説明

シリンジポンプの異常検出方法及び液体吸引吐出器並びに生化学分析装置

【課題】 シリンジ及びプランジャの異常によるシリンジポンプの異常を確実に検出する。
【解決手段】 点着用ノズル36とシリンジポンプ70とを通気管69を介して接続し、さらに通気管69の途中に三方管79を介して圧力センサ81を接続する。シリンジポンプ70は、シリンジ71、プランジャ72からなる。プランジャ72には、伝達部材73、駆動ギヤ74、モータ76が接続されており、モータ76の回転によって上下動する。圧力センサ81、モータ76には、コントローラ85が接続されている。コントローラ85には、微分回路86と、比較回路87とが組み込まれている。リークなどの異常検出を行うときには、プランジャ72を、実際の吸引吐出動作を行うときと同じ使用領域で上下動させ、このときの圧力を圧力センサ81で出力してその圧力の微分値を微分回路86で検出し、この圧力微分値に基づいて異常を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジポンプの異常検出方法及び液体吸引吐出器並びに生化学分析装置に関し、特に血液、尿等の検体を液体吸引吐出器により乾式分析素子又は電解質スライド等の被点着材に点着する際に好適なシリンジポンプの異常検出方法及び液体吸引吐出器並びに生化学分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療機関、研究所等では、数多くの検体を分析する必要があることから、検体の小滴を点着供給するだけで検体中に含まれている特定の化学成分又は有形成分を定量分析することが可能なドライタイプの乾式分析素子や電解質スライド(乾式イオン選択電極フイルム)を使用することが一般的となっており、乾式分析素子を用いる比色測定法や、電解質スライドを用いる電位差測定法によって検体中の化学成分等の定量分析を行う生化学分析装置が普及してきている。例えば、本出願人からも富士ドライケム3500(商品名)等の卓上型の生化学分析装置が販売されている。
【0003】
比色測定法を用いる生化学分析装置は、検体を乾式分析素子に点着させた後、これをインキュベータ(恒温器)内で所定時間恒温保持して呈色反応(色素生成反応)させ、予め選定された波長を含む測定用照射光をこの乾式分析素子に照射してその光学濃度を測定し、この光学濃度から、生化学物質の濃度を求めることができる。一方、電位差測定法を用いる生化学分析装置は、上記の光学濃度を測定する代わりに、同種の乾式イオン選択電極の2個1組からなる電極対に点着された検体中に含まれる特定イオンの活量を、ポテンシオメトリで定量分析することによって物質濃度を求めることができる。
【0004】
ところで、上記いずれの方法を用いる装置においても、一般に液体の検体は検体容器(サンプリングカップ)に収容して装置にセットされ、そこから上下動及び横方向移動が可能な点着用ノズルと、この点着用ノズルに吸引圧及び吐出圧を供給する吸引吐出ポンプとを備えた液体吸引吐出器を利用して点着されるようになっている。この点着用ノズルは、必要に応じて先端に使い捨てのノズルチップを嵌合して、検体容器内の検体を吸引し、その後、被点着材としての前記乾式分析素子又は電解質スライド上に移動して所定量吐出し点着するように構成されている。なお、上述したような液体吸引吐出器を構成する吸引吐出ポンプとしては、シリンジ(筒体)及びこのシリンジに対して摺動自在に挿入したプランジャからなるシリンジポンプを使用することが知られている。
【0005】
上述したような生化学分析装置では、液体吸引吐出器を構成する圧力系統にシール不良等が発生してリーク(漏れ)があると、正常な吸引吐出作動が行えずに作動不良、測定精度の低下の原因となることがある。そこで、液体吸引吐出器の点着用ノズルによって検体等の液体を吸引し、所定量の液体を精度良く吐出して点着等を行うためには、圧力系統のリーク検出を行うことが考えられており、特許文献1には、生化学分析装置の点着用ノズルに対する圧力系統に圧力センサを接続するとともに、点着用ノズルの先端を閉塞し、吸引吐出ポンプのプランジャを複数点で停止させて点着用ノズルに吸引圧又は吐出圧を加え、プランジャを停止させた複数点で圧力センサによる圧力検出をそれぞれ行うリーク検出方法が記載されている。
【0006】
また、特許文献2に記載された液体を分注する分注装置では、テスト用の液体を吸引吐出し、このテスト時に吐出された液体の液面レベルが、正常時の液面レベルの許容範囲内にあれば異常がないと判定され、許容範囲を超えている場合には、リークなどの異常があると判定される構成としている。
