説明

シリコーンゴム成型品表面に加飾する方法及びその方法で得られた加飾シリコーンゴム成型品

【課題】シリコーンゴム表面の密着性を向上させて、塗装、蒸着、接着、熱圧着などを効果的に行うシリコーンゴム表面の加飾方法及びその方法で得られた加飾シリコーンゴム成型品を実現する。
【解決手段】シリコーンゴム成型品を加熱し2次加硫して揮発分を減じる工程と、表面を洗浄する工程と、表面に火炎噴射装置101によって、有機ケイ素化合物含有燃焼用ガスを燃焼した酸化ケイ素を含む火炎の処理活性が高い火炎反応帯を当てて火炎処理を行い、該表面に水酸基を生成し親水性及び密着性を向上させる工程と、塗装、蒸着、熱転写、印刷及びシール接着の加飾技術いずれか1つ又は2つ以上の組み合わせで加飾し、さらに、柔軟性があり、耐傷つき性のある塗膜を形成するトップコートをシリコーンゴム成型品の表面に加飾する工程とによって、シリコーンゴム成型品を加飾する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンゴム成型品表面に加飾する方法及びその方法で得られた加飾シリコーンゴム成型品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成型品表面に加飾する技術は、いろいろ知られている。例えば、エラストマー樹脂の成型品の加飾方法において、エラストマーの材質としてシリコーンゴムを使用する技術が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
エラストマーの表面に硬い膜を作り(塗装、印刷、熱転写)、その上に蒸着する技術が知られている(特許文献2参照)。また、エラストマー材料に対する物理蒸着において、真空時の揮発する物質の量を制限することと、低分子量物質を吸着させる充填剤が入っているエラストマーを使用することが知られている(特許文献3参照)。
【0004】
柔軟な層(10〜150ミクロン)の表面に金属光沢を有する表示体について、柔軟な層の材料としてシリコーン系樹脂を使用する点が知られている(特許文献4参照)。
【0005】
シリコーンゴム表面にポリパラキシリレン皮膜を気相蒸着重合する点が知られている(特許文献5参照)。また、エラストマーなどの軟質基材に対する金属光沢をもつ金属調軟質成形体が知られている(特許文献6参照)。
【0006】
シリコーンゴムのコーティング法であって、プライマーとしてアミノシラン化合物を使用し、アミノ基と反応性を有する反応型の有機系コーティング剤としてウレタン系を使用する技術が知られている(特許文献7参照)。また、シリコーンゴム成型品の製造方法において、低分子シロキサンを除去する方法が知られている(特許文献8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−1159号公報
【特許文献2】特許4521685号公報
【特許文献3】特開2005−75918号公報
【特許文献4】特開2001−312232号公報
【特許文献5】特開1994−313059号公報
【特許文献6】特開2006−26946号公報
【特許文献7】特許2997302号公報
【特許文献8】特開2004−9391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シリコーンゴムは、物性的に安定であり成形もし易いが、その表面が密着の悪い樹脂として知られている。従って、シリコーンゴム成型品の表面に加飾するのはきわめて困難であり、従来、上記特許文献7に示すように、成型品の表面にアミノシラン化合物等でプライマー処理を行ってからウレタン塗料を塗装する等、行っていた。
【0009】
本発明は、シリコーンゴム表面の密着性が悪い点を克服し、密着性を向上させて、塗装、蒸着、接着、熱圧着等の加飾技術を効果的に行い、加飾表面の品質を向上させるシリコーンゴム表面の加飾方法及びその方法で得られた加飾技術を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するために、シリコーンゴム成型品の表面を加飾するシリコーンゴム成型品の加飾方法であって、シリコーンゴム成型品を加熱し2次加硫することにより、シリコーンゴム成型品内に含有されている揮発分を減じる工程と、シリコーンゴム成型品の表面を洗浄する工程と、シリコーンゴム成型品の表面に、有機ケイ素化合物含有燃焼用ガスを燃焼した酸化ケイ素を含む火炎の処理活性が高い火炎反応帯を当てて火炎処理を行って改質することにより、該表面に水酸基を生成し、さらに酸化ケイ素のナノサイズの粒子を付着させ、親水性及び密着性を向上させる工程と、塗装、蒸着、熱転写、印刷及びシール接着のいずれか1つの加飾技術又は2つ以上の加飾技術の組み合わせを使用することによって、シリコーンゴム成型品の表面を加飾する工程と、を含み、前記加飾する工程は、シリコーンゴム成型品の表面にベースコートを形成し、該ベースコートの表面に前記加飾技術の1つ又は2つ以上の組み合わせにより加飾し、この加飾された表面にトップコートを形成することから成るか、又は、直接シリコーンゴム表面に、前記加飾技術で加飾し、この加飾された表面にトップコートを形成することから成ることを特徴とするシリコーンゴム成型品の加飾方法を提供する。
【0011】
本発明は上記課題を解決するために、シリコーンゴム成型品の表面が加飾されて成る加飾シリコーンゴム成型品であって、加飾されるシリコーンゴム成型品は、加熱して2次加硫されることにより、揮発分が減じられ、その表面は、洗浄後、有機ケイ素化合物含有燃焼用ガスを燃焼した酸化ケイ素を含む火炎の処理活性が高い火炎反応帯が当てられる火炎処理により、水酸基が生成され、親水性及び密着性が向上されたものであり、シリコーンゴム成型品の表面は、塗装、蒸着、熱転写、印刷及びシール接着のいずれか1つの加飾技術又は2つ以上の加飾技術の組み合わせを使用することによって、加飾されており、この加飾は、シリコーンゴム成型品の表面にベースコートを形成し、該ベースコートの表面に前記加飾技術の1つ又は2つ以上の組み合わせにより行われ、この加飾された表面にトップコートを形成することから成るか、又は、直接シリコーンゴム表面に、前記加飾技術で加飾し、この加飾された表面にトップコートが形成されて成ることを特徴とするシリコーンゴム成型品を提供する。
【0012】
トップコートとして、2液の熱硬化塗料を使用して塗膜を形成し、その塗膜物性は、膜厚30〜50μmで伸び率が250%以上、耐擦傷性の指標であるスチールウールラビングテストでヘイズ値が0.7以下であることが好ましい。
【0013】
火炎処理では、ライン状バーナ火炎の横幅1cm当たりの1分間の熱量である火力は8.0kcal以上とし、有機ケイ素化合物の量は、バーナの横幅1cm当たりの1分間の火力に対して0.000007モル以上導入されて行われることが好ましい。
【0014】
加飾する工程で使用する塗装は、柔軟性があり、耐傷つき性の塗膜を形成する2液熱硬化塗料を使用することが好ましい。
【0015】
加飾する工程で使用する塗装は、柔軟性のある塗料に、着色顔料を加えてコートしたのち、柔軟性があり、耐傷つき性のある塗料をコートする、又は柔軟性のある艶消し塗料、若しくはそれに着色顔料を加えたものでコートすることが好ましい。
【0016】
加飾する工程で使用する塗装は、1層目に偏光顔料、パール顔料又は蛍光顔料、グリッター(粒子径が100μm以上の特殊顔料)を加えた塗料をコートし、その上に2層目として、耐傷つき性のある透明塗料をコートすることが好ましい。
【0017】
蒸着においては、ベースコートの形成は、蒸着金属が密着し易い塗料を使用して塗装し、
蒸着は、10−3〜10−4Paの真空圧の蒸着釜内で、シリコーンゴム成型品の表面に追随する付着性が良く、不連続膜を生成する金属(インジウム、すずなど)を、シリコーンゴム成型品に金属を蒸着し、トップコートの形成は、耐傷つき性塗料に、着色顔料を加えた塗料を使用する。
【0018】
熱転写は、熱転写フイルムを密着させ、真空中で熱をかけ転写する又はアイロンプレスで行うことが好ましい。
【0019】
印刷において使用するインクは、シリコーンゴム成型品の柔らかい表面に追随可能である皮膜物性を有することが好ましい。印刷としては、スクリーン印刷、インクジェット印刷などが好ましい。
