説明

サーモアクチュエータ付き蝶番およびこれを用いたサーモアクチュエータ付き換気装置

【課題】 換気口を開閉する換気装置に用いるサーモアクチュエータ付き蝶番を、簡易型構造でコンパクトに構成し、またサーモアクチュエータの小さい動きで回動させる。
【解決手段】 サーモアクチュエータ付き蝶番10は、支軸11により相対的に回動可能に軸支される2枚の蝶番部材12,13と、蝶番部材に一方向への回動習性を与えるばね手段14と、温度変化に伴い作動し蝶番部材をばね手段の付勢力に抗して回動させるサーモアクチュエータ20を備える。サーモアクチュエータには、その進退動作に伴って直線運動するロッド部材34と、これに係合して直線運動を回転運動に変換するとともに2枚の蝶番部材をばね手段の付勢力に抗して回動させる蝶番係合部44,44を有するレバー41とが付設される。そして、レバーの蝶番係合部が、2枚の蝶番部材の基端部側部に形成した被係合面17,18に係合することで、蝶番部材が他方向に回動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度変化に伴い作動するサーモアクチュエータの進退動作により2枚の蝶番部材を相対的に回動動作させるサーモアクチュエータ付き蝶番に関し、特に建物の壁面等に設けた換気口を外気温度あるいは室内温度等に応じて開閉動作させるための換気装置の駆動部に用いて好適なサーモアクチュエータ付き蝶番、およびこれを用いたサーモアクチュエータ付き換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば温度変化に伴って開口を開閉する蓋を取り付けるために用いられる蝶番において、周囲温度が所定値以下になると、前記蓋が蝶番に備えたスプリングの付勢力で閉じ、周囲温度が所定値以上になると前記蓋がサーモアクチュエータのピストンの前進により開くようにした構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような従来のサーモアクチュエータ付き蝶番によれば、温度変化に伴うサーモアクチュエータのピストンの進退動作により蓋が開閉されるため、蓋の開度を周囲温度変化に応じて、低温時には閉じ、温度上昇に伴って開くことができるので、たとえば建物の換気装置等に採用したものが知られている。
【0004】
ところで、上述した建物の換気装置等においては、換気口の開度を任意に調整できることが望まれており、また火災に対しての対策も必要となっている。
たとえば、建物の天井に設けられた通気口に対して、温度ヒューズによって弁体を繋ぎ止めた構造をもつ防火ダンパを設け、異常温度を検出すると温度ヒューズが切れて弁体を解放して通気口を全閉することで、火災時の延焼を防ぐようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、ダクト内にダンパを回動可能に設け、これを形状記憶合金部材で係止する構造とし、異常温度を検出すると形状記憶合金の長さが短くなり、ダンパを保持していた係止が外れてダクトが全閉状態となるものもある(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特許第3172903号公報
【特許文献2】実開昭64−9664号公報
【特許文献3】実開昭61−34044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1のサーモアクチュエータ付き蝶番において、開度が大きいほど、一対の蝶番部材のうち回動する蝶番部材の占有するスペースは大きい。そこで、省スペース化を達成するために必要な開度だけ開くような蝶番が望まれ、そのために回転角度(開閉量)を規制する機能を持たせた構造のものも知られている。しかし、サーモアクチュエータの組込み部やそのピストンの動きとの関連もあり、簡単には適用できないものであった。
【0008】
また、従来この種の蝶番において、回転角度の規制機能を付加すると、サーモアクチュエータの組込み構造に注意が必要となる。すなわち、サーモアクチュエータが、ピストンを所定量以上に押出したときに、蝶番部材を必要以上に動作させないようなオーバリフト防止機構を付加する必要がある。これは、蝶番を構成する各部品、さらに該蝶番を取り付けた蓋体などの損傷を防ぐうえで必要である。
さらに、サーモアクチュエータは温度上昇に伴いピストンを押し出すが、オーバーリフト防止機能がないと、回転を規制されること等によりピストンの動きが規制され、これによりサーモアクチュエータ内部に過大な圧力が発生し、サーモアクチュエータを構成するピストンの折損やダイヤフラムの損傷を引き起こし、いわゆるサーモアクチュエータの破損を招いてしまうおそれがある。
