説明

ザクロ抽出物、該抽出物を含有する栄養製品及びその用途

【課題】 従来技術に関連する問題点を解決し、そして、ザクロ抽出物及び当該ザクロ抽出物を含有する栄養製品を提供する。
【解決手段】 本発明の新規なザクロ抽出物は、水溶性食物繊維を併用又は併用せず、如何なる種類の有機溶媒も含有せず、冷水に高い濃度で溶解可能であり、糖類含量は極めて低く、特にプニカラギンを標準化する。更に、本発明の新規なザクロ抽出物は、心臓血管系疾患、動脈内へのプラーク堆積、動脈性高血圧症及びメタボリック症候群の予防及び治療のためのプニカラギン源として使用されるべき高抗酸化能力を有する栄養製品を提供するために食品及び飲料に添加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラジタンニンを含有するザクロ抽出物、エラジタンニンが添加されたザクロ抽出物を含有する栄養製品及び心臓血管系疾患(CVD)、動脈内へのプラーク堆積、動脈性高血圧症及びメタボリック症候群の予防及び治療に使用される、ザクロ抽出物及び当該ザクロ抽出物で機能性化された栄養製品に関する。また、本発明は、全形ザクロ果実から得られたザクロ抽出物(ザクロエキス)を飲料及び人間用又は獣用食料品に添加し、抗酸化剤(特に、エラジタンニン、一層特定的にはプニカラギン)のレベルを高めることに関する。更に詳細には、本発明は、プニカラギンリッチ組成物の栄養供給により、心臓血管系疾患、動脈内へのプラーク堆積、動脈性高血圧症及びメタボリック症候群の予防及び治療用のプニカラギン源として使用されるべき栄養製品の機能性化又は栄養強化に関する。
【背景技術】
【0002】
英国心臓財団により2005年に発行された欧州心臓血管系疾患統計増刊号によれば、CVDはヨーロッパにおける主要な死亡原因であり、毎年435万人以上がCVDで死亡している。冠動脈系心臓疾患(CHD)それ自体はヨーロッパにおける単一の最も一般的な死亡原因であり、ヨーロッパでは毎年195万人がCHDで死亡している。
【0003】
CVDのトータルコストは総計1690億ユーロに達し、そのうち、1050億ユーロは欧州連合(EU)におけるCVD治療費であり、640億ユーロは喪失された生産性とインフォーマルケアのコストによるものである。
【0004】
アテローム性動脈硬化症とも呼ばれる動脈内へのプラーク堆積は、CVDの主因であり、また、CHDの最も常習的原因である。動脈内におけるアテローム性動脈硬化症的プラーク堆積は動脈の一般的な障害である。これは、動脈血管壁に脂肪、コレステロール及びその他の物質が堆積し、そして、プラークと呼ばれる硬質物質を生成することにより
発症する。
【0005】
最後には、プラーク堆積物は動脈の狭窄と柔軟性低下を引き起こす。これは血液の流れを益々困難にする。冠動脈が狭くなると、心臓への血流が低下又は停止し、胸郭の苦痛(持続性アンギナ)、短呼吸、心臓発作及びその他の症状を引き起こす。
【0006】
プラーク片はバラバラに破壊され、血流に乗って移動することができる。これは心臓発作の一般的な原因である。血塊はプラーク堆積物の周囲にも生成することができる。血塊は血流をブロックする。血塊が心臓、肺又は脳内を移動すると、これは脳卒中、心臓発作又は肺塞栓症を引き起こす。
【0007】
動脈性高血圧症、血中のトリグリセリド及び総コレステロールの値が高いことや喫煙は、この疾患の進展の一因となるファクターであることが立証されている。最近、研究者らは、これらリスクファクター(危険因子)の幾つかが或る人々の間で密集していることを発見した。これらのリスクファクターの密集はメタボリック症候群として知られているいる。
【0008】
メタボリック症候群の人々は下記のような密集的リスクファクターを有する。
・中央肥満。これは、腹部(胃部)における余分体重を意味する。
・ブドウ糖と呼ばれるタイプの糖の消化障害(ブドウ糖不耐症)。メタボリック症 候群の患者は通常、高インスリン血症又は2型糖尿病を有する。
・血流中の低密度リポ蛋白(LDL)及びトリグリセリドの値が高い。
・血流中の高密度リポ蛋白(HDL)の値が低い。
・高血圧症
【0009】
メタボリック症候群については究明すべきことが依然として多々あるが、医師は、メタボリック症候群の人々が高いCVDリスクを有することを知っている。多くの研究が、LDLの生体内酸化がアテローム性動脈硬化症の進展に中心的な役割を演じていることを証明している(Knight, 1995; Witzum, 1994)。
【0010】
実験室研究及び臨床研究の両方において、ザクロは心臓血管系疾患の予防において有望な結果を示す。研究者らは幾つかのメカニズム、例えば、LDLの酸化阻止と、窒素酸化物の合成及び活性の支持(De Nigrisら, Nitric Oxide, 2006)、血管の酸化ストレス及び炎症損傷の低減(De Nigrisら, Cardiovasc. Res., 2007; Rozenbergら, Atherosclerosis, 2006)、アンギオテンシン変換酵素の活性低下(Aviramら, Atherosclerosis, 2001)などにより、ザクロ研究から植物栄養素(phytochemicals)に関する証拠(エビデンス)を提供する。これらの証拠を積み上げると、プニカラギンとして知られているザクロ内の化合物が、それらの強力な抗酸化作用及び抗炎症作用により、心臓血管系を保護することが示唆される。
【0011】
M. Shinerら, Atherosclerosis 195, 2007は、プニカラギン及び没食子酸によるパラオキソナーゼ2の発現上昇の効果を報告している。パラオキソナーゼ2は、未だ不明の生理学的役割により、酸化ストレスに対抗するマクロファージを保護することが示された。
【0012】
更に別の研究は、ザクロジュースは、ブルーベリージュース、クランベリージュース、緑茶又は赤ワインなどのような他の飲み物よりも高い抗酸化特性を有することを示した。プニカラギンα及びβアノマーは、ザクロジュースにおける主要なエラジタンニンであり、ザクロジュースの抗酸化特性の主要な発現元である。それにも拘わらず、研究は、プニカラギンα及びβアノマーと、その他のエラジタンニン(例えば、エラグ酸及びそのグリコシド化誘導体類)並びにその他のマイナーなザクロエラジタンニンとの併用は、ザクロジュースの健康上の効果を高める重要な相乗効果を発揮することを指摘した。
【0013】
最も最近の研究のレビューは、Lanskyら, Journal of Ethnopharmacology 109, 2007, 177-206に掲載されている。このレビューは、ザクロ、特に種の油相から得られた物質の、癌の治療又は予防に対する力価を強調している。しかし、このレビューは、確定的ではないが、報告された研究は、相応に設計された医薬製品の臨床試験を含む更なる研究が必要であることを示唆して終わっている。
【0014】
プニカラギンα及びβアノマーは主にザクロ包皮内に存在する。従って、プニカラギンα及びβアノマーは、ジュース抽出のための圧搾中に一次ジュースに移行する。プニカラギンα及びβアノマーは次の構造式を有する。
【0015】

















