説明

サブマウント及びこれを用いた半導体装置

【課題】半導体素子の接合不具合を抑制することによって、素子特性の低下を抑制することが可能なサブマウントを提供する。
【解決手段】このサブマウント10は、サブマウント基板11と、サブマウント基板11の上面上に形成され、半導体レーザ素子20を接合するための半田層14と、半田層14よりも小さい平面積を有するとともに、サブマウント基板11と半田層14との間に形成されたスペーサ層15とを備えている。このスペーサ層15は、Ni(ニッケル)から構成されているとともに、半田層14は、共晶系はんだ材であるAuSnから構成されている。また、半田層14の上面の所定領域には、スペーサ層15によって、段差部14aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サブマウント及びこのサブマウントを用いた半導体装置に関し、特に、半導体素子が搭載されるサブマウント及びこのサブマウントを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CD−R(Compact Disk Recordable)やDVD−R(Digital Versatile Disk Recordable)などの光ディスクシステムの光源に用いられる半導体装置では、高出力化のニーズが益々高くなってきている。それに伴って、半導体装置に搭載される半導体素子が長尺化される(共振器長が長くなる)傾向にある。また、半導体素子の消費電力も大きくなり、半導体素子の駆動時の発熱量が大きくなってきている。
【0003】
このような半導体素子で発生する熱を外部に放熱するために、従来の半導体装置では、半導体素子の裏面側に銅や鉄などの金属材料からなるヒートシンクが放熱部材として設けられている。また、半導体素子とヒートシンクとの熱膨張係数の差に起因する応力や歪みなどの発生を抑制するために、ヒートシンクと半導体素子との間には、半導体素子の基板材料と比較的熱膨張係数が近く、かつ、熱伝導性の良好な材料からなるサブマウントが配設されている。また、半導体素子は、半田などの接合材を用いてサブマウント上に接合されている。このようなサブマウントは、たとえば、特許文献1に記載されている。
【0004】
図16および図17は、従来のサブマウント上に半導体素子を接合する方法を示す概略断面図である。図16および図17を参照して、従来のサブマウント500上に半導体素子510を接合する方法について説明する。まず、図16に示すように、サブマウント500を、ヒータステージ520上に載置するとともに、ピックアップコレット530によって、半導体素子510をサブマウント500上に移動させる。次に、図17に示すように、ヒータステージ520によりサブマウント500の半田層501が溶融する温度まで加熱する。そして、この状態で半導体素子510を半田層501に接触させるとともに、ピックアップコレット530により半導体素子510に加重を加える。なお、ピックアップコレット530により半導体素子510に加重を加えるのは、半導体素子510とサブマウント500との接合強度を向上させるためである。その後、ヒータステージ520の加熱を停止し、半田層501が固化するまで冷却する。なお、ピックアップコレット530は、半導体素子510が動かないように半田層501が固化するまで加重を加えた状態にしておく。このようにして、半導体素子510が、半田層501によってサブマウント500上に接合される。
【特許文献1】特開2003−258360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来のサブマウント500上に長尺形状の半導体素子を接合する場合には、ピックアップコレット530によって半導体素子に均一に加重を加えることが困難になるため、半導体素子の一部に接合不具合が生じるという不都合があった。
【0006】
一方、半導体素子は熱膨張係数の異なる複数の半導体層が複雑な形状で積層された構造を有しているため、半導体素子を長尺化することによって、半導体素子に反りが発生する場合がある。このような反りを有する半導体素子を、上記した従来のサブマウント500上に接合する場合には、反りの部分で接合不具合が生じるという不都合もあった。
【0007】
このように、従来のサブマウント500では、長尺化した半導体素子を接合する場合に、半導体素子の接合不具合を抑制することが困難になるため、半導体素子の駆動時に生じた熱を効率良くサブマウント500に伝達させることが困難になるという不都合があった。このため、半導体素子の温度を低下させることが困難になるため、半導体素子の温度上昇により、半導体素子の発光特性(素子特性)が低下するという問題点があった。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、半導体素子の接合不具合を抑制することによって、素子特性の低下を抑制することが可能なサブマウント及びそのサブマウントを用いた半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面によるサブマウントは、サブマウント基板と、サブマウント基板の主表面上に形成され、半導体素子を接合するための接合層とを備えている。そして、溶融前の接合層には、段差部が形成されている。