【0009】
また、上述したサーモアクチュエータ付き蝶番によれば、上述した不具合を一掃したとしても、上記の防火対策を講じるうえでは問題がある。すなわち、特許文献2、特許文献3にあるように、温度ヒューズや形状記憶合金を用いた専用の防火構造を別個に設けるものでは、構成部品点数が多くなり、構造も複雑となりコスト高を招くことになる。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、換気口を開閉する換気装置等に用いるサーモアクチュエータ付き蝶番を、簡易型構造でコンパクトに構成し、またサーモアクチュエータの小さい動きで回動動作させることが可能となるように構成したサーモアクチュエータ付き蝶番およびこれを用いたサーモアクチュエータ付き換気装置を得ることを目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、蝶番部材を所要の状態で回動動作させることができるとともに、その回転量を任意の特性をもって調整する機能やオーバリフト防止機能も備え、また火災に対しての防火機能も備え、各部にかかる応力を吸収する構造を採ることで、機械的強度を確保し耐久性を向上させることができる簡易型構造をもつサーモアクチュエータ付き蝶番およびこれを用いたサーモアクチュエータ付き換気装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係るサーモアクチュエータ付き蝶番は、支軸により相対的に回動可能に軸支される2枚の蝶番部材と、前記支軸上に設けられ前記蝶番部材に一方向への回動習性を与えるばね手段と、温度変化に伴い作動することにより前記蝶番部材を前記ばね手段の付勢力に抗して回動動作させるサーモアクチュエータとを備えたサーモアクチュエータ付き蝶番において、前記サーモアクチュエータの進退動作に伴って直線運動を行うロッド部材と、このロッド部材に係合して前記直線運動を回転運動に変換するとともに前記2枚の蝶番部材を前記ばね手段の付勢力に抗して互いに接近する方向に回動させる蝶番係合部を有するレバーとを備え、このレバーの蝶番係合部は、2枚の蝶番部材の基端部側部に形成した被係合面に係合するように構成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明(請求項2記載の発明)に係るサーモアクチュエータ付き蝶番は、請求項1において、前記ロッド部材の一部に、その直線運動に直交する方向に延びた係合溝を形成し、これに対応する固定部側に円弧状のカム溝を形成するとともに、前記レバーの偏心した位置に設けた係合ピンを、これらの係合溝とカム溝とに貫通させて設け、前記ロッド部材の直線運動が、レバーの回転運動に変換されるように構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明(請求項3記載の発明)に係るサーモアクチュエータ付き蝶番は、請求項1または請求項2において、前記レバーの蝶番係合部は、周囲温度の上昇に伴って前記2枚の蝶番部材を、ばね手段の付勢力に抗して互いに接近させる方向に回動させるとともに、周囲温度が所定温度以上になったときに、前記被係合面から外れて前記2枚の蝶番部材を、ばね手段の付勢力により回動動作させるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明(請求項4記載の発明)に係るサーモアクチュエータ付き蝶番は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記サーモアクチュエータは、温度変化に伴う熱膨張体の熱膨張、熱収縮によって進退動作するピストンを有するサーモエレメントであることを特徴とする。
【0016】
本発明(請求項5記載の発明)に係るサーモアクチュエータ付き換気装置は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のサーモアクチュエータ付き蝶番を用いたものであって、前記2枚の蝶番部材は、換気口を開閉する部材として用いられ、前記ばね手段の付勢力により回動された状態で、前記換気口を閉じるように構成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明(請求項6記載の発明)に係るサーモアクチュエータ付き換気装置は、請求項5において、前記換気口の内周面に段部を形成し、前記2枚の蝶番部材の外周縁と面接触するように構成したことを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、周囲温度の温度変化に伴ってサーモアクチュエータが作動しロッド部材が直線運動すると、係合ピンを介して係合しているレバーが、円弧状カム溝のカム面に沿って回動動作され、該レバーに設けられている蝶番係合部が蝶番部材の被係合面に係合することで、蝶番部材をばね手段の付勢力に抗して回動動作させることになる。
