説明

シフト制御システム

【課題】車両停止時におけるPスイッチの操作に際して運転者に違和感を与えることのないシフト制御システムを提供する。
【解決手段】車両が完全に停止していないにもかかわらず運転者がPレンジへの切替要求を入力した場合、直ちにPレンジに切り替えるのではなく、ホイールシリンダ圧が所定の保持圧Phに保持される。つまり、ホイールシリンダ圧を残し、車両の停止が推定される保持時間Δtの経過後にPレンジに切り替えられる。また、そのPレンジのロック機構を作動させた後に、ホイールシリンダ圧を保持圧Phから所定の減圧勾配をもって徐々に減圧させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシフト制御システムに関し、特に運転者のシフト操作入力に基づいて自動変速機のシフトレンジを切り替えるシフト制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機を搭載した車両には、一般に、運転者により操作されるシフトレバーが設けられている。運転者がそのシフトレバーをスライドさせると、そのシフトレバーのスライド位置に基づいてシフトレンジが選択され、ギヤ式の動力伝達機構の動力伝達状態が切り替えられる。また、車両を駐車する際にシフトレバーがパーキングレンジ(以下「Pレンジ」と表記する)に対応するパーキングポジションにシフトされると、ロック機構が作動して動力伝達機構の出力軸と一体のパーキングギヤが固定される。これにより、その出力軸の回転が固定され、車両の停止状態が維持される。
【0003】
一方、近年ではシフトレバーの操作に基づく機械的なシフト制御ではなく、いわゆるシフトバイワイヤ方式のシフト制御システムも知られている(たとえば特許文献1参照)。この方式のシフト制御システムでは、運転者のシフト操作入力をセンサやスイッチによって検出し、その検出信号に応じたシフトレンジを選択する。Pレンジについては、パーキングポジションへの切り替え操作をワンタッチで行うことができるパーキングスイッチ(以下「Pスイッチ」と表記する)が設けられたりしている。
【特許文献1】特開2002−122236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このシフトバイワイヤ方式のシフト制御システムにおいては、運転者によってPスイッチがオンにされると、車両が完全に停止していない状態においてもシフトレンジがPレンジに切り替わる場合がある。この場合、ロック機構が回転中の出力軸を強制的に固定しようとするため、その反力で車両の揺り返しが発生し、運転者に違和感を与えることがある。また、動力伝達機構のギヤのバックラッシュにより振動を発生させる原因にもなる。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、車両停止時におけるPスイッチの操作に際して運転者に違和感を与えることを抑制できるシフト制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のシフト制御システムは、運転者によるシフト操作入力に応じて車両の動力伝達機構の動力伝達状態を制御するシフト制御システムであって、シフト操作入力を受け付けるシフト操作入力部と、シフト操作入力に応じてシフトレンジを切り替え、動力伝達機構の動力伝達状態を電気的に制御するシフト制御部と、ブレーキペダルの踏み込み操作に基づき、液圧回路に配置された電磁弁を開閉制御してホイールシリンダ圧を制御することにより、車輪に制動力を付与するブレーキ制御部と、車速を検出する車速検出部と、を備える。シフト制御部は、車両の走行中にシフト操作入力としてパーキングレンジへの切替要求があった場合、ブレーキ制御部に少なくとも車両の停止が推定される予め定める保持期間ホイールシリンダ圧を所定の保持圧に維持させ、その保持期間の経過後にシフトレンジをパーキングレンジへ切り替え、動力伝達機構の出力軸の回転を固定するロック機構を作動させる。
【0007】
この態様によると、車両が完全に停止していないにもかかわらず運転者がPレンジへの切替要求を入力した場合、直ちにPレンジに切り替えるのではなく、ブレーキ制御部によりホイールシリンダ圧が所定の保持圧に保持される。つまり、ブレーキ制御部によりホイールシリンダ圧を残し、車両の停止が推定される保持期間の経過後にPレンジに切り替える。これにより、車両の姿勢が安定した状態においてロック機構が作動されるため、車両の揺り返しにより運転者に違和感を与えるのを防止または抑制することができる。
【0008】
具体的には、シフト制御部が、車速検出部により検出される車速が実質的にゼロになり、さらにブレーキ操作検出部が検出されるブレーキペダルの踏み込み量が実質的にゼロになったときに、保持圧としてブレーキペダルの踏み込み時よりも低いホイールシリンダ圧に維持させてもよい。
【0009】