【0016】
これらの研究により多数の特許出願が為された。例えば、国際公開第WO02/056899号パンフレットは、血中のオキシステロールの低減と、コレステロールと血圧の正常化に関する組成物及び方法に関する。この特許出願明細書は、好ましくは、ノニ(Morinda Citrifolia)抽出物、赤ワイン抽出物、プルーン抽出物、ブルーベリー抽出物、ザクロ抽出物、リンゴ抽出物及び酵素混合物からなる組成物を開示している。この特許出願は、前記ザクロ抽出物が約40%のエラグ酸と約60%のポリフェノール類からなる前記組成物を投与するステップからなる、血中のオキシステロール類を維持又は低減する方法を特許請求している。更に、遊離エラグ酸を経口投与する場合、このエラグ酸は殆ど吸収されない。
【0017】
米国特許出願第2006/0211635号明細書には、商業的なジュース生産の副生物である果実の包皮に由来するザクロエラジタンニンの精製方法が記載されている。この方法は、樹脂表面に吸着されたエラジタンニンの溶出のために、有機溶媒(おそらく、有毒なメタノール)を使用しなければならない欠点及び、実際ジュースが消費者により消費される製品である場合に、ザクロジュース画分中に殆ど存在する幾つかの植物栄養素(最近の研究では、ザクロから得られる健康上の効果の元になっていると言われている)を含有しない抽出物を産生する欠点を有する。
【0018】
国際公開第WO2006/127832号パンフレットは、ジュース生産の副生物からザクロ抽出物を製造する方法を開示している。開示された製造方法は、ザクロ抽出物を加熱する(43〜71℃で2時間加熱し、そして、低温殺菌する)などの幾つかの熱処理を含む。ザクロジュースの低温殺菌は、プニカラギンなどのような大きなエラジタンニンの分解により遊離エラグ酸を生成する。この遊離エラグ酸はザクロジュース飲用の健康上の効果を減少させる。これらの熱処理工程は取り除くことが困難な幾つかの副生物を生成し、更に、ジュース生産により生じたザクロ固形物の使用は、ザクロジュース画分中に殆ど存在する幾つかの植物栄養素を含まない抽出物を産生する。この理由により、国際公開第WO2006/127832号パンフレットは、ザクロ抽出物とザクロジュースとの併用を開示している。実際、この併用により、全形ザクロ果実内に存在する植物栄養素の広範なスペクトルが提供されるが、ザクロジュース及びザクロ抽出物の両方に存在する糖類による高カロリー値という欠点も有する。更に、高糖類含量は、このようなザクロ抽出物の工業的処理を困難にする。なぜなら、プニカラギンの精製は困難であり、また、固形抽出物は乾燥装置の内壁面に粘着するからである。ザクロ抽出物からなる飲料及び食料品に関する特許請求の範囲は、果皮、内膜及び種子からなる群から選択されるザクロ固形物から製造された抽出物を挙げているが、全形ザクロ果実から製造された抽出物は挙げていない。
【0019】
米国特許出願第20070178180号は、ザクロ抽出物及びその使用方法に関する。更に特定的には、ヒトの動脈硬化症による障害の後退を起こさせるためにザクロ抽出物を使用する方法に関する。この明細書には、頸動脈狭窄症(CAS)を患う19人の患者について人体実験したことが記載されている。これら患者のうち10人は、12ヶ月間の間、毎日ザクロジュースをグラス一杯飲んだ。この特許出願人は、人体実験の結果はCASを患う患者がザクロジュースを飲むと統計的に有意な抗動脈硬化効果を証明していると結論している。使用されたザクロジュース及び前記特許出願明細書に従って製造されたザクロ抽出物の両方とも、何ら特別な精製工程を実施すること無く製造されている。
【0020】
米国特許出願第20020012710号は、健康改善に有用なザクロ製品に関する。この出願は、ザクロ種子油(ザクロシードオイル)を患者に投与し、生理学的作用効果を発揮することからなる、ザクロ種子油の使用方法を特許請求している。このような生理学的作用効果には、抗酸化作用が含まれる。更に、この出願は、発酵されたザクロジュースを患者に投与することからなる、動脈硬化の進行を遅らせる方法も特許請求している。
【0021】
欧州特許第EP1293130号公報に記載されているように、ザクロ抽出物は乳酸菌飲料を酸化から保護するためにも使用されている。ここで、ザクロ抽出物は、水中で還流し、濾過し、活性炭で処理するか又は水/エタノールから処理することにより得ることができる。この飲料中のザクロ抽出物の濃度は、10ppm〜50ppmの範囲内である。抽出物の組成に関する記載は存在しない。
【0022】
要するに、前記の技術は、ザクロ製品を提供することはする。しかし、このザクロ製品は健康上の効果は提供するが、機能性食品及び飲料工業のある種の技術的用途については依然として粗製度が高すぎ、下記のような欠点が想定される。
− ザクロジュース又はザクロ粗製物を定期的に消費すると、これらの中に存在する糖類により、高カロリー値を摂取することが想定される。“ザクロジュースの組成”(Seeramら, J. Nutr. 136:2481-2485, 2006年10月)。人間の飲用に供される単一濃度形(240ml)のザクロジュース(PJ)は、糖類34g、総炭水化物35g、ナトリウム30mg、カリウム430mg、ビタミンC及びビタミンAのRDA0%、カルシウム4%及び鉄分2%(Pom Wonderful)を含有している。PJは次のポリフェノール類を含有している。アントシアニン387mg/L、プニカラギン1561mg/L、エラグ酸121mg/L、及びその他の加水分解性タンニン類417mg/L。
− 上記のザクロ抽出物の幾つかを得るために有機溶媒を使用する。
− 上記のザクロ抽出物の幾つかの標準化は、全形ザクロ果実の加工処理により得られる天然ザクロジュース中に存在する植物栄養素類(例えば、エラジタンニンなど)の自然プロファイルと全くかけ離れている。例えば、幾つかのザクロ抽出物は、代表的な市販のザクロジュース(通常、エラグ酸の含有量が0.1%未満であり、かつ、プニカラギンの含有量が約0.2%である)と比較して、プニカラギンの代わりにエラグ酸含有量が40%に標準化されていると言われている。
− 前記のような製品は完全な水溶性ではなく、特に、このザクロ抽出物はエラグ酸含有量が高い。この事実は、このザクロ抽出物を飲料に添合すると濁りが生じ、消費者にとって魅力の劣る製品をもたらすことを意味する。
− 経口摂取する際、遊離エラグ酸は殆ど吸収されない。
【0023】
更に、プニカラギン含量は前記の殆どのザクロ製品において標準化されない。
【0024】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】国際公開第WO02/056899号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願第2006/0211635号明細書
【特許文献3】国際公開第WO2006/127832号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願第20070178180号明細書
【特許文献5】欧州特許第EP1293130号公報
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】De Nigrisら, Nitric Oxide, 2006
【非特許文献2】De Nigrisら, Cardiovasc. Res., 2007
【非特許文献3】Rozenbergら, Atherosclerosis, 2006
【非特許文献4】Aviramら, Atherosclerosis, 2001
【非特許文献5】M. Shinerら, Atherosclerosis 195, 2007
【非特許文献6】Lanskyら, Journal of Ethnopharmacology 109, 2007, 177-206
【非特許文献7】Seeramら, J. Nutr. 136:2481-2485, 2006年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明の目的は、前記の従来技術に関連する問題点を解決し、そして、ザクロ抽出物及び当該ザクロ抽出物を含有する栄養製品を提供することであり、前記ザクロ抽出物はエラジタンニンを含有し、かつ、ザクロ抽出物が添合された食品を摂取する際に、該食品に必要な健康上有用な作用効果を付与するような組成を有する。
【課題を解決するための手段】
【0028】
