説明

シチジンアナログ及びシチジン誘導体の医薬配合物

本発明は、5-アザシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2'-フルオロシチジン、2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン、及び、シトシン1-β-D-アラビノフラノシドのようなシチジンアナログ、並びに、シチジン誘導体の医薬配合物と共に、当該配合物の製造方法を提供する。とりわけ、当該シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体は、安定化するため、及び/又は、当該薬剤の溶解性を高めるために、シクロデキストリン化合物と共に処方される。当該医薬配合物の使用のためのキット、及び、方法もまた提供され、これには、癌、及び、血液疾患のような、状態、又は、疾患の治療をするための当該シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体の投与方法が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体の医薬配合物に関し、さらにとりわけ、シクロデキストリン化合物を含む、デシタビン、及び、5-アザシチジンのようなシチジンアナログ、及び、シチジン誘導体の水溶性配合物、並びに、癌、及び、血液疾患のような種々の疾患、及び、状態の治療のための医薬配合物の調製方法、並びに、使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5-アザ-2'-デオキシシチジン(デシタビンとも呼ばれる)、及び、5-アザシチジン(アザシチジンとも呼ばれる)のような、アザシトシンヌクレオシドが、その関連した天然のヌクレオシドである、それぞれ、2'-デオキシシチジン、及び、シチジンのアンタゴニストとして、いくつかは開発されている。アザシトシンとシトシンとの間の唯一の構造的な相違は、シトシンではシトシン環の5位が炭素であるのに対して、アザシトシンにおけるシトシン環の5位には窒素が存在することである。
デシタビンの二つの異性体フォームが、識別可能である。β-アノマーは、活性型フォームである。水溶液中のデシタビンの分解様式は、(a)活性型β-アノマーから、不活性型α-アノマーへの変換(Pompon et al. (1987) J. Chromat. 388: 113-122);(b)アザ-ピリミジン環の環開裂により、N-(ホルミルアミジノ)-N'-β-D-2'-デオキシ-(リボフラノシ)-尿素を形成する(Mojaverian and Repta (1984) J. Pharm. Pharmacol. 36:728-733);及び、(c)それに続く、グアニジン化合物の形成(Kissinger and Stemm (1986) J. Chromat. 353:309-318)、である。
【0003】
デシタビンは、多様な薬理学的特性を有する。分子的レベルにおいて、デシタビンは、S期依存的にDNAに取り込まれる。細胞レベルにおいて、デシタビンは、細胞分化を誘導し、血液毒性を及ぼし得る。in vivo での短い半減期にもかかわらず、デシタビンは、優れた組織分布を有する(Van Groeningen CJ, et al. (1986)Cancer Res. 46:4831-4836;、及び、 Chabot GG and Momparler RL(1990)Proceedings of the Workshop on 5-aza-2'-deoxycytidine(Momparler RL and De Vos D. eds), PCH Publication, pp. 105-115)。
デシタビンの機能の一つは、特異的に、そして強力にDNAのメチル化を阻害する能力である。5-メチルシトシンへのシトシンのメチル化は、DNAレベルで起こる。細胞内で、デシタビンは第一に、主に細胞周期のS期の間に合成されるデオキシシチジンリン酸化酵素により、その活性型フォームであるリン酸化5-アザ-デオキシシチジンに変換される。デオキシシチジンリン酸化酵素の触媒作用部位へのデシタビンの親和性は、天然基質であるデオキシシチジンと同様である。Momparler et al.(1985)30:287-299。デオキシシチジンリン酸化酵素により、その三リン酸フォームに変換された後、デシタビンは、天然基質である、dCTPと同様の速度で、複製しているDNA中に取り込まれる。Bouchard and Momparler(1983)Mol. Pharmacol. 24:109-114。
【0004】
DNA鎖へのデシタビンの取り込みは、疾患としての癌の特徴である、異常な過剰メチル化の転換による低メチル化という効果を有する。各々の類の分化型細胞は、それ自身の別個のメチル化パターンを有する。染色体複製の後、このメチル化パターンを保存するために、親鎖上の5-メチルシトシンは、相補的な娘DNA鎖上のメチル化を指示する役目を果たす。シトシンの5位の炭素の窒素への置換は、このような正常なDNAのメチル化過程を妨げる。メチル化の特異的部位における、5-メチルシトシンのデシタビンによる交換は、DNAメチルトランスフェラーゼの不可逆的な不活性化を引き起こし、これはおそらく、酵素とデシタビンとの間の共有結合の形成に起因する。Juttermann et al.(1994)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11797-11801。具体的にいえば、DNAメチルトランスフェラーゼの阻害、メチル化に必要な酵素、癌抑制遺伝子の異常なメチル化が、抑制される。
【0005】
デシタビンは通常、注射用の無菌の凍結乾燥粉末として、リン酸二水素カリウムのような緩衝化塩、及び、水酸化ナトリウムのような pH モディファイヤーと共に提供される。例えば、デシタビンは、SuperGen, Inc.により、50 mg のデシタビン、一塩基のリン酸二水素カリウム、及び、水酸化ナトリウムを含む、20 mL のガラス製バイアル中に充填された凍結乾燥粉末として提供される。10 mL の注射用滅菌水で再構成する場合は、1 mL につき、5 mg のデシタビン、6.8 mg のKH2PO4、及び、およそ 1.1 mg のNaOHが含まれる。結果として生じる溶液の pH は、6.5 〜 7.5 である。この再構成された溶液をさらに、冷たい注入用液体、つまり、0.9 % 塩化ナトリウム;又は、5 % デキストロース;又は、5 % グルコース;又は、乳酸リンガー(Lactated Ringer's)中で、1.0 mg/mL、又は、0.1 mg/mL まで希釈することもできる。未開封のバイアルは通常、最初のパッケージ中で、室温(2 ℃ 〜 25 ℃;32 ゜F 〜 77 ゜F)で貯蔵される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
デシタビンは最も典型的には、ボーラス静脈注射、連続的な静脈注入、又は、静脈注入といった注入により患者に投与される。デシタビンと類似したアザシチジンもまた、水溶液として処方され、静脈内投与により患者に運搬される。アザシチジンの臨床試験によれば、より長い注入、又は、連続的な注入が、より短い注入よりも、より効果的である。Santini et al.(2001)Ann. Int. Med. 134:573-588。しかしながら、静脈注入の期間は、デシタビン、又は、アザシチジンの分解/不安定性、及び、これらの薬剤の水溶液への低い溶解性により制限される。本発明は、当該問題への画期的な解決手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要約)
本発明は、シチジンアナログ、若しくは、シチジン誘導体(例えば、デシタビン、及び、5-アザシチジン)の配合物、種々の疾患、若しくは、状態の抑制のための、若しくは、治療のための、シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体を使用するキット、及び、方法を提供する。本発明に従って、シチジンアナログ/誘導体は、シクロデキストリン化合物と共に処方され、好ましくは、水溶性溶媒中で溶媒和される。この画期的なアプローチは、リン酸バッファー中の、デシタビン、又は、5-アザシチジンの従来の臨床の水溶性配合物に伴う、化学的不安定性、貯蔵、及び、輸送の不都合、並びに、冷たい輸液に起因する患者の不快感といった問題を回避する。
【0008】
本発明のある側面において、シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体、及び、シクロデキストリン化合物を含み、好ましくは固形の、医薬組成物が提供される。当該組成物はさらに、バッファー塩、酸、アルカリ、及び/又は、賦形剤を含んでいてもよい。水溶液中に溶解すると、シチジンアナログ/誘導体は、シクロデキストリン化合物と錯体を形成する。当該医薬組成物は、動物対象へ、経口的に、非経口的に、局所的に、腹腔内に、静脈内に、動脈内に、経皮的に、舌下に、筋肉内に、直腸に、経頬的に(transbuccally)、鼻腔内に、リポソーム的に(liposomally)、吸入により、膣に、眼内に、局所運搬により(例えば、カテーテル、又は、ステントによる)、皮下に、脂肪内に、関節内に、又は、髄腔内に運搬するのに適した種々の剤形であってもよい。当該医薬組成物は、水溶性溶媒で溶媒和され、その後、投与対象へ、静脈内に、筋肉内に、又は、皮下に投与されてもよい。
【0009】
本発明の別の側面において、水溶性医薬配合物が、シチジンアナログ/誘導体を患者へ投与するために提供される。ある実施態様において、当該配合物は、シクロデキストリン化合物を含む溶媒中で溶媒和されたデシタビンを含んでいる。
シチジンアナログ/誘導体は好ましくは、デシタビン、5-アザシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2'-フルオロシチジン、2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン(ゲムシタビンとも呼ばれる)、又は、シトシン1-β-D-アラビノフラノシド(ara-Cとも呼ばれる)である。
【0010】
シチジンアナログ/誘導体は、塩の形態であってもよく、好ましくは、医薬的に許容される塩であってもよい。シチジンアナログの塩の例としては、無機酸、又は、有機酸から調製された医薬的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。当該無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸、及び、リン酸が挙げられる。適切な有機酸は、脂肪族の酸、脂環式の酸、芳香族の酸、アリール脂肪族の酸、複素環式の酸、カルボン酸、及び、スルホン酸の部類の有機酸から選択されてもよく、これらの例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、マレイン酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルファニル酸、メシル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルゲン酸、β-ヒドロキシ酪酸、マロン酸、ガラクティック(galactic)、及び、ガラクツロン酸が挙げられる。好ましくは、当該酸は、塩酸、L-乳酸、酢酸、リン酸、(+)-L-酒石酸、クエン酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、コハク酸、EDTA、マレイン酸、メタンスルホン酸、HBr、HF、HI、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、亜リン酸、過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、カルボン酸、スルホン酸、アスコルビン酸、炭酸、及び、フマル酸からなる群より選択される。とりわけ、当該スルホン酸は、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、及び、トルエンスルホン酸からなる群より選択される。
【0011】
シクロデキストリン化合物は、結晶質、及び、非晶質であってもよい。好ましくは、シクロデキストリン化合物は、非晶質の、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、又は、γ-シクロデキストリンであり、より好ましくは、β-シクロデキストリンの、ヒドロキシプロピル誘導体、ヒドロキシエチル誘導体、グルコシル誘導体、マルトシル誘導体、及び、マルトトリオシル誘導体、カルボキシアミドメチル-β-シクロデキストリン、カルボキシメチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、及び、ジエチルアミノ-β-シクロデキストリンからなる群より選択された、アルキル化されたシクロデキストリン、又は、ヒドロキシアルキルシクロデキストリンである。
さらに、シクロデキストリン化合物は、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体であってもよく、好ましくは、モノ-置換型β-シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩、テトラ-置換型β-シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩、又は、ヘプタ-置換型βシクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩であってもよく、さらに好ましくは、β-シクロデキストリンスルホブチルエーテル七ナトリウム塩(CAPTISOL(登録商標))であってもよい。
【0012】
実施態様に従って、医薬配合物中の当該シチジンアナログ/誘導体の量は、溶媒 1 mL につき、0.1 mg 〜 200 mg であり、1 mg 〜 100 mg、2 mg 〜 50 mg、5 mg 〜 30 mg、10 mg 〜 25 mg であってもよい。
シチジンアナログ/誘導体の質量のシクロデキストリン化合物の質量に対する比率は、1:1 〜 1:5000 の範囲であり、1:10 〜 1:300 の範囲、1:1 〜 1:200 の範囲、又は、1:5 〜 1:50 の範囲であってもよい。
さらに、医薬配合物は、少なくとも 60 %(v/v) の水、少なくとも 70 %(v/v) の水、少なくとも 80 %(v/v) の水、少なくとも 90 %(v/v) の水、少なくとも 95 %(v/v) の水、又は、少なくとも 99 %(v/v) の水を含んでいてもよい。水溶性医薬配合物中の、シクロデキストリン化合物の濃度は、0.1 % w/w 〜 80 % w/w であり、さらに、1 % w/w 〜 60 % w/w であってもよく、さらに、5 % w/w 〜 50 % w/w であってもよく、さらに、10 % w/w 〜 40 % w/w であってもよいし、又は、20 % w/w 〜 40 % w/w であってもよい。
またさらに、医薬配合物はさらに、プロピレングリコール、グリセリン、並びに/又は、PEG300、PEG400、及び、PEG1000のようなポリエチレングリコール(PEG)を含んでいてもよい。
【0013】
実施態様に従ってさらに、医薬組成物はさらに、当該配合物が結果としておよそ pH 4 〜 およそ pH 8 となるような割合で、当該配合物に加えられた酸性化物質を含んでいてもよい。当該配合物の pH を制御するために酸性化物質を加えることは、当該シチジンアナログ/誘導体の溶媒への素早い溶解を容易にし、当該配合物の長期間安定性を向上させると考えられる。
酸性化物質は、有機酸であってもよい。有機酸の例としては、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、ギ酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、マレイン酸、グルタミン酸、コハク酸、アスパラギン酸、ジアトリゾ酸、及び、酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。酸性化物質は、塩酸、硫酸、リン酸、及び、硝酸といった無機酸であってもよい。
あるバリエーション中で、酸性化物質は、溶媒 1 mL につき、0.01 mg 〜 0.2 mg の、さらに、0.04 mg 〜 0.1 mg の、又は、0.03 mg 〜 0.07 mg の濃度のアスコルビン酸である。
医薬配合物の pH は、pH 4 〜 pH 8 に、好ましくは、pH 5 〜 pH 7 に、さらにより好ましくは、pH 5.5 〜 pH 6.8 に調整されていてもよい。
【0014】