【0007】
さらにまた、上述の特許文献1に記載されているような検出方法では、圧力センサによる検出信号から圧力変化を測定し、この圧力変化に基づいてリークなどの異常を検出するのが一般的であるが、このような構成では、微小な圧力変化を検知できず、異常などを見落としてしまう可能性がある。そこで、特許文献3に記載されているサンプリング方法では、圧力センサからの検出信号を微分した圧力微分値を算出し、この圧力微分値に基づいて比較判定を行っているので、微小な圧力変動も検知することができる。
【特許文献1】特開2000−258437
【特許文献2】特開2002−350453
【特許文献3】特開2002−350453
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているような生化学分析装置のリーク検出方法では、点着用ノズルの先端を塞いだ状態での圧力検出であり、実際の吸引吐出動作を行っているときとは異なる形態でのリーク検出しか行うことができない。また、上記特許文献1では、プランジャを停止させた状態での圧力検出であり、実際に吸引吐出動作を行っているときのようにプランジャが移動中のリーク状態を検出することはできない。さらにまた、上記特許文献1では、プランジャに対するシリンジ側のシール不足が原因となるリーク検出のみが記載されており、プランジャ自体に異常がある場合のリーク検出については考慮されていない。
【0009】
一方、上記特許文献2では、実際にテスト用の試料(液体)を吸引吐出しなければリーク検出を行うことができず、このような検出方法では効率が悪く、またテスト用の試料を使用する分、コストが増加してしまう。さらにまた、上記特許文献3では、ノズルの先端を液体に接触させ、このときに検出される圧力信号から圧力微分値を算出し、この圧力微分値に基づいて液面を検出するという構成になっている。したがって、シリンジのリーク等の異常検出を行うことができないという問題がある。
【0010】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、シリンジ及びプランジャの異常による液体吸引吐出器の異常を確実に検出することが可能なシリンジポンプの異常検出方法、液体吸引吐出器、及び生化学分析装置をローコストに提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のシリンジポンプの異常検出方法は、筒体状のシリンジ及びこのシリンジの内部を摺動するプランジャからなるシリンジポンプの異常検出方法において、前記シリンジの給排口に開放系管路を接続し、この開放系管路の圧力を検出する圧力センサを設け、前記プランジャを前記シリンジに対して相対移動させて前記圧力センサから出力される圧力信号を微分した圧力微分値を求め、この圧力微分値に基づいて前記シリンジポンプの異常を判定することを特徴とする。なお、前記開放系管路を、液体を吸引吐出するノズルと、このノズルを前記シリンジポンプの給排口に接続する管路とから構成することを特徴とすることが好ましい。
【0012】
また本発明は、筒体状のシリンジ及びこのシリンジの内部を摺動するプランジャからなり、液体を吸引吐出する点着用ノズルと接続され、この点着用ノズルに吸引吐出圧を供給することによって前記点着用ノズルの先端又は該点着用ノズルの先端に装着したノズルチップから前記液体を被点着材へ点着するシリンジポンプの異常検出方法において、前記点着用ノズルと前記シリンジポンプとを繋ぐ圧力系統の途中に圧力センサを設け、前記プランジャを前記シリンジに対して相対移動させて前記圧力センサから出力される圧力信号を微分した圧力微分値を求め、この圧力微分値に基づいて前記シリンジポンプの異常を判定することを特徴とする。
【0013】
本発明の液体吸引吐出器は、筒体状のシリンジ及びこのシリンジの内部を摺動するプランジャからなるシリンジポンプと、前記シリンジの給排口に接続された開放系管路とを有する液体吸引吐出器において、前記開放系管路の圧力を検出する圧力センサと、この圧力センサから出力される圧力信号を微分した圧力微分値を求める微分算出手段と、この微分算出手段により求められた圧力微分値から前記シリンジポンプの異常を判定する判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の液体吸引吐出器は、液体を吸引吐出する点着用ノズルと、このノズルに接続され、筒体状に形成されたシリンジ及びこのシリンジの内部を摺動するプランジャからなり、前記点着用ノズルに吸引吐出圧を供給するシリンジポンプとを有し、前記点着用ノズルの先端又は該点着用ノズルの先端に装着したノズルチップから前記液体を被点着材へ点着する液体吸引吐出器において、前記点着用ノズルと前記シリンジポンプとを繋ぐ圧力系統の途中に接続された圧力センサと、この圧力センサから出力される圧力信号を微分した圧力微分値を求める微分算出手段と、この微分算出手段により求められた圧力微分値から前記シリンジポンプの異常を判定する判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
