前後方向の荷重が作用した場合、第2ゴムブッシュ51のブッシュ単体46が弾性変形してサブ後端部27aの車体前後方向への移動が許容される。
【0036】
図2、図6に示すように、第1ゴムブッシュ43および第2ゴムブッシュ51は、それぞれの軸線が車体前後方向を向いた状態で、車幅方向に所定間隔L2だけ離れた位置に並列に配置されている。
そして、ロアアーム16のうち、第1ゴムブッシュ43および第2ゴムブッシュ51間のナックル枢支部65に後下連結部24の後端部24aが連結されている。
【0037】
ここで、ナックル枢支部65およびロアアーム16の内端部55間のナックル枢支距離はL3である。また、第1外端部41およびロアアーム16の内端部55間の第1外端距離はL4である。
第1、第2の外端部41,47間(すなわち、第1、第2のゴムブッシュ43,51間)のナックル枢支部65にナックル13を連結させることで、ナックル枢支距離L3が、第1外端距離L4より小さく抑えられている。
【0038】
図8に示すように、ナックル枢支部65は、取付孔65aに枢支ゴムブッシュ67、具体的には外筒68が嵌合されている。
枢支ゴムブッシュ67は、第1、第2のゴムブッシュ43,51と同様に、その軸線が車体前後方向を向いて配置され、外筒68および内筒69間にブッシュ単体71が介在されている。
ブッシュ単体71は弾性変形可能なゴム製の部材である。
【0039】
一方、後下連結部24の後端部24aは、前後の取付ブラケット74,75が一定間隔をおいて設けられている。前後の取付ブラケット74,75には取付孔74a,75aがそれぞれ形成されている。
前後の取付ブラケット74,75間にナックル枢支部65(すなわち、枢支ゴムブッシュ67)が配置された状態において、前後の取付ブラケット74,75の取付孔74a,75aおよび内筒69が同軸上に配置されている。
【0040】
前後の取付ブラケット74,75の取付孔74a,75aおよび内筒69に枢支ボルト66が差し込まれ、前取付ブラケット74の取付孔74aから突出されたねじ部66aにナット76がねじ結合されている。
換言すれば、ナックル枢支部65は、枢支ゴムブッシュ67を介して後下連結部24の後端部24aに連結されている。
この状態において、後下連結部24(後端部24a)に車体前後方向の荷重が作用した場合、枢支ゴムブッシュ67のブッシュ単体71が弾性変形して後下連結部24(後端部24a)の車体前後方向への移動が許容される。
【0041】
図6に示すように、ロアアーム16は、第1、第2の外端部41,47が内端部55より距離H2だけ下方に配置されている。
すなわち、ロアアーム16は、内端部55から第1、第2の外端部41,47まで車幅方向外側に向けて延びるとともに、下方に向けて傾斜角θ3だけ傾斜されている。
なお、第1、第2の外端部41,47およびナックル枢支部65は略水平に配置されている。
【0042】
つぎに、サスペンション装置10を備えた車両の乗心地や操縦安定性を図9に基づいて説明する。
図9(a)〜(c)に示すように、ロアアーム16の第1外端部41が第1ゴムブッシュ43を介してトレーリングアーム14(メイン後端部26c)に連結されている。
また、ロアアーム16の第2外端部47が第2ゴムブッシュ51(図2参照)を介してトレーリングアーム14(サブ後端部27a)に連結されている。
さらに、ロアアーム16のうち第1、第2の外端部41,47間のナックル枢支部65が枢支ゴムブッシュ67を介してナックル13(後下連結部24の後端部24a)に連結されている。
【0043】
この状態において、トレーリングアーム14やナックル13に車体前後方向の荷重が作用した場合に、第1、第2のゴムブッシュ43,51(ブッシュ単体46)および枢支ゴムブッシュ67(ブッシュ単体71)を車体前後方向に弾性変形させることができる。
よって、例えば、車両の走行中において車輪12が段差を乗り越える際に、第1、第2のゴムブッシュ43,51(ブッシュ単体46)および枢支ゴムブッシュ67(ブッシュ単体71)が車体前後方向に弾性変形する。
これにより、例えば、車輪12が段差を乗り越える際に、車体前後方向のコンプライアンス(入力に対してある程度の変形・変位を許容する構成)を確保することで乗心地の向上を図ることができる。
【0044】
さらに、図9(a)に示すように、ロアアーム16のうち第1、第2の外端部41,47間にナックル13(具体的には、後下連結部24の後端部24a)を連結させた。