【0020】
接着においては、シールは、シリコーンゴム成型品の柔らかく伸縮する表面に追随可能であるものを使用する又はシリコーンゴム成型品の表面が伸縮しても、それにより歪みやずれ等の悪影響を受けることの少ない、面積の小さいものを使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、加飾されるシリコーンゴム成型品に含まれる揮発分等を、2次加硫によって除去し、さらに、シリコーンゴム成型品の表面を、ケイ酸化炎を形成できる火炎噴射装置で火炎処理を行って表面改質を行い、親水性、密着性を向上させ、塗装、蒸着、接着、熱圧着等の加飾技術を施すことで、加飾表面の品質を向上させることが可能となる。
【0022】
特に、加飾されるシリコーンゴム成型品の表面に、柔軟性の高い熱硬化系のコーティング剤をベースコートすれば、塗装したり、蒸着したり、フイルムを貼ったり、印刷したり、シールを接着したりすることを可能とし、さらに耐傷つき性を有するトップコードを施せば、ゴムの柔らかさを損なわないシリコーンゴム成型品の加飾シリコーンゴム成型品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明において加飾されるシリコーンゴム成型品の表面を改質する表面改質用火炎噴射装置を説明する図である。
【図2】加飾されるシリコーンゴム成型品の表面を改質する表面改質用火炎噴射装置のバーナから噴射した火炎の構成をシリコーンゴム成型品への当て方を示す図である。
【図3】本発明において加飾されるシリコーンゴム成型品の表面を改質するための別の表面改質用火炎噴射装置を説明する図である。
【図4】図3に示す別の表面改質用火炎噴射装置の構成を説明する図であり、(a)はバーナの構成を示す図であり、(b)はベンチュリミキサの構成を示す図である。
【図5】図3に示す別の表面改質用火炎噴射装置のバーナの構成を説明する図であり、(a)はバーナの前面を示す図であり、(b)はベンチュリミキサの構成を示す図であり、(c)は(b)の一部拡大図である。
【図6】本発明におけるケイ酸化化炎処理の条件の根拠となる実験の結果を示す表である。
【図7】シリコーンゴム中の揮発分とその処理及び塗装への影響を示す実験結果の表である。
【図8】トップコートとして使用する2液熱硬化型塗料の塗膜性能及び他の塗料について測定し、それらの測定値を比較した表を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係るシリコーンゴム成型品表面に加飾する方法及びその方法で得られた加飾シリコーンゴム成型品を実施するための形態を実施例に基づき図面を参照して、以下説明する。
【0025】
本発明にいては、シリコーンゴム成型品の表面に加飾する加飾技術として、塗装、蒸着、印刷、接着、熱圧着等がある。ここで、接着は、シール(本明細書では、シールはラベルも含む)を張ったりする加飾技術である。
【0026】
ところで、シリコーンゴムは、その表面への密着の悪い樹脂として知られている。このような密着性の悪い表面に加飾を安定かつ効果的に施す必要がある。また、そのような加飾技術を施して得られた加飾シリコーンゴム成型品は、その加飾表面に耐傷つき性があり、シリコーンゴムの柔軟性を失わないようにする必要がある。
【0027】
本発明者は、このようなニーズをすべて満たすために、研究開発を鋭意行った結果、シリコーンゴム成型品の表面処理、シリコーンゴム基材、加飾技術・加飾材料(塗装、蒸着、印刷等の加飾技術、及びそれらに使用する塗料、コーティング剤、インク等)の3つの観点において、少なくとも次のような必要性があり、これらが充たされると、シリコーンゴム成型品の加飾が安定かつ効果的に行えることができるという知見を得た。よって、本発明は、これらの条件を有することを特徴とする。
【0028】
1.火炎処理による成型品表面の改質
シリコーンゴム成型品の表面を、ケイ酸化炎(酸化ケイ素を多量に含有する火炎)を形成できる火炎噴射装置で火炎処理を行い表面改質を行う。この火炎処理において、酸化ケイ素を多量に発生する条件で、火炎の処理活性が高い火炎反応帯を、シリコーンゴム成型品の表面に当てて火炎処理し、シリコーンゴム成型品の表面に親水性(水にぬれやすい)、密着性を付与する改質を行う必要がある。
【0029】
2.シリコーンゴム基材
本発明におけるシリコーンゴム成型品は、その基材としてミラブル系シリコーンゴムを使用するが、ミラブル系シリコーンゴムは、通常、低分子シロキサン、その他顔料分散用添加剤等の揮発分を含有している。また、液状シリコーンゴムで作成できる成型品も使用できる。液状シリコーンゴムもミラブル系シリコーンゴムと同様の含有物を含有している。
【0030】
これらの含有物は、塗膜外観や蒸着工程などにおいて、泡やブツ(表面の脹れ)などが生じる不具合の原因となる。このようなことからしても、従来は、加飾シリコーンゴム成型品表面に加飾を施しにくかった。そこで、本発明では、シリコーンゴム成型品を、加飾前に、加熱処理により2次加硫を行い、含有している揮発分を減らす必要がある。
【0031】
なお、揮発分をすでに管理した(減らした)シリコーンゴム基材(原材料)を用いて、シリコーンゴム成型品が成形されたものあってもよい。或いは、それが加熱処理により2次加硫されて、含有している揮発分がさらに減らされているものであってもよい。
【0032】
3.加飾技術・加飾材料
例えば、塗装等の加飾技術を施しても、成型品の保護の性能がないと市場で使えるものとはならない。また、シリコーンゴムの柔らかさに追随できない加飾技術、例えば塗膜では、使用に際し、塗膜が割れたり、白く濁ったり、加飾表面に不具合が生じる。よって、塗料、蒸着材、インキ、熱転写フイルム、接着シール等は、耐傷つき性を有するとともに、シリコーンゴムの柔らかさに追随する柔軟性が必要である。
【0033】
なお、ベースコートを施し、その面に塗装、蒸着、印刷、熱転写、接着等の加飾技術を施すと、より多く色、模様等を付すことのできる加飾が可能となる。また、加飾表面にさらにトップコートとして、透明コートを施すと、加飾表面の弱さを改善することができる。例えば、トップコートとして柔軟性があり、耐傷つき性を有する塗膜を作成する熱硬化塗料をコートする。
【実施例1】
【0034】
以下、本発明に係るシリコーンゴム成型品表面に加飾する方法及びその方法で得られた加飾シリコーンゴム成型品を、その実施例において具体的に説明する。
【0035】
(火炎処理による成型品表面の改質)
本発明のシリコーンゴム成型品表面に加飾する方法及びその方法で得られた加飾シリコーンゴム成型品では、シリコーンゴム成型品表面を火炎噴射により改質することが必要である。
【0036】
火炎噴射装置の基本的な構成:
表面改質のためにケイ酸化炎を形成でき、しかも火炎噴射を安定して行わせる火炎噴射装置については、本出願人は別途、特願2011−94599で提案している。本発明では、火炎噴射装置自体の発明ではないが、本発明のシリコーンゴム成型品表面の加飾では、火炎処理を前提とし、かつその処理条件等はきわめて重要な要件であるから、火炎処理に必要な火炎噴射装置についても、その構成、処理方法等について、概要を以下説明しておく。
【0037】
図1は、本発明の表面改質のための火炎噴射装置の基本的な構成を説明する図である。この基本的な構成を有する火炎噴射装置1は、主に、空気供給系2と、燃料ガス供給系3と、有機ケイ素化合物供給系4と、バーナ6と、を備えている。
【0038】
空気供給系2は、空気供給源におけるエアコンプレッサ10からマスフローコントローラ(流量調節弁)11を途中に備えた空気供給管12を通して空気燃料ガスミキサに供給する。
【0039】
燃料ガス供給系3は、燃料ガスをその供給源(LPG―プロパン、DMEなどの貯蔵タンク、都市ガス供給配管等)15から、プロテクトリレー一体型開閉弁16、マスフローコントローラ17を途中に備えた燃料供給配管18を通してベンチュリミキサ20に供給する。
【0040】
ベンチュリミキサ20は、上流側に空気燃料ガスミキサ21が設けられており、下流側に燃焼用ガス有機ケイ素化合物ミキサ22が設けられている。空気と燃料ガスは、空気燃料ガスミキサ21において混合され、燃焼用ガス有機ケイ素化合物ミキサ22に供給される。