【0010】
この第1の局面によるサブマウントでは、上記のように、溶融前の接合層に段差部を形成することによって、長尺化により反りが生じている半導体素子を接合する際に、その反りに対応するように接合層の所定の領域を上方に突出させることができるので、反り部分の直下において接合材の量が少なくなるのを抑制することができる。すなわち、半導体素子を接合層に接触させた際に、半導体素子の反り部分において、接合層と半導体素子との間に生じる隙間が大きくなるのを抑制することができる。このため、半導体素子の反り部分で接合不具合が生じるのを抑制することができるので、均一な接合状態で半導体素子をサブマウント上に接合することができる。これにより、半導体素子の駆動時に生じた熱を効率良くサブマウントに伝達させることができるので、半導体素子の温度上昇を抑制することができる。その結果、半導体素子の発光特性(素子特性)が低下するのを抑制することができる。
【0011】
また、第1の局面では、溶融前の接合層に段差部を形成することによって、接合層の所定領域を上方に突出させることができるので、長尺化した半導体素子のようなピックアップコレットによって均一に加重を加えることが困難な半導体素子であっても、ピックアップコレットにより半導体素子に加重を加えた際に、半導体素子の全面にほぼ均一に加重が加わるようにすることができる。このため、半導体素子の一部に接合不具合が生じるのを抑制することができるので、これによっても、素子特性が低下するのを抑制することができる。
【0012】
なお、第1の局面では、サブマウントを上記のように構成することによって、ピックアップコレットにより半導体素子に加える加重を小さくした場合でも、半導体素子の接合不具合を抑制することができるので、半導体素子をサブマウント上に接合する際に、半導体素子に応力や歪みなどが加わるのを抑制することができる。このため、これによっても、素子特性が低下するのを抑制することができるとともに、半導体素子の破損を抑制することができる。また、サブマウントを上記のように構成することによって、接合層の厚みを小さくした場合でも、半導体素子の接合不具合を抑制することができるので、接合層の厚みを小さくすることによって、ピックアップコレットにより半導体素子に加重を加えた際に、半導体素子とサブマウントとの間から流れ出す接合材の量を低減することができる。このため、サブマウントの主表面上に接合材が溶け広がるの抑制することができるので、接合材が溶け広がることに起因する種々の不都合を抑制することができる。たとえば、サブマウントの主表面上に接合材が溶け広がることに起因して、ワイヤーボンドを行う領域を確保するのが困難になるという不都合が生じるのを抑制することができる。また、1つの基板上に半導体レーザ光を出射する素子部が2つ形成された、いわゆる2波長半導体レーザ素子などをサブマウント上に接合した場合には、流れ出した接合材によって、一方の素子部と他方の素子部とが電気的に短絡するという不都合が生じるのを抑制することができる。
【0013】
上記第1の局面によるサブマウントにおいて、好ましくは、接合層よりも小さい平面積を有するスペーサ層をさらに備え、スペーサ層が、サブマウント基板と接合層との間に形成されることによって、接合層に段差部が形成される。このように構成すれば、容易に、接合層の主表面に段差部を形成することができるので、長尺化した半導体素子をサブマウント上に接合する場合でも、容易に、半導体素子の接合不具合を抑制することができる。これにより、容易に、半導体素子の素子特性が低下するのを抑制することができる。
【0014】
この発明の第2の局面によるサブマウントは、サブマウント基板と、サブマウント基板の主表面上に形成され、半導体素子を接合するための接合層と、接合層よりも小さい平面積を有するとともに、サブマウント基板と接合層との間に形成されたスペーサ層とを備えている。
【0015】
