説明

サポートバー及び基板収納カセット

【課題】 剛性の確保及び振動減衰特性の向上を図ることができるサポートバー、及びそのようなサポートバーを備える基板収納カセットを提供する。
【解決手段】 サポートバー10においては、繊維強化プラスチックからなる内側層11と外側層13との間に、内側層11の周方向において連続し且つ基端10aから先端10bに渡って延在するように制振弾性層12が配置されている。これにより、振動減衰時間の短縮化等、振動減衰特性の向上を図ることができる。しかも、繊維強化プラスチックからなる内側層11が円管状であり、繊維強化プラスチックからなる内側層11と外側層13とで制振弾性層12が挟まれている。これにより、制振弾性層12の適用に起因した剛性の低下を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を支持するためのサポートバー、及び基板を収納するための基板収納カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶ディスプレイ(LCD)の製造工程では、工程間においてガラス基板が基板収納カセット内の複数段の収納部に一時的に収納される場合がある。このような基板収納カセットとして、基端を固定端とし且つ先端を自由端として水平方向に延在する複数本のサポートバーによって1枚のガラス基板が収納部ごとに支持されるものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−340480号公報
【特許文献2】特開2007−196615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような基板収納カセットにあっては、ガラス基板の収納枚数を増加させる観点から、各収納部の高さが極力抑えられる傾向にある。そのような傾向下において、各収納部に対するガラス基板の搬入及び搬出を素早く行って生産効率を向上させるためには、サポートバーの剛性の確保及び振動減衰特性の向上がより強く望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、剛性の確保及び振動減衰特性の向上を図ることができるサポートバー、及びそのようなサポートバーを備える基板収納カセットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るサポートバーは、基端を固定端とし且つ先端を自由端として水平方向に延在した状態で基板を支持するためのサポートバーであって、繊維強化プラスチックからなり、基端から先端に渡って延在する円管状の内側層と、少なくとも内側層における基端側の部分の上側及び下側に配置された制振弾性層と、繊維強化プラスチックからなり、制振弾性層を覆うように内側層の外側に配置された外側層と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このサポートバーでは、少なくとも固定端となる基端側の部分において、繊維強化プラスチックからなる内側層と外側層との間に、制振弾性層が配置されている。これにより、振動減衰時間の短縮化等、振動減衰特性の向上を図ることができる。しかも、繊維強化プラスチックからなる内側層が円管状であり、繊維強化プラスチックからなる外側層が制振弾性層を覆うように内側層の外側に配置されている。これにより、制振弾性層の適用に起因した剛性の低下を防止することができる。従って、このサポートバーによれば、剛性の確保及び振動減衰特性の向上を図ることが可能となる。なお、制振弾性層は、繊維強化プラスチックに比べ、柔軟な材料であることが好ましく、特にゴム、エラストマー等の弾性材料からなる層である。
【0008】
本発明に係るサポートバーにおいては、制振弾性層は、内側層の周方向において連続していることが好ましい。また、制振弾性層は、基端から先端に渡って延在していることが好ましい。更に、制振弾性層の積層数は、先端側よりも基端側のほうが多くなっていることが好ましい。これらの構成によれば、より一層の振動減衰特性の向上を図ることが可能となる。なお、制振弾性層の積層数は、先端側で0(零)層の場合を含む。
【0009】
