シフトレバー装置
【課題】比較的安価な費用にて、シフトレバーのシフト位置を安定した状態で検出できると共に、コンパクト化を図ることができるシフトレバー装置を提供する。
【解決手段】シフトレバーのセレクト方向への回動操作により軸方向へ移動すると共に、シフトレバーのシフト方向への回動操作により回動する軸部材8を設けて、この軸部材8の外周面に磁石7を配置し、ハウジング側に装着したプリント基板9に、磁石7が対向するON位置にあることとOFF位置にあることを検出するON・OFFセンサ92,93と、磁石7の周方向の移動による磁束の変化を検出するリニアセンサ90,91とを設けた。
【解決手段】シフトレバーのセレクト方向への回動操作により軸方向へ移動すると共に、シフトレバーのシフト方向への回動操作により回動する軸部材8を設けて、この軸部材8の外周面に磁石7を配置し、ハウジング側に装着したプリント基板9に、磁石7が対向するON位置にあることとOFF位置にあることを検出するON・OFFセンサ92,93と、磁石7の周方向の移動による磁束の変化を検出するリニアセンサ90,91とを設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動可能に支持されるシフトレバーの回動操作によってシフト位置(ポジション)を切換えるシフトレバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来のシフトレバー装置としては、シフトレバーのシフト位置を検出する検出体を備え、この検出体から出力される電気信号に応じて変速機の切替制御を行なうもの、いわゆるバイ・ワイヤ方式のものがあり、その従来例として特許文献1および特許文献2に開示されたものがある。
【0003】
特許文献1に開示されたシフトレバー装置100は、図31に示すように、車体側ハウジング101にシフト方向(車体前後方向)およびセレクト方向(車体幅方向)へ回動可能に支持されるシフトレバー102と、このシフトレバー102の下部に係合し、下面に磁石103を有する切替操作検知体104と、ハウジング101のベース板105に設けられるMREセンサ(リニアセンサ)106およびホール素子センサ(ON・OFFセンサ)107とを備えている。
【0004】
この従来例では、シフトレバー102の回動操作時に、切替操作検知体104の上下動(中心軸線に沿った方向の移動)に対応した磁石103の磁界強さをホール素子センサ107により検出して、切替操作検知体104の中心軸線まわりの移動に対応した磁石103の磁界方向の変化をMREセンサ106により検出し、これら両者の検出結果からシフト方向およびセレクト方向におけるシフトレバー101の各傾動状態をそれぞれ判断することにより、シフトレバー102のシフト位置を判断することができる。
【0005】
特許文献2に開示されたシフトレバー装置110は、図32に示すように、車体に固定されるハウジング(図示せず)に設けられ、シフト方向およびセレクト方向へ回動可能に支持されるシフトレバー111と、このシフトレバー111の下部に支持部材112を介して連結され、ガイド体113に沿って車体前後方向および車体幅方向へスライド可能に設けられる多極マグネット板(磁石)114と、ガイド体113の下方に配設された基板115とを有する。この基板115の上面には4つのON・OFFセンサ116が設けられ、基板115の下面には1つのリニアセンサ117が設けられている。
【0006】
この従来例では、シフトレバー111の操作時に、このシフトレバー111の下部に支持部材112を介して連結される多極マグネット板114がガイド体113に沿って車体前後方向および車体幅方向へスライドするので、ガイド体113の下方に配設された基板115のON・OFFセンサ116およびリニアセンサ117が多極マグネット板の磁界の変化を検出し、これらの4つのON・OFFセンサ116から出力される各検出信号と、1つのリニアセンサ117から出力される各検出信号によってシフトレバー111の各シフト位置を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−203976号公報
【特許文献2】特開2006−349447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1に記載されているものでは、シフトレバー102の下部に係合する切替操作検知体104がシフトレバー102の回動操作により上下動し、切替操作検知体104の下面の磁石103とMREセンサ106およびホール素子センサ107との間隔が変動するので、この間隔が変動する状態で磁石103の回動方向の移動をMREセンサ106で検出する際に出力値が変動するため、各シフト位置におけるMREセンサ106の出力値のレンジを広く設定する必要があった。なお、上記のようにレンジ幅を広くした場合には、シフトレバー102のシフト位置が切り替わるタイミングのばらつきが大きくなるという問題があった。
【0009】
また、前記特許文献2に記載されているものでは、シフトレバー111の回動動作を支持部材112のスライド動作に変換すると共に、多極マグネット板114を前後左右へスライド可能に支持する機構を要し、スライドのための空間も必要になるため、装置の構造が複雑になり大型化するという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、比較的安価な費用で、シフトレバーのシフト方向およびセレクト方向へのシフト位置を安定した状態で検出できると共に、コンパクト化を図ることができるシフトレバー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、ハウジングにシフト軸線周りのシフト方向、および該シフト軸線に直交するセレクト軸線周りのセレクト方向へ回動可能に支持されるシフトレバーを備えたシフトレバー装置であって、棒状を有して前記シフト軸線または、前記セレクト軸線に対して平行、または同軸上に設けられ、前記シフト方向と前記セレクト方向のどちらか一方への前記シフトレバーの回動操作によって、軸方向へ移動すると共に、該シフト方向と該セレクト方向の他方への該シフトレバーの回動操作によって周方向へ回動する軸部材と、該軸部材の外周面に配置される磁石と、該磁石が軸方向に移動する範囲に対向配置され、磁気の強弱によって、該磁石の近接・離間を検出するON・OFFセンサと、該磁石が周方向に移動する範囲に対向配置され、該軸部材の周方向への回動によって変化する磁束を検出するリニアセンサとを備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1記載のシフトレバー装置であって、前記リニアセンサは、前記軸部材に面して前記車体側ハウジングに配置される基板上に、該軸部材の軸方向に沿って配置される一対のリニアセンサからなり、前記ON・OFFセンサは、該基板の表面と裏面のそれぞれに、該軸部材の周方向に沿って配置される一対のON・OFFセンサからなることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1記載のシフトレバー装置であって、前記軸部材、前記磁石、前記ON・OFFセンサ、前記リニアセンサ、および該軸部材に形成される連係部とが内部に配設されたセンサユニットを備え、該連係部を介して前記軸部材が前記シフトレバーに連係されることを特徴としている。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3記載のシフトレバー装置であって、前記センサユニットが前記シフト軸、または前記セレクト軸を兼ねることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明において、シフトレバーの回動操作により軸部材が軸方向および周方向へ移動する際、軸部材の外周面に配置される磁石の位置に応じてON・OFFセンサが近接・離間を検出すると共に、周方向の移動による磁束の変化をリニアセンサで検出して、これらON・OFFセンサおよびリニアセンサの両者の検出結果からシフトレバーのシフト方向およびセレクト方向への回動位置を判定する。これにより、シフトレバーのシフト方向およびセレクト方向の回動をそれぞれ軸部材の軸方向および周方向の移動に変換して、これら2方向の移動を軸部材の外周面に対向配置した非接触式センサで検出するので、構造を簡素なものにしつつセンサ個数を少なくでき、したがって比較的安価な費用で済むと共に、コンパクト化を図ることができる。また、検出特性の異なる2種類の非接触式センサを用いて上記軸部材の2方向への移動を別々に検出するので、検出精度が良く安定した状態でシフトレバーのシフト方向およびセレクト方向への回動位置を判定することができる。
【0016】
請求項2の発明において、軸部材の軸方向に沿って配置される一対のリニアセンサによって、軸部材の周方向へ移動に伴う磁石による磁束の変化を検出するとともに、軸部材の周方向に沿って配置される一対のON・OFFセンサによって、軸部材の軸方向への移動に伴う磁石の位置検知を行なう。これにより、シフトレバーのシフト方向、およびセレクト方向の回動をそれぞれ2つのセンサで検出することができるので、各センサに対する異常の検出を行なうことができ、センサの冗長性を確保できる。
【0017】