蝶番部材が、たとえば換気口を開閉する部材であるときに、係合ピンが係合する円弧状カム溝のカム面形状を選択することで開度を任意に設定することができるのである。したがって、係合ピンとレバーの円弧状カム溝の長さとを適宜設定することにより、係合ピンを介しての蝶番部材の開閉動作等を任意に制御することが可能であり、蝶番部材の回動動作(開度調整動作)を自由に設定調整することができることになる。
【0019】
また、本発明によれば、周囲温度が所定の温度以上、たとえば通常の開く時の温度よりも高い温度(任意の温度に設定可能)になったときに、係合ピンと円弧状カム溝のカム面との係合状態によって、レバーの蝶番係合部と蝶番部材の被係合面との係合状態を解除させることが可能であり、これにより蝶番部材を、ばね手段の付勢力等で回動動作させることができるのである。したがって、サーモアクチュエータの作動に伴うロッド部材のリフトによって、蝶番部材を、閉動作から開動作、さらに閉動作という動作を得ることができ、たとえば換気口の開閉を、周囲温度変化によって開閉制御する際に好適である。
【0020】
そして、このような本発明によれば、サーモアクチュエータ付き蝶番をサーモアクチュエータ付き換気装置に用いると、外気温度あるいは室内温度が低くて寒い時に換気口を閉じ、暑い時に開くように構成することができるのである。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明に係るサーモアクチュエータ付き蝶番によれば、周囲温度の変化に伴うサーモアクチュエータの作動によって、ロッド部材とレバーとを介して変換して得られる回動動作により、蝶番部材を回動動作させるように構成しているため、小さいリフト量で蝶番部材の開閉動作を得ることができるものであり、しかも構造が簡単で全体のコンパクト化も図れ、コスト的にも安価に構成できるという優れた効果を奏する。
特に、本発明によれば、リフト量が小さいサーモエレメントをサーモアクチュエータとして用いた場合に効果を発揮し得るものである。
【0022】
また、本発明によれば、上述したサーモアクチュエータ付き蝶番を構成する2枚の蝶番部材を、換気口を開閉するバタフライ式の部材として用いることにより、換気装置としての小型かつコンパクト化を図ることが可能であり、しかもサーモアクチュエータの小さいリフト量で換気口の開閉を確実に行うことができる等の種々優れた効果を奏する。
さらに、蝶番部材の外周縁を換気口の内周面に設けた段部に面接触で当接させるように構成しているから、換気口の気密性を確保することができる等の利点もある。
【0023】
また、本発明によれば、ロッド部材の直線運動に伴って回動運動するレバーにより蝶番部材を回動させるように構成し、さらに該蝶番部材を閉状態から開状態、さらに閉状態へと動作するように構成しているので、たとえば防火機能を備えた換気装置を構成するうえで効果を発揮し得るという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1ないし図8は本発明に係るサーモアクチュエータ付き蝶番の一実施形態を示し、この実施形態では、建物の室内と室外との間に配設されて換気を行うサーモアクチュエータ付き換気装置であって、2枚の蝶番部材を換気口を開閉するバタフライバルブタイプの開閉羽根として用いた場合を示す。
【0025】
これらの図において、全体を符号1で示すサーモアクチュエータ付き換気装置は、円筒状部材2を備え、この円筒状部材2の内部が換気口3を形成する。この円筒状部材2の内面には、後述するサーモアクチュエータ付き蝶番10を構成する2枚の蝶番部材12,13の外周縁が面接触状態で当接する当接面4aを備える環状段部4が形成されている。
なお、上記の円筒状部材2は、全体の図示を省略した建物の壁部(窓のサッシや壁等)に形成された開口部を塞ぐようにして室外側あるいは室内側から固定され、これにより換気口3が室外側と室内側とを選択的に連通、遮断するための通路となるように構成されている。
【0026】