前記目的は、請求項1に記載されたザクロ抽出物、及び請求項6に記載されたザクロ抽出物含有機能性食品及び機能性飲料を提供する本発明により達成される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明により得られた異なる栄養製品の抗酸化能力と、本発明による得られたザクロ抽出物の配合量を増大させた結果としてHPLCにより測定されたプニカラギン含量との間の線形相関を示すグラフ図であり、プロットaは実施例1のザクロ抽出物含有機能性オレンジジュースに関する線形相関を示すグラフ図であり、プロットbは実施例2のザクロ抽出物含有機能性乳製品に関する線形相関を示すグラフ図である。
【図2】本発明により得られた異なる栄養製品の抗酸化能力と、本発明による得られたザクロ抽出物の配合量を増大させた結果としてHPLCにより測定されたプニカラギン含量との間の線形相関を示すグラフ図であり、プロットaは実施例3のザクロ抽出物含有機能性ボイルドハムに関する線形相関を示すグラフ図であり、プロットbは実施例4のザクロ抽出物含有ツナ缶詰に関する線形相関を示すグラフ図である。
【図3】実施例5により得られたザクロ抽出物含有機能性半生ドッグフードの抗酸化能力と、本発明により得られたザクロ抽出物の配合量を増大させた結果としてHPLCにより測定されたプニカラギン含量との間の線形相関を示すグラフ図である。
【図4】実施例6における、ラットの動脈硬化指数(総コレステロール値/HDLコレステロール値)に対するザクロ抽出物の効果を示すグラフ図である。
【図5】実施例7における、ラットの収縮期血圧に対するザクロ抽出物の効果を示すグラフ図である。
【図6】実施例8における、ラットの動脈硬化指数(総コレステロール値/HDLコレステロール値)に対する、本発明によるザクロ抽出物と水溶性食物繊維との併用効果を示すグラフ図である。
【図7】実施例9における、ラットの体重に対するザクロ抽出物と水溶性食物繊維との併用効果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
請求項1〜5に記載のザクロ抽出物は、血液中のコレステロール成分類の濃度及び動脈血圧の双方を正常レベルに維持するか又は正常レベルにまで低下させるために使用するのに特に適している。より一般的には、請求項1〜5に記載のザクロ抽出物は、栄養強化飲料の混濁及び高カロリー成分の増大などのように、栄養強化食品の特性を望ましくない方向に改変すること無く、前記非特許文献及び特許文献に述べられた有利な特性及び効果を提供するために特に適している。更に、本発明のザクロ抽出物には痕跡量の有機溶媒さえも存在しないので、従来の残留有機溶媒を含有するザクロ抽出物に比べて、経済的観点及び健康上の観点の両面から好都合である。
【0031】
前記のザクロ抽出物は、同時継続欧州特許出願第EP07004765.9及び同第EP08004242.7号明細書に記載された方法により得ることができる。前記明細書に記載された方法は、4℃〜30℃、好ましくは8℃〜25℃の範囲内の温度及び3.5〜5.0の範囲内のpH値において、全体ブレンド果実の抽出を水中で行う工程からなる。抽出はミル内で行い、前記抽出工程の時間は15〜150分間の範囲内である。次いで、抽出混合物を処理して固形物を除去し、清澄な水溶液を得る。この清澄水溶液を非イオン性吸着樹脂が充填されたクロマトグラフカラムに装填する。クロマトグラフカラムに保持された生成物を塩基性溶液でpH値を変え、そして生成物を脱イオン水で置換することにより溶離する。好ましくは、前記pH値の変化は、炭酸水素ナトリウム溶出緩衝液で行う。
【0032】
吸着樹脂から溶離された液状生成物は好ましくは、ナノ濾過により濃縮し、そして、生成物が固形状になるまで水を除去する。この方法により、糖含量が極めて低い生成物を得ることができる。このような生成物は前記従来技術に関する説明で挙げたような文献には記載されていなかった。同時継続出願の前記欧州特許出願第08004242.7号明細書に開示された或る実施態様よれば、ザクロ抽出物は可溶性食物繊維(特に、燕麦及び大麦などのβグルカンを大量に含む可溶性食物繊維)の存在下で濃縮され、そして乾燥させる。このような可溶性食物繊維は担体として機能し、少なくとも30%以上の量で配合することが好ましい。好ましくは、可溶性食物繊維のβグルカン含量(乾燥基準)は少なくとも30%で、30%〜60%の範囲内が特に好ましい。この特徴に関する欧州特許出願第EP08004242.7号の優先権及び先願である欧州特許出願第EP07004765.9号に記載されていない特徴は本願により特許請求されている。
【0033】
前記同時継続欧州特許出願第EP07004765.9号及び同欧州特許出願第第EP08004242.7号で論ぜられたような溶媒不含有天然ザクロ抽出物の製造方法は、簡単であり、効率的であり、しかも安価であり、溶媒可溶性エラグ酸よりもむしろ水溶性プニカラギンと、全形ザクロ果実内に存在し、抽出物の主要化合物の活性を高めるのに有用な様々な天然有機化合物類の広範なスペクトルとの両方を提供する。
【0034】
本発明の一側面は、ザクロ抽出物に関し、更に、当該ザクロ抽出物を、可能であれば食品用等級の水溶性食物繊維と共に食品(飲料を含む)に添加することにより得られる栄養製品に関する。これらの製品は、ザクロ抽出物を栄養強化すべき食料品に添合し、混合することにより得られる。
【0035】
本発明の別の側面は、心臓血管系疾患(CVD)、動脈内へのプラーク堆積、動脈性高血圧症及びメタボリック症候群からなる群から選択される一つ以上の症状の予防又は治療のために、栄養製品、機能性食品及び飲料を使用することに関する。
【0036】
本発明を理解し易くするために、本発明の天然ザクロ抽出物の組成を下記の段落0037に要約する。
【0037】
本発明により得ることができる組成物は液状又は固形状のエラジタンニン含有製品であり、下記の特性を有することを特徴とする。
− プニカラギン含量(%w/wとして)は30%以上である。
− エラグ酸(遊離酸)含量(%w/wとして)は5%以下である。
− 総フェノール含量(没食子酸当量の%w/wとして)は20%以上である。
− 水溶性(%w/vとして)は3%以上、好ましくは7%以上、更に好ましくは10%以上である。
− 残留有機溶媒含量は不検出であるか、又は存在していたとしても、1ppb未満である(即ち、本発明のザクロ抽出物は有機溶媒を含有しない)。
− 総糖類含量が3%(w/w)以下、好ましくは1%(w/w)以下である。
− その他の加水分解性タンニン類の含量が8%(w/w)以上である。
− アントシアニン含量が0.3%(w/w)未満、好ましくは0.2%(w/w)以下である。
【0038】
これらの組成において、プニカラギン/エラグ酸の比率(w/w%)が10/1〜35/1の範囲内、好ましくは20/1〜35/1の範囲内であり、プニカラギン/果実糖類の比率(w/w%)が10/1〜50/1の範囲内、好ましくは30/1〜50/1の範囲内である。実際、本発明のザクロ抽出物は糖類を殆ど含有せず(但し、元々の糖類が0.06%だけ抽出物中に存在する)、かつ、アントシアニンも殆ど含有しない(但し、元々のアントシアニンが0.96%だけ存在する)。総糖類含量については、ザクロジュースから由来する糖類であり、主に、グルコース及びフルクトースなどの“果糖類”を意味する。糖類の含量は例えば、高速液体クロマトグラフ(以下、「HPLC」と言う)により測定される。
【0039】
ザクロ抽出物の代表的な組成及び1グラス(即ち、ザクロジュース(PJ)1杯分又は240mL)と同等量のプニカラギンを服用するのに必要な関連ジュース組成を下記の表1に要約して示す。表中の第2縦欄は、ザクロジュース(PJ)1杯(240mL)中に存在するプニカラギン量に対応する、プニカラギン374.6ppmをもたらすのに必要なザクロ抽出物の量の組成を示す。
【0040】
表中の第3縦欄は、元々のザクロジュース(PJ)に対する、ザクロ抽出物中に存在する各化合物の百分率(%)を示す。換言すれば、第3縦欄は、プニカラギンが100%回収され、ジュース中に元々存在する糖類0.06%がそのままザクロ抽出物中にも存在することを示す。前記のように、0.3%未満、通常は0.2%未満の元々のアントシアニンがザクロ抽出物中に存在する。ザクロジュースの平均組成のデータは本明細書の段落0022に記載されている。
【0041】
表1
PJ240mLと同等の 抽出物/ジュース
ザクロ抽出物の量 の相対的化合物
ザクロ抽出物 の組成 組成