なお、前記ノズルの先端を開放した状態で前記プランジャを移動させて前記シリンジポンプの異常を判定することが好ましい。また、前記シリンジポンプを実際に使用するときの使用領域で前記プランジャを前記シリンジに対して相対移動させ、この移動中の状態で前記圧力センサにより圧力を検出することが好ましい。さらにまた、所定の閾値と前記圧力微分値とを比較して前記シリンジポンプの異常を判定することが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の生化学分析装置は、前記液体吸引吐出器を用いて、被点着材へ被測定物質としての液体を点着し、この被点着材に光源から測定光を照射し、被点着材からの反射光または透過光の光量を測定手段により測定し、前記測定手段の測定結果に基づいて前記液体の定量分析を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のシリンジポンプの異常検出方法、液体吸引吐出器、及び生化学分析器は、シリンジポンプの給排口に接続された開放系管路、あるいは点着用ノズルとシリンジポンプとを繋ぐ圧力系統の途中に圧力センサを設け、この圧力センサから出力される圧力信号を微分した圧力微分値を求め、この圧力微分値に基づいてシリンジポンプの異常を判定しているので、微小な圧力変動も感知することが可能となり、高感度な検出を行うことが可能であり、シリンジポンプのシリンジ及びプランジャの不良による異常を確実に検出することができる。
【0018】
また、シリンジポンプが実際に使用されるときの使用領域でプランジャをシリンジに対して相対移動させ、この移動中の状態で圧力センサにより圧力を検出し、さらに、ノズルの先端を開放した状態でプランジャを移動させてシリンジポンプの異常を判定しているので、実際の吸引吐出動作で使用しているときに発生する可能のある異常を確実に検出することができる。
【0019】
さらにまた、所定の閾値と圧力微分値とを比較してシリンジポンプの異常を判定しているので、シリンジのシール不足による不良及びプランジャの傾きや真円度の不良による異常をそれぞれ確実に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態である生化学分析装置の構成を図1に示す。この生化学分析装置10は、比色測定系(一般測定系)として、乾式分析フイルム片による乾式分析素子1を収納したカートリッジ3を格納する主保管庫11と、この主保管庫11の側方に配設され乾式分析素子1を所定時間恒温保持するインキュベータ12と、主保管庫11から乾式分析素子1を取り出してインキュベータ12に搬送する素子搬送手段13と、例えば血清、尿等の複数の検体を収納した検体容器31を保持する検体保持手段14と、乾式分析素子1を素子搬送手段13によってインキュベータ12に搬送するまでの間にこの乾式分析素子1に検体保持手段14の検体を点着する第1の点着手段15と、インキュベータ12の下方に配設された測定手段16とを備えている。
【0021】
さらに、電位差測定系として、電解質スライドによる乾式分析素子2を同様に収納した電解質カートリッジ4を格納する電解質保管庫21と、この電解質保管庫21内の電解質カートリッジ4から電解質乾式分析素子2を点着位置に搬送する搬送手段22と、電解質乾式分析素子2に検体保持手段14から検体を点着する第2の点着手段23と、参照液容器32から参照液を同様に電解質乾式分析素子2に点着する第3の点着手段24と、電解質点着位置の前方に設置され電解質乾式分析素子2を所定時間恒温保持するとともに電位差を測定する電位差測定手段25とを備えている。一方、第1および第2点着手段15,23の近傍には、その点着用ノズル36,37の先端に装着するノズルチップ38を配列して収納したチップラック39を保持するチップ供給手段26が設置されている。
【0022】
検体保持手段14は、回転操作される検体テーブル30を備え、この検体テーブル30の内外周部には検体を収納した複数の検体容器31がセットされ、その回転により検体容器31が順次供給位置に移動される。
【0023】
