説明

シフトレバー装置

【課題】実車の操作感触に近いリアリティ感に富んだ操作感を有するとくにドライブゲーム機用のシフトレバー装置を提供する。
【解決手段】シャーシーフレームと、このシャーシーフレームに所定の角度範囲内で前後方向に傾動可能に軸支された少なくともその先端側を磁性材料で構成して成る操作レバーと、前記シャーシーフレームの底部に当接し前記操作レバーの下端部側を挿通させた貫通孔を有し軸方向へスライド可能となるように取り付けられたスイッチ作動部材と、このスイッチ作動部材の周りに配置され前記スイッチ作動部材によりオン・オフ動作せしめられるスイッチ装置と、前記操作レバーを常に自立位置に自動復帰させる自動復帰手段と、を備えたシフトレバー装置において、前記自動復帰手段を、前記貫通孔に前記操作レバーの先端側と対向させて配置させたマグネットで構成したことにより、前記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ドライブゲーム機のようなゲーム機において、画面上の乗り物の運転操作に使用するために用いられて好適なシフトレバー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドライブゲーム機用のようなゲーム機のシフトレバー装置は、ドライブゲーム機の運転席の脇の操作部に設けられ、ゲーム上の乗り物の走行速度を切換えるために用いられものであり、従来より種々の形態のものが知られている。
【0003】
これらのシフトレバー装置において、前位置又は後位置に傾動させた操作レバーを、元の位置に自動復帰させるための自動復帰手段としては、従来、各種形態のスプリングが用いられるのが一般的であり、下記特許文献1にもその一例が示されている。
【0004】
この特許文献1に記載のシフトレバー装置は、シフトレバーをフロントドライブ位置へ向けて付勢するコイルばねを設けたことを特徴としており、このコイルばねの付勢作用によって、後退走行状態から前進走行状態に向けての迅速な切換え操作を可能にするものである。
【0005】
また、ここに添付の図5乃至図6に示した従来のゲーム機用シフトレバー装置(ジョイスティックレバーとも言う)の一例も、操作レバーのセンター位置への自動復帰させるための付勢手段としてスプリングを利用したものであり、その機構及び作用の概略を説明すれば次の通りである。
【0006】
このシフトレバー装置101は、そのシャーシーフレーム103が取付板104によってゲーム機の操作部に取り付けられるようになっており、シャーシーフレーム103には、操作レバー102のシャフト1021が支軸105によって前後方向に傾動可能なように取り付けられている。操作レバー102の傾動可能な角度範囲は、図6に示す如く、シャフト1021に装着されたシャフトカバー107がストッパー106A又は106Bに当接することにより規制されるようになっている。シャフト1021の下部領域は、シャーシーフレーム103の底面板1031に開けた挿通孔1031aを貫通して下方へ伸長し、当該シャフト1021の下端域には、その軸方向に摺動自在なように円環状のスイッチ作動部材108が装着されている。このスイッチ作動部材108は、スプリング109によって前記シャーシーフレーム103の底面板1031へ向けて押し付けられるように付勢されている。
【0007】
操作レバー102に外力が加えられないときは、図5に示す如く、前記スプリング109の押出し力によって前記スイッチ作動部材108の上面全体が前記底面板1031の下面に当接せしめられ、これにより前記シャフト1021が底面板1031に対して直立した状態となったセンター位置に保持されるようになっている。
【0008】
操作レバー102を、図6に示す如く、そのセンター位置から前方(又は後方)へ傾動させると、前記スイッチ作動部材108も前記シャフト1021と共に傾斜し、スイッチ作動部材108の外周面によって一方のスイッチ装置1011B(又は1011A)が作動せしめられる。このとき、前記傾斜したスイッチ作動部材108の上面の周縁部の一箇所108pのみが前記シャーシーフレーム103の底面板1031に当接した状態で、前記スイッチ作動部材108は、前記スプリング109の押出し力に抗して、その傾斜角度に応じて前記シャフト1021の軸に沿って下方へ移動せしめられ、スプリング109は押し縮められる。そのため、操作レバー102に対する外力を解放すると自動的に復帰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−207030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記先行技術の如く、操作レバーの原位置への復帰の付勢手段としてスプリングを用いた場合には、スプリングの応力特性に起因して、復帰位置に近づくほどスプリングの付勢力が弱くなるため、操作レバーの切換え時の明確な操作感触が得られず、実車を操作するような操作感覚をリアルに再現できないという問題があった。