請求項3の発明において、軸部材、磁石、ON・OFFセンサおよびリニアセンサを有するセンサユニットをハウジングとは別に設け、軸部材を連係部を介してシフトレバーと連係する。これにより、ハウジングの側部に軸部材、磁石、ON・OFFセンサおよびリニアセンサを設けるスペースを必要としないので、ハウジングの側部がコンパクトなシフトレバー装置を得ることができる。
【0018】
請求項4の発明において、シフトレバーが回動可能に支持されるシフト軸、またはセレクト軸と一体でセンサユニットが設けられているため、シフト軸またはセレクト軸と軸部材と同軸上に設けることが可能となり、シフトレバー装置のコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバー装置の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバー装置の要部を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態を示し、プリント基板の平面図である。
【図4】本発明の第1実施形態を示し、シフトパターンの説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバーがNポジションにある状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバーがHポジションにある状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバーがDポジションにある状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバーがRポジションにある状態を示す斜視図である。
【図9】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバーがNポジションにある状態を示す側面図である。
【図10】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバーがNポジションにある状態を示す正面図である。
【図11】本発明の第1実施形態を示し、図10の矢印D−D線に沿う断面図である。
【図12】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバーがHポジションにある状態での図11に対応する断面図である。
【図13】本発明の第1実施形態を示し、図9の矢印A−A線に沿う断面図である。
【図14】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバーがDポジションにある状態での図13に対応する断面図である。
【図15】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバーがRポジションにある状態での図13に対応する断面図である。
【図16】本発明の第1実施形態を示し、リニアセンサの出力特性図である。
【図17】本発明の第1実施形態を示し、ON・OFF素子センサの出力特性図である。
【図18】本発明の第1実施形態を示し、(a)はリニアセンサの検出動作を説明する図で、(b)はON・OFFセンサの検出動作を説明する図である。
【図19】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバーの各ポジションにおけるMREセンサからの出力およびON・OFFセンサからの出力を示す図である。
【図20】本発明の第1実施形態を示し、周方向の初期位置での検出動作を説明する図である。
【図21】本発明の第1実施形態を示し、図20のF−F部の磁束密度分布を示す特性図である。
【図22】本発明の第1実施形態を示し、周方向の回動位置での検出動作を説明する図である。
【図23】本発明の第1実施形態を示し、図22のF−F部の磁束密度分布を示す特性図である。
【図24】本発明の第1実施形態を示し、軸方向の初期位置での検出動作を説明する図である。
【図25】本発明の第1実施形態を示し、図24のG−G部の磁束密度分布を示す特性図である。
【図26】本発明の第1実施形態を示し、図24のH−H部の磁束密度分布を示す特性図である。
【図27】本発明の第2実施形態を示し、シフトレバー装置の斜視図である。
【図28】本発明の第2実施形態を示し、図27のシフト軸線に沿う断面図である。
【図29】本発明の第2実施形態を示し、図27のセレクト軸線に沿う断面図である。
【図30】本発明の第2実施形態を示し、シフトレバーがDポジションにある状態での図29に対応する断面図である。
【図31】従来のシフトレバー装置を示す斜視図である。
【図32】従来の他のシフトレバー装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0021】
図1〜図26に示すように、第1実施形態のシフトレバー装置1は、車体(図示せず)に固定されるハウジング2と、このハウジング2の上部に取付けられるセンサユニット20を構成する円筒体3および収納部4と、円筒体3の外周面がシフト軸を兼ねており、円筒体3を中心としてシフト方向へ回動可能な連結体5と、この連結体5の外周面にシフト方向の軸線に直交して設けられたセレクト軸としての回転軸部52により、連結体5を中心としてセレクト方向へ回動可能なレバー基部6と、円筒体3内に周方向に回転可能で且つ軸方向に移動可能に設けられ、磁石7を支持する軸部材8とを備えている。
【0022】
ハウジング2は、箱状に形成されると共に、上方に向かって開口し、このハウジング2に、上述した円筒体3および収納部4、連結体5、レバー基部6および軸部材8などが収納されている。
【0023】
円筒体3は一端が開口しており、この開口端30から軸部材8を受け入れ可能であるともに、円筒体3の下側には、軸部材8の後述する腕部80が貫通するガイドスリット31が形成されている。円筒体3の開口端30側の外周面には、収納部4を一体に連結するブラケット部32が設けられ、円筒体3の他端側の外周面には、それぞれ外径方向に突出して軸方向へ延びる一対の突起33が設けられている。
【0024】
センサユニット20の収納部4には、長方形状のプリント基板9(基板)が収納され、このプリント基板9の外側が収納部4に締結されるカバー部材40により覆われている。
【0025】
連結体5は略筒状に形成され、連結体5の内周面は突起33とブラケット32の間の部分で円筒体3の外周面に回転可能に支持されている。連結体5の下側には、軸方向に延びて、一方の突起33を通過するとともに軸部材8の後述する腕部80が貫通するスリット50が設けられ、連結体5の内周上側には、軸方向に延びて、スリット50と同様に他方の突起33を通過するガイド溝51が設けられている。連結体5の外周面にはレバー基部6を回動可能に支持する一対の回動軸部52が設けられ、各回動軸部52の外周面の両側を切り欠くことにより、互いに平行な一対の端部53が形成されている。
【0026】
レバー基部6は、上部にシフトレバー60およびノブ部61が取付けられ、下方に延びる二股部62を有している。二股部62の上部内側には、連結体5の回動軸部52をそれぞれ受け入れる一対の円形凹部63と、二股部62の一端(図2の右側の端部)から円形凹部63まで回動軸部52を導き入れるガイド溝64とが形成されている。ガイド溝64の溝幅寸法は、回動軸部52の一対の端部53の距離より僅かに大きく、回転軸部52の外径よりも小さく設定されており、連結体5を図2の直立状態よりセレクト軸線周りに時計方向へ所定角度傾けた状態で、ガイド溝64に回動軸部52を挿入してガイド溝64の両溝壁に一対の端部53をそれぞれ摺接させることにより、ガイド溝64を介して回動軸部52を円形凹部63まで移動可能である。
【0027】
二股部62の下部には、二股部62の下部間に軸部材8の腕部80先端の球部81を受け入れた状態で連結する連結部65が設けられている。この連結部65は、球部81を挟み込むと共に、二股部62に係止される一対の弾性片66を有し、上記連結部65により、球部81を介して軸部材8およびレバー基部6が連結される。
【0028】
軸部材8は略円柱状、つまり棒状に形成され、軸部材8の一端側外周面に、プリント基板9と対向する状態で磁石7が収納されている。軸部材8から外径方向に腕部80が突出して先端に球部81が形成され、腕部80は円筒体3のガイドスリット31、および連結体5のスリット50を貫通している。軸部材8は、円筒体3内に開口端30から挿入され、弾性体82によって円筒体3の開口端30側へ弾性付勢されている。
【0029】
プリント基板9には、軸部材8の外径方向に位置し、検出特性の異なる2種類の非接触式検出センサ、例えばリニアセンサおよびON・OFFセンサが設けられている。このリニアセンサとして、一対のMREセンサ(磁気抵抗効果素子センサ)90,91がプリント基板9上に設けられ、この一対のMREセンサ90,91によって軸部材8に設けた磁石7の回転方向の移動による磁束の変化を検出する。ここで、このMREセンサは、N極とS極で出力が変化するタイプのセンサであって、同様の検出を行えるセンサとしては、リニア出力ホールセンサがあり、このリニア出力ホールセンサを用いても良い。他方のON・OFFセンサとして、一対のホール素子センサ92,93がプリント基板9の表面と裏面のそれぞれに配置され、この一対のホール素子センサ92,93が磁気の強弱によって、磁石7の近接・離間、つまりそれぞれ磁石7が対向するON位置にあることと、軸部材8の軸方向の移動により磁石7が前記ON位置から外れたOFF位置にあることを検出する。一対のホール素子センサ92,93は、円筒体3の開口端30近傍に配置されると共に、軸部材8の周方向に沿って配置されている。一対のMREセンサ90,91は、常に磁石7と対向するように円筒体3の開口端30より軸方向の中間部寄りに配置されると共に、軸部材8の軸方向に沿って並んで配置されている。
