説明

ショックアブソーバー取付け部構造

【課題】ショックアブソーバーブラケットの締結部付近の応力集中を緩和し、車体への負担を軽減するショックアブソーバー取付け部構造を提供する。
【解決手段】リヤホイールハウス7上部の車輪側に接合したリンフォース4に、ショックアブソーバー2の上端部に装着したブラケット3が締結され、前記リンフォースが、その中間部の前後各側に、車輪側に膨出したブラケット取付け座面を備え、それらの間に上下方向に延びる凹面44が画成され、前記ブラケット取付け座面の少なくとも一方に、上下2箇所の締結部が配設され、前記2箇所の締結部の間を横切るように形成された凹ビード45により、上下2つの取付け座面が画成されており、前記上下2つの取付け座面の裏面側に共通の補強用パッチ5が接合され、該補強用パッチに、前記凹ビードを跨ぐビード部55が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のリヤサスペンションに併設されるショックアブソーバーの車体側取付け部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のリヤサスペンションに併設されるショックアブソーバーの上端部が、リヤホイールハウス内の上部に支持される場合、そのままでは取付け部の強度および剛性が不足するため、リヤホイールハウスの車輪側や荷室側に補強材が接合される(例えば、特許文献1,2参照)。しかし、補強材の接合により取付け部の面剛性が向上しても、ショックアブソーバーからの突き上げ荷重がリヤホイールハウスに直接作用することに変わりなく、リヤホイールハウスへの負担は改善されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−219004号公報
【特許文献2】実開平3−52289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、リヤホイールハウス上部の車輪側に接合した補強材に、車輪側に膨出した取付け座面を設け、この取付け座面に、ショックアブソーバー上端部に装着したブラケットを締結固定することで、ショックアブソーバーから入力される荷重を補強材の周縁部に分散させることが検討されている。この場合、ショックアブソーバーのブラケットは、補強材の取付け座面に対して2〜4箇所でボルト止めされるが、ボルトの締結部付近に応力集中を生じる傾向が確認された。
【0005】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、ショックアブソーバーブラケットのボルト締結部付近の応力集中を緩和し、ショックアブソーバーからの突き上げ荷重の分散効率を高め、車体への負担を軽減することができるショックアブソーバー取付け部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来技術の有する課題を解決するため、本発明は、リヤホイールハウス上部の車輪側に接合したリンフォースに、ショックアブソーバー上端部に装着したブラケットを締結してなるショックアブソーバー取付け部構造であって、前記リンフォースが、その中間部の前後各側に、車輪側に膨出したブラケット取付け座面を備え、それらの間に上下方向に延びる凹面が画成されているものにおいて、前記ブラケット取付け座面の少なくとも一方に、上下2箇所の締結部が配設されるとともに、前記2箇所の締結部の間を横切るように形成された凹ビードにより、上下2つの取付け座面が画成されており、前記上下2つの取付け座面の裏面側に共通の補強用パッチが接合され、該補強用パッチに、前記凹ビードを跨ぐビード部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記構成により、車輪側に膨出したブラケット取付け座面を備えたリンフォースとリヤホイールハウスとの間に形成された閉断面と、各取付け座面の間で上下方向に延びる溝状の凹面により、ブラケット取付け座面周辺の剛性が高められ、ショックアブソーバーからの突き上げ荷重をリンフォースの周辺部(接合部)を通じてリヤホイールハウス(車体構造)に分散させる基本的効果に加えて、上下2箇所の締結部間に横方向に延びる凹ビードと補強用パッチのビード部とによって、上下2つの取付け座面の面剛性が高められボルト締結部付近の応力集中が緩和される一方、ショックアブソーバーからの衝撃や上下2箇所の締結部間の不均衡を吸収可能となり、車体側への負担を軽減することができる。
【0008】
また、本発明の好適な態様では、前記ブラケットが、ショックアブソーバー上端部に嵌合する有頂筒状のショックアブソーバー保持部と、その周囲に張出したフランジ部とを備え、前記フランジ部と対応する前記各取付け座面および前記補強パッチを貫通する締結部材で締結固定されており、前記フランジ部に、前記ショックアブソーバー保持部の側面から前後各側に延びる補強リブが延設されているので、各補強リブによって、各取付け座面間の溝状凹面に架設されたフランジ部の剛性が向上し、前後各側取付け座面の中央寄りの応力集中を緩和するうえで有利である。