【0041】
有機ケイ素化合物供給系4は、液状の有機ケイ素化合物をその貯蔵部である貯蔵タンク25から適宜ベーパライザ26に供給し、ベーパライザ26において、気液平衡を利用して、加熱手段27で加熱し又は自然蒸発により蒸発させてガス化し、有機ケイ素化合物のガスを発生する。
【0042】
発生した有機ケイ素化合物は、ガスマスフローコントローラ28を途中に備えた空気供給管13(キャリアーガスである空気を導入する導入管)からの空気とともに、有機ケイ素化合物供給管29を通して燃焼用ガス有機ケイ素化合物ミキサ22に供給される。なお、30は、貯蔵タンク25の液面センサであり、31は、ベーパライザ26の液面センサである。
【0043】
この燃焼用ガス有機ケイ素化合物ミキサ22において、燃焼用ガスと有機ケイ素化合物を混合して有機ケイ素化合物含有燃焼用ガスとし、このガスを改質ガス供給管35を通してバーナ6に供給する。
【0044】
バーナ6には、燃焼用ガスの点火と火炎40を検知するための、火炎点火検知両用プラグ37が、バーナ6の前方にバーナ6に向けて突出するように設けられている。点火用電源36からの電流により火炎点火検知両用プラグ37で点火されて、バーナ6の噴射孔38から噴射される燃焼用ガスに着火されて、シリコーンゴム成型品表面39に表面に火炎40を噴射することができる。
【0045】
また、火炎点火検知両用プラグ37は、火炎が存在する際に、点火用電源36から火炎を介して火炎点火検知両用プラグ37からバーナ6に流れ、アース41に流れ込む電流を、検知電流検出器42で検出する。
【0046】
火炎を用いる表面処理において、処理効率を良くするためには、火炎における処理活性の高い部分(これを「火炎反応帯」という)を表面に当てる必要がある。本発明の表面改質用火炎噴射装置1のバーナ6から噴射した火炎56の構成を、図2(a)に示す。
【0047】
この火炎56は、本発明の機能、効果を説明するために、通常の火炎における内炎と外炎の区分とは異なり、便宜的に、内炎57、火炎反応帯58及び外炎59から成るものとして説明する。
【0048】
火炎反応帯58は、バーナ6の噴射孔7から1〜5cm程度の範囲の火炎の中心部である。この火炎反応帯58は、有機ケイ素化合物から発生した5〜30nm程度のナノレベルの微細な二酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素の周囲に生成された水酸基(−OH)、水酸ラジカル(・OH)等が多く存在し、処理活性が高く、シリコーンゴム成型品表面の親水性(濡れ性)、接着性について、改質効果が大きい。
【0049】
一方、火炎の外炎59(火炎の表層の炎)は、空気と触れており、いわゆる酸化炎(一酸化炭素・水素・炭素などが完全燃焼している部分)となっているので、処理活性は低減している。また、外炎59では二酸化ケイ素も凝集し、50nm以上と粒径が大きくなっている。内炎57は、噴射孔7から噴射した直後の部分であり、処理活性は、火炎反応帯58に比較して少ない。
【0050】
そこで、本発明の表面改質方法は、表面改質用火炎噴射装置1を使用してシリコーンゴム成型品60の表面に噴射する際には、図2(b)に示すように、バーナ6を、シリコーンゴム成型品60の表面から2cm程度離して、シリコーンゴム成型品60の表面に沿って平行に、相対的に移動する(バーナ6又はシリコーンゴム成型品60を移動する)。
【0051】
このようなケイ酸化炎がシリコーンゴム成型品表面39に表面に噴射されると、有機ケイ素化合物について、火炎内で生成される二酸化ケイ素(SiO)のナノレベルの微粒子がシリコーンゴム成型品の表面に付着される。
【0052】
そして、二酸化ケイ素(SiO等)の表面に水酸基(OH)がある。特に、水酸基は親水性であることから、シリコーンゴム成型品表面に親水性を付与する等の改質を行うことができる。また、火炎中のOHラジカルの作用により、シリコーンゴム成型品表面を酸化し、水酸基(OH)、カルボキシル基(COOH)が生成し、このことも表面の親水性付与の要因となっている。
【0053】
以上のとおり、処理活性が高い火炎反応帯58をシリコーンゴム成型品60に当てることで、バーナ6から、ナノレベルの微細な二酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素の周囲に生成された水酸基(−OH)、水酸ラジカル(・OH)等が多く存在し、処理活性が高い火炎をシリコーンゴム成型品60に当てることができるので、周囲に水酸基(−OH)の生成されたナノレベルの微細な二酸化ケイ素をシリコーンゴム成型品60の表面に付着させ、高い処理効率でシリコーンゴム成型品60の表面を改質することが可能となる。
【0054】
火炎噴射装置の別の構成:
図3は、火炎噴射装置の別の構成を示す。図3に示す表面改質用火炎噴射装置101は、上記基本的構成として説明した表面改質用火炎噴射装置1とほぼ同じ構成であるが、バーナ構造、火炎検知プラグの取り付け配置、バーナへの燃焼用ガス及び有機ケイ素化合物含有燃焼用ガスの供給手段等において、新規な構成を備えている。表面改質用火炎噴射装置101は、主に、空気供給系102と、燃料ガス供給系103と、有機ケイ素化合物供給系104と、バーナ105と、を備えている。
【0055】
バーナ105は、図4(a)に示すように、全体としては、長細いほぼ矩形の筺体の形状をしており、前壁106には、複数の噴射孔107が形成されている。そして、バーナ105内には前後方向(火炎を噴射する方向)に向けて伸びる隔壁108が設けられており、この隔壁108により、バーナ105が、主バーナ室111と副バーナ室112に分割されている。副バーナ室112は、主バーナ室111に較べると横幅が小さく、小さな空間を有している。
【0056】
110は整流板(「邪魔板」とも言う)であり、全面に多数の小さな貫通孔が形成されており、バーナ105内に導入された燃焼ガスを多数の貫通孔から前方に送流し、バーナ105内で一方向に偏向して流れることなく、均等に複数の噴射孔107から噴射されるように整流する機能を有する。
【0057】
副バーナ室112の前方には、火炎点火検知両用プラグ115が設けられている。この火炎点火検知両用プラグ115は、図5(a)〜(c)に示すように、火炎点火検知両用プラグ115は、その支持部119が副バーナ室112の上部前方に設けられている。支持部119で支持された火炎点火検知両用プラグ115が金属製のバーナ105の前面に向けて対向するように配置されている。火炎点火検知両用プラグ115は点火用電源118に接続され、バーナ105はアースされている。
【0058】
そのため、火炎点火検知両用プラグ115に、点火用電源118によって電圧を印加することで火炎点火検知両用プラグ115とバーナ前面との間にスパークし、これによって、燃焼ガスに点火可能である。そして、火炎が存在すると、火炎点火検知両用プラグ115とバーナ前面との間に電流が流れ、アース120まで電流が流れ込む。この電流を検知電流検出器114で検出することで、火炎の存在を検知することが可能となる。
【0059】
空気供給系102は、空気供給源におけるエアコンプレッサ130からエアドライヤ(空気乾燥器)131及びマスフローコントローラ132を途中に備えた空気供給管133を通して空気燃料ガスミキサ134に供給する。エアドライヤ131は、エアコンプレッサ130から送られてくる空気を加熱することにより、空気中に含まれる水分を低減する装置である。
【0060】
この表面改質用火炎噴射装置101では、空気供給系102にエアドライヤ131を設けることで、空気の含有水分を低減し、空気の品質を一定に保持することができるので、改質のバラツキとなる要因を除去でき、安定した改質を行うことが可能となる。
【0061】
マスフローコントローラ132は、空気流量を計測し供給流量を精密に制御する装置であり、周知のマスフローコントローラを使用すればよいが、ここでは概要を説明すると、センサ部と、センサ部から出力された流量信号を外部からの流量設定信号との比較しその開度が高速、高分解能で制御される電磁弁とから成る。
【0062】