化合物 含量, %(w/w) 含量, ppm 含量, %

アントシアアニン 0.05〜0.20 0.9 0.96

プニカラギン 30.0〜60.0 374.6 100

エラグ酸 0.5〜15.0 21.4 73.72

その他の加水分解 8.0〜15.0 107.0 106.95
性タンニン類

糖類 <3.0 20.0 0.06

有機溶媒 不検出 不検出 −−
【0042】
前記の含量はザクロ抽出物サンプルを分析することにより得られた。アントシアニンは分光光度分析法により、プニカラギン、エラグ酸及びその他の加水分解性タンニン類はHPLC法により、糖類はHPLC法により、及び有機溶媒はガスクロマトグラフ法(GC)により測定した。
【0043】
前記のように、前記の表1に示された比率に従うザクロ抽出物を使用することにより、食品の官能特性を危うくすることなく、食品(飲料を含む)を栄養強化することができ、しかも、同時に、栄養強化食品(すなわち、栄養製品)に、必要な健康上有用な効果を付与できる、という驚くべき事実が発見された。
【0044】
この結果は別の点からも驚くべきものである。なぜなら、前記のように、抽出作業中にアントシアニンが失われるために、ザクロ抽出物中に存在するアントシアニンが極めて少ないからである。
【0045】
従って、本発明による栄養製品において、プニカラギン/エラグ酸の比率(w/w%)は10/1〜35/1、好ましくは20/1〜35/1の範囲内であり、また、プニカラギン/添加ザクロ糖類の比率(w/w%)は10/1〜50/1、好ましくは30/1〜50/1の範囲内である。特に、抽出物中のプニカラギン対フルクトースの比率、なかんずく、本発明による食品類(例えば、最初からフルクトースを含まない食品類)中のプニカラギン対フルクトースの比率は20/1〜100/1の範囲内である。
【0046】
更に別の有利な側面は、本発明のザクロ抽出物が食品用等級の水溶性食物繊維、特に燕麦及び大麦などの、βグルカンを多量に含む水溶性食物繊維と併用されることである。これらの水溶性食物繊維は、乾燥工程で使用される担体として機能することができ、あるいは、単に、他の添加担体無しに乾燥により得られるザクロ抽出物と混合され、そして、好ましい30%以上の含量で提供される。好ましくは、水溶性食物繊維のβグルカン(乾燥基準)含量は30%以上であり、更に好ましくは30%〜60%の範囲内である。
【0047】
欧州特許出願第EP07004765.9号及び欧州特許出願第第EP08004242.7号による天然のザクロ抽出物を使用することにより、最終生成物中に有機溶媒が全く存在せず、同様に、特に、心臓血管系疾患(CVD)、動脈内へのプラーク堆積、動脈性高血圧症及びメタボリック症候群の予防又は治療に使用するという観点から、その他のザクロ製品中に存在する糖類による高カロリー値が避けられる。
【0048】
ザクロ抽出物(場合により水溶性食物繊維を併用)による栄養(又は栄養強化)食品(以下、「食品」という用語は「飲料」を含む)の製造方法は、ザクロ抽出物を、水溶性食物繊維と併用するか又は併用せずに、食品に添合し、そして混合し、いわゆる機能性又は機能性化栄養製品を得ることからなる。ザクロ抽出物の栄養製品への添加は、機能性化される各栄養製品を製造する技術的方法に従って混合及び均質化することにより得られる。
【0049】
人間又は動物が消費するための固形食品の機能性化(即ち、栄養強化)は、当業者に公知の技術に従って、成分類がその他の成分類と予備混合されているか、又は水中に分散されているか否かに拘わらず、ザクロ抽出物の添合及び均質分散を促進するために、通常は、製造工程のできるだけ早期の段階で、ザクロ抽出物を水溶性食物繊維と共に又はザクロ抽出物のみを添加する工程からなる。
【0050】
飲料の機能性化(栄養強化)は、ザクロ抽出物を水溶性食物繊維と共に又はザクロ抽出物のみを、飲料製造の技術的工程中に、添合し、溶解させる工程からなる。一般的な方法では、ザクロ抽出物粉末及び場合により、水溶性食物繊維及び更に親水性成分類などを所望の重量比で、飲料に添加し、そして、極めて厳格に制御された温度及び撹拌パラメータの下で、完全に溶解させる。この工程は、腐敗を避けるために、飲料が殺菌される前又は食用酸類及び/又は食品保存料が添加される前に行うことが好ましい。
【0051】
本明細書において、「栄養製品」という用語は、或る量のザクロ抽出物を添合した人間又は動物類が消費するための全ての食品類(飲料、塩、砂糖及びシーズニングを含む)を意味する。
【0052】
本発明による栄養製品、即ち、ザクロ抽出物を含む食品において、プニカラギン/エラグ酸の比率(w/w%)は10/1〜35/1、好ましくは20/1〜35/1の範囲内であり、また、プニカラギン/添加ザクロ糖類の比率(w/w%)は10/1〜50/1、好ましくは30/1〜50/1の範囲内である。本発明の栄養製品は好ましくは、プニカラギン含量が0.005%(w/w)〜5%(w/w)と同等の、或る濃度の本発明のザクロ抽出物を含有する。更に詳細には、本発明の栄養製品は、消費者が毎日プニカラギンを少なくとも10mg摂取する、上記に定義されたような或る量のザクロ抽出物を含有する。換言すれば、栄養製品は一杯分毎に少なくとも5mgのプニカラギンを供給する。
【0053】
本明細書において、「一杯分(serving)」という用語は、
- 一杯(helping)、即ち食事の一部として摂取する個別量の食品又は飲み物、又は
- 一食、即ち人間又は動物が食事中に食べるであろう食品又は飲み物の量
を意味する。
【0054】
前記の説明は、例えば、食品のカロリー含量を評価する時に使用される標準的な意味であり、別名「公約数(Common Measure)」とも呼ばれる。「一杯分(serving)」又は「公約数(Common Measure)」のリストは、米国農務省、農業リサーチサービス(Agricultural Research Service)のウエブサイトから入手可能な例えば、「米国農務省国立栄養データベース標準リファレンス,リリース20,栄養リスト(USDA National Nutrient Database for Standard Reference, Release 20, Nutrient List)」などで見つけ出すことができる。
【0055】
好ましい範囲は、0.01%(w/w)〜0.1%(w/w)の範囲内の栄養製品中のプニカラギン含量と同等のザクロ抽出物量からなる。
【0056】
この添加量のザクロ抽出物を含有する栄養製品は、例えば、果実香料飲料、オレンジ香料飲料、レモンライム香料飲料、ルートビアー、コーラ、フルーツジュース、フルーツ含有飲料、野菜ジュース、野菜含有飲料、スポーツ飲料、エネルギー飲料、香料付き水、酪農成分含有飲料、ミルク、ミルクセーキ、発酵乳、香料付きミルクオルチャッタ、ビール、ビール風味スパークリング飲料、ワイン、ワイン風味飲料、コーヒー、コーヒー系飲料、紅茶、紅茶系飲料、インフュージョン、前記飲料類の技術的に改変された誘導体類又は前記の飲料類又は誘導体類の2種類以上の混合物などである。
【0057】
別の好ましい範囲は、0.02%(w/w)〜0.20%(w/w)の範囲内のプニカラギン含量と同等のザクロ抽出物量からなる。この添加量のザクロ抽出物を含有する栄養製品は、例えば、
- ヨーグルト、アイスクリーム、チーズなどのような酪農製品、
- オリーブオイル(エキストラバージンオリーブオイル、バージンオリーブオイル、ランパンテオリーブオイル、精製オリーブオイル、粗製オリーブ搾り滓オイル、精製オリーブ搾り滓オイル)、ヒマワリ油、トウモロコシ油、大豆油、亜麻仁油、扁桃油、キャノーラ油、サフラワー油、パーム油、ココヤシ油、菜種油、藻類、オキアミ、大型ニシン、アンチョビ、マグロ(ツナ)などのような様々な原料から得られる植物油、魚介油又は魚油類、
- チキン、七面鳥、アヒル、ポーク、ビーフなどの肉類又はこれらから製造されたソーセージ、スモーク乾燥ミート又はコールドミート(例えば、生ハム、ボイルドハム、スモークドハム、サラミ、パテ、調理済みミート缶詰)などのような食肉製品又は鶏肉製品、
- パン、ベーグル、ビスケット、クッキー、ケーキ、パストリー、パイ、マカロニ、スパゲッティーなどのようなベーカリー製品又はパスタ系製品、
- トマト缶詰、アーティチョーク缶詰、パイナップル缶詰、ピーチ缶詰、ジャム、ママレード、ジェリー、ピクルスなどのような野菜又は果実コンサーブ類、
- エビ、ロブスター、イカ、カニ、イガイ、ザルガイ、マグロ(ツナ)、サーディンなどのようなシーフード缶詰又は魚類缶詰、
- アーモンド、ピーナッツ、ピスタッチオ、クルミ、ポップコーン、チョコレート、チューインガム、キャンディーなどのようなスナック又はスイーツ、
又は前記食品類の技術的に改変された誘導体類又はこれら食品類及び誘導体類の2種類以上の混合物類などである。
【0058】
更に別の好ましい範囲は、0.025%(w/w)〜0.25%(w/w)の範囲内のプニカラギン含量と同等のザクロ抽出物量からなる。この添加量のザクロ抽出物を含有する栄養製品は、例えば、生ペットフード缶詰、乾燥ペットフード、半生ペットフード、スナック、又は前記ペットフードの技術的に改変された誘導体類若しくは前記ペットフード及び誘導体類の2種類以上の混合物類などのようなペットフード類である。
【0059】
食品の風味、香味及び一般的な官能特性は、本発明によるザクロ抽出物の添加により改変されない。
【0060】
本発明によれば、ザクロ抽出物は0.5%〜5%(重量基準)の範囲内の量で塩に添加することもでき、また、0.2%〜2%(重量基準)の範囲内の量で砂糖に添加することもできる。本発明によるザクロ抽出物の低糖含量は、ザクロ抽出物をシーズニング(例えば、バルサミコ酢)、塩、砂糖及び甘味料(例えば、アスパルテーム)などに添加するために特に魅力的であり、これらの香味はザクロ抽出物により殆ど改変されない。
【0061】
最後に、本発明の他の側面は、心臓血管系疾患(CVD)、動脈内へのプラーク堆積、動脈性高血圧症及びメタボリック症候群の予防又は治療のために、水溶性食物繊維を併用した又は併用しないザクロ抽出物で機能性化された本発明の栄養製品を使用することに関する。水溶性食物繊維を併用した又は併用しないザクロ抽出物含有機能性食品又は飲料の摂取は、所定の養生法(好ましくは一日当たり2〜3杯分)に従うことが好ましい。また、慢性治療のように長期間に亘って摂取することが好ましく、可能であれば、消費者の人生を含めて1年間以上持続することが好ましい。
【0062】