【0009】
また、本発明のさらに好適な態様では、前記ブラケット取付け座面の他方に1箇所の締結部が配設され、該取付け座面の裏面側に接合された補強用パッチの上縁および/または下縁に、前記取付け座面の裏面から離れて車両前後方向に延在する立縁が形成されているので、補強用パッチの剛性が高められ、ボルト締結部付近の応力集中を緩和し、ショックアブソーバーからの突き上げ荷重の分散効率を高めるうえで有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明実施形態のショックアブソーバー取付け部を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図2のB方向から見たリンフォースの分解状態を示す矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、自動車のリヤホイールアーチ10付近を前下方から見た斜視図である。図において、リヤホイールアーチ10の内側には、後車輪1の収容部を画成するリヤホイールハウス7が配設され、リヤホイールハウス7の下端は、リヤフロアサイドメンバー9に接合されている。
【0012】
リヤホイールハウス7は、図1のA−A断面を車両後方側から見た図2に示されるように、リヤホイールハウスアウター7aとリヤホイールハウスインナー7bで構成され、リヤホイールハウスアウター7aの図示しない縁部においてリヤホイールアーチ10の裏面に接合されている。また、リヤホイールハウスアウター7aとの接合部に沿ったリヤホイールハウスインナー7bの上面は、車室空間と荷室空間との間に車幅方向に延在するクロスメンバー8の端部下面に接合されている。
【0013】
図1および図2に示すように、リヤホイールハウス7の車輪側上部には、ショックアブソーバー2の取付け座面41〜43を備えたリンフォース4が接合されている。ショックアブソーバー2は、下端部2bにおいてサスペンション側に連結される一方、上端部2aに装着したブラケット3を介してリンフォース4に取り付けられる。
【0014】
ブラケット3は、ショックアブソーバー2の上端部2aに嵌合する有頂円筒状のショックアブソーバー保持部34と、その周囲に張出したフランジ部30とを備え、該フランジ部30は、ショックアブソーバー保持部34に対して前方に位置する1箇所の締結部33と、後方に位置する上下2箇所の締結部31,32を結ぶ略三角形状をなしている。
【0015】
上記フランジ部30は、略上下方向に配向されたショックアブソーバー2の上端部2aを、リヤホイールハウス7の傾斜面に準じた傾斜を有するリンフォース4の取付け座面41〜43に取付けるために、ショックアブソーバー保持部34に対して斜設され、ショックアブソーバー保持部34の上端部の一側は、図2に破線で示すように、フランジ部30の中央部から上方に突出している。
【0016】
さらに、ショックアブソーバー保持部34の外周面からフランジ部30に向けて複数の補強リブが放射状に配設され、それらのうち、車両前後方向に配向された2つの補強リブ35,36は、後方側2箇所の締結部31,32の間、および前方側1箇所の締結部33の近傍に向かって延設されている。
【0017】
上記のように構成されたブラケット3は、図2に破線で示すように、ショックアブソーバー2の上端部2aをショックアブソーバー保持部34に嵌合するとともに、ショックアブソーバー2の上端部2aの中央に突設されたボルト(図示せず)を、ショックアブソーバー保持部34の頂部に貫通させ、その状態で、前記ボルトにナット20を螺合締結することによりショックアブソーバー2の上端部2aに固定されている。
【0018】
リンフォース4は、フランジ状の周縁部40においてリヤホイールハウス7に溶接接合される一方、その中間部の前後各側に、リヤホイールハウス7に対して車輪側に膨出したブラケット取付け座面43および41,42を備え、それらの間に上下方向に延びる溝状の凹面44が画成されている。この凹面44は、ショックアブソーバー保持部34の突出した上端部(2a)を収容する逃げ部であると同時に、リンフォース4の前後の膨出部(43および41,42)に上下方向に延びる補強構造をもたらしている。
【0019】
上記各ブラケット取付け座面41,42,43には、ブラケット3の締結部31,32,33に対応したボルト孔41a,42a,43aが穿設されている。これらのうち、車両前後方向の後方側に位置した上下2箇所のボルト孔41a,42aの中間には、これらの間を横切るように凹ビード45(裏面側、接合面側から見た図3では凸ビード)が延設され、該凹ビード45によって、後方側の膨出部に上下の取付け座面41,42が画成されている。