また、チップ供給手段26は、チップラック39に加えて、カップ状の凹部が並列配置された希釈容器40を横方向にスライド移動するものであり、順次ノズルチップ38または希釈容器40の位置が回動してきた点着用ノズル36,37の下方に位置するように移動が制御される。
【0024】
第1の点着手段15は、回動および昇降自在に設けられたサンプリングアーム42の先端に検体の吸引吐出を行う点着用ノズル36を有し、この点着用ノズル36の先端にはピペット状のノズルチップ38が装着され、検体テーブル30の検体容器31から検体を吸引し移動して素子移動手段13の移載部材13aの上に保持されている乾式分析素子1に点着する。なお、検体テーブル30に隣接して希釈液ホルダ44が配設され、測定項目に応じては、検体を希釈容器40で希釈した後に、乾式分析素子1に点着するものである。また、サンプリングアーム42の具体的構造については後述する。なお、ノズルチップ38は点着毎に交換され、図示しない廃却箱に廃棄される。
【0025】
第2の点着手段23のサンプリングアーム46は、第1のサンプリングアーム42と同様に、回動および昇降自在に設けられ、先端に検体の吸引吐出を行う点着用ノズル37を有し、この点着用ノズル37の先端にはノズルチップ38が装着され、検体テーブル30の検体容器31から検体を吸引し移動して電解質乾式分析素子2に点着する。
【0026】
第3の点着手段24の参照液アーム48も同様に、回動および昇降自在に設けられて先端に点着用ノズル51を有し、参照液容器32から参照液を吸引して電解質乾式分析素子2に点着し、測定手段25で電位差を測定するものである。なお使用後の電解質乾式分析素子2は図示しない廃却箱に廃棄される。
【0027】
点着手段15は、詳しくは図2に示すような構成となっている。この点着手段15は、点着用ノズル36と、サンプリングアーム42と、スプラインシャフト62と、ベルト車63と、ベルト65と、第1のモータ64と、つば部66と、ベルト67と、第2のモータ68と、通気管69と、シリンジポンプ70と、伝達部材73と、駆動ギヤ74と、第3のモータ76とを備えている。
【0028】
サンプリングアーム42は点着用ノズル36を上下動可能に支持する。スプラインシャフト62は鉛直方向に沿って配設され、サンプリングアーム42の他端においてサンプリングアーム42が水平となるように保持する。ベルト車63は、スプラインシャフト62の周壁において軸方向に形成された溝部62aと係合する爪部を備え、このスプラインシャフト62に対し回転方向には相対的に固定、軸方向には相対的に移動自在に取り付けられ、ベルト65の一端が掛けられている。第1のモータ64は、ベルト65を矢印A方向に移動させてベルト車63を所定方向に所定量だけ回転駆動する。つば部66はスプラインシャフト62の底部に取り付けられ、このつば部66の側壁にベルト67がねじ止めされている。第2のモータ68は、ベルト67を矢印B方向に移動させてスプラインシャフト62を所定量だけ上下動させる。
【0029】
サンプリングアーム42の内部には、通気管69が配設されており、サンプリングアーム42の一端側に貫入した点着用ノズル36の他端部36aに、その一端部69aが接続され、且つサンプリングアーム42の他端に近い部分から外部へ延び出ている。さらに、この通気管69の他端部69bは、シリンジポンプ70の給排口71bに接続ロッド71cを介して接続されている。
【0030】
図4に示すように、シリンジポンプ70は、筒体状に形成され、通気管69の他端部69cが接続されたシリンジ71と、このシリンジ71内に上下動可能に嵌入され、かつシリンジ71から突出する外周面の一部に雄ヘリコイド72aが形成されたプランジャ72とからなる。さらに、シリンジ71の内周面には、円周方向に沿った溝71aが形成されており、この溝71aにプランジャとの密閉度を保つためのシール77(図4参照)が嵌め込まれている。伝達部材73には、プランジャ72の雄ヘリコイド72aに螺合する雌ヘリコイド73aが内周面に形成され、外周面にギヤ73bが形成されている。この伝達部材73のギヤ73bには、駆動ギヤ74が噛合し、第3のモータ76の回転軸76aに駆動ギヤ74が固着されている。
【0031】
第3のモータ76が回転すると、伝達部材73を介してプランジャ72に駆動が伝達され、雄ヘリコイド72a,雌ヘリコイド74aのリードに従ってプランジャ72を所定量だけ上下動させ、これによりシリンジ71内の容積が可変して通気管69の他端部69cから通気管69内に空気を送り込みまたは吸引し、ノズルチップ38、点着用ノズル36および通気管69で構成された管路内に圧力を供給する。