この第2の局面によるサブマウントでは、上記のように、サブマウント基板と接合層との間に、接合層よりも小さい平面積を有するスペーサ層を形成することによって、接合層の主表面に段差部を形成することができるので、長尺化により反りが生じている半導体素子を接合する際に、その反りに対応するように接合層の所定の領域を上方に突出させることができる。このため、半導体素子の反り部分の直下において接合材の量が少なくなるのを抑制することができる。すなわち、半導体素子を接合層に接触させた際に、半導体素子の反り部分において、接合層と半導体素子との間に生じる隙間が大きくなるのを抑制することができる。これにより、半導体素子の反り部分で接合不具合が生じるのを抑制することができるので、均一な接合状態で半導体素子をサブマウント上に接合することができる。したがって、半導体素子の駆動時に生じた熱を効率良くサブマウントに伝達させることができるので、半導体素子の温度上昇を抑制することができる。その結果、半導体素子の発光特性(素子特性)が低下するのを抑制することができる。
【0016】
また、第2の局面では、サブマウント基板と接合層との間にスペーサ層を形成することによって、接合層の所定領域を上方に突出させることができるので、長尺化した半導体素子のようにピックアップコレットにより均一に加重を加えることが困難な半導体素子であっても、ピックアップコレットにより半導体素子に加重を加えた際に、半導体素子の全面にほぼ均一に加重が加わるようにすることができる。このため、半導体素子の一部に接合不具合が生じるのを抑制することができるので、これによっても、素子特性が低下するのを抑制することができる。
【0017】
なお、第2の局面では、サブマウントを上記のように構成することによって、ピックアップコレットにより半導体素子に加える加重を小さくした場合でも、半導体素子の接合不具合を抑制することができるので、半導体素子をサブマウント上に接合する際に、半導体素子に応力や歪みなどが加わるのを抑制することができる。このため、これによっても、素子特性が低下するのを抑制することができるとともに、半導体素子の破損を抑制することができる。また、サブマウントを上記のように構成することによって、接合層の厚みを小さくした場合でも、半導体素子の接合不具合を抑制することができるので、接合層の厚みを小さくすることによって、ピックアップコレットにより半導体素子に加重を加えた際に、半導体素子とサブマウントとの間から流れ出す接合材の量を低減することができる。このため、サブマウントの主表面上に接合材が溶け広がるの抑制することができるので、接合材が溶け広がることに起因する種々の不都合を抑制することができる。たとえば、サブマウントの主表面上に接合材が溶け広がることに起因して、ワイヤーボンドを行う領域を確保するのが困難になるという不都合が生じるのを抑制することができる。また、1つの基板上に半導体レーザ光を出射する素子部が2つ形成された、いわゆる2波長半導体レーザ素子などをサブマウント上に接合した場合には、流れ出した接合材によって、一方の素子部と他方の素子部とが電気的に短絡するという不都合が生じるのを抑制することができる。
【0018】
上記スペーサ層が形成されたサブマウントにおいて、好ましくは、スペーサ層は、接合層よりも融点が高い材料から構成されている。このように構成すれば、接合層が溶融する温度まで昇温した場合でも、スペーサ層は溶融することなくその形状を維持しておくことができるので、接合層を溶融させた場合でも、スペーサ層上に位置する接合層を上方に突出した状態に維持しておくことができる。このため、長尺化した半導体素子をサブマウント上に接合する場合でも、容易に、半導体素子の接合不具合を抑制することができるので、容易に、半導体素子の素子特性が低下するのを抑制することができる。
【0019】
上記スペーサ層が形成されたサブマウントにおいて、好ましくは、接合層は、共晶系はんだ材から構成されており、スペーサ層は、Pt、Ni、Pd、および、Agからなる群より選択された少なくとも1つの物質を含む材料から構成されている。このように構成すれば、容易に、接合層の主表面に段差部を形成することができるとともに、接合層を溶融させた場合でも、より容易に、スペーサ層上に位置する接合層を上方に突出した状態に維持しておくことができるので、長尺化した半導体素子をサブマウント上に接合する場合でも、より容易に、半導体素子の接合不具合を抑制することができる。これにより、より容易に、半導体素子の素子特性が低下するのを抑制することができる。
【0020】
上記スペーサ層が形成されたサブマウントにおいて、好ましくは、サブマウント基板と接合層との間には、1または2以上のスペーサ層が形成されている。このように構成すれば、スペーサ層の厚み、形状、および、形成位置などを半導体素子の反り量および反り方向などに対応するように設定することにより、さらに容易に、半導体素子の接合不具合を抑制することができるので、さらに容易に、半導体素子の素子特性が低下するのを抑制することができる。
【0021】