【0011】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、特にドライブゲーム機のようなゲーム機のシフトレバー装置において、走行速度の切換え時の操作レバーの操作感触を、従来のスプリング式とは異なり、歯切れ良く明確に感触可能なものとし、実車の操作感触に近いリアリティ感に富んだ操作感触あるいは感覚を生じさせることのできるシフトレバー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するための本発明に係るシフトレバー装置は、シャーシーフレームと、このシャーシーフレームに所定の角度範囲内で前後方向に傾動可能に軸支された少なくともその先端側を磁性材料で構成して成る操作レバーと、前記シャーシーフレームの底部に当接し前記操作レバーの下端部側を挿通させた貫通孔を有し軸方向へスライド可能となるように取り付けられたスイッチ作動部材と、このスイッチ作動部材の周りに配置され前記スイッチ作動部材によりオン・オフ動作せしめられるスイッチ装置と、前記操作レバーを常に自立位置に自動復帰させる自動復帰手段と、を備えたシフトレバー装置において、前記自動復帰手段を、前記貫通孔に前記操作レバーの先端側と対向させて配置させたマグネットで構成したことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、操作レバーのシャフトの下端域に、その軸方向に摺動自在なよう円環状のスイッチ作動部材を装着し、当該スイッチ作動部材の下面にはその貫通孔の下端開口を塞ぐようマグネットを取り付け、このマグネットによる前記シャフトの下端面への磁力吸引力を利用して、傾動せしめられた操作レバーを元のセンター位置へ自動復帰せしめるものであり、その場合、マグネットは、吸着対象物に近づくほど、その吸着力(付勢力)が増大するという特徴を有するため、この特徴を利用して、操作レバーの切換え操作の作動を明確で歯切れの良いものとし、実車のシフトレバーの操作感触に近いリアリティ感に富んだものとすることができる。
【0014】
本発明に係るシフトレバー装置において、前記シャーシーフレームの底面板の下面に、前記スイッチ作動部材及びマグネットを囲繞するマグネットカバーを取り付けることが好ましい。また、本発明に係るシフトレバー装置において、前記マグネットは1個とすることも、或いはまた、薄いマグネット片を軸方向に複数枚重ねて構成することも可能である。また、本発明に係るシフトレバー装置において、前記操作レバーのシャフトの前後方向への傾動角度を、センター位置から(9±5)°の範囲内とすることが好ましい。また、本発明に係るシフトレバー装置において、前記スイッチ装置として、マイクロスイッチや、光学的センサー、或はポテンションメーターからなるスイッチを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係るシフトレバー装置によるときは、操作レバーのシャフトの下端域に、シャフトの軸方向に摺動自在なよう円環状のスイッチ作動部材を装着し、当該スイッチ作動部材の下面にはその貫通孔の下端開口を塞ぐようマグネットを取り付け、このマグネットによる前記シャフトの下端面への吸引力を利用して、傾動せしめられた操作レバーを元のセンター位置へ自動復帰せしめるものであり、その場合、マグネットは、吸着対象物に近づくほど、その吸着力(付勢力)が増大するという特徴を有するため、この特徴を利用することにより、操作レバーの切換え操作の作動を明確で歯切れの良いものとし、実車のシフトレバーの操作感触に近いリアリティ感に富んだものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るシフトレバー装置の一例を示す縦断面図である。
【図2】図1に示したシフトレバー装置の操作レバーを一方へ傾動させた状態を示す縦断面図である。