本発明によれば、水溶性食物繊維を併用した又は併用しない所定量の本発明のザクロ抽出物を含有する機能性栄養製品の推奨日用量は、消費者が所定の養生法に従って一日当たり2〜3杯分摂取した場合、所期の目的を達するために十分な量でなければならない。或る実施態様では、プニカラギンは機能性栄養製品中に、1杯分当たり5mg〜5000mg、好ましくは15mg〜500mg、更に好ましくは40mg〜200mgの範囲内の量で存在する。
【0063】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、栄養強化即ち機能性化栄養製品は前記ザクロ抽出物とヒドロキシチロソルを含有する。好ましくは、ヒドロキシチロソルは、本願と同じ出願人による同時継続欧州特許出願第EP−A−07001791号明細書(出願日:2007年1月26日)及びPCT/IB2008/000173号明細書(出願日:2008年1月28日)に記載された抽出方法により得られる。
【実施例1】
【0064】
ザクロ抽出物含有機能性オレンジジュースの製造
濃縮オレンジジュースに水及び水溶性成分を添加することにより製品を製造した。次いで、ザクロ抽出物を添加し、混合し、そして、得られた製品を低温殺菌し、均質化した。最後に、製品を冷却し、包装した。アスコルビン酸、クエン酸及び類似物などのようなその他の成分を使用する場合、同じ方法に従って製造した。
【0065】
ザクロ抽出物(当該ザクロ抽出物のプニカラギン含量は50%w/wである)の含量は200mg/Kg〜1000mg/Kgの範囲内である。
【0066】
抗酸化能力の測定は次のようにして行った。
ザクロ抽出物(当該ザクロ抽出物のプニカラギン含量は50%w/wである)をそれぞれ0,200,400,600,800及び1000ppm含有する6本のガラス瓶のオレンジジュースを前記のようにして調製した。オレンジジュースサンプル40gを使用し、抗酸化能力(標準物質としてトロロックスを使用し、734nmで測定されたラジカルABTS吸収能力)を測定し、かつ、HPLCによりプニカラギン含量を測定した。測定結果を抗酸化能力対プニカラギン含量としてプロットした場合(図1のプロットa参照)、線形相関が得られた。具体的に、非機能性ジュースの抗酸化能力は1.39mMトロロックス当量/gであったが、本実施例で使用された最高重量比の機能性ジュースの抗酸化能力は3.13mMトロロックス当量/gであった。すなわち、抗酸化能力が2.3倍高められたジュースが得られたことを意味する。
【実施例2】
【0067】
ザクロ抽出物含有機能性乳製品の製造
酸素の不存在下で、ザクロ抽出物を液体牛乳に添加した。その後、得られた乳製品をU.H.T.処理(150℃で4〜6秒間加熱)し、そして、最後に酸素の不存在下で包装した。
【0068】
ザクロ抽出物(当該ザクロ抽出物のプニカラギン含量は50%w/wである)の含量は200mg/Kg〜1000mg/Kgの範囲内である。
【0069】
抗酸化能力の測定は次のようにして行った。
ザクロ抽出物(当該ザクロ抽出物のプニカラギン含量は50%w/wである)をそれぞれ0,200,400,600,800及び1000ppm含有する6本のガラス瓶の牛乳を前記のようにして調製した。牛乳サンプル40gを使用し、抗酸化能力(標準物質としてトロロックスを使用し、734nmで測定されたラジカルABTS吸収能力)を測定し、かつ、HPLCによりプニカラギン含量を測定した。測定結果を抗酸化能力対プニカラギン含量としてプロットした場合(図1のプロットb参照)、線形相関が得られた。非機能性牛乳の抗酸化能力は0mMトロロックス当量/gであったが、本実施例で使用された最高重量比の機能性牛乳の抗酸化能力は2.97mMトロロックス当量/gであった。
【実施例3】
【0070】
ザクロ抽出物含有機能性ボイルドハムの製造
ザクロ抽出物を予め製造用成分類の混合物(塩、グルコースシロップ、砂糖、数種類の食品添加物類)と混合しておき、この混合物を塩水溶液に添合した。その直後に、塩水溶液はハムピースの孔内に押し込まれた。温度10℃以下の減圧下で、このハムピースを何回か押し揉みした。次いで、このハムピースを4〜6℃の温度で少なくとも48時間の間、液体に浸して柔らかくした。その後、このハムピースを再び押し揉みし、そして、モールド内に配置された調理用袋内に減圧下で充填包装した。その後、このハムピースを、その中心部の温度が65℃に達するまで、スチームオーブン内で焼成した。その直後に、ボイルドハムピースを冷却し、そして、5℃で保存した。最後に、24時間経過後に、モールド内から取り出した。
【0071】
ザクロ抽出物(当該ザクロ抽出物のプニカラギン含量は50%w/wである)の含量は400mg/Kg〜4000mg/Kgの範囲内である。
【0072】
抗酸化能力の測定は次のようにして行った。
ザクロ抽出物(当該ザクロ抽出物のプニカラギン含量は50%w/wである)をそれぞれ0,400,1000,2000,3000及び4000ppm含有する6個のボイルドハムを前記のようにして調製した。各ボイルドハムのサンプル3gを使用し、抗酸化能力(標準物質としてトロロックスを使用し、734nmで測定されたラジカルABTS吸収能力)を測定し、かつ、HPLCによりプニカラギン含量を測定した。測定結果を抗酸化能力対プニカラギン含量としてプロットした場合(図2のプロットa参照)、線形相関が得られた。具体的に、非機能性ボイルドハムの抗酸化能力は0.11mMトロロックス当量/gであったが、本実施例で使用された最高重量比のボイルドハムの抗酸化能力は9.93mMトロロックス当量/gであった。すなわち、抗酸化能力が90.3倍高められたボイルドハムが得られたことを意味する。
【実施例4】
【0073】
ザクロ抽出物含有ツナ缶詰の製造
公知技術に従って、成分類がその他の乾燥成分類と予備混合又は水中に分散されていようとなかろうと、ザクロ抽出物を製造工程の出来るだけ早期の段階で添加し、その添合及び均質分散を促進させた。
【0074】
ザクロ抽出物(当該ザクロ抽出物のプニカラギン含量は50%w/wである)の含量は400mg/Kg〜4000mg/Kgの範囲内である。
【0075】
抗酸化能力の測定は次のようにして行った。
ザクロ抽出物(当該ザクロ抽出物のプニカラギン含量は50%w/wである)をそれぞれ0,400,1000,2000,3000及び4000ppm含有する6個のツナ缶詰を前記のようにして調製した。各ツナ缶詰のサンプル3gを使用し、抗酸化能力(標準物質としてトロロックスを使用し、734nmで測定されたラジカルABTS吸収能力)を測定し、かつ、HPLCによりプニカラギン含量を測定した。測定結果を抗酸化能力対プニカラギン含量としてプロットした場合(図2のプロットb参照)、線形相関が得られた。具体的に、非機能性ツナ缶詰の抗酸化能力は0mMトロロックス当量/gであったが、本実施例で使用された最高重量比のツナ缶詰の抗酸化能力は5.54mMトロロックス当量/gであった。
【実施例5】
【0076】
ザクロ抽出物含有機能性半生ドッグフードの製造
公知技術に従って、成分類がその他の乾燥成分類と予備混合又は水中に分散されていようとなかろうと、ザクロ抽出物を製造工程の出来るだけ早期の段階で添加し、その添合及び均質分散を促進させた。
【0077】
ザクロ抽出物(当該ザクロ抽出物のプニカラギン含量は50%w/wである)の含量は400mg/Kg〜5000mg/Kgの範囲内である。
【0078】
抗酸化能力の測定は次のようにして行った。
ザクロ抽出物(当該ザクロ抽出物のプニカラギン含量は50%w/wである)をそれぞれ0,433,1000,1600,4000及び5000ppm含有する6個の半生ドッグフードを前記のようにして調製した。各半生ドッグフードのサンプル3gを使用し、抗酸化能力(標準物質としてトロロックスを使用し、734nmで測定されたラジカルABTS吸収能力)を測定し、かつ、HPLCによりプニカラギン含量を測定した。測定結果を抗酸化能力対プニカラギン含量としてプロットした場合(図3参照)、線形相関が得られた。具体的に、非機能性半生ドッグフードの抗酸化能力は0.02mMトロロックス当量/gであったが、本実施例で使用された最高重量比の半生ドッグフードの抗酸化能力は6.95mMトロロックス当量/gであった。すなわち、抗酸化能力が347.5倍高められた半生ドッグフードが得られたことを意味する。
【実施例6】
【0079】
心臓血管系疾患の予防又は治療におけるザクロ抽出物の使用
6.1 動物
オスのスプラーグ・ドーリーラット40匹(平均体重150〜180g)をHarlan Interfauna Iberica SA社(スペインのバルセロナに所在)から購入し、全ての実験中、Murcia大学の動物実験施設内で飼育した。ラットを無作為に、各8匹毎の5個の実験群に割り振った。各群の4匹のラットをサブグループとして、照明(12時間毎の日中/夜間サイクル)、温度(22±2℃)及び湿度(60%)の標準的条件下で飼育ケージに収容した。
【0080】
6.2 食餌
この実験に使用した食餌は次の通りであった。
・ 対照食餌(C):固形の標準ラット食餌(Panlab社製)
・ アテローム性食餌(A):95.5%標準ラット食餌(Panlab社製)に、アテローム性動脈硬化症を誘発させるためにコレステロール(Aldrich社製)1.5%及びラード3%を添加。
・ アテローム性食餌+ザクロ抽出物(P):95.0%標準ラット食餌(Panlab社製)、コレステロール(Aldrich社製)1.5%、ラード3%及びザクロ抽出物0.5%(プニカラギン含量:50%w/w)。
・ 標準ラット食餌+強制経口投与(プニカラギン160mg/kg(体重))(G160):標準ラット食餌(Panlab社製)の他に、体重1Kg当たりプニカラギン160mgを水に入れて、強制経口投与により毎日服用させる。
【0081】
飲料水と食餌は任意に摂取させた。しかし、全研究を通じて、各ラット毎の平均給餌量は15g/日(ラット毎の実際の食餌摂取量は不知)であった。更に、G160食餌を与えられているラット群に、体重1Kg当たりプニカラギン160mgを水に入れて、強制経口投与により毎日服用させた。脂肪の酸化を避けるために、アテローム性食餌(A)及びアテローム性食餌+ザクロ抽出物(P)は使用直前まで4℃の冷暗所に保存した。また、摂取されずに残った前日の食餌は廃棄した。本研究に使用したP及びG160食餌内のプニカラギン濃度はHPLCにより測定した。
【0082】
10.3 実験計画
実験計画を下記の表2に示す。
【0083】
表2