燃料ガス供給系103は、燃料ガスをその供給源(例.貯蔵タンク、都市ガス供給配管等)129から開閉弁139及びマスフローコントローラ136を途中に備えた燃料供給管137を通してベンチュリミキサ135に供給する。
【0063】
ベンチュリミキサ135は、図4(b)に示すように、上流側に空気燃料ガスミキサ134が設けられており、下流側に燃焼用ガス有機ケイ素化合物ミキサ146が設けられている。空気と燃料ガスは、空気燃料ガスミキサ134において混合され燃焼用ガスとなる。この燃焼用ガスは、その一部は、副燃焼用ガス供給管138を介して副バーナ室112に供給され、残りは燃焼用ガスを燃焼用ガス有機ケイ素化合物ミキサ146に供給される。
【0064】
この表面改質用火炎噴射装置101では、空気供給系102及び燃料ガス供給系103に、それぞれガスの温度に左右されずに精密な流量計測が可能なマスフローコントローラ132、136を設け、空気及び燃料ガスをそれぞれ精密に流量制御することができるので、空気と燃料ガスの流量を一定の比率に正確に保持できる。これにより、火炎品質を安定させることが可能となる。
【0065】
有機ケイ素化合物供給系104において、液状の有機ケイ素化合物をその貯蔵部である貯蔵タンク140から適宜ベーパライザ(気化器)141に供給するとともに、エアドライヤ(空気乾燥器)131から、空気供給管133によってマスフローコントローラ143を通り、量をコントロールした空気をベーパライザ(気化器)141に供給する。ベーパライザ141において、加熱手段142で加熱し、気液平衡を利用して、蒸発させてガス化する。
【0066】
そして、この有機ケイ素化合物のガスを、有機ケイ素化合物供給管144を通して燃焼用ガス有機ケイ素化合物ミキサ146に供給する。有機ケイ素化合物供給管144の途中には、開閉バルブ145が設けられており、有機ケイ素化合物の供給及び停止を制御可能とする。なお、147は、液状の有機ケイ素化合物の貯蔵部である貯蔵タンクの液面センサであり、148は、ベーパライザの液面センサである。
【0067】
この表面改質用火炎噴射装置101では、このベーパライザ141において、液状の有機ケイ素化合物の温度を加熱器142で一定に温度制御することで、有機ケイ素化合物の気化量を安定に保持するように構成した。
【0068】
加えて、有機ケイ素化合物供給系104にマスフローコントローラ143を設けたので、有機ケイ素化合物のガスを所定の供給量にコントロールして、燃焼用ガス有機ケイ素化合物ミキサ146に供給することができる。
【0069】
これらベーパライザ141における温度制御及びマスフローコントローラ143による供給量のコントロールによって、燃焼用ガス中の空気(有機ケイ素化合物のキャリアー空気としても機能する)に対する濃度等を安定して供給することができる。
【0070】
この燃焼用ガス有機ケイ素化合物ミキサ146では、図4(b)に示すように、空気燃料ガスミキサ134から送られてくる燃焼用ガスと有機ケイ素化合物を混合して有機ケイ素化合物含有燃焼用ガスとし、主燃焼ガス供給管150を通してバーナ105の主バーナ室111に供給する。
【0071】
バーナ105には火炎点火検知両用プラグ115が付設されており、この火炎点火検知両用プラグ115は、点火用電源118に接続されている。火炎点火検知両用プラグ115によって、主バーナ室111及び副バーナ室112の噴射孔107から噴射される燃焼用ガスが着火されて、バーナ105の、加工物表面に火炎を噴射することができる。
【0072】
上記火炎の着火、燃焼の過程は、より詳細には次のとおりである。着火に際しては、有機ケイ素化合物供給管144の開閉バルブ145を閉じておき、バーナの主バーナ室111及び副バーナ室112に燃焼用ガス(空気と燃焼ガスの混合物)のみを送給し、主バーナ室111及び副バーナ室112の噴射孔107から噴射させる。
【0073】
そして、副バーナ室112の前方に設けられた火炎点火検知両用プラグ115にスパークを起こし、副バーナ室112からの燃焼ガスを着火し、それがさらに主バーナ室111からの燃焼ガスに燃え広がり、燃焼用ガスの燃焼による青白い火炎を形成する。
【0074】
火炎が安定したところで、次に、有機ケイ素化合物供給管144の開閉バルブ145を開けると、燃焼用ガス有機ケイ素化合物ミキサ146から主バーナ室111にのみ有機ケイ素化合物が供給され、主バーナ室111からの燃焼ガスの火炎中に有機ケイ素化合物が導入され燃焼反応によって薄赤色の濁った処理用の活性火炎となる。
【0075】
このような有機ケイ素化合物含有火炎が加工物表面に噴射されると、有機ケイ素化合物について、火炎内で生成される二酸化ケイ素(SiO)のナノレベルの微粒子が加工物の表面に付着される。具体的に、燃焼すると火炎においては次のとおりの火炎反応が生じる。
【0076】
有機ケイ素(Si−CR)+酸素(空気)+LPG(液化石油ガス)
→SiO+HO(水蒸気)+CO(二酸化炭素)
なお、実際は、火炎中の火炎反応帯では、SiO、HO、CO以外にも、Si、SiO、OH、・OH(水酸ラジカル)、O、H、CO等が存在する。
【0077】
そして、SiO(二酸化ケイ素)が水分と反応して、SiOの周囲に水酸基(−OH)が多数生成され、これらが加工物の表面に付与される。このような水酸基は親水性であるから、周囲に水酸基(−OH)の形成されたSiOが加工物の表面に付与されると、加工物表面は、親水性を帯びることとなる。
【0078】
また、加工物が有機物の場合、火炎の酸化力により、表面に水酸基やカルボキシル基カルボニル基が生成する。これらの極性基の生成も、表面の親水性、密着性の向上に寄与している。また、表面上のナノレベルの活性酸化ケイ素(水酸基を有する酸化ケイ素)の存在は、加工物表面に微細なでこぼこ、凹凸表面を付与し、これによる毛細管現象等の物理的効果も生じ、親水性に寄与している。
【0079】
密着性向上に関しては、圧倒的な濡れ性が関与している。極性の高い(塗料、接着剤、インキなど)塗布剤が、極性の高くなった表面に、ナノレベルで濡れることにより、表面との反応が十分可能になり、より多くの官能基が反応し、強く密着すると考えられる。
【0080】
また、金属の場合は、表面の微細な隙間に塗布剤が入り込み、アンカー効果が発生し
密着を向上させているとも考えられる。また、金属用の塗布剤には、シランカップリング剤のような、密着付与剤が入っていることが多く、この密着付与剤の効果を表面に集中させることにより密着を向上させているとも考えられる。
【0081】
以上により、コーティング剤、塗料、インキ、接着剤等を付着し易くなる。さらに、加工物の表面に極性基と水酸基を多く含む二酸化ケイ素を付与することで、特に、加工物がプラスチックの場合、帯電防止効果が生じる。
【0082】
この表面改質用火炎噴射装置101の最も特徴的な構成は、火炎点火検知両用プラグ115を、副バーナ室112から噴射される有機ケイ素化合物を含有しない火炎を検知する位置に配置し、有機ケイ素化合物を含有しない火炎を検知するようにした点である。
【0083】
このような構成とすることで、火炎点火検知両用プラグ115は、酸化ケイ素を含まない火炎に当たるので、酸化ケイ素が付着して絶縁体となることはない。従って、火炎点火検知両用プラグ115は、火炎があっても火炎がないと検知するような誤動作を起こすことは防止できる。
【0084】
また、この表面改質用火炎噴射装置101では、図5(b)、(c)に示すように、バーナ105の前壁106の前面109の周縁に保炎壁(リテンション壁)155が前方に向けて2〜5mm程度突出するようにボルト等でバーナ105の前壁106の前面109に固定して設けられている。この保炎壁155は、バーナ105の前壁106の前面の周縁から前方に向けて、徐々にすぼむ、即ち、保炎壁155は、その開口面積が徐々に小さくなるように、断面視で傾斜するように傾斜角度θが付けられて形成されている。
【0085】
このような保炎壁155を前壁106の前面109の周縁から突出するように設ける構成とすることで、噴射孔107から噴射された燃焼用ガスが着火された火炎156を、前方に向けて絞りこんで、集中火炎として加工物の表面に向けて噴射する。この保炎壁155の前方に向けて絞り込むための傾斜角度θを適切な角度に形成することで、火炎156の集中度合いを調整して、火炎156による加熱効率を高め、加工物の表面の改質を効果的行うことが可能となる。