符号10で示すサーモアクチュエータ付き蝶番は、図1ないし図3に示されるように、支軸11により相対的に回動動作可能に軸支されている2枚の蝶番部材12,13を備えている。この支軸11は、前記円筒状部材2内に直径方向に跨って配置されており、蝶番部材12,13が回動動作することにより換気口3を開閉するバタフライバルブタイプの構造となっている。
【0027】
そして、この支軸11にはコイルばね14が巻回され、蝶番部材12,13を常時は前記環状段部4の当接面4aに面接触で当接させる閉状態となるように付勢力を与えるように構成されている。図中12a,13aはコイルばね14の端部を掛け止めする掛け止め部である。
これにより、2枚の蝶番部材12,13は、常時はコイルばね14の付勢力によって換気口3を閉状態とし、後述するサーモアクチュエータ(サーモエレメント31)が周囲温度変化、たとえば上昇することにより作動することで、図2、図5、図7に示すように、閉状態から開状態に変化するようになっている。
【0028】
前記円筒状部材2の内部で前記蝶番10に近接する部分には、全体を符号20で示すサーモアクチュエータを含む換気口駆動部が組み込み配置されている。この換気口駆動部20は、図1ないし図4等に示すように、後述するサーモエレメント31等が組み込まれる枠体部21と、側面視ほぼ逆L字状を呈するホルダ22とを備えている。
【0029】
これらの枠体部21とホルダ22には、図1、図3、図4等に示すように、サーモアクチュエータを構成するサーモエレメント31等が組み込まれている。すなわち、前記枠体部21内には、サーモエレメント31が、一対をなすコイルばね32,33間に介在された状態で配置され、またサーモエレメント31から進退自在に突出するピストンロッド31bの先端側には、ロッド部材34が配置されている。
【0030】
ここで、サーモエレメント31は、周知の通り、温度影響によって膨張、収縮するワックス等の熱膨張体を有し、該熱膨張体の膨張または収縮によって進退動作されるピストンの動きで、前記ロッド部材34を進退動作させるように構成されている。図中31aは上記熱膨張体が封入されている感熱部である。
【0031】
上記のコイルばねのうち、コイルばね33は、サーモエレメント31のリターンスプリングである。また、コイルばね32は、サーモエレメント31が許容量以上にリフトしたときの動きを吸収するためのオーバリフト吸収用のスプリングであって、符号32aはばね座金となるカラーである。
【0032】
上記の部材は、枠体部21内に組み込み配置されており、ロッド部材34が前記ホルダ22の上側空間内に臨んで配置され、図1中上下方向に進退動作するように構成されている。図中23は、このロッド部材34の上端部を上下動可能に保持するキャップ部材であり、前記ホルダ22の上端部に組み付けられている。
【0033】
ここで、上記の枠体部21、ホルダ22、キャップ部材23等は、組み立てられた状態で、前記円筒状部材2内の直径方向に沿って配置されている。この場合、サーモエレメント31のピストンロッド31b、ロッド部材22が、前記蝶番部材12,13の支軸11と平行する方向に直線運動するように配置されている。
【0034】
図中符号41で示すものは、前記ホルダ22の上端部に形成された空間部内で回動自在に軸支されるレバーであり、図1、図3及び図4から明らかなように、その回動軸部42が、ホルダ22側の軸穴(図示せず)に軸支されるようになっている。
【0035】
このレバー41は、前記ロッド部材34に係合して前記直線運動を回転運動に変換するとともに2枚の蝶番部材12,13を前記コイルばね14の付勢力に抗して互いに接近する方向に回動させる蝶番係合部44,44を備えている。このレバー41の蝶番係合部44,44は、2枚の蝶番部材12,13の基端部側部に形成した被係合面17,18に係合するように構成されている。そして、各蝶番部材12,13の被係合面17,18に係合する係合面は、図2、図5、図7に示すように、所要の傾斜角度をもつ面として形成され、前記被係合面17,18に対する係合面の係合角度によって、蝶番部材12,13の回動角度が制御されるようになっている。
【0036】
ここで、前記ロッド部材34の一部には、その直線運動する方向に直交する方向に延びた係合溝35が形成されている。一方、これに対応する固定側のホルダ22には、円弧状のカム溝25が形成されている。そして、前記レバー41の偏心した位置に設けた係合ピン36を、これらの係合溝35とカム溝25とに貫通させて設けることで、これらの部材が係合され、ロッド部材34の直線運動が、レバー41の回転運動に変換されるようになっている。なお、図7中43は係合ピン36用の孔部である。