すなわち、運転者がPレンジを選択する行為は通常、ブレーキペダルを踏み込んで車両が停止したと認識したときに行われると考えられる。運転者は車両が停止したと思いこんでブレーキペダルから足を外し、Pスイッチ等によりPレンジへの切替操作を行う。このため、そのままではホイールシリンダ圧がなくなってしまうところ、ブレーキペダルの踏み込み時よりも低い保持圧を残して車両の完全停止を促すようにする。車速検出部により検出される車速が実質的にゼロとなった後に保持圧を残すとしたのは、たとえば車速検出部として車輪速センサ等を用いた場合、厳密には車速は極低速までしか検出できない場合があり得ることを考慮したものである。極低速で車両が動いていても、ロック機構を動作させると車両の揺り返しが発生する。ここではそれを防止する。
【0010】
車両の挙動に基づいてその停止状態を判定する停止状態判定部を備えてもよい。そして、保持期間として、停止状態判定部により車両の停止状態が判定されるまでの期間が設定されていてもよい。すなわち、ここでは保持期間を固定するのではなく、車両の状態に応じて設定することができる。これにより、より正確に車両の停止状態に基づく制御を実現することができる。また、必要以上にホイールシリンダ圧がかけられるのを防止できる。
【0011】
より具体的には、車両の減速度を検出可能なGセンサを備えてもよい。そして、停止状態判定部は、車速検出部により検出される車速が実質的にゼロになり、かつGセンサによる出力値が実質的にゼロに収束したときに車両が停止状態にあると判定してもよい。車両の完全停止時には、その慣性力等により車両が前後に揺れることがある。たとえば、Gセンサの出力信号の脈動がなくなったときに車両の停止状態を判定してもよい。
【0012】
あるいは、車両の車高を検出可能な車高センサを備えてもよい。そして、停止状態判定部は、車速検出部により検出される車速が実質的にゼロになり、かつ車高センサにより検出された車高と予め計測した車両停止時の車高との差分が判定基準値よりも小さいときに、車両が停止状態にあると判定してもよい。すなわち、車両停止時には車両がその慣性力等により上下に揺れることがあり、その際、車高センサが検出する車高は車両停止時とは異なる値になると考えられる。このような車高センサの出力値の変化等によって車両の停止状態を判定してもよい。
【0013】
保持期間は、車両の停車直前の所定時点の減速度が大きいほど短くなるように予め設定されていてもよい。すなわち、車両の停車直前の減速度が大きければ車両停止までの時間も短くなる。このため、Pレンジへの切り替えの安定性と迅速性を考慮した適度な保持期間が設定されるのが好ましい。
【0014】
さらに、シフト制御部は、ロック機構を作動させた後、ブレーキ制御部にホイールシリンダ圧を保持圧から徐々に減圧させるのが好ましい。このように保持圧からの減圧勾配を設けることにより、車両に加わるショックを低減してより安定な停止状態を実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のシフト制御システムによれば、車両停止時におけるPスイッチの操作に際して運転者に違和感を与えるのを防止または抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。図1は、実施の形態に係るシフト制御システムの全体構成を表すシステム構成図である。
【0017】
本実施の形態の車両には、駆動輪の駆動源となるエンジン1、駆動力を所定の変速比で伝達する自動変速機2、各車輪を操舵する図示しないステアリング装置、各車輪に制動力を付与するブレーキ装置3、およびこれらを制御する各種の電子制御装置(以下「ECU」と表記する)などが搭載されている。この車両は、いわゆる後輪駆動式のものであり、エンジン1の駆動力は、トルクコンバータ5、自動変速機2、プロペラシャフト6、ディファレンシャル7、およびアクスルシャフト8等を介して各後輪に伝達される。
【0018】
本実施の形態の自動変速機2は、内部にギヤ式の動力伝達機構を備えた有段式の変速機からなり、運転者によるシフト操作入力に応じてシフトレンジが切り替えられ、その動力伝達状態が制御される。また、自動変速機2にはシフト駆動部9が設けられ、Pレンジが選択されるパーキングモードになると内部のロック機構が作動され、動力伝達機構の出力軸の回転が固定される。本実施の形態のシフト制御システムは、このシフトレンジの切替制御を行うものであり、特にパーキングモードにおいて自動変速機2とブレーキ装置3との協調制御を行う点に特徴を有するが、その詳細については後述する。
【0019】
ブレーキ装置3は、電子制御ブレーキ(Electronically Controlled Brake:以下「ECB」という)および電動パーキングブレーキ(Electric Parking Brake:以下「EPB」という)の双方を備えており、車両の走行状態に応じて車両の4輪のブレーキを独立かつ最適に制御する。すなわち、右前輪10FRおよび左前輪10FLにはディスクブレーキ11FR、11FLがそれぞれ搭載され、右後輪10RRおよび左後輪10RLにはドラムインディスクブレーキ11RR、11RLがそれぞれ搭載されている。ECBはブレーキアクチュエータ12の駆動により動作し、EPBはEPB駆動部13の駆動により動作する。このブレーキ装置の詳細については後述する。
【0020】