よって、ナックル13(すなわち、車輪12)が車幅方向に移動することをロアアーム16で抑制して車幅方向の剛性を高めることができる。
これにより、車両の走行中において車輪12のトー(トー角)やキャンバ(キャンバ角)を好適に維持することが可能になり操縦安定性の向上を図ることができる。
【0045】
ついで、サスペンション装置10に備えた第1、第2のゴムブッシュ43,51の耐久性を図10、図11に基づいて説明する。
図10(a)に示すように、ロアアーム16のうち第1、第2の外端部41,47間のナックル枢支部65にナックル13(具体的には、後下連結部24の後端部24a)を連結させた。
第1、第2の外端部41,47間のナックル枢支部65にナックル13を連結させることで、ナックル枢支距離L3を小さく抑えることができる。
【0046】
図10(b)に示すように、車輪12の制動時(前進走行中の制動時)にナックル13に制動トルク(モーメント)T1が矢印の如く作用する。
ナックル13に制動トルクT1が作用することで、メイン中央部26aに荷重F1が矢印方向(下方向)に作用するとともに、ナックル枢支部65に荷重F2が矢印方向(上方向)に作用する。
【0047】
図10(a)に示すように、ナックル枢支部65に荷重F2が作用することでボルト56を軸にして、トルク(モーメント)T2(F2×L3)が発生する。
ここで、ナックル枢支距離L3が第1外端距離L4より小さく抑えられている。
仮に、第1外端部41に荷重F2が作用した場合と比較して、ナックル枢支部65に作用するトルクT2を小さく抑えることができる。
【0048】
よって、ナックル枢支部65に作用する小さなトルクT2を、第1、第2のゴムブッシュ43,51に作用する小さな荷重F3、F4で相殺することができる。
これにより、第1、第2のゴムブッシュ43,51が小さな荷重F3、F4で損傷することを抑え、第1、第2のゴムブッシュ43,51の耐久性を高めることができる。
【0049】
ここで、比較例のサスペンション装置に備えた第1、第2のゴムブッシュに大きな荷重が作用する例を図11に示す。
図11に示すように、比較例のサスペンション装置100は、ロアアーム101の外端部102を車体外側に延ばし、延ばしたナックル枢支部103にナックル105を連結する。
しかし、ナックル枢支部103にナックル105を連結した場合、ナックル枢支部103およびロアアーム101の内端部104間のナックル枢支距離L5が、第1外端部102およびロアアーム101の内端部104間の第1外端距離L6より大きくなる。
【0050】
よって、車輪の制動時(前進走行中の制動時)に延出部位にナックルを経て荷重F5が作用したとき、ボルト107を軸にして比較的大きなトルク(モーメント)T3(F5×L5)が発生する。
この比較的大きなトルクT3を相殺するために、第1、第2の外端部102に比較的大きな荷重F6,F7が作用する。
このため、例えば、第1、第2の外端部102に備えたゴムブッシュの耐久性を保つために、ゴムブッシュの品質を必要以上に高めたり、ボルトのサイズ(形状)を大きくして締結タフネス(締結信頼性)を高める必要がある。
【0051】
つぎに、サスペンション装置10に備えた車輪12の制動時における操縦安定性を図12、図13に基づいて説明する。
図12(a),(b)に示すように、メイン中央部26a(すなわち、メイン傾斜部36の後端)が、メインアーム26のメイン前端部26bより距離L1だけ車幅方向外側に位置している。
メイン中央部26aに連結ブラケット33を介してナックル13の前下連結部22が枢支されている。
また、メイン中央部26aは、メイン前端部26bより距離H1だけ下方に配置されている。
【0052】
すなわち、メインアーム26は、メイン前端部26bからメイン中央部26aまで車体後方に向けて延びるとともに、車幅方向外側に傾斜角θ1、下方に傾斜角θ2だけそれぞれ傾斜されている。
【0053】
一方、ロアアーム16は、第1、第2の外端部41,47が内端部55よりH2だけ下方に配置されている。
すなわち、ロアアーム16は、内端部55から第1、第2の外端部41,47まで車幅方向外側に向けて延びるとともに、下方に傾斜角θ3だけ傾斜されている。
【0054】
ここで、車両の走行中(前進走行中)に車輪12を制動した場合、メイン中央部26aに下向きの荷重F1が作用するとともに、ロアアーム16のナックル枢支部65に上向きの荷重F2が作用する。