この発明の第3の局面における半導体装置は、上記第1および第2の局面によるサブマウントと、サブマウント上に固定された半導体素子とを備える半導体装置である。このように構成すれば、容易に、素子特性の低下を抑制することが可能な半導体装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、半導体素子の接合不具合を抑制することによって、素子特性の低下を抑制することが可能なサブマウント及びそのサブマウントを用いた半導体装置を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態では、半導体装置の一例であるフレームパッケージ型の半導体レーザ装置50に、本発明を適用した場合について説明する。また、本実施形態では、高出力化に対応した長尺形状の半導体レーザ素子20を半導体レーザ装置50に搭載した場合について説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態によるサブマウントを用いた半導体レーザ装置の全体斜視図であり、図2は、図1に示した本発明の一実施形態によるサブマウントを用いた半導体レーザ装置の平面図である。図3は、図1に示した本発明の一実施形態によるサブマウント上に半導体レーザ素子を接合した状態を示す斜視図であり、図4は、図1に示した本発明の一実施形態によるサブマウント上に半導体レーザ素子を接合した状態を示す平面図である。図5〜図8は、図1に示した本発明の一実施形態によるサブマウントおよびサブマウント上に接合される半導体レーザ素子を説明するための図である。まず、図1〜図8を参照して、本発明の一実施形態によるサブマウント10を用いた半導体レーザ装置50について説明する。
【0025】
一実施形態によるサブマウント10を用いた半導体レーザ装置50は、図1〜図3に示すように、フレームパッケージ1と、フレームパッケージ1に搭載されるサブマウント10と、サブマウント10上に接合される半導体レーザ素子20とを備えている。なお、半導体レーザ素子20は、本発明の「半導体素子」の一例である。
【0026】
フレームパッケージ1は、図1および図2に示すように、1つの主フレーム2と、主フレーム2と分離された2つの副フレーム3とから構成されるフレーム4と、主フレーム2および副フレーム3を固定する絶縁性の樹脂部材5とから構成されている。また、フレーム4は、所定の厚みを有する金属製の板状部材をプレス加工することによって形成されている。
【0027】
また、主フレーム2は、図2に示すように、半導体レーザ素子20がサブマウント10を介して装着される素子装着部2aと、電流通路となるリード部2bと、一対の放熱部2cおよび2dとから構成されている。また、リード部2bは、矢印Y方向に延びるように形成されており、素子装着部2aに一体的に連結されている。また、放熱部2cおよび2dは、それぞれ、素子装着部2aの一方側(矢印X1方向)および他方側(矢印X2方向)に、素子装着部2aと一体的に連結されている。また、一対の副フレーム3は、矢印Y方向に延びるとともに、主フレーム2のリード部2bを挟んで、対向するように配置されている。なお、副フレーム3は、主フレーム2のリード部2bと同様、配線用として設けられている。
【0028】
また、樹脂部材5は、図1および図2に示すように、フレーム4の上面と下面とを挟むように、インサート成形などによって形成されている。この樹脂部材5によって、主フレーム2と副フレーム3とが電気的に分離された状態で固定されている。
【0029】
また、半導体レーザ素子20は、半導体基板上に、熱膨張係数の異なる複数の半導体層が積層されることによって構成されており、図4に示すように、平面的に見て、長方形形状(長尺形状)に形成されている。具体的には、半導体レーザ素子20は、長手方向(矢印Y方向)に、約800μm〜約2500μmの長さL2(共振器長)を有しているとともに、短手方向(矢印X方向)に、約250μm〜約1000μmの幅W2を有している。また、半導体レーザ素子20の上面上および下面上には、図5および図6に示すように、それぞれ、上部電極20aおよび下部電極20bが形成されている。この上部電極20aおよび下部電極20bは、それぞれ、Au層から構成されている。さらに、本実施形態による半導体レーザ素子20は、長尺形状に形成されることによって、長手方向(矢印Y方向)に、下に凸となる反りを有している。
【0030】
また、サブマウント10は、図1および図2に示すように、主フレーム2の素子装着部2a上の所定領域に固定されている。
【0031】
ここで、本実施形態では、図7に示すように、サブマウント10は、サブマウント基板11と、サブマウント基板11の上面上および下面上にそれぞれ形成された上部金属膜12および下部金属膜13と、上部金属膜12の上面上に形成された半田層14と、上部金属膜12と半田層14との間に形成されたスペーサ層15とから構成されている。なお、半田層14は、本発明の「接合層」の一例である。
【0032】