各車輪にはその回転速度を検出する車速検出部としての車輪速センサ14がそれぞれ設けられている。さらに、車体前方には車両の前後方向の加速度を検出するGセンサ21が設置されている。各駆動部やアクチュエータは、ECU100により駆動制御される。このECU100は、シフト制御を実行するシフト制御部101およびブレーキ制御を実行するブレーキ制御部102を含む。各制御部は、CPUを含むマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポート及び通信ポート等を備える。ECU100には、車輪速センサ14を含む各種センサ・スイッチ類からの出力信号が入力されている。各制御部は、各センサからの入力信号等に基づいて演算処理を行い、所定の制御処理を実行する。
【0021】
図2は、シフト制御システムの制御部の電気的構成を概略的に表すブロック図である。 本実施の形態のシフト制御システムは、上述したシフト制御部101およびブレーキ制御部102を含むECU100を中心に構成され、電気制御によりシフトレンジを切り替えるシフトバイワイヤシステムとして機能する。ECU100には、電源供給用の電源スイッチ60、Pレンジへの切替要求を受け付けるPスイッチ61、Pレンジ以外のシフトレンジへの切替要求を受け付けるシフトスイッチ62、ECBの各車輪のホイールシリンダ圧を検出するW/C圧センサ44、上述した車輪速センサ14、Gセンサ21等の各種センサ・スイッチ類が接続されている。また、ECU100には、上述したシフト駆動部9、ブレーキアクチュエータ12およびEPB駆動部13等の各種アクチュエータや、車両の状態等を表示する表示部68やシフトレンジの状態等を表示するメータ69等が接続されている。
【0022】
電源スイッチ60は、車両電源のオンオフを切り替えるためのスイッチである。この電源スイッチ60がオンされることにより、図示しないバッテリから電力が供給されて、シフト制御システムが起動される。
【0023】
Pスイッチ61は、シフトレンジをPレンジとパーキング以外のレンジ(以下「非Pレンジ」という)との間で切り替えるためのスイッチであり、スイッチの状態を運転者に示すためのインジケータ63、および運転者からの指示を受け付ける入力部64を含む。運転者は、入力部64を通じて、シフトレンジをPレンジに入れる指示を入力する。入力部64はモーメンタリスイッチなどであってもよい。シフト制御部101は、シフトレンジをPレンジと非Pレンジとの間で切り替えるために、自動変速機2の動力伝達機構を駆動するシフト駆動部9の動作を制御し、現在のシフトレンジの状態をインジケータ63に表示する。シフトレンジが非Pレンジであるときに運転者が入力部64を押下すると、シフト制御部101はシフトレンジをPレンジに切り替えて、インジケータ63に現在のシフトレンジがPレンジである旨を表示する。
【0024】
シフト駆動部9は、自動変速機2の動力伝達機構を駆動するアクチュエータ66と、回転検出用のエンコーダ67とを含む。アクチュエータ66は、スイッチトリラクタンスモータ(以下「SRモータ」と表記する)により構成され、シフト制御部101からの指示を受けて動力伝達機構を駆動し、シフトレンジの切り替えを行う。エンコーダ67は、アクチュエータ66と一体的に回転し、SRモータの回転状況を検知する。本実施の形態のエンコーダ67は、A相、B相およびZ相の信号を出力するロータリエンコーダである。シフト制御部101は、エンコーダ67から出力される信号を取得してSRモータの回転状況を把握し、SRモータを駆動するための通電の制御を行う。
【0025】
シフトスイッチ62は、シフトレンジをドライブレンジ(D)、リバースレンジ(R)、ニュートラルレンジ(N)、ブレーキレンジ(B)などのレンジに切り替えたりするためのスイッチである。シフトスイッチ62が受け付けた運転者からの指示はシフト制御部101に伝達される。シフト制御部101は、運転者からの指示に基づき、動力伝達機構におけるシフトレンジを切り替える制御を行うとともに、現在のシフトレンジの状態をメータ69に表示する。
【0026】
なお、本実施の形態においては、Pスイッチ61およびシフトスイッチ62がシフト操作入力部に該当する。
【0027】
シフト制御部101は、シフト制御システムの動作を統括的に管理する。表示部68は、シフト制御部101またはシフト制御部101が発した運転者に対する指示や警告などを表示する。メータ69は、車両の機器の状態やシフトレンジの状態などを表示する。
【0028】
図3は、シフト駆動部9の主要部の構成を示す説明図である。
シフト駆動部9は、アクチュエータ66により回転されるシャフト71、シャフト71の回転に伴って回転するディテントプレート72、ディテントプレート72の回転に伴って動作するロッド73、動力伝達機構の出力軸に固定されたパーキングギヤ74、パーキングギヤ74をロックするためのパーキングロックポール75、ディテントプレート72の回転を制限してシフトレンジを固定するディテントスプリング76およびころ77を含む。これらの各部によってロック機構が形成される。
【0029】