【0030】
プリント基板9は、図3に示す状態より上下反転した状態で円筒体3の収納部4に収納される。すなわち、図2に示すように、一対のMREセンサ90,91および一方のホール素子センサ92がプリント基板9の下面(磁石7と対向する面)側に配置され、他方のホール素子センサ93がプリント基板9の上面(磁石7から離れた面)側に配置されている。
【0031】
図4に示すようにシフトパターンは、横向きT字形状に形成されており、シフトレバー60は操作者が手を離すと自動的にH(ホーム)ポジションに戻り、この位置からセレクト方向へ操作すると、シフトレバー60はN(ニュートラル)ポジションに回動する。次いで、シフト方向の車体後側への操作によりシフトレバー60がD(ドライブ)ポジションに回動し、一方、シフト方向の車体前側への操作によりシフトレバー60がR(リバース)ポジションに回動する。また、シフトレバー60をHポジションからシフト方向の車体後側へ操作することによりY(−:シフトダウン)ポジションに回動し、一方、Hポジションからシフト方向の車体前側への操作によりシフトレバー60がX(+:シフトアップ)ポジションに回動するようにシフトパターンをH字形状としてもよい。
【0032】
上記シフトレバー60の操作時に、レバー基部6と連結される軸部材8の腕部80が円筒体3のガイドスリット31を貫通する状態で、シフトレバー60の動作に追従する。その際に、軸部材8の腕部80が、図4に示すシフトパターンに応じて所定の動きを行なうようにガイドスリット31により規制される。
【0033】
シフトレバー60がHポジションあるいはNポジションに位置し、軸部材8が図13に示すように周方向の初期位置(中立位置)にあるとき、磁石7により形成される磁束密度は、図20に示すように一対のMREセンサ90,91によって検出される。その結果、磁石7で形成される磁束密度が図21に示すように分布し、この周方向の初期位置では磁束検知点P1がちょうど0mTになる地点にある。
【0034】
次いで、シフトレバー60をシフト方向に操作してDポジションへ移動し、軸部材8が図14に示す位置に回動したとき、磁石7により形成される磁束密度は、図22に示すように一対のMREセンサ90,91によって検出される。その結果、磁石7で形成される磁束密度が図23に示すように分布し、磁石7の回動と共に、磁束検知点P1にかかる磁束が変化する。この磁束の変化に伴って、図16に示すようにMREセンサ90,91の出力が右に移動して大きくなり、Dポジションの位置にて高レベル(High)の信号が出力される。
【0035】
また、シフトレバー60がHポジションに位置し、軸部材8が図12に示す軸方向の初期位置にあるとき、磁石7により形成される磁束密度は、図24に示すように一対のホール素子センサ92,93によって検出される。その結果、一方のホール素子センサ92によって検出される磁石7の磁束密度が図25に示すように分布し、他方のホール素子センサ93によって検出される磁石7の磁束密度が図26に示すように分布する。一方のホール素子センサ92がプリント基板9の一面(磁石7に対向する面)側で磁束の検出を行なうのに対して、他方のホール素子センサ93がプリント基板9の他面(磁石7から離れた面)側で上下反転した状態で磁束の検出を行なうため、検知する磁束の方向も反転する。この磁束を検出することで、ホール素子センサ92,93は、図17に示すようにON信号を出力する。なお、図16は、軸部材8が初期位置(中立位置)から図18(a)に示すように、周方向に回転したときの回転量と、MREセンサ90,91の出力値の変化の関係を示すグラフである。また、図17は軸部材8が初期位置から図18(b)に示すように、軸方向に移動した時の移動量とホール素子センサ92,93の出力値の変化の関係を示すグラフである。
【0036】
上記構成では、当該シフトレバー装置1を組み立てる際、連結体5を図2に示す直立状態よりセレクト軸線周りに時計方向に傾けた状態で、一対の回動軸部52をレバー基部6の二股部62内のガイド溝64を通過させてそれぞれ円形凹部63に挿入する。これにより、連結体5は一対の回動軸部52を中心としてレバー基部6の二股部62に対してセレクト方向に回動可能となる。次いで、円筒体3の一対の突起33を連結体5のスリット50およびガイド溝51に係合させた状態で、円筒体3を連結体5内に挿入した後、連結体5を周方向に90度回動させることにより、連結体5は、一対の突起33とブラケット部32に挟まれて軸方向の移動が抑制される状態で、円筒体3の周囲で回動可能となる。なお、収納部4には、あらかじめプリント基板9を収納して外側にカバー部材40を装着しておく。
【0037】
次いで、円筒体3内に弾性体82を挿入した後、磁石7を装着した軸部材8を円筒体3内に挿入する。軸部材8の腕部80を円筒体3のガイドスリット31および連結体5のスリット50に挿通させて、腕部80先端の球部81を二股部62の下部間に受け入れた状態で、連結部65を装着して二股部62に対して球部81を揺動可能に連結する。次いで、上記のように組み立てた部品を上方に開口するハウジング2内に挿入して、円筒体3および収納部4をハウジング2の上部に固定し、レバー基部6の上部にシフトレバー60およびノブ部61を取付ける。
【0038】
このようにして当該シフトレバー装置1を組み立てた後、図1、図6、図12および図13に示すようにシフトレバー60がHポジションにあるとき、軸部材8は円筒体3の開口端30側に付勢されるので、軸部材8の一端に設けられる磁石7が、図18(b)の実線で示すようにホール素子センサ92,93と対向して磁束を検出することで、図17に示すようにホール素子センサ92,93よりON信号が出力される。このとき、軸部材8が図12に示す周方向の初期位置にあり、磁石7により形成される磁束密度は、図20に示すように一対のMREセンサ90,91によって検出され、磁石7で形成される磁束密度が図21に示すように分布し、磁束検知点P1がちょうど0mTになる地点にあるので、中間レベル(Middle)の検知信号が出力される。その結果、図19に示すように前記ON信号および中間レベル(Middle)の検知信号に応じて、シフトレバー60がHポジションにあると判定される。なお、図12に示す破線によりMREセンサ90,91の感磁面を示している。
【0039】
次いで、シフトレバー60をHポジションからセレクト方向へ操作し、図5、図9、図10および図11に示すようにNポジションに回動すると、レバー基部6はほぼ直立状態となり、球部81が二股部62により図11の右方向へ押圧され、腕部80を介して軸部材8が円筒体3の軸方向の奥側(図11の右方向)へ移動して図18(b)に点線で示すように磁石7がホール素子センサ92,93との対向する位置から外れるので、ホール素子センサ92,93により検出される磁束が無くなることで、磁石7がOFF位置に移動したものとしてOFF信号が出力される。このとき、図13、および図18(a)に示すように軸部材8が周方向の初期位置に保持されるので、一対のMREセンサ90,91によって中間レベル(Middle)の検知信号が出力される。その結果、前記OFF信号および中間レベル(Middle)の検知信号に応じて、シフトレバー60がNポジションにあると判定される。
【0040】
次いで、シフトレバー60をNポジションからシフト方向の車体後側へ操作することにより、図7、および図14に示すようにシフトレバー60がDポジションに回動すると、軸部材8の回動に伴い図18(a)に示すように磁石7が反時計方向に回動して図23に示すように磁束密度のピークが図21に対して左側へ移動し、P1点における磁束密度が変化するので、一対のMREセンサ90,91によって高レベル(High)の検知信号が出力される。このとき、磁石7がホール素子センサ92,93との対向位置から外れているので、ホール素子センサ92,93からはOFF信号が出力される。その結果、図19に示すように前記OFF信号および高レベル(High)の検知信号に応じて、シフトレバー60がDポジションにあると判定される。
【0041】
次いで、シフトレバー60をNポジションからシフト方向の車体前側へ操作することにより、図8および図15に示すようにシフトレバー60がRポジションに回動すると、軸部材8の回動に伴い磁石7がDポジションの場合と逆方向(図18(a)の時計方向)に回動して磁束密度のピークが図21に対して右側へ移動し、P1点における磁束密度が変化するので、一対のMREセンサ90,91によって低レベル(Low)の検知信号が出力される。このとき、磁石7がホール素子センサ92,93との対向位置から外れているので、ホール素子センサ92,93からはOFF信号が出力される。その結果、図19に示すように前記OFF信号および低レベル(Low)の検知信号に応じて、シフトレバー60がRポジションにあると判定される。
【0042】
また、シフトレバー60をHポジションからシフト方向の車体後側へ操作することにより、シフトレバー60がYポジションに回動するようにした場合には、Dポジションへ操作した場合と同様に、軸部材8の回動に伴い磁石7が回動してP1点における磁束密度が変化するので、一対のMREセンサ90,91によって高レベル(High)の検知信号が出力される。このとき、磁石7がホール素子センサ92,93との対向位置にあるので、ホール素子センサ92,93からはON信号が出力される。その結果、図19に示すように前記ON信号および高レベル(High)の検知信号に応じて、シフトレバー60がYポジションにあると判定される。