【図3】図1に示したシフトレバー装置の操作レバーを他方へ傾動させた状態を示す縦断面図である。
【図4】本発明に係るシフトレバー装置におけるスイッチ作動部材へのマグネットの取付方法の他の実施例を示す一部縦断面図である。
【図5】従来のスプリング復帰式シフトレバー装置の一例を示す縦断面図である。
【図6】図5に示した従来のスプリング復帰式シフトレバー装置の操作レバーを傾動させた状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るシフトレバー装置をドライブゲーム機のようなゲーム機に実施した場合について添付図面に基づいて詳述する。がしかし、本発明に係るシフトレバー装置は、ドライブゲーム機の限定されず、その他のビデオゲーム機に実施できるものである。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明に係るシフトレバー装置の一例を示す図である。
【0019】
本発明に係るシフトレバー装置1は、その取付板4によって図示を省略したゲーム機の操作パネルに固定されるようになっている。取付板4の下面には、シャーシーフレーム3が取り付けられており、このシャーシーフレーム3に対して、操作レバー2が前後方向に傾動可能なように取り付けられ、操作レバー2の上半部は、取付板4に設けた挿通孔4aから外部に突出するように構成されている。
【0020】
操作レバー2は、丸棒状のシャフト21と、その上端部に取り付けられる握り部材22と、下端域に装着されるスイッチ作動部材8とを備え、シャフト21はその中間位置において支軸5によりシャーシーフレーム3に対して所定の角度範囲内で前後方向に傾動可能なよう軸支されている。
【0021】
前記シャーシーフレーム3は、その底部を形成する底面板31と、その両側辺から底面板31に対してそれぞれ直角に立ち上がるよう固着された互いに平行な一対の側壁板32とから形成され、当該一対の側壁板32の間に掛け渡すように設けられた支軸5によって、操作レバー2のシャフト21を前記一対の側壁板32の間で傾動可能なように保持するようになっている。
【0022】
シャフト21の前記一対の側壁板32の間に収容された部分の外周にはシャフトカバー7が装着されると共に、前記一対の側壁板32の間には前記支軸5と平行に、且つ、支軸5から互いに等距離の位置に一対のストッパー6A、6Bが取り付けられ、操作レバー2の傾動角度を一定範囲内に制限するようになっている。
【0023】
即ち、図2に示すように、操作レバー2を例えば前方向へ傾動させると、所定の角度αの位置に達したときにシャフトカバー7の外壁面がストッパー6Bに当接して、それ以上の傾動が阻止され、また、後方向へ傾動させた場合も同様に、所定の角度位置に達したときにシャフトカバー7の外壁面が反対側のストッパー6Aに当接して、それ以上の傾動が阻止されるようになっている。
【0024】
操作レバー2の傾動可能な上記角度αの範囲は、図示した例においては9°に設定されているが、一般的には実車のシフトレバーの傾動角度範囲に合わせて、センター位置から例えば(9±5)°の範囲内とし、リアル感を持たせることが好ましい。ただし、特にこの角度範囲に限定されることはなく、本発明に係るシフトレバー装置が取り付けられるゲーム機の種類、内容に応じて適宜変更、設定することが可能である。
【0025】
シャーシーフレーム3の底面板31の下面には、絶縁プレート12A、12Bを介してスイッチ装置11A、11Bが取り付けられる。
【0026】
スイッチ装置11A、11Bは、図示した例においては、それぞれの触子11a、11bが押圧されることによりオン・オフ動作せしめられるマイクロスイッチから構成されているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、発光素子と受光素子とを有し、両者間の光路の遮断の有無によりオン・オフ動作せしめられる光学的センサー、或はポテンションメーターからなるスイッチを用いることも可能であり、その他各種の作動原理に基づくスイッチ装置も使用可能である。
【0027】
シャーシーフレーム3の底面板31には、前記操作レバー2のシャフト21の下部領域を挿通させるための挿通孔31aが開けられており、前記シャフト21の下部領域はこの挿通孔31aを貫通して下方へ伸長するよう構成されている。
【0028】