【0020】
そして、上下の取付け座面41,42の裏面側には、それらに共通の補強用パッチ5が接合される。補強用パッチ5は、取付け座面41,42に対応した平坦な補強面51,52と、それらの前後各側に立設された側面53,54とを備え、上下の補強面51,52の中間には、両側面53,54間に亘って延在するビード部55が形成されている。各補強面51,52には、前記各ボルト孔41a,42aに対応した貫通孔が穿設され、かつ、各貫通孔の裏面側にそれぞれウエルドナット11,12が溶接固定されている。
【0021】
一方、車両前後方向の前方側に位置したブラケット取付け座面43には、ボルト孔43aの凹面44側から下側にかけての区間を囲むように段差46が形成されており、該取付け座面43の裏面側に接合される補強用パッチ6にも、該取付け座面43に対応した平坦な補強面63を囲むように段差部66が形成されている。
【0022】
この補強用パッチ6も、補強面63の前後各側に側面61,62を備え、さらに、補強用パッチ6の上下縁部には、取付け座面43の裏面から立ち上がる立縁64,65が形成され、このうち下方の立縁65は、両側面61,62に亘って車両前後方向に延在している。補強面63に、ボルト孔43aに対応した貫通孔が穿設され、その裏面側にウエルドナット13が溶接固定される点は、補強用パッチ5の場合と同様である。
【0023】
以上のように構成されたショックアブソーバー2の取付け部構造は、図2に示されるように、上下2つの取付け座面41,42の間に凹ビード45が形成され、取付け座面41,42の裏面側に接合された補強用パッチ5の対応する位置に、前記凹ビード45を跨ぐビード部55が形成された構成により、各取付け座面41,42のそれぞれの面剛性が向上し、ボルト21,22の締結部付近の応力集中が緩和される一方、ショックアブソーバーからの衝撃や、上下2箇所の締結部間の不均衡を吸収可能となり、車体側への負担を軽減することができる。
【0024】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらに各種の変形および変更が可能であることを付言する。
【符号の説明】
【0025】
1 後車輪
2 ショックアブソーバー
3 ブラケット
4 リンフォース
5,6 補強用パッチ
7 リヤホイールハウス
11,12,13 ウエルドナット
21,22,23 ボルト
30 フランジ部
31,32,33 締結部
34 ショックアブソーバー保持部
35,36 補強リブ
40 周縁部
41,42,43 ブラケット取付け座面
44 凹面
45 凹ビード
46 段差
55 ビード部
64,65 立縁
66 段差部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リヤホイールハウス上部の車輪側に接合したリンフォースに、ショックアブソーバー上端部に装着したブラケットを締結してなるショックアブソーバー取付け部構造であって、
前記リンフォースが、その中間部の前後各側に、車輪側に膨出したブラケット取付け座面を備え、それらの間に上下方向に延びる凹面が画成されているものにおいて、
前記ブラケット取付け座面の少なくとも一方に、上下2箇所の締結部が配設されるとともに、前記2箇所の締結部の間を横切るように形成された凹ビードにより、上下2つの取付け座面が画成されており、前記上下2つの取付け座面の裏面側に共通の補強用パッチが接合され、該補強用パッチに、前記凹ビードを跨ぐビード部が形成されていることを特徴とするショックアブソーバー取付け部構造。
【請求項2】
前記ブラケットが、ショックアブソーバー上端部に嵌合する有頂筒状のショックアブソーバー保持部と、その周囲に張出したフランジ部とを備え、前記フランジ部と対応する前記各取付け座面および前記補強パッチを貫通する締結部材で締結固定されており、前記フランジ部に、前記ショックアブソーバー保持部の側面から前後各側に延びる補強リブが延設されていることを特徴とする請求項1に記載のショックアブソーバー取付け部構造。
【請求項3】
前記ブラケット取付け座面の他方に1箇所の締結部が配設され、該取付け座面の裏面側に接合された補強用パッチの上縁および/または下縁に、前記取付け座面の裏面から離れて車両前後方向に延在する立縁が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のショックアブソーバー取付け部構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−241289(P2010−241289A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92935(P2009−92935)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】