また、サブマウント10は、図4に示すように、サブマウント基板11(図7参照)の側端面に沿った方向(矢印Y方向)に、約200μm〜約2500μmの長さL1を有しているとともに、サブマウント基板11(図7参照)の側端面と直交する方向(矢印X方向)に、約500μm〜約1000μmの幅W1を有している。
【0033】
また、図7に示すように、サブマウント10を構成するサブマウント基板11は、AlNから構成されており、約200μm〜約500μmの厚みを有している。また、サブマウント基板11の上面上および下面上にそれぞれ形成された上部金属膜12および下部金属膜13は、サブマウント基板11側から、約0.01μm〜約0.1μmの厚みを有するTi膜(図示せず)と、約0.1μm〜約0.5μmの厚みを有するPt膜(図示せず)と、約0.1μm〜約0.5μmの厚みを有するAu膜(図示せず)とが順次積層されることによって構成されている。
【0034】
また、本実施形態では、図4および図7に示すように、スペーサ層15は、サブマウント10の長手方向(矢印Y方向)の一方端部側における上部金属膜12上の所定領域、および、サブマウント10の長手方向(矢印Y方向)の他方端部側における上部金属膜12上の所定領域にそれぞれ形成されている。すなわち、スペーサ層15は、半導体レーザ素子20をサブマウント10上に載置した際に、半導体レーザ素子20の反り部分(出射端面近傍部分)に対応する位置に形成されている。また、スペーサ層15は、図7に示すように、半導体レーザ素子20の反り量a(図6参照)に対応した厚みb(約150nm〜約500nm)を有している。このスペーサ層15は、半田層14(AuSn)よりも融点および共晶点が高いNi(ニッケル)から構成されている。また、スペーサ層15は、半田層14よりも小さい平面積に形成されている。このようなスペーサ層15は、真空蒸着法やスパッタリング法などの薄膜形成法により形成される。また、スペーサ層15のパターン加工は、マスク成膜法、フォトリソグラフィ法、エッチング法、および、リフトオフ法などを用いて行われる。なお、上記した反り量a(図6参照)に対応したスペーサ層15の厚みb(図7参照)とは、反り量a(図6参照)と同じ厚み以外に、反り量a(図6参照)と異なる厚みも含まれる。
【0035】
また、本実施形態では、半田層14は、共晶系半田材であるAuSn(Au:70wt%程度)から構成されており、約1μm〜約5μmの比較的小さい厚みに形成されている。また、半田層14は、図4および図7に示すように、半導体レーザ素子20の平面積とほぼ同程度の平面積で、サブマウント10の上部金属膜12の所定領域上、および、スペーサ層15上に形成されている。これにより、図7に示すように、溶融前の半田層14の上面(主表面)に、段差部14aが形成される。なお、半田層14は、真空蒸着法やスパッタリング法などの薄膜形成法により形成される。また、半田層14のパターン加工は、マスク成膜法、フォトリソグラフィ法、エッチング法、および、リフトオフ法などを用いて行われる。
【0036】
また、サブマウント10上には、図3および図8に示すように、半田層14bを介して、半導体レーザ素子20が接合されている。これにより、図1に示すように、半導体レーザ素子20が、サブマウント10を介して、フレームパッケージ1に搭載される。なお、図8に示す半田層14bは、半導体レーザ素子20の下部電極20b(Au層、図6参照)と、サブマウント10の半田層14(AuSn、図7参照)とが反応することによって形成されている。
【0037】
図9〜図12は、本発明の一実施形態によるサブマウント上に半導体レーザ素子を接合する方法を示す概略断面図である。次に、図9〜図12を参照して、本発明の一実施形態によるサブマウント10上に半導体レーザ素子20を接合する方法について説明する。
【0038】
まず、図9に示すように、サブマウント10を、ヒータステージ30上に載置する。次に、図10に示すように、ピックアップコレット40によって、半導体レーザ素子20をサブマウント10上に移動させる。そして、ピックアップコレット40を下降して、図11に示すように、半導体レーザ素子20の下部電極20bとサブマウント10の半田層14とを接触させる。
【0039】
続いて、ヒータステージ30により、サブマウント10の半田層14が溶融する温度まで昇温するとともに、半田層14が溶融したタイミングで、図12に示すように、ピックアップコレット40によって、半導体レーザ素子20に加重を加える。この際、半導体レーザ素子20には、約10g〜約50gと比較的小さい加重を加える。そして、ピックアップコレット40によって、半導体レーザ素子20に加重を加えた状態で、ヒータステージ30の加熱を停止し、半田層14bが固化するまで冷却する。なお、半田層14bは、AuSnからなる半田層14(図11参照)とAu層からなる半導体レーザ素子20の下部電極20b(図11参照)とが反応することによって形成されている。このようにして、本発明のサブマウント10上に、半導体レーザ素子20が接合される。
