説明

シリコン基板に凹部を異方性エッチングにより形成する方法およびプラズマエッチングシステムの使用方法

【課題】シリコン基板に異方性エッチングにより深さが大きい凹部を形成するための、簡便な方法およびプラズマエッチングシステムの使用方法を提供する。
【解決手段】反応性エッチングガスをエネルギー励起するためにプラズマを用いる。反応性エッチングガスは、連続的に流れるガスフローの成分である。凹部は、エッチング時に、上記ガスフローを中断することなく少なくとも50マイクロメートルの深さに形成される。その結果、深さの大きい凹部を製造するための簡便な方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本願発明は、プラズマを用いて反応性エッチングガスをエネルギー励起する方法に関するものである。上記エッチングガスは、凹部を異方性エッチングにより形成する機能を果たす。
【背景技術】
【0002】
凹部の例としては、溝または穴があげられる。凹部が溝である場合は、開口縁部において、1つの幅寸法(基板表面方向に沿って互いに対向する各開口縁部間の長さ)は、上記1つの幅寸法に対して90°の角度で横断するように配置されている他の幅寸法の少なくとも2倍の大きさを有するようにできる。
【0003】
凹部が穴である場合は、開口周縁部において、一方の幅寸法は、それに対して90°の角度で横断するように配置されている他方の幅寸法の2倍以下の大きさにできる。穴の場合は、上記2つの各幅寸法が同じサイズであることが好ましい。溝の場合は、開口部が楕円形または長方形である。穴の場合は、開口部が楕円形、円形、長方形または正方形である。穴および溝の双方は、多くの場合、トレンチと呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
穴の場合は、溝の場合よりもエッチングが困難である。なぜなら、エッチングガスが、同じ深さと同じ幅とを有する溝よりも、穴の底部に届きにくいからである。マイクロメカニックスにおける凹部の例としては、各ビーム部、各クシ状、または、各フィン部の周囲の凹部が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明の目的は、50マイクロメートルよりも深い凹部をエッチングにより形成するための簡便な方法を提供することである。さらに、本願発明は、プラズマエッチングシステムの使用方法を提供することである。
【0006】
本願発明の方法に関する目的は、特許請求項1に記載の方法の工程を含む方法によって達成される。本願発明の方法に関する各実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0007】
本願発明は、幅寸法が190nm(ナノメートル)未満である、または、90nm未満でさえある溝または穴が半導体技術には必要である、という認識に基づくものである。トレンチの深さは、10マイクロメートル未満であり、典型的には7マイクロメートルまたは3マイクロメートルである。これらのトレンチは、電荷を揮発性にて保持するメモリーセルの容量を収容する機能を果たす。さらに、このようなトレンチは、例えば各トランジスタ間を絶縁するために使用できる。開口縁部における、深さおよび最小幅寸法のアスペクト比(深さ/最小幅寸法)は、50:1を上回っており、ときには70:1を上回っていることがある。
【0008】
上記エッチングには、従来では、例えば、三フッ化窒素NFよびHBrが使用される。これらのトレンチ形成の場合の問題の一例としては、例えばシリコン基板を数マイクロメートルエッチングした後も、マスクの機能を保持しているエッチングマスクが形成されて、依然として存在してしまうことが挙げられる。つまり、トレンチ深さを任意に増大できないことを意味している。
【0009】
さらに、本願発明は、マイクロメカニックスにおいて、数百マイクロメートルの深さの各トレンチがエッチングにより形成される必要という考慮事項に基づくものである。この場合のアスペクト比はより極端なものではないものであり、例えば20:1未満であるか、または、10:1未満でさえある。この場合、六フッ化硫黄SFおよび/または三フッ化窒素NFが、エッチングガスとして使用される。
【0010】
従来では、50マイクロメートルを上回る深さのトレンチをエッチングにより形成するために、反復方法が使用される。この反復方法では、エッチングステップの後、堆積工程において、保護層が、溝の壁に繰り返し生成される。例えば何百回の反復が必要な反復プロセスを実施するには、高価な特別のシステムが必要である。上記反復方法では、トレンチの側壁が不均一な、いわゆる「波形」となる。
【0011】