【0043】
一方、シフトレバー60をHポジションからシフト方向の車体前側へ操作することにより、シフトレバー60がXポジションに回動するようにした場合には、Rポジションへ操作した場合と同様に、軸部材8の回動に伴い磁石7がYポジションの場合と逆方向に回動してP1点における磁束密度が変化するので、一対のMREセンサ90,91によって低レベル(Low)の検知信号が出力される。このとき、磁石7がホール素子センサ92,93との対向位置にあるので、ホール素子センサ92,93からはON信号が出力される。その結果、図19に示すように前記ON信号および低レベル(Low)の検知信号に応じて、シフトレバー60がXポジションにあると判定される。
【0044】
以上、説明したように、本発明によれば、シフトレバー60のシフト方向およびセレクト方向の回動をそれぞれ軸部材8の軸方向および周方向の移動に変換して、この2方向への移動を軸部材の外周面に対向配置した非接触式センサ90〜93で検出するので、構造を簡素なものにしつつセンサ個数を少なくでき、したがって比較的安価な費用で済むと共に、非接触式センサ90〜93を備えたセンサユニットのコンパクト化を図ることができる。また、検出特性の異なる2種類の非接触式センサ90〜93を用いて軸部材8の2方向への移動を別々に検出するので、検出精度の良い安定した状態でシフトレバー60のシフト方向およびセレクト方向への回動位置を判定することができる。
【0045】
また、本発明によれば、軸部材8の周方向に沿って配置される一対のON・OFFセンサ92,93により、軸部材8の軸方向への移動に伴う磁石7の位置検知を行なうと共に、軸部材8の軸方向に沿って配置される一対のMREセンサ90,91により、軸部材8の周方向へ移動に伴う磁石7による磁束の変化を検出する。これにより、シフトレバー60のシフト方向、およびセレクト方向の回動をそれぞれ2つのセンサで検出するようにしたので、各センサ90,91,92,93に対する以上の検出を行なうことができ、センサの冗長性を確保できる。また、シフトレバー60が回動可能に支持される円筒体3と一体でセンサーユニット20が設けられており、円筒体3と同軸上に軸部材8を設けているため、シフトレバー装置のコンパクト化を図ることができる。
【0046】
なお、上記実施形態で、MREセンサ90,91によって出力される検知信号は、図20、および図24に示すように中間レベル(MIddle)、低レベル(Low)、および高レベル(High)である場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。また、一対のホールセンサ92,93によって出力される検知信号は、図21に示すようにON信号およびOFF信号である場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、低レベル信号および高レベル信号とすることもできる。
【0047】
図27〜図30に示すように、第2実施形態のシフトレバー装置1Aは、ハウジング2の下方に、別体のセンサユニット20のユニットケース21が設けられている。なお、この第2実施形態において前述した第1実施形態と同様のものには同一符号が付されている。
【0048】
センサユニット20のユニットケース21には、軸部材8、磁石7、およびプリント基板9が収納され、軸部材8は図28に示すように連係腕部(連係部)80を介してレバー基部6の下端部と連係されている。軸部材8はシフト軸としての円筒体3と平行に配置されてユニットケース21により軸方向に移動可能、且つ回転可能に支持され、シフトレバー60のセレクト方向への回動操作により、軸部材8は追従して軸部材8の軸方向へ移動すると共に、シフトレバー60のシフト方向への回動操作により、軸部材8は追従して軸部材8の周方向へ回動する。
【0049】
なお、プリント基板9は、詳細な図示を省略したが一対のMREセンサおよび一対のホール素子センサを有し、前述した第1実施形態と同様に、MREセンサにより磁石7の周方向の移動による磁束の変化を検出すると共に、ホール素子センサにより磁石7が対向するON位置にあることと、軸部材8の軸方向の移動により磁石7との対向位置から外れたOFF位置にあることを検出する。
【0050】
上記構成では、シフトレバー60がHポジションにあるとき、図28に示すように、軸部材8は軸方向の初期位置にあり、軸部材8の一端に設けられる磁石7がホール素子センサと対向して磁束が検出されてON信号が出力される。同時に、図29に示すように、軸部材8は周方向の初期位置(中立位置)にあり、磁石7により形成される磁束密度はMREセンサによって検出され、中間レベルの検知信号が出力される。その結果、前記ON信号および中間レベルの検知信号に応じて、シフトレバー60がHポジションにあると判定される。
【0051】
次いで、シフトレバー60をセレクト軸である回転軸部52周りにHポジションからセレクト方向(図28の反時計方向)へ操作し、Nポジションに回動すると、連係腕部80を介して軸部材8がユニットケース21の奥側(図28中の右側)へ移動して磁石7がホール素子センサとの対向位置から外れるので、ホール素子センサにより磁石7がOFF位置にあることを検出してOFF信号が出力される。このとき、軸部材8が周方向の初期位置に保持されるので、一対のMREセンサによって中間レベルの検知信号が出力される。その結果、前記ON信号および中間レベルの検知信号に応じて、シフトレバー60がNポジションにあると判定される。
【0052】
次いで、シフトレバー60をシフト軸である円筒体3周りにNポジションからシフト方向の車体前側へ操作することにより、図30に示すようにシフトレバー60がRポジションに回動すると、軸部材8の回動に伴い磁石7が回動して磁束密度のピークが移動するので、一対のMREセンサによって低レベルの検知信号が出力される。このとき、磁石7がOFF位置にあるので、ホール素子センサによりOFF信号が出力される。その結果、前記OFF信号および低レベルの検知信号に応じて、シフトレバー60がRポジションにあると判定される。
【0053】
以上、シフトレバー60がHポジション、Nポジション、およびRポジションにある状態に関して説明したが、この他のDポジション、XポジションおよびYポジションにある状態に関しても前述した第1実施形態と同様に、シフトレバー60のシフト方向およびセレクト方向の回動をそれぞれ軸部材8の軸方向および周方向の移動に変換して、これら2方向への移動を非接触式センサ90〜93で検出するようになっている。
【0054】
このような構成した本発明によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。そして、上記第2実施形態では、軸部材8、磁石7、ON・OFFセンサおよびリニアセンサを有する別体のセンサユニット20を、ハウジング2の下方に備えて、軸部材8を連係腕部80によりシフトレバー60と連係することによって、ハウジング2の側部に軸部材8、磁石7、ON・OFFセンサおよびリニアセンサを設けるスペースを必要としないので、ハウジング2の側部がコンパクトなシフトレバー装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0055】
1、1A シフトレバー装置
2 ハウジング
7 磁石
8 軸部材
9 プリント基板
20 センサユニット
21 ユニットケース
60 シフトレバー
80 連係腕部(連係部)
90,91 リニアセンサ(MREセンサ)
92,93 ON・OFFセンサ(ホール素子センサ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動可能に支持されるシフトレバーの回動操作によってシフト位置(ポジション)を切換えるシフトレバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来のシフトレバー装置としては、シフトレバーのシフト位置を検出する検出体を備え、この検出体から出力される電気信号に応じて変速機の切替制御を行なうもの、いわゆるバイ・ワイヤ方式のものがあり、その従来例として特許文献1および特許文献2に開示されたものがある。
【0003】
特許文献1に開示されたシフトレバー装置100は、図31に示すように、車体側ハウジング101にシフト方向(車体前後方向)およびセレクト方向(車体幅方向)へ回動可能に支持されるシフトレバー102と、このシフトレバー102の下部に係合し、下面に磁石103を有する切替操作検知体104と、ハウジング101のベース板105に設けられるMREセンサ(リニアセンサ)106およびホール素子センサ(ON・OFFセンサ)107とを備えている。
【0004】
この従来例では、シフトレバー102の回動操作時に、切替操作検知体104の上下動(中心軸線に沿った方向の移動)に対応した磁石103の磁界強さをホール素子センサ107により検出して、切替操作検知体104の中心軸線まわりの移動に対応した磁石103の磁界方向の変化をMREセンサ106により検出し、これら両者の検出結果からシフト方向およびセレクト方向におけるシフトレバー101の各傾動状態をそれぞれ判断することにより、シフトレバー102のシフト位置を判断することができる。