同図にはシフトレンジが非Pレンジであるときの状態が示されている。この状態では、パーキングロックポール75がパーキングギヤ74をロックしていないので、車両の駆動軸の回転は妨げられない。この状態から、アクチュエータ66によりシャフト71を時計回り方向に回転させると、ディテントプレート72を介してロッド73が矢印Aの方向に押され、ロッド73の先端に設けられたテーパー部によりパーキングロックポール75が矢印Bの方向に押し上げられる。ディテントプレート72の回転に伴って、ディテントプレート72の頂部に設けられた2つの谷のうち一方、すなわち非Pレンジ位置81にあったディテントスプリング76のころ77は、山82を乗り越えて他方の谷、すなわちPレンジ位置83へ移る。ころ77は、その軸方向に回転可能にディテントスプリング76に設けられている。ころ77がPレンジ位置83にくるまでディテントプレート72が回転したとき、パーキングロックポール75は、パーキングギヤ74と嵌合する位置まで押し上げられる。これにより、車両の駆動軸が機械的に固定され、シフトレンジがPレンジに切り替わる。
【0030】
図4は、本実施の形態のブレーキ装置の液圧回路を中心とした系統図である。
上述のように、ブレーキ装置3は、ECBおよびEPBの双方を備えており、車両の走行状態に応じて車両の4輪のブレーキを独立かつ最適に制御する。すなわち、左右前後の車輪にECBを構成するディスクブレーキ91〜94がそれぞれ設けられるとともに、さらに左右後輪にはEPBを構成するドラムブレーキ95、96がそれぞれ設けられている。つまり、左右後輪にはドラムインディスクブレーキが設けられている。
【0031】
ブレーキペダル15は、運転者による踏み込み操作に応じて作動液としてのブレーキフルードを送り出すマスタシリンダ16に接続されている。ブレーキペダル15には、その踏み込みストロークを検出するためのストロークセンサ46が設けられている。マスタシリンダ16の一方の出力ポートには、運転者によるブレーキペダル15の操作力に応じた反力を創出するストロークシミュレータ24が接続されている。マスタシリンダ16とストロークシミュレータ24とを接続する流路には、シミュレータカット弁23が設けられている。また、マスタシリンダ16には、ブレーキフルードを貯留するためのリザーバタンク26が接続されている。
【0032】
マスタシリンダ16の一方の出力ポートには、右前輪用のブレーキ油圧制御管17が接続されている。このブレーキ油圧制御管17は、右前輪用のホイールシリンダ20FRに接続されている。また、マスタシリンダ16の他方の出力ポートには、左前輪用のブレーキ油圧制御管18が接続されている。このブレーキ油圧制御管18は、左前輪用のホイールシリンダ20FLに接続されている。右前輪用のブレーキ油圧制御管17には、右電磁開閉弁22FRが設けられており、左前輪用のブレーキ油圧制御管18には、左電磁開閉弁22FLが設けられている。これらの右電磁開閉弁22FRおよび左電磁開閉弁22FLは、いずれも非通電時に開状態にあり、通電時に閉状態に切り換えられる常開型の電磁弁である。
【0033】
また、右前輪用のブレーキ油圧制御管17には、右前輪側のマスタシリンダ圧を検出する右マスタ圧力センサ48FRが設けられており、左前輪用のブレーキ油圧制御管18には、左前輪側のマスタシリンダ圧を計測する左マスタ圧力センサ48FLが設けられている。
【0034】
一方、リザーバタンク26には、油圧給排管28の一端が接続されている。この油圧給排管28の他端には、モータ32により駆動されるオイルポンプ34の吸込口が接続されている。また、オイルポンプ34の吐出口は、高圧管30に接続されている。この高圧管30には、アキュムレータ50とリリーフバルブ53とが接続されている。
【0035】
アキュムレータ50は、オイルポンプ34によって昇圧されたブレーキフルードを蓄える。アキュムレータ50におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まると、リリーフバルブ53が開弁し、高圧のブレーキフルードは油圧給排管28へと戻される。更に、高圧管30には、アキュムレータ50の出口圧力を検出するアキュムレータ圧センサ51が設けられている。
【0036】
そして、高圧管30は、増圧弁40FR,40FL,40RR,40RLを介して右前輪用のホイールシリンダ20FR、左前輪用のホイールシリンダ20FL、右後輪用のホイールシリンダ20RRおよび左後輪用のホイールシリンダ20RLに接続されている。以下、適宜、ホイールシリンダ20FR〜20RLを総称して「ホイールシリンダ20」といい、適宜、増圧弁40FR〜40RLを総称して「増圧弁40」という。増圧弁40は、いずれも非通電時は閉じた状態にあり、必要に応じてホイールシリンダ20の増圧に利用される常閉型の電磁流量制御弁(リニア弁)である。
【0037】
また、右前輪用のホイールシリンダ20FRと左前輪用のホイールシリンダ20FLとは、それぞれ減圧弁42FRまたは42FLを介して油圧給排管28に接続されている。減圧弁42FRおよび42FLは、必要に応じてホイールシリンダ20FR,20FLの減圧に利用される常閉型の電磁流量制御弁(リニア弁)である。一方、右後輪用のホイールシリンダ20RRと左後輪用のホイールシリンダ20RLとは、常開型の電磁流量制御弁である減圧弁42RRまたは42RLを介して油圧給排管28に接続されている。以下、適宜、減圧弁42FR〜42RLを総称して「減圧弁42」という。
【0038】