本願発明では、驚くべきことに、反復プロセスの実施は必須ではないということが確立された。したがって、本願発明の方法では、反応性エッチングガスが、連続的に流れるガスフローの成分であり、少なくとも1つの凹部が、上記エッチング時に、ガスフローが中断されることなく、少なくとも75マイクロメートルの深さに形成される。したがって、本願発明の方法は、簡単なエッチングシステム(例えば、多結晶シリコンをエッチングするために必要とされるエッチングシステム)を深いトレンチをエッチングにより形成するために使用できる。さらに、本願発明の方法は、低圧で行われる反復式のガスフローを用いる方法のような高いポンプ力、および、高精度のガスフロー制御ユニットが不要となる。
【0012】
一実施形態では、反応性エッチングガスは、フッ素またはフッ素化合物、好ましくは六フッ化硫黄SFおよび/または三フッ化窒素NF、特に好ましくは単一種のフッ素化合物を含んでいる。高密度プラズマにおいて六フッ化硫黄SFを使用することにより、エッチングエリア毎につき十分な数のフッ素ラジカルを生成できる。その結果、エッチング速度が1分につき6マイクロメートルに達する。上記フッ素化合物は、フッ素分子よりも有害性が低い。フッ素またはフッ素化合物は、他のハロゲンまたはハロゲン化合物よりも反応性がある。
【0013】
次の一実施形態では、反応性エッチングガスは、フッ素フリーの添加ガス、好ましくは酸化物形成剤、特に酸素分子を含んでいる。フッ素フリーの添加ガスによる組成分、特に酸素ガスフローによる組成分は、全活性ガスフロー中、20%(パーセント)〜50%または30%〜40%であり、好ましくは35%であり、プラズマから陽イオンが、凹部の底部まで加速されるように基板バイアス電圧を設定して、上記陽イオンにより、上記凹部の底部に二酸化シリコンからなる保護膜が形成されない。
【0014】
フッ素フリーの上記添加ガスにより、充分に厚い保護層がトレンチの側壁上に確実に形成される。後述するように、プラズマから生じる陽イオンにより、トレンチの底部には保護層は形成されない。さらに、添加ガス、特に酸素による組成分は、以下でより詳しく説明されるように、トレンチの側壁の傾斜のためには重要なものである。アンダーカットも、添加ガスによる組成分によって制御できる。
【0015】
他の一実施形態では、エッチングガスが、単一種の希ガス、特にヘリウムまたはアルゴン、を含んでいる。あるいは、エッチングガスは、複数種の希ガス、特にヘリウムおよびアルゴンを含んでいる。全不活性ガスフロー中、アルゴンガスフローによる組成分は、25%〜65%、または35%〜55%である。活性ガスを不活性ガスによって希釈することにより、150mm(ミリメートル)、200mm、または、300mmさえ上回る直径のウエハーに対する、エッチングの均一性が向上する。さらに、ハードマスクの選択性が増大する。さらに、希ガスによって希釈を行うことにより、ガスフローの避けられない変動に対して、全体的なプロセスが安定化される。
【0016】
次の一実施形態では、反応性エッチングガスを含むガスフローによる組成分は、全ガスフロー中、20%〜40%または25%〜35%の範囲であり、好ましくは28%〜32%である。エッチング速度およびアンダーカットは、全ガスフロー中の、反応性エッチングガスによる組成分によって制御できる。
【0017】
一実施形態では、エッチング中の圧力は、0.05mbar、または、0.1mbarを上回っている。また、エッチング中の圧力は、0.5mbarまたは0.25mbar未満であることが好ましい。エッチング速度、トレンチの側壁の傾斜、および、アンダーカットは、圧力によって制御できる。
【0018】
一実施形態では、プラズマは、300ワット〜1200ワット、または、500ワット〜1000ワット、特に600ワットの電力で生成される。電力が高過ぎるとオーバーヒートが大きくなり過ぎる。電力が低すぎると、エッチング速度が低くなる。一発展形態では、プラズマを生成するための周波数は、100MHz未満であり、例えば誘導結合プラズマの生成では13.56MHzである。しかしながら、プラズマを誘導結合により生成するための電力の周波数は、マイクロ波領域の電磁放射線、すなわち、1ギガヘルツを上回る(特に、2.45GHzの)ものでもよい。
【0019】
次の一実施形態では、50ワットまたは60ワットを上回る、好ましくは70ワットを上回る電力を有する基板バイアス電圧が生成されて、基板に印加される。基板バイアス電圧を生成するための電力は、700ワット未満であることが好ましい。同じく、基板バイアス電圧は、150ボルトまたは210ボルトを上回る値を有している。基板バイアス電圧は、600ボルト未満であることが好ましい。比較的高い値を有する基板バイアス電圧は、トレンチの底部に対するイオン反応を増大させることとなり、したがって、エッチングによる除去の速度が上がる。生成される基板バイアス電圧の周波数は、100MHz未満であることが好ましい。