【0005】
特許文献2に開示されたシフトレバー装置110は、図32に示すように、車体に固定されるハウジング(図示せず)に設けられ、シフト方向およびセレクト方向へ回動可能に支持されるシフトレバー111と、このシフトレバー111の下部に支持部材112を介して連結され、ガイド体113に沿って車体前後方向および車体幅方向へスライド可能に設けられる多極マグネット板(磁石)114と、ガイド体113の下方に配設された基板115とを有する。この基板115の上面には4つのON・OFFセンサ116が設けられ、基板115の下面には1つのリニアセンサ117が設けられている。
【0006】
この従来例では、シフトレバー111の操作時に、このシフトレバー111の下部に支持部材112を介して連結される多極マグネット板114がガイド体113に沿って車体前後方向および車体幅方向へスライドするので、ガイド体113の下方に配設された基板115のON・OFFセンサ116およびリニアセンサ117が多極マグネット板の磁界の変化を検出し、これらの4つのON・OFFセンサ116から出力される各検出信号と、1つのリニアセンサ117から出力される各検出信号によってシフトレバー111の各シフト位置を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−203976号公報
【特許文献2】特開2006−349447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1に記載されているものでは、シフトレバー102の下部に係合する切替操作検知体104がシフトレバー102の回動操作により上下動し、切替操作検知体104の下面の磁石103とMREセンサ106およびホール素子センサ107との間隔が変動するので、この間隔が変動する状態で磁石103の回動方向の移動をMREセンサ106で検出する際に出力値が変動するため、各シフト位置におけるMREセンサ106の出力値のレンジを広く設定する必要があった。なお、上記のようにレンジ幅を広くした場合には、シフトレバー102のシフト位置が切り替わるタイミングのばらつきが大きくなるという問題があった。
【0009】
また、前記特許文献2に記載されているものでは、シフトレバー111の回動動作を支持部材112のスライド動作に変換すると共に、多極マグネット板114を前後左右へスライド可能に支持する機構を要し、スライドのための空間も必要になるため、装置の構造が複雑になり大型化するという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、比較的安価な費用で、シフトレバーのシフト方向およびセレクト方向へのシフト位置を安定した状態で検出できると共に、コンパクト化を図ることができるシフトレバー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、ハウジングにシフト軸線周りのシフト方向、および該シフト軸線に直交するセレクト軸線周りのセレクト方向へ回動可能に支持されるシフトレバーを備えたシフトレバー装置であって、棒状を有して前記シフト軸線または、前記セレクト軸線に対して平行、または同軸上に設けられ、前記シフト方向と前記セレクト方向のどちらか一方への前記シフトレバーの回動操作によって、軸方向へ移動すると共に、該シフト方向と該セレクト方向の他方への該シフトレバーの回動操作によって周方向へ回動する軸部材と、該軸部材の外周面に配置される磁石と、該磁石が軸方向に移動する範囲に対向配置され、磁気の強弱によって、該磁石の近接・離間を検出するON・OFFセンサと、該磁石が周方向に移動する範囲に対向配置され、該軸部材の周方向への回動によって変化する磁束を検出するリニアセンサとを備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1記載のシフトレバー装置であって、前記リニアセンサは、前記軸部材に面して前記車体側ハウジングに配置される基板上に、該軸部材の軸方向に沿って配置される一対のリニアセンサからなり、前記ON・OFFセンサは、該基板の表面と裏面のそれぞれに、該軸部材の周方向に沿って配置される一対のON・OFFセンサからなることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1記載のシフトレバー装置であって、前記軸部材、前記磁石、前記ON・OFFセンサ、前記リニアセンサ、および該軸部材に形成される連係部とが内部に配設されたセンサユニットを備え、該連係部を介して前記軸部材が前記シフトレバーに連係されることを特徴としている。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3記載のシフトレバー装置であって、前記センサユニットが前記シフト軸、または前記セレクト軸を兼ねることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明において、シフトレバーの回動操作により軸部材が軸方向および周方向へ移動する際、軸部材の外周面に配置される磁石の位置に応じてON・OFFセンサが近接・離間を検出すると共に、周方向の移動による磁束の変化をリニアセンサで検出して、これらON・OFFセンサおよびリニアセンサの両者の検出結果からシフトレバーのシフト方向およびセレクト方向への回動位置を判定する。これにより、シフトレバーのシフト方向およびセレクト方向の回動をそれぞれ軸部材の軸方向および周方向の移動に変換して、これら2方向の移動を軸部材の外周面に対向配置した非接触式センサで検出するので、構造を簡素なものにしつつセンサ個数を少なくでき、したがって比較的安価な費用で済むと共に、コンパクト化を図ることができる。また、検出特性の異なる2種類の非接触式センサを用いて上記軸部材の2方向への移動を別々に検出するので、検出精度が良く安定した状態でシフトレバーのシフト方向およびセレクト方向への回動位置を判定することができる。
【0016】
請求項2の発明において、軸部材の軸方向に沿って配置される一対のリニアセンサによって、軸部材の周方向へ移動に伴う磁石による磁束の変化を検出するとともに、軸部材の周方向に沿って配置される一対のON・OFFセンサによって、軸部材の軸方向への移動に伴う磁石の位置検知を行なう。これにより、シフトレバーのシフト方向、およびセレクト方向の回動をそれぞれ2つのセンサで検出することができるので、各センサに対する異常の検出を行なうことができ、センサの冗長性を確保できる。
【0017】
請求項3の発明において、軸部材、磁石、ON・OFFセンサおよびリニアセンサを有するセンサユニットをハウジングとは別に設け、軸部材を連係部を介してシフトレバーと連係する。これにより、ハウジングの側部に軸部材、磁石、ON・OFFセンサおよびリニアセンサを設けるスペースを必要としないので、ハウジングの側部がコンパクトなシフトレバー装置を得ることができる。
【0018】
請求項4の発明において、シフトレバーが回動可能に支持されるシフト軸、またはセレクト軸と一体でセンサユニットが設けられているため、シフト軸またはセレクト軸と軸部材と同軸上に設けることが可能となり、シフトレバー装置のコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバー装置の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバー装置の要部を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態を示し、プリント基板の平面図である。
【図4】本発明の第1実施形態を示し、シフトパターンの説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバーがNポジションにある状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバーがHポジションにある状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバーがDポジションにある状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバーがRポジションにある状態を示す斜視図である。
【図9】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバーがNポジションにある状態を示す側面図である。
【図10】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバーがNポジションにある状態を示す正面図である。
【図11】本発明の第1実施形態を示し、図10の矢印D−D線に沿う断面図である。
【図12】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバーがHポジションにある状態での図11に対応する断面図である。
【図13】本発明の第1実施形態を示し、図9の矢印A−A線に沿う断面図である。
【図14】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバーがDポジションにある状態での図13に対応する断面図である。
【図15】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバーがRポジションにある状態での図13に対応する断面図である。
