説明

シャフト内部の部品の中心合わせ

【課題】配置用の特殊な工具を必要とせず、シャフトが損傷するリスクがなく、また、小さいサイズのターボジェットにおける使用にも適している、シャフトの内部のチューブ等の部品の中心合わせ装置を提供すること。
【解決手段】中空シャフト(26)の内部のチューブ(42)の中心合わせ装置(66、68)であって、チューブ(42)と中空シャフト(26)との間に介装され、且つ、シャフト(26)の内側表面(40)に対して軸受けし且つシャフトの内部に移動可能とするようにシャフトの内側表面(40)から離隔されるように適合している軸受部材(68)を含む変形可能な手段(66)を備える。変形可能な手段(66)は、所定温度にさらされた場合に、シャフト(26)の内側表面(40)に対して軸受部材(68)を圧接して変形するように又は内側表面から軸受部材を離隔して変形するように適合した形状記憶材料から作られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、航空機ターボジェット等のターボ機械におけるシャフト内部の部品の中心合わせ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バイパスターボジェットにおいて、低圧タービンのシャフトは、中空であり、且つ、油を含んだ空気流をターボジェットの下流端部に向かって排出するために、低圧ロータを支持する軸受部を外部の大気に連絡する役目を果たす、一般に「センターベント(center vent)」チューブと称されるチューブを含むことがある。
【0003】
一般に、このチューブは、ロータシャフトの全長にわたって延在しており、その端部は、強制的にシャフトとともに回転する。
【0004】
チューブは、その長い長さ及び比較的薄い壁を鑑みて、従来からシャフトの内壁に対して軸受けする手段を含む1つ以上の中心合わせリングによって支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第10210954号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それにもかかわらず、ターボジェットの動的挙動を改善するために、一般に、低圧コンプレッサシャフトは、変動する内径を有し、そのために肩部又は狭窄部を有する。
【0007】
中心合わせリングがシャフトの端部から少し離れてシャフトの内部に設置されるのを可能とするために、中心合わせリングは、シャフトの内面においてこれらの肩部又は狭窄部を通過することができなければならない。
【0008】
この目的のために、知られている中心合わせリングは、一般に、ネジ及び拡張器を備えるタイプのシステムを用いて無理に取り付けられるが、これは、リングの誤配置を引き起こし、シャフトの内面を損傷する可能性がある。
【0009】
さらに、そのようなリングの取り付けは、比較的高価である特殊な工具を必要とする。
【0010】
さらにまた、知られている中心合わせリングは、典型的には、40インチ、すなわち、約1メートル未満の直径のファンを有するジェット機等、小さいサイズのターボジェットにおける使用に適合させるにはあまりにも大きすぎる。
【0011】
独国特許出願公開第10210954号明細書は、回転せず且つ回転シャフトに固定されたディスクを収容する円筒状ケージを備えるエンジン装置について記述している。ケージは、スポークを加熱して連続的に縮めるように電気が連続してスポークを流れる状態で、形状記憶材料からなるスポークによって支持されており、これにより、ディスクをケージの内部で周回させ、ディスクに固定されたシャフトを回転駆動させる。
【0012】
本発明の特有の目的は、先行技術の欠点を回避するのを可能とする、簡便で、安価で、且つ、実効的な上述した問題に対する解決策を提供することである。
【0013】
本発明の特有の目的は、配置用の特殊な工具を必要とせず、シャフトが損傷するリスクがなく、また、小さいサイズのターボジェットにおける使用にも適している、シャフトの内部のチューブ等の部品の中心合わせ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的のために、本発明は、部品と中空シャフトとの間に介装され且つシャフトの内側表面に対して軸受けする軸受部材を含む変形可能な手段を備え、軸受部材が、シャフトの内部に移動可能とするようにシャフトの内側表面から離隔されるように適合している、特にターボ機械における中空シャフトの内部の部品の中心合わせ装置であって、変形可能な手段が、材料が所定温度にさらされた場合に、シャフトの内側表面に対して軸受部材を圧接するように又は内側表面から軸受部材を離隔するように適合した形状記憶材料から少なくとも一部が作られていることを特徴とする、装置を提供する。
【0015】