【0086】
ところで、火炎の火力(ライン状バーナ火炎の横幅1cm当たりの1分間の熱量)が高いほうが安定した処理効果が得られる。また、有機ケイ素化合物の火炎中に導入する量も多いほうが好ましい。例えば、ライン状バーナ火炎の横幅1cm当たりの1分間の熱量である火力は8.0kcal以上とし、有機ケイ素化合物の量は、バーナの横幅1cm当たりの1分間の火力に対して0.000007モル以上導入することが好ましい。
【0087】
図6は、上記条件を裏付けるために、表面改質用火炎噴射装置101を使用して行ったケイ酸化炎処理についての実験データであり、火力、有機ケイ素化合物添加量(表中の「添加剤量」)、火炎を当てるスピード、火炎を当てる回数等の条件を変えて、密着性及びシリコーンゴム加飾後の加飾表面の外観について得られた結果を示す表である。
【0088】
この実験では、バーナサイズが横幅が10cmと15cmの火炎噴射装置でシリコーンゴム成型品表面の火炎処理をおこなった。ここで、火力=ガス量/バーナの横幅(cm)・min×24Kcal(ガス1リットルの発熱量)であり、ガスに対して空気量は24倍量である。例えば、図6の表の1段目では、4リットル/minのガスを完全燃焼させる条件で供給した。
【0089】
また、シリコーンゴム成型品は3次元構造であるから、バーナからのシリコーンゴム成型品までの距離は、均一ではなく20〜40mmとした。
【0090】
表中の「密着」は、クロスカットセロテープ(「セロテープ」という用語自体は登録商標名である。)を、シリコーンゴム成型品に形成された加飾表面に貼り付けて引き剥がした場合に、加飾層も一緒にシリコーンゴム成型品から引き剥がされる状況を示すものであり、◎は全く引き剥がされない、○はほぼ引き剥がされない、△は一部剥がれる、×はかなり剥がれる結果を示している。◎、○は製品としての合格ラインとした。
【0091】
表中の「外観」は、シリコーンゴム成型品に形成された加飾表面の出来具合の目視検査の結果を示し、加飾表面に泡やブツ(表面の脹れ)などが発生している状況を示すものであり、◎は全く発生していない、○はほぼ発生していない、△は一部発生している、×はかなり発生しているという結果を示している。◎、○は製品としての合格ラインとした。
【0092】
図6に示す表によると、添加剤量(有機ケイ素化合物の添加量)を多くすることにより、処理時間が短くても、表面の親水性が高くなり、密着に必要な表面が形成できる(例えば、表中の1段目の場合参照)。
【0093】
しかし、添加剤量が多くても、火力が十分ないと、密着性及び外観において適性な結果が得られない(例えば、表中の4段目、7段目等の場合参照)。そこで、このような場合は、処理時間を長くする(処理火炎に表面を当てるスピードを緩めたり、回数を多する)必要があるが、スピードを緩め余り長い時間、処理火炎に表面を当てるとコーティングの品質は低下する(例えば、表中の5段目の場合参照)。
【0094】
逆に、火力は十分あっても添加剤量が少ない場合は、処理時間を長くする(処理火炎に表面を当てる時間を、回数を多くして長くする)必要がある(例えば、表中の2段目、11断面等の場合参照)。しかし、スピードを緩めて処理火炎に表面を当てる時間を長くするとコーティングの品質は、若干低下する(例えば、表中の3段目の場合参照)。
【0095】
以上の図6の試験結果から、火炎の火力と添加剤量の両者の条件を考慮しないと、適性な密着性及び外観が得られない。そこで、図6の試験結果から、火力及び添加剤量のそれぞれについて最低導入条件について、次のような適性条件を得た。
【0096】
ライン状バーナ火炎の横幅1cm当たりの1分間の熱量である火力は8.0kcal以上で、添加剤量(有機ケイ素化合物の添加量)がバーナの横幅1cm当たりの1分間の火力に対して0.000007モル以上導入していれば、一応の密着性及び外観も得られる。
【0097】
(シリコーンゴム基材)
本発明では、ロールミルを用いて成形加工するミラブル型シリコーンゴムを使用する。ミラブル型シリコーンゴムは、原料組成物として、生ゴム、充填剤、加硫剤等であるが、成形加工して得られるシリコーンゴム成型品には、前記したとおり、通常、低分子シロキサン等の低分子成分、その他顔料分散用添加剤等の揮発分を含有し、さらに加硫剤分解生成物等も含有している。
【0098】
これらの含有成分は、加飾前や加飾工程において揮発することでシリコーンゴム成型品の表面に溶出し、加飾の仕上がりに不具合を与える。例えば、シリコーンゴム成型品中の揮発分(200℃で揮発する成分)が多いときは、その表面の塗装における不具合として、塗膜中に細かいアワ、ブツ(塗膜表面の小さな脹れ)が発生することが多い。これは、塗装前に基材表面に揮発分が溶出し、塗料をはじくためと考えられる。
【0099】
このような不具合を防止するために、シリコーンゴム成型品の基材であるミラブル型シリコーンゴムとして、低分子シロキサン、その他顔料分散用添加剤等の揮発分を極力減じた材料を使用する。
【0100】
さらに、シリコーンゴム成型品を成形してから、加熱することで2次加硫を行う。2次加硫は、シリコーンゴム成型品を200℃で、1〜2時間程度、加熱して行う。この加熱処理により、揮発分を揮発させて除去し、またさらに加硫剤分解生成物等も除去する。
【0101】
図7は、シリコーンゴム中の揮発分とその処理及び塗装への影響を示す実験結果の表である。ここでの低分子量シロキサン含有量は、重量%で示す。黒色、白色、透明なシリコーンゴムについて、それぞれ1次加硫後(シリコーンゴム成型品を成形する際に1次加硫を伴うので、ここで1次加硫後とはシリコーンゴム成型品の成形工程後を意味する。)及び2次加硫後の平均重量(n=20)を測定し、減少率を算出した。減少率は、(2次加硫後の平均重量(n−20)−1次加硫後の平均重量(n=20))÷(1次加硫後の平均重量(n=20))で算出した。なお、nは試験した個数であり、平均重量は、20個の重量を各々測定し、平均した1個当たりの重量である。
【0102】
図7(a)は、通常のミラブル系シリコーンゴム(低分子量シロキサン量約1.9%)であり、黒色と白色について、それぞれ減少率を算出し、減少率に対応して塗膜物の表面のブツの数を数え、2次加硫をしない場合とも比較した。ここで、「通常の」とは、低分子量シロキサン量は、次の図7(b)に示すように減じる(カット)ようなことは特にしていない、通常のミラブル系シリコーンゴムという意味である。
【0103】
この図7(a)によると、2次加硫をしない場合は、ブツが黒色については10個、白色については15個あったが、それぞれ減少率が大きくなるとブツの数が減るという結果が得られた。要するに、2次加硫によりブツの減少に多大の効果があるということが判明した。この理由は、2次加硫における加熱によって揮発分が減少したことによるものと考えられる。
【0104】
図7(b)は、低分子量シロキサンカットミラブル系シリコーンゴム(低分子量シロキサン量約0.9%)であり、黒色と白色について、それぞれ減少率を算出し、減少率に対応して塗膜物の表面のブツの数を数え、2次加硫をしない場合とも比較した。
【0105】
この図7(b)の場合は、図7(a)の場合に較べて、2次加硫をしない場合でもブツの数が少ない。その理由は、基材である低分子量シロキサンカットミラブル系シリコーンゴムは、元々、低分子量シロキサン量が少ないことによるものと考えられる。加えて、図7(a)の場合と同様に、減少率が大きくなるとブツの数が減るという結果が得られた。
【0106】
図7(c)は、通常のミラブル系シリコーンゴム(低分子量シロキサン量約1.9%)であり、黒色と透明について、それぞれ減少率を算出した。その結果、透明より黒色の方が減少率が大きいことが分かった。その理由は、黒色の場合は、顔料及びその分散剤が含まれており、それらが2次加硫における加熱によって減少したことにより、減少率が大きくなったものと考えられる。
【0107】