群 初日から 31日目から 備考
30日目まで 60日目まで

1 食餌C 食餌C

2 食餌A 食餌A

3 食餌A 食餌C

4 食餌P 食餌P

5 食餌A 標準食餌+ G160 体重1Kg当たりプニカラギン
160mgを水に入れて、強制
経口投与により毎日服用させた。
【0084】
ラット群CC、AA、AC、PP及びAG160には次のようにして食餌を給餌した。ラット群CC、AA又はPPにはそれぞれ、食餌C、A又はPを2ヶ月間給餌し、ラット群ACには、食餌Aを1ヶ月間、続いて食餌Cを1ヶ月間給餌し、ラット群AG160には、標準ラット食餌(Panlab社製)を給餌した他に、体重1Kg当たりプニカラギン160mgを強制経口投与した。実験終了時点で、絶食ラットに麻酔をかけ、安楽死させた直後に心臓内穿刺を行い血液を試験管に捕集し、各試験管にクエン酸ナトリウム3.8%を添加した。分析のために血漿を遠心分離法により分離させた。
【0085】
6.4 血漿中の脂質の測定
総コレステロール(TC)、HDLコレステロール(HDL−C)及びトリグリセリド(TG)の血漿濃度を、(スペインのバルセロナに所在する)Biosystems社から購入した市販のキットを使用し、製造者の取り扱い指示書に従って、比色定量分析法により測定した。
【0086】
6.5 統計分析
データは、平均値±平均値の標準誤差(S.E.M.)として表示され、かつ、一方向ANOVA(分散分析)により分析した。グループ間の差分はTukeyテスト(多重比較検定)により評価した。差分はP値が<0.05である場合に、有意と見做された。データはSigmaStatソフトウェア(バージョン2.03)を用いて解析した。結果を図4に示す。
【0087】
6.6 考察
図4は、動脈硬化指数と、異なる食餌スキームに従って分類されたラットとの間の相関関係を示す。図4によれば、CC食餌(対照食餌を2ヶ月間給餌)で処理されたラット群1は最も低い動脈硬化指数を示すが、AA食餌(負対照のアテローム性食餌を2ヶ月間給餌)で処理されたラット群2は最も高い動脈硬化指数を示す。ラット群1とラット群2の間の動脈硬化指数差は、P値が<0.001なので、統計的に有意である。興味深い結果が、最初の1ヶ月間は食餌Aが給餌され、次の1ヶ月間はG160食餌が給餌されたラット群5について示されている。ラット群5とラット群1との間には、動脈硬化指数の統計的有意差が認められなかった。換言すれば、ラット群5については、G160食餌で処理された1ヶ月間の後、動脈硬化指数が、CC食餌(対照食餌を2ヶ月間給餌)で得られるレベルに匹敵する値にまで顕著に低下することが認められた。これに対して、標準食餌だけを1ヶ月間与えられ、続いて、アテローム性食餌で1ヶ月間処理されたラット群3については同じ結果は認められなかった。この場合、(負対照ラット群2の動脈硬化指数と統計的有意差が存在したとしても)動脈硬化指数は、対照食餌を2ヶ月間給餌されたラット群(ラット群1)について検出された動脈硬化指数に対して、統計的有意差(P値<0.05)を生じた。
【0088】
高コレステロール/トリグリセリドレベル、低HDLコレステロールレベル及び特に被酸化LDLは、動脈内のアテローム性プラーク堆積及びメタボリック症候群に付随するリスクファクター(危険因子)である。本発明者らは、ザクロ抽出物を含有する機能性栄養製品が心臓血管系発作に対するバイオマーカーを有していることの効果に関する研究及びザクロ抽出物を含有する機能性栄養製品を、ザクロ抽出物を有する類似の非機能性栄養製品と比較する研究を行った。測定された全てのパラメータを考慮すると(図4参照)、ザクロ抽出物を含有する栄養製品の規則的服用は心臓血管系を保護し、心臓血管系発作の発生を大なり小なり防止し、その結果、当該製品は健康増進栄養製品として申し分の無いものであるということが結論付けられる。
【0089】
特に注目すべき事実は、脂肪及びコレステロールを多く含む食餌にザクロ抽出物を添加すると(PP,ラット群4)、標準食餌(CC,ラット群1)と比較した場合、統計的有意差の無い動脈硬化指数値を維持することができることである。
【実施例7】
【0090】
高血圧症治療におけるザクロ抽出物の使用
7.1 動物
オスのスプラーグ・ドーリーラット24匹(試験開始時点の体重約200g)をHarlan Interfauna Iberica SA社(スペインのバルセロナに所在)から購入し、全ての実験中、Murcia大学の動物実験施設内で飼育した。ラットを無作為に、4個の実験群(各群当たりラット6匹)に割り振り、照明(12時間の日中/夜間サイクル)、温度(22±2℃)及び湿度(60%)の標準的条件下で飼育ケージに収容した。
【0091】
7.2 食餌
順化及び試験期間中、ラットには固形のラット用標準食餌(Panlab社製)を給餌した。飲料水及び餌は自由に摂取させた。順化期間の7日間が経過した後、下記の実験計画に従って処置を開始した。
【0092】
7.3 実験計画
ザクロ抽出物の効果を測定するため、高血圧症モデルの誘発用としてN−ニトロ−L−アルギニン−メチルエステル(L-NAME)を使用した。順化期間経過後、L-NAME誘発高血圧症治療の開始前に、動脈血圧の基礎データ(D0)をLetica5002測定器で測定した。
【0093】
ラットを下記の表3に示される実験計画に従って処置した。
【0094】
表3

L-NAME
群 含有飲料水 強制経口投与 備考

1 無し 無し

2 40mgL-NAME/kg 無し

3 40mgL-NAME/kg プニカラギン プニカラギンは水に添合
160mg/Kg(体重) して服用させた

4 40mgL-NAME/kg カプトプリル 正対照:カプトプリル 100mg/Kg(体重) 100mg(水に溶解させた)


*L−NAME処置剤は、ラット1匹当たり200gの体重を考慮し、そして、ラットへの平均一日給水量を40mL/日に標準化して、自由に摂取できる飲料水摂取を通して全てのラット群に投与した。但し、ラット毎の実際の水摂取量は不知。
【0095】
11.4 活性の実施計画(タイムテーブル)
ラットを習慣付けるために、順化期間中、Lectica5002測定器を用いて尻尾動脈の脈動を記録することにより動脈血圧の測定を行った。
【0096】
試験測定/処置の実施計画を下記の表4に要約して示す。
【0097】
表4