【0037】
上記の係合構造によれば、ロッド部材34が進退動作することにより、係合ピン36がホルダ22に設けた円弧状カム溝25のカム面に沿って移動され、結果としてレバー41が回動されることになるのである。なお、ロッド部材34の係合溝35は、上記の円弧状カム溝25内を移動する係合ピン36の動きを許容できる程度の長さで形成される。
【0038】
前記レバー41の蝶番係合部44,44の係合面は、図1、図2、図3等に示すように、前記蝶番10方向に平行して延びて形成され、先端が2枚の蝶番部材12,13の基端部側面に形成した被係合面17,18に選択的に係合するように構成されている。すなわち、図3、図5および図7に示すように、レバー41が周囲温度の上昇に伴って回動されると、2枚の蝶番部材12,13を、コイルばね14の付勢力に抗して互いに接近させる方向に回動させるとともに、周囲温度が所定温度以上になったときに、被係合面17,18から外れて2枚の蝶番部材12,13を、コイルばね14の付勢力により回動動作させるようになっている。
【0039】
換言すると、周囲温度が低い温度のときには、レバー41の蝶番係合部44,44は、図1および図2に示すように、被係合面17,18から離脱した非係合位置にあり、このときには、蝶番部材12,13は、コイルばね14の付勢力により開いた状態になり、外周縁が環状段部4の当接面4aに面接触して気密状態を保った閉状態となっている。
【0040】
上記の状態から周囲温度が上昇すると、図3(b)中矢印で示すように、レバー41が回動動作されることになり、蝶番係合部44,44が各蝶番部材12,13の被係合面17,18に係合し、蝶番部材12,13を互いに接近する方向に回動動作させることになる。ここで、蝶番部材12,13の回動角度(開動作角度)は、その被係合面17,18に係合する前記蝶番係合部44,44の係合面の角度によって制御される。また、図5および図6は、蝶番部材12,13が最も開かれた開状態を示す。
【0041】
周囲温度がさらに上昇すると、レバー41は、さらに回動されて図7および図8に示すように、被係合面17,18から離脱する位置まで回動され、このときには蝶番部材12,13は、コイルばね14の付勢力によって再び閉状態に戻る。なお、周囲温度が上記以上に上昇した際のオーバリフト量は、前記オーバリフト吸収用スプリング32で吸収される。また、周囲温度が低下すれば、リターンスプリング33の働きで、レバー41は元の状態に復帰するように回動動作することは言うまでもない。
【0042】
以上の構成において、サーモエレメント31、ロッド部材34、コイルばね32,33、さらにレバー41等を内設した状態でホルダ22を、換気口3内の所定位置に組付けし、換気駆動部20を組み立てるとともに、蝶番部材12,13を支軸11により軸支し、コイルばね14の付勢力で、環状段部4の当接面4aに当接させると、図1ないし図3に示す閉状態となる。
【0043】
この閉状態において、屋外の外気温度中に臨んでいるサーモエレメント31の熱膨張体が、外気温度の温度上昇によって膨張し、ピストンロッド31bを突出する方向に押し出すと、ロッド部材34は反サーモエレメント側に移動する。すると、係合ピン36は、ホルダ22の円弧状カム溝25のカム面に沿って移動され、直線運動が回動運動に変換されてレバー41は回動することになる。これにより、図5および図6に示すように、レバー41の蝶番係合部44,44が各蝶番部材12,13の被係合面17,18に係合し、これをコイルばね14の付勢力に抗して開放方向に回動させることになり、結果として蝶番部材12,13が開状態となる。
【0044】
さらに、外気温度が温度上昇して熱膨張体が膨張し、ピストンロッド31bを蝶番部材12,13の開状態以上に押し出したときには、レバー41はさらに回動されて図7および図8に示す位置まで回動され、このときには、蝶番係合部44,44は被係合面17,18から離脱し、蝶番部材12,13は、コイルばね14の付勢力で外周縁が当接面4aに当接する閉状態に戻る。
【0045】
なお、この実施形態のように、所定温度以上である場合に、レバー41の蝶番係合部44,44の蝶番部材12,13の被係合面17,18への係合を離脱させ、蝶番部材12,13を閉状態とする構成では、火災等の非常時に対処することができることになる。すなわち、サーモエレメント31が異常な温度を感知し、ピストンロッド31bの動きでロッド部材34が移動し、被係合面17,18から蝶番係合部44,44が離脱した位置に至って非当接状態になると、前記換気口3が完全に閉塞されて、火災時の防火機能を発揮できるように構成されている。これは、換気口3が閉じられることで、火炎の通り道を塞いで延焼を防ぐことができるからである。