【0020】
以下の最適化された値は、次の一実施形態に該当するものである:
ガス圧 120μbar
プラズマ電力 600ワット
基板バイアス電圧 220ボルト
ヘリウムガスフロー 126sccm
酸素ガスフロー 32sccm
六フッ化硫黄ガスフロー 59sccm
アルゴンガスフロー 84sccm
更なるガスは使用されないことが好ましい。これらの値の±5パーセントまたは±10パーセントの変動は、最適化の範囲内である。
【0021】
本願発明の方法、特に最適化された方法では、エッチング時において温度サイクルは必要ない。なぜなら、エッチング時における温度は、例えば45℃(摂氏)で変化しないままだからである。より高い温度は、エッチング速度を上げる。より低い温度は、側壁保護をより好適にする。標準的なウエハーレス予備処理および自己洗浄方法以外に、付加的な処理は必要ない。したがって、50マイクロメートルを上回るトレンチのエッチング処理を、標準的な半導体製造に導入できる。
【0022】
一実施形態では、凹部は溝または穴である。深い穴をエッチングにより形成することに対するこの方法の適用性は、特に驚くべきことであり、予見できたことではなかった。凹部の幅が狭くても、例えばエッチングガスが穴の底部に達しないときでも、エッチングを停止しないで連続的な方法にて、深さ50マイクロメートルを上回る凹部をエッチングにより形成できる。一発展形態では、凹部の開口縁部における最小幅寸法および凹部におけるカットアウトの連続的にエッチングされた深さのアスペクト比は、8:1または10:1を上回っている。
【0023】
代替的な一発展形態または更なる一発展形態では、カットアウトの開口縁部における最小幅寸法は、20マイクロメートル未満または10マイクロメートル未満である。
【0024】
他の一発展形態では、凹部が形成される基板表面の元の面積サイズに対するカットアウトの開口部、または、カットアウトの複数の開口部の合計面積割合は、20%未満または10%未満または5%未満である。上記合計面積割合が小さいほど、より高いエッチング速度を達成できる。
【0025】
一実施形態では、カットアウトの開口縁部を含む基板表面への距離が大きくなるに伴い先細りするテーパー形状の凹部の側壁の傾斜角は、91度を上回り、92度を上回り、または93度を上回っている。なお、上記傾斜角は、110度未満であることが好ましい。したがって、この凹部の角の稜線から基板上の空間へと延びる側壁の傾斜角と基板表面との間の角度については、89°未満、88°未満、または87°未満である。大きい程度にて先細りするカットアウトは、平行な側壁を有するカットアウトよりも、上記カットアウト内に物を充填しやすい。先細りの程度が過ぎると凹部の深さが制限される。傾斜角は、ガスフロー(プロセスガス)中の酸素の割合によって設定されることが好ましい。
【0026】
次の一実施形態では、エッチングマスク(特に、二酸化シリコンでできたエッチングマスク)を使用して、凹部の形成位置を規定する。二酸化シリコンは、例えばTEOS法(テトラエチルオルソシリケート法)によって製造される。熱酸化により形成された二酸化シリコンもエッチングマスクの材料として適している。
【0027】
次の一実施形態では、シリコン含有ガス、特にシリコンおよびフッ素を含む化合物(例えば、SiF)を含むガスを、エッチングに利用されるプロセスチャンバーまたはエッチングチャンバーに外部から導入しない。それゆえ、本願発明の方法の実施は、簡素化されている。
【0028】
次の一実施形態では、全ガスフローの規格は、200sccm(標準立法センチメートル)〜500sccmまたは250sccm〜350sccmであり、好ましくは、295sccm〜305sccmである。
【0029】
これらのガスフローは、ラム(Ram)社のTCP(登録商標)9400PTXタイプといった誘電結合プラズマ源のシステムでのように、エッチングチャンバーの体積(すなわち、約30リットルの体積)に対して決定されたものである。平均滞留時間は、プロセスにとって重要なものである。平均滞留時間は、ガスフローとガス圧とから得られる。したがって、より大きな、または、より小さなチャンバー体積への換算は、上記規格を用いて行うことができる。
【0030】
本願発明の更なる一観点では、本願発明の使用目的は、50マイクロメートルまたは100マイクロメートルを上回る深さを有する少なくとも1つの凹部を、連続的に流れるガスフローによって、すなわち、プラズマエッチングシステムのエッチングチャンバーに導入するガスを中断することなく、上記ガスによるエッチングにより形成するためのプラズマエッチングシステムの使用方法により達成される。