右前輪用、左前輪用、右後輪用および左後輪用のホイールシリンダ20FR〜20RL付近には、それぞれ対応するホイールシリンダ20に作用するブレーキフルードの圧力であるホイールシリンダ圧を検出するホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RRおよび44RLが設けられている(総称して「W/C圧センサ44」)。
【0039】
ECBを構成するディスクブレーキ91〜94は、ホイールシリンダ20FR〜20RLの液圧によって作動させられる。各ディスクブレーキは、車輪とともに回転するブレーキディスクを備え、車体側に保持されたブレーキパッドがその液圧によって押し付けられることによりその摩擦力によって回転制動がかけられる。なお、ディスクブレーキそのものの構造については公知であるため、その詳細な説明については省略する。
【0040】
上述の右電磁開閉弁22FRおよび左電磁開閉弁22FL、増圧弁40FR〜40RL、減圧弁42FR〜42RL、オイルポンプ34、アキュムレータ50等は、ブレーキ装置3の油圧アクチュエータ80を構成する。
【0041】
一方、EPBを構成するドラムブレーキ95,96は、車輪とともに回転するドラムを備え、車体側に保持された一対のブレーキシューがドラムに押し付けられることによりその摩擦力によって回転制動がかけられる。ブレーキシューの一方にはレバーの一端部が回動可能に取り付けられ、そのレバーの他端部にワイヤ110の一端部が連結されている。ワイヤ110が引っ張られると、レバーが回動して一対のブレーキシューが拡開してドラムに押し付けられる。なお、ドラムブレーキそのものの構造については公知であるため、その詳細な説明については省略する。
【0042】
EPBは、上述したワイヤ110、ワイヤ110に張力を発生させるワイヤ駆動装置120、ワイヤ駆動装置120を駆動する電動モータ130等を含む。電動モータ130への供給電流はモータ駆動回路140を介して制御される。ドラムブレーキ95、96にそれぞれつながるワイヤ110の分岐点にはイコライザ150が設けられている。これらワイヤ110、ワイヤ駆動装置120、電動モータ130、モータ駆動回路140およびイコライザ150は、上述したEPB駆動部13を構成する。
【0043】
ワイヤ駆動装置120は、図示しないウォームギヤからなるギア列を備えており、電動モータ130の正回転または逆回転によりそのウォームギヤが回転してワイヤ110が引っ張られたり、緩められたりする。ギア列のいずれかの位置にはラチェット機構が配置され、ワイヤ110の巻き上げ(増し引き)時の巻き戻りを防止するとともに、任意の巻き上げ位置を保持し、制動力を維持できるように構成されている。また、巻き戻し(引き戻し)を行う場合には、ラチェット機構を解除することにより制動力の開放を瞬時に行えるようになっている。ワイヤ110に加えられる張力はイコライザ150を介して左右のドラムブレーキ95、96に等しく伝達される。
【0044】
ECU100のブレーキ制御部102は、油圧アクチュエータ80を含むブレーキアクチュエータ12、およびモータ駆動回路140等を含むEPB駆動部13を制御する。すなわち、ECU100は、ブレーキペダル15の踏み込み量を表すペダルストロークとマスタシリンダ圧とから車両の目標減速度を算出し、算出された目標減速度に応じて各車輪のホイールシリンダ圧の目標値である目標ホイールシリンダ圧を求める。そして、ECU100は、増圧弁40および減圧弁42を通電制御し、各車輪のホイールシリンダ圧が目標ホイールシリンダ圧になるよう制御してディスクブレーキ91〜94を適切に作動させる。また、アキュムレータ圧が予め設定された制御範囲の下限値未満であるときには、ECU100は、オイルポンプ34を駆動してアキュムレータ圧を昇圧させ、アキュムレータ圧がその制御範囲に入ればオイルポンプ34の駆動を停止させる。また、ブレーキ制御部102は、Pレンジへの切り替え時にシフト制御部101からの指令を受けると、ホイールシリンダ圧を所定の保持圧に維持する協調制御を行ったりもする。この協調制御の詳細については後述する。
【0045】
ブレーキ制御部102は、また、運転者によって図示しないの操作スイッチが操作されると、モータ駆動回路140を制御し、ワイヤ110による適度な張力を発生させてドラムブレーキ95、96を作動させる。また、ブレーキ制御部102は、ECBによる制動力を補う必要が生じた場合には、運転者の意思にかかわらずモータ駆動回路140を駆動してEPBによる制動力を発生させることもできる。
【0046】
次に、本実施の形態のシフト制御方法について説明する。
本実施の形態のシフト制御においては、車両が完全に停止していないにもかかわらず運転者がPスイッチ61を押下した場合に、直ちにPレンジに切り替えるのではなく、ブレーキ制御によりホイールシリンダ圧を残して制動をかけ、車両が完全停止してからPレンジに切り替える。これにより、車両が安定した停止状態においてロック機構を作動させるようにする。
【0047】