単に温度変化の結果として、本発明の装置は、装置がシャフトの内部に位置する部品の周囲にコンパクト化する位置である、軸受部材が収縮する位置から軸受部材が展開する位置まで装置が移動することができ、その結果、部品がシャフトの内壁に対して中心合わせされるのを可能とする。
【0016】
本発明の第1の実施形態において、変形可能な手段は、転移温度Tよりも高い温度まで加熱される場合に、単一の形状記憶効果により、形状記憶材料の変形によってシャフトに対して軸受部材を圧接するのをそれ以降可能とするように、最初に、形状記憶材料の転移温度Tよりも高い温度で、シャフトに対して軸受けする位置に形成され、その後、転移温度Tよりも低い温度で、機械的応力のもとに収縮される。
【0017】
本発明の装置は、その収縮構造において半径方向にコンパクトであることから、容易にシャフトに挿入され、内壁のいかなる狭窄部又は肩部も通過することができる。
【0018】
いったん装置が適所に配置されると、必要とされる装置とのいかなる機械的接触もなく、単に加熱することによって部品を中心合わせするために、その軸受部材は、シャフトに対して展開され得る。
【0019】
好ましくは、形状記憶材料の転移温度Tは、100℃よりも高い。
【0020】
そのような転移温度は、装置がタイミング悪く展開するといういかなるリスクも最小化するのに役立つ。
【0021】
本発明の第2の実施形態において、変形可能な手段は、転移温度Tよりも高い温度まで加熱されて変形した形状記憶材料により、中空シャフトに対して軸受部材を圧接し、転移温度Tよりも低い温度まで冷却されて変形した形状記憶材料により、軸受部材を収縮させるようにそれ以降適合するように、最初に、形状記憶材料の転移温度Tよりも高い温度で展開位置に順次形成され、その後、転移温度Tよりも低い温度で収縮位置に順次形成されるような熱機械サイクルを受ける。
【0022】
この第2の実施形態は、熱機械サイクルから作られるトレーニング段階を必要とする二重の形状記憶効果の実現をあてにし、例えば保守作業のために、装置の最初の取り付けのみならずその取り外しも容易としてより信頼性があるように、単に温度を変えることによって軸受部材を収縮及び展開するのを可能とする。
【0023】
好ましくは、転移温度Tは、−90℃から−50℃の範囲にある。
【0024】
そのような転移温度は、航空機が作動する通常温度よりも低く、その結果、例えば液体窒素等の従来の冷却手段の使用を可能としながら、装置のタイミングの悪い収縮を回避するのを可能とする。
【0025】
部品は、シャフトを支持して案内する軸受部を外部の大気に連絡する役目を果たす、「センターベント」チューブと称されることもある通気ダクト等のチューブであってもよい。
【0026】
第1の実施形態において、変形可能な手段は、形状記憶材料からなるロッドを備え、各ロッドは、チューブの外側表面に固定された半径方向内側端部と、シャフトの内側表面に対して軸受けする軸受シューを支持する半径方向外側端部とを有し、各ロッドの半径方向外側端部は、対応する軸受シューをシャフトの内側表面から遠ざけるために、形状記憶材料の変形によって半径方向内側に湾曲するように適合している。
【0027】
本装置の構造は、装置を極めて軽量化し、市場においてありふれた形状記憶材料のロッドを使用するのを可能とする。
【0028】
有利には、各軸受シューは、一連の軸受シューとともに展開位置にある場合にシャフトの内側表面の形状に一致し、且つ、収縮位置にある場合にチューブを囲む略連続的なリングを形成するように適合したリングセクタ状である。
【0029】
この構造は、半径方向の範囲を最小化しながら、装置の中心合わせ能力を最適化するのに役立つ。
【0030】
第2の実施形態において、変形可能な手段は、チューブの周囲に取り付けられた形状記憶材料からなり、且つ、チューブを中心合わせするために、形状記憶材料の内側表面の部分がチューブの外側表面に対して軸受けし且つ形状記憶材料の外側表面の部分がシャフトの内側表面に対して軸受けするように、形状記憶材料の変形によって楕円形又は多角形の形状を取り得るリングを備える。
【0031】
リングは、装置が特に摩耗に対する耐性に長けているように、変形可能な手段及び軸受部材の双方としての役目を果たす。
【0032】
第3の実施形態において、変形可能な手段は、チューブの周囲に取り付けられ且つリングの周囲に分散配置された形状記憶材料からなるプレートを含むリングを備え、各プレートは、リングの外側表面と軸受シューとの間に介装され、チューブを中心合わせするために、プレートの端部がリングの外側表面に対して軸受けし且つプレートの中央部分が軸受シューをシャフトの内側表面に対して半径方向外側に圧接するような形状記憶材料の変形によって弧状に湾曲可能である。
【0033】