【0032】
さらに、点着手段15の各モータ64,68,76には、制御部78が接続されている。この制御部78は、所定のシーケンスプログラムに従って各モータ64,68,76の回転を制御する。
【0033】
まず、制御部78から第1のモータ64に所定のモータ駆動信号が出力され、このモータ駆動信号に従い回転する第1のモータ64の駆動力によりサンプリングアーム42が回転して(矢印C方向)、点着用ノズル36およびノズルチップ38が検体80を収容した検体容器31上に位置する。
【0034】
次に、制御部78は第3のモータ76を正転方向へ回転駆動させてシリンダ72を上方に移動させる。これによってシリンジ71内の空気が通気管69内に送り込まれ、管路内は正圧状態となる。同時に制御部78は、第2のモータ68を回転駆動させてサンプリングアーム42を所定の速度で下降させる。
【0035】
サンプリングアーム42が下降を続けてノズルチップ38の先端部が検体容器31内の検体の液面に接触すると、図示しない液面検出ユニットによってこれを検知し、制御部78は、第2のモータ68の駆動を停止させ、サンプリングアーム42の下降を停止させる。また、同時に制御部78は、第3のモータ76の駆動を停止させ、これによりシリンダ72の上方への移動が停止してシリンジ71から通気管69内への空気の圧送が停止する。
【0036】
サンプリングアーム42の下降を所定量行い停止した後、制御部78は、第3のモータ76を逆転方向へ回転駆動させてシリンダ72を所定量下方に移動させる。これによってノズルチップ38内に所定量の検体80が吸引保持される。その後制御部78から各モータ64,68,76へ順次所定のモータ駆動信号が出力され、サンプリングアーム42が上昇後、回転して下降し、ノズルチップ38内に吸引された検体80が乾式分析素子1上に吐出点着される。本実施形態においては、例えば一回の吸引吐出動作で、5mlから100mlの検体が点着される。なお、第2及び第3の点着手段23,24も上述した第1の点着手段15と同様に構成されている。
【0037】
本実施形態においては、生化学分析装置10が製品として出荷される前に、点着手段15のリーク検出を行なっており、以下では、このリーク検出を行うときの構成、及び手順について説明する。リーク検出を行うときには、詳しくは図3及び図4に示すように、点着用ノズル36とシリンジポンプ70とを通気管69を介して接続し、さらに通気管69の途中には、三方管79を介して管路内の圧力を検出する圧力センサ81を接続している。また、シリンジポンプ70には、上述の点着手段15と同様に、伝達部材73、駆動ギヤ74、第3のモータ76が接続されている。さらにまた、圧力センサ81及び第3のモータ76には、リーク検出用コントローラ85が接続されている。
【0038】
圧力センサ81からは通気管69の管路内の圧力に対応する電気信号が時々刻々と出力され、コントローラ85へと送られる。圧力センサ81は管路内の圧力に応じた圧電気を発生する圧電素子81aを備え、この圧電素子81aから発生する電気を検出信号として出力するように構成されている。リーク検出用コントローラ85はA/D変換器86、微分回路87、比較回路88を備えている。A/D変換器86は圧力センサ81からのアナログ電気信号をデジタル化する。微分回路87は、デジタル化された電気信号を微分し、この圧力微分値により圧力変動を明確化する。比較回路88は所定の閾値が基準信号として入力されており、これとの比較でリークが発生しているか否かを判定する。閾値は、検出したいリークの種別に応じて変更可能にされており、図示しない操作部のキー入力などによって変更される。なお、実際にはリーク検出用コントローラ85内でソフトウェアで微分処理や比較処理が行われるが、これに代えてハードウェアとして構成してもよい。比較回路88により圧力微分値が閾値を超える場合にはリークが発生していると判定され、リーク検出用コントローラ85に接続されたアラーム89により警報が発せられる。なお、リーク発生を警告する構成としては、これに限らず、図示しない操作パネルなどにリーク発生を知らせる表示を行わせるようにしてもよい。
【0039】
本実施形態で行うリーク検出では、シリンジポンプ70のプランジャ72を、実際の吸引吐出動作を行うときと同じ使用領域L(図4参照)、及び同じ移動速度で上下動させ、このときの通気管69の管路内の圧力を圧力センサ81で出力し、その圧力の微分値を微分回路87で検出する。すなわち、シリンジポンプ70は、プランジャ72の先端がシリンジ71の下方まで最も引き出された下端位置pE(図4の2点鎖線で示す位置)から、シリンジ71の上端まで最も押し込まれた上端位置pS(図4の実線で示す位置)まで移動させ、さらにこの移動の後に連続して上端位置pSから下端位置pEまでプランジャ72を移動させて、この往復移動中の圧力の微分値を検出するものである。なお、このとき、点着用ノズル36の先端を閉塞せず、開放された状態でリーク検出を行う。