医薬配合物はさらに、組成物の安定性を向上するのに十分な量で、溶液の状態で製品を維持するのに十分な量で、又は、本発明の配合物の投与に伴う副作用(例えば、見込まれる潰瘍、血管刺激作用、又は、溢血)を回避するのに十分な量で加えられた賦形剤を含んでいてもよい。当該賦形剤の例としては、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、及び、デキストロースが挙げられるが、これらに限定されない。
医薬配合物は好ましくは、2 ℃ 〜 8 ℃ で、5時間、10時間、15時間、24時間、又は、2日間、4日間、7日間、14日間、21日間、28日間、若しくは、それより長い日数の間の貯蔵で、少なくとも 80 % 、少なくとも 90 %、少なくとも 95 %、又は、それ以上安定である。医薬配合物はまた好ましくは、20 ℃ 〜 25 ℃ で、5時間、10時間、15時間、24時間、又は、2日間、5日間、7日間、14日間、21日間、28日間、若しくは、それより長い日数の間の貯蔵で、少なくとも 80 % 、少なくとも 90 %、少なくとも 95 %、又は、それ以上安定である。
【0015】
別の実施態様において、医薬配合物は、シチジンアナログ/誘導体、及び、シクロデキストリン化合物を、少なくとも 60 %(v/v) の水、少なくとも 70 %(v/v) 、少なくとも 80 %(v/v) の水、少なくとも 90 %(v/v) の水、少なくとも 95 %(v/v) の水、又は、少なくとも 99 %(v/v) の水を含む水溶性溶媒中に溶解することを含む操作により調製される。水溶性溶媒はさらに、溶媒中に溶解されたリン酸カリウムのようなバッファー塩を含んでいてもよい。
実施態様に従って、当該操作はさらに、シチジンアナログ/誘導体、及び、溶媒を含む溶液に、結果として生じる溶液の pH が、pH 4 〜 pH 8 となるように、好ましくは、pH 5 〜 pH 7 となるように、さらにより好ましくは、pH 5.5 〜 pH 6.8 となるように、酸性化物質を加えることを含んでいてもよい。
医薬配合物はまた、シチジンアナログ/誘導体以外の一つ以上の治療物質を含んでいてもよい。例えば、医薬配合物はさらに、抗腫瘍物質(anti-neoplastic agents)、アルキル化物質、レチノイドスーパーファミリーのメンバーである物質、ホルモン物質、植物由来物質、生物製剤物質(biologic agents)、インターロイキン、インターフェロン、サイトカイン、免疫調節物質、及び、モノクローナル抗体からなる群より選択された治療物質を含んでいてもよい。
【0016】
本発明の別の側面において、滅菌容器が、シチジンアナログ/誘導体を必要とする被投与体への投与用に提供される。ある実施態様において、滅菌容器は本発明に従った医薬配合物を含む。容器は例えば、バイアル、シリンジ、又は、アンプルであってもよい。容器は、種々のサイズで提供されてもよい。例えば、容器は、1 mL 〜 50 nL の医薬配合物、1 mL 〜 25 mL の医薬配合物、1 mL 〜 20 mL の医薬配合物、又は、1 mL 〜 10 mL の医薬配合物を含んでいてもよい。
本発明のさらに別の側面において、キットが、シチジンアナログ/誘導体を必要とする被投与体への投与用に提供される。ある実施態様において、キットは、固形の、好ましくは粉末形態の、又は、より好ましくは凍結乾燥粉末形態のシチジンアナログ/誘導体、及び、シクロデキストリン化合物を含む水溶性希釈液を含んでいる。固体のアナログ/誘導体、及び、希釈液の混合により、本発明に従った医薬配合物が形成される。
【0017】
例えば、キットは、固形の、好ましくは粉末形態の、又は、より好ましくは凍結乾燥粉末形態の、シチジンアナログ/誘導体、及び、シクロデキストリン化合物を含む一番目の容器、並びに、水溶性希釈液を含む二番目の容器を含んでいてもよく、固体化合物に当該希釈液を加えることにより、結果としてシチジンアナログ/誘導体の投与用医薬配合物が形成される。
さらに、キットは、固形のシチジンアナログ/誘導体を含む一番目の容器、及び、水溶性希釈液中に溶解したシクロデキストリン化合物を含む二番目の容器を含んでいてもよく、固体化合物に希釈液を加えることにより、結果としてシチジンアナログ/誘導体の投与用医薬配合物が形成される。
さらに、キットは、固形のシチジンアナログ/誘導体を含む一番目の容器、固形のシクロデキストリン化合物を含む二番目の容器、及び、水溶性希釈液を含む三番目の容器を含んでいてもよく、固体シクロデキストリン化合物に希釈液を加えることにより、結果として水溶液が形成され、これを次に、固体シチジンアナログ/誘導体に加えることにより、シチジンアナログ/誘導体の投与用医薬配合物が形成される。
【0018】
固体シチジンアナログ/誘導体と希釈液の混合は、1 mL の希釈液につき、0.1 mg 〜 200 mg のシチジンアナログ/誘導体、1 mg 〜 100 mg のシチジンアナログ/誘導体、2 mg 〜 50 mg のシチジンアナログ/誘導体、5 mg 〜 30 mg のシチジンアナログ/誘導体、10 mg 〜 25 mg のシチジンアナログ/誘導体、を含む医薬配合物を形成してもよい。
キットはさらに、使用説明書を含んでいてもよい。使用説明書には、固体化合物、及び、希釈液をどのように混合し、医薬配合物を形成すべきかが記載されていてもよい。使用説明書にはまた、結果として得られた医薬配合物をどのように患者へ投与するかが記載されていてもよい。使用説明書には、本発明に従った投与方法が記載されていもよいことに注目すべきである。
希釈液、及び、シチジンアナログ/誘導体は、個々の容器に含まれていてもよい。容器は、種々のサイズで提供されてもよい。例えば、容器は、1 mL 〜 50 mL の希釈液、1 mL 〜 25 mL の希釈液、1 mL 〜 20 mL の希釈液、又は、1 mL 〜 10 mL の希釈液を含んでいてもよい。
【0019】
本発明のさらに別の側面において、方法が、シチジンアナログ/誘導体での治療に感受性の疾患に苦しむ患者のような、シチジンアナログ/誘導体を必要とする被投与体への投与用に提供される。本発明の医薬配合物は、経口的に、非経口的に、局所的に、腹腔内に、静脈内に、動脈内に、経皮的に、舌下に、筋肉内に、直腸に、経頬的に(transbuccally)、鼻腔内に、リポソーム的に(liposomally)、吸入により、膣に、眼内に、局所運搬により(例えば、カテーテル、又は、ステントにより)、皮下に、脂肪内に、関節内に、又は、髄腔内に投与されてもよい。好ましくは、医薬配合物は、静脈内に、筋肉内に、又は、皮下に投与される。
【0020】
ある実施態様において、当該方法は、本発明に従った医薬配合物中のシチジンアナログ/誘導体の治療的有効量を患者に投与することを含む。さらに、医薬配合物は、患者への投与に先立って、少なくとも 60 %(v/v) の水、少なくとも 70 %(v/v) の水、少なくとも 80 %(v/v) の水、少なくとも 90 %(v/v) の水、少なくとも 95 %(v/v) の水、又は、少なくとも 99 %(v/v) の水を含む。
当該方法はさらに、医薬配合物と組み合わせて、シチジンアナログ/誘導体以外の治療物質を投与することを含んでいてもよい。治療物質は、抗腫瘍物質(anti-neoplastic agents)、アルキル化物質、レチノイドスーパーファミリーのメンバーである物質、ホルモン物質、植物由来物質、生物製剤物質(biologic agents)、インターロイキン、インターフェロン、サイトカイン、免疫調節物質、及び、モノクローナル抗体からなる群より選択されてもよい。
【0021】
別の実施態様において、当該方法は、シクロデキストリン、及び、水溶性溶媒中で溶媒和された 0.1 mg/mL 〜 200 mg/mL のシチジンアナログ/誘導体を含む医薬配合物を得ること、医薬配合物を水溶液で希釈すること、並びに、結果として得られた希釈された医薬配合物を投与することを含み、前記の希釈は、投与の、10時間前、2時間前、1時間前、30分前、10分前、5分前、又は、それより直前に行われる。
さらに別の実施態様において、当該方法は、シクロデキストリン、及び、水溶性溶媒中で溶媒和された 0.1 mg/mL 〜 200 mg/mL のシチジンアナログ/誘導体を含む医薬配合物を得ること、医薬配合物の分取を、外気温度で、水溶液と混合すること、並びに、結果として得られた溶液を患者の体内に注入することを含む。Y-コネクターが、医薬配合物の分取を、外気温度で、水溶液と混合するのに用いられてもよい。これにより、3時間、4時間、5時間、又は、それよりも長い時間注入を行うことが可能であってもよい。当該の投与形態は、患者の不快感をより少なくし、WFI中に再構成され、さらに冷たい注入液で希釈されたデシタビンを必要とする従来の方法で処方されたデシタビン(又は、5-アザシチジン)の投与に必要とされるよりも、よりゆっくりとした注入時間、及び、より長い注入時間を可能にすると考えられる。
【0022】
キットに関連して、方法もまた提供され、この方法は、固形の、好ましくは粉末形態の、シチジンアナログ/誘導体、及び、シクロデキストリン化合物を、希釈液と混合して医薬配合物を形成すること、並びに、医薬配合物を患者に投与することを含む。
別の実施態様において、当該方法は、固形の、好ましくは粉末形態のシチジンアナログ/誘導体を、シクロデキストリン化合物を含む希釈液と混合して医薬配合物を形成すること、及び、医薬配合物を患者に投与することを含む。
有利に、医薬配合物は、シチジンアナログ/誘導体を、患者への投与の直前(例えば、1日以内で、又は、投与の、6時間前、5時間前、4時間前、3時間前、2時間前、若しくは、1時間前、若しくは、それより直前でさえ)に希釈液と混合することにより形成されてもよい。これにより、シチジンアナログ/誘導体の分解が低減される。さらに、本明細書に記載されるとおり、医薬配合物は、医薬配合物の分取を、水溶液(例えば、注入液)と混合すること、及び、結果として得られた溶液を患者の体内に注入する(本明細書にも記載されるようにY-コネクターで注入されてもよい)ことにより、投与されてもよい。
【0023】
また、本発明に従って、患者における好ましくない細胞増殖を伴う疾患の治療方法が、提供される。当該方法は、シクロデキストリン化合物と共に処方された、シチジンアナログ/誘導体を、これを必要とする患者へ投与することを含む。疾患は、良性腫瘍、癌、血液疾患、粥状動脈硬化、外科処置に起因する身体組織への侵襲、異常な創傷治癒、異常な血管新生、組織の繊維形成を引き起こす疾患、反復動作障害(repetitive motion disorders)、高度に血管新生しない組織の疾患、又は、臓器移植に伴う増殖性反応であってもよい。とりわけ、疾患は、骨髄異形成症候群、非小細胞肺癌、又は、鎌状赤血球貧血である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(本発明の詳細な説明)
本発明は、骨髄異形成症候群(MDS)、非小細胞肺癌(NSCL)、及び、鎌状赤血球貧血のような、種々の疾患、及び、状態の治療に使用することが可能な、シチジンアナログ、例えば、デシタビン、及び、アザシチジン、の改良された医薬配合物を提供する。この画期的なアプローチは、この種の薬剤の市販用の開発に不利な影響を及ぼす三つの重要な障害、すなわち、水溶性環境での加水分解、ほとんどの医薬的に許容される溶媒中での低溶解性、及び、最低限の経口バイオアベイラビリティ、を克服させる。
上記で明確にされたとおり、従来の臨床の配合物中で、デシタビンは、正常生理食塩水のような水溶液中にわずかしか溶解できず、さらに、溶解されるとすぐに急激に分解される。水溶液中でのデシタビンの不安定性、及び、限られた溶解性は、デシタビン薬剤製品の製造、及び、臨床使用の両方における深刻な不都合を引き起こす。水溶液中でのデシタビンの不安定性は、製造の間のデシタビン溶液の冷蔵、静脈内投与前の薬剤希釈用の冷たい液体、及び、デシタビン水溶液の短い貯蔵時間を必要とする。水溶液中での限られた溶解性もまた、投与するために薬剤の大きな体積を必要とし、これにより、薬剤を皮下に投与することが困難となる。
【0025】
本発明は、デシタビン、及び、アザシチジンの、従来の臨床配合物に伴う上記の問題に対して、画期的な解決手段を提供する。本発明者らは、シクロデキストリン化合物が、水溶液中のデシタビン(又は、アザシチジン)の溶解性を著しく上昇させ、さらに、水溶液中のその安定性を劇的に向上させることを見出した。本発明者らは、本発明が、デシタビン薬剤製品の製造中、貯蔵中、及び、輸送中の多くの深刻な不都合を最小限に抑えるか、又は、除去することを確信している。より重要なことには、シチジンアナログ、又は、誘導体(例えば、デシタビン、アザシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2'-フルオロシチジン、ゲムシタビン、及び、ara-C)の薬剤製品の臨床適用において、本発明は、冷たい注入液に対する必要性を除去することにより患者の不快感、及び、不都合を低減させ、さらに、とりわけ、皮下の投与用に、投与する薬剤溶液の体積を削減することができる。
【0026】
(1.本発明の配合物中のシクロデキストリン)
本発明に従って、シクロデキストリン化合物は、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、又は、γ-シクロデキストリンであってもよい。シクロデキストリンは、グルコースの環状オリゴマーであり、これらの化合物は、シクロデキストリン分子の求脂肪親和性の空洞に収まることができる分子である別の化合物と共に、包接錯体を形成する。具体的に言うと、α-シクロデキストリンは、6つのグルコピラノースユニットを含み、β-シクロデキストリンは、7つのグルコピラノースユニットを含み、さらに、γ-シクロデキストリンは、8つのグルコピラノースユニットを含む。通常、シクロデキストリン分子は、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、又は、γ-シクロデキストリンにおいてそれぞれ、4.7 Å 〜 5.3 Å、6.0 Å 〜 6.5 Å、及び、7.5 Å 〜 8.3 Å の中心開口部を有する切断型円錐を形成すると考えられている。
【0027】
シクロデキストリン化合物は、結晶質、及び、非晶質であってもよい。好ましくは、シクロデキストリン化合物は、非晶質である。通常、非晶質シクロデキストリンは、非選択的な付加、とりわけ、好ましいシクロデキストリン種のアルキル化により、調製される。反応は、複数の成分を含む混合物を生じるように行われ、それによって、シクロデキストリンの結晶化を回避する。シクロデキストリンの出発種、及び、用いられる添加物質に依存して、種々のアルキル化されたシクロデキストリン、及び、ヒドロキシアルキル-シクロデキストリンを作ることができ、さらに当然、変えることもできる。非晶質シクロデキストリンのうちで、本発明に従った組成物に適しているのは、β-シクロデキストリンの、ヒドロキシプロピル誘導体、ヒドロキシエチル誘導体、グルコシル誘導体、マルトシル誘導体、及び、マルトトリオシル誘導体、カルボキシアミドメチル-β-シクロデキストリン、カルボキシメチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、並びに、ジエチルアミノ-β-シクロデキストリンである。
【0028】
ある実施態様において、シクロデキストリン化合物は、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体、好ましくは、モノ-置換型β-シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩、テトラ-置換型β-シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩、又は、ヘプタ-置換型β-シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩、さらにより好ましくは、β-シクロデキストリンスルホブチルエーテル七ナトリウム塩(CAPTISOL(登録商標), Cydex, Inc., Lenexa, KS)である。
別の実施態様において、シクロデキストリン化合物は、置換型ヒドロキシ-β-シクロデキストリン、好ましくは、β-シクロデキストリンの、ヒドロキシプロピル誘導体、ヒドロキシエチル誘導体、グルコシル誘導体、マルトシル誘導体、及び、マルトトリオシル誘導体である。
【0029】
シクロデキストリン化合物は、修飾されていない、又は、修飾された、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、若しくは、γ-シクロデキストリンであってもよい。しかしながら、修飾されていない、又は、修飾された、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、若しくは、γ-シクロデキストリンは、修飾されていない形態が、結晶化する傾向にあり、水溶液中に比較的溶解しにくいという理由で、本発明に従った組成物中では、比較的好ましくない。本発明に従った組成物に対してより好ましいのは、化学的に修飾されるか、又は、置換された、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、又は、γ-シクロデキストリンである。シクロデキストリン環のグルコピラノースユニットの2位のヒドロキシル基、3位のヒドロキシル基、及び、6位のヒドロキシル基での化学的な置換により、シクロデキストリン化合物の溶解性が向上する。