当該シャフト21の下端域には、その軸方向に摺動自在なように円環状の前記スイッチ作動部材8が装着されている。スイッチ作動部材8はプラスチック等で作製され、その中心軸に沿って、前記シャフト21の下部の小径の下端域21aを摺動自在に挿通するための貫通孔8aが形成されている。
【0029】
また、図示した例においては、円環状のスイッチ作動部材8の外形は略円錐台形に形成され、上面から下面へ向けて次第に小径となるように構成されている。これにより、図2と図3に示す如く、操作レバー2を傾動させたとき、スイッチ作動部材8の外周面がスイッチ装置(マイクロスイッチ)11A、11Bの側面に適切に当接し、触子11a、11bの押圧動作が円滑に行われるようになっている。
【0030】
なお、スイッチ作動部材8の外周面がスイッチ装置11A、11Bの触子11a、11bを直接押圧するのではなく、適宜の伝達部材を介して間接的に押圧するように構成してもよい。
【0031】
また、前記スイッチ作動部材8の上面8bは、前記底面板31に開けたシャフト21の挿通孔31aより大径に形成され、スイッチ作動部材8が挿通孔31aに嵌まり込んだり引っ掛かったりすることがないようになっている。
【0032】
スイッチ作動部材8の下面8cには、前記貫通孔8aの下端開口を塞ぐような形で自動復帰手段Aを構成するマグネット9が取り付けられる。
【0033】
マグネット9の形態は、特に限定されるものではなく、図1乃至図3に示した例では1個のマグネットを用いているが、比較的薄い円盤状のマグネット片を軸方向に複数枚重ねて用いることも可能である。
【実施例2】
【0034】
図4はマグネットを用いた自動復帰手段の他の実施例2を示す。図面によれば、この実施例2に係る自動復帰手段Bは、マグネット9が複数枚のマグネット片91で構成されている。即ち、スイッチ作動部材8の下面8cには、複数のマグネット片91を重ねて取り付けられている。このように複数のマグネット片91を重ねて取り付ける場合には、例えば図4に示すように、鉄等の磁性体からなる底付き円筒状のマグネットホルダ92の内部に複数枚のマグネット片91を収容し、マグネットホルダ92の上端部をスイッチ作動部材8の下面の前記貫通孔8aの開口近くに固着するようにしてもよい。これにより、マグネットホルダ92を通じた磁気回路が形成され、マグネットホルダ92の上端部近傍に強力な磁場が形成され、前記操作レバー2のシャフト21の下端面21bにマグネットが強力に吸引、吸着される力が得られるものである。
【0035】
なお、図1乃至図3に示す如く、前記シャーシーフレーム3の底面板31の下面に、前記スイッチ作動部材8及びマグネット9を囲繞するマグネットカバー10を取り付け、操作レバー2の乱暴な操作等によって操作レバー2のシャフト21の下端域21aからスイッチ作動部材8が抜け落ちるのを防止したり、ゲーム機の製造、修理等の際にマグネット9の取付部分をガードし得るように構成することが好ましい。
【0036】
マグネットカバー10の形態は特に限定されないが、図2と図3に示す如く操作レバー2を傾動させたとき、スイッチ作動部材8がシャフト21の下端域の軸方向に沿って斜め下方へ移動することを許容し得るだけの内部空間を有することが必要である。
【0037】
次に、上記の如く構成された本発明に係るシフトレバー装置1の作用について説明する。
【0038】
操作レバー2に外力を加えない状態においては、図1に示すように、スイッチ作動部材8のマグネット9が操作レバー2のシャフト21の下端面21bに強く吸着した状態となる。即ち、この状態ではシャフト21の下端面21bとマグネット9の上面9aとの間の間隔Sは0(ゼロ)となっている。このときは、マグネット9の吸着力により、前記スイッチ作動部材8の上面8b全体が前記底面板31の下面に当接せしめられた状態となることにより、シャフト21は底面板31に対して直立した状態でセンター位置に保持される。
【0039】
次いで、操作レバー2を、図2に示す如く、前記センター位置から前方へ傾動させると、シャフト21が傾斜せしめられると共に、前記スイッチ作動部材8は後方へ向けて変位し、当該スイッチ作動部材8の外周面が一方のスイッチ装置11Bの触子11bを押圧して、スイッチ装置11Bを作動せしめ、例えばオン信号を生じさせる。
【0040】
また、このとき同時に、前記傾斜したスイッチ作動部材8は、図2と図3に示すように、その上面8bの周縁部の一箇所8dだけが前記シャーシーフレーム3の底面板31に当接した状態となり、その傾斜角度に応じて、スイッチ作動部材8は、前記マグネット9の吸引力に抗して、前記シャフト21の軸に沿って下方へ移動せしめられる。