以上の図7に示す結果からみると、2次加硫における加熱によって揮発成分、顔料及びその分散剤等が減少し、その結果、塗膜表面のブツが減少するということが分かった。よって、上記火炎処理によるシリコーンゴム成型物表面の改質に加えて、加熱処理による2次加硫を施すことにより、塗装の仕上がりの品質向上に相乗的に効果を生じるということが言える。
【0108】
以下、さらに加飾技術の種類毎に、本発明のシリコーンゴム成型品表面に加飾する方法及びその方法で得られた加飾シリコーンゴム成型品についての特徴的な点を詳細に説明する。加飾は、シリコーンゴム成型品表面に直に加飾技術を施してもよいが、まずベースコート(下地皮膜)を形成し、その後、加飾技術を施し、さらにトップコート(表面皮膜)を形成するという3工程によっておこなってもよい。
【0109】
トップコートは、シリコーンゴムの伸びちじみに追随し、しかもシリコーンゴム成型品の加飾表面に耐擦傷性を付与して保護する物性を有する塗膜であることが重要である。本発明者は、トップコートの塗膜についてその物性等を測定した結果、本発明では次のような塗膜をトップコートとして採用した。
【0110】
即ち、本発明では、加飾された表面にトップコートとして、2液の熱硬化塗料を使用して塗膜を形成し、その塗膜物性は、膜厚30〜50μmで伸び率が250%以上、耐擦傷性の指標であるスチールウールラビングテストでヘイズ値が0.7以下とする。このような塗膜は、伸び率が大きく、耐擦傷性の優れているから、シリコーンゴム成型品の加飾表面のトップコートとして使用すれば、伸びちぢみに追随し、しかも傷が目立ちにくい特性がある。
【0111】
なお、上記トップコートの塗膜については、次の「塗装による加飾」の説明中で詳記するが、塗装による加飾だけでなく、蒸着、熱転写、印刷及びシール接着のいずれか1つの加飾技術又は2つ以上の加飾技術の組み合わせによる加飾表面のトップコートについても同様の塗膜を適用する。
【0112】
(塗装による加飾)
2次加硫後のシリコーンゴム成型品に、塗装により加飾する方法について説明する。
(1)シリコーンゴム成型品の表面に付着したゴミや油成分は、加飾の際の品質の妨げとなるので、界面活性剤、有機溶剤等を使用して洗浄、脱脂する。
【0113】
(2)洗浄したシリコーンゴム成型品の表面を前記したケイ酸化炎(酸化ケイ素を多量に含有する火炎)を当てて火炎処理をすること、適正な条件で改質し、親水性、密着性を付与する。ここで適正な条件とは、ケイ酸化炎の品質(例えば、火力)、有機ケイ素化合物の量、基材への当て方(例えば、バーナ火口との距離、当てるスピード、当てる回数等)である。この点は、後記する。
【0114】
(3)塗装
ア.塗料
塗料としては、柔軟性があり、耐傷つき性の塗膜を形成する2液熱硬化塗料(硬化剤を添加した塗料)であって、自己修復性のあるもの、を使用することが好ましい。
【0115】
トップコートとして使用する2液熱硬化型塗料の塗膜性能は、伸び率が250%以上で、耐擦傷性の指標であるスチールウールラビングテストでヘイズ値が0.7以下であり、鉛筆硬度が3H以上有することが好ましい。
【0116】
図8は、トップコートとして使用する2液熱硬化型塗料の塗膜性能及び他の塗料について測定し、それらの測定値を比較した表を示す。
【0117】
この測定においては、2液熱硬化型塗料の塗膜、柔らかい熱硬化型塗料(比較例1)及びセミハードコート(比較例2)について、それぞれ伸び率、ヤング率及び破断強度を、オートグラフで測定した。この測定では、膜厚30〜50μmに調整した塗膜を使用し、試験片長さ30mm、試験片幅5mm、引っ張りスピード5mm/minの条件で行った。
【0118】
2液熱硬化型塗料の塗膜、柔らかい熱硬化型塗料(比較例1)及びセミハードコート(比較例2)について、それぞれ耐擦傷性ヘイズ計で測定した。このヘイズ計による測定は、耐擦傷性:膜厚20〜30μmの塗膜に対し、#0000スチールウールで500g荷重30往復させた後にヘイズ計で値を測定した。
【0119】
この図8に示す表によると、2液熱硬化型トップコートは、比較例1及び比較例2に比べて、伸び率が大きく、耐擦傷性の優れているから、シリコーンゴムにおいてトップコートとして使用すれば、伸びちぢみに追随し、しかも傷が目立ちにくい特性があることが分かる。
【0120】
なお、より好ましくは、ベースコートとして使用する2液熱硬化型塗料の塗膜性能は、伸び率がさらに大きい300%以上であるとよい。しかし、鉛筆硬度は3Hある必要がない。これは、ベースコートがトップコートより大きい伸びを有することにより、加飾用の顔料をベースコートに入れてベースコートの伸びが少なくなっても、十分伸びちぢみに追随できる塗膜が作成できるからであり、また、ベースコートの塗膜の表面硬度や耐擦傷性が悪くなっても、トップコートにより、加飾表面の表面硬度、耐擦傷性が得られるからである。
【0121】
グリッター顔料(ぴかぴか光り、光沢を与える粒子径が100μm以上の特殊顔料)、特に粒子径の大きなグリッター顔料を使用すれば、シリコーンゴム成型品の表面に、きらきらした興趣深い、デザイン性に富んだ加飾を付与することができる。
【0122】
イ.塗装仕様
塗装仕様としては、2層コート仕様又は1層コート仕様によって行う。2層コート仕様では、1層目に特殊顔料(例えば、偏光顔料、パール顔料、蛍光顔料、艶消し顔料等)にグリッターを加えた柔らかい塗膜を作る塗料をコートし、その上に2層目として、柔軟性があり、耐傷つき性のある透明塗料をコートする。
【0123】
偏光顔料は、特定の波長のみ反射し色が変わるのでシリコーンゴム成型品の素地が反射しない素材(黒色)であると偏光顔料本来のカラーが表現できる。よって、シリコーンゴム成型品の素材は黒であることが好ましい。偏光顔料としては、パール系顔料、液晶顔料、
フイルムに蒸着したもののカット品などの光輝性顔料で、光の干渉効果により、特定の波長のみ反射し、それ以外は透過する性質を有するものがよい。
【0124】
また、反射の強い白では、光すべてが反射するので目立った色の変化が得られない。このことを利用すれば、素地が白と黒の柄を有するシリコーンゴム成型品の表面に偏光顔料で塗装すると、より多彩な色表現ができ、デザインを多様化でき。デザインの範囲が広がる。なお、艶消し顔料を塗料に添加すると、今までにない色合いが生成可能となる。
【0125】
1層コート仕様では、柔軟性があり、耐傷つき性のある塗料に、着色顔料を加えてコートする。或いは、柔軟性のある艶消し塗料、又はそれに着色顔料を加えたものでコートする。
【0126】
ウ.変形例
塗装前にシリコーンゴム成型品表面に部分印刷し、その上に塗装加飾を施してもよい。或いは、さらにその上にシール等を接着してもよい。このように、塗装、印刷及びシール等の異なる加飾技術を組み合わせることで、シリコーンゴム成型品表面にさらに多様で、異なるデザインを付与することができる。
【0127】
(蒸着による加飾)
2次加硫後のシリコーンゴム成型品に、蒸着により加飾する方法について説明する。蒸着により加飾する場合は、塗装の場合と同様に、2次加硫後のシリコーンゴム成型品を洗浄し、火炎処理によって表面改質を行ってから、蒸着を行う。蒸着は、ベースコート(下地皮膜)を形成し、その後で蒸着工程を行い、さらにトップコート(表面皮膜)形成する、という3工程により行われる。
【0128】
(1)ベースコートの形成
ベースコートの形成は、塗装によって行う。このベースコートの形成では、成型品の用途に適した塗料を使用することは当然であるが、特に、蒸着の下地コートとして必要な金属が密着しやすいという適性を有した塗料であり、柔軟性があるものを使用することが好ましい。そのような塗料の塗膜性能は伸び率が250%以上であることが好ましい。
【0129】
(2)蒸着工程
蒸着は、蒸着釜内にベースコートを形成したシリコーンゴム成型品を装入して、真空下で行う。蒸着に適正な真空圧は、10−3〜10−4Paである。
【0130】
真空下においては、ベースコートを形成したシリコーンゴム成型品から放出ガスが生じ易いが、このような放出ガスがあると、加飾の仕上がりに不具合が生じる。すなわち、蒸着に必要な真空圧まで下がらず、また、蒸着釜中に放出ガスがあると金属蒸気が表面に付着するのを阻害する等の支障が生じる。そのために、前記したとおり、ベースコートを形成したシリコーンゴム成型品に揮発分のないことが重要になるのである。
【0131】