本発明に係るサポートバーにおいては、複数層の制振弾性層が積層される場合、制振弾性層は、繊維強化プラスチックからなる中間層を介して積層されていることが好ましい。この構成によれば、より一層の振動減衰特性の向上を図るために複数層の制振弾性層が積層されても、剛性の確保を図ることが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る基板収納カセットは、基板を収容するための筐体と、筐体内に複数本設置された上記サポートバーと、を備えることを特徴とする。この基板収納カセットにおいては、上述したように、サポートバーの剛性の確保及び振動減衰特性の向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、剛性の確保及び振動減衰特性の向上を図ることができるサポートバー、及びそのようなサポートバーを備える基板収納カセットを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る基板収納カセットの第1実施形態の斜視図である。
【図2】本発明に係るサポートバーの第1実施形態の側面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿っての断面図である。
【図4】本発明に係るサポートバーの第2実施形態の側面図である。
【図5】図4のV−V線に沿っての断面図である。
【図6】図4のVI−VI線に沿っての断面図である。
【図7】本発明に係るサポートバーの第3実施形態の側面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿っての断面図である。
【図9】図7のIX−IX線に沿っての断面図である。
【図10】比較例の経過時間とたわみとの関係を示すグラフである。
【図11】実施例1の経過時間とたわみとの関係を示すグラフである。
【図12】実施例2の経過時間とたわみとの関係を示すグラフである。
【図13】実施例3の経過時間とたわみとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
【0014】
図1に示されるように、基板収納カセット1は、基板Sを収容するための直方体箱状の筐体2を備えている。筐体2の一側壁には、筐体2内に対する基板Sの搬入及び搬出を行うための開口2aが形成されている。筐体2内には、複数段(例えば20〜30段)の収納部3が設けられている。この基板収納カセット1は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)の製造工程において使用され、基板Sとしてガラス基板がロボットハンドによって各収納部3に一時的に収納される。
【0015】
各収納部3には、複数本(例えば3本)のサポートバー10、複数本(例えば3本)のサイドバー4及び複数本(例えば3本)のサイドバー5が設置されている。これにより、各収納部3においては、複数本のサポートバー10、複数本のサイドバー4及び複数本のサイドバー5によって1枚の基板Sが水平に支持される。
【0016】
サポートバー10は、開口2aに対向する筐体2の背面に片持ち状態で固定され、水平方向に延在している。すなわち、サポートバー10は、基端10aを固定端とし且つ先端10bを自由端として水平方向に延在した状態で基板Sを支持する。サポートバー10の先端10bは、開口2aの近傍に至っている。
【0017】
サイドバー4は、開口2aに対向する背面に垂直な筐体2の一方の側面に片持ち状態で固定され、水平方向に延在している。すなわち、サイドバー4は、基端4aを固定端とし且つ先端4bを自由端として水平方向に延在した状態で基板Sの一方の縁部を支持する。サイドバー4の先端4bは、一方のサポートバー10の近傍に至っている。
【0018】
サイドバー5は、開口2aに対向する背面に垂直な筐体2の他方の側面に片持ち状態で固定され、水平方向に延在している。すなわち、サイドバー5は、基端5aを固定端とし且つ先端5bを自由端として水平方向に延在した状態で基板Sの他方の縁部を支持する。サイドバー5の先端5bは、他方のサポートバー10の近傍に至っている。
【0019】
上述したサポートバー10の構成について、より詳細に説明する。なお、サイドバー4,5についても、サポートバー10と同様の構成を採用することができる。
【0020】
図2に示されるように、サポートバー10は、先端10bに向かって先細りとなるテーパ形状の中空パイプとなっている。これにより、基板Sが載置されてサポートバー10の先端10bが下方に若干たわんだとしても、上下方向にて隣り合う収納部3間においてサポートバー10の先端10bの間隔が十分に維持される。なお、図1には示されていないが、開口2aに対向する筐体2の背面には、円柱状の突起部材が立設されており、その突起部材がサポートバー10の基端10a側の端部に挿入され、接着等によって互いに固定される。
【0021】