この構造は、形状的に簡便な変形のみを使用しながら、使用される形状記憶材料の量を制限するのに役立ち、その結果、形状記憶材料の事前のトレーニング段階を大幅に容易とする。
【0034】
有利には、リングは、その外側表面に、形状記憶材料からなるプレートを有し且つ軸受シューが窪み部分中にある窪み部分を含む。軸受シューは、それぞれ、収縮位置にある場合にリングの外側表面と同一平面である半径方向外側表面を有するのが好ましい。
【0035】
この構造は、半径方向のサイズを最小化する。
【0036】
本発明はまた、上述したタイプの中心合わせ装置を少なくとも1つ含むことを特徴とする、航空機ターボジェット等のターボ機械を提供する。
【0037】
添付図面を参照しながら、限定されない例の目的でなされた以下の記述を読むことにより、本発明は、より良好に理解されることができ、その他の詳細、利点、及び特徴は、より明確に現れる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1a】知られているタイプのターボ機械の軸方向概略断面図である。
【図1b】図1aの詳細Iaの拡大図である。
【図2】収縮位置において示された本発明の第1の実施形態を構成する中心合わせ装置を含むターボ機械における低圧コンプレッサシャフトの断片的な大縮尺概略断面図である。
【図3】展開位置において示された本発明の第1の実施形態を構成する中心合わせ装置を含むターボ機械における低圧コンプレッサシャフトの断片的な大縮尺概略断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態を構成する中心合わせ装置を示す図2と同様の図である。
【図5】本発明の第2の実施形態を構成する中心合わせ装置を示す図3と同様の図である。
【図6】本発明の第3の実施形態を構成する中心合わせ装置を示す図2と同様の図である。
【図7】本発明の第3の実施形態を構成する中心合わせ装置を示す図3と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1aは、基本的に上流から下流にかけて、ファン12と、低圧コンプレッサ14と、高圧コンプレッサ16と、環状空間18内に延在している燃焼チャンバと、高圧タービン20と、低圧タービン22と、排気ケーシング24とを備える知られているタイプの航空機バイパスターボジェット10を示している。
【0040】
動作中において、低圧タービン22のロータは、知られている方法で、ターボジェットの軸25まわりにシャフト26を回転駆動する。軸は、2つの軸受28、30によって下流に案内され、それ自体が2つの軸受34、36によって案内されてファン12及び低圧コンプレッサ14に接続されているシャフト32によって上流部を囲まれている。低圧タービン22のシャフト26は、ファン12及び低圧コンプレッサ14が回転駆動されるのを可能とするために、ファン12及び低圧コンプレッサ14のシャフト32とともに回転するように拘束されている。
【0041】
低圧タービンのシャフト26は、低圧コンプレッサ14から低圧タービン22まで延在しており、排気ケーシング24によって支持された下流端部を有するダクト38によって下流に延伸されている。
【0042】
低圧タービンのシャフト26は、中空であり、ターボジェットの動的性能を最適化するように形成された内側表面40を有する。
【0043】
ターボジェット10は、上流の軸受34、36及び下流の軸受28、30を外部の大気に連絡するように低圧タービンのシャフト26の内部に収容された、「センターベント」と称されることもあるチューブ42を含む。
【0044】
チューブ42は、その上流端部において低圧タービンのシャフト26とともに、その下流端部においてシャフト26に固定されたダクト38とともに回転するように拘束されている。
【0045】
チューブ42は、その長さ及び低い剛性のために、その比較的薄い壁を鑑みると、低圧タービンのシャフト26の内部で湾曲するリスクを有し、そのような湾曲は、ターボジェット10の性能を悪化させる不均衡をもたらす可能性がある。
【0046】
湾曲のリスクを回避するために、チューブ42は、シャフト26の内部でチューブ42を中心合わせするために、チューブの端部から略同等の距離において、チューブ42の中央領域に位置している知られているタイプの中心合わせ装置48を支持している。
【0047】
図1bにおいて示されるように、中心合わせ装置48は、チューブ42の壁の外側環状突起52まわりに取り付けられたリング50を備え、このリング50は、その下流端部56における外側ネジ山54と、その上流端部60における裁頭円錐状外壁58とを有し、下流に向かって先細りしている断面からなる。
【0048】
截頭円錐状内壁を有する弾性分割リング62は、リング50の截頭円錐状壁58の周囲に取り付けられ、リングのネジ山54と一致した内側ネジ山を有するナット64によって軸方向に保持されている。