蒸着する金属としては、シリコーンゴム成型品の柔らかい表面に追随するため、付着性が良く、不連続膜を生成する金属が好ましい。インジウム、スズなどがある。シリコーンゴム成型品に金属を蒸着することにより、その表面に金属光沢の外観を付与する。通常プラスチックの蒸着に用いられるアルミを使用すると、ベースコートに追随できず、トップコート塗料を塗装すると、白く濁る。
【0132】
(3)トップコートの形成
トップコートの形成は、柔軟性があり、耐傷つき性のある塗料に、着色顔料を加えてコートする。或いは、柔軟性のある艶消し塗料、又はそれに着色顔料をくわえたものでコートする。
【0133】
(熱転写による加飾)
2次加硫後のシリコーンゴム成型品の表面に、熱転写フイルム(熱転写シート)を熱転写により圧着し加飾する方法について説明する。熱転写により加飾する場合は、塗装の場合と同様に、2次加硫後のシリコーンゴム成型品を洗浄し、火炎処理によって表面改質を行ってから、熱転写を行う。熱転写は、ベースコート(下地皮膜)を塗装で行い、その後で熱転写工程を行い、さらにトップコート(表面皮膜)を塗装で行う、という3工程により行われる。
【0134】
(1)ベースコートの形成
ベースコートの形成は、ホットメルト性能または、接着受理性能を有する塗膜を形成する。ホットメルト性能を有する塗膜材料としては、1液ウレタンがよい。熱可塑性で、柔軟性がある。また、接着受理性能を有する塗膜材料としては、塗膜に柔軟性があればよいが熱硬化型柔軟性塗料がよい。
【0135】
(2)熱転写工程
熱転写は、次の2つの方法のいずれかによって行われる。
ア.真空圧着
ケース全面密着するように真空中で熱転写フイルムを密着させ、熱をかけ転写する方法。
イ.アイロンプレス
所望の形状にカットした熱転写フイルムをアイロンなどで熱圧着する方法
【0136】
上記真空圧着及びアイロンプレスのいずれにおいても、シリコーンゴム成型品内に揮発分があると、密着不良、型ずれ等、品質に悪影響を及ぼす。特に、真空圧着では、揮発分がシリコーンゴム成型品の表面から溶出し、シリコーンゴム成型品の表面と熱転写フイルムの間に微細な泡を生じ、接着不良の原因となる。よって、前記したとおり、シリコーンゴム成型品内の揮発分を除去することが肝要である。
【0137】
以上、熱転写について説明したが、熱転写フイルムはグラビア印刷で作成できるので、塗装ではできない多様な柄をシリコーンゴム成型品の表面に付与することができる。
【0138】
(3)トップコートの形成
トップコートの形成は、柔軟性があり、耐傷つき性のある塗料に、着色顔料を加えてコートする。或いは、柔軟性のある艶消し塗料、又はそれに着色顔料をくわえたものでコートする。なお、トップコートとしては、箔も含み、よって、トップコートの形成は、箔押しも含む。
【0139】
(印刷による加飾)
2次加硫後のシリコーンゴム成型品の表面に、印刷により加飾する方法について説明する。印刷により加飾する場合は、塗装の場合と同様に、2次加硫後のシリコーンゴム成型品を洗浄し、火炎処理によって表面改質を行ってから、印刷を行う。
【0140】
印刷は、シリコーンゴム成型品の表面に直接印刷するか、上記塗装と同様のベースコート(下地皮膜)を塗装で行い、その後で印刷工程を行うのいずれかによる。印刷としては、スクリーン印刷、インクジェット方式のデジタル印刷、その他の印刷技術が適用できる。さらに、トップコート(表面皮膜)を塗装で行うことにより、印刷面を保護することができ、光沢のあるあざやかな加飾ができる。
【0141】
上記いずれの印刷技術を利用した場合でも、シリコーンゴム成型品の柔らかい表面に追随可能であるというインクの皮膜物性が重要である。例えば、スクリーンインキとしては、布などに使用するインキが伸縮に追随しよい。例えば、SG410(セイコーアドバンス社製)等である。インクジェットインキに関しても、UV硬化対応の柔らかいグレードのものか、熱乾燥タイプの水系バインダーインキがよい。例えば、ヒートジェットインクジェット印刷機とレジンインク(マスターマインド社製)等である。
【0142】
水系バインダーインキを用いるインクジェット印刷の場合、ベースコート(下地皮膜)の上にケイ酸化炎処理を行った後印字することが望ましい。このことにより、ベースコート上が親水性になり、水系バインダーインキの濡れが向上し、ハジキ(インキがはじくこと)などによる画像の不良や接着性の低下などが起こりにくくなり品質の向上が期待できる。
【0143】
なお、印刷による加飾では、インクジェット方式のデジタル印刷を採用すれば、オンデマンド印刷で少量多品種の柄が作成できる。
【0144】
(接着による加飾)
2次加硫後のシリコーンゴム成型品の表面に、シール(ラベルも含む)等を接着に貼り付けて加飾する方法について説明する。接着により加飾する場合は、塗装の場合と同様に、2次加硫後のシリコーンゴム成型品を洗浄し、火炎処理によって表面改質を行ってから、接着を行う。
【0145】
接着は、シリコーンゴム成型品の表面に直接接着するか、上記塗装と同様のベースコート(下地皮膜)を塗装で行い、その後で接着工程を行うのいずれかによる。さらに、シール等を接着した表面に塗装の場合と同様のトップコードを施してもよい。
【0146】
シールの素材も、シリコーンゴム成型品の柔らかく伸縮する表面に追随可能であるものが好ましい。或いは、シールの素材は、シリコーンゴム成型品の表面が伸縮しても、それにより歪みやずれ等の悪影響を受けることの少ない、面積の小さいものでもよい。
【0147】
以上、本発明に係るシリコーンゴム成型品表面に加飾する方法及びその方法で得られた加飾シリコーンゴム成型品を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明に係るシリコーンゴム成型品表面に加飾する方法及びその方法で得られた加飾シリコーンゴム成型品は上記のような構成であるから、携帯情報端末のケース、その他各種のシリコーンゴム成型品に適用可能である。
【符号の説明】
【0149】
1 火炎噴射装置
2 空気供給系
3 燃料ガス供給系
4 有機ケイ素化合物供給系
6 バーナ
10 エアコンプレッサ
11 空気用のマスフローコントローラ
12、13 空気供給管
15 燃料ガスの供給源
16 燃料ガス用の開閉弁
17 燃料ガス用のマスフローコントローラ
18 燃料供給配管
20 ベンチュリミキサ
21 空気燃料ガスミキサ
22 燃焼用ガス有機ケイ素化合物ミキサ
25 液状有機ケイ素化合物の貯蔵タンク
26 ベーパライザ
27 ベーパライザにおける加熱手段
28 有機ケイ素化合物用マスフローコントローラ
29 有機ケイ素化合物供給管
30 液状有機ケイ素化合物の貯蔵タンクの液面センサ
31 ベーパライザの液面センサ
35 改質ガス供給管
36 点火用電源
37 火炎点火検知両用プラグ
38 噴射孔
39 シリコーンゴム成型品表面
40 火炎
41 アース
42 検知電流検出器
56 火炎
57 内炎
58 火炎反応帯
59 外炎
60 シリコーンゴム成型品
101 表面改質用火炎噴射装置
102 空気供給系
103 燃料ガス供給系
104 有機ケイ素化合物供給系
105 バーナ
106 バーナの前壁
107 噴射孔
108 隔壁
109 バーナの前壁の前面
110 整流板
111 主バーナ室
112 副バーナ室
114 検知電流検出器
115 火炎点火検知両用プラグ
118 点火用電源
119 支持部
120 アース
129 燃料ガスの供給源
130 エアコンプレッサ
131 エアドライヤ(空気乾燥器)
132 マスフローコントローラ
133 空気供給管
134 空気燃料ガスミキサ
135 ベンチュリミキサ
136 マスフローコントローラ
137 燃料供給管
138 副燃焼用ガス供給管
139 開閉弁
140 有機ケイ素化合物の貯蔵タンク
141 ベーパライザ(気化器)
143 マスフローコントローラ
144 有機ケイ素化合物供給管
145 有機ケイ素化合物供給管の開閉バルブ
146 燃焼用ガス有機ケイ素化合物ミキサ
147 有機ケイ素化合物の貯蔵タンクの液面センサ
148 ベーパライザの液面センサ
150 主燃焼ガス供給管
155 保炎壁(リテンション壁)
156 火炎