【0040】
本実施形態では、上記のように、サブマウント10の上部金属膜12と半田層14との間に、半田層14よりも小さい平面積を有するスペーサ層15を形成することによって、溶融前の半田層14の上面(主表面)に段差部14aを形成することができるので、長尺化により反りが生じている半導体レーザ素子20を接合する際に、その反りに対応するように半田層41の所定領域を上方に突出させることができる。このため、半導体レーザ素子20の反り部分(出射端面近傍部分)の直下において半田材の量が少なくなるのを抑制することができる。すなわち、半導体レーザ素子20を半田層14に接触させた際に、半導体レーザ素子20の反り部分(出射端面近傍部分)において、半田層14と半導体レーザ素子20との間に生じる隙間が大きくなるのを抑制することができる。これにより、半導体レーザ素子20の反り部分(出射端面近傍部分)で接合不具合が生じるのを抑制することができるので、均一な接合状態で半導体レーザ素子20をサブマウント10上に接合することができる。したがって、半導体レーザ素子20の駆動時に生じた熱を効率良くサブマウント10に伝達させることができるので、半導体レーザ素子20の温度上昇を抑制することができる。特に、半導体レーザ素子20の出射端面近傍部分では、その発熱量が大きいため、出射端面近傍部分での接合不具合を抑制することによって、半導体レーザ素子20の温度上昇を効果的に抑制することができる。その結果、半導体レーザ素子20の発光特性(素子特性)が低下するのを抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態では、サブマウント10の上部金属膜12と半田層14との間にスペーサ層15を形成することによって、半田層14の所定領域を上方に突出させることができるので、ピックアップコレット40により均一に加重を加えることが困難な長尺化した半導体レーザ素子20であっても、ピックアップコレット40により半導体レーザ素子20に加重を加えた際に、半導体レーザ素子20の全面にほぼ均一に加重が加わるようにすることができる。このため、半導体レーザ素子20の一部に接合不具合が生じるのを抑制することができるので、これによっても、素子特性が低下するのを抑制することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、ピックアップコレット40により半導体レーザ素子20に加える加重を小さくした場合でも、半導体レーザ素子20の接合不具合を抑制することができるので、半導体レーザ素子20をサブマウント10上に接合する際に、半導体レーザ素子20に応力や歪みなどが加わるのを抑制することができる。このため、これによっても、素子特性が低下するのを抑制することができるとともに、半導体レーザ素子20の破損を抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態では、半田層14の厚みを小さくした場合でも、半導体レーザ素子20の接合不具合を抑制することができるので、半田層14の厚みを約1μm〜約5μmの比較的小さい厚みに構成することによって、ピックアップコレット40により半導体レーザ素子20に加重を加えた際に、半導体レーザ素子20とサブマウント10の上部金属膜12との間から流れ出す半田材の量を低減することができる。このため、サブマウント10の上部金属膜12の上面(主表面)に半田材が溶け広がるの抑制することができるので、半田材が溶け広がることに起因する種々の不都合を抑制することができる。たとえば、サブマウント10の上部金属膜12の上面(主表面)に半田材が溶け広がることに起因して、ワイヤーボンドを行う領域を確保するのが困難になるという不都合が生じるのを抑制することができる。また、1つの基板上に半導体レーザ光を出射する素子部が2つ形成された、いわゆる2波長半導体レーザ素子などをサブマウント10上に接合した場合には、流れ出した半田材によって、一方の素子部と他方の素子部とが電気的に短絡するという不都合が生じるのを抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態では、半田層14を、AuSnから構成するとともに、スペーサ層15を、Ni(ニッケル)から構成することによって、容易に、半田層14の上面(主表面)に段差部14aを形成することができるとともに、半田層14を溶融させた場合でも、容易に、スペーサ層15上に位置する半田層14を上方に突出した状態に維持しておくことができるので、長尺化した半導体レーザ素子20をサブマウント10上に接合する場合でも、容易に、半導体レーザ素子20の接合不具合を抑制することができる。これにより、容易に、半導体レーザ素子20の素子特性が低下するのを抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態では、半導体レーザ素子20を、サブマウント10を介して、フレームパッケージ1に搭載することによって、容易に、素子特性の低下を抑制することが可能な半導体レーザ装置50を得ることができる。