図2及び3に示されるように、サポートバー10は、基端10aから先端10bに渡って延在する円管状(換言すれば、円筒状)の内側層11を備えている。内側層11は、基端10aから先端10bに渡って延在する円管状の制振弾性層12によって覆われている。更に、制振弾性層12は、基端10aから先端10bに渡って延在する円管状の外側層13によって覆われており、外側層13の上側及び下側は、基端10aから先端10bに渡って延在する断面円弧状の外側層14によって覆われている。つまり、制振弾性層12は、内側層11の周方向において連続し且つ基端10aから先端10bに渡って延在している。また、外側層13は、制振弾性層12を覆うように内側層11の外側に配置されている。なお、円弧状の外側層14の断面円周方向の長さは、円周のおおむね1/4に相当する長さ、すなわち角度ではおおむね90°に相当する長さとなっている。
【0022】
内側層11及び外側層13,14は、GFRP(glass fiber reinforced plastics)やCFRP(carbon fiber reinforced plastics)等の繊維強化プラスチックからなり、1枚又は複数枚(例えば、内側層11については8枚、外側層13については1枚、外側層14については3枚)のプリプレグが積層されることにより構成されている。また、制振弾性層12は、繊維強化プラスチックに比べ、柔軟な材料であることが好ましく、特にゴム、エラストマー等の弾性材料からなる層である。制振弾性層の貯蔵弾性率としては、0.1〜500MPa、好ましくは0.1〜100MPa、更に好ましくは0.1〜50MPaであることが望ましい。また、制振弾性層としては、炭素繊維プリプレグからCFRPへの転換を熱硬化により行うことから、その際の熱に対しても安定な材料を使用することが好ましい。更に、制振弾性層は、CFRPのマトリックス樹脂であるエポキシ樹脂材との接着性に優れた材料であることが好ましい。このような観点から、柔軟性樹脂材料としては、好ましくはスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)等のゴムや、柔軟鎖を持つポリマーであるゴム、エラストマー等を添加することにより、弾性率を低くしたエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等、繊維強化プラスチックに比べ柔軟な材料からなる。
【0023】
以上説明したように、サポートバー10においては、繊維強化プラスチックからなる内側層11と外側層13との間に、内側層11の周方向において連続し且つ基端10aから先端10bに渡って延在するように制振弾性層12が配置されている。これにより、振動減衰時間の短縮化等、振動減衰特性の向上を図ることができる。しかも、繊維強化プラスチックからなる内側層11が円管状であり、繊維強化プラスチックからなる内側層11と外側層13とで制振弾性層12が挟まれている。これにより、制振弾性層12の適用に起因した剛性の低下を防止することができる。従って、サポートバー10によれば、剛性の確保及び振動減衰特性の向上を図ることが可能となる。
[第2実施形態]
【0024】
第2実施形態の基板収納カセットは、第1実施形態の基板収納カセット1と同様の構成であり、第2実施形態のサポートバー20は、制振弾性層12が基端10aから先端10bに渡って延在していない点で第1実施形態のサポートバー10と相違している。すなわち、図4に示されるように、サポートバー20は、先端20bに向かって先細りとなるテーパ形状の中空パイプとなっており、基端20aから全長の1/3までの基端側部分21と、先端20bから全長の2/3までの先端側部分22とは、互いに異なる積層構造を有している。
【0025】
サポートバー20の基端側部分21では、図4及び5に示されるように、円管状の内側層11が円管状の制振弾性層12によって覆われており、制振弾性層12が円管状の外側層13によって覆われている。外側層13の上側及び下側は、断面円弧状の外側層14によって覆われている。一方、サポートバー20の先端側部分22では、図4及び6に示されるように、基端20aから先端20bに渡って延在する円管状の内側層11が、基端20aから先端20bに渡って延在する円管状の外側層13によって直接覆われている。外側層13の上側及び下側は、基端20aから先端20bに渡って延在する断面円弧状の外側層14によって覆われている。
【0026】
つまり、制振弾性層12は、内側層11における基端20a側の部分のみに配置されており、外側層13は、制振弾性層12を覆うように内側層11の外側に配置されている。また、制振弾性層12の積層数は、基端側部分21で1層、先端側部分22で0(零)層というように、先端20b側よりも基端20a側のほうが多くなっている。