【図16】本発明の第1実施形態を示し、リニアセンサの出力特性図である。
【図17】本発明の第1実施形態を示し、ON・OFF素子センサの出力特性図である。
【図18】本発明の第1実施形態を示し、(a)はリニアセンサの検出動作を説明する図で、(b)はON・OFFセンサの検出動作を説明する図である。
【図19】本発明の第1実施形態を示し、シフトレバーの各ポジションにおけるMREセンサからの出力およびON・OFFセンサからの出力を示す図である。
【図20】本発明の第1実施形態を示し、周方向の初期位置での検出動作を説明する図である。
【図21】本発明の第1実施形態を示し、図20のF−F部の磁束密度分布を示す特性図である。
【図22】本発明の第1実施形態を示し、周方向の回動位置での検出動作を説明する図である。
【図23】本発明の第1実施形態を示し、図22のF−F部の磁束密度分布を示す特性図である。
【図24】本発明の第1実施形態を示し、軸方向の初期位置での検出動作を説明する図である。
【図25】本発明の第1実施形態を示し、図24のG−G部の磁束密度分布を示す特性図である。
【図26】本発明の第1実施形態を示し、図24のH−H部の磁束密度分布を示す特性図である。
【図27】本発明の第2実施形態を示し、シフトレバー装置の斜視図である。
【図28】本発明の第2実施形態を示し、図27のシフト軸線に沿う断面図である。
【図29】本発明の第2実施形態を示し、図27のセレクト軸線に沿う断面図である。
【図30】本発明の第2実施形態を示し、シフトレバーがDポジションにある状態での図29に対応する断面図である。
【図31】従来のシフトレバー装置を示す斜視図である。
【図32】従来の他のシフトレバー装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0021】
図1〜図26に示すように、第1実施形態のシフトレバー装置1は、車体(図示せず)に固定されるハウジング2と、このハウジング2の上部に取付けられるセンサユニット20を構成する円筒体3および収納部4と、円筒体3の外周面がシフト軸を兼ねており、円筒体3を中心としてシフト方向へ回動可能な連結体5と、この連結体5の外周面にシフト方向の軸線に直交して設けられたセレクト軸としての回転軸部52により、連結体5を中心としてセレクト方向へ回動可能なレバー基部6と、円筒体3内に周方向に回転可能で且つ軸方向に移動可能に設けられ、磁石7を支持する軸部材8とを備えている。
【0022】
ハウジング2は、箱状に形成されると共に、上方に向かって開口し、このハウジング2に、上述した円筒体3および収納部4、連結体5、レバー基部6および軸部材8などが収納されている。
【0023】
円筒体3は一端が開口しており、この開口端30から軸部材8を受け入れ可能であるともに、円筒体3の下側には、軸部材8の後述する腕部80が貫通するガイドスリット31が形成されている。円筒体3の開口端30側の外周面には、収納部4を一体に連結するブラケット部32が設けられ、円筒体3の他端側の外周面には、それぞれ外径方向に突出して軸方向へ延びる一対の突起33が設けられている。
【0024】
センサユニット20の収納部4には、長方形状のプリント基板9(基板)が収納され、このプリント基板9の外側が収納部4に締結されるカバー部材40により覆われている。
【0025】
連結体5は略筒状に形成され、連結体5の内周面は突起33とブラケット32の間の部分で円筒体3の外周面に回転可能に支持されている。連結体5の下側には、軸方向に延びて、一方の突起33を通過するとともに軸部材8の後述する腕部80が貫通するスリット50が設けられ、連結体5の内周上側には、軸方向に延びて、スリット50と同様に他方の突起33を通過するガイド溝51が設けられている。連結体5の外周面にはレバー基部6を回動可能に支持する一対の回動軸部52が設けられ、各回動軸部52の外周面の両側を切り欠くことにより、互いに平行な一対の端部53が形成されている。
【0026】
レバー基部6は、上部にシフトレバー60およびノブ部61が取付けられ、下方に延びる二股部62を有している。二股部62の上部内側には、連結体5の回動軸部52をそれぞれ受け入れる一対の円形凹部63と、二股部62の一端(図2の右側の端部)から円形凹部63まで回動軸部52を導き入れるガイド溝64とが形成されている。ガイド溝64の溝幅寸法は、回動軸部52の一対の端部53の距離より僅かに大きく、回転軸部52の外径よりも小さく設定されており、連結体5を図2の直立状態よりセレクト軸線周りに時計方向へ所定角度傾けた状態で、ガイド溝64に回動軸部52を挿入してガイド溝64の両溝壁に一対の端部53をそれぞれ摺接させることにより、ガイド溝64を介して回動軸部52を円形凹部63まで移動可能である。
【0027】
二股部62の下部には、二股部62の下部間に軸部材8の腕部80先端の球部81を受け入れた状態で連結する連結部65が設けられている。この連結部65は、球部81を挟み込むと共に、二股部62に係止される一対の弾性片66を有し、上記連結部65により、球部81を介して軸部材8およびレバー基部6が連結される。
【0028】
軸部材8は略円柱状、つまり棒状に形成され、軸部材8の一端側外周面に、プリント基板9と対向する状態で磁石7が収納されている。軸部材8から外径方向に腕部80が突出して先端に球部81が形成され、腕部80は円筒体3のガイドスリット31、および連結体5のスリット50を貫通している。軸部材8は、円筒体3内に開口端30から挿入され、弾性体82によって円筒体3の開口端30側へ弾性付勢されている。
【0029】
プリント基板9には、軸部材8の外径方向に位置し、検出特性の異なる2種類の非接触式検出センサ、例えばリニアセンサおよびON・OFFセンサが設けられている。このリニアセンサとして、一対のMREセンサ(磁気抵抗効果素子センサ)90,91がプリント基板9上に設けられ、この一対のMREセンサ90,91によって軸部材8に設けた磁石7の回転方向の移動による磁束の変化を検出する。ここで、このMREセンサは、N極とS極で出力が変化するタイプのセンサであって、同様の検出を行えるセンサとしては、リニア出力ホールセンサがあり、このリニア出力ホールセンサを用いても良い。他方のON・OFFセンサとして、一対のホール素子センサ92,93がプリント基板9の表面と裏面のそれぞれに配置され、この一対のホール素子センサ92,93が磁気の強弱によって、磁石7の近接・離間、つまりそれぞれ磁石7が対向するON位置にあることと、軸部材8の軸方向の移動により磁石7が前記ON位置から外れたOFF位置にあることを検出する。一対のホール素子センサ92,93は、円筒体3の開口端30近傍に配置されると共に、軸部材8の周方向に沿って配置されている。一対のMREセンサ90,91は、常に磁石7と対向するように円筒体3の開口端30より軸方向の中間部寄りに配置されると共に、軸部材8の軸方向に沿って並んで配置されている。
【0030】
プリント基板9は、図3に示す状態より上下反転した状態で円筒体3の収納部4に収納される。すなわち、図2に示すように、一対のMREセンサ90,91および一方のホール素子センサ92がプリント基板9の下面(磁石7と対向する面)側に配置され、他方のホール素子センサ93がプリント基板9の上面(磁石7から離れた面)側に配置されている。
【0031】
図4に示すようにシフトパターンは、横向きT字形状に形成されており、シフトレバー60は操作者が手を離すと自動的にH(ホーム)ポジションに戻り、この位置からセレクト方向へ操作すると、シフトレバー60はN(ニュートラル)ポジションに回動する。次いで、シフト方向の車体後側への操作によりシフトレバー60がD(ドライブ)ポジションに回動し、一方、シフト方向の車体前側への操作によりシフトレバー60がR(リバース)ポジションに回動する。また、シフトレバー60をHポジションからシフト方向の車体後側へ操作することによりY(−:シフトダウン)ポジションに回動し、一方、Hポジションからシフト方向の車体前側への操作によりシフトレバー60がX(+:シフトアップ)ポジションに回動するようにシフトパターンをH字形状としてもよい。
【0032】
上記シフトレバー60の操作時に、レバー基部6と連結される軸部材8の腕部80が円筒体3のガイドスリット31を貫通する状態で、シフトレバー60の動作に追従する。その際に、軸部材8の腕部80が、図4に示すシフトパターンに応じて所定の動きを行なうようにガイドスリット31により規制される。
【0033】
シフトレバー60がHポジションあるいはNポジションに位置し、軸部材8が図13に示すように周方向の初期位置(中立位置)にあるとき、磁石7により形成される磁束密度は、図20に示すように一対のMREセンサ90,91によって検出される。その結果、磁石7で形成される磁束密度が図21に示すように分布し、この周方向の初期位置では磁束検知点P1がちょうど0mTになる地点にある。
【0034】
次いで、シフトレバー60をシフト方向に操作してDポジションへ移動し、軸部材8が図14に示す位置に回動したとき、磁石7により形成される磁束密度は、図22に示すように一対のMREセンサ90,91によって検出される。その結果、磁石7で形成される磁束密度が図23に示すように分布し、磁石7の回動と共に、磁束検知点P1にかかる磁束が変化する。この磁束の変化に伴って、図16に示すようにMREセンサ90,91の出力が右に移動して大きくなり、Dポジションの位置にて高レベル(High)の信号が出力される。
【0035】