【0030】
本発明に従った組成物中の最も好ましいシクロデキストリンは、非晶質シクロデキストリン化合物である。非晶質シクロデキストリンとは、シクロデキストリンの非結晶質の混合物を意味し、当該混合物は、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、又は、γ-シクロデキストリンから調製される。通常、非晶質シクロデキストリンは、好ましいシクロデキストリン種の非選択的アルキル化により調製される。この目的に適切なアルキル化物質の例としては、プロピレンオキシド、グリシドール、ヨードアセトアミド、クロロアセタート、及び、2-ジエチルアミノエトリクロライドが挙げられるが、これらに限定されない。反応は、複数の成分を含む混合物を生じるように行われ、それによって、シクロデキストリンの結晶化を回避する。シクロデキストリンの出発種、及び、用いられるアルキル化物質に依存して、種々のアルキル化されたシクロデキストリンを作ることができ、さらに当然、変えることもできる。非晶質シクロデキストリンのうちで、本発明に従った組成物に適しているのは、β-シクロデキストリンの、ヒドロキシプロピル誘導体、ヒドロキシエチル誘導体、グルコシル誘導体、マルトシル誘導体、及び、マルトトリオシル誘導体、カルボキシアミドメチル-β-シクロデキストリン、カルボキシメチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、並びに、ジエチルアミノ-β-シクロデキストリンである。
【0031】
本発明に従った組成物中で、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが、好ましいけれども、α-アナログ、又は、γ-アナログもまた適していてもよい。特定のシチジンアナログ、又は、シチジン誘導体と共に用いて本発明に従った組成物を形成する特定のアルキル化された、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、又は、γ-シクロデキストリンは、シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体の分子サイズ、及び、シクロデキストリン化合物の空洞の相対的なサイズに基づき選択される。上記で述べられた非置換型デキストリンと同様に、本発明に従った組成物がまた、賦形剤をも含んでいる際には、大きな空洞を有するアルキル化されたシクロデキストリンを用いるのが有利であってもよい。本発明に従った組成物中での、特定のα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、又は、γ-シクロデキストリンの、特定のシチジンアナログ/誘導体との、又は、特定のシチジンアナログ/誘導体、及び、賦形剤との使用は、言うまでもなく、溶液状態で特定のシチジンアナログ/誘導体を維持する効果に基づき最適化されてもよい。
本発明に従った組成物は、二つ以上の、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、又は、γ-シクロデキストリンの混合物を含んでいてもよい。好ましくは、本発明に従った組成物は、ただ一つの、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、又は、γ-シクロデキストリンを含んでいる。
【0032】
(2.医薬配合物の調製)
本発明の医薬組成物は、下記に説明されるようにどんな経路によっても、好ましくは、その経路に適合された医薬組成物の形態で、投与することができ、治療される状態に依存する。配合物は例えば、経口的に、非経口的に、局所的に、腹腔内に、静脈内に、動脈内に、経皮的に、舌下に、筋肉内に、直腸に、経頬的に(transbuccally)、鼻腔内に、リポソーム的に(liposomally)、吸入により、膣に、眼内に、局所運搬により(例えば、カテーテル、又は、ステントにより)、皮下に、脂肪内に、関節内に、又は、髄腔内に投与される。
経口投与のために、組成物は例えば、カプセル剤、懸濁剤、又は、液剤の形態であってもよい。医薬組成物は好ましくは、治療的有効量の活性成分を含む、投与量単位の形態で作られる。
【0033】
あるいは、本発明の組成物は、粉末形態、又は、好ましくは、運搬の際の適切な医薬的に許容される担体中での再構成用の、凍結乾燥粉末形態であってもよい。
医薬組成物は、注射によって投与することもできる。非経口的な投与用の配合物は、水溶性の等張の無菌注射溶液、又は、懸濁液の形態であってもよい。上記に記載されたとおり、これらの溶液、又は、懸濁液は、シチジンアナログ/誘導体、及び、一つ以上のシクロデキストリン化合物を含んでいてもよい、無菌の粉末、又は、顆粒から調製されてもよい。粉末、又は、顆粒は、水、水溶性バッファー、又は、少なくとも 60 %(v/v) の水を含む溶媒に溶解してもよい。
好ましい実施態様において、シチジンアナログ/誘導体は、水溶液中で溶媒和されたシチジンアナログ/誘導体を含む、医薬的に許容される組成物中に処方されてもよい。シチジンアナログ/誘導体の溶解性、及び/又は、安定性が、医薬配合物中で改善され、これにより、医薬配合物が、使用に先立ち長期間貯蔵されてもよいし、又は、必要とされる注射用の液体の体積を少なくすると考えられる。
【0034】
上記で明確にしたとおり、デシタビンによる従来の臨床治療において、薬剤の分解を最小限に抑えるために、デシタビンは、投与に先立って、注射用の滅菌水で再構成され、さらに、冷たい注入液中に希釈される凍結乾燥粉末(KH2PO4、及び、NaOHと共に)として提供される。当該の配合物、及び、治療投与計画は、いくつかの弱点に苦しむ。第一に、冷たい溶液中でのデシタビンの冷却が必須となり、これは、取り扱い上煩わしく、さらに、比較的高温での貯蔵に耐えることができる配合物よりも、経済的により好ましくない。第二に、水溶液中でのデシタビンの急速な分解に起因して、再構成され、希釈されたデシタビン溶液は、当該溶液が、7時間未満冷蔵庫に貯蔵されていたのであれば、最大で3時間しか患者に注入できないだろう。さらに、冷たい液体の注入は、患者に重大な不快感、及び、苦痛を引き起こし、これにより、当該投与計画に対する患者の抵抗を生じさせる。
【0035】
溶液中において、シチジンアナログ/誘導体とシクロデキストリン化合物との間で錯体を形成することにより、医薬配合物は、デシタビン、及び、5-アザシチジンでの従来の臨床治療に伴う上記でリストアップした問題を回避することができる。シチジンアナログ/誘導体は、少なくとも 60 %(v/v) の水、少なくとも 80 %(v/v) の水、又は、少なくとも 90 %(v/v) の水を含む水溶液中に処方することができる。これらの発明の配合物は、従来の臨床の配合物よりも、化学的により安定であると考えられる。
【0036】
シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体、及び、シクロデキストリン化合物の相対量は、それぞれのシチジンアナログ/誘導体の相対量、及び、シチジンアナログ/誘導体へのシクロデキストリン化合物の効果に依存して変えられる。通常、シクロデキストリン化合物の質量に対するシチジンアナログ/誘導体の質量比率は、1:1 〜 1:5000 の範囲であってもよい。この範囲内で、シチジンアナログ/誘導体の溶解性、及び/又は、安定性は、シクロデキストリン化合物の質量に対するシチジンアナログ/誘導体の質量比率が、特定の非晶質シクロデキストリン濃度でシチジンアナログ/誘導体が溶液の状態にならない濃度から、1:2000 の範囲において、著しく上昇する。1:1 〜 1:200 の範囲の、より好ましくは、1:5 〜 1:50 の範囲のシクロデキストリン化合物の質量に対する、シチジンアナログ/誘導体の質量比率が、シチジンアナログ/誘導体の溶解性、及び/又は、安定性を最も効果的に上昇させると考えられる。例えば、1:10 〜 1:300(薬剤:シクロデキストリン、質量:質量)の比率で、シクロデキストリン化合物の水溶液中に溶解したデシタビン、及び、40 mg/mL のデシタビンの注射溶液の最終濃度が、正常生理食塩水中のデシタビンと比較して、著しく安定性を上昇させると考えられる。
【0037】
好ましくは、シチジンアナログ/誘導体、及び、シクロデキストリン化合物を含む水溶液が、非経口的に、とりわけ、静脈内経路により、投与される場合には、シクロデキストリン化合物は、本質的に発熱性混入物がない。シクロデキストリン化合物、好ましくは、非晶質のヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンは、ヤンセン製薬(Janssen Pharmaceuticals)を含むベンダーから、商標名:Encapsin として購入してもよい。さらに、異なる置換の度合い、又は、異なるグルコース残基数を有する、別の形態の非晶質シクロデキストリンは、市販で入手可能である。ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの製造方法は、Pitha et al., U.S. Pat. No. 4,727,064 に開示され、その内容は、参照によって本明細書に取り込まれる。
【0038】
本発明に従った配合物を製造するために、あらかじめ計量しておいた本質的に発熱物質のないヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン化合物は、適切な発熱物質除去した滅菌の容器中に入れられる。容器の発熱物質の除去方法、及び、密閉部材は、当業者に既知であり、完全に、米国薬局方23(United States Pharmacopeia 23)(United States Pharmacopeial Convention, Rockville, Md. USA)に記載される。通常、発熱物質除去は、対象物を、あらゆる有機物質を完全に焼却するのに十分な時間、250 ℃ より高い温度での発熱物質除去にさらすことにより成し遂げられる。アメリカ薬局方細菌性内毒素単位(Bacterial Endotoxin Units)で評価すると、当該配合物は、1 g の非晶質シクロデキストリンにつき、たったの10 細菌性内毒素単位(Bacterial Endotoxin Units)しか含まない。本質的に発熱物質が存在しないということは、米国薬局方の方法を用いて、1 g につき、10 米国薬局方細菌性内毒素単位(U.S.P. bacterial endotoxin units)未満しか含んでいないヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンであることを意味する。好ましくは、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンは、米国薬局方23に指示された条件下で、1 mg につき、0.1 米国薬局方細菌性内毒素単位(U.S.P. bacterial endotoxin units)〜 5 米国薬局方細菌性内毒素単位(U.S.P. bacterial endotoxin units)を含んでいる。
【0039】
十分量の滅菌水、又は、水溶性バッファーは、好ましい濃度のヒドロキシプロピロ-β-シクロデキストリンが溶解状態になるまで、本質的に発熱物質のない非晶質シクロデキストリンに加えられる。この溶液に、あらかじめ計量しておいた量のシチジンアナログ/誘導体を、攪拌しながら、さらに溶解するまで必要に応じて追加的に静置して、加える。
この溶液を次に、無菌の 0.2 μm フィルターを通して保持容器中に濾過し、その後、無菌の発熱物質除去したバイアル中に注入し、必要に応じて凍結乾燥し、さらに、フタをする。長期間貯蔵することのできる製品に対しては、医薬的に許容される防腐剤が、シチジンアナログ/誘導体、及び、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの溶液に、濾過、注入、必要に応じた凍結乾燥、及び、フタをするのに先立って、加えられてもよいし、又は、代わりに、濾過後に無菌的に加えられてもよい。
【0040】
向上した安定性のおかげで、本発明の配合物は、外気温度で貯蔵、及び、輸送されてもよく、それによって、当該薬剤の取り扱いの費用を著しく低減させる。その上、本発明の配合物は、好都合なことに、患者へ投与される前に、長期間貯蔵されてもよい。さらに、本発明の配合物は、通常の注入液(冷却をせずに)で希釈され、室温で患者に投与されてもよく、それによって、冷たい液体の注入に伴う患者の不快感が引き起こされるのを回避する。
シチジンアナログ/誘導体は、種々の濃度で、シクロデキストリン化合物の溶液中に溶解されてもよい。例えば、当該配合物は、溶液 1 mL につき、0.1 mg 〜 200 mg のシチジンアナログ/誘導体、1 mg 〜 100 mg のシチジンアナログ/誘導体、1 mg 〜 50 mg のシチジンアナログ/誘導体、2 mg 〜 50 mg のシチジンアナログ/誘導体、2 mg 〜 100 mg のシチジンアナログ/誘導体、5 mg 〜 100 mg のシチジンアナログ/誘導体、10 mg 〜 100 mg のシチジンアナログ/誘導体、又は、20 mg 〜 100 mg のシチジンアナログ/誘導体を含んでいてもよい。溶液あたりのシチジンアナログ/誘導体濃度の特定の例としては、2 mg/mL、5 mg/mL、10 mg/mL、20 mg/mL、22 mg/mL、25 mg/mL、30 mg/mL、40 mg/mL、及び、50 mg/mL が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
医薬配合物はさらに、配合物が結果として pH 4 〜 pH 8 となるような割合で、当該配合物に加えられた酸性化物質をさらに含んでいてもよい。酸性化物質は、有機酸であってもよい。有機酸の例としては、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、ギ酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、マレイン酸、グルタミン酸、コハク酸、アスパラギン酸、ジアトリゾ酸、及び、酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。酸性化物質はまた、塩酸、硫酸、リン酸、及び、硝酸のような無機酸であってもよい。
【0042】
比較的中性の pH(例えば、pH 4 〜 pH 8)を維持するために、配合物に酸性化物質を加えることは、シチジンアナログ/誘導体の溶媒への迅速な溶解を促進し、さらに、配合物の長期間安定性を高めると考えられる。アルカリ性溶液中では、不可逆的に分解して1-β-D-2'-デオキシリボフラノシル-3-グアニル尿素を形成するN-(ホルミルアミジノ)-N'-β-D-2-デオキシリボフラノシル尿素への、迅速な可逆性のデシタビンの分解が起こる。加水分解の第一段階には、N-アミジニウム-N'-(2-デオキシ-β-D-エリトロペントフラノシル)尿素ホルマート(AUF)の形成が含まれる。高温での分解の第二段階には、グアニジンの形成が含まれる。酸性溶液中では、N-(ホルミルアミジノ)-N'-β-D-2-デオキシリボフラノシル尿素、及び、いくつかの未同定化合物が、形成される。強酸性溶液中(pH < 2.2 で)では、アザシチジンが産生される。従って、比較的中性の pH を維持することは、シチジンアナログ/誘導体を含む配合物に対し好都合かもしれない。
【0043】
バリエーション中、酸性化物質は、溶媒 1 mL につき、0.01 mg 〜 0.2 mg、0.04 mg 〜 0.1 mg、又は、0.03 mg 〜 0.07 mg の濃度のアスコルビン酸である。医薬配合物の pH は、pH 4 〜 pH 8、好ましくは、pH 5 〜 pH 7、さらにより好ましくは、pH 5.5 〜 pH 6.8 に調整されてもよい。
医薬配合物は好ましくは、2 ℃ 〜 8 ℃ で、5時間、10時間、15時間、24時間、又は、2日間、4日間、7日間、14日間、21日間、28日間、若しくは、それより長い日数の間の貯蔵で、少なくとも 80 %、少なくとも 90 %、少なくとも 95 %、又は、それ以上安定である。医薬配合物はまた、好ましくは、20 ℃ 〜 25 ℃ で、5時間、10時間、15時間、24時間、又は、2日間、5日間、7日間、14日間、21日間、28日間、若しくは、それより長い日数の間の貯蔵で、少なくとも 80 %、少なくとも 90 %、少なくとも 95 %、又は、それ以上安定である。