【0046】
ここで、この実施形態では、上述した円弧状カム溝25のカム面は、前記サーモエレメント31の動きで蝶番部材12,13を開閉動作させるための回動動作を制御するところであり、任意の回動動作量を制御できるように構成するとよい。要は、円弧状カム面25の係合ピン36が係合するカム面形状の長さを任意に選択して形成すればよい。
【0047】
以上の構成によるサーモアクチュエータ付き換気装置1によれば、外気温度が低く寒い時に換気口3を閉じ、暑い時に開くようにすることができるのである。
【0048】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。たとえば蝶番10を構成する蝶番部材11,12の形状などを適宜変形し得ることは勿論である。
また、上述した実施の形態では、サーモエレメント31の1回のピストンロッド31bのリフトによって、閉動作から開動作、さらに閉動作という動作を得ることで、たとえば換気口の開閉を周囲温度変化によって開閉制御しているが、これに限らず、カム面形状の長さを適宜選択することで、開動作、閉動作、開動作というように動作させてもよいことは言うまでもない。
【0049】
さらに、上述した係合ピン36が係合する円弧状カム溝25のカム面形状としては、上記の実施の形態で説明したものに限定されず、使用される分野や部位などによって適宜選択することができる。
【0050】
また、上述した実施の形態では、蝶番部材12,13を開閉駆動するためのサーモエレメント31のピストンロッド31bやこれに伴って直線運動するロッド部34を、蝶番部材12,13の支軸11に平行に配置させた場合を説明したが、本発明はこれに限定されず、たとえば円筒状部材2の内壁に沿って、支軸11にほぼ直交する方向に延設して配置させてもよい。要は、サーモアクチュエータの直線運動を回転運動に変換し、蝶番部材12,13が開閉するように回動動作させ得る構成であればよい。
【0051】
さらに、本発明に係るサーモアクチュエータ付き蝶番10において、サーモアクチュエータとして設けたサーモエレメント31の感温部31aに近接する部分に、PTCヒータ等の発熱体を設けると、蝶番部材12,13の開閉制御を、周囲温度による場合に併用して任意に行えるという利点を奏することができる。すなわち、この発熱体を、換気装置1の近傍に設けたコントローラ、あるいは室内からの遠隔操作によるコントローラを用いて発熱制御できるようにすれば、換気口の開閉制御を、周囲温度による場合に併用して任意に行えることになる。なお、上記の発熱体としては、電気的なヒータであればよく、たとえばニクロム線を巻き付けたものであってもよいし、PTCヒータを適宜の位置に貼り付けてもよいし、あるいは電流を流すことで自己発熱するような形状記憶合金を用いたものであってもよい。
【0052】
また、上述した実施の形態では、本発明に係るサーモアクチュエータ付き蝶番10を住宅設備用の換気装置1に採用した場合を説明したが、これに限定されず、種々の分野における蓋体の開閉装置や蝶番に応用できることは言うまでもない。
【0053】
さらに、上述した実施の形態では、サーモアクチュエータとして、サーモエレメント31を例示したが、これに限らず、形状記憶合金等によって形成したサーモアクチュエータであってもよいことも言うまでもない。
また、上述した実施の形態では、ロッド部材34の直線運動をレバー41の回動運動に変換するための手段として、円弧状カム溝25、係合溝35、係合ピン36等による係合構造を採用しているが、本発明はこれに限らず、いわゆるラックピニオン機構を採用した変換手段であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係るサーモアクチュエータ付き蝶番をサーモアクチュエータ付き換気装置に適用した場合の一実施形態を示す縦断側面図である。
【図2】図1の横断側面図である。
【図3】(a),(b)は図1のサーモアクチュエータ付き換気装置の外観を示す概略斜視図およびその要部構成の斜視図である。
【図4】図1のサーモアクチュエータ付き蝶番の駆動部を構成する部材を説明するための概略分解図である。
【図5】周囲温度が上昇したときのサーモアクチュエータ付き換気装置の動きを説明するための図2に対応する横断側面図である。