【0055】
このように、メイン中央部26aをメイン前端部26bよりH1だけ下方で、かつ、車幅方向外側に距離L1だけ配置した状態でメイン中央部26aに下向きの荷重F1を作用させることで、メイン中央部26aが車幅方向内側に矢印Aの如く移動(変位)する。
一方、ロアアーム16の第1、第2の外端部41,47を内端部55よりH2だけ下方に配置した状態でナックル枢支部65に上向きの荷重F2を作用させることで、第1、第2の外端部41,47が車幅方向外側に矢印Bの如く移動(変位)する。
【0056】
図13に示すように、メイン中央部26aが車幅方向内側に矢印Aの如く移動(変位)するとともに、第1、第2の外端部41,47が車幅方向外側に矢印Bの如く移動(変位)することで、制動時の車輪12をトーインの状態に保持できる。
このように、車輪12をトーインの状態に保持することで制動時の操縦安定性を好適に確保することができる。
【0057】
なお、本発明に係るサスペンション装置10は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、サスペンション装置10をリヤサスペンション装置に適用した例について説明したが、これに限らないで、サスペンション装置10をフロントサスペンション装置に適用することも可能である。
【0058】
また、前記実施例で示したサスペンション装置10、車体11、車輪12、ナックル13、トレーリングアーム14、ロアアーム16、メイン中央部26a、メイン前端部26b、第1外端部41、第1ゴムブッシュ43、第2外端部47、第2ゴムブッシュ51および内端部55などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、車輪を回転自在に支持するナックルがトレーリングアームおよびロアアームで車体に支えられたサスペンション装置を備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0060】
10…サスペンション装置、11…車体、12…車輪、13…ナックル、14…トレーリングアーム(第1サスペンションアーム)、16…ロアアーム(第2サスペンションアーム)、26a…メイン中央部(第1サスペンションアームのうち前端部より車幅方向外側の部位)、26b…メイン前端部(トレーリングアームの前端部)、41…第1外端部(外端部)、43…第1ゴムブッシュ(弾性連結部)、47…第2外端部(外端部)、51…第2ゴムブッシュ(弾性連結部)、55…内端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に第1サスペンションアームの前端部が枢支されるとともに前記前端部から車体後方向に向けて前記第1サスペンションアームが延出され、延出された第1サスペンションアームのうち前記前端部より車幅方向外側の部位がナックルに枢支され、
前記ナックルが枢支された前記第1サスペンションアームに第2サスペンションアームの外端部が連結されるとともに、前記外端部より車幅方向内側に配置された前記第2サスペンションアームの内端部が前記車体に枢支され、
前記ナックルに車輪が支持されたサスペンション装置において、
前記第2サスペンションアームは、
前記外端部が車幅方向に並列配置された少なくとも2つの弾性連結部を介して第1サスペンションアームに連結され、
前記少なくとも2つの弾性連結部間に前記ナックルが連結されたことを特徴とするサスペンション装置。
【請求項2】
前記第1サスペンションアームは、
前記ナックルに枢支された前記車幅方向外側の部位が前記車体に枢支された前記前端部より下方に配置され、
前記第2サスペンションアームは、
前記第1サスペンションアームに連結された外端部が前記車体に枢支された前記内端部より下方に配置されたことを特徴とする請求項1記載のサスペンション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−246047(P2011−246047A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123075(P2010−123075)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】