【0044】
さらに、シチジンアナログ/誘導体がシクロデキストリン化合物を含む溶液により溶媒和される率を上昇させるような段階が、とられてもよい。実施されても良い追加的な段階の例としては、攪拌、加熱、溶媒和時間の延長、及び、微粉化シチジンアナログ/誘導体の適用、及び、これらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
あるバリエーション中では、攪拌が適用される。攪拌の例としては、機械的な攪拌、超音波処理、従来の混合、従来の攪拌、及び、これらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、配合物の機械的な攪拌は、Silverson Machines Inc.,(East Longmeadow, MA)により製造されたシルバーソン(Silverson)ホモジナイザーにより、製造会社のプロトコールに従って行われてもよい。
別のバリエーション中では、加熱が適用されてもよい。さらに、配合物は、水浴中で加熱されてもよい。好ましくは、加熱された配合物の温度は、70 ℃ 未満、より好ましくは、25 ℃ 〜 40 ℃ であってもよい。例として、配合物は、37 ℃ まで加熱されてもよい。
【0045】
さらに別のバリエーション中では、微粉化形態のシチジンアナログ/誘導体もまた、溶媒和動態を高めるのに採用されてもよい。さらに、微粉化は、製粉工程により行われてもよい。例として、微粉化は、Micron Technology Inc.(Boise, ID)、IncFluid Energy Aljet Inc.(Boise, ID Telford, PA)により製造された、Malvern Mastersizer, Mastersizerusing an Air Jet Millによって、製造会社のプロトコールに従って行われてもよい。
さらに、医薬配合物の pH は、公用の方法により調整されてもよい。あるバリエーションでは、pH は、アスコルビン酸のような酸、又は、水酸化ナトリウムのような塩を加えることにより調整される。別のバリエーションでは、pH が、(エチレンジニトリロ) 四酢酸二ナトリウム塩(EDTA)の溶液のような緩衝化溶液を加えることにより、調整され、安定化される。デシタビン、及び、アザシチジンは、pH-感受性であることが知られているので、医薬配合物の pH を、およそ pH 7 に調整することにより、治療成分の安定性が向上されるかもしれない。
【0046】
さらに、溶解されないシチジンアナログ/誘導体の分離が、医薬配合物に対して行われてもよい。分離は、どんな適切な手法により行われてもよい。例えば、適切な分離方法は、医薬配合物の、濾過、沈降、及び、遠心分離の一つ以上を含んでいてもよい。シチジンアナログ/誘導体の溶解されない粒子により引き起こされるかもしれない目詰まりは、医薬配合物の投与に対する障害、及び、患者に対する潜在的な危険となるかもしれない。医薬配合物からの溶解されないシチジンアナログ/誘導体の分離は、投与を容易にするかもしれないし、さらに、治療製品の安全性を向上させるかもしれない。
さらに、医薬配合物の滅菌が、行われてもよい。滅菌は、どんな適切な手法により行われもよい。例えば、適切な滅菌方法は、滅菌濾過、化学薬品、放射線照射、加熱濾過、及び、医薬配合物への化学的殺菌剤の添加の一つ以上を含んでいてもよい。
【0047】
医薬配合物はさらに、組成物の安定性を高め、製品の溶液状態を維持し、又は、本発明の配合物の投与に伴う副作用(例えば、見込まれる潰瘍、血管刺激作用、又は、溢血)を回避するのに十分な量で加えられた賦形剤を含んでいてもよい。賦形剤の例としては、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、及び、デキストロースが挙げられるが、これらに限定されない。
さらに、シチジンアナログ/誘導体は、経口剤形で処方されてもよい。処方は好ましくは、シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体、及び、シクロデキストリン化合物を含み、経口投与用に適合された医薬組成物である。
医薬組成物は例えば、錠剤、カプセル剤、液剤、又は、懸濁剤の形態であってもよい。医薬組成物は好ましくは、治療的有効量の、デシタビン、及び、5-アザシチジンのような、シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体を含む、投与量単位の形態で作られる。
【0048】
当該組成物はさらに、例えば、アカシアガム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、又は、トラガカントなどの結合剤、;流動促進剤(glidants)、;潤滑剤(lubricants)、;例えば、リン酸カルシウム、グリシン、ラクトース、トウモロコシデンプン、ソルビトール、又は、スクロースのような注入剤(fillers)、;例えば、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、シリカ、又は、タルクのような潤滑剤(lubricants)、;例えば、ジャガイモデンプン、香料添加剤、着色剤、又は、許容される湿潤剤のような錠剤分解物質、;着色剤、;香料添加剤、;及び、添加物を含んでいてもよい。添加物の例としては、アカシア、アーモンドオイル、エチルアルコール、ヤシ油、ゼラチン、グルコースシロップ、グリセリン、水素化食用油、レシチン、メチルセルロース、メチルパラ-ヒドロキシベンゾアート、プロピルパラ-ヒドロキシベンゾアート、プロピレングリコール、ソルビトール、又は、ソルビン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
コーティング物質で腸溶コートされてもよい。薬剤の腸溶コート用のコーティング物質は、pH-感受性であり、好ましくは、又は、選択的に、およそ5.2よりも上の閾値の pH で、およそ5.5よりも上の pH で、およそ5.8よりも上の pH で、およそ6.0よりも上の pH で、およそ6.2よりも上の pH で、およそ6.5よりも上の pH で、およそ6.5よりも上の pH で、そして最も好ましくは、およそ6.8よりも上の pH で、およそ7.0よりも上の pH で、およそ7.2よりも上の pH で、又は、およそ7.5よりも上の pH で、溶解される。医薬組成物は、中性 pH、又は、閾値の pH よりも上の pH において、水溶性媒体中で、3時間以内に、2時間以内に、1時間以内に、より好ましくは、30分以内に、さらに最も好ましくは、15分以内に、実質的に崩壊するのが好ましい。医薬組成物は、組成物の少なくとも 50 % が崩壊すれば(例えば、破壊を受けて)、実質的に崩壊すると考えられている。
【0050】
この配合物は、薬剤を、胃中の胃液での分解から保護し、腸溶コートの閾値の pH を越えた、わずかに酸性で中性に近い pH である、小腸の上部で、好ましくは、空腸で、選択的に薬剤を放出すると考えられる。腸溶コートの崩壊は、薬剤が好ましく吸収される、消化管の特定の部位における選択的な薬剤放出をもたらし、それによって、薬剤の経口バイオアベイラビリティを向上させる。さらに、胃中での分解を回避することにより、薬剤による胃粘膜への損傷、及び、胃炎症に起因する悪心のような副作用を回避することができる。
コーティング物質の例としては、5.6よりも上の pH で選択的に溶解する、セルロースフタラート(例えば、ヒドロプロピルメチルセルロースフタラート(HPMCPs))、メタクリル酸、及び、カルボキシル官能基を有するメタクリラートを基にしたアニオン性ポリマーであるポリマーのファミリーであるEudragit(登録商標)(例えば、5.6の pH 閾値を有する Eudragit L30D、6.0の pH 閾値を有するEudragit L、及び、6.8の pH 閾値を有するEudragit S)、5.8の pH 閾値を有するAquateric、およそ5.0よりも上の pH 値で薬剤を放出するポリビニルアセタートフタラート(PVAP)、Laccifer lacca kerr という雌の昆虫により産生される粘着性分泌物から得られ、およそ pH 7.0 で薬剤を放出するShellac(登録商標)、及び、6.0の pH 閾値を有するセルロースアセタートフタラート(CAP)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
好ましい実施態様において、6.0の pH 閾値を有するEudragit L100、又は、5.5の pH 閾値を有するEudragit L-100-55を含む腸溶コートである。
また、本発明に従って、医薬組成物は、好ましくは、酸性の水溶性媒体中において pH 1.0 〜 pH 3.0 で少なくとも1時間は実質的に崩壊せず、より好ましくは、酸性の水溶性溶媒中において pH 1.2 〜 pH 2.0 で少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも2時間、さらに最も好ましくは、少なくとも3時間は、実質的に崩壊しない。さらに、医薬配合物は、酸性の水溶性媒体中において、pH 1.2 〜 pH 1.5 で少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも2時間、さらに最も好ましくは、少なくとも3時間は、実質的に崩壊しなくてもよい。当該組成物は、組成物の少なくとも 50 % が崩壊すれば(例えば、破壊を受けて)、実質的に崩壊すると考えられている。
【0052】
さらに、医薬組成物は好ましくは、水溶性媒体中において、pH 5.2 〜 pH 7.5 で1時間以内に実質的に崩壊し、より好ましくは、水溶性媒体中において、pH 6.0 〜 pH 7.2 で30分以内に実質的に崩壊し、さらに最も好ましくは、水溶性媒体中において、pH 6.5 〜 pH 7.0 で15分以内に実質的に崩壊する。腸溶コーティング物質の量は好ましくは、組成物中に 1 % w/w 〜 10 % w/w、より好ましくは、組成物中に 2 % w/w 〜 8 % w/w、さらに最も好ましくは、組成物中に 3 % w/w 〜 6 % w/w である。
医薬組成物は、タブレット剤、又は、カプセル剤の形態であってもよい。好ましい実施態様において、当該組成物は、タブレット剤の形態である。腸溶コートなしのタブレット剤の硬度は好ましくは、少なくとも 4 kp(キロポンド)、より好ましくは、少なくとも 8 kp(キロポンド)、さらに最も好ましくは、10 kp(キロポンド)である。タブレット剤のサイズは好ましくは、5 mm 〜 20 mm、より好ましくは、8 mm 〜 15 mm、さらに最も好ましくは、10 mm 〜 13 mm である。
【0053】
上記のあらゆる剤形において、薬剤の濃度は好ましくは、0.1 % w/w 〜 20 % w/w、より好ましくは、1 % w/w 〜 10 % w/w、さらに最も好ましくは、2 % w/w 〜 5 % w/w である。
医薬組成物はさらに、湿気にさらされたことに起因する分解を回避するために、薬剤をシールするヒドロキシプロピルメチルセルロースのような、シールコーティング物質を含んでいてもよい。従って、薬剤の中心は、まずシールコーティング物質によりシールされ、次に腸溶コーティング物質でコートされる。これは、湿気にさらされた際に分解しやすい、デシタビン、又は、5-アザシチジンの配合物に対し、とりわけ有用である。
医薬組成物はさらに、医薬組成物が消化管で溶解される際に、局所環境の pH を、5.2 〜 7.0 に維持するのに十分な量のリン酸カリウム、又は、リン酸ナトリウムのようなバッファー塩を含んでいてもよい。当該バッファー塩の例としては、KH2PO4、及び、Na2HPO4が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
またさらに、シチジンアナログ/誘導体は、局所用剤形で処方されてもよい。当該配合物は好ましくは、シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体、及び、シクロデキストリン化合物を含む、局所投与用に適合された医薬組成物である。
局所使用に対して、本発明の組成物はまた、皮膚、又は、鼻、及び、喉の粘膜への塗布に適切な形態で調製することもでき、クリーム、軟膏、液体スプレー、液体吸入剤、トローチ剤、又は、喉塗布剤(throat paints)の形態を取ることもできる。当該の局所用配合物はさらに、活性成分の表面浸透率(surface penetration)を促進するために、ジメチルスルホキシド(DMSO)のような化合物を含んでいてもよい。
またさらに、シチジンアナログ/誘導体は、目、又は、耳への投与に適した剤形で処方されてもよい。シチジンアナログ/誘導体、又は、シクロデキストリン化合物は、軟膏、クリーム、ローション、塗布剤(paints)、又は、粉末として、疎水性塩基、又は、親水性塩基中に処方された液体状、又は、半液体状で存在していてもよい。
【0055】
またさらに、シチジンアナログ/誘導体は、吸入による投与に適した剤形で処方されてもよい。シチジンアナログ/誘導体、又は、シクロデキストリンは、液体スプレー中に、又は、吸入剤、トローチ剤、若しくは、喉塗布剤(throat paints)と混合されて存在していてもよい。
あるいは、シチジンアナログ/誘導体、又は、シクロデキストリン化合物は、運搬の時点で、適切な医薬的に許容される担体中で再構成する粉末形態であってもよい。
シチジンアナログ/誘導体、又は、シクロデキストリンが固形である際には、液体中、好ましくは、水溶液中に溶解すると、シチジンアナログ/誘導体は、組成物中でシクロデキストリンと錯体を形成する。組成物はさらに、当該シクロデキストリン錯体を安定化させてもよいバッファー塩を含んでいてもよい。
【0056】
(3.容器、又は、キット)
本発明中に記載されたシチジンアナログ/誘導体、及び/又は、シクロデキストリン化合物は、シリンジボトル、並びに、種々のサイズ、及び、容量のガラスバイアル、又は、アンプルといった滅菌容器中に収納されてもよい。滅菌容器は、粉末、若しくは、結晶質の形態で、又は、例えば、1 mL 〜 50 mL、1 mL 〜 25 mL、1 mL 〜 20 mL、若しくは、1 mL 〜 10 mL の体積のその溶液配合物として、シチジンアナログ/誘導体、及び/又は、シクロデキストリン化合物を含んでいてもよい。滅菌容器は、医薬配合物の無菌性を維持することを可能にし、輸送、及び、貯蔵を容易にし、さらに、事前の滅菌処置のない医薬配合物の投与を可能にする。
【0057】
本発明はまた、シチジンアナログ/誘導体を必要とする被投与体への投与用キットをも提供する。ある実施態様において、当該キットは、固形の、好ましくは、粉末形態のシチジンアナログ/誘導体、及び、シクロデキストリン化合物、並びに、水、バッファー、賦形剤、又は、これらの組み合わせを含む水溶性希釈液を含む。固体化合物と水溶性希釈液の混合により好ましくは、結果として、本発明に従った医薬配合物が形成される。例えば、当該キットは、固形の、シチジンアナログ/誘導体、シクロデキストリン化合物、及び、必要に応じてバッファー塩(例えば、リン酸カリウム)を含む一番目の容器、並びに、水を含む希釈液を含む容器を含んでおり、固体化合物に希釈液を加えることにより、結果として、シチジンアナログ/誘導体の投与用医薬配合物が形成される。固体化合物と希釈液を混合することにより、希釈液 1 mL につき、0.1 mg 〜 200 mg のシチジンアナログ/誘導体、0.1 mg 〜 100 mg のシチジンアナログ/誘導体、2 mg 〜 50 mg のシチジンアナログ/誘導体、5 mg 〜 30 mg のシチジンアナログ/誘導体、10 mg 〜 25 mg のシチジンアナログ/誘導体を含む、医薬配合物が形成されてもよい。
【0058】