【0049】
弾性分割リング62は、ナット64がない場合に、下流端部56からリング50の周囲で摺動することによって取り付けられ、その後、リング50の截頭円錐状外壁58の周囲で分割リング62を上流に向かって進めるように、ナット64がリング50の外側ネジ山54上に螺着され、それにより、分割リング62を拡張させる。
【0050】
一例として、分割リング62は、低圧タービンのシャフト26の内壁40に一致する曲率の丸い隅部を含む略正方形部分からなる周囲表面を有し、分割リング62の拡張は、その隅部をシャフト26の内側表面に対して徐々に軸受けさせる。その結果、シャフト26に対してチューブ42を中心合わせしやすくなる。
【0051】
中心合わせ装置48を係合する中央領域の直径よりも小さい直径を有するシャフトの領域をチューブ42が通過するのを可能とするために、分割リング62は、チューブ42が低圧タービンのシャフト26の内部に配置された後に取り付けられるのを必要とする。
【0052】
したがって、分割リング62の取り付けは、困難であることがわかり、分割リング62が設置されてナット64がシャフト26の端部から少し離れてシャフト26の内部に螺着されるのを可能とする特殊な工具の使用を必要とする。
【0053】
さらに、上述した中心合わせ装置48は、40インチ、すなわち、約1メートル未満の直径のファンを有するエンジン等、小さいサイズのエンジンにおいて使用されるのを可能とするにはあまりにも大きすぎることがわかる。
【0054】
これらの欠点を克服するために、本発明は、チューブ42を低圧タービンのシャフト26の内部に設置した上で使用するための収縮構造から、シャフト26に対してチューブ42を中心合わせするための展開構造まで、通過させることが可能であり、特殊な取り付け工具を必要とせずに、装置がまたコンパクト化され、その結果、小さいサイズのエンジンに適合する中心合わせ装置を提案する。
【0055】
この目的のために、提案された中心合わせ装置は、温度変化の影響のもとで形状を変化させるために、一般に形状記憶材料と称される特定の材料の機能を利用した変形可能な手段を備える。
【0056】
図2及び図3において示される本発明の第1の実施形態において、変形可能な手段は、例えばニチノールとしても公知であるニッケルとチタンとの合金等、単一の形状材料効果を有することができる形状記憶材料から作られているロッド66である。
【0057】
各ロッド66は、略半径方向にあり又は半径に対して斜めに傾斜しており、例えば溶接又はろう付けによってチューブ42の外側表面に固定された半径方向内側端部と、シャフト26の内側表面40に対して圧接されるために例えば鋼鉄等の一般材料からなる環状領域によって構成された軸受シュー68を支持している半径方向外側端部とを有する。シュー68は、溶接、ろう付けなどによって同様にロッド66に固定されている。
【0058】
図2において示される収縮構造において、シュー68が互いに隣接してチューブ42から短い距離において位置するように、ロッド66の半径方向外側端部は、内側に湾曲しており、それにより、略連続的なリングを形成している。
【0059】
図3において示される展開構造において、シャフト26に対してチューブ42を中心合わせするために、軸受シュー68がチューブ42から離隔され、低圧タービンのシャフト26の内壁40に対して圧接されるように、ロッド66は直線状となる。
【0060】
ロッド66は、単一の形状記憶効果のために、それらの収縮構造から展開される。
【0061】
ロッド66は、最初に、材料がその後にオーステナイト相となるように、形状記憶材料の転移温度Tよりも高い温度で、それらの展開位置に形成される。そして、中心合わせ装置66、68は、形状記憶材料がその後にマルテンサイト相となるように、軸受シュー68を半径方向内側に押し込むことによって機械的に収縮される。これは、上述した転移温度Tよりも低い温度で行われる。
【0062】
中心合わせ装置66、68は、チューブ42がシャフト26の外部にある状態でその後にチューブ42に取り付けられることができ、チューブ42は、その後にシャフト26の内部に設置されることができる。
【0063】
チューブ42を中心合わせするために、例えばシャフト26の内部に高温空気を吹き込むことにより、ロッドを形成する材料のオーステナイト相転移温度Tよりも高い温度まで中心合わせ装置のロッド66の温度を上昇させるのをその後に満足させ、それにより、材料をオーステナイト相の状態にさせ、オーステナイト相の状態でそれらがトレーニングされた最初の形状に戻るまで単一の形状記憶効果によってロッド66を変形させ、中心合わせ装置66、68が展開構造に対応する。
【0064】
中心合わせ装置がタイミング悪く展開するといういかなるリスクも回避するために、ロッド66を形成するために選択された形状記憶材料は、例えば100℃を超える十分に高い転移温度Tを有するのが好ましい。