また、シフトレバー60がHポジションに位置し、軸部材8が図12に示す軸方向の初期位置にあるとき、磁石7により形成される磁束密度は、図24に示すように一対のホール素子センサ92,93によって検出される。その結果、一方のホール素子センサ92によって検出される磁石7の磁束密度が図25に示すように分布し、他方のホール素子センサ93によって検出される磁石7の磁束密度が図26に示すように分布する。一方のホール素子センサ92がプリント基板9の一面(磁石7に対向する面)側で磁束の検出を行なうのに対して、他方のホール素子センサ93がプリント基板9の他面(磁石7から離れた面)側で上下反転した状態で磁束の検出を行なうため、検知する磁束の方向も反転する。この磁束を検出することで、ホール素子センサ92,93は、図17に示すようにON信号を出力する。なお、図16は、軸部材8が初期位置(中立位置)から図18(a)に示すように、周方向に回転したときの回転量と、MREセンサ90,91の出力値の変化の関係を示すグラフである。また、図17は軸部材8が初期位置から図18(b)に示すように、軸方向に移動した時の移動量とホール素子センサ92,93の出力値の変化の関係を示すグラフである。
【0036】
上記構成では、当該シフトレバー装置1を組み立てる際、連結体5を図2に示す直立状態よりセレクト軸線周りに時計方向に傾けた状態で、一対の回動軸部52をレバー基部6の二股部62内のガイド溝64を通過させてそれぞれ円形凹部63に挿入する。これにより、連結体5は一対の回動軸部52を中心としてレバー基部6の二股部62に対してセレクト方向に回動可能となる。次いで、円筒体3の一対の突起33を連結体5のスリット50およびガイド溝51に係合させた状態で、円筒体3を連結体5内に挿入した後、連結体5を周方向に90度回動させることにより、連結体5は、一対の突起33とブラケット部32に挟まれて軸方向の移動が抑制される状態で、円筒体3の周囲で回動可能となる。なお、収納部4には、あらかじめプリント基板9を収納して外側にカバー部材40を装着しておく。
【0037】
次いで、円筒体3内に弾性体82を挿入した後、磁石7を装着した軸部材8を円筒体3内に挿入する。軸部材8の腕部80を円筒体3のガイドスリット31および連結体5のスリット50に挿通させて、腕部80先端の球部81を二股部62の下部間に受け入れた状態で、連結部65を装着して二股部62に対して球部81を揺動可能に連結する。次いで、上記のように組み立てた部品を上方に開口するハウジング2内に挿入して、円筒体3および収納部4をハウジング2の上部に固定し、レバー基部6の上部にシフトレバー60およびノブ部61を取付ける。
【0038】
このようにして当該シフトレバー装置1を組み立てた後、図1、図6、図12および図13に示すようにシフトレバー60がHポジションにあるとき、軸部材8は円筒体3の開口端30側に付勢されるので、軸部材8の一端に設けられる磁石7が、図18(b)の実線で示すようにホール素子センサ92,93と対向して磁束を検出することで、図17に示すようにホール素子センサ92,93よりON信号が出力される。このとき、軸部材8が図12に示す周方向の初期位置にあり、磁石7により形成される磁束密度は、図20に示すように一対のMREセンサ90,91によって検出され、磁石7で形成される磁束密度が図21に示すように分布し、磁束検知点P1がちょうど0mTになる地点にあるので、中間レベル(Middle)の検知信号が出力される。その結果、図19に示すように前記ON信号および中間レベル(Middle)の検知信号に応じて、シフトレバー60がHポジションにあると判定される。なお、図12に示す破線によりMREセンサ90,91の感磁面を示している。
【0039】
次いで、シフトレバー60をHポジションからセレクト方向へ操作し、図5、図9、図10および図11に示すようにNポジションに回動すると、レバー基部6はほぼ直立状態となり、球部81が二股部62により図11の右方向へ押圧され、腕部80を介して軸部材8が円筒体3の軸方向の奥側(図11の右方向)へ移動して図18(b)に点線で示すように磁石7がホール素子センサ92,93との対向する位置から外れるので、ホール素子センサ92,93により検出される磁束が無くなることで、磁石7がOFF位置に移動したものとしてOFF信号が出力される。このとき、図13、および図18(a)に示すように軸部材8が周方向の初期位置に保持されるので、一対のMREセンサ90,91によって中間レベル(Middle)の検知信号が出力される。その結果、前記OFF信号および中間レベル(Middle)の検知信号に応じて、シフトレバー60がNポジションにあると判定される。
【0040】
次いで、シフトレバー60をNポジションからシフト方向の車体後側へ操作することにより、図7、および図14に示すようにシフトレバー60がDポジションに回動すると、軸部材8の回動に伴い図18(a)に示すように磁石7が反時計方向に回動して図23に示すように磁束密度のピークが図21に対して左側へ移動し、P1点における磁束密度が変化するので、一対のMREセンサ90,91によって高レベル(High)の検知信号が出力される。このとき、磁石7がホール素子センサ92,93との対向位置から外れているので、ホール素子センサ92,93からはOFF信号が出力される。その結果、図19に示すように前記OFF信号および高レベル(High)の検知信号に応じて、シフトレバー60がDポジションにあると判定される。
【0041】
次いで、シフトレバー60をNポジションからシフト方向の車体前側へ操作することにより、図8および図15に示すようにシフトレバー60がRポジションに回動すると、軸部材8の回動に伴い磁石7がDポジションの場合と逆方向(図18(a)の時計方向)に回動して磁束密度のピークが図21に対して右側へ移動し、P1点における磁束密度が変化するので、一対のMREセンサ90,91によって低レベル(Low)の検知信号が出力される。このとき、磁石7がホール素子センサ92,93との対向位置から外れているので、ホール素子センサ92,93からはOFF信号が出力される。その結果、図19に示すように前記OFF信号および低レベル(Low)の検知信号に応じて、シフトレバー60がRポジションにあると判定される。
【0042】
また、シフトレバー60をHポジションからシフト方向の車体後側へ操作することにより、シフトレバー60がYポジションに回動するようにした場合には、Dポジションへ操作した場合と同様に、軸部材8の回動に伴い磁石7が回動してP1点における磁束密度が変化するので、一対のMREセンサ90,91によって高レベル(High)の検知信号が出力される。このとき、磁石7がホール素子センサ92,93との対向位置にあるので、ホール素子センサ92,93からはON信号が出力される。その結果、図19に示すように前記ON信号および高レベル(High)の検知信号に応じて、シフトレバー60がYポジションにあると判定される。
【0043】
一方、シフトレバー60をHポジションからシフト方向の車体前側へ操作することにより、シフトレバー60がXポジションに回動するようにした場合には、Rポジションへ操作した場合と同様に、軸部材8の回動に伴い磁石7がYポジションの場合と逆方向に回動してP1点における磁束密度が変化するので、一対のMREセンサ90,91によって低レベル(Low)の検知信号が出力される。このとき、磁石7がホール素子センサ92,93との対向位置にあるので、ホール素子センサ92,93からはON信号が出力される。その結果、図19に示すように前記ON信号および低レベル(Low)の検知信号に応じて、シフトレバー60がXポジションにあると判定される。
【0044】
以上、説明したように、本発明によれば、シフトレバー60のシフト方向およびセレクト方向の回動をそれぞれ軸部材8の軸方向および周方向の移動に変換して、この2方向への移動を軸部材の外周面に対向配置した非接触式センサ90〜93で検出するので、構造を簡素なものにしつつセンサ個数を少なくでき、したがって比較的安価な費用で済むと共に、非接触式センサ90〜93を備えたセンサユニットのコンパクト化を図ることができる。また、検出特性の異なる2種類の非接触式センサ90〜93を用いて軸部材8の2方向への移動を別々に検出するので、検出精度の良い安定した状態でシフトレバー60のシフト方向およびセレクト方向への回動位置を判定することができる。
【0045】
また、本発明によれば、軸部材8の周方向に沿って配置される一対のON・OFFセンサ92,93により、軸部材8の軸方向への移動に伴う磁石7の位置検知を行なうと共に、軸部材8の軸方向に沿って配置される一対のMREセンサ90,91により、軸部材8の周方向へ移動に伴う磁石7による磁束の変化を検出する。これにより、シフトレバー60のシフト方向、およびセレクト方向の回動をそれぞれ2つのセンサで検出するようにしたので、各センサ90,91,92,93に対する以上の検出を行なうことができ、センサの冗長性を確保できる。また、シフトレバー60が回動可能に支持される円筒体3と一体でセンサーユニット20が設けられており、円筒体3と同軸上に軸部材8を設けているため、シフトレバー装置のコンパクト化を図ることができる。
【0046】
なお、上記実施形態で、MREセンサ90,91によって出力される検知信号は、図20、および図24に示すように中間レベル(MIddle)、低レベル(Low)、および高レベル(High)である場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。また、一対のホールセンサ92,93によって出力される検知信号は、図21に示すようにON信号およびOFF信号である場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、低レベル信号および高レベル信号とすることもできる。