【0027】
以上のように構成されたサポートバー20においては、内側層11における基端20a側の部分を覆うように(すなわち、内側層11の周方向において連続するように)制振弾性層12が配置されている。これにより、振動減衰時間の短縮化等、振動減衰特性の向上を図ることができる。しかも、繊維強化プラスチックからなる内側層11が円管状であり、繊維強化プラスチックからなる内側層11と外側層13とで制振弾性層12が挟まれている。これにより、制振弾性層12の適用に起因した剛性の低下を防止することができる。従って、サポートバー20によれば、剛性の確保及び振動減衰特性の向上を図ることが可能となる。
[第3実施形態]
【0028】
第3実施形態の基板収納カセットは、第1実施形態の基板収納カセット1と同様の構成であり、第3実施形態のサポートバー30は、制振弾性層12が基端30a側で複数層となっている点で第1実施形態のサポートバー10と相違している。すなわち、図7に示されるように、サポートバー30は、先端30bに向かって先細りとなるテーパ形状の中空パイプとなっており、基端30aから全長の1/3までの基端側部分31と、先端30bから全長の2/3までの先端側部分32とは、互いに異なる積層構造を有している。
【0029】
サポートバー30の基端側部分31では、図7及び8に示されるように、円管状の内側層11が円管状の制振弾性層12によって覆われており、制振弾性層12が円管状の中間層15によって覆われている。更に、中間層15が円管状の制振弾性層12によって覆われており、制振弾性層12が円管状の外側層13によって覆われている。外側層13の上側及び下側は、断面円弧状の外側層14によって覆われている。一方、サポートバー30の先端側部分32では、図7及び9に示されるように、基端30aから先端30bに渡って延在する円管状の内側層11が、基端30aから先端30bに渡って延在する円管状の制振弾性層12によって覆われており、制振弾性層12が、基端30aから先端30bに渡って延在する円管状の中間層15によって覆われている(すなわち、内側層11、制振弾性層12及び中間層15が基端30aから先端30bに渡って延在している)。更に、先端側部分32では、中間層15が、基端30aから先端30bに渡って延在する円管状の外側層13によって直接覆われている。外側層13の上側及び下側は、基端30aから先端30bに渡って延在する断面円弧状の外側層14によって覆われている。ここで、中間層15は、内側層11及び外側層13と同様に、繊維強化プラスチックからなり、1枚又は複数枚(例えば4枚)のプリプレグが積層されることにより構成されている。
【0030】
つまり、複数層の制振弾性層12は、繊維強化プラスチックからなる中間層15を介して積層されており、外側層13は、制振弾性層12を覆うように内側層11の外側に配置されている。また、制振弾性層12の積層数は、基端側部分31で2層、先端側部分32で1層というように、先端30b側よりも基端30a側のほうが多くなっている。
【0031】
以上のように構成されたサポートバー30においては、繊維強化プラスチックからなる内側層11と中間層15との間に、内側層11の周方向において連続し且つ基端30aから先端30bに渡って延在するように制振弾性層12が配置されている。更に、サポートバー30の基端側部分31では、繊維強化プラスチックからなる中間層15と外側層13の間に、内側層11の周方向において連続するように制振弾性層12が配置されている。このように、先端30b側よりも基端30a側のほうが制振弾性層12の積層数が多くなっていることにより、振動減衰時間の短縮化等、振動減衰特性の向上を図ることができる。しかも、サポートバー30の基端側部分31では、繊維強化プラスチックからなる内側層11が円管状であり、繊維強化プラスチックからなる内側層11、中間層15及び外側層13によって制振弾性層12が挟まれている。更に、サポートバー30の先端側部分32では、繊維強化プラスチックからなる内側層11が円管状であり、繊維強化プラスチックからなる内側層11と中間層15とで制振弾性層12が挟まれている。これにより、制振弾性層12の適用に起因した剛性の低下を防止することができる。従って、サポートバー30によれば、剛性の確保及び振動減衰特性の向上を図ることが可能となる。
【0032】
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではない。例えば、サポートバーは、テーパ形状のものに限定されず、基端から先端に渡って同等の外径を有するものであってもよい。また、制振弾性層は、内側層の周方向において連続しているものに限定されず、少なくとも内側層における基端側の部分の上側及び下側に配置されたものであればよい。