【0065】
上述した装置は、シャフトの内壁を損傷するいかなるリスクもなしで、小さい内径を有するそれらのシャフトの領域を通過するのを可能とするために、その収縮位置において十分にコンパクトである。
【0066】
装置はまた、小さい直径のエンジンにおけるリスクなしで使用されることができる。
【0067】
図4及び図5は、加熱又は冷却することによって装置の展開及び収縮の双方を可能とするために、中心合わせ装置の変形可能な手段が、CuAlNi、CuZnAl、CuAlBe、NiTiの合金、又は実にNiTiNbタイプ等の二重の形状記憶効果を有することができる形状記憶材料から作られているリング70を備える、本発明の第2の実施形態を示している。
【0068】
二重の形状記憶効果を実現するために、リング70は、最初に、一連の熱機械サイクルを含むトレーニング段階を受ける。熱機械サイクルは、交互に、この形状記憶材料がその後にマルテンサイト相となるように、オーステナイト相への形状記憶材料の転移温度T以下の温度で円形を有するように形成され、また、形状記憶材料がオーステナイト相となるように、形状記憶材料の転移温度Tよりも高い温度で、シャフト26の軸25を含む平面72内のリングを伸ばすことによって楕円形状にする。
【0069】
そして、リング70は、チューブ42の周囲に取り付けられる。
【0070】
図4は、収縮構造における装置を示している。リング70は、チューブ42を囲むために円形であり、シャフトについてのリスクなしで、シャフト26の内壁によって与えられた狭窄部分をチューブ42が通過するのを可能とするためにコンパクトな半径方向の構成を有する。
【0071】
相転移が工業条件のもとで実現されるのを可能とするとともに、装置のタイミングが悪い収縮といういかなるリスクも回避するために、リング70を構成する形状記憶材料は、約−90℃から−50℃の範囲にある負の転移温度Tを有する。
【0072】
図4において示されるような収縮構造における装置の通過は、例えばシャフト26内に容易に流し入れることができる液体窒素に装置を浸漬することにより、転移温度T以下まで冷却することによって引き起こされ得る。
【0073】
図5は、展開構造における装置を示している。そして、リング70は楕円形を有し、リングの延長平面72の近くに位置する外側表面の2つの領域74、76がシャフト26の内壁40に対して圧接されるとともに、同様にシャフトの軸25を含みリングの延長平面72に対して垂直である平面82の近くに位置する内側表面の他の2つの領域78、80がチューブ42の外壁に対して圧接し続ける。
【0074】
したがって、この構造は、チューブ42がシャフト26に対して中心合わせされるのを可能とする。
【0075】
この構造における装置の通過は、例えば単に周囲温度に戻すことによって形状記憶材料の転移温度Tよりも高い温度まで装置を戻すことによって引き起こされ得る。
【0076】
このようにして、装置は、望まれていない収縮といういかなるリスクもなしで、ターボジェットが動作する温度で引き続き展開されたままとされる。
【0077】
二重の形状記憶効果の使用の有利性は、おそらく単に装置を冷却することによって例えば保守作業のために既にシャフト26の内部に取り付けられるとともに中心合わせ装置が収縮されるという可能性にある。
【0078】
変形例において、リング70は、丸い頂点を有する多角形である展開構造、又は、チューブ42がリング70のある内部の部分に対して圧接され続けるのも可能とするとともに、リング70のある外部の部分がシャフト26の内側表面40に対して軸受けするのを可能とするように適合した任意の等価形状である展開構造を有してもよい。
【0079】
図6及び図7において示される第3の実施形態において、変形可能な手段は、二重の形状記憶効果を有するように適合した形状記憶材料からなるプレート84を備える。プレートは、リング86と軸受シュー88との間に介装されている。
【0080】
例えば鋼鉄等の一般の材料から作られているリング86は、その外側表面に形成され且つリングの軸25の周囲に規則的に分散配置された窪み部分又はカップ90を含む。例えば、これらのカップ90は4つある。
【0081】
一例として、各カップ90は、平坦な底部を有する裁頭円錐状であり、軸受シュー88とカップ90の底部との間に介装され且つ形状記憶材料の転移温度Tよりも高い温度にさらされた軸受シュー88を半径方向外側に押し込むように構成された形状記憶材料からなるプレート84とともに、例えばリング86のものと類似の材料から作られた略相補的な形状からなる軸受シュー88を収容し、且つ、転移温度Tよりも低い温度にさらされたカップ90内へと軸受シュー88を半径方向内側に収縮させるように設計されている。
【0082】