日数 動脈血圧の測定 L-NAME添加 強制経口投与
飲料水

0 有り 有り 無し

1 無し 有り 有り

2 有り 有り 有り

3 無し 有り 有り

4 有り 有り 有り

5 無し 有り 有り

6 無し 有り 有り

7 有り 有り 有り

【0098】
7.4 動脈血圧の測定
動脈血圧は前記のタイムテーブルに従って、尾カフ(tail-cuff)法により定期的に測定した。尾動脈の脈動を検出可能にするため、測定前にラットを37℃で10分間静置した。本研究で使用した測定器のLE5002(スペインのバルセロナに所在するLetica,Hospitalet社製)は正確なマイクロプロセッサプログラムと結合された高感度パルス変換器を有し、その結果、正確な動脈血圧の測定ができる。動脈血圧測定は、概日周期の如何なる影響も避けるために、一日の同じ時間に行った。
【0099】
7.5 統計分析
データは、平均値±平均値の標準誤差(S.E.M.)として表示され、かつ、SigmaStatソフトウェア(バージョン2.03)を用いて解析した。結果を図5に示す。
【0100】
7.6 考察
動脈性高血圧症は動脈内のアテローム性プラーク堆積及びメタボリック症候群に付随するリスクファクター(危険因子)である。本発明者らは、ザクロ抽出物が動脈血圧に及ぼす効果について研究し、そして、その結果をザクロ抽出物による処置を受けなかった対照と比較した。抗高血圧作用を示すザクロ抽出物は、心臓血管系発作の発生を大なり小なり防止し、従って、健康を増進する栄養補助食品と見做すことができ、また、抗高血圧作用を有する機能性食品及び機能性飲料を製造するための有効な手段であると結論付けられる。
【実施例8】
【0101】
心臓血管系疾患の予防又は治療におけるザクロ抽出物及び水溶性食物繊維の使用
8.1 動物
オスのスプラーグ・ドーリーラット72匹(平均体重150〜180g)をHarlan Interfauna Iberica SA社(スペインのバルセロナに所在)から購入し、全ての実験中、Murcia大学の動物実験施設内で飼育した。ラットを無作為に、各群8匹の9個の実験群に割り振った。各群の4匹のラットをサブグループとして、照明(12時間毎の日中/夜間サイクル)、温度(22±2℃)及び湿度(60%)の標準的条件下で飼育ケージに収容した。
【0102】
8.2 食餌
この実験に使用した食餌は次の通りであった。
・ 対照食餌(C):固形の標準ラット食餌(Panlab社製)
・ アテローム性食餌(A):95.5%標準ラット食餌(Panlab社製)に、アテローム性動脈硬化症を誘発させるためにコレステロール(Aldrich社製)1.5%及びラード3%を添加。
・ 標準食餌+強制経口投与(プニカラギン40mg/kg(体重))(G40):標準ラット食餌(Panlab社製)の他に、体重1Kg当たりプニカラギン160mgを水に入れて、強制経口投与により毎日服用させた。
・ 水溶性食物繊維食餌(F):95%標準ラット食餌(Panlab社製)と5%水溶性食物繊維
・ 水溶性食物繊維+強制経口投与(プニカラギン40mg/kg(体重))(FG):95%標準ラット食餌(Panlab社製)と5%水溶性食物繊維の他に、体重1Kg当たりプニカラギン40mgを水に入れて、強制経口投与により毎日服用させた。
・ アテローム性食餌+強制経口投与(プニカラギン40mg/kg(体重))(AG):95.5%標準ラット食餌(Panlab社製)、1.5%コレステロール(Aldrich社製)、3%ラードの他に、体重1Kg当たりプニカラギン40mgを水に入れて、強制経口投与により毎日服用させた。
・ アテローム性食餌+水溶性食物繊維(AF):90.5%標準ラット食餌(Panlab社製)、アテローム性動脈硬化症を誘発させるための1.5%コレステロール(Aldrich社製)及び3%ラードと、5%水溶性食物繊維
・ アテローム性食餌+水溶性食物繊維+強制経口投与(プニカラギン40mg/kg(体重))(AFG):90.5%標準ラット食餌(Panlab社製)、アテローム性動脈硬化症を誘発させるための1.5%コレステロール(Aldrich社製)及び3%ラードと、5%水溶性食物繊維の他に、体重1Kg当たりプニカラギン40mgを水に入れて、強制経口投与により毎日服用させた。
【0103】
飲料水と食餌は任意に摂取させた。しかし、全研究を通じて、各ラット毎の平均給餌量は15g/日(ラット毎の実際の食餌摂取量は不知)であった。更に、G40、FG、AG及びAFG食餌を与えられている各ラット群に、体重1Kg当たりプニカラギン40mgを水に入れて、強制経口投与により毎日服用させた。脂肪の酸化を避けるために、アテローム性食餌は使用直前まで4℃の冷暗所に保存した。また、摂取されずに残った前日の食餌は廃棄した。G40、FG、AG及びAFG食餌内のプニカラギン濃度はHPLCにより測定した。
【0104】
8.3 実験計画
実験計画を下記の表5に示す。
【0105】
表5

群 初日から 31日目から 備考
30日目まで 60日目まで

1 食餌C 食餌C

2 食餌A 食餌A

3 食餌A 食餌C

4 食餌A 食餌F

5 食餌A 食餌G40 体重1Kg当たりプニカラギン40mg を水に入れて、強制経口投与により毎日 服用させた。

6 食餌A 食餌FG 体重1Kg当たりプニカラギン40mg を水に入れて、強制経口投与により毎日 服用させた。

7 食餌AF 食餌AF

8 食餌AG 食餌AG 体重1Kg当たりプニカラギン40mg を水に入れて、強制経口投与により毎日 服用させた。

9 食餌AFG 食餌AFG 体重1Kg当たりプニカラギン40mg を水に入れて、強制経口投与により毎日 服用させた。
【0106】
ラット群1、2、7、8及び9のそれぞれには、2ヶ月間食餌C、A、AF、AG又はAFGを給餌した。ラット群3、4、5及び6のそれぞれには、最初の1ヶ月間は食餌Aを給餌し、次の1ヶ月間は食餌C、F、G40又はFGを給餌した。実験終了時点で、絶食ラットに麻酔をかけ、安楽死させた直後に心臓内穿刺を行い血液を試験管に捕集した。分析のために血清を遠心分離法により分離させた。
【0107】
8.4 統計分析
データは、平均値±平均値の標準誤差(S.E.M.)として表示され、かつ、一方向ANOVA(分散分析)により解析した。グループ間の差分はTukeyテスト(多重比較検定)により評価した。差分はP値が<0.05である場合に、有意と見做された。データはSigmaStatソフトウェア(バージョン2.03)を用いて解析した。
【0108】
ラットの体重に関するデータは、平均値±平均値の標準誤差(S.E.M.)として表示される。また、データはSigmaStatソフトウェア(バージョン2.03)を用いて解析した。
【0109】
8.5 考察
得られた結果を図6に示す。動脈硬化指数は前記のように表5に示される各ラット群と相関されている。
【0110】
図6は、動脈硬化指数と、異なる食餌スキームにより分類されたラットとの間の相関関係を示す。CC食餌(対照食餌を2ヶ月間)で処理されたラット群1は最低動脈硬化指数を示すが、AA食餌(アテローム性食餌(負対照)を2ヶ月間)で処理されたラット群2は最高動脈硬化指数を示す。P値<0.001なので、ラット群1とラット群2との間には動脈硬化指数の統計的有意差が存在する。興味深い結果が、最初の1ヶ月間は食餌Aで処理され、次の1ヶ月間は食餌FGで処理されたラット群6について示されている。ラット群6とラット群1との間の動脈硬化指数の統計的有意差は認められなかった。換言すれば、ラット群6については、食餌FGで1ヶ月間処理した後、食餌CC(対照食餌を2ヶ月間)で得られるレベルに匹敵する値に対して、その動脈硬化指数値が顕著に低下(食餌A−Cで処理されたラット群3について得られた平均値よりも30.2%低下)することが認められた。これに対して、アテローム性食餌で1ヶ月間処理した後、次の1ヶ月間は標準食餌の他に水溶性食物繊維(食餌F)だけで処理したラット群4又は次の1ヶ月間は標準食餌の他に体重1kg当たりプニカラギン40mgを強制経口投与したラット群5については同じ効果が認められなかった。この場合、(負対照ラット群2の動脈硬化指数と統計的有意差が存在したとしても)動脈硬化指数は、対照食餌を2ヶ月間給餌されたラット群(ラット群1)について検出された動脈硬化指数に対して、統計的有意差(P値<0.05)を生じた。驚くべきことに、食餌A−Cで処理されたラット群3について得られた平均値を越える動脈硬化指数値の低下率は、ラット群4の場合、6.9%、ラット群5の場合、17.2%であった。この事実は、ラット群6について得られた30.2%の低下率と比較した場合、30.2%は驚くべき数値であり、水溶性食物繊維と本発明のザクロ果実抽出物との併用による相乗効果であることを示唆する。
【0111】
別の興味深い結果は、本実験において食餌AFGで処理されたラット群9について示されている。ラット群9とラット群1との間の動脈硬化指数の統計的有意差は認められなかった。換言すれば、水溶性食物繊維とプニカラギン高含有ザクロ果実抽出物の強制経口投与が追加されたアテローム性食餌で2ヶ月間処理した後、食餌AFG−AFGが給餌されたラット群9については、対照食餌により得られるレベルに匹敵する値と変わらない動脈硬化指数値が認められた。これに対して、2ヶ月間の実験期間中、食餌AF又はAGだけが給餌されたラット群7(食餌AF−AF)及びラット群8(食餌AG−AG)については同じ効果は認められなかった。この場合、(負対照ラット群2の動脈硬化指数と統計的有意差が存在したとしても)動脈硬化指数値は、対照食餌を2ヶ月間給餌されたラット群(ラット群1)について検出された動脈硬化指数値に対して、統計的有意差(P値<0.05)を生じた。ラット群9から得られた動脈硬化指数値は、本発明により得られたプニカラギン高含有ザクロ果実抽出物による予防効果を示唆し、また、水溶性食物繊維と本発明によるザクロ果実抽出物との併用による効果の改善を示唆する。
【実施例9】
【0112】
肥満はメタボリック症候群に付随するリスクファクター(危険因子)であり、メタボリック症候群を有する人々は心臓血管系疾患の高いリスクを有する。本発明者らは、ラットの体重(BW)に対する水溶性食物繊維とザクロ抽出物の併用効果を研究し、そして、この効果を、水溶性食物繊維と本発明によるザクロ果実抽出物を併用せずに処置した対照群と比較した。
【0113】
図7は、異なる食餌スキームにより分類され、そして前記実施例8の表5に示された実験計画に従って給餌飼育された、実施例8で使用されたラットと同じラットの体重と実験期間との間の相関関係を示す。
【0114】
図7によれば、2ヶ月間の実験期間終了後、食餌CC(対照食餌)で処理されたラット群1は最低体重を示すが、食餌AA(負対照のアテローム性食餌)で処理されたラット群2は最高体重を示す。総コレステロール(TC)、HDLコレステロール(HDL−C)及びトリグリセリドの血漿濃度について得られるデータの正しい解釈に悪影響を及ぼすであろうラットの肥満を避けるために、アテローム性食餌及び総実験期間を選択した。
【0115】
実験期間中、食餌AFGで処理されたラット群9のラットについて興味深い結果が示された。2ヶ月間の実験期間中、ラット群9及びラット群1の間で、ラットの体重の類似的傾向が認められた。換言すれば、水溶性食物繊維とプニカラギン高含有ザクロ果実抽出物の強制経口投与が追加されたアテローム性食餌で2ヶ月間処理した後、食餌AFG−AFGが給餌されたラット群9について、対照食餌により得られた値に匹敵するラット体重が認められた。これに対して、2ヶ月間の実験期間中、食餌AF又は食餌食餌AGだけが給餌された各ラット群7及びラット群8については同じ効果は認められなかった。この場合、ラット群7及びラット群8のラット体重傾向が発現し、最高体重傾向のラット群2と最低体重傾向のラット群1との間の位置に入る。ラット群9により示される体重傾向は、本発明によるザクロ果実抽出物と水溶性食物繊維との併用による過体重/肥満予防効果を示唆する。
【0116】
全ての測定パラメータを考慮すれば、本発明によるザクロ果実抽出物と水溶性食物繊維との併用物の規則的服用は心臓血管系を保護し、大なり小なり、動脈内におけるアテローム性プラークの堆積及びメタボリック症候群に付随すると考えられる幾つかのリスクの発現を防止するものと結論付けることができる。従って、機能性食品及び栄養補助食品の製造に使用すべき、健康促進天然抽出物であると十分に考えられる。
【0117】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。用語「又は」に関して、例えば「A又はB」は、「Aのみ」、「Bのみ」ならず、「AとBの両方」を選択することも含む。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。
【符号の説明】
【0118】
図1 縦軸:抗酸化能力,mMトロロックス当量/g(オレンジジュース又は牛乳)
横軸:(プニカラギン)g/Kg (オレンジジュース又は牛乳)
プロットaはオレンジジュース、プロットbは牛乳