【0040】
以上のように、点着用ノズル36と通気管69とにより開放系管路が構成され、この開放系管路に三方管79を介して圧力センサ81が接続されており、これら開放系管路、圧力センサ81、及びリーク検出用コントローラ85によりリーク検出ユニットが構成される。なお、開放系管路、圧力センサ81、及びリーク検出用コントローラ85の微分回路は、上述した液面検出ユニットと共用しており、装置構成が簡素化されている。
【0041】
図5、図6及び図7は、上述したリーク検出で検出された圧力値及び圧力微分値の測定結果を示すグラフである。図5はシリンジ71及びプランジャ72が正常でリークが発生しない状態、図6は、プランジャ72に対するシリンジ71のシール不良によるリークが検出された状態、そして図7は、プランジャ72の不良によるリークが検出された状態のときのそれぞれの測定結果である。なお、図5〜図7では、横軸が測定を行っているときの経過時間T、縦軸が圧力値P、及びこの圧力値を微分して求めた圧力微分値DPを示す。
【0042】
図5に示す正常な状態の測定結果では、グラフ90が圧力値を、グラフ91が圧力微分値を示している。そして、測定開始時間t0の時点では、プランジャ72が下端位置pEに位置しており、そこからモータ76の回転が開始され、プランジャ72が上方への移動を開始する。そしてプランジャ72の移動に応じて圧力値P(グラフ90)が徐々に上昇し、時間t1の時点で最大ピーク値Pmaxに到達する。そして、時間t1の後から時間t2すなわちプランジャ72が上端位置pSに位置するまで、最大ピーク値Pmaxで一定の状態が保たれる。このとき、圧力微分値DP(グラフ91)は時間t0からt1まで徐々に減少(圧力変動が少なくなっていく)していき、そして時間t1の後からは、時間t2まで、圧力微分値DPが0、すなわち圧力変動が無い状態が保たれる。時間t2から時間t3までは、モータ76の回転が停止してプランジャ72が上端位置pSに停止している状態を示しており、圧力値Pが徐々に減少し、時間t3の時点で0になる。このとき、時間t2で圧力微分値DPは負の値となり、そこから徐々に上昇して時間t3では圧力微分値DPが0となる。なお、この時間t2からt3の間までは、上述したようにプランジャ72が停止しているので、このときの圧力微分値DPは、リーク検出の判定には使用しない。
【0043】
そして時間t3からは、モータ76が逆転し、プランジャ72は下方への移動を開始する。そして、時間t3から時間t4までの間に、圧力値Pが0から徐々に減少(負圧が徐々に増加)していき、時間t4の時点で最少ピーク値Pmin(負圧側の最大値)に到達する。そして時間t4の後からは、時間t5すなわちプランジャ72が下端位置pEに位置するまで、最少ピーク値Pminで一定の状態が保たれる。そしてプランジャ72が下端位置pEに到達すると、一回の検出が終了する。このとき、圧力微分値DPは、時間t3で負の値となり、そこから時間t4まで徐々に増加していき、そして時間t4の後から時間t5までは、圧力微分値DPが0の状態が保たれる。
【0044】
上述のように、図5に示す測定結果では、プランジャ72の移動開始直後の区間(上方、下方への移動ともに)を除く殆どの部分で、圧力微分値DPが0で一定した状態、すなわち、圧力センサ81から出力される圧力値の変動が無いことが分かるので、シリンジポンプ70のシール状態が良好であり、このシリンジポンプ70から構成される点着手段15は、所定量の液体を精度良く吸引吐出して点着を行うことが可能である。なお、この図5に示す測定結果で明らかなように、プランジャ72の移動に応じた圧力値P及び圧力微分値DPの測定結果では、プランジャ72が下端位置pEから上端位置pSへ上方に移動したとき(時間t0からt2までの区間)と、上端位置pSから下端位置pEへ下方に移動したとき(時間t3からt5までの区間)とでは、正圧側と負圧側との違いはあるが、ほぼ線対称な波形になり、それから導かれるリークの判定もほぼ同様の結果が導かれることになるので、以下で説明する図6、及び図7では、プランジャ72が上方へ移動(下端位置pEから上端位置pSまで)したときの測定結果のみを示し、下方へ移動(上端位置pSから下端位置pEまで)したときの測定結果を省略している。