ある実施態様において、希釈液は、注射液、又は、注入液である。注射液、又は、注入液の例としては、BWFI(注射用静菌性水(Bacteriostatic Water For Injection))、SWFI(注射用滅菌水(Sterile Water For Injection))、D5W(5 % デキストロース水溶液(Dextrose 5 % in Water))、D10W(10 % デキストロース水溶液(Dextrose 10 % in Water))、D5LR(デキストロース乳酸リンガー溶液(Dextrose in Lactate Ringer's Solution))、D51/4S(5 % デキストロースの 1/4 強度の生理食塩水溶液(Dextrose 5 % in 1/4 Strength Saline)(5 % デキストロース、及び、0.22 % 塩化ナトリウムの注射液))、D51/2S(5 % デキストロースの 1/2 強度の生理食塩水溶液(Dextrose 5 % in 1/2 Strength Saline)(5 % デキストロース、及び、0.45 % 塩化ナトリウムの注射液))、D5NS(正常生理食塩水中の 5 % デキストロース(Dextrose 5 % in Normal Saline)(5 % デキストロース、及び、0.9 % 塩化ナトリウムの注射液))、D5R(リンガー注射液中の 5 % デキストロース(Dextrose 5 % in Ringer's Injection))、D10NS(正常生理食塩水中の 10 % デキストロース(Dextrose 10 % in Normal Saline)(10 % デキストロース、及び、0.9 % 塩化ナトリウムの注射液))、IS10W(生理食塩水中の 10 % 転化糖(Invert Sugar 10 % in Saline)(0.9 % 塩化ナトリウム注射液中の 10 % 転化糖))、LR(乳酸リンガー注射液(Lactated Ringer's Injection))、Pr(タンパク加水分解物注射液(Protein Hydrolysate Injection))、R(リンガー注射液(Ringer's Injection))、0.9 % 塩化ナトリウムのNS(正常生理食塩水)(Normal Saline)、SOD CL 5(5 % 塩化ナトリウム(Sodium Chloride 5 %)(5 % 塩化ナトリウム注射液))、及び、Sod Lac(1/6 モル濃度の乳酸ナトリウム(Sodium Lactate)、(1/6 M 乳酸ナトリウム注射液))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
別の実施態様において、当該キットは、固形の、好ましくは、粉末形態のシチジンアナログ/誘導体、及び、水、バッファー、賦形剤、又は、これらの組み合わせを含んでいてもよい水溶性溶媒中に溶解されたシクロデキストリン化合物を含む液体希釈液、を含む。固体化合物と希釈液の混合により、好ましくは、結果として、本発明に従った医薬配合物が形成される。例えば、当該キットは、固形のシチジンアナログ/誘導体を含む一番目の容器、及び、液体希釈液を含む容器を含んでいてもよく、固体化合物に希釈液を加えることにより、結果として、シチジンアナログ/誘導体の投与用医薬配合物が形成される。固体化合物と希釈液の混合により、1 mL の希釈液につき、0.1 mg 〜 200 mg のシチジンアナログ/誘導体、0.1 mg 〜 100 mg のシチジンアナログ/誘導体、2 mg 〜 50 mg のシチジンアナログ/誘導体、5 mg 〜 30 mg のシチジンアナログ/誘導体、10 mg 〜 25 mg のシチジンアナログ/誘導体、を含む医薬配合物を形成してもよい。
【0060】
当該キットはさらに、医薬配合物の患者への注射用の一つ以上の、シリンジ、及び/又は、シリンジ針を含んでいてもよい。粘稠性の液体配合物に対しては、DEPOTONEシリンジ針(Imprint Pharmaceuticals Ltd., UK)のような、高い流体能を有するシリンジ針が好ましい。
当該キットはさらに、使用説明書を含んでいてもよい。使用説明書には、医薬配合物を形成させるために、どのように固体化合物と希釈液を混合すべきかについて記載されていてもよい。使用説明書にはまた、結果として得られた医薬配合物の患者への投与の仕方について記載されていてもよい。使用説明書にはまた、本発明に従った投与方法が記載されていてもよいことに注目すべきである。
希釈液、及び、シチジンアナログ/誘導体は、個々の容器に含まれていてもよい。容器は、種々のサイズで提供されてもよい。例えば、容器は、1 mL 〜 50 mL の希釈液、1 mL 〜 25 mL の希釈液、1 mL 〜 20 mL の希釈液、又は、1 mL 〜 10 mL の希釈液、を含んでいてもよい。
【0061】
容器中、又は、キット中に提供される医薬配合物は、直接的な投与に適した形態であってもよいし、又は、何が患者へ投与されるかに関連して、希釈を必要とする濃縮された形態であってもよい。例えば、本発明に記載された医薬配合物は、注入による直接的な投与に適した形態であってもよい。
本明細書に記載された方法、及び、キットは、本発明の化合物を含む医薬配合物の、安定性、及び、治療効果を、さらに高め、又は、補完するかもしれない、柔軟性を提供する。
【0062】
(4.投与方法)
シクロデキストリン化合物と共に処方されるシチジンアナログ/誘導体は、あらゆる経路により、好ましくは、下記で説明されるような、当該経路に適合された医薬組成物の形態で投与することができ、これは取り扱われる状態に依存する。当該化合物、又は、配合物は例えば、経口的に、非経口的に、局所的に、腹腔内に、静脈内に、動脈内に、経皮的に、舌下に、筋肉内に、直腸に、経頬的に(transbuccally)、鼻腔内に、リポソーム的に(liposomally)、吸入により、膣に、眼内に、局所運搬により(例えば、カテーテル、又は、ステントにより)、皮下に、脂肪内に、関節内に、又は、髄腔内に投与することができる。本発明に従った、化合物、及び/又は、組成物はまた、徐放剤形で、単独投与(administered)、又は、共投与(co-administered)されてもよい。
【0063】
シクロデキストリン化合物と共に処方されるシチジンアナログ/誘導体は、どんな従来の剤形で、単独投与(administered)、又は、共投与(co-administered)されてもよい。本発明の構成中の共投与(Co-administration)とは、改善された臨床転帰を実現するための、よく調整された治療の過程における、一つよりも多い治療物質の投与を意味すると定義される。当該の共投与はまた、同一の広がりを持つ、つまりは、重複した時間に起こってもよい。シチジンアナログ/誘導体は、患者のような被投与体に、0.1 mg/m2 〜 1000 mg/m2、1 mg/m2 〜 200 mg/m2、1 mg/m2 〜 150 mg/m2、1 mg/m2 〜 100 mg/m2、1 mg/m2 〜 75 mg/m2、1 mg/m2 〜 50 mg/m2、1 mg/m2 〜 40 mg/m2、1 mg/m2 〜 30 mg/m2、1 mg/m2 〜 20 mg/m2、又は、5 mg/m2 〜 30 mg/m2、の濃度で投与されてもよい。
【0064】
例えば、シチジンアナログ/誘導体、及び、シクロデキストリン化合物は、注射用滅菌粉末として提供されてもよく、必要に応じて、リン酸二水素カリウムのようなバッファー塩、及び、水酸化ナトリウムのような pH モディファイヤーと共に提供されてもよい。この配合物は好ましくは、2 ℃ 〜 25 ℃ で貯蔵され、これにより、薬剤を、少なくとも3年間安定に保つだろう。この粉末配合物は、10 mL の注射用滅菌水で再構成されてもよい。この溶液をさらに、注射用 0.9 % 塩化ナトリウム、5 % デキストロース注射液、及び、乳酸リンガー注射液のような当業界で知られた注入液で、好ましくは、Y-コネクターを用いることにより、希釈されてもよい。当該の再構成され、希釈された溶液は、最大の力価の運搬のために、10時間 〜 11時間以内に使用するのが好ましい。
【0065】
好ましい実施態様において、シクロデキストリン化合物と共に処方されるシチジンアナログ/誘導体は、皮下注射、ボーラス静脈注射、連続的な静脈注入、及び、1時間を越える静脈注入のような注射により、患者に投与される。さらに、本発明の化合物/組成物は、一日に 0.1 mg/m2 〜 1000 mg/m2 の投与量で、一日に 1 mg/m2 〜 200 mg/m2 の投与量で、一日に 1 mg/m2 〜 150 mg/m2 の投与量で、一日に 1 mg/m2 〜 100 mg/m2 の投与量で、一日に 2 mg/m2 〜 50 mg/m2 の投与量で、一日に 10 mg/m2 〜 30 mg/m2 の投与量で、又は、一日に 5 mg/m2 〜 20 mg/m2 の投与量で、治療サイクル毎に3日間 〜 5日間、一日に1時間 〜 24 時間の静脈注入により患者に投与されてもよい。
【0066】
デシタビン、又は、アザシチジンに対しては、50 mg/m2 未満の投与量は、従来の癌化学療法で用いられる投与量と比べて、非常に低いと考えられる。そのような低い投与量の、デシタビン、又は、アザシチジンのアナログ/誘導体を用いることによって、癌細胞中で異常なメチル化により沈黙させられた遺伝子の転写活性を、下流のシグナル伝達を始動させるように活性化することができ、細胞増殖停止、分化、及び、アポトーシスを誘導し、最終的に結果として、これらの癌細胞の死をもたらす。この低い投与量は、また一方、正常細胞でのより少ない全身性細胞毒性を有し、従って、治療される患者における副作用が非常に少ないだろう。
シクロデキストリン化合物と共に処方されるシチジンアナログ/誘導体は、注入液、治療的化合物、栄養液(nutritious fluids)、抗菌液、緩衝化物質、及び、安定化物質からなる群より選択された一つ以上のメンバーと共に、いずれの従来の形態で、共投与(co-administered)されてもよい。
【0067】
上記に記載されたとおり、シチジンアナログ/誘導体は、水溶性溶媒中に、当該薬剤、及び、シクロデキストリン化合物を溶解することにより、液体形状で、シクロデキストリン化合物と共に処方することもできる。医薬液体配合物は、直接的に投与可能である、つまりは、さらなる希釈をせずに投与可能であるというさらなる効果を提供し、従って、投与まで安定な形態で貯蔵することができる。その上、当該配合物は、水、又は、注入液/注射液とすぐに混合することができるので、当該配合物は、投与に先立って、簡単に、そして、すぐに、さらに希釈することができる。例えば、医薬配合物は、患者への投与の、180分前、60分前、40分前、30分前、20分前、10分前、5分前、2分前、1分前、又は、それより直前に、水、又は、注入液/注射液で希釈することができる。
患者は、医薬配合物を、非経口的に受けてもよい。好ましい投与経路は、静脈注入、又は、静脈注射によるもの、又は、皮下注射によるものである。さらに、本発明の医薬配合物は、事前の希釈なしで、直接注入されてもよい。
【0068】
ある実施態様において、シチジンアナログ/誘導体、及び、シクロデキストリン化合物を含む医薬配合物は、三つのアームを有し、それぞれがチューブに接続されたY部位コネクターのような、コネクターを通じて注入される。例として、種々のサイズのBaxter(登録商標)Y-コネクターを、使用することができる。医薬配合物を含む容器は、コネクターの一つのアームにさらに接続されたチューブに接続される。0.9 % 塩化ナトリウム、又は、5 % デキストロース、又は、5 % グルコース、又は、乳酸リンガー(Lactated Ringer's)といった、注入液は、Y-部位コネクターのもう一方のアームに接続されるチューブを介して注入される。注入液と医薬配合物は、Y部位コネクターの中で混合される。結果として生じた混合物は、Y部位コネクターの第三のアームに接続されたチューブを介して、患者に注入される。先行技術を越えたこの投与アプローチの効果は、シチジンアナログ/誘導体が、患者の体内に入る前に注入液と混合され、これによって、シチジンアナログ/誘導体の分解が、水との接触に起因して起こるかもしれない時間を、短くすることである。例えば、シチジンアナログ/誘導体は、患者の体内に入る、10分未満前、5分未満前、2分未満前、又は、1分未満前に混合される。
【0069】
当該配合物の高められた安定性の結果、患者は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、又は、それよりも長い時間、医薬配合物を注入されてもよい。長期の注入は、治療配合物の投与の柔軟なスケジュールを可能にする。
代わりに、又は、加えて、注入の速度、及び、量は、患者のニーズに従って調節することができる。医薬配合物の注入の調節は、既存のプロトコールに従って行うことができる。
【0070】
医薬配合物は、注入液、治療的化合物、栄養液(nutritious fluids)、抗菌液、緩衝化物質、及び、安定化物質からなる群より選択された一つ以上のメンバーと共に、いずれの従来の形態で、共注入(co-infused)されてもよい。さらに、抗腫瘍物質(anti-neoplastic agents)、アルキル化物質、レチノイドスーパーファミリーのメンバーである物質、抗生物質、ホルモン物質、植物由来物質、生物製剤物質(biologic agents)、インターロイキン、インターフェロン、サイトカイン、免疫調節物質、及び、モノクローナル抗体であってもよいがこれらに限定されない治療成分が、本発明の配合物と共に、共注入(co-infused)されてもよい。
本発明の構成中の共注入(Co-infusion)とは、改善された臨床転帰を実現するための、よく調整された治療の過程における、一つよりも多い治療物質の注入を意味すると定義される。当該共注入(co-infusion)は、同時的、重複的、又は、逐次的であってもよい。ある特定の例において、医薬配合物、及び、注入液の共注入(co-infusion)は、Y-型コネクターを介して行われてもよい。
【0071】
ヒトにおいて、デシタビンは、7分間の半減期を有する分布相、及び、バイオアッセイにより測定されるように、10分間 〜 35分間のオーダーの最終半減期を示す。分布容積は、およそ 4.6 L/kg である。短い血漿中半減期は、肝臓のシチジンデアミナーゼによる脱アミノ反応によるデシタビンの急速な不活性化に起因するものである。ヒトにおけるクリアランスは高く、126 mL/分/kg のオーダーである。5人の患者全体で、平均の血漿中濃度曲線下面積(平均AUC)は、2.01 μM のピーク血漿濃度を有し、408 μg/時間/L であった。患者において、デシタビン濃度は、3時間の注入として、100 mg/m2 で投与された際には、およそ 0.4 μg/mL(2 μM)であった。より長い注入時間(40時間まで)の間、血漿中濃度は、およそ 0.1 μg/mL 〜 0.4 μg/mL であった。40時間 〜 60時間の注入時間、1 mg/kg/時間 の注入速度で、0.43 μg/mL 〜 0.76 μg/mL の血漿中濃度が実現された。1 mg/kg/時間 の注入速度での定常状態の血漿中濃度は、0.2 μg/mL 〜 0.5 μg/mL であると見積もられた。注入を打ち切った後の半減期は、12分間 〜 20分間であった。デシタビンの定常状態の血漿中濃度は、100 mg/m2 の6時間注入の間、0.31 μg/mL 〜 0.39 μg/mL であると見積もられた。600 mg/m2 注入の間の濃度範囲は、0.41 μg/mL 〜 16 μg/mL であった。ヒトの脳脊髄液へのデシタビンの浸透率は、36時間の静脈注入の終点での血漿中濃度の 14 % 〜 21 % に達する。デシタビン未変化体の尿中排泄は少なく、総投与量の 0.01 % 未満 〜 0.9 % の範囲であり、さらに、排泄と投与量、又は、血漿中薬剤水準との間に相関はない。高いクリアランス値、及び、投与された投与量の 1 % 未満の総尿中排泄は、デシタビンが速やかに、主として代謝過程により排出されることを示唆する。
【0072】
デシタビン、又は、アザシチジンの従来の臨床配合物と比べて向上された安定性の影響で、シクロデキストリン化合物を含む本発明の配合物は、貯蔵の際により長い貯蔵安定性を享受すること、及び、デシタビン、又は、アザシチジンの臨床使用に伴う問題を回避することができる。例えば、シチジンアナログ/誘導体は、シクロデキストリン化合物と共に、必要に応じて、酸(例えば、アスコルビン酸)、アルカリ性塩(水酸化ナトリウム)、又は、バッファー塩(一塩基のリン酸二水素カリウム)と共に、凍結乾燥粉末として提供されてもよい。凍結乾燥粉末は、注射用の、例えば、静脈内注射用、腹腔内注射用、筋肉内注射用、又は、皮下注射用の滅菌水で再構成することができる。さらに、当該粉末は、グリセリン、プロピレングリコール、エタノール、及び、PEGといった、水混和性溶媒を含む水溶性溶媒で再構成することができる。結果として得られた溶液は、直接的に患者に投与されてもよいし、又は、0.9 % 塩化ナトリウム、5 % デキストロース、5 % グルコース、及び、乳酸リンガー注入液(Lactated Ringer's infusion fluid)といった、注入液でさらに希釈されてもよい。
【0073】
本発明の配合物は、周囲条件下で、又は、2 ℃ 〜 25 ℃(32 ゜F 〜 77 ゜F)の制御された環境で、貯蔵されてもよい。さらに、錯体形成、及び、向上した化学的安定性によって、本発明の配合物は、酵素的な脱アミノ化、及び、加水分解に対して、より抵抗性であってもよく、さらに、デシタビンの従来の臨床配合物と比べて、より長い血漿中半減期を有しているだろう。
さらに、向上した化学的安定性によって、本発明の配合物は、デシタビンの従来の臨床配合物と比べて、より長い血漿中半減期を有しているだろう。従って、シチジンアナログ/誘導体は、デシタビン、又は、アザシチジンに対するものと比べて、より低い投与量で、及び/又は、より低い頻度で、患者に投与されてもよい。
【0074】
(5.医薬配合物、及び、併用療法の適応症)