【0047】
図27〜図30に示すように、第2実施形態のシフトレバー装置1Aは、ハウジング2の下方に、別体のセンサユニット20のユニットケース21が設けられている。なお、この第2実施形態において前述した第1実施形態と同様のものには同一符号が付されている。
【0048】
センサユニット20のユニットケース21には、軸部材8、磁石7、およびプリント基板9が収納され、軸部材8は図28に示すように連係腕部(連係部)80を介してレバー基部6の下端部と連係されている。軸部材8はシフト軸としての円筒体3と平行に配置されてユニットケース21により軸方向に移動可能、且つ回転可能に支持され、シフトレバー60のセレクト方向への回動操作により、軸部材8は追従して軸部材8の軸方向へ移動すると共に、シフトレバー60のシフト方向への回動操作により、軸部材8は追従して軸部材8の周方向へ回動する。
【0049】
なお、プリント基板9は、詳細な図示を省略したが一対のMREセンサおよび一対のホール素子センサを有し、前述した第1実施形態と同様に、MREセンサにより磁石7の周方向の移動による磁束の変化を検出すると共に、ホール素子センサにより磁石7が対向するON位置にあることと、軸部材8の軸方向の移動により磁石7との対向位置から外れたOFF位置にあることを検出する。
【0050】
上記構成では、シフトレバー60がHポジションにあるとき、図28に示すように、軸部材8は軸方向の初期位置にあり、軸部材8の一端に設けられる磁石7がホール素子センサと対向して磁束が検出されてON信号が出力される。同時に、図29に示すように、軸部材8は周方向の初期位置(中立位置)にあり、磁石7により形成される磁束密度はMREセンサによって検出され、中間レベルの検知信号が出力される。その結果、前記ON信号および中間レベルの検知信号に応じて、シフトレバー60がHポジションにあると判定される。
【0051】
次いで、シフトレバー60をセレクト軸である回転軸部52周りにHポジションからセレクト方向(図28の反時計方向)へ操作し、Nポジションに回動すると、連係腕部80を介して軸部材8がユニットケース21の奥側(図28中の右側)へ移動して磁石7がホール素子センサとの対向位置から外れるので、ホール素子センサにより磁石7がOFF位置にあることを検出してOFF信号が出力される。このとき、軸部材8が周方向の初期位置に保持されるので、一対のMREセンサによって中間レベルの検知信号が出力される。その結果、前記ON信号および中間レベルの検知信号に応じて、シフトレバー60がNポジションにあると判定される。
【0052】
次いで、シフトレバー60をシフト軸である円筒体3周りにNポジションからシフト方向の車体前側へ操作することにより、図30に示すようにシフトレバー60がRポジションに回動すると、軸部材8の回動に伴い磁石7が回動して磁束密度のピークが移動するので、一対のMREセンサによって低レベルの検知信号が出力される。このとき、磁石7がOFF位置にあるので、ホール素子センサによりOFF信号が出力される。その結果、前記OFF信号および低レベルの検知信号に応じて、シフトレバー60がRポジションにあると判定される。
【0053】
以上、シフトレバー60がHポジション、Nポジション、およびRポジションにある状態に関して説明したが、この他のDポジション、XポジションおよびYポジションにある状態に関しても前述した第1実施形態と同様に、シフトレバー60のシフト方向およびセレクト方向の回動をそれぞれ軸部材8の軸方向および周方向の移動に変換して、これら2方向への移動を非接触式センサ90〜93で検出するようになっている。
【0054】
このような構成した本発明によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。そして、上記第2実施形態では、軸部材8、磁石7、ON・OFFセンサおよびリニアセンサを有する別体のセンサユニット20を、ハウジング2の下方に備えて、軸部材8を連係腕部80によりシフトレバー60と連係することによって、ハウジング2の側部に軸部材8、磁石7、ON・OFFセンサおよびリニアセンサを設けるスペースを必要としないので、ハウジング2の側部がコンパクトなシフトレバー装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0055】
1、1A シフトレバー装置
2 ハウジング
7 磁石
8 軸部材
9 プリント基板
20 センサユニット
21 ユニットケース
60 シフトレバー
80 連係腕部(連係部)
90,91 リニアセンサ(MREセンサ)
92,93 ON・OFFセンサ(ホール素子センサ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングにシフト軸線周りのシフト方向、および該シフト軸線に直交するセレクト軸線周りのセレクト方向へ回動可能に支持されるシフトレバーを備えたシフトレバー装置であって、
棒状を有して前記シフト軸線または、前記セレクト軸線に対して平行、または同軸上に設けられ、前記シフト方向と前記セレクト方向のどちらか一方への前記シフトレバーの回動操作によって、軸方向へ移動すると共に、該シフト方向と該セレクト方向の他方への該シフトレバーの回動操作によって周方向へ回動する軸部材と、
該軸部材の外周面に配置される磁石と、
該磁石が軸方向に移動する範囲に対向配置され、磁気の強弱によって、該磁石の近接・離間を検出するON・OFFセンサと、
該磁石が周方向に移動する範囲に対向配置され、該軸部材の周方向への回動によって変化する磁束を検出するリニアセンサとを備えたことを特徴とするシフトレバー装置。
【請求項2】
請求項1記載のシフトレバー装置であって、
前記リニアセンサは、
前記軸部材に面して前記車体側ハウジングに配置される基板上に、該軸部材の軸方向に沿って配置される一対のリニアセンサからなり、
前記ON・OFFセンサは、
該基板の表面と裏面のそれぞれに、該軸部材の周方向に沿って配置される一対のON・OFFセンサからなることを特徴とするシフトレバー装置。
【請求項3】
請求項1記載のシフトレバー装置であって、
前記軸部材、前記磁石、前記ON・OFFセンサ、前記リニアセンサ、および該軸部材に形成される連係部とが内部に配設されたセンサユニットを備え、
該連係部を介して前記軸部材が前記シフトレバーに連係されることを特徴とするシフトレバー装置。
【請求項4】
請求項3記載のシフトレバー装置であって、
前記センサユニットが前記シフト軸、または前記セレクト軸を兼ねることを特徴とするシフトレバー装置。
【請求項1】
ハウジングにシフト軸線周りのシフト方向、および該シフト軸線に直交するセレクト軸線周りのセレクト方向へ回動可能に支持されるシフトレバーを備えたシフトレバー装置であって、
棒状を有して前記シフト軸線または、前記セレクト軸線に対して平行、または同軸上に設けられ、前記シフト方向と前記セレクト方向のどちらか一方への前記シフトレバーの回動操作によって、軸方向へ移動すると共に、該シフト方向と該セレクト方向の他方への該シフトレバーの回動操作によって周方向へ回動する軸部材と、
該軸部材の外周面に配置される磁石と、
該磁石が軸方向に移動する範囲に対向配置され、磁気の強弱によって、該磁石の近接・離間を検出するON・OFFセンサと、
該磁石が周方向に移動する範囲に対向配置され、該軸部材の周方向への回動によって変化する磁束を検出するリニアセンサとを備えたことを特徴とするシフトレバー装置。
【請求項2】
請求項1記載のシフトレバー装置であって、
前記リニアセンサは、
前記軸部材に面して前記車体側ハウジングに配置される基板上に、該軸部材の軸方向に沿って配置される一対のリニアセンサからなり、
前記ON・OFFセンサは、
該基板の表面と裏面のそれぞれに、該軸部材の周方向に沿って配置される一対のON・OFFセンサからなることを特徴とするシフトレバー装置。
【請求項3】
請求項1記載のシフトレバー装置であって、
前記軸部材、前記磁石、前記ON・OFFセンサ、前記リニアセンサ、および該軸部材に形成される連係部とが内部に配設されたセンサユニットを備え、
該連係部を介して前記軸部材が前記シフトレバーに連係されることを特徴とするシフトレバー装置。
【請求項4】
請求項3記載のシフトレバー装置であって、
前記センサユニットが前記シフト軸、または前記セレクト軸を兼ねることを特徴とするシフトレバー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2012−46046(P2012−46046A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189215(P2010−189215)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000237307)富士機工株式会社 (392)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000237307)富士機工株式会社 (392)
【Fターム(参考)】
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