[実施例]
【0033】
比較例として、制振弾性層12が存在しない点を除いて第1実施形態のサポートバー10と同様の構成を有するサポートバーを用意した。具体的な仕様は表1の通りであり、次のように、比較例のサポートバーを製造した。
【0034】
テーパを有する中空円形パイプの製造に際して、まず先端側直径21mm、手元側直径34mm、長さ2380mmのスチール製マンドレルを用意した。そして、ガラス繊維クロスにエポキシ樹脂を含浸したガラス繊維プリプレグ(株式会社ダイトー製、商品名:H150-EP)を用いて、マンドレルに8層巻き付け、肉厚1mmの内側層を形成した。ガラス繊維の配向方向は、サポートバーの長手方向および円周方向とおおむね一致するようにした。
【0035】
続いて、上記内側層の外側に、炭素繊維を一方向に引き揃えながらエポキシ樹脂を含浸させ、さらにガラススクリムクロスを貼り合わせた炭素繊維プリプレグ(新日本石油株式会社製、商品名:E6026E-31K3)を1層巻き付け、肉厚0.25mmの全周の外側層を形成した。炭素繊維の配向方向は、サポートバーの長手方向とおおむね一致するようにした。
【0036】
更に、上記全周の外側層の上下部分、円周の1/4に相当する長さ、すなわち角度では90°に相当する長さの部分に配置する上下の外側層として、炭素繊維プリプレグ(新日本石油株式会社製、商品名:E6026E-31K3)を3層積層したプリプレグを配置することにより、上下の外側層、いずれも肉厚0.75mmの層を形成した。炭素繊維の配向方向は、サポートバーの長手方向とおおむね一致するようにした。
【0037】
最後に、幅10mmの熱収縮テープ(ポリプロピレン製)を巻きつけることによりプリプレグを固定し、内側層、全周の外側層および上下の外側層を同時に加熱硬化させ、硬化後に芯材を抜き取ることにより、手元側長径(鉛直方向)38mm、先端側長径(鉛直方向)25mm、手元側短径(水平方向)36.5mm、先端側短径(水平方向)23.5mmの楕円パイプ状のサポートバーを得た。
【表1】

【0038】
実施例1として、第1実施形態のサポートバー10と同様の構成を有するサポートバーを用意した。具体的な仕様は表2の通りであり、次のように、実施例1のサポートバーを製造した。
【0039】
ガラス繊維プリプレグ(株式会社ダイトー製、商品名:H150-EP)を用いて、マンドレルに8層巻き付け、肉厚1mmの内側層を形成した。ガラス繊維の配向方向は、サポートバーの長手方向及び円周方向とおおむね一致するようにした。その後、その外側に制振弾性層(アスク工業株式会社製、商品名:アスナーシート、スチレンブタジエンゴム製、厚さ0.12mm)を1層巻き付けた。
【0040】
続いて、上記制振弾性層の外側に、炭素繊維プリプレグ(新日本石油株式会社製、商品名:E6026E-31K3)を1層巻き付け、肉厚0.25mmの全周の外側層を形成した。炭素繊維の配向方向は、サポートバーの長手方向とおおむね一致するようにした。
【0041】
更に、上記全周の外側層の上下部分、円周の1/4に相当する長さ、すなわち角度では90°に相当する長さの部分に配置する上下の外側層として、炭素繊維プリプレグ(新日本石油株式会社製、商品名:E6026E-31K3)を3層積層したプリプレグを配置することにより、上下の外側層(いずれも肉厚0.75mmの層)を形成した。炭素繊維の配向方向は、サポートバーの長手方向とおおむね一致するようにした。
【0042】
最後に、幅10mmの熱収縮テープ(ポリプロピレン製)を巻きつけることによりプリプレグを固定し、内側層、制振弾性層、全周の外側層および上下の外側層を同時に加熱硬化させ、硬化後に芯材を抜き取ることにより、手元側長径(鉛直方向)38.24mm、先端側長径(鉛直方向)25.24mm、手元側短径(水平方向)36.74mm、先端側短径(水平方向)23.74mmの楕円パイプ状のサポートバーを得た。
【表2】

【0043】
実施例2として、第2実施形態のサポートバー20と同様の構成を有するサポートバーを用意した。具体的な仕様は表3及び4の通りである。実施例2において、基端20aから全長の1/3までの基端側部分21(表3)には、実施例1と同様に制振弾性層を配置しているが、先端20bから全長の2/3までの先端側部分22(表4)は、比較例と同様の積層構成である(すなわち制振弾性層を持たない)。
【表3】


【表4】

【0044】