本明細書に記載された本発明の配合物は、多くの治療的な、及び、予防的な用途を有している。好ましい実施態様において、シクロデキストリン化合物と共に処方されるシチジンアナログ/誘導体は、デシタビン、又は、アザシチジンのようなシチジンアナログ/誘導体での治療に感受性である多種多様の疾患の治療において使用される。本発明の配合物を使用して治療されてもよい好ましい適応症は、好ましくない、又は、制御されない細胞増殖を有するものであってもよい。当該適応症は、良性腫瘍、原発腫瘍、及び、腫瘍転移といった種々の型の癌、再狭窄(例えば、冠動脈病変、頚動脈病変、及び、大脳病変)、血液疾患、内皮細胞の異常刺激(粥状動脈硬化)、外科処置に起因する身体組織への侵襲、異常な創傷治癒、異常な血管新生、組織の繊維形成を引き起こす疾患、反復動作障害(repetitive motion disorders)、高度に血管新生しない組織の疾患、及び、臓器移植に伴う増殖性反応であってもよい。
【0075】
通常、良性腫瘍中の細胞は、分化型の特徴を保持し、さらに、完全に制御されない状態では分裂しない。良性腫瘍は通常、局在化され、非転移性である。本発明を使用して治療することのできる特定の型の良性腫瘍は、血管腫、幹細胞腺腫、海綿状血管腫、限局性結節性過形成、聴神経腫、神経線維腫、胆管腺腫、胆管嚢胞腺腫、繊維腫、脂肪腫、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、結節性修復性過形成、トラコーマ、及び、化膿性肉芽腫であってもよい。悪性腫瘍において、細胞は、未分化型となり、人体の増殖制御シグナルに応答せず、制御されない状態で増殖する。悪性腫瘍は、浸潤性であり、離れた部位まで広がる(転移)能力がある。悪性腫瘍は通常、原発性、及び、続発性という二つのカテゴリーに分類される。原発性腫瘍は、腫瘍が発見される組織から直接的に生じる。続発性腫瘍、又は、転移は、体内の他の場所を起源とするが、もう、離れた器官にまで広がってきている腫瘍である。転移のための一般的な経路は、隣接構造体中への直接的な増殖、血管系、又は、リンパ系を通った伝播、並びに、組織面、及び、体腔(body spaces)(腹水、脳脊髄液など)に沿ったトラッキングである。
【0076】
本発明を用いて治療することのできる原発性、又は、続発性のどちらかの、特定の型の癌、又は、悪性腫瘍は、乳癌、皮膚癌、骨癌、前立腺癌、肝臓癌、肺癌、脳癌、喉頭の癌、胆嚢、膵臓、直腸、副甲状腺、甲状腺、副腎、神経組織、頭頚部、結腸、胃、気管支、腎臓、基底細胞癌、潰瘍形成型の、又は、乳頭状型の扁平上皮癌、転移性皮膚癌、骨肉腫、ユーイング肉腫(Ewing's sarcoma)、細網肉腫(veticulum cell sarcoma)、ミエローマ、巨細胞腫、小細胞肺癌、胆石、島細胞腫瘍、原発性脳腫瘍、急性、及び、慢性のリンパ球性腫瘍、及び、顆粒球性腫瘍、有毛細胞腫瘍、アデノーマ、過形成、髄様癌、褐色細胞腫、粘膜神経腫(mucosal neuronms)、腸管神経節腫(intestinal ganglloneuromas)、過形成性角膜神経腫瘍、マーファノイドハビタス腫瘍(marfanoid habitus tumor)、ウイルムス腫瘍(Wilm's tumor)、セミノーマ、卵巣腫瘍、平滑筋腫瘍(leiomyomater tumor)、子宮頚部異形成、及び、上皮内癌、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、軟部組織肉腫、悪性カルチノイド症候群、局所的皮膚病変、菌状息肉腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨原性、及び、その他の肉腫、悪性高カルシウム血症、腎細胞腫瘍、真性多血症(polycytermia vera)、腺癌、多形神経膠芽腫(glioblastoma multiforma)、白血病、リンパ腫、悪性メラノーマ、類表皮癌、並びに、その他の悪性腫瘍、及び、肉腫であってもよい。
【0077】
血液疾患は、血液細胞における形成異常変化、及び、種々の白血病のような血液悪性腫瘍をもたらし得る血液細胞の異常増殖を含んでいてもよい。血液疾患の例としては、急性骨髄性白血病、急性前骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、及び、鎌状赤血球貧血が挙げられるが、これらに限定されない。
ある実施態様において、本発明の配合物は、遺伝性血液疾患、及び/又は、例えば、鎌状赤血球貧血のような、ヘモグロビンに障害のある疾患を含む、血液疾患の治療に用いられる。ある実施態様において、本発明の配合物は、白血病、前白血病、及び、例えば、非小細胞肺癌(NSCL)のような肺癌と同様に、例えば、骨髄異形成症候群(MDS)のようなその他の骨髄関連癌を含む癌の治療に用いることができる。NSCLは、類表皮、又は、扁平上皮の癌、腺癌、及び、大細胞癌であってもよい。MDSは、不応性貧血、環状鉄芽球を伴う不応性貧血、芽球増加を伴う不応性貧血、形質転換における芽球増加を伴う不応性貧血、及び、慢性骨髄単球性白血病であってもよい。
【0078】
本発明は、動物対象の治療のための方法、医薬組成物、及びキットを提供する。”動物対象”という用語は、本明細書で用いられるとおり、その他の哺乳類と同様にヒトをも含む。”治療する”という用語は、本明細書で用いられるとおり、治療的な利益、及び/又は、予防的な利益を獲得することを含む。治療的な利益とは、治療される根底にある疾患の根絶、又は、寛解を意味する。例えば、鎌状赤血球貧血を有する患者において、治療的な利益は、根底にある鎌状赤血球貧血の根絶、又は、寛解であってもよい。また、治療的な利益は、患者が、依然として、根底にある疾患でひどく苦しめられているかもしれないという事実にもかかわらず、改善が患者で観察されるように、根底にある疾患に伴う一つ以上の生理学的な症状の根絶、又は、寛解でも獲得される。例えば、本発明の配合物は、鎌状赤血球貧血が根絶される際のみならず、鎌状赤血球貧血に付随して起こる手足症候群、疲労、及び/又は、急性発症(苦痛の発症)の間に経験される苦痛の重症度、若しくは、持続時間のような、その他の疾患、又は、不快感についての改善が、患者で観察される際にも提供される。同様に、本発明の配合物は、癌、例えば、MDS、又は、NSCLに伴う、貧血症、挫傷、持続性感染、肺癌の大きさなどを含む症状を改善する際の治療的な利益を提供することができる。
【0079】
予防的な利益に対して、本発明の配合物は、たとえ状態の診断がなされていないかもしれなくても、癌、若しくは、血液疾患に進展するリスクのある患者、又は、当該状態の一つ以上の生理学的な症状を報告する患者へ投与されてもよい。
必要の場合には、又は、望ましい場合には、本発明の配合物は、その他の治療物質と組み合わせて投与されてもよい。本発明の化合物、及び、組成物と共投与(co-administered)することができる治療物質の選択は、ある程度、扱われる状態に依存する。
シチジンアナログ/誘導体以外の治療物質の例としては、アルキル化物質、抗生物質、代謝拮抗物質、ホルモン物質、植物由来物質、及び、生物製剤物質(biologic agents)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
アルキル化物質の例としては、ビスクロロエチルアミン(ナイトロジェンマスタード、例えば、クロランブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタード)、アジリジン(例えば、チオテパ)、アルキルアルコンスルホナート(例えば、ブスルファン)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン)、非古典的アルキル化物質(アルトレタミン、ダカルバジン、及び、プロカルバジン)、白金化合物(カルボプラスチン、及び、シスプラチン)が挙げられるが、これらに限定されない。
抗生物質の例としては、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、及び、アントラセンジオン(anthracenedione))、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、プリカトマイシン(plicatomycin)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
代謝拮抗物質の例としては、フルオロウラシル(5-FU)、フロクスウリジン(5-FUdR)、メトトレキサート、ロイコボリン、ヒドロキシ尿素、チオグアニン(6-TG)、メルカプトプリン(6-MP)、シタラビン、ペントスタチン、リン酸フルダラビン、クラドリビン(2-CDA)、アスパラギナーゼ、メシル酸イマチニブ(imatinib mesylate)(又は、GLEEVAC(登録商標))、及び、ゲムシタビンが挙げられるが、これらに限定されない。
当該のホルモン物質の例としては、合成エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロール(diethylstibestrol)、抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン、トレミフェン、フルオキシメステロン(fuluoxymesterol)、及び、ラロキシフェン)、抗アンドロゲン(ビカルタミド、ニルタミド、フルタミド)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アミノグルテチミド、アナストロゾール、及び、テトラゾール)、ケトコナゾール、酢酸ゴセレリン、リュープロリド、酢酸メゲステロール、及び、ミフェプリストンが挙げられる。
【0082】
植物由来物質の例としては、カンプトテシン(20(S)-カンプトテシン、9-ニトロ-20(S)-カンプトテシン、9-アミノ-20(S)-カンプトテシン、イリノテカン(irotecan)、CPT-11)、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジン(vinzolidine)、及び、ビノレルビン)ポドフィロトキシン(例えば、エトポシド(VP-16)、及び、テニポシド(VM-26))、及び、タキサン(例えば、パクリタキセル、及び、ドセタキセル)が挙げられるが、これらに限定されない。
生物製剤物質(biologic agents)の例としては、サイトカイン、癌抗原に対するモノクローナル抗体、癌抑制遺伝子、及び、癌ワクチンといった免疫調節タンパクが挙げられるが、これらに限定されない。CPTと共に使用されてもよいインターロイキンの例としては、インターロイキン-2(IL-2)、及び、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-12(IL-12)が挙げられるが、これらに限定されない。CPTと共に使用されてもよいインターフェロンの例としては、インターフェロンa、インターフェロンb(繊維芽細胞インターフェロン)、及び、インターフェロンg(繊維芽細胞インターフェロン)が挙げられるが、これらに限定されない。当該サイトカインの例としては、エリスロポエチン(エポエチンa(epoietin a))、顆粒球-CSF(フィルグラスチム(filgrastin))、及び、顆粒球マクロファージ-CSF(サルグラモスチム)が挙げられるが、これらに限定されない。サイトカイン以外の他の免疫調節物質としては、カルメット・ゲラン桿菌、レバミソール、及び、オクトレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
CPTと共に使用することができる癌抗原に対するモノクローナル抗体の例としては、HERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)、RITUXAN(登録商標)(リツキシマブ)、MYLOTARG(登録商標)(ゲムツズマブオゾガマイシン)、CAMPATH(登録商標)(アレムツズマブ)、ZEVALIN(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン(ibritumomab yiuxetan))、PANOREX(登録商標)(エドレコロマブ)、BEXXAR(登録商標)(トシツモマブ)、ERBITUX(登録商標)(セツキシマブ)、及び、AVASTIN(登録商標)(ベバシズマブ)が挙げられるが、これらに限定されない。
癌抑制遺伝子の例としては、DPC-4、NF-1、NF-2、RB、p53、WT1、BRCA1、及び、BRCA2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
癌ワクチンの例としては、ガングリオシド(GM2)、前立腺特異的抗原(PSA)、α-フェトプロテイン(AFP)、癌胎児抗原(CEA)(結腸癌、並びに、例えば、乳癌、肺癌、胃癌、及び、膵臓癌といったその他の腺癌により産生される)、メラノーマ関連抗原(MART-1、gp100、MAGE1,3チロシナーゼ)、パピローマウイルスE6、及び、E7フラグメント、自己の癌細胞、及び、異質遺伝子型の癌細胞の細胞全体、又は、一部/可溶化液が挙げられるが、これらに限定されない。
アジュバントが、TAAs(腫瘍関連抗原)に対する免疫応答を増大させるために使用されてもよい。アジュバントの例としては、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)、エンドトキシンリポポリサッカリド、キーホールリムペットヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin)(GKLH)、インターロイキン-2(IL-2)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、及び、低投与量で与えられた際に、腫瘍誘導的抑制を減弱させると考えられている化学療法薬であるサイトキサンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
本発明はまた、好ましくない、又は、制御されない血管新生を治療する方法も提供する。ある実施態様において、当該方法は、本発明の医薬配合物中の治療的有効量のシチジンアナログ、及び、誘導体を、制御されない血管新生で苦しんでいる患者に投与することを含む。当該方法はさらに、一つ以上の抗血管新生物質を、患者に投与することを含んでいてもよい。
抗血管新生物質の例としては、レチノイド酸、及び、その誘導体、2-メトキシエストラジオール、ANGIOSTATIN(登録商標)タンパク、ENDOSTATIN(登録商標)タンパク、スラミン、スクアラミン、組織メタロプロテアーゼ阻害物質-I、組織メタロプロテアーゼ阻害物質-2、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-2、軟骨由来阻害物質(cartilage-derived inhibitor)、パクリタキセル、血小板因子4、硫酸プロタミン(protamine sulphate)(クルペイン)、硫酸化キチン誘導体(ズワイ蟹の殻から調製される)、硫酸化多糖ペプチドグリカン複合体(sulphated polysaccharide peptidoglycan complex)(sp-pg)、スタウロスポリン、例えば、プロリンアナログ(1-アゼチジン-2-カルボン酸(LACA)、シスヒドロキシプロリン、d,l-3,4-デヒドロプロリン、チアプロリン)、α,α-ジピリジル、β-アミノプロピオニトリルフマラート、4-プロピル-5-(4-ピリジニル)-2(3h)-オキサゾロン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ヘパリン、インターフェロン、2 マクログロブリン-血清、chimp-3、キモスタチン、β-シクロデキストリンテトラデカスルファート、エポネマイシン(eponemycin)、フマギリン、チオリンゴ酸金ナトリウム、d-ペニシラミン(CDPT)、β-1-抗コラゲナーゼ-血清、α2-抗プラスミン、ビサントレン(bisantrene)、ロベンザリッド二ナトリウム、n-(2-カルボキシフェニル-4-クロロアントロニル酸二ナトリウム、又は、”CCA”、サリドマイド、アンゴスタティックステロイド(angostatic steroid)、カルグボキシンアミノルミダゾール(cargboxynaminolmidazole)、BB94のようなメタロプロテアーゼ阻害物質が挙げられるが、これらに限定されない。その他の抗血管新生物質としては、これらの血管新生増殖因子:bFGF、aFGF、FGF-5、VEGFアイソフォーム、VEGF-C、HGF/SF、及び、Ang-1/Ang-2 に対するモノクローナル抗体のような抗体が挙げられる。
【実施例】
【0086】