【図6】周囲温度が上昇したときのサーモアクチュエータ付き換気装置の外観を示す図3(b)に対応する要部構成の斜視図である。
【図7】周囲温度がさらに上昇したときのサーモアクチュエータ付き換気装置の動きを説明するための図2、図5に対応する横断側面図である。
【図8】周囲温度がさらに上昇したときのサーモアクチュエータ付き換気装置の外観を示す図3(b)、図6に対応する要部構成の斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
1…サーモアクチュエータ付き換気装置、2…円筒状部材、3…換気口、4…環状段部、4a…当接面、10…サーモアクチュエータ付き蝶番、11…支軸、12,13…蝶番部材、14…コイルばね(ばね手段)、17,18…被係合面、20…サーモアクチュエータを含む換気口駆動部、21…枠体部、22…ホルダ、23…キャップ部材、25…円弧状カム溝、31…サーモエレメント(サーモアクチュエータ)、32,33…コイルばね、34…ロッド部材、35…係合溝、36…係合ピン、41…レバー、42…支軸部、44…蝶番係合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支軸により相対的に回動可能に軸支される2枚の蝶番部材と、前記支軸上に設けられ前記蝶番部材に一方向への回動習性を与えるばね手段と、温度変化に伴い作動することにより前記蝶番部材を前記ばね手段の付勢力に抗して回動動作させるサーモアクチュエータとを備えたサーモアクチュエータ付き蝶番において、
前記サーモアクチュエータの進退動作に伴って直線運動を行うロッド部材と、
このロッド部材に係合して前記直線運動を回転運動に変換するとともに前記2枚の蝶番部材を前記ばね手段の付勢力に抗して互いに接近する方向に回動させる蝶番係合部を有するレバーとを備え、
このレバーの蝶番係合部は、2枚の蝶番部材の基端部側部に形成した被係合面に係合するように構成されていることを特徴とするサーモアクチュエータ付き蝶番。
【請求項2】
請求項1記載のサーモアクチュエータ付き蝶番において、
前記ロッド部材の一部に、その直線運動に直交する方向に延びた係合溝を形成し、
これに対応する固定部側に円弧状のカム溝を形成するとともに、
前記レバーの偏心した位置に設けた係合ピンを、これらの係合溝とカム溝とに貫通させて設け、
前記ロッド部材の直線運動が、レバーの回転運動に変換されるように構成されていることを特徴とするサーモアクチュエータ付き蝶番。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のサーモアクチュエータ付き蝶番において、
前記レバーの蝶番係合部は、周囲温度の上昇に伴って前記2枚の蝶番部材を、ばね手段の付勢力に抗して互いに接近させる方向に回動させるとともに、周囲温度が所定温度以上になったときに、前記被係合面から外れて前記2枚の蝶番部材を、ばね手段の付勢力により回動動作させるように構成されていることを特徴とするサーモアクチュエータ付き蝶番。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のサーモアクチュエータ付き蝶番において、
前記サーモアクチュエータは、温度変化に伴う熱膨張体の熱膨張、熱収縮によって進退動作するピストンを有するサーモエレメントであることを特徴とするサーモアクチュエータ付き蝶番。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のサーモアクチュエータ付き蝶番を用いたサーモアクチュエータ付き換気装置であって、
前記2枚の蝶番部材は、換気口を開閉する部材として用いられ、前記ばね手段の付勢力により回動された状態で、前記換気口を閉じるように構成されていることを特徴とするサーモアクチュエータ付き換気装置。
【請求項6】
請求項5記載のサーモアクチュエータ付き換気装置において、
前記換気口の内周面に段部を形成し、前記2枚の蝶番部材の外周縁と面接触するように構成したことを特徴とするサーモアクチュエータ付き換気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−10218(P2007−10218A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191285(P2005−191285)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000228741)日本サーモスタット株式会社 (52)
【Fターム(参考)】