図2 縦軸:抗酸化能力,mMトロロックス当量/g(ボイルドハム又はツナ缶詰)
横軸:(プニカラギン)g/Kg (オレンジジュース又はツナ缶詰)
プロットaはボイルドハム、プロットbはツナ缶詰

図3 縦軸:抗酸化能力,mMトロロックス当量/g(ドッグフード)
横軸:(プニカラギン)g/Kg (ドッグフード)

図4 縦軸:動脈硬化指数(総コレステロール値/HDLコレステロール値)
横軸:ラット群1 ラット群2 ラット群3 ラット群4 ラット群5
*Turkeyテストにより評価した対照ラット群1との有意差(P<0.05)を示す
**Turkeyテストにより評価した対照ラット群1との有意差(P<0.001)を示す

図5 縦軸:収縮期血圧(mmHg)
横軸:ラット群1 ラット群2 ラット群3 ラット群4

図6 縦軸:動脈硬化指数(総コレステロール値/HDLコレステロール値)
横軸:ラット群1 ラット群2 ラット群3 ラット群4 ラット群5 ラット群6 ラット群7 ラット群8 ラット群9
*Turkeyテストにより評価した対照ラット群1との有意差(P<0.05)を示す
**Turkeyテストにより評価した対照ラット群1との有意差(P<0.001)を示す

図7 縦軸:体重(BW)(g)
横軸:日数
(枠内、上から):ラット群1,ラット群2,ラット群7,ラット群9,ラット群8

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プニカラギン、エラグ酸及び糖類を含有するザクロ抽出物であって、
プニカラギン/エラグ酸の比率(w/w%)が10/1〜35/1の範囲内であり、プニカラギン/糖類の比率(w/w%)が10/1〜50/1の範囲内であり、総糖類含量が3%(w/w)以下であり、更に、総フェノール類含量が少なくとも20%(w/w)(没食子酸当量として表示される)で、水溶性が少なくとも3%w/v(30g/リットル)であることを特徴とするザクロ抽出物。
【請求項2】
プニカラギン含量が少なくとも30%(w/w)であり、エラグ酸含量が2%(w/w)以下であり、総フェノール類含量が少なくとも30%(w/w)(没食子酸当量として表示される)であり、水溶性が少なくとも7%w/v(70g/リットル)であり、総糖類含量が2%(w/w)以下であり、かつ、残留有機溶媒含量が1ppb未満である請求項1記載のザクロ抽出物。
【請求項3】
水溶性が少なくとも10%w/v(100g/リットル)であり、総糖類含量が1%(w/w)以下である請求項2記載のザクロ抽出物。
【請求項4】
βグルカン(乾燥基準)含量が少なくとも30%の水溶性食物繊維を含有する請求項1〜3の何れかに記載のザクロ抽出物。
【請求項5】
前記水溶性食物繊維は、オート麦βグルカンリッチ水溶性食物繊維、大麦βグルカンリッチ水溶性食物繊維及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項4記載のザクロ抽出物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のザクロ抽出物からなる機能性食品又は機能性飲料である栄養製品であって、前記製品におけるプニカラギン/エラグ酸の比率(w/w%)が10/1〜35/1の範囲内であることを特徴とする栄養製品。
【請求項7】
プニカラギン/添加ザクロ糖類の比率(w/w%)が10/1〜50/1の範囲内である請求項6記載の栄養製品。
【請求項8】
フルクトースを含有し、前記栄養製品中のプニカラギン/フルクトースの比率(w/w%)が60/1〜100/1の範囲内である請求項6又は7記載の栄養製品。
【請求項9】
水溶性食物繊維を含有する請求項6〜8の何れかに記載の機能性栄養製品。
【請求項10】
プニカラギン含量が0.005%w/w〜5%w/wの範囲内であることを特徴とする請求項6〜8の何れかに記載の機能性栄養製品。
【請求項11】
ヒドロキシチロソルを更に含有する請求項6〜10の何れかに記載の機能性栄養製品。
【請求項12】
前記製品は、飲み物、飲料、酪農製品、植物油、海産食用油、魚介食用油、肉製品、鶏肉製品、ベーカリー製品、パスタ系製品、野菜コンサーブ、果実コンサーブ、シーフード缶詰、魚類缶詰、スナック、スゥイーツ、塩、砂糖、シーズニング及びこれらの2種類以上の組合せからなる群から選択される請求項6〜11の何れかに記載の栄養製品。
【請求項13】
ペット用又は動物用機能性食品である請求項6〜12の何れかに記載の栄養製品。
【請求項14】
製品当たり少なくとも5mgのプニカラギンを含有する請求項6〜13の何れかに記載の栄養製品の製造方法であって、前記栄養製品の製造過程で、請求項1〜5の何れかに記載のザクロ抽出物を添加することからなる栄養製品の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜5の何れかに記載のザクロ抽出物を含有する栄養補助食品。
【請求項16】
心臓血管系疾患、動脈性高血圧症、動脈内へのプラーク堆積及びメタボリック症候群からなる群から選択される1つ以上の症状の予防又は治療に使用される請求項1〜5の何れかに記載のザクロ抽出物。
【請求項17】
食品及び飲料の脂質酸化を防止又は阻止するための食品添加物として使用される請求項1〜5の何れかに記載のザクロ抽出物。
【請求項18】
黴、細菌及びその他の微生物による食品及び飲料の腐敗を防止又は阻止するための食品添加物として使用される請求項1〜5の何れかに記載のザクロ抽出物。
【請求項19】
心臓血管系疾患、動脈性高血圧症、動脈内へのプラーク堆積及びメタボリック症候群の予防又は治療に使用される請求項6〜13の何れかに記載の栄養製品。
【請求項20】
心臓血管系疾患、動脈性高血圧症、動脈内へのプラーク堆積及びメタボリック症候群の予防又は治療用の薬剤及び/又は組成物の製造に使用される請求項1〜5の何れかに記載のザクロ抽出物。
【請求項21】
心臓血管系疾患、動脈性高血圧症、動脈内へのプラーク堆積及びメタボリック症候群の予防又は治療用の薬剤及び/又は組成物の製造に使用される請求項6〜13の何れかに記載の栄養製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2010−539077(P2010−539077A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523602(P2010−523602)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【国際出願番号】PCT/IB2008/002316
【国際公開番号】WO2009/031023
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(509211022)プロベルテ ファーマ,エス.エー. (5)
【Fターム(参考)】