【0041】
これによって、図示する如く、前記シャフト21の下端面21bと前記マグネット9の上面9aとの間に空間13が形成され、当該空間の間隔Sを縮めようとする自動復帰手段Aの前記マグネット9によるシャフト21の下端面21bに対する吸引力によって、操作レバー2をそのセンター位置へ復帰させようとする力が生じる。
【0042】
そのため、操作レバー2に対する外力を解除すると、操作レバー2は、図1に示したようなセンター位置へ復帰する。
【0043】
図示した例において、前記空間13の最大許容間隔Sは例えばS=2.97mmに設定される。この間隔Sはマグネット9の磁力、その他各部品の仕様に応じ、操作レバー2に対してマグネットが充分な復帰力を及ぼし得る範囲内に設定される。
【0044】
なお、図3に示したように、操作レバー2をセンター位置から後方へ傾動させた場合も同様であり、その場合は、操作レバー2を後方へ傾動させると、スイッチ作動部材8がもう一方のスイッチ装置11Aに接近しこれを作動させると共に、前記と同様に、前記シャフト21の下端面と前記マグネット9の上面との間に空間13が形成され、当該空間の間隔を縮めようとする自動復帰手段Aの前記マグネット9によるシャフト21の下端面21bに対する吸引力によって、操作レバー2をそのセンター位置へ復帰させようとする力が生じるものである。
【0045】
なお、スイッチ装置として、光学的センサーを用いた場合には、スイッチ作動部材8の傾斜によって光学的センサーの発光素子と受光素子間の光路が遮断されるように構成するものである。また、スイッチ装置として、ポテンションメーターを用いた場合には、操作レバー2の傾動をポテンションメーターで検出して、ON、OFF動作や、傾動速度、傾動速度を検知するものである。
【0046】
ここで、操作レバー2をセンター位置へ復帰させる付勢手段として、従来の如くスプリングを利用する場合に比べて、本発明の如くマグネットを利用する場合の方が、復帰時にカチッ、カチッというようなシャッキリとした明確で歯切れの良い操作感触が得られる理由について説明する。
【0047】
従来の如くスプリングを利用する場合には、図5及び図6を参照して前記した如く、スプリング109に蓄えられる応力は、操作レバー102がセンター位置にあるときが最も小さく、前方又は後方への傾動最終位置にあるときが最も大きい。そのため、操作レバー102に伝達されるセンター位置への復帰力(センター位置へ引き戻そうとするバネ力)は、操作レバー102が傾動最終位置にあるときが最も強く、操作レバー102がセンター位置に近づくにつれて次第に弱くなる。従って、操作レバー102を握った手に伝わる操作感触においても、操作レバーの復帰力は操作レバーがセンター位置に近づくにつれて次第に弱くなり、センター位置へ102復帰したことを示す明確で歯切れの良い操作感触は得られ難い。
【0048】
また、センター位置から前方向又は後方向への傾動開始時にも、操作レバー102に作用するスプリング力が次第に高まるだけであるので、明確な切換え操作感触は得られ難い。
【0049】
それに対して、本発明の如くシャフト21の自動復帰手段Aにマグネットを利用する場合には、図1乃至図3を参照して前記した如く、マグネット9がシャフト21の下端面21bに引き寄せられる吸引力は、操作レバー2がセンター位置に近づきマグネット9とシャフト21の下端面21bとの間の空間の間隔が短いときが最も大きく、操作レバー2が前方又は後方への傾動最終位置にあり、前記空間の間隔が長いときが最も小さい。そのため、操作レバー2に伝達されるセンター位置への復帰力(センター位置へ引き戻そうとする磁力)は、操作レバー2が傾動最終位置にあるときが最も弱く、操作レバー2がセンター位置に近づくにつれて次第に強くなり、最後にマグネット9がシャフト21の下端面21bに非常に強い力でカチンと吸着される。従って、操作レバー2を握った手に伝わる操作感触においても、操作レバー2の復帰力は操作レバー2がセンター位置に近づくにつれて次第に強くなり、センター位置へ復帰してマグネット9がシャフト21の下端面21bに吸着したとき突然ゼロとなる。そのとき、カチッという吸着時の僅かな振動も伝わるので、センター位置へ復帰したことを示すシャッキリとした明確で歯切れの良い操作感触が得られるものである。
【0050】