図5は、Pレンジへの切り替え時に行われるシフト制御の過程を表すタイミングチャートである。同図においては、上段から順に車速の有無、Pスイッチの状態、ブレーキペダルの操作状態、ホイールシリンダ圧(W/C圧)、シフトレンジの状態、Gセンサの出力信号が示されている。同図の横軸は時間の経過を表している。なお、車速の有無は車輪速センサ14の出力信号に基づいて判定されるが、センサの特性上、車両が極低速(たとえば3km/h以下)になると、車速を検出できない場合がある。本実施の形態では、このような車両が完全停止をしていない状態についても車速:無しとして判定される場合があることが想定されている。ここでは、運転者がブレーキ操作中に車両が完全に停止していないにもかかわらず、Pレンジに切り替えようとした場合を例に説明する。
【0048】
図示の例では、運転者がブレーキペダル15を踏み込むことにより車速が低下したものの、依然として車両が完全に停止していない時刻t1においてPスイッチ61がオンにされている。このとき、シフト制御部101は、直ちに非PレンジからPレンジに切り替えるのではなく、ブレーキ制御部102に指令してホイールシリンダ圧を所定期間保持させる。すなわち、時刻t2において車輪速センサ14により車速がゼロになったことが検出され、さらに時刻t3においてストロークセンサ46により運転者によるブレーキペダル15の操作がなくなったことが検出されても、ホイールシリンダ圧が所定の保持圧Phに維持されるようにする。このとき、シフト制御部101は、保持圧Phとして、運転者によるブレーキ操作がなくなる直前の圧力P0よりも低い圧力を目標ホイールシリンダ圧として設定する。この保持圧Phについては、通常時における車両停止直前の状態等を考慮するなどして適切な値を設定することができる。シフト制御部101は、ホイールシリンダ圧が保持圧Phとなった時点t3からその状態を少なくとも所定の保持時間Δt(「保持期間」に該当する)以上保持する。本実施の形態においては、この保持時間ΔtとしてGセンサ21による減速度が十分に収束する時間、つまり車両停止時にみられるGセンサ21の出力信号の脈動がなくなるまでの時間等が設定される。
【0049】
図6は、保持時間の決定の際に用いられる制御マップの例を表す説明図である。同図において、横軸は保持圧Phの保持時間Δtを表し、縦軸は停車直前の車両の減速度を表している。
【0050】
シフト制御部101は、同図に示す制御マップを保持している。この制御マップは、停車直前の車両の減速度に基づいて保持圧Phの保持時間Δtを決定するものであり、予め実験等により適正化されたものである。図示のように、保持期間Δtは、車両の停車直前の減速度が大きいほど短く、小さいほど長くなるように設定されている。これは、車両の停車直前の減速度が大きいほど車両停止までの時間も短くなることを考慮したものである。すなわち、保持時間Δtを十分にとって車両を完全に停止させる一方、保持時間Δtを必要以上に長くせずに迅速な処理を実現しようとするものである。本実施の形態では、時刻t2での減速度に基づいて保持時間Δtを決定する。
【0051】
図5に戻り、シフト制御部101は、時点t3から保持時間Δtが経過した時刻t4においてシフトレンジをPレンジに切り替える制御を行う。このとき、シフト駆動部9のアクチュエータ66が駆動され、ロック機構が動作してPレンジに固定される。シフト制御部101は、このPレンジへの切り替えが終了すると、ブレーキ制御部102に指令してホイールシリンダ圧を所定の減圧勾配で徐々に低下させる。図示の例では、時刻t5においてホイールシリンダ圧がゼロになっている。なお、図示の例では、ホイールシリンダ圧が時刻t4を経過しても少しの間保持圧Phに保持されているが、シフトレンジをPレンジに切り替えると同時に徐々に低下させるようにしてもよい。
【0052】
図7は、本実施の形態にかかるシフト制御処理の主要部の流れを表すフローチャートである。なお、この処理は、ECU100によるシフト制御処理の実行中に所定の周期で繰り返し実行される。
【0053】
まず、Pスイッチ61がオンにされたか否かが判定される(S10)。Pスイッチ61がオンであると判定されると(S10のY)、続いて、車輪速センサ14からの入力信号に基づき、車速が所定値以下(たとえば3km/h以下)であるか否かが判定される(S12)。なお、ここでいう「車速が所定値以下」には、車速が極低速で車輪速センサ14からの入力パルスがない場合も含まれ得る。車速が所定値以下であると判定されると(S12のY)、続いて、制動中であるか否かが判定される(S14)。この制動中であるか否かについては、たとえばブレーキ制御部102によりブレーキ制御中であるか否かにより判定される。制動中であれば(S14のY)、後述する計時タイマがオンであるか否かが判定される(S16)。
【0054】
このとき、計時タイマがオンにされていなければ(S16のN)、続いて、ストロークセンサ46の出力信号に基づき、運転者によってブレーキペダル15が踏み込まれているか否かが判定される(S18)。このとき、ブレーキペダル15が踏み込まれていなければ(S18のY)、ブレーキ制御部102によりホイールシリンダ圧が上述した保持圧Phに保持される(S20)。このとき、同時に図示しない計時タイマがオンにされる(S22)。この計時タイマによって上述した保持時間Δtが計時される。一方、S16において、既に計時タイマがオンにされていれば(S16のY)、S18〜S22の処理はスキップされる。