二重の形状記憶効果を実現するために、プレート84は、最初に、一連の熱機械サイクルを含むトレーニング段階を受ける。熱機械サイクルにおいて、各プレート84は、交互に、この形状記憶材料がその後にマルテンサイト相となるように、オーステナイト相への形状記憶材料の転移温度Tよりも低い温度で平坦形状を有するように形成され、また、形状記憶材料がその後にオーステナイト相となるように、転移温度Tよりも高い温度で弧状を有するように形成される。
【0083】
その後、プレート84は、各プレート84の両端部92が、例えば、ろう付け、溶接などにより、対応するカップ90の底部に固定されるとともに、各プレート84の半径方向外側表面の中央領域94が、同様にしてろう付け、溶接などにより、対応する軸受シュー88の半径方向内側表面96に固定されるように、軸受シュー88とリング86内のカップ90の底部との間に設置され得る。
【0084】
図6は、収縮構造における装置を示している。軸受シュー88がシャフト26の内側表面と接触せず、装置の半径方向のサイズが可能な限り小さいように、プレート84は平坦形状である。示された具体的な例において、各軸受シュー88の半径方向外側表面98は、リング86の外側表面100と同一平面である。
【0085】
先の例のように、装置のタイミングが悪い収縮といういかなるリスクも回避するために、使用される形状記憶材料は、約−90℃から−50℃の範囲にある負の転移温度Tを有し、図6において示されるような収縮構造における装置の通過は、液体窒素や同種のものに装置を浸漬することによって引き起こされる。
【0086】
図7は、展開構造における装置を示している。プレート84は弧状であり、各軸受シュー88の半径方向外側表面98は、チューブ42を中心合わせするために、シャフト26の内側表面40に対して軸受けする。
【0087】
先の例のように、この構造における装置の通過は、周囲温度に戻すことによって引き起こされ得る。
【0088】
上述した3つの実施形態は、幾何的形状の観点及び単一又は二重の形状記憶効果の観点の双方から、限定されない本発明の例として与えられる。
【0089】
特に、第2及び第3の実施形態において述べられた二重の形状記憶効果のタイプは、例えば容易に保守作業を行うため等、可逆性に関して上述した利点を享受するために、第1の実施形態の形状と組み合わせられてもよい。当然、これは、上述したものと類似であるロッドについてのトレーニング段階を必要とする。
【0090】
本発明は、特に専らターボ機械タービンの中空シャフトにおける「センターベント」チューブの中心合わせのみではなく、チューブ又は中空シャフトの内部の任意の部品の中心合わせに応用可能である。
【符号の説明】
【0091】
10 ターボジェット
12 ファン
14 低圧コンプレッサ
16 高圧コンプレッサ
18 環状空間
20 高圧タービン
22 低圧タービン
24 排気ケーシング
25 軸
26、32 シャフト
28、30、34、36 軸受
38 ダクト
40 内側表面
42 チューブ
48 中心合わせ装置
50 リング
52 外側環状突起
54 外側ネジ山
56 下流端部
58 裁頭円錐状外壁
60 上流端部
62 弾性分割リング
64 ナット
66 ロッド
68、88 軸受シュー
70 リング
72、82 平面
74、76、78、80 領域
84 プレート
86 リング
90 カップ
92 端部
94 中央領域
96 半径方向内側表面
98 半径方向外側表面
100 外側表面
転移温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品(42)と中空シャフト(26)との間に介装され且つシャフト(26)の内側表面(40)に対して軸受けする軸受部材(68、70、88)を含む変形可能な手段(66、70、84)を備え、軸受部材が、シャフトの内部に移動可能とするようにシャフトの内側表面から離隔されるように適合している、特にターボ機械(10)における中空シャフト(26)の内部の部品(42)の中心合わせ装置(66、68、70、84、86、88)であって、変形可能な手段(66、70、84)が、材料が所定温度にさらされた場合に、シャフト(26)の内側表面(40)に対して軸受部材(68、70、88)を圧接するように又は内側表面から軸受部材を離隔するように適合した形状記憶材料から少なくとも一部が作られていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
変形可能な手段(66)が、形状記憶材料の転移温度Tよりも高い温度まで加熱される場合に、単一の形状記憶効果により、形状記憶材料の変形によってシャフト(26)に対して軸受部材(68)を圧接するのをそれ以降可能とするように、最初に、形状記憶材料の転移温度Tよりも高い温度で、シャフト(26)に対して軸受けする位置に形成され、その後、転移温度Tよりも低い温度で、機械的応力のもとに収縮されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