【0031】
本願発明の使用方法の一実施形態では、プラズマエッチングシステムは、反復エッチングのための制御ユニットを備えていない。それにもかかわらず、このシステムは、50マイクロメートルを上回る深さの溝または穴をエッチングにより形成するために使用される。一発展形態では、このプラズマエッチングシステムは、特に複数の集積回路を含むウエハー(例えば、MOS回路(Metal Oxide Semiconductor )、CMOS回路(Complementary MOS )、BiCMOS(Bipolar CMOS)または純粋なバイポーラ回路)を形成する場合に、多結晶シリコン層をエッチングするために使用される。このことは、50マイクロメートルを上回る深さのトレンチをエッチングにより形成するために高価な特別のシステムは必要なくなる、ということを意味している。
【0032】
一実施形態では、エッチングによる凹部の形成中においてガスフローの組成が同一に維持される。あるいは、ガスフローの流量値が、エッチングによる凹部の形成中において同一に維持される。従って、本願発明の方法の実施を簡素化することが可能である。しかしながら、ガスフローが連続的であっても、例えば、トレンチの形状を変化させるために、または、トレンチの底部をより均一な状態にするために、エッチング期間全体の少なくとも一部において、ガスフローの流量値をエッチング中に変更する方法も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本願発明の方法に用いるプラズマエッチングシステムの構造を示す要部断面図である。
【図2】本願発明の方法に用いるエッチング中の現象を基本的に示す概念断面図である。
【図3A】本願発明の方法における、異なる3つの各実施方法の異なる側壁傾斜を有するトレンチの一つの断面図である。
【図3B】本願発明の方法における、異なる3つの各実施方法の異なる側壁傾斜を有するトレンチの他の一つの断面図である。
【図3C】本願発明の方法における、異なる3つの各実施方法の異なる側壁傾斜を有するトレンチのさらに他の一つの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本願発明の実施例を、以下で、添付の各図を参照して説明する。
【0035】
図1は、プラズマエッチングシステムの構造を示す断面図である。
【0036】
図2は、エッチング中の現象を基本的に示す断面図である。
【0037】
図3A〜図3Cは、それぞれ、異なる3つの方法の実施による異なる側壁傾斜を有する各トレンチの断面図である。
【0038】
図1に、プラズマエッチングシステム(例えば、ラム社のTCP9400PTXタイプのプラズマエッチングシステム)10を示す。プラズマ12を有するエッチングチャンバーは、各側壁、チャンバーの底部18およびチャンバーの蓋19によって密閉されている。エッチングチャンバーのチャンバーの底部18に、ウエハー状のシリコン基板22を担持している基板キャリア20が配置されている。
【0039】
さらに、エッチングチャンバーは、1つまたは複数のガス吸気口(図示せず)を備えている。このガス吸気口に、アルゴンと、ヘリウムと、六フッ化硫黄SFと、酸素とを含むガス混合物を流入する。流入したガス混合物の一部と、さらに反応生成物とが、1つまたは複数のガス排気口(図示せず)から同じく流出する。
【0040】
さらに、上記プラズマエッチングチャンバーは、コイル24を備えている。このコイル24は、エッチングチャンバーの上側に、または、エッチングチャンバーの上部領域に配置されており、巻線30〜44を有している。コイルの1つの端子は、配線52を介して、AC電源50と電気的に接続されている。AC電源50の他の端子は、接地電位Mと接続されている。AC電源50の周波数は、13.56MHzである。プラズマ12を生成するためのAC電源50は、600ワットの消費電力規格のものである。
【0041】
さらに、プラズマエッチングシステム10は、13.56MHzの周波数で作動するAC電源60を備えている。AC電源60の一方の端子は、導電性の配線62を介して、導電性の基板キャリア20と接続されている。AC電源60の他方の端子は、接地電位Mと接続されている。AC電源60は、約70ワットの消費電力規格にて、マイナス220ボルトの基板バイアス電圧を生成する。
【0042】
各AC電源50・60を、それぞれ別々に制御することができる。その結果、イオン密度およびイオンエネルギーを、相互に別々に調整できる。さらに、荷電粒子と非荷電粒子との関係を予め決めておくことができる。
【0043】