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴム成型品の表面を加飾するシリコーンゴム成型品の加飾方法であって、
シリコーンゴム成型品を加熱し2次加硫することにより、シリコーンゴム成型品内に含有されている揮発分を減じる工程と、
シリコーンゴム成型品の表面を洗浄する工程と、
シリコーンゴム成型品の表面に、有機ケイ素化合物含有燃焼用ガスを燃焼した酸化ケイ素を含む火炎の処理活性が高い火炎反応帯を当てて火炎処理を行って改質することにより、該表面に水酸基を生成し親水性及び密着性を向上させる工程と、
塗装、蒸着、熱転写、印刷及びシール接着のいずれか1つの加飾技術又は2つ以上の加飾技術の組み合わせを使用することによって、シリコーンゴム成型品の表面を加飾する工程と、を含み、
前記加飾する工程は、シリコーンゴム成型品の表面にベースコートを形成し、該ベースコートの表面に前記加飾技術の1つ又は2つ以上の組み合わせにより加飾するか、直接シリコーンゴム成型品表面に前記加飾技術の1つ又は2つ以上の組み合わせにより加飾し、該加飾された表面にトップコートとして、2液の熱硬化塗料を使用して塗膜を形成し、その塗膜物性は、膜厚30〜50μmで伸び率が250%以上、耐擦傷性の指標であるスチールウールラビングテストでヘイズ値が0.7以下であることを特徴とするシリコーンゴム成型品の加飾方法。
【請求項2】
前記火炎処理する工程では、ライン状バーナ火炎の横幅1cm当たりの1分間の熱量である火力は8.0kcal以上とし、有機ケイ素化合物の量は、バーナの横幅1cm当たりの1分間の火力に対して0.000007モル以上導入することを特徴とする請求項1に記載のシリコーンゴム成型品の加飾方法。
【請求項3】
加飾する工程で使用する塗装は、柔軟性があり、耐傷つき性の塗膜を形成する2液熱硬化塗料を使用することを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコーンゴム成型品の加飾方法。
【請求項4】
加飾する工程で使用する塗装は、耐傷つき性のある塗料に、着色顔料を加えてコートする、又は柔軟性のある艶消し塗料、若しくはそれに着色顔料を加えたものでコートすることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコーンゴム成型品の加飾方法。
【請求項5】
加飾する工程で使用する塗装は、1層目に偏光顔料、パール顔料又は蛍光顔料にグリッターを加えた塗料をコートし、その上に2層目として、耐傷つき性のある透明塗料をコートすることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコーンゴム成型品の加飾方法。
【請求項6】
蒸着においては、ベースコートの形成は、蒸着金属が密着し易い塗料を使用して塗装し、 蒸着は、10−3〜10−4Paの真空圧の蒸着釜内で、シリコーンゴム成型品の表面に追随する付着性が良く、不連続膜を生成する金属を、シリコーンゴム成型品に金属を蒸着し、
トップコートの形成は、耐傷つき性及び/又は艶消し塗料に、着色顔料を加えた塗料を使用することを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコーンゴム成型品の加飾方法。
【請求項7】
熱転写は、熱転写フイルムを密着させ、真空中で熱をかけ転写する又はアイロンプレスで行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコーンゴム成型品の加飾方法。
【請求項8】
印刷において使用するインクは、シリコーンゴム成型品の柔らかい表面に追随可能である皮膜物性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコーンゴム成型品の加飾方法。
【請求項9】
接着においては、シールは、シリコーンゴム成型品の柔らかく伸縮する表面に追随可能であるものを使用する又はシリコーンゴム成型品の表面が伸縮しても、それにより歪みやずれ等の悪影響を受けることの少ない、面積の小さいものを使用することを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコーンゴム成型品の加飾方法。
【請求項10】
シリコーンゴム成型品の表面が加飾されて成る加飾シリコーンゴム成型品であって、
加飾されるシリコーンゴム成型品は、加熱して2次加硫されることにより、揮発分が減じられ、その表面は、洗浄後、有機ケイ素化合物含有燃焼用ガスを燃焼した酸化ケイ素を含む火炎の処理活性が高い火炎反応帯が当てられる火炎処理により、水酸基が生成され、親水性及び密着性が向上されたものであり、
加飾は、シリコーンゴム成型品の表面にベースコートが形成され、該ベースコートの表面に塗装、蒸着、熱転写、印刷及びシール接着のいずれか1つの加飾技術又は2つ以上の加飾技術の組み合わせにより加飾されるか、直接シリコーンゴム成型品表面に塗装、蒸着、熱転写、印刷及びシール接着のいずれか1つの加飾技術又は2つ以上の加飾技術の組み合わせにより加飾され、この加飾された表面にトップコートとして、2液の熱硬化塗料を使用して塗膜を形成されており、その塗膜物性は、膜厚30〜50μmで伸び率が250%以上、耐擦傷性の指標であるスチールウールラビングテストでヘイズ値が0.7以下であることを特徴とする加飾シリコーンゴム成型品。
【請求項11】
前記火炎処理は、ライン状バーナ火炎の横幅1cm当たりの1分間の熱量である火力は8.0kcal以上とし、有機ケイ素化合物の量は、バーナの横幅1cm当たりの1分間の火力に対して0.000007モル以上導入されていることを特徴とする請求項10記載のシリコーンゴム成型品。
【請求項12】
加飾のための塗装は、柔軟性があり、耐傷つき性の塗膜を形成する2液熱硬化塗料が使用されていることを特徴とする請求項10又は11に記載の加飾シリコーンゴム成型品。
【請求項13】
加飾のための塗装は、1層目に偏光顔料、パール顔料又は蛍光顔料にグリッターを加えた塗料がコートされ、その上に2層目として、耐傷つき性のある透明塗料をコートされていることを特徴とする請求項10又は11に記載の加飾シリコーンゴム成型品。
【請求項14】
加飾のための塗装は、耐傷つき性のある塗料に、着色顔料を加えてコートされ、又は柔軟性のある艶消し塗料、若しくはそれに着色顔料を加えたものでコートされていることを特徴とする請求項10又は11に記載の加飾シリコーンゴム成型品。
【請求項15】
蒸着においては、蒸着金属が密着し易い塗料でベースコートが形成され、該ベースコートの表面に、10−3〜10−4Paの真空圧の蒸着釜内で、シリコーンゴム成型品の表面に追随する付着性が良く、不連続膜を生成する金属が蒸着され、さらに、該蒸着された表面に、耐傷つき性及び/又は艶消し塗料に、着色顔料を加えた塗料でトップコートが形成されていることを特徴とする請求項10又は11に記載の加飾シリコーンゴム成型品。
【請求項16】
熱転写は、熱転写フイルムを密着させ、真空中で熱をかけ転写する又はアイロンプレスで行われていることを特徴とする請求項10又は11に記載の加飾シリコーンゴム成型品。
【請求項17】
印刷においては、インクは、シリコーンゴム成型品の柔らかい表面に追随可能である皮膜物性を有するものが使用されていることを特徴とする請求項10又は11に記載の加飾シリコーンゴム成型品。
【請求項18】
接着においては、シールは、シリコーンゴム成型品の柔らかく伸縮する表面に追随可能であるもの又はシリコーンゴム成型品の表面が伸縮しても、それにより歪みやずれ等の悪影響を受けることの少ない、面積の小さいものが使用されていることを特徴とする請求項10又は11に記載の加飾シリコーンゴム成型品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−644(P2013−644A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133207(P2011−133207)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(511100844)株式会社ヒートマシンサービス (2)
【Fターム(参考)】