形状記憶材料の転移温度Tが、100℃よりも高いことを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
変形可能な手段(70、84)が、形状記憶材料の転移温度Tよりも高い温度まで加熱されて変形した形状記憶材料により、中空シャフト(26)に対して軸受部材(70、88)を圧接し、転移温度Tよりも低い温度まで冷却されて変形した形状記憶材料により、軸受部材(70、88)を収縮させるようにそれ以降適合するように、最初に、形状記憶材料の転移温度Tよりも高い温度で展開位置に順次形成され、その後、転移温度Tよりも低い温度で収縮位置に順次形成されるような熱機械サイクルを受けることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
転移温度Tが、−90℃から−50℃の範囲にあることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
部品が、通気ダクト等のチューブ(42)であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
変形可能な手段が、形状記憶材料からなるロッド(66)を備え、各ロッドが、チューブ(42)の外側表面に固定された半径方向内側端部と、シャフト(26)の内側表面(40)に対して軸受けする軸受シュー(68)を支持する半径方向外側端部とを有し、各ロッド(66)の半径方向外側端部が、対応する軸受シュー(68)をシャフト(26)の内側表面(40)から遠ざけるために、形状記憶材料の変形によって半径方向内側に湾曲するように適合していることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
各軸受シュー(68)が、一連の軸受シュー(68)とともに展開位置にある場合にシャフト(26)の内側表面(40)の形状に一致し、且つ、収縮位置にある場合にチューブ(42)を囲む略連続的なリングを形成するように適合したリングセクタ状であることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
変形可能な手段が、チューブ(42)の周囲に取り付けられた形状記憶材料からなり、且つ、チューブ(42)を中心合わせするために、内側表面の部分(78、80)がチューブ(42)の外側表面に対して軸受けし且つ外側表面の部分(74、76)がシャフト(26)の内側表面(40)に対して軸受けするように、形状記憶材料の変形によって楕円形又は多角形の形状を取り得るリング(70)を備えることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項10】
変形可能な手段が、チューブ(42)の周囲に取り付けられ且つリング(86)の周囲に分散配置された形状記憶材料からなるプレート(84)を含むリング(86)を備え、各プレート(84)が、リング(86)の外側表面と軸受シュー(88)との間に介装され、チューブ(42)を中心合わせするために、プレート(84)の端部(92)がリング(86)の外側表面に対して軸受けし且つプレートの中央部分(94)が軸受シュー(88)をシャフト(26)の内側表面(40)に対して半径方向外側に圧接するような形状記憶材料の変形によって弧状に湾曲可能であることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項11】
リング(86)が、その外側表面(100)に、形状記憶材料からなるプレート(84)を有し且つ軸受シュー(88)が窪み部分(90)の中にある窪み部分(90)を含むことを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
軸受シュー(88)が、それぞれ、収縮位置にある場合にリングの外側表面(100)と同一平面である半径方向外側表面(98)を有することを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のタイプの少なくとも1つの中心合わせ装置を含むことを特徴とする、航空機ターボジェット等のターボ機械(10)。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−174528(P2009−174528A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−7253(P2009−7253)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)
【Fターム(参考)】