以下の実施例は、それによって、いかなる方法によっても本発明を制限せずに、本発明の詳細を明らかにすることを意図している。下記の実施例において記載されるとおり、水溶液中での賦形剤としてのシクロデキストリンの使用は、デシタビン、及び、5-アザシチジンのようなシチジンアナログ、又は、誘導体の溶解性、及び/又は、安定性を著しく向上させることができる。
【0087】
1.シクロデキストリン溶液中でのデシタビンの溶解性
pH 6.7 〜 pH 7.2 のシクロデキストリンの水溶液を、6の割合のリン酸カリウムバッファー(50 mM KH2PO4、pH 7.0)中に、4の割合のシクロデキストリン(ヒドロキシプロピルα-シクロデキストリン(HPACD)、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン(HPBCD)、β-シクロデキストリン(BCD)、ヒドロキシプロピルγ-シクロデキストリン(HPGCD)、又は、CAPTISOL)を溶解することにより調製し、結果として 40 %(w/w)シクロデキストリンの溶液を生じさせた。固体デシタビン(SuperGen, Inc., Dublin, CA)を、シクロデキストリンの水溶液に加え、室温(20 ℃ 〜 25 ℃)で混合した。表1は、リン酸カリウムバッファー(pH 7.0)中のものと比較した、それぞれのシクロデキストリン溶液中でのデシタビンの溶解性を一覧表にしたものである。
【0088】
表1に示されるとおり、HPBCD、及び、Captisolのようなβ-シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、又は、γ-シクロデキストリン(HPACD、及び、HPGCDのような)よりも水溶液中でのデシタビンの溶解性を向上させるのにより効果的である。溶解性の向上は、臨床上、投与量当たりに必要な体積をより少なくし、デシタビン薬剤の皮下投与をより実用的にするだろう。
【表1】

【0089】
2.シクロデキストリン溶液中でのデシタビンの安定性
上記で調製されたシクロデキストリン溶液中、及び、リン酸バッファー中でのデシタビンの化学的安定性を、測定した。全ての溶液に対する最初のデシタビン濃度は、2 ℃ 〜 8 ℃ での実験の手始めは、17 mg/mL 〜 18 mg/mL であり、25 ℃ での実験の手始めは、9 mg/mL 〜 10 mg/mL であった。デシタビン力価は、HPLC法により評価し、220 nm での総ピーク面積のパーセンテージとして表現した。
図1、及び、図2は、水溶液中での賦形剤としてのデシタビンの使用が、それぞれ 2 ℃ 〜 8 ℃ の、及び、25 ℃ の、溶液中でのデシタビンの安定性を劇的に向上させることができることを示す。水溶液中でのデシタビンに対するシクロデキストリンの安定化効果は、α-シクロデキストリン、又は、γ-シクロデキストリン(HPACD、及び、HPGCD)に比べて、HPBCD、及び、Captisolのようなβ-シクロデキストリンを使用した際に、より明らかとなる。この安定化効果はまた、図3に示されるように、濃度依存的である。
【0090】
学説、又は、作用機構に縛られることなく、本発明者らは、シクロデキストリン含有水溶液中でのデシタビンの溶解性の亢進と安定性の向上の両方が、デシタビンとシクロデキストリン分子との間の錯体形成に起因するものであり、β-シクロデキストリンが、α-シクロデキストリン、又は、γ-シクロデキストリンよりも、より堅固で可逆的な錯体をデシタビンと形成すると確信する。
シクロデキストリン含有水溶液中でのデシタビンのUV分光測定検討を、デシタビンとβ-シクロデキストリンとの間の錯体の形成を実証するために行った。それぞれのスペクトルを、デシタビンを欠いた同じ溶液でブランク化した後、室温において、0.01 mg/mL 〜 0.02 mg/mL のデシタビンで測定した。全てのスペクトルを、243 nm 〜 246 nm の最高点でのデシタビンの吸光係数が同じままである(7000 M-1cm-1)と仮定して、69 μM のデシタビンに標準化した。図4は、β-シクロデキストリンが存在する際の、デシタビンUVスペクトルの変化を示し(図4)、デシタビンとβ-シクロデキストリンとの錯体形成を強く示唆する。
【0091】
シクロデキストリン溶液中でのデシタビンのUVスペクトル変化の程度はまた、濃度依存的であることを示す(図5)。それぞれのスペクトルを、デシタビンを欠いた同じ溶液でブランク化した後、室温において、0.01 mg/mL のデシタビンで測定した。全てのスペクトルを、243 nm 〜 246 nm の最高点でのデシタビンの吸光係数が同じままである(7000 M-1cm-1)と仮定して、47 μM のデシタビンに標準化した。図5に示されたそれぞれのスペクトルから得られた 262 nm での吸光度、及び、対応するHPBCD濃度に基づき、デシタビン-HPBCD錯体に対する錯形成定数Kfは、デシタビン/HPBCD錯体の化学量論を 1:1 と仮定して、下記方程式(1)に基づいて計算することができる。
1/ΔA=1/(ΔA0 * Kf * [HPBCD])+1/ΔA0 (1)
ここで、ΔA0は、遊離型デシタビンと錯体型デシタビンとの間の 262 nm における吸光度の差であり、ΔAは、特定の[HPBCD](HPBCD濃度)における、デシタビン-HPBCDとデシタビン-KPiとの間の 262 nm における吸光度の差である。図6は、1/[HPBCD]に対する1/ΔA(1/デルタA)のプロットを示す。プロット中、デルタA(ΔA)は、それぞれの特定のHPBCD濃度([HPBCD])における、デシタビン-HPBCDとデシタビン-KPiとの間の 262 nm での吸光度の差である。直線は、方程式(1)を用いた最小二乗法近似である。近似曲線から、デシタビン-HPBCD錯体に対するKfは、23 M-1 であると計算された。
【0092】
デシタビンの溶解性、及び、安定性の両方への、α-シクロデキストリン、又は、γ-シクロデキストリンの効果は、HPBCD、及び、CAPTISOLのようなβ-シクロデキストリンと比べた際には、より劇的でなく、これはおそらく、α-シクロデキストリン、又は、γ-シクロデキストリンとデシタビン分子との間のより安定でない錯体の形成が原因である。デシタビンとシクロデキストリンとの間の相互作用は、非共有結合的、及び、可逆的であると考えられている。デシタビンに対する標準的な臨床薬剤の投薬条件下で、デシタビン-HPBCDに対して計算されたKf(23 M-1)に基づき、ほとんどのデシタビンが、患者に注入されるとすぐに、HPBCDとの錯体から解離し、新たな薬剤の実体は形成されないだろうと予想される。
【0093】
上記の結果は、水溶液中での賦形剤としてのシクロデキストリンの使用が、2倍を越えるまで溶液中でのデシタビンの溶解性を高め、さらにまた、溶液中でのデシタビンの安定性を劇的に向上させることを明示する。デシタビン薬剤に対する賦形剤としてのシクロデキストリンは、薬剤製品を製造する間に適用することができ、又は、凍結乾燥したデシタビン粉末を、投与の直前に可溶化するための注射溶液中で、使用することができる。賦形剤としてのシクロデキストリンとの、デシタビン配合物の患者への運搬は、あらゆる薬剤運搬方法、キット、カセット、及び、容器を介して達成されてもよい。シクロデキストリン含有水溶液中での、デシタビンの溶解性、及び、安定性の重大な改善は、従来のデシタビン薬剤製品の製造の際、及び、臨床的な適用の際の両方における多数の深刻な不都合を、最小限にするか、又は、除去するだろう。
【0094】
3.シクロデキストリン溶液中での5-アザシチジンの溶解性
pH 6.7 〜 pH 7.2 のシクロデキストリンの水溶液を、6の割合のリン酸カリウムバッファー(50 mM KH2PO4、pH 7.0)中に、4の割合のシクロデキストリン(ヒドロキシプロピルα-シクロデキストリン(HPACD)、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン(HPBCD)、ヒドロキシプロピルγ-シクロデキストリン(HPGCD)、又は、CAPTISOL)を溶解することにより調製し、結果として 40 %(w/w)シクロデキストリンの溶液を生じさせた。固体5-アザシチジン(Sigma-Aldrich)を、シクロデキストリンの水溶液に加え、室温(20 ℃ 〜 25 ℃)で混合した。表2は、リン酸カリウムバッファー(pH 7.0)中のものと比較した、それぞれのシクロデキストリン溶液中での5-アザシチジンの溶解性を一覧表にしたものである。
【0095】
表2に示されるとおり、水溶液中での、賦形剤としてのシクロデキストリンの使用は、溶液中での5-アザシチジン溶解性を向上させることができる。HPBCD、及び、Captisolのようなβ-シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、又は、γ-シクロデキストリン(HPACD、及び、HPGCDのような)よりも水溶液中での5-アザシチジンの溶解性を向上させるのにより効果的である。溶解性の向上は、臨床上、投与量当たりに必要な体積をより少なくするだろう。
【表2】

【0096】
多くの変更、及び、修飾が、添付の特許請求の範囲の精神、又は、発明の範囲から逸脱することなく本発明へ作り出され、当該の変更、及び、修飾が、本発明の範囲内で熟慮されることが、当業者に十分理解することができる。
【0097】
あらゆる出版物、特許、及び、特許出願、及び、ウェブサイトは、各々の出版物、特許、又は、特許出願が、明確かつ個別に、参照によって完全に取り込まれるように示されたのと同程度に、完全に、参照によって本明細書に取り込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、2 ℃ 〜 8 ℃ における、シクロデキストリンと共に処方されたデシタビンの安定性試験の結果を示す。
【図2】図2は、25 ℃ における、シクロデキストリンと共に処方されたデシタビンの安定性試験の結果を示す。
【図3】図3は、25 ℃ における、種々のHPBCD濃度の溶液中の、デシタビンの安定性試験の結果を示す。
【図4】図4は、25 ℃ における、シクロデキストリン溶液中の、デシタビンのUVスペクトルを示す。
【図5】図5は、25 ℃ における、種々のHPBCD濃度の溶液中の、デシタビンのUVスペクトルを示す。
【図6】図6は、1/[HPBCD]に対する、1/(262 nm のデルタA)のプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも 60 %(v/v) の水を含む水溶性溶媒中で溶媒和された、シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体、及び、シクロデキストリン化合物を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記のシチジンアナログ、又は、シチジン誘導体が、5-アザシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2'-フルオロシチジン、2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン、及び、シトシン1-β-D-アラビノフラノシドからなる群より選択された、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記のシチジンアナログ、又は、シチジン誘導体が、医薬的に許容される塩の形態である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記の医薬的に許容される塩が、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、及び、リン酸塩からなる群より選択された、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記の医薬的に許容される塩が、脂肪族の塩、脂環式の塩、芳香族の塩、アリール脂肪族の塩、複素環式の塩、カルボン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、マレイン酸塩、エンボン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、パントテン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、スルファニル酸塩、メシル酸塩、シクロヘキシルアミノスルホン酸塩、ステアリン酸塩、アルゲン酸塩、β-ヒドロキシ酪酸塩、マロン酸塩、ガラクティック塩、ガラクツロン酸塩、L-乳酸塩、酢酸塩、(+)-L-酒石酸塩、クエン酸塩、酪酸塩、ヘキサン酸塩、L-アスパラギン酸塩、L-グルタミン酸塩、コハク酸塩、EDTA、マレイン酸塩、メタンスルホン酸、HBr、HF、HI、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、亜リン酸塩、過塩素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩、アスコルビン酸塩、炭酸塩、フマル酸、エタンスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、及び、トルエンスルホン酸からなる群より選択された、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記のシクロデキストリン化合物が、非晶質、又は、結晶質である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記のシクロデキストリン化合物が、非晶質の、α-シクロデキストリン化合物、β-シクロデキストリン化合物、又は、γ-シクロデキストリン化合物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記のシクロデキストリン化合物が、アルキル化されたシクロデキストリン化合物、又は、ヒドロキシアルキルシクロデキストリン化合物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記のシクロデキストリン化合物が、β-シクロデキストリンの、ヒドロキシプロピル誘導体、ヒドロキシエチル誘導体、グルコシル誘導体、マルトシル誘導体、及び、マルトトリオシル誘導体、カルボキシアミドメチル-β-シクロデキストリン、カルボキシメチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、並びに、ジエチルアミノ-β-シクロデキストリンからなる群より選択された、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記のシクロデキストリン化合物が、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記のシクロデキストリン化合物が、モノ-置換型β-シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩、テトラ-置換型β-シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩、及び、ヘプタ-置換型β-シクロデキストリンスルホブチルエーテルナトリウム塩からなる群より選択された、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記のシクロデキストリン化合物が、β-シクロデキストリンスルホブチルエーテル七ナトリウム塩、又は、CAPTISOLである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記の医薬組成物中のシチジンアナログ、又は、シチジン誘導体の量が、1 mL の溶媒につき 0.1 mg 〜 200 mg である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記の医薬組成物中のシチジンアナログ、又は、シチジン誘導体の量が、1 mL の溶媒につき 2 mg 〜 50 mg である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記のシチジンアナログ、又は、シチジン誘導体のシクロデキストリン化合物に対する質量比率が、1:1 〜 1:5000 の範囲である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記のシチジンアナログ、又は、シチジン誘導体のシクロデキストリン化合物に対する質量比率が、1:1 〜 1:200 の範囲である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記のシチジンアナログ、又は、シチジン誘導体のシクロデキストリン化合物に対する質量比率が、1:5 〜 1:50 の範囲である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記の水溶性溶媒が、少なくとも 90 % の水を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記の水溶性溶媒が、少なくとも 98 % の水を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記の水溶性溶媒がさらに、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、又は、その組み合わせを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記の組成物が結果として pH 4 〜 pH 8 となるような割合で、当該組成物に加えられた酸性化物質をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記の酸性化物質が、有機酸である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記の有機酸が、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、ギ酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、マレイン酸、グルタミン酸、コハク酸、アスパラギン酸、ジアトリゾ酸、及び、酢酸からなる群より選択された、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記の酸性化物質が、無機酸である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記の無機酸が、塩酸、硫酸、リン酸、及び、硝酸からなる群より選択された、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記の酸性化物質が、溶媒 1 mL につき 0.01 mg 〜 0.2 mg の濃度のアスコルビン酸である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項27】