【0045】
次に図6に示すシリンジ71のシール不良によるリークが検出された状態の測定結果では、グラフ92が圧力値を、グラフ93が圧力微分値を示している。そして、測定開始時間t0(プランジャ72が下端位置pE)からプランジャ72の移動を開始し、時間t1(圧力値Pが最大ピーク値Pmaxに到達)を過ぎた後、時間t2(プランジャ72が上端位置pSに到達)までの間に、圧力微分値DPが部分的に大きく変動する箇所(符号93a,93b,93cで示す)がある。
【0046】
上述のように、圧力微分値DPの変動が大きい箇所93a,93b,93cでは、シリンジ71のシール77の密閉度が不足しており、そこからリークが発生していることが分かる。よって本実施形態では、シリンジ71の不良によるリーク検出をするときの閾値94(図中点線で示す)を設定しており、この閾値94を比較回路88に基準信号として入力し、微分回路87から出力された圧力微分値の測定結果と比較して閾値94を超えている場合には、シール77が不良であると判定し、アラーム89により警報を発する。
【0047】
また図7に示すプランジャ72の不良によるリークが検出された状態の測定結果では、グラフ95が圧力値を、グラフ96が圧力微分値を示している。そして測定開始時間t0(プランジャ72が下端位置pE)からプランジャ72の移動を開始し、時間t1(圧力値Pが最大ピーク値Pmaxに到達)を過ぎた後、時間t2(プランジャ72が上端位置pSに到達)までの間に、圧力微分値DPが一定の周期で変動する部分(符号96aで示す範囲)がある。
【0048】
上述のように、圧力微分値DPが一定の周期で変動する部分96aでは、プランジャ72がシリンジ71の軸方向に対して傾いている。あるいは、プランジャ72の真円度に不良があり、一定の周期でリークが発生していることが分かる。よって本実施形態では、プランジャ72の不良によるリーク検出をするときの閾値97(図中点線で示す)を設定しており、この閾値97を比較回路88に格納し、微分回路87で検出された圧力微分値の測定結果と比較して閾値97を超えている場合には、プランジャ72が不良であると判定する。
【0049】
上述のように、圧力微分値を求めた測定結果からシリンジポンプ70のリークなどの異常を判定しているので、圧力センサ81から出力される微小な圧力変動も感知することが可能となり、高感度な検出を行うことができるので、シリンジポンプ70のシリンジ71及びプランジャ72の不良による異常を確実に検出することができる。
【0050】
また、シリンジポンプ70のプランジャ72を、実際の吸引吐出動作を行うときと同じ使用領域Lで上下動させているときに圧力センサ81から出力される圧力信号の微分値を求め、シリンジポンプ70の異常を判定しているので、実際の吸引吐出動作で使用しているときに発生する可能のある異常を確実に検出することができる。さらにまた、点着用ノズル36の先端を閉塞せず、開放された状態で異常検出を行っているので実際の吸引吐出動作を行うときに近い状態で圧力が出力され、シリンジポンプ70の異常を判定することができる。
【0051】
なお、上記実施形態では、生化学分析装置10が製品として出荷される前にシリンジポンプ70の異常検出を行っているが、本発明はこれに限るものではなく、生化学分析装置10が製品として出荷された後、この生化学分析装置10を使用する前のシリンジポンプ70の状態チェック用に、上述したような構成の異常検出を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明を実施した生化学分析装置を示す斜視図である。
【図2】点着手段の構成を示す斜視図である。
【図3】リーク検出を行うときの状態を示す斜視図である。
【図4】リーク検出を行うときの状態を示す断面図である。
【図5】正常な状態での測定結果を示すグラフである。
【図6】シリンジのシール不良によるリークが発生したときのグラフである。
【図7】プランジャの不良によるリークが発生したときのグラフである。
【符号の説明】
【0053】
10 生化学分析装置
70 シリンジポンプ
71 シリンジ
72 プランジャ
81 圧力センサ
86 微分回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体状のシリンジ及びこのシリンジの内部を摺動するプランジャからなるシリンジポンプの異常検出方法において、
前記シリンジの給排口に開放系管路を接続し、この開放系管路の圧力を検出する圧力センサを設け、前記プランジャを前記シリンジに対して相対移動させて前記圧力センサから出力される圧力信号を微分した圧力微分値を求め、この圧力微分値に基づいて前記シリンジポンプの異常を判定することを特徴とするシリンジポンプの異常検出方法。