【0055】
そして、計時タイマの値に基づき、保持時間Δtが経過したか否かが判定される(S24)。このとき、保持時間Δtが経過していれば(S24のY)、シフト制御部101によりPレンジへの切り替えが行われるとともに(S26)、計時タイマがオフにされて計時が終了される(S28)。そして、ブレーキ制御部102によってホイールシリンダ圧が保持圧Phから所定の減圧勾配で徐々に低下される(S30)。一方、S24において、保持時間Δtが経過していなければ(S24のN)、計時タイマを起動させたまま保持圧Phを保持した状態で一旦処理が終了される。
【0056】
一方、S10にてPスイッチ61がオンでない場合(S10のN)、S12にて車速が所定値よりも高い場合(S12のN)、S14にて制動中でない場合(S14のN)、およびS18にてブレーキペダル15が踏み込まれている場合(S18のN)においては、いずれも処理が終了される。
【0057】
以上に説明したように、本実施の形態においては、車両が完全に停止していないにもかかわらず運転者がPレンジへの切替要求を入力した場合、直ちにPレンジに切り替えるのではなく、ホイールシリンダ圧が所定の保持圧Phに保持される。つまり、ホイールシリンダ圧を残し、車両の停止が推定される保持時間Δtの経過後にPレンジに切り替えられる。これにより、車両の姿勢が安定した状態においてロック機構が作動されるため、車両の揺り返しにより運転者に違和感を与えるのを防止または抑制することができる。
【0058】
また、そのロック機構を作動させた後に、ホイールシリンダ圧を保持圧Phから所定の減圧勾配をもって徐々に減圧させるようにしたため、車両に加わるショックを低減してより安定な停止状態を実現することができる。
【0059】
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0060】
たとえば、上記実施の形態では、所定の保持時間Δtの経過をもって車両の完全停止を判定し、Pレンジに切り替える例を示した。変形例においては、Gセンサ21による出力値から直接的に車両の完全停止状態を判定するようにしてもよい。すなわち、Gセンサ21による出力値が実質的にゼロに収束するまでを保持期間とし、その保持期間の経過をもって車両の完全停止を判定し、Pレンジに切り替えるようにしてもよい。
【0061】
あるいは、車両の車高を検出可能な車高センサを設け、その車高センサにより検出された車高と予め計測した車両停止時の車高との差分が予め定めた判定基準値よりも小さいときに、車両の完全停止を判定し、Pレンジに切り替えるようにしてもよい。
【0062】
また、上記実施の形態では、車両停止時にECBによりホイールシリンダ圧を残し、保持時間Δtが経過した後にその保持圧Phから徐々に減圧して制動力を抜く例を示した。変形例においては、その保持期間においてECBとEPBとを連動させることも考えられる。ただし、EPBについては一般に消費電力が大きくなるため、上述した実施の形態のほうがより好ましいと考えられる。言い換えれば、ECBのようにアキュムレータに蓄圧された圧力を利用する形態のほうが消費電力を少なくすることができる。そこで、保持期間ではなく、ECBの制動力を抜く短い期間においてECBとEPBとを連動させるようにしてもよい。このように、EPBより先にECBにて車両停車姿勢を安定させられると、EPBを連動させた場合に車両のリフトアップが抑制される。特に、後輪のサスペンションが中間ビームで構成された車両においては、EPBを構成するドラムブレーキのライニングからの異音の発生等を抑制することができる。また、ECBとEPBの作動タイミングをずらすことにより、電圧ドロップによるシステムダウンを回避することもできる。
【0063】
さらに、上記実施の形態では述べなかったが、走行中に誤操作でPレンジに切り替えられることがないよう、車両の走行中にPスイッチ61が長押しされたときに、上述したシフト制御処理を実行するようにしてもよい。この場合、車両が制動中でなくても、ECBにて自動的に制動力をかけ、車両が停止したときにPレンジに切り替えるようにしてもよい。
【0064】
また、DレンジからPレンジ、あるいはRレンジからPレンジへのシフト切り替え時には、自動変速機内の作動流体が残ることにより車両が動く可能性があるため、制動力の抜き勾配(減圧勾配)を抑制するようにしてもよい。つまり、勾配ガードをつけてゆっくりと作動液を抜くようにしてもよい。特に、低温時においては自動変速機内の作動流体の粘性が高くなり、シフトレンジの切り替え時にその流体力が残って駆動トルクが発生する可能性があるため、車両の停止状態を保持するには有効となる。
【0065】
また、電源がフェイルしたときにPレンジに切り替えられるような仕様の車両については、車両が停止するまでは別の電源(たとえばECBのキャパシタなどの電源)が使用できるようにしておき、車両の走行中にPレンジに切り替わらないようにしてもよい。
【0066】
さらに、上記実施の形態では自動変速機2を有段式の変速機とした例を示したが、無段変速機として構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施の形態に係るシフト制御システムの全体構成を表すシステム構成図である。