図2にプラズマエッチングシステム10のエッチングチャンバーでのエッチング中の現象を基本的に示す。トレンチの場所(特に、トレンチ72の場所)を予め決めておくために、二酸化シリコンでできたハードマスク70を、エッチングチャンバーへの挿入前に、フォトリソグラフィープロセスによってシリコン基板22上に作製しておく。ハードマスク70は、例えば深さが100マイクロメートル、または、エッチング時間が1000秒である凹部のために、2.5マイクロメートルの厚みを有している。上記厚みは、約300ナノメートルのエッチング減耗分を含んでいる。トレンチ(例えば穴)は、円形の開口部74、内周面の側壁76、および、丸みを帯びたトレンチの底部78を有している。各トレンチは同時に同じ深さでエッチングにより形成される。本実施例においては、トレンチ72の深さTは、75マイクロメートルである。
【0044】
図3Aにも示すトレンチ72をエッチングにより形成するために、以下の一定のパラメータを維持した:
ガス圧 120μbar、
プラズマ電力 600ワット、
基板バイアス電圧 −220ボルト、
ヘリウムガスフロー 126sccm、
酸素ガスフロー 32sccm、
六フッ化硫黄ガスフロー 59sccm、および、
アルゴンガスフロー 84sccm
以下のエッチング結果が得られた:
トレンチ深さT:75マイクロメートル、
開口部74におけるトレンチ直径(最小幅寸法):10マイクロメートル、
開口領域:4%(3%〜5%)、
側壁76の傾斜角W1:87°、
または、側壁76の傾斜角W2:93°、および、
エッチング速度:6マイクロメートル/分
エッチングチャンバーにおいて、とりわけ、以下の反応または現象が生じた:
イオン、特に陽イオン80・82が、プラズマからトレンチの底部78まで基板バイアス電圧により加速される。トレンチの底部78において、上記陽イオンは、シリコン酸化膜の形成を防止する。
【0045】
プラズマ12の作用により、フッ素ラジカルF(矢印84参照)および硫黄ラジカルが、六フッ化硫黄SFから生じる。
【0046】
プラズマ12の作用により、酸素ラジカルO(矢印86参照)が、酸素分子から生じる。
【0047】
硫黄ラジカルと酸素ラジカルOの一部とが反応して硫黄酸化物SO(例えば、一酸化硫黄SOまたは二酸化硫黄SO(矢印88・90参照))となる。
【0048】
フッ素ラジカルFは、二酸化シリコンによって未だ被覆されていない、または、二酸化シリコンによって未だ充分には被覆されていない側壁76の場所で、シリコン基板22のシリコンと反応し、特にトレンチの底部78の周辺領域(矢印92参照)で、トレンチの底部78(矢印94参照)のシリコンと反応する。その結果、フッ化シリコンSiF(例えば、四フッ化シリコンSiF(矢印96・98参照))が生じる。
【0049】
酸素ラジカルOの他の部分は、フッ化シリコン化合物SIFと反応し、二酸化シリコンSiOを生成する。生成した二酸化シリコンSiOは、側壁76上に堆積する(矢印100・102・104を参照)。他の酸素ラジカルOは、シリコン基板22のシリコンとも直接反応し、二酸化シリコンSiOを生成する。
【0050】
トレンチ72の断面に沿ったSEM(Secondary Electron Microscopy )画像の再現を図3Aに示す。
【0051】
図3Bに、以下のプロセスパラメータを使用してエッチングにより形成した各トレンチ120〜126の断面に沿ったSEM画像の再現を示す。
ガス圧 93μbar、
プラズマ電力 700ワット、
基板バイアス電圧 −200ボルト、
ヘリウムガスフロー 131sccm、
酸素ガスフロー 35sccm、
六フッ化硫黄ガスフロー 53sccm、および、
アルゴンガスフロー 131sccm
以下のエッチング結果となった。
トレンチ深さT:56マイクロメートル、
開口部におけるトレンチ直径:10マイクロメートル、
開口領域:4%(3%〜5%)、
側壁76の傾斜角W1:89°
側壁76の傾斜角W2:91°
エッチング速度:4.5マイクロメートル/分
図3Cに、以下のプロセスパラメータを使用してエッチングにより形成した各トレンチ130〜136の断面に沿ったSEM画像の再現を示す。
ガス圧 120μbar、
プラズマ電力 800ワット、
基板バイアス電圧 −220ボルト、
ヘリウムガスフロー 122sccm、
酸素ガスフロー 50sccm、
六フッ化硫黄ガスフロー 66sccm、および、
アルゴンガスフロー 168sccm
以下のエッチング結果となった:
トレンチ深さT:68マイクロメートル
開口部におけるトレンチ直径:10マイクロメートル
開口領域:4%(3%〜5%)
側壁76の傾斜角W1:88°
側壁76の傾斜角W2:92°
エッチング速度:5マイクロメートル/分