【請求項2】
前記開放系管路を、液体を吸引吐出するノズルと、このノズルを前記シリンジポンプの給排口に接続する管路とから構成することを特徴とする請求項1記載のシリンジポンプの異常検出方法。
【請求項3】
筒体状のシリンジ及びこのシリンジの内部を摺動するプランジャからなり、液体を吸引吐出する点着用ノズルと接続され、この点着用ノズルに吸引吐出圧を供給することによって前記点着用ノズルの先端又は該点着用ノズルの先端に装着したノズルチップから前記液体を被点着材へ点着するシリンジポンプの異常検出方法において、
前記点着用ノズルと前記シリンジポンプとを繋ぐ圧力系統の途中に圧力センサを設け、前記プランジャを前記シリンジに対して相対移動させて前記圧力センサから出力される圧力信号を微分した圧力微分値を求め、この圧力微分値に基づいて前記シリンジポンプの異常を判定することを特徴とするシリンジポンプの異常検出方法。
【請求項4】
前記点着用ノズルの先端を開放した状態で前記プランジャを移動させて前記シリンジポンプの異常を判定することを特徴とする請求項3記載のシリンジポンプの異常検出方法。
【請求項5】
前記シリンジポンプを実際に使用するときの使用領域で前記プランジャを前記シリンジに対して相対移動させ、この移動中の状態で前記圧力センサにより圧力を検出し、前記シリンジポンプの異常を判定することを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載のシリンジポンプの異常検出方法。
【請求項6】
所定の閾値と前記圧力微分値とを比較して前記シリンジポンプの異常を判定することを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項記載のシリンジポンプの異常検出方法。
【請求項7】
筒体状のシリンジ及びこのシリンジの内部を摺動するプランジャからなるシリンジポンプと、前記シリンジの給排口に接続された開放系管路とを有する液体吸引吐出器において、
前記開放系管路の圧力を検出する圧力センサと、この圧力センサから出力される圧力信号を微分した圧力微分値を求める微分算出手段と、この微分算出手段により求められた圧力微分値から前記シリンジポンプの異常を判定する判定手段とを備えたことを特徴とする液体吸引吐出器。
【請求項8】
液体を吸引吐出する点着用ノズルと、このノズルに接続され、筒体状に形成されたシリンジ及びこのシリンジの内部を摺動するプランジャからなり、前記点着用ノズルに吸引吐出圧を供給するシリンジポンプとを有し、前記点着用ノズルの先端又は該点着用ノズルの先端に装着したノズルチップから前記液体を被点着材へ点着する液体吸引吐出器において、
前記点着用ノズルと前記シリンジポンプとを繋ぐ圧力系統の途中に接続された圧力センサと、この圧力センサから出力される圧力信号を微分した圧力微分値を求める微分算出手段と、この微分算出手段により求められた圧力微分値から前記シリンジポンプの異常を判定する判定手段とを備えたことを特徴とする液体吸引吐出器。
【請求項9】
前記ノズルの先端を開放した状態で前記プランジャを移動させて前記シリンジポンプの異常を判定することを特徴とする請求項8記載の液体吸引吐出器。
【請求項10】
前記シリンジポンプを実際に使用するときの使用領域で前記プランジャを前記シリンジに対して相対移動させ、この移動中の状態で前記圧力センサにより圧力を検出することを特徴とする請求項7ないし9いずれか1項記載の液体吸引吐出器。
【請求項11】
前記判定手段は、所定の閾値と、前記圧力微分値とを比較して前記シリンジポンプの異常を判定することを特徴とする請求項7ないし10いずれか1項記載の液体吸引吐出器。
【請求項12】
請求項7ないし11いずれか1項記載の液体吸引吐出器を用いて、被点着材へ被測定物質としての液体を点着し、この被点着材に光源から測定光を照射し、被点着材からの反射光または透過光の光量を測定手段により測定し、前記測定手段の測定結果に基づいて前記液体の定量分析を行うことを特徴とする生化学分析装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−98226(P2006−98226A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285155(P2004−285155)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】