【0046】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0047】
たとえば、上記実施形態では、半導体装置の一例として、フレームパッケージ型の半導体レーザ装置に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、キャンパッケージ型の半導体レーザ装置に本発明を適用してもよい。また、サブマウントを用いる半導体装置であれば、半導体レーザ装置以外の半導体装置に本発明を適用してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、長尺形状を有する半導体レーザ素子をサブマウント上に接合した例を示したが、本発明はこれに限らず、長尺形状以外の形状を有する半導体レーザ素子をサブマウント上に接合してもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、長手方向に下に凸となる反りを有する半導体レーザ素子を、サブマウント上に接合した例を示したが、本発明はこれに限らず、図13に示すように、長手方向(矢印Y方向)に上に凸となる反りを有する半導体レーザ素子120をサブマウント10上に接合してもよい。この場合でも、図14に示すように、上部金属膜12の中央部の領域にスペーサ層115を形成することによって、半田層14の中央部の領域が上方に突出するように構成すれば、本発明の効果を得ることが可能となる。また、短手方向に反りを有する半導体レーザ素子、および、反りを有しない半導体レーザ素子などをサブマウント上に接合してもよい。この場合でも、スペーサ層の厚み、形状、形成位置などを種々変更することによって、本発明の効果を得ることが可能となる。
【0050】
また、上記実施形態では、サブマウント基板をAlNから構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、サブマウント基板を、AlN以外のSiC、Si、Cuなどの熱伝導性の優れたセラミクス、金属材料などから構成してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、サブマウント基板の上部金属膜および下部金属膜を、それぞれ、サブマウント基板側からTi膜と、Pt膜と、Au膜とを順次積層することによって構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、上部金属膜および下部金属膜は、上記した材料以外の材料から構成するようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、半導体レーザ素子をサブマウントに接合するための半田層を、共晶系はんだ材であるAuSnから構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、上記半田層をAuSn以外の共晶系はんだ材から構成してもよいし、共晶系以外のはんだ材から構成してもよい。また、半導体レーザ素子の接合に、半田以外の接合材(たとえば、Agペーストなど)を用いてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、スペーサ層をNiから構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、Ni以外のPt(白金)、Pd(パラジウム)、および、Ag(銀)などから構成してもよい。また、スペーサ層を、Ni、Pt、Pd、および、Agの少なくとも1つの物質を含む材料から構成してもよい。さらに、スペーサ層を、上記した材料以外の材料から構成してもよいし、スペーサ層上に形成される半田層と同じ材料から構成してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、半田層が溶融する前に、半導体レーザ素子の下部電極とサブマウントの半田層とを接触させた例を示したが、本発明はこれに限らず、図15に示すように、半田層14が溶融した後に、半導体レーザ素子20の下部電極20bとサブマウント10の半田層14とを接触させるようにしてもよい。この場合でも、スペーサ層15によって、半田層14の所定領域を上方に突出させることができるので、半導体レーザ素子20の接合不具合を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態によるサブマウントを用いた半導体レーザ装置の全体斜視図である。