【図2】シフト制御システムの制御部の電気的構成を概略的に表すブロック図である。
【図3】シフト駆動部の主要部の構成を示す説明図である。
【図4】実施の形態のブレーキ装置の液圧回路を中心とした系統図である。
【図5】Pレンジへの切り替え時に行われるシフト制御の過程を表すタイミングチャートである。
【図6】保持時間の決定の際に用いられる制御マップの例を表す説明図である。
【図7】本実施の形態にかかるシフト制御処理の主要部の流れを表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
1 エンジン、 2 自動変速機、 3 ブレーキ装置、 5 トルクコンバータ、 9 シフト駆動部、 12 ブレーキアクチュエータ、 13 EPB駆動部、 14 車輪速センサ、 15 ブレーキペダル、 20 ホイールシリンダ、 21 Gセンサ、 40 増圧弁、 42 減圧弁、 44 W/C圧センサ、 46 ストロークセンサ、 50 アキュムレータ、 60 電源スイッチ、 61 Pスイッチ、 62 シフトスイッチ、 63 インジケータ、 64 入力部、 66 アクチュエータ、 67 エンコーダ、 68 表示部、 69 メータ、 71 シャフト、 72 ディテントプレート、 73 ロッド、 74 パーキングギヤ、 75 パーキングロックポール、 76 ディテントスプリング、 80 油圧アクチュエータ、 100 ECU、 101 シフト制御部、 102 ブレーキ制御部、 110 ワイヤ、 120 ワイヤ駆動装置、 130 電動モータ、 140 モータ駆動回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によるシフト操作入力に応じて車両の動力伝達機構の動力伝達状態を制御するシフト制御システムであって、
前記シフト操作入力を受け付けるシフト操作入力部と、
前記シフト操作入力に応じてシフトレンジを切り替え、前記動力伝達機構の動力伝達状態を電気的に制御するシフト制御部と、
ブレーキペダルの踏み込み操作に基づき、液圧回路に配置された電磁弁を開閉制御してホイールシリンダ圧を制御することにより、車輪に制動力を付与するブレーキ制御部と、
車速を検出する車速検出部と、
を備え、
前記シフト制御部は、前記車両の走行中に前記シフト操作入力としてパーキングレンジへの切替要求があった場合、前記ブレーキ制御部に少なくとも車両の停止が推定される予め定める保持期間ホイールシリンダ圧を所定の保持圧に維持させ、その保持期間の経過後に前記シフトレンジを前記パーキングレンジへ切り替え、前記動力伝達機構の出力軸の回転を固定するロック機構を作動させることを特徴とするシフト制御システム。
【請求項2】
前記ブレーキペダルの操作状態を検出するブレーキ操作検出部を備え、
前記シフト制御部は、前記車速検出部により検出される車速が実質的にゼロになり、さらに前記ブレーキペダルの踏み込み量が実質的にゼロになったことが検出されたときに、前記保持圧として前記ブレーキペダルの踏み込み時よりも低いホイールシリンダ圧に維持させることを特徴とする請求項1に記載のシフト制御システム。
【請求項3】
車両の挙動に基づいてその停止状態を判定する停止状態判定部を備え、
前記保持期間として、前記停止状態判定部により車両の停止状態が判定されるまでの期間が設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のシフト制御システム。
【請求項4】
前記車両の減速度を検出可能なGセンサを備え、
前記停止状態判定部は、前記車速検出部により検出される車速が実質的にゼロになり、かつ前記Gセンサによる出力値が実質的にゼロに収束したときに前記車両が停止状態にあると判定することを特徴とする請求項3に記載のシフト制御システム。
【請求項5】
前記車両の車高を検出可能な車高センサを備え、
前記停止状態判定部は、前記車速検出部により検出される車速が実質的にゼロになり、かつ前記車高センサにより検出された車高と予め計測した車両停止時の車高との差分が判定基準値よりも小さいときに、前記車両が停止状態にあると判定することを特徴とする請求項3に記載のシフト制御システム。
【請求項6】
前記保持期間は、前記車両の停車直前の所定時点の減速度が大きいほど短くなるように予め設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のシフト制御システム。
【請求項7】
前記シフト制御部は、前記ロック機構を作動させた後、前記ブレーキ制御部にホイールシリンダ圧を前記保持圧から徐々に減圧させることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のシフト制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−207638(P2008−207638A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44682(P2007−44682)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】