マンニトール、ソルビトール、ラクトース、及び、デキストロースからなる群より選択された賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記の医薬組成物が、2 ℃ 〜 8 ℃ で、5時間、10時間、15時間、24時間、又は、2日間、4日間、7日間、14日間、21日間、28日間、若しくは、それより長い日数の間の貯蔵で、少なくとも 80 % 安定である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記の医薬組成物が、2 ℃ 〜 8 ℃ で、5時間、10時間、15時間、24時間、又は、2日間、4日間、7日間、14日間、21日間、28日間、若しくは、それより長い日数の間の貯蔵で、少なくとも 95 % 安定である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記の医薬組成物が、20 ℃ 〜 25 ℃ で、5時間、10時間、15時間、24時間、又は、2日間、4日間、7日間、14日間、21日間、28日間、若しくは、それより長い日数の間の貯蔵で、少なくとも 80 % 安定である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記の医薬組成物が、20 ℃ 〜 25 ℃ で、5時間、10時間、15時間、24時間、又は、2日間、4日間、7日間、14日間、21日間、28日間、若しくは、それより長い日数の間の貯蔵で、少なくとも 95 % 安定である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項32】
シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体、及び、シクロデキストリン化合物を、少なくとも 60 %(v/v) の水を含む水溶性溶媒中に溶解することを含む操作により調製された、シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体の医薬配合物。
【請求項33】
前記の水溶性溶媒がさらに、バッファー塩を含む、請求項32に記載の医薬配合物。
【請求項34】
前記のバッファー塩が、リン酸カリウムである、請求項33に記載の医薬配合物。
【請求項35】
前記の操作がさらに、結果として生じる溶液の pH が、pH 4 〜 pH 8 となるように、シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体、及び、溶媒を含む溶液に、酸性化物質を加えることを含む、請求項32に記載の医薬配合物。
【請求項36】
前記の操作がさらに、結果として生じる溶液の pH が、pH 5.5 〜 pH 6.8 となるように、シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体、及び、溶媒を含む溶液に、酸性化物質を加えることを含む、請求項32に記載の医薬配合物。
【請求項37】
前記のシチジンアナログ、又は、シチジン誘導体が、5-アザシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2'-フルオロシチジン、2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン、及び、シトシン1-β-D-アラビノフラノシドからなる群より選択された、請求項32に記載の医薬配合物。
【請求項38】
請求項1に記載の医薬組成物を含む、シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体を必要とする被投与体へのシチジンアナログ、又は、シチジン誘導体の投与用滅菌容器。
【請求項39】
前記の容器が、バイアル、シリンジ、又は、アンプルである、請求項38に記載の容器。
【請求項40】
前記の容器が、1 mL 〜 50 mL の前記医薬組成物を含む、請求項38に記載の容器。
【請求項41】
固形のシチジンアナログ、又は、シチジン誘導体、並びに、シクロデキストリン化合物、及び、少なくとも 60 %(v/v) の水を含む水溶性希釈液を含む、シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体を必要とする被投与体への投与用キット。
【請求項42】
前記のシチジンアナログ、又は、シチジン誘導体が、前記キット中の一番目の容器中に収納され、前記の水溶性希釈液が、前記キット中の二番目の容器中に収納された、請求項41に記載のキット。
【請求項43】
キットを使用するための使用説明書をさらに含む、請求項41に記載のキット。
【請求項44】
前記の使用説明書が、シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体の患者への投与方法の情報を含む、請求項43に記載のキット。
【請求項45】
前記のシチジンアナログ、又は、シチジン誘導体が、5-アザシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2'-フルオロシチジン、2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン、及び、シトシン1-β-D-アラビノフラノシドからなる群より選択された、請求項41に記載のキット。
【請求項46】
シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体、及び、シクロデキストリン化合物を含む一番目の容器、並びに、少なくとも 60 % の水を含む水溶性希釈液を含む二番目の容器を含む、シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体を必要とする被投与体への投与用キット。
【請求項47】
前記の水溶性希釈液がさらに、バッファー塩を含む、請求項46に記載のキット。
【請求項48】
キットを使用するための使用説明書をさらに含む、請求項46に記載のキット。
【請求項49】
前記の使用説明書が、シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体の患者への投与方法の情報を含む、請求項48に記載のキット。
【請求項50】
前記のシチジンアナログ、又は、シチジン誘導体が、5-アザシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2'-フルオロシチジン、2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン、及び、シトシン1-β-D-アラビノフラノシドからなる群より選択された、請求項46に記載のキット。
【請求項51】
請求項1に記載の医薬組成物中の、医薬的有効量のシチジンアナログ、又は、シチジン誘導体を患者に投与することを含む、シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体での治療に感受性の疾患を有する患者の治療方法。
【請求項52】
前記の医薬組成物が、経口的に、非経口的に、局所的に、腹腔内に、静脈内に、動脈内に、経皮的に、舌下に、筋肉内に、直腸に、経頬的に、鼻腔内に、リポソーム的に、吸入により、膣に、眼内に、局所運搬により、皮下に、脂肪内に、関節内に、又は、髄腔内に投与される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記の医薬組成物が、静脈内に、筋肉内に、又は、皮下に投与される、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記の医薬組成物がさらに、水溶性希釈液で希釈され、患者に投与される、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記の水溶性希釈液が注入液であって、希釈された医薬組成物が患者へ静脈内に注入される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記の医薬組成物が、患者へ、Y-コネクターを経由して静脈内に注入される、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記希釈が、患者への投与の、10時間前、2時間前、1時間前、30分前、10分前、5分前、又は、それよりも直前に行われる、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記のシチジンアナログ、又は、シチジン誘導体が、5-アザシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2'-フルオロシチジン、2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン、及び、シトシン1-β-D-アラビノフラノシドからなる群より選択された、請求項51に記載の方法。
【請求項59】
患者に、シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体以外の治療物質を投与することをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項60】
前記の治療物質が、代謝拮抗性物質、アルキル化物質、レチノイド化合物、ホルモン物質、植物由来物質、生物製剤物質、インターロイキン、インターフェロン、サイトカイン、免疫調節物質、及び、モノクローナル抗体からなる群より選択された、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記の疾患が、良性腫瘍、癌、血液疾患、粥状動脈硬化、外科処置に起因する身体組織への侵襲、異常な創傷治癒、異常な血管新生、組織の繊維形成を引き起こす疾患、反復動作障害、高度に血管新生しない組織の疾患、及び、臓器移植に伴う増殖性反応からなる群より選択された、請求項51に記載の方法。
【請求項62】
前記の疾患が、骨髄異形成症候群、白血病、悪性腫瘍、及び、鎌状赤血球貧血からなる群より選択された、請求項51に記載の方法。
【請求項63】
固形の、シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体、及び、シクロデキストリン化合物を、少なくとも 60 %(v/v) の水を含む水溶性希釈液と混合して医薬配合物を形成すること、並びに、前記医薬配合物を患者に投与することを含む、シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体での治療に感受性の疾患を有する患者の治療方法。
【請求項64】
前記の医薬配合物が、経口的に、非経口的に、局所的に、腹腔内に、静脈内に、動脈内に、経皮的に、舌下に、筋肉内に、直腸に、経頬的に、鼻腔内に、リポソーム的に、吸入により、膣に、眼内に、局所運搬により、皮下に、脂肪内に、関節内に、又は、髄腔内に投与される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記のシチジンアナログ、又は、シチジン誘導体が、5-アザシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2'-フルオロシチジン、2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン、及び、シトシン1-β-D-アラビノフラノシドからなる群より選択された、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
固形の、シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体を、少なくとも 60 %(v/v) の水中で溶媒和されたシクロデキストリン化合物を含む水溶性希釈液と混合して医薬配合物を形成すること、及び、前記医薬配合物を患者に投与することを含む、シチジンアナログ、又は、シチジン誘導体での治療に感受性の疾患を有する患者の治療方法。
【請求項67】
前記の医薬配合物が、経口的に、非経口的に、局所的に、腹腔内に、静脈内に、動脈内に、経皮的に、舌下に、筋肉内に、直腸に、経頬的に、鼻腔内に、リポソーム的に、吸入により、膣に、眼内に、局所運搬により、皮下に、脂肪内に、関節内に、又は、髄腔内に投与される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記の疾患が、良性腫瘍、癌、血液疾患、粥状動脈硬化、外科処置に起因する身体組織への侵襲、異常な創傷治癒、異常な血管新生、組織の繊維形成を引き起こす疾患、反復動作障害、高度に血管新生しない組織の疾患、及び、臓器移植に伴う増殖性反応からなる群より選択された、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記の疾患が、骨髄異形成症候群、白血病、悪性腫瘍、及び、鎌状赤血球貧血からなる群より選択された、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
前記のシチジンアナログ、又は、シチジン誘導体が、5-アザシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン、5-アザ-2'-デオキシ-2'-フルオロシチジン、2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン、及び、シトシン1-β-D-アラビノフラノシドからなる群より選択された、請求項66に記載の方法。
【請求項71】
前記のシチジンアナログ、又は、シチジン誘導体が、一日につき、0.1 mg/m2 〜 150 mg/m2 の投与量で患者に投与される、請求項66の方法。
【請求項72】
前記のシチジンアナログ、又は、シチジン誘導体が、一日につき、1 mg/m2 〜 50 mg/m2 で患者に投与される、請求項66に記載の方法。
【請求項73】
前記のシチジンアナログ、又は、シチジン誘導体が、一日につき、5 mg/m2 〜 30 mg/m2 で患者に投与される、請求項66に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2008−523079(P2008−523079A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545615(P2007−545615)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/044379
【国際公開番号】WO2006/063111
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(501170688)スーパージェン インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】