実施例は、TCP(Transformer Coupled Plasma)プロセスチャンバーを用いた場合について説明したものである。同様な機能を有する他のプロセスチャンバー(プラズマ源)としては、とりわけ、ICP(Inductive Coupled Plasma source 、誘導結合プラズマ源)チャンバー、IPS(Inductive Coupled Plasma Source )チャンバーまたはDPS(Decoupled Plasma Source )チャンバーが挙げられる。
【0052】
これらの全ての各プロセスチェンバーのシステムは、1立方センチメートルにつき少なくとも1010個のイオンのプラズマ密度、好ましくは1011個のイオン/cmおよび1012個のイオン/cmの範囲内のプラズマ密度を有するHDP(High Density Plasma、高密度プラズマ)を生成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板(22)に凹部(72)を異方性エッチングにより形成する方法であって、
プラズマを使用して、反応性エッチングガスをエネルギー励起し、
上記反応性エッチングガスが、連続的に流れるガスフローの成分であり、
上記エッチング時に、上記ガスフローを中断することなく、少なくとも1つの凹部(72)を、少なくとも50マイクロメートル、または、少なくとも75マイクロメートル、または、少なくとも100マイクロメートルの深さに形成する方法。
【請求項2】
上記反応性エッチングガスは、フッ素またはフッ素化合物、好ましくは六フッ化硫黄SFおよび/または三フッ化窒素NF、特に単一種のフッ素化合物を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記反応性エッチングガスは、フッ素フリーの添加ガス、好ましくは酸化物形成剤、特に酸素分子を含み、
および/または、
フッ素フリーの添加ガスによる組成分、特に酸素ガスフローによる組成分は、全活性ガスフロー中、20%〜50%、または30%〜40%であり、好ましくは35%であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記エッチングガスは、単一種の不活性ガスもしくは希ガス、特にヘリウムもしくはアルゴン、または、複数種の不活性ガスもしくは希ガス、特にヘリウムおよびアルゴンを含み、
および/または、
上記アルゴンガスフローによる組成分は、全不活性ガスフロー中、25%〜65%または35%〜55%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
反応性エッチングガスを含む上記ガスフローによる上記組成分は、上記全ガスフロー中、20%〜40%の範囲内または25%〜35%の範囲内であり、好ましくは28%〜32%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
上記エッチング中の圧力は、0.05mbarまたは0.1mbarを上回り、好ましくは0.5mbarまたは0.25mbar未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
上記プラズマを、300ワット〜1200ワットまたは500ワット〜1000ワットの電力で、特に600ワットの電力で生成し、
上記プラズマを生成するための周波数は、好ましくは100MHz未満であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
基板電圧を、50ワットまたは60ワットを上回り、好ましく70ワットを上回り、好ましくは700ワット未満である電力で生成し、
および/または、
基板バイアス電圧を、150ボルトまたは180ボルトまたは210ボルトを上回り、好ましくは600ボルト未満の値で生成し、
上記基板バイアス電圧を生成するための周波数は、好ましくは100MHz未満であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
以下の値:
ガス圧 120μbar
プラズマ電力 600ワット
基板バイアス電圧 −220ボルト
ヘリウムガスフロー 126sccm
酸素ガスフロー 32sccm
六フッ化硫黄ガスフロー 59sccm
アルゴンガスフロー 84sccm
もしくは上記値から最大で±5パーセントまたは最大で±10パーセント相違する値をとり、好ましくは他の添加ガスを使用しない、
または、
以下の値:
ガス圧 93μbar
プラズマ電力 700ワット
基板バイアス電圧 −200ボルト
ヘリウムガスフロー 131sccm
酸素ガスフロー 35sccm
六フッ化硫黄ガスフロー 53sccm
アルゴンガスフロー 131sccm
もしくは上記値から最大で±5パーセントまたは最大で±10パーセント相違する値をとり、好ましくは他の添加ガスを使用しない、
または、
以下の値:
ガス圧 120μbar
プラズマ電力 800ワット
基板バイアス電圧 −220ボルト
ヘリウムガスフロー 112sccm
酸素ガスフロー 50sccm
六フッ化硫黄ガスフロー 66sccm
アルゴンガスフロー 168sccm
もしくは上記値から最大で±5パーセントまたは最大で±10パーセント相違する値をとり、好ましくは他の添加ガスを使用しないことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
上記凹部(72)は、溝または穴であり、
および/または、
上記凹部(72)の開口縁部における最小幅寸法および上記凹部(72)の上記連続的にエッチングされた深さ(T)のアスペクト比は、8:1または10:1を上回り、
および/または、
上記凹部(72)の上記開口縁部における最小幅寸法は、20マイクロメートル未満または10マイクロメートル未満であり、
および/または、
上記凹部(72)が形成される上記基板表面における、元の面積サイズに対する上記凹部(72)の上記開口部または上記凹部(72)の上記複数の開口部の割合は、20%未満または10%未満または5%未満であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
上記凹部の開口縁部を含む上記基板表面への距離が大きくなるに伴い先細りするテーパー形状の上記凹部の側壁の傾斜角(W2)は、91度を上回り、92度を上回り、または93度を上回り、好ましくは110度未満であり、好ましくはガスフロー中の酸素の割合によって設定されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
エッチングマスク(70)、特に二酸化シリコンによるエッチングマスクを使用して、上記凹部(72)の形成位置を規定することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
シリコン含有ガス、特にシリコンおよびフッ素を含む化合物を有するガスを、エッチングに利用されるエッチングチャンバーへ外部から導入しないことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
上記ガスフローの全流量は、200〜500sccm、または、250〜350sccm、好ましくは295〜305sccmであり、
および/または、
上記エッチングチャンバーの上記チャンバー体積は、30リットルであり、
または、
上記ガスフローの全流量は、滞留時間を同一に維持したままで異なるチャンバー体積に換算されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法に基づくプラズマエッチングシステム(10)の使用方法であって、
上記プラズマエッチングシステム(10)のエッチングチャンバーへ流入するガスを中断することなく、連続的に流れるガスフローによって、50マイクロメートルを上回る、または、75マイクロメートルを上回る、または、100μメートルを上回る深さ(T)を有する少なくとも1つの凹部(72)をエッチングにより形成するための使用方法。
【請求項16】
上記プラズマエッチングシステムは反復エッチングのための制御ユニットを備えていないことを特徴とする請求項15に記載の使用方法。
【請求項17】
上記ガスフローの組成を、上記凹部のエッチング中において同一に維持し、
および/または、
上記ガスフローの流量値を、上記凹部のエッチング中において同一に維持することを特徴とする請求項15または16に記載の使用方法。
【請求項18】
上記プラズマエッチングシステム(10)は、エネルギーが誘導的に結合されて導入される、または、マイクロ波放射における放射によって導入されるプラズマ源(24,50)を用いるシステムであることを特徴とする請求項15〜17のいずれか1項に記載の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公開番号】特開2012−146991(P2012−146991A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−36687(P2012−36687)
【出願日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【分割の表示】特願2006−519909(P2006−519909)の分割
【原出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(501209070)インフィネオン テクノロジーズ アーゲー (331)
【氏名又は名称原語表記】INFINEON TECHNOLOGIES AG
【Fターム(参考)】