実施例3として、第3実施形態のサポートバー30と同様の構成を有するサポートバーを用意した。具体的な仕様は表5及び6の通りである。実施例3は、実施例1と実施例2とを組み合わせた形態となっている。すなわち、まず、基端30aから先端30bまで制振弾性層を1層配置していることに加えて、基端30aから全長の1/3までの基端側部分31に制振弾性層を1層追加している。つまり、基端30aから全長の1/3までの基端側部分31には制振弾性層が2層、先端30bから全長の2/3までの先端側部分32には、制振弾性層が1層配置されていることになる。
【表5】


【表6】

【0045】
表1〜4において、配向角度とは、プリプレグ中の繊維がサポートバーの長手方向に対してなす角度である。そして、0/90とは、配向角度が0°のプリプレグと配向角度が90°のプリプレグとを交互に積層したことを意味する。
【0046】
なお、サポートバーの積層構成として、炭素繊維プリプレグ(例えば、新日本石油株式会社製、商品名:E6026E-31K3)のみを使用する場合もある。また、上下の外側層を用いず、すなわち真円状断面を有する場合もある。更に、制振弾性層を、上下の外側層の層間に配置する、すなわち、サポートバーの上下部分のみ、円周方向の長さでおおむね1/4に相当する部分のみに配置する構造としてもよい。
【0047】
以上のように構成された比較例及び実施例1〜3のサポートバーの先端に初期荷重1.8kgを付与し、その初期荷重を除荷した後の減衰自由振動波形を計測した。その結果、比較例では、図10に示されるように、初期荷重除荷後15秒経過しても、±5mmの振動があった。それに対し、実施例1では、図11に示されるように、初期荷重除荷後10秒経過した時点で、±1mm以下の振動に収束した。また、実施例2では、図12に示されるように、初期荷重除荷後15秒経過した時点で、±2mm以下の振動に収束した。更に、また、実施例3では、図13に示されるように、初期荷重除荷後5秒経過した時点で、±5mm以下の振動に収束した。これらの結果から、少なくとも内側層11における基端10a,20a,30a側の部分に配置された制振弾性層12の存在が、振動減衰時間の短縮化等、振動減衰特性の向上に大きく寄与していることが分かった。
【0048】
なお、サポートバーの肉厚0.5mm〜1.5mmに対し、制振弾性層の厚さ0.1mm〜0.2mmというように、サポートバーの肉厚に対する制振弾性層の厚さは6.7〜40%が好ましい。
【符号の説明】
【0049】
1…基板収納カセット、2…筐体、10,20,30…サポートバー、10a,20a,30a…基端、10b,20b,30b…先端、11…内側層、12…制振弾性層、13…外側層、15…中間層、S…基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端を固定端とし且つ先端を自由端として水平方向に延在した状態で基板を支持するためのサポートバーであって、
繊維強化プラスチックからなり、前記基端から前記先端に渡って延在する円管状の内側層と、
少なくとも前記内側層における前記基端側の部分の上側及び下側に配置された制振弾性層と、
繊維強化プラスチックからなり、前記制振弾性層を覆うように前記内側層の外側に配置された外側層と、を備えることを特徴とするサポートバー。
【請求項2】
前記制振弾性層は、前記内側層の周方向において連続していることを特徴とする請求項1記載のサポートバー。
【請求項3】
前記制振弾性層は、前記基端から前記先端に渡って延在していることを特徴とする請求項1又は2記載のサポートバー。
【請求項4】
前記制振弾性層の積層数は、前記先端側よりも前記基端側のほうが多くなっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のサポートバー。
【請求項5】
複数層の前記制振弾性層が積層される場合、前記制振弾性層は、繊維強化プラスチックからなる中間層を介して積層されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のサポートバー。
【請求項6】
基板を収容するための筐体と、
前記筐体内に複数本設置された請求項1〜5のいずれか一項記載のサポートバーと、を備えることを特徴とする基板収納カセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−109027(P2011−109027A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265373(P2009−265373)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】