また、センター位置から前方向又は後方向への傾動開始時には、操作レバー2を傾動させると、それまでシャフト21の下端面21bに吸着していたマグネット9が引き剥がされて、その一瞬間だけ、操作レバー2が軽くなったような感触が手に伝わるので、このときも、スプリング使用の場合に比べて歯切れの良い明確な切換え操作の感触が得られるものである。
【0051】
尚、以上の説明では、操作レバー2が前後方向の一方向のみに傾動するシフトレバー装置1について説明したが、本発明は操作レバー2が360°のどちらの方向へも傾動する、所謂ジョイスティックレバーに適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように、本発明に係るシフトレバー装置は、操作レバーのシャフトの下端域に、シャフトの軸方向に摺動自在なよう円環状のスイッチ作動部材を装着し、当該スイッチ作動部材の下面にはその貫通孔の下端開口を塞ぐようマグネットを取り付け、このマグネットによる前記シャフトの下端面への吸引力を利用して、傾動せしめられた操作レバーを元のセンター位置へ自動復帰せしめるものであり、マグネットの吸着力の特性を生かすことにより、走行時の速度切換え時の操作レバーの操作感を歯切れ良く明確に感触可能なものとし、実車の操作感触に近いリアリティ感に富んだ操作感を生じさせることができることから、ドライブゲーム機用のシフトレバー装置としては最適なものである。
【符号の説明】
【0053】
A、B 自動復帰手段
1 シフトレバー装置
2 操作レバー
3 シャーシーフレーム
4 取付板
5 支軸
6A,6B ストッパー
7 シャフトカバー
8 スイッチ作動部材
8A 貫通孔
9 マグネット
10 マグネットカバー
11A,11B スイッチ装置
21 シャフト
22 握り部材
31 底面板
32 側壁板
91 マグネット片
92 マグネットホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーシーフレームと、このシャーシーフレームに所定の角度範囲内で前後方向に傾動可能に軸支された少なくともその先端側を磁性材料で構成して成る操作レバーと、前記シャーシーフレームの底部に当接し前記操作レバーの下端部側を挿通させた貫通孔を有し軸方向へスライド可能となるように取り付けられたスイッチ作動部材と、このスイッチ作動部材の周りに配置され前記スイッチ作動部材によりオン・オフ動作せしめられるスイッチ装置と、前記操作レバーを常に自立位置に自動復帰させる自動復帰手段と、を備えたシフトレバー装置において、
前記自動復帰手段を、前記貫通孔に前記操作レバーの先端側と対向させて配置させたマグネットで構成したことを特徴とする、シフトレバー装置。
【請求項2】
前記シャーシーフレームの底面板の下面に、前記スイッチ作動部材及びマグネットを囲繞するマグネットカバーを取り付けたことを特徴とする、請求項1に記載のシフトレバー装置。
【請求項3】
前記マグネットが、1個のマグネットからなることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシフトレバー装置。
【請求項4】
前記マグネットが、薄いマグネット片を軸方向に複数枚重ねてなることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシフトレバー装置。
【請求項5】
前記操作レバーのシャフトの前後方向への傾動角度が、センター位置から(9±5)°の範囲内であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシフトレバー装置。
【請求項6】
前記スイッチ装置としてマイクロスイッチを用いたことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシフトレバー装置。
【請求項7】
前記スイッチ装置として光学的センサーやポテンションメーターからなるスイッチを用いたことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシフトレバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−192127(P2011−192127A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58895(P2010−58895)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(390024936)三和電子株式会社 (4)
【Fターム(参考)】