【図2】図1に示した本発明の一実施形態によるサブマウントを用いた半導体レーザ装置の平面図である。
【図3】図1に示した本発明の一実施形態によるサブマウント上に半導体レーザ素子を接合した状態を示す斜視図である。
【図4】図1に示した本発明の一実施形態によるサブマウント上に半導体レーザ素子を接合した状態を示す平面図である。
【図5】図1に示した本発明の一実施形態によるサブマウント上に接合される半導体レーザ素子を示した斜視図である。
【図6】図5の200−200線に沿った断面図である。
【図7】図1に示した本発明の一実施形態によるサブマウントの断面図である。
【図8】図3の100−100線に沿った断面図である。
【図9】本発明の一実施形態によるサブマウント上に半導体レーザ素子を接合する方法を示す概略断面図である。
【図10】本発明の一実施形態によるサブマウント上に半導体レーザ素子を接合する方法を示す概略断面図である。
【図11】本発明の一実施形態によるサブマウント上に半導体レーザ素子を接合する方法を示す概略断面図である。
【図12】本発明の一実施形態によるサブマウント上に半導体レーザ素子を接合する方法を示す概略断面図である。
【図13】本発明の変形例によるサブマウント上に半導体レーザ素子を接合した状態を示す断面図である。
【図14】本発明の変形例によるサブマウントを示した断面図である。
【図15】図1に示した本発明の一実施形態によるサブマウント上に半導体レーザ素子を接合する他の方法を示す概略断面図である。
【図16】従来のサブマウント上に半導体素子を接合する方法を示す概略断面図である。
【図17】従来のサブマウント上に半導体素子を接合する方法を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 フレームパッケージ
2 主フレーム
3 副フレーム
4 フレーム
5 樹脂部材
10 サブマウント
11 サブマウント基板
12 上部金属膜
13 下部金属膜
14 半田層(接合層)
14a 段差部
15 スペーサ層
20 半導体レーザ素子(半導体素子)
20a 上部電極
20b 下部電極
30 ヒータステージ
40 ピックアップコレット
50 半導体レーザ装置(半導体装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブマウント基板と、
前記サブマウント基板の主表面上に形成され、半導体素子を接合するための接合層とを備え、
溶融前の前記接合層には、段差部が形成されていることを特徴とする、サブマウント。
【請求項2】
前記接合層よりも小さい平面積を有するスペーサ層をさらに備え、
前記スペーサ層が、前記サブマウント基板と前記接合層との間に形成されることによって、前記接合層に前記段差部が形成されることを特徴とする、請求項1に記載のサブマウント。
【請求項3】
サブマウント基板と、
前記サブマウント基板の主表面上に形成され、半導体素子を接合するための接合層と、
前記接合層よりも小さい平面積を有するとともに、前記サブマウント基板と前記接合層との間に形成されたスペーサ層とを備えることを特徴とする、サブマウント。
【請求項4】
前記スペーサ層は、前記接合層よりも融点が高い材料から構成されていることを特徴とする、請求項2または3に記載のサブマウント。
【請求項5】
前記接合層は、共晶系はんだ材から構成されており、
前記スペーサ層は、Pt、Ni、Pd、および、Agからなる群より選択された少なくとも1つの物質を含む材料から構成されていることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載のサブマウント。
【請求項6】
前記サブマウント基板と前記接合層との間には、1または2以上の前記スペーサ層が形成されていることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか1項に記載のサブマウント。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のサブマウントと、
前記サブマウント上に固定される半導体素子とを備えることを特徴とする、半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−205326(P2008−205326A